説明

距離計測装置及び距離計測方法

【課題】照射光の照射領域において別の光源(例えば、街灯や信号機等)の光がある場合でも、この光に影響されることなく複数の照射光をそれぞれ精度よく検出して、対象物までの距離を精度よく計測することができる距離計測装置を提供する。
【解決手段】照射制御部5から照射装置4に出力される照射信号に基づいて、照射装置4から照射された複数のスリット光の周期に対応した周期信号を検出する周期信号検出部10と、カメラ2の撮像素子の各画素からの輝度信号に基づいて複数のスリット光の各位相を検出する位相検出部11と、検出された位相検出情報と前記照射信号とに基づいて、複数のスリット光の照射方位を算出する照射方位算出部12と、算出された照射方位情報と、カメラ2と照射装置4との位置関係情報とに基づいて、三角測量法により照射光の照射領域に有る対象物までの距離を算出する距離算出部13を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパターン化した光からなる照射光を照射して対象物までの距離を計測する距離計測装置及び距離計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対象物に対して照射装置から複数の照射光(スリット光)を照射して、照射装置と異なる位置にあるカメラで撮像し、撮像した画像からどの照射光であるかを区別して、カメラから見た対象物に対する複数の照射光の照射方位を算出することにより、照射装置とカメラとの位置関係から、三角測量の原理により対象物までの距離を計測する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−131031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1の装置では、複数の照射光を照射する際に、それぞれの照射パタンが異なるように時系列でON/OFFさせながら照射し、カメラで撮像した露光パタン(ON/OFFパタン)からどの照射光であるかを区別するようにしている。
【0004】
ところで、前記特許文献1のような装置では、照射光の照射領域において別の光源(例えば、街灯や信号機等)の光があると、この光がカメラで撮像した露光パタン(ON/OFFパタン)に影響して、撮像した画像からどの照射光であるかを精度よく区別できなくなる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、照射光の照射領域において別の光源(例えば、街灯や信号機等)の光がある場合でも、この光に影響されることなく複数の照射光をそれぞれ精度よく検出(区別)して、対象物までの距離を精度よく計測することができる距離計測装置及び距離計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明に係る距離計測装置は、所定方向に向けて特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた複数のパターン化した光からなる照射光を照射可能な照射手段と、前記照射手段に対し特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた前記複数のパターン化した光からなる照射光を一度に照射するように制御するための照射信号を出力する照射制御手段と、前記所定方向の少なくとも前記照射手段から照射される照射光の照射領域を撮像する撮像素子を有する撮像手段と、前記撮像手段により撮像した画像において、前記照射制御手段から前記照射手段に出力された前記照射信号に基づいて、前記複数のパターン化した光の周期に対応した周期信号を検出する周期信号検出手段と、前記周期信号検出手段により前記周期信号が検出された画像領域において、前記撮像手段の前記撮像素子を構成する各画素からの輝度信号に基づいて前記複数のパターン化した光の各位相を検出する位相検出手段と、前記位相検出手段で検出した位相検出情報と前記照射制御手段から出力された前記照射信号とに基づいて、前記複数のパターン化した光の照射方位を算出する照射方位算出手段と、前記照射方位算出手段により算出された前記複数のパターン化した光の照射方位情報と、前記撮像手段と前記照射手段との位置関係情報とに基づいて、三角測量法により前記照射光の照射領域に有る対象物までの距離を算出する距離算出手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る距離計測方法は、所定方向に向けて特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた複数のパターン化した光からなる照射光を照射手段から照射する第1ステップと、前記照射手段に対し特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた前記複数