説明

車両の上部車体構造

【課題】車体を効果的に軽量化してコストダウンを図りつつ、乗員用シートの支持剛性を効果的に向上できるようにする。
【解決手段】車室の底面を形成するフロアパネル2の上方に少なくとも運転席シート3と助手席シート4とが車幅方向に並設された車両の上部車体構造であって、助手席シート4は、上記フロアパネル2に固定されるシートフレーム部材24と、該シートフレーム部材24に支持されたシートバック19等からなるシート本体部とを具備し、車室の内壁6a,6bを構成する車体部材に上記シートフレーム部材24が連結された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の底面を形成するフロアパネルの上方に少なくとも運転席シートと助手席シートとが車幅方向に並設された車両の上部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、フロアパネル上に運転席および助手席が設置された所謂ツーシータタイプのスポーツカーにおいて、ダッシュパネルの凹部内にエンジン等からなる駆動装置を配設し、該駆動装置の側方のダッシュパネルの前方にバッテリを配設し、バッテリ前端位置を駆動装置よりも前方に位置させることで、駆動装置とバッテリとの両者を後方に配置し、これによりヨー慣性モーメントの低減を図って、操縦安定性および車両の運動性能の向上を図り、しかも衝突荷重をバッテリで受け止めて、衝突時に駆動装置の後退量を減少させて、安全性を向上させることが行われている。
【0003】
また、下記特許文献2に示されるように、所謂オープンカーにおいて、その転倒時に乗員の頭部を保護するロールバーやサイドパネルからの入力荷重を、該ロールバー、クロスバーおよびサイドパネル間で有効に分散させることを目的として、上記ロールバー、クロスバーおよびサイドパネルを強固に結合してロールバー構造の耐力を向上させることができる車両のロールバー構造が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−28911号公報
【特許文献2】特開2006−21607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ツーシータタイプのスポーツカー等においては、車体を軽量化してその走行性を向上させることが特に望まれるとともに、フロアパネル上に設置された乗員用シートの支持剛性を効果的に向上させることが重要な課題である。上記特許文献1に開示された車両では、車両用補機の設置スペースや物品等の収納スペースを確保するために様々な工夫が凝らされているが、車体を軽量化しつつ、乗員用シートの支持剛性を効果的に向上させる点については特に考慮されていなかった。
【0006】
また、上記特許文献2に開示されたロールバー構造によれば、車両の横転時に上記ロールバーが受ける荷重や、車両の側突時に上記サイドパネルが受ける荷重を適正に分散させて支持することかできる。しかし、特許文献2に開示された車両においても、車体を軽量化しつつ、乗員用シートの支持剛性を効果的に確保し、車両の走行時に乗員用シートに着座した乗員を安定して保持できようにする点について特に考慮されていなかった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車体を効果的に軽量化してコストダウンを図りつつ、乗員用シートの支持剛性を効果的に向上させることができる車両の上部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車室の底面を形成するフロアパネルの上方に少なくとも運転席シートと助手席シートとが車幅方向に並設された車両の上部車体構造であって、助手席シートが、上記フロアパネルに固定されるシートフレーム部材と、該シートフレーム部材に支持されたシート本体部とを具備し、車室の内壁を構成する車体部材に上記シートフレーム部材が連結されたものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の上部車体構造において、上記助手席シートの側方に配設された車室の側壁パネルからなる車体部材に上記シートフレーム部材が連結されたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の上部車体構造において、上記助手席シートの上方に配設された車幅方向に延びるリヤヘッダからなる車体部材に上記シートフレーム部材が連結されたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の上部車体構造において