説明

車両のボディ

上開き乗用車の乗員室と荷物室との間に設けられる公知の仕切り壁の代わりに、本発明によれば、プリアッセンブリユニット(20)が提案される。プリアッセンブリユニット(20)は車幅にわたって延びるクロスメンバー(3)をから成る。クロスメンバー(3)はボディに固定される側部の受容部(4)に挿着可能である。クロスメンバー(3)は補助的にストラット(9)を介して車両ボディ(1)で支持される。ストラット(9)はクロスメンバー(3)に対しほぼ45゜の角度で斜め下方外側へ延びており、その結果クロスメンバー(3)の下方に、乗員室(F)と荷物室(G)との間での荷物の出し入れに利用できる大きな自由空間(28)が生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1および10の上位概念に記載の、車両のボディ、特に上開きの乗用車のボディに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、車幅にわたって延在するクロスメンバーと定置のU字状ロールバーのための差込み穴とを備えた、上開き車両のボディが知られている。クロスメンバーはフロアクロスストラクチャーに配置されている矢状のブラケットを介して車両両サイドで支持されている。フロアクロスストラクチャーにはさらに、ロールバーの自由端部分を受容しているフランジブシュが設けられている。
【0003】
また、特許文献2から、変位可能なロールバーをロールバーガイドで支持させ、該ロールバーガイドを、異形仕切り壁薄板と結合させたクロスメンバーにより形成させるようにした、上開き車両用の車体が知られている。
【0004】
さらに、まだ公開されていない特許文献3には、高さ方向に変位可能なロールバーをクロスメンバーの差し込み穴で案内するようにした、上開き車両用の車体が記載されている。長方形のクロスメンバーの車両外面側端部部分の領域においてクロスメンバーの下面は切除されており、クロスメンバーの残りの3つの壁が車体側支柱と形状拘束的に係合する「シュー」を形成している。
【0005】
【特許文献1】独国特許第19910007C1号明細書
【特許文献2】独国実用新案登録第20103001U1号
【特許文献3】独国特許出願第10116347.6号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、乗員室と荷物室との間での荷物の出し入れが改善され、および/または、車両ボディへのクロスメンバーの取り付けが容易である、車両のボディを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は請求項1および/または請求項10の構成により解決される。請求項15は本発明による車両のボディのためのプリアッセンブリユニットを記載するものである。
【0008】
請求項1の主要な思想は、胸高の高さまたは胸高の高さよりもいくぶん下方に延在しているクロスメンバーをストラットを用いてボディサイド構造部と結合させるというものである。この場合、ストラットはほぼ車両横面内において斜め下方へ外側へ延びている。ストラットが斜めに延びているので、クロスメンバーの下方には、公知の車両ボディに比べて比較的広い自由空間が残り、この自由空間を、乗員室と荷物室との間での荷物の出し入れに利用することができる。この場合、内のり幅はたとえばスノーボード、ゴルフバッグ等のかさばる搬送物にとっても十分な大きさである。この点で、比較的小さな横断面の長方形の開口部を備えているにすぎない公知の配置構成に比べて利点がある。対角線方向に延びているストラットはボディの剛性をかなりの程度改善させるとともに、重量の点でも利点をもたらす。さらに、本発明によるボディは製造コストが廉価で、軽量であることも特徴としている。これは、たとえば前記特許文献2から知られているような別個の仕切り壁を設ける代わりに、局所的にストラットを使用するにすぎないからである。加えて、クロスメンバーおよび/またはストラットの領域には、たとえば制御器のような車両アッセンブリを配置することができる。
【0009】
本発明の有利な実施態様によれば、ストラットはクロスメンバーに対しほぼ45゜で延びている。この場合ストラットは、実質的に、鉛直方向に延在しているか或いは鉛直方向からわずかな角度(±10゜)だけずれている車両横面内にある。この配置構成の場合、ストラットの自由端部分はほぼ鉛直方向においてクロスメンバーとボディサイド構造部との固定部の下方領域にある。
【0010】
なお、ストラットが鉛直方向と大きな角度を成すようにすることも考えられる。というのは、これによってクロスメンバーの支持が改善され、よってボディの剛性が向上するからである。しかしながら、自動車内の構造空間は限られているので、斜めすぎるストラットは通常不可能である。
【0011】
ストラットがそれぞれ対を成してクロスメンバーの前後に設けられているならば、荷物出し入れ開口部の内のり幅を阻害しないで特に高いボディ剛性が得られる。