のパターン化した光からなる照射光を一度に照射するように制御するための照射信号を照射制御手段から出力する第2ステップと、前記所定方向の少なくとも前記照射手段から照射される照射光の照射領域を撮像手段の撮像素子で撮像する第3ステップと、前記撮像手段により撮像した画像において、前記照射制御手段から前記照射手段に出力された前記照射信号に基づいて、前記複数のパターン化した光の周期に対応した周期信号を検出する第4ステップと、前記第4ステップで前記周期信号が検出された画像領域において、前記撮像手段の前記撮像素子を構成する各画素からの輝度信号に基づいて前記複数のパターン化した光の各位相を検出する第5ステップと、前記第5ステップで検出した位相検出情報と前記照射制御手段から出力された前記照射信号とに基づいて、前記複数のパターン化した光の照射方位を算出する第6ステップと、前記第6ステップで算出された前記複数のパターン化した光の照射方位情報と、前記撮像手段と前記照射手段との位置関係情報とに基づいて、三角測量法により前記照射光の照射領域に有る対象物までの距離を算出する第7ステップと、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る距離計測装置及び距離計測方法によれば、照射光として特定の同じ周期で位相がそれぞれ異なる複数のパターン化した光を使用し、特定の同じ周期の照射光(複数のパターン化した光)を検出することにより、照射光の照射領域において別の光源(例えば、街灯や信号機等)の光がある場合でも、この光に影響されることなく照射光(複数のパターン化した光)だけを検出でき、かつ複数のパターン化した光の位相を検出することにより、照射光(複数のパターン化した光)をそれぞれ精度よく区別して、対象物までの距離を精度よく計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1に係る距離計測装置の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態に係る距離計測装置は車両(自動車)に搭載され、先行車との間の距離(車間距離)を計測する距離計測装置に適用したものである。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る距離計測装置システム1は、この距離計測システム1を搭載している移動体としての自車両の前方路面側を撮像するカメラ2と、このカメラ2で撮像した画像データを保存するとともに、カメラ2の2次元に配置した撮像素子の各画素(光電変換素子)で検出される輝度信号(アナログ信号)をデジタル変換して保存するメモリ3と、自車両の前方路面側に向けて複数の車幅方向に沿ったスリット光(パターン化した光)からなる照射光aを照射する照射装置4と、照射装置4に対し特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた複数のスリット光からなる照射光を一度に照射するように制御するための照射信号を出力する照射制御部5と、コントロールユニット6とを主要構成要素として備えている。なお、コントロールユニット6は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに所定の処理を実行させるためのプログラム等を記憶しているROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM等により構成されている。
【0011】
カメラ2は、本実施形態では図2に示すように、この距離計測装置1を搭載している自車両7の車室内のフロントウィンドウ8の上部付近に前方に向けて設置されている。このカメラ2は、筐体にCCDなどの撮像素子とレンズ等を組み合わせたビデオカメラであり、時系列に順次撮像した画像を出力することができる。
【0012】
照射装置4は、図3に示すように、光源(不図示)の前面側に液晶シャッタ9を備えている。液晶シャッタ9は、複数の車幅方向に沿ったスリット状の光シャッタ列を有しており、照射制御部5から出力される照射信号に基づいて各光シャッタ列をON/OFF制御することで、特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた複数のスリット光からなる照射光aを照射装置4から一度に照射することができる。よって、照射装置4から照射される照射光aは、特定の同じ周期で位相がそれぞれ異なる複数のスリット光によって構成されている。この照射装置4は、本実施形態では図2に示すように、自車両7の車両前部(フロントバンパー付近)に設置されている。
【0013】