、上記助手席シートには、該助手席シートに着座した乗員を保護するロールバー部材が上方に延びるように設置され、該ロールバー部材が上記シートフレーム部材に連結されたものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の上部車体構造において、上記ロールバー部材とシートフレーム部材とが一体的に形成され、該シートフレーム部材を介して該ロールバー部材が上記車体部材に連結されたものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、上記請求項4または5に記載の車両の上部車体構造において、上記ロールバー部材が、助手席シートの上方から運転席シートの上方に向けて車幅方向に延びるように設置されることにより、該運転席シートに着座した乗員が保護されるように構成されたものである。
【0014】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6の何れか1項に記載の車両の上部車体構造において、上記車両が、車室上方にルーフ部材が開閉可能に設けられたオープンカーであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、上記助手席シートのシート本体部に作用した荷重を、シートフレーム部材から車室の内壁に伝達して支持することができるため、車体重量を顕著に増大させることなく、車両の走行時上記助手席シートに着座した乗員の着座姿勢を安定して保持できるとともに、車両の衝突時等に該乗員の安全性を効果的に確保できる等の利点がある。
【0016】
請求項2に係る発明では、助手席シートの側方に配設された車室の側壁パネルからなる車体部材に上記シートフレーム部材を連結したため、該シートフレーム部材を、車体の補強材として効果的に利用することができ、車体重量を増大させることなく、その剛性を充分に確保できるという利点がある。
【0017】
請求項3に係る発明では、上記助手席シートの上方に配設された車幅方向に延びるリヤヘッダからなる車体部材に上記シートフレーム部材を連結したため、上記シートバックの側方にシートフレーム部材を連結するためのサイドパネル等が存在しない場合においても、上記助手席シートの支持剛性を効果的に向上させることができる。
【0018】
請求項4に係る発明では、上記助手席シートに、該助手席シートに着座した乗員を保護するロールバー部材を上方に延びるように設置し、該ロールバー部材を上記シートフレーム部材に連結したため、該シートフレーム部材を上記ロールバー部材の支持部材として利用することにより、該ロールバー部材を簡単かつ適正に設置して、車両の横転時等に助手席シートに着座した乗員を効果的に保護できるという利点がある。
【0019】
請求項5に係る発明では、上記ロールバー部材とシートフレーム部材とを一体的に形成し、該シートフレーム部材を介して該ロールバー部材を上記車体部材に連結するように構成したため、上記シートフレーム部材およびロールバー部材からなる構造体を容易に形成できるとともに、その強度を効果的に向上できる等の利点がある。
【0020】
請求項6に係る発明では、上記ロールバー部材を、助手席シートの上方から運転席シートの上方に向けて車幅方向に延ばすように設置することにより該運転席シートに着座した乗員を保護するように構成したため、助手席シートに着座した乗員を保護するために設置された上記ロールバー部材に、運転席シートに着座した運転者を保護する機能を兼ね備えさせることができるため、簡単な構成で運転席シートおよび助手席シートに着座した両方の乗員を効果的に保護できるという利点がある。
【0021】
請求項7に係る発明では、車室の上方にルーフ部材が開閉可能に設けられたオープンカーからなる車両、つまりその走行性が重視されるスポーツカーに上記構成を採用したため、車体重量を軽量して走行性を効果的に向上させることができるとともに、上記シートフレーム部材により車体を効果的に補強することができ、車両の側突時等に入力された衝撃荷重が車室内に及ぶのを防止して安全性を充分に確保できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る車両の上部車体構造を備えた車両の概略構成を示す平面図である。
【図2】運転席シートおよび助手席シートの設置状態を示す正面断面図である。
【図3】運転席シートの設置状態を示す側面断面図である。
【図4】助手席シートの設置状態を示す側面断面図である。
【図5】運転席シートを前方に移動させた状態を示す平面図である。