【0012】
ストラットの少なくとも1つとクロスメンバーとの結合部位が車両長手方向中心面に対し側方へ車両外面方向へずれていれば、荷物の出し入れのための横断面はさらに拡大される。これにより車両長手方向中心面の領域に付加的な自由空間が生じる。
【0013】
本発明の有利な実施態様では、車両右側および左側のストラットは1つの部材から製造されており、その結果V字状のストラット部材が得られる。ストラットの上部端部部分が車両中心面の外側側方でクロスメンバーに当接していれば、一体のストラット部材は取り付け位置においてクロスメンバーに対し平行に延在する脚部を有し、この脚部は斜めに延びる2つのストラットを互いに結合させる。ストラット部材はたとえば長方形の横断面を持った中空異形材から形成させることができ、この場合ストラットの2つの傾斜部分は本来まっすぐに延びている半製品を曲げることにより得られる。
【0014】
クロスメンバーおよび/またはストラットがボディとねじにより結合されていれば、特に簡単な組み立てが得られる。クロスメンバーとストラットとの結合に対してもねじ止めが好ましい。
【0015】
請求項10に記載の本発明による解決手段では、クロスメンバーを車両ボディに結合させるため、ボディの右側面および左側面に受容部が設けられている。これらの受容部はそれぞれボディサイド構造部から内側へ突出している。したがって、コラム状の受容部が設けられている公知の技術水準に比べて、クロスメンバー下方に構造空間が得られる。この構造空間はたとえば車両アッセンブリの組み込みに利用することができる。
【0016】
クロスメンバーの端分を受容部の上に形状拘束的に差し込むことができるように、或いは、受容部のなかへ押し込むことができるように受容部が構成されていれば、車両へのクロスメンバーの取り付けが特に簡単になる。この場合クロスメンバーの挿入運動は鉛直方向に行うのが有利である。これとは択一的に、受容部がクロスメンバーとのねじ止めのために平らなねじ止め面を有していてもよい。
【0017】
受容部をできるだけ簡単に且つ低コストにボディサイド構造部と結合させることができるように、受容部が深絞りしたおよび/または面取りした薄板シェル部材として形成され、且つボディサイド構造部と同じ材料から成っているのが有利である。
【0018】
受容部は鋳造部品として実施されていてよく、たとえばアルミニウム合金のような軽金属材から実施されていてよい。
【0019】
技術水準からすでに公知であるように、クロスメンバーは貫通穴で定置のロールバーまたは高さ方向に変位可能なロールバーを受容するように構成されているのが有利である。これにより構造空間と重量の点でさらに利点が得られる。
【0020】
たとえば四角形の横断面を備えたクロスメンバーであれば、内側に閉じた中空空間が生じる。この中空空間は空気誘導ダクトとして利用できるので特に有利である。また、閉じた車両或いは閉じたカバーを備えたキャブリオレーの場合には、この中空空間を車内の通気または排気に利用することができる。
【0021】
請求項15に記載のように、クロスメンバーを車両ボディの外側で組み立てて1つのプリアッセンブリユニットを形成させることができるならば、製造コストおよび組み立て時間の点で有利である。プリアッセンブリユニットは一式の構造ユニットとして車両製造業者の製造ベルトコンベアに供給することができる。予組み立て範囲は、ストラットおよび/または転倒保護装置の一部または全部の構成要素および/またはたとえば制御器、スピーカー、ケーブルハーネス等の車両アッセンブリを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の可能な実施形態は図面に図示されており、次にこれを詳細に説明する。
図1は全体を1で示した、上開き車両(キャブリオレー)のボディを示している。両サイド構造部2の間には、車両横面内を水平方向に延びるクロスメンバー3が右側のボディ固定受容部4と左側のボディ固定受容部4との間に位置するようにほぼ胸高の高さで設けられている。クロスメンバー3はほぼ長方形の横断面を有し、且つ溝形横断面の上面5と下面6(図2を参照)とにそれぞれ貫通穴を有し、これらの貫通穴に全体を8で示した転倒保護装置のU字形のロールバー7が挿着されている。
【0023】
クロスメンバー3の前面15にも後面16にも(図2と図5をも参照)それぞれ右側のストラット9と左側のストラット9とが設けられている。これらのストラット9はクロスメンバー3に対しほぼ45゜の角度で延びている。ストラット9はクロスメンバーを補助的にボディで支持している。クロスメンバー3の両側へ斜め外側へ延びているストラット9の上部端部部分は、取り付け位置でほぼ水平方向に且つクロスメンバー3に対し平行に延びる脚部10を介して互いに結合されている。ストラット9と脚部10とはそれぞれ一体のストラット部材19によって形成されている。