コントロールユニット6は、カメラ2により撮像した画像において、照射制御部5から照射装置4に出力される照射信号に基づいて、照射装置4から照射された複数のスリット光(照射光a)の周期に対応した周期信号を検出する周期信号検出部10と、この周期信号検出部10により特定の同じ周期の信号が検出された画像領域において、カメラ2の撮像素子の各画素(光電変換素子)からの輝度信号に基づいて複数のスリット光(照射光a)の各位相を検出する位相検出部11と、位相検出部11で検出した位相検出情報と照射制御部5から出力される前記照射信号とに基づいて、カメラ2から見た照射領域に有る対象物に照射された照射光a(特定の同じ周期で位相がそれぞれ異なる複数のスリット光)の照射方位を算出する照射方位算出部12と、照射方位算出部12で算出した照射光a(特定の同じ周期で位相がそれぞれ異なる複数のスリット光)の照射方位算出情報と、カメラ2と照射装置4との位置関係情報とに基づいて、周知の三角測量方法により照射光aの照射範囲に有る対象物(本実施形態では、自車両の前方に位置する先行車)までの距離を算出する距離算出部13と、距離算出部13で算出された対象物(先行車)との間の距離が所定距離以下の場合にブザー15などに警報信号を出力する警報部14とを有している。
【0014】
次に、前記した本実施形態に係る距離計測装置1による距離計測方法について説明する。
【0015】
照射制御部5から出力される前記照射信号に基づいて照射装置4から自車両7(図2参照)の前方路面側に照射光aを照射し、自車両7の車室内のフロントウィンドウ8の上部付近に設置したカメラ2で、走行中の路面前方側を撮像する。この際、メモリ3は、カメラ2で時系列に順次撮像した画像と、カメラ2の2次元に配置した撮像素子の各画素(光電変換素子)で検出した輝度信号(アナログ信号)をデジタル変換して保存する。
【0016】
照射光aは、図4(a)に示すように、特定の同じ周期(周波数)で位相がそれぞれ異なる複数のスリット光であり、照射方向が上方から下方に向いている複数のスリット光(図4(a)では、スリット光a1〜a4)によって構成されている。照射方向が上方側のスリット光a1は遠方側に照射され、照射方向が下方側のスリット光a4は近傍側に照射される。なお、図4(a)において、bはカメラ2による撮像範囲であり、Aは対象物としての先行車である。
【0017】
そして、周期信号検出部10により、メモリ3から取り込んだカメラ2で撮像した画像から前記照射信号における周期信号と同じ特定の周期の信号(複数のスリット光(照射光a)の周期に対応した周期信号)のみを検出する。図4(b)は、周期信号検出部10で検出した複数のスリット光(照射光a)に対応した周期信号である。
【0018】
そして、位相検出部11により、周期信号検出部10で前記照射信号における周期信号と同じ周期の信号(複数のスリット光(照射光a)の周期に対応した周期信号)が検出された画像領域(図4(b)参照)において、メモリ3から取り込んだカメラ2の撮像素子の各画素(光電変換素子)で検出した輝度信号の大きさ、即ち、カメラ2の撮像素子の各画素(光電変換素子)で検出した輝度の変化に基づいて、複数のスリット光(照射光a)の各位相を、本実施形態では以下のように検出する。
【0019】
照射光aを構成する各スリット光のそれぞれの位相は、下記の式(1)により算出することができる。
【0020】
sin(ω1t)・sin(ω2t+α)
ω1=ω2=ωの場合、
sin(ωt)・sin(ωt+α)
=A・{cos(2ωt+α)−cos(−α)}
LPF(ローパスフィルター)処理により、
=−A・cos(α) …(1)
ただし、sin(ω1t)は基準照射光の基準位相、sin(ω2t+α)は位相がずれている前記スリット光の位相、Aは定数である。
【0021】
本実施形態では、図5(a)に示すように、例えば、照射光aを構成する照射方向が上方から下方に向いている各スリット光a1、a2、a3(図4(a)の照射光a4は省略)において、基準位相となる基準照射光Cとスリット光a1の位相を同じに設定したときに、スリット光a2とスリット光a3は順次位相ずれが大きくなるようにしている。このように、基準照射光C(スリット光a1)に対して照射方向が下方に向いているスリット光a2、a3の位相差を順に大きくすることにより、位相差の大きいスリット光a3は位相差の小さいスリット光a1よりもパワーが小さくなる。
【0022】
よって、図5(b)に示すように、照射方向が上方側のスリット光a1は輝度が一番高くなり、照射方向が下方側のスリット光a3は輝度が一番小さくなる。このように、輝度の変化に基づいて、位相がずれている複数のスリット光(照射光)を区別(検出)することができる。
【0023】
そして、照射方位算出部12により、位相検出部11で検出した照射光aを構成する複数のスリット光の各位相検出情報と照射制御部5から出力された前記照射信号における位相信号とに基づいて、カメラ2の撮像素子の各画素上における照射光(特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた複数のスリット光)aの座標から、カメラ2から見た対象物に対する照射光(特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた複数のスリット光)aの照射方位(照射角度)を算出する。