【図6】シートフレーム部材の具体的構成を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る車両の上部車体構造の別の実施形態を示す図2相当図である。
【図8】上記実施形態におけるロールバー部材の具体的構成を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る車両の上部車体構造のさらに別の実施形態を示す側面図である。
【図10】上記実施形態における運転席シートおよび助手席シートの設置状態を示す正を示す正面断面図である。
【図11】シートフレーム部材をリヤヘッダに連結した状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図6は、本発明に係る車両の上部車体構造の実施形態を示している。本実施形態に係る車両は、その車室1内のフロアパネル2上に運転席シート3および助手席シート4が左右に並設されるとともに、車室上方にルーフ部材(図示せず)が開閉可能に設置された所謂ツーシータタイプのオープンカーである。上記フロアパネル2の左右両側方部には、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドシル5が設置されるとともに、上記フロアパネル2の車幅方向中央部には、車室内側(上方)に向けて突出するトンネル部7が車両の前後方向に延びるように設置されている。また、上記車室1の側面部には、乗降用の開口部が開閉するサイドドア(図示せず)が設けられるとともに、その後方に車室1の内壁を構成するサイドパネル6a,6bからなる車体部材が配設されている。
【0024】
上記車室1内の左側部位(図2で示す正面視では右側部位)には、運転席シート3を移動可能に支持する左右一対のシートレール8が車両の前後方向に延びるように設置されている。また、車室1内の右側部位(図2で示す正面視では左側部位)には、フロアパネル2を上方に膨出させたフロア膨出部9が形成され、その上に助手席シート4が取り付けられている。上記運転席シート3および助手席シート4の設置部の後方側には、斜め上方に向けてキックアップしたキックアップ部10と、その上端部から車両の後方側に延びるリヤフロアパネル11とが連設されている。また、上記リヤフロアパネル11の前部下面には、車幅方向に延びる閉断面を形成するリヤクロスメンバ12が配設されている。
【0025】
上記運転席シート3は、図3に示すように、車室1内のフロアパネル2上に設置された上記シートレール8に沿って車両の前後方向にスライド可能に支持されたシートクッション13と、その後端部に立設されたシートバック14と、上記シートクッション13の後端部側面に取り付けられてシートバック14を傾動可能に支持するリクライニング機構15とを備えている。そして、上記シートレール8に沿って運転席シート3のシートクッション13をスライド変位させることにより、図5に示すように、運転席シート3を、ステアリングホイール16およびインストルメントパネル17に近接させた最前方位置から、図1および図3に示すように、上記フロアパネル2のキックアップ部10に近接させた最後方位置まで前後移動させることにより、運転席シート3に着座した運転者の着座位置を、その体格等に応じて調整できるように構成されている。
【0026】
一方、助手席シート4は、図4に示すように、上記フロア膨出部9上に載置されたシートクッション18と、該シートクッション18の後方部から上方に立設されたシートバック19と有している。そして、上記助手席シート4の設置位置は、上記運転席シート3の最前方位置よりも後方側、具体的には、上記シートレール8により前後移動可能に支持された運転席シート3の最後方位置に対応した車室1の後方部位に設定されている。このように助手席シート4のシートクッション18およびシートバック19が、上記フロアパネル2の後端部に設けられたキックアップ部10に近接した位置に支持されることにより、上記シートクッション18の前後移動が規制されるとともに、上記シートバック19の傾動変位が規制された状態で、上記シートレール8により前後移動可能に支持された運転席シート3の最前方位置よりも後方側において、上記助手席シート4がフロアパネル2に固定されている。
【0027】
また、上記助手席シート4は、そのシートバック19を支持する丸パイプ材等からなるシートフレーム部材24を具備している。該シートフレーム部材24は、シートバック19の上辺部に沿って車幅方向に延びる横部材25と、その車幅方向の外側端部から下方に延びる側方部材26と、上記横部材25の車幅方向の内側端部を支持する縦部材27とを有している。上記側方部材26は、その下端部に設けられた取付ブラケット28を介してフロア膨出部9の後部上面にボルト止めされる等の手段で固定されている。