【0024】
クロスメンバー3の前面15にも後面16にもストラット部材19を備えた対称構造により、クロスメンバー3とボディとの特に堅固な結合が得られるとともに、取り付け空間の必要量が非常に少なくなる。
【0025】
ロールバー7の使用位置において該ロールバー7を変位させるために用いられるエネルギーアキュムレータ(通常はコイルばね;図示せず)は、鉛直方向に延びている保持部13を介してクロスメンバー3と結合されているブラケット12で支持されている。
【0026】
図2は全体を20で示したプリアッセンブリユニットを示している。プリアッセンブリユニット20はクロスメンバー3と、転倒保護装置8と、ストラット部材19と、ボディ1に組み込む前に保持部13を備えているブラケット12とから構成される。プリアッセンブリユニット20に同様に配置することのできる他のアッセンブリは図2に図示していない。プリアッセンブリユニット20は、車両に取り付けるため、手動操作装置を用いて鉛直方向に上からボディ1内へ挿入する。この場合、クロスメンバー3の自由端部分21を、ボディサイド構造部2から内側へ突出している受容部4に取り付ける。なお、図示のものとは異なり、クロスメンバー3の前記端部部分21にたとえば軽金属鋳物から成る成形品を装着して、クロスメンバー3と受容部4との螺合を容易にするようにしてもよい。受容部4は鋼の薄板シェル部品として実施されており、薄鋼板から製造されているボディサイド構造部2との結合をできるだけ容易にすることができるようになっている。
【0027】
ストラット9の自由端部分22はブラケット23に終端を有する。ブラケット23はボディサイド構造部2のフレームサイドメンバー24の上に載置され、たとえば点溶接によりフレームサイドメンバー24と結合されている。クロスメンバー3とストラット部材19との結合はねじ25によって行なう。
【0028】
図3と図4が示すように、クロスメンバー3は、その自由端部分21を受容部4に押し込んだ後、受容部4とねじ止めする(ねじ26)。このため、受容部4は上開きの「押し込みポケット」として形成され、側壁30と底部31とを備えている。クロスメンバー3の自由端部分21は「押し込みポケット」の内部へ押し込まれてそこで形状拘束的に保持され、ねじ26で固定される。これとは択一的に、クロスメンバー3を受容部4の上に差し込んで取り付けてもよい。このような差し込み取り付けを可能にするには、クロスメンバー3の下面6を受容部の領域において一部切除する必要がある。さらに、プリアッセンブリユニット20を取り付けた後、ストラット9の自由端部分22をブラケット23を介してフレームサイドメンバー24とねじ止めさせる(ねじ27)。
【0029】
ねじ止め部(ねじ26または27)により修理を簡単に行うことができる。たとえば転倒保護装置8または付加装置が故障した場合、プリアッセンブリモジュール20を分解して簡単に修理を行うことができる。
【0030】
図5はクロスメンバー3とストラット9の断面図(断面=図1の車両長手方向中心面M)である。クロスメンバー3はほぼ長方形のアルミニウム製異形ビレット(Strangprofil)から成り、側長はほぼ140mm×90mm、壁厚はほぼ3mmである。異形ビレットは剛性を高めるためにエンボス加工部32を備えており、且つねじ25と26を受容するためにインサートナット33を有している。
【0031】
クロスメンバー3の内部の中空空間34は空気を誘導するために使用でき、特にキャブリオレーのカバーを閉じたときに乗員室Fを脱気するために使用でき、その結果別個に空気誘導ダクトを設けずに済み、空間構成、製造コスト、重量の点で有利である。
【0032】
ストラット部材19はそれぞれ鋼製の四角管から形成され、側長はほぼ50mm×12mm、壁厚はほぼ2mmである。
【0033】
特に図1からわかるように、本発明による構成により、クロスメンバー3の下方に大きな内のり幅(自由空間28)が提供され、乗員室Fと荷物室G(図5を参照)との間での荷物の出し入れに利用することができる。自由空間28はブラケット13により側方を制限される。クロスメンバー3の付近の領域29においてストラット9は斜めに延びているので、荷物の出し入れのための自由空間28をわずかに制限しているにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】乗員室と荷物室との間にあるクロスメンバー領域における車両ボディを走行方向とは逆の方向から見た斜視図である。
【図2】図1に対応する斜視図で、クロスメンバーとストラットと転倒防止装置とから成るプリアッセンブリユニットを車両ボディに組み込む前に走行方向から見た斜視図である。
【図3】クロスメンバーとボディサイド構造部との結合部位の拡大斜視図である。
【図4】図3に対応する図で、ストラットの自由端部分と車両ボディとの固定態様を示す図である。