【0024】
そして、距離算出部13により、照射方位算出部12で算出したカメラ2から見た対象物に対する照射光(特定の同じ周期で位相がそれぞれ異なる複数のスリット光)aの照射方位(照射角度)情報と、位相検出部11で得られた位相検出情報から算出した対象物に対する照射光aの照射角度情報と、カメラ2と照射装置4との位置関係情報とに基づいて、周知の三角測量方法により照射装置4から自車両の前方路面側に照射した照射光aの照射範囲にある対象物までの距離を算出する。
【0025】
そして、距離算出部13は、算出した距離が略同じ対象物を同一対象物としてグルーピングし、自車両の前方で最も近い対象物を先行車A(図4(a)、(b)参照)として抽出する。更に、距離算出部13は、算出した先行車Aまでの距離が予め設定している距離以下であると判定した場合、即ち、自車両が先行車Aに接近していると判断した場合は、警報部14に信号を出力する。警報部14は、距離算出部13から入力される信号に基づいて、ブザー15に警報信号を出力して警報音を発せさせたり、警告灯(不図示)を点滅(または点灯)させる。これにより、運転者に自車両が先行車Aに接近していることを警告することができる。
【0026】
このように、本実施形態に係る距離計測装置1によれば、照射光aとして特定の同じ周期で位相がそれぞれ異なる複数のスリット光を使用し、周期信号検出部10により、照射制御部5から照射装置4に出力される照射信号に基づいて、照射装置4から照射された複数のスリット光(照射光a)の周期に対応した周期信号を検出することにより、照射光aの照射領域において別の光源(例えば、街灯や信号機等)の光がある場合でも、この光に影響されることなく照射光(複数のスリット光)aだけを検出でき、かつ位相検出部11により、複数のスリット光(照射光a)の各位相を精度よく検出(区別)することができる。
【0027】
これにより、精度よく検出された照射光aを構成する複数の位相の異なるストライプ光によって、先行車Aまでの距離を精度よく算出することができる。
【0028】
〈実施形態2〉
本実施形態は、図1に示した実施形態1の距離計測装置1における位相検出部11による位相検出を以下のように行うようにした。なお、位相検出部11による位相検出以外は前記実施形態1と同様であり、重複する説明は省略する。以下、本実施形態における位相検出部11による位相検出について説明する。
【0029】
本実施形態では、コントロールユニット6の周期信号検出部10により、メモリ3から取り込んだカメラ2で撮像した画像から前記照射信号における周期信号と同じ特定の周期の信号(複数のスリット光(照射光)の周期に対応した周期信号)のみを検出する処理までは、前記実施形態1と同様である。
【0030】
そして、位相検出部11により、周期信号検出部10で前記照射信号における周期信号と同じ周期の信号(複数のスリット光(照射光)の周期に対応した周期信号)が検出された画像領域(図4(b)参照)において、メモリ3から取り込んだカメラ2の撮像素子の各画素(光電変換素子)で検出した輝度信号の大きさ、即ち、カメラ2の撮像素子の各画素(光電変換素子)で検出した輝度の変化に基づいて、複数のスリット光(照射光)の各位相を、本実施形態では以下のように検出する。
【0031】
照射光を構成する各スリット光のそれぞれの位相は、下記の式(2)により算出することができる。
【0032】
sin(ω1t)・r/d・sin(ω2t+α)
ω1=ω2=ωの場合、
sin(ωt)・r/d・sin(ωt+α)
=A・r/d・{cos(2ωt+α)−cos(−α)}
LPF(ローパスフィルター)処理により、
=−A・r/d・cos(α) …(2)
ただし、sin(ω1t)は基準照射光の基準位相、sin(ω2t+α)は位相がずれている前記スリット光の位相、rは照射光が当たった対象物の反射率、dは対象物までの距離、Aは定数である。
【0033】
本実施形態では、図6に示すように、例えば、照射光を構成する照射方向が上方から下方に向いている各スリット光b1、b2、b3において、基準位相となる基準照射光Cとスリット光b1の位相を同じに設定したときに、スリット光b2とスリット光b3は一定周期毎に基準位相と所定量ずらした位相を交互に照射するようになっている。なお、図6において、p1はスリット光b1とb2との間の位相差、p2はスリット光b1とb3との間の位相差である。このようにして,基準位相による照射と所定量位相をずらした照射とを同じ対象物に交互に行うことで、基準位相(位相差無し)による照射に対し所定量位相をずらした照射は、位相ずれ分だけパワーが小さくなる。
【0034】
よって、図7に示すように、照射装置4から遠方の対象物D1に照射されたスリット光b2は、近傍の対象物D2に照射されたスリット光b3よりも光路による減衰(式(2)のdに対応)でパワーが小さくなるが、基準位相による照射と所定量位相をずらした照射の比をとることで、光路によるパワー変化と反射率によるパワー変化の影響がなくなり、位相のずれによる複数のスリット光(照射光)を区別(検出)することができる。
【0035】
そして、照射方位算出部12により、位相検出部11で検出した照射光を構成する複数のスリット光の各位相検出情報と照射制御部5から出力された前記照射信号における位相信号とに基づいて、カメラ2の撮像素子の各画素上における照射光(特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた複数のスリット光)の座標から、カメラ2から見た対象物に対する照射光(特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた複数のスリット光)の照射方位(照射角度)を算出する。
【0036】
このように、本実施形態においても実施形態1と同様に、照射光の照射領域において別の光源(例えば、街灯や信号機等)の光がある場合でも、この光に影響されることなく照射光(複数のスリット光)だけを検出でき、かつ位相検出部11により、複数のスリット光(照射光)の各位相を精度よく検出(区別)することができる。これにより、精度よく検出された照射光を構成する複数の位相の異なるストライプ光によって、先行車までの距離を精度よく算出することができる。
【0037】
〈実施形態3〉
図8は、本発明の実施形態3に係る距離計測装置1aの構成を示すブロック図であり、図1に示した前記実施形態1の位相検出部11の代わりに周期検出部16を有している。なお、図1に示した前記実施形態1の距離計測装置1と同一機能を有する部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0038】
本実施形態では、照射制御部5からの制御信号により位相が同じで周期がそれぞれ異なる複数のスリット光からなる照射光aを照射装置4(図2、図3参照)から一度に照射するように構成されている。
【0039】
次に、前記した本実施形態に係る距離計測装置1aによる距離計測方法について説明する。
【0040】
照射制御部5から出力される前記照射信号に基づいて照射装置4から自車両7(図2参照)の前方路面側に照射光aを照射し、自車両7の車室内のフロントウィンドウ8の上部付近に設置したカメラ2で、走行中の路面前方側を撮像する。この際、メモリ3は、カメラ2で時系列に順次撮像した画像と、カメラ2の2次元に配置した撮像素子の各画素(光電変換素子)で検出した輝度信号(アナログ信号)をデジタル変換して保存する。
【0041】
なお、本実施形態における照射光aは、位相が同じで周期がそれぞれ異なる複数のスリット光であり、照射方向が上方から下方に向いている複数のスリット光(図4(a)参照)によって構成されている。そして、周期信号検出部10により、メモリ3から取り込んだカメラ2で撮像した画像から前記照射信号における周期信号と同じ特定の周期の信号(複数のスリット光(照射光a)の周期に対応した周期信号)のみを検出する(図4(b)参照)。
【0042】
そして、周期検出部16により、周期信号検出部10で前記照射信号における周期信号と同じ周期の信号(複数のスリット光(照射光a)の周期に対応した周期信号)が検出された画像領域(図4(b)参照)において、メモリ3から取り込んだカメラ2の撮像素子の各画素(光電変換素子)で検出した輝度信号の大きさ、即ち、カメラ2の撮像素子の各画素(光電変換素子)で検出した輝度の変化に基づいて、複数のスリット光(照射光a)の各周期を検出する。このように、輝度の変化に基づいて周期が異なる複数のスリット光(照射光)を検出(区別)することができる。
【0043】
ところで、照射方向が上方であるほど遠方の対象物に照射されるため、その反射光の輝度は小さく、細かい光の変化の検出ができなくなる。一方、照射方向が下方であるほど近傍の対象物に照射されるため、その反射光の輝度は高く、細かい光の変化を検出することができる。よって、本実施形態では、照射方向が上方のスリット光は周期を短くし、照射方向が下方のスリット光は周期を長くするように制御している。
【0044】
そして、照射方位算出部12により、周期検出部16で検出した照射光aを構成する複数のスリット光の各周期検出情報と照射制御部5から出力された前記照射信号における周期信号とに基づいて、カメラ2の撮像素子の各画素上における照射光(特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた複数のスリット光)aの座標から、カメラ2から見た対象物に対する照射光(特定の同じ位相で周期をそれぞれ変化させた複数のスリット光)aの照射方位(照射角度)を算出する。
【0045】