【図5】車両長手方向中心面の領域におけるクロスメンバーの断面斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員室と荷物室との間の領域においてボディサイド構造部をほぼ胸高の高さで互いに結合させているクロスメンバーを備えた、車両のボディ、特に上開きの乗用車のボディにおいて、
少なくとも1つの左側および右側のストラット(9)が設けられ、各ストラット(9)はその上部端部部分の領域においてクロスメンバー(3)と結合され、斜め下方へ車両外面の方向へ延びており、且つその下部端部部分(22)がボディ(1)と結合されていることを特徴とするボディ。
【請求項2】
ストラット(9)がクロスメンバー(3)に対しほぼ45゜で延びていることを特徴とする、請求項1に記載のボディ。
【請求項3】
ストラット(9)の少なくとも1つの端部部分が取り付け状態でほぼ鉛直方向においてクロスメンバー(3)とボディとの結合点の下方にあることを特徴とする、請求項1または2に記載のボディ。
【請求項4】
走行方向に見て右側および左側のストラット(9)がそれぞれクロスメンバー(3)の前後に設けられていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一つに記載のボディ。
【請求項5】
ストラットの上部端部部分が車両中心面(M)の外側側方でクロスメンバー(3)に当接していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載のボディ。
【請求項6】
右側および左側のストラット(9)がストラット部材(19)の形態で一体に形成されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一つに記載のボディ。
【請求項7】
ストラット部材(19)がボディ(1)への取り付け位置でほぼ水平方向に延在してストラット(9)の上部端部部分を互いに結合させている脚部(10)を有していることを特徴とする、請求項6に記載のボディ。
【請求項8】
ストラット(9)が閉じた四角形横断面を有していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一つに記載のボディ。
【請求項9】
ストラット(9)がねじ(25,27)によりボディ(1)および/またはクロスメンバー(3)と結合されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一つに記載のボディ。
【請求項10】
乗員室と荷物室との間の領域においてボディサイド構造部をほぼ胸高の高さで互いに結合させているクロスメンバーを備えた、車両のボディ、特に上開きの乗用車のボディにおいて、
ボディサイド構造部(2)からほぼ水平方向内側へクロスメンバー(3)のための受容部(4)が突出していることを特徴とするボディ。
【請求項11】
クロスメンバー(3)を受容部(4)内へ形状拘束的に押し込み可能であるように、または、受容部(4)の上へ差し込み可能であるように、受容部(4)が成形されていることを特徴とする、請求項10に記載のボディ。
【請求項12】
受容部がフランジ状のねじ止め面を有していることを特徴とする、請求項10に記載のボディ。
【請求項13】
受容部(4)を薄板シェルによって形成させることを特徴とする、請求項10から12までのいずれか一つに記載のボディ。
【請求項14】
クロスメンバー(3)が閉じた異形中空部材であり、その中空空間(34)が乗員室(F)の通気および排気用の空気誘導ダクトとして用いられていることを特徴とする、請求項10から13までのいずれか一つに記載のボディ。
【請求項15】
車両のボディへの取り付けのためにボディの外側で組み立てられる、請求項1から14までのいずれか一つに記載のボディのためのプリアッセンブリユニットにおいて、
クロスメンバー(3)にストラット(9)および/または転倒保護装置(8)および/または車両アッセンブリが予め取り付けられていることを特徴とするプリアッセンブリユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−522993(P2007−522993A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553557(P2006−553557)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001731
【国際公開番号】WO2005/080142
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(391009671)バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト (194)
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】