そして、距離算出部13により、照射方位算出部12で算出したカメラ2から見た対象物に対する照射光a(特定の同じ位相で周期がそれぞれ異なる複数のスリット光)の照射方位(照射角度)情報と、周期検出部16で得られた周期検出情報から算出した対象物に対する照射光aの照射角度情報と、カメラ2と照射装置4との位置関係情報とに基づいて、周知の三角測量方法により照射装置4から自車両の前方路面側に照射した照射光aの照射範囲にある対象物までの距離を算出する。
【0046】
そして、距離算出部13は、算出した距離が略同じ対象物を同一対象物としてグルーピングし、自車両の前方で最も近い対象物を先行車A(図4(a)、(b)参照)として抽出する。更に、距離算出部13は、算出した先行車Aまでの距離が予め設定している距離以下であると判定した場合、即ち、自車両が先行車Aに接近していると判断した場合は、警報部14に信号を出力する。警報部14は、距離算出部13から入力される信号に基づいて、ブザー15に警報信号を出力して警報音を発せさせたり、警告灯(不図示)を点滅(または点灯)させる。これにより、運転者に自車両が先行車Aに接近していることを警告することができる。
【0047】
このように、本実施形態に係る距離計測装置1aによれば、照射光aとして特定の同じ位相で周期がそれぞれ異なる複数のスリット光を使用し、周期信号検出部10により、照射制御部5から照射装置4に出力される照射信号に基づいて、照射装置4から照射された複数のスリット光(照射光a)の周期に対応した周期信号を検出することにより、照射光aの照射領域において別の光源(例えば、街灯や信号機等)の光がある場合でも、この光に影響されることなく照射光(複数のスリット光)aだけを検出でき、かつ周期検出部16により、複数のスリット光(照射光a)の各周期を精度よく検出(区別)することができる。
【0048】
これにより、精度よく検出された照射光aを構成する複数の周期がそれぞれ異なるストライプ光によって、先行車Aまでの距離を精度よく算出することができる。
【0049】
なお、前記した各実施形態では、本発明を先行車との間の距離(車間距離)を計測する車両(自動車)に搭載の距離計測装置に適用した例として説明したが、これに限定されることなく、任意の対象物までの距離を計測する距離計測装置においても同様に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態1に係る距離計測装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態1に係る距離計測装置のカメラと照射装置を設置した車両を示す斜視図。
【図3】本発明の実施形態1に係る距離計測装置の照射装置を示す図。
【図4】(a)は、照射装置から照射された照射光(複数のスリット光)を示す模式図、(b)は、周期信号検出部で検出された周期信号を示す模式図。
【図5】(a)は、照射光を構成する同じ周期で位相のずれた各スリット光を示す図、(b)は、位相の異なる各スリット光の輝度の違いを示す図。
【図6】本発明の実施形態2における、照射光を構成する同じ周期で位相のずれた各スリット光を示す図。
【図7】本発明の実施形態2における、照射装置から照射光を遠方の対象物および近傍の対象物に照射した状況を示す模式図。
【図8】本発明の実施形態3に係る距離計測装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0051】
1、1a 距離計測装置
2 カメラ(撮像手段)
3 メモリ
4 照射装置(照射手段)
5 照射制御部(照射制御手段)
6 コントロールユニット
7 自車両
10 周期信号検出部(周期信号検出手段)
11 位相検出部(位相検出手段)
12 照射方位算出部(照射方位算出手段)
13 距離算出部(距離算出手段)
14 警報部
15 ブザー
16 周期検出部(周期検出手段)
A 先行車(対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に向けて特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた複数のパターン化した光からなる照射光を照射可能な照射手段と、
前記照射手段に対し特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた前記複数のパターン化した光からなる照射光を一度に照射するように制御するための照射信号を出力する照射制御手段と、
前記所定方向の少なくとも前記照射手段から照射される照射光の照射領域を撮像する撮像素子を有する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像した画像において、前記照射制御手段から前記照射手段に出力された前記照射信号に基づいて、前記複数のパターン化した光の周期に対応した周期信号を検出する周期信号検出手段と、
前記周期信号検出手段により前記周期信号が検出された画像領域において、前記撮像手段の前記撮像素子を構成する各画素からの輝度信号に基づいて前記複数のパターン化した光の各位相を検出する位相検出手段と、
前記位相検出手段で検出した位相検出情報と前記照射制御手段から出力された前記照射信号とに基づいて、前記複数のパターン化した光の照射方位を算出する照射方位算出手段と、
前記照射方位算出手段により算出された前記複数のパターン化した光の照射方位情報と、前記撮像手段と前記照射手段との位置関係情報とに基づいて、三角測量法により前記照射光の照射領域に有る対象物までの距離を算出する距離算出手段と、を備えた、
ことを特徴とする距離計測装置。
【請求項2】
所定方向に向けて特定の同じ位相で周期をそれぞれ変化させた複数のパターン化した光からなる照射光を照射可能な照射手段と、
前記照射手段に対し特定の同じ位相で周期をそれぞれ変化させた前記複数のパターン化した光からなる照射光を一度に照射するように制御するための照射信号を出力する照射制御手段と、
前記所定方向の少なくとも前記照射手段から照射される照射光の照射領域を撮像する撮像素子を有する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像した画像において、前記照射制御手段から前記照射手段に出力された前記照射信号に基づいて、前記複数のパターン化した光の周期に対応した周期信号を検出する周期信号検出手段と、
前記周期信号検出手段により前記周期信号が検出された画像領域において、前記撮像手段の前記撮像素子を構成する各画素からの輝度信号に基づいて前記複数のパターン化した光の各周期を検出する周期検出手段と、
前記周期検出手段で検出した周期検出情報と前記照射制御手段から出力された前記照射信号とに基づいて、前記複数のパターン化した光の照射方位を算出する照射方位算出手段と、
前記照射方位算出手段により算出された前記複数のパターン化した光の照射方位情報と、前記撮像手段と前記照射手段との位置関係情報とに基づいて、三角測量法により前記照射光の照射領域に有る対象物までの距離を算出する距離算出手段と、を備えた、
ことを特徴とする距離計測装置。
【請求項3】
前記複数のパターン化した光は、照射方向が上方側から下方側に向けて位相のずれが大きくなるように変化させて照射される、
ことを特徴とする請求項1に記載の距離計測装置。
【請求項4】
前記照射方位算出手段は、複数のパターン化した光を同じ周期、同じ位相で照射したときと、前記複数のパターン化した光を同じ周期、それぞれ異なる位相で照射したときの位相検出結果の違いから、前記複数のパターン化した光の照射方位を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の距離計測装置。
【請求項5】
前記複数のパターン化した光は、照射方向が下方側から上方側に向けて周期が大きくなるように変化させて照射される、
ことを特徴とする請求項2に記載の距離計測装置。
【請求項6】
所定方向に向けて特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた複数のパターン化した光からなる照射光を照射手段から照射する第1ステップと、
前記照射手段に対し特定の同じ周期で位相をそれぞれ変化させた前記複数のパターン化した光からなる照射光を一度に照射するように制御するための照射信号を照射制御手段から出力する第2ステップと、
前記所定方向の少なくとも前記照射手段から照射される照射光の照射領域を撮像手段の撮像素子で撮像する第3ステップと、
前記撮像手段により撮像した画像において、前記照射制御手段から前記照射手段に出力された前記照射信号に基づいて、前記複数のパターン化した光の周期に対応した周期信号を検出する第4ステップと、
前記第4ステップで前記周期信号が検出された画像領域において、前記撮像手段の前記撮像素子を構成する各画素からの輝度信号に基づいて前記複数のパターン化した光の各位相を検出する第5ステップと、
前記第5ステップで検出した位相検出情報と前記照射制御手段から出力された前記照射信号とに基づいて、前記複数のパターン化した光の照射方位を算出する第6ステップと、
前記第6ステップで算出された前記複数のパターン化した光の照射方位情報と、前記撮像手段と前記照射手段との位置関係情報とに基づいて、三角測量法により前記照射光の照射領域に有る対象物までの距離を算出する第7ステップと、を含む、
ことを特徴とする距離計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−51759(P2008−51759A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230614(P2006−230614)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】