【0028】
上記シートフレーム部材24の縦部材27は、図2および図6に示すように、正面視で運転席シート3と助手席シート4との間において上下方向に延びるように設置され、上記縦部材27の下端部には、上記リヤクロスメンバ12により補強されたリヤフロアパネル11の前端部上面にボルト止めされる等の手段で固定される取付ブラケット29が設けられている。
【0029】
上記縦部材27の上部には助手席シート4に着座した乗員を保護するロールバー部材30が一体的に形成されている。このロールバー部材30は、上記縦部材27に上端部に連設されて助手席シート4の上方に延びる上部部材31と、その上端部からシートバック19の中央部に向けて斜め下方に延びる斜め部材32とを有している。上記斜め部材32の下部は、助手席シート4のシートバック19内に導入され、シートフレーム部材24の横部材25に溶接される等の手段で固定されている。
【0030】
また、上記シートフレーム部材24は、側方部材26から、助手席シート4の側方に位置するサイドパネル6a側(正面視で左側)に向けて突設された角パイプ材等からなる第1連結部材34と、上記縦部材27から、運転席シート3の後方側を通って該運転席シート3の側方に位置するサイドパネル6b側(正面視で右側)に突設された角パイプ材等からなる第2連結部材35とを具備している。
【0031】
そして、上記第1連結部材34の先端部に設けられた取付フランジ部36が、助手席シート4の側方に位置するサイドパネル6aにボルト止めされるとともに、上記第2連結部材35の先端部に設けられた取付フランジ部37が、運転席シート4の側方に位置するサイドパネル6bにボルト止めされる等により、上記サイドパネル6a,6bからなる車体部材(車室1の内壁)にシートフレーム部材24が連結されるように構成されている。
【0032】
また、図4に示すように、上記助手席シート4の設置部に位置するフロア膨出部9の下方には、取付具38を介して車載バッテリ39等からなる車両用補機が設置されている。なお、上記フロア膨出部9の下方に配設される車両用補機としては、上記車載バッテリ39以外にも、電気自動車等において使用される電力貯蔵用キャパシタ、またはハイブリッド車両においてその動力源用主電池の高電圧を低電圧に変換して補機電池を充電するDC−DCコンバータからなるハイブリッド車両用コンバータ等が考えられる。
【0033】
上記のように車室の底面を形成するフロアパネル2の上方に運転席シート3と助手席シート4とが車幅方向に並設された車両の上部車体構造において、助手席シート4が、上記フロアパネル2に固定されるシートフレーム部材24と、該シートフレーム部材24に支持されたシートバック19からなるシート本体部とを具備し、車室1の内壁を構成する車体部材に上記シートフレーム部材24を連結したため、車体を効果的に軽量化してコストダウンを図りつつ、助手席シート4の支持剛性を効果的に向上させることができるという利点がある。
【0034】
すなわち、上記実施形態では、シートフレーム部材24を構成する側方部材26に、正面視で左側へ突出する第1連結部材34を設けるとともに、上記シートフレーム部材24を構成する縦部材27に、正面視で右側へ突出する第2連結部材35を設け、上記第1,第2連結部材34,35の先端部をそれぞれ助手席シート4の側方に位置するサイドパネル6aおよび運転席シート4の側方に位置するサイドパネル6bに連結するように構成したため、上記助手席シート4のシートバック19に作用した荷重を、シートフレーム部材24から上記サイドパネル6a,6b(車室1の内壁)に伝達して支持することができる。したがって、車体重量を顕著に増大させることなく、車両の走行時に上記助手席シート4に着座した乗員の着座姿勢を安定して保持できるとともに、車両の衝突時等に該乗員の安全性を効果的に確保できるという利点がある。
【0035】
そして、上記のように運転席シート3の下方には、該運転席シート3を車両の前後方向に移動可能に支持するシートレール8をフロアパネル2上に設置し、かつ助手席シート4の下方に、フロアパネル2を上方に膨出させたフロア膨出部9を形成し、このフロア膨出部9に上記助手席シート4を固定したため、車体を効果的にコンパクト化してコストダウンを図りつつ、上記フロア膨出部9の下方スペースを有効に利用して車両用補機等を効率よく設置することができる。
【0036】
すなわち、上記実施形態では、助手席シート4を車室1の後方部において固定したため、この助手席シート4用のシートレールを省略してその分だけ車体を軽量化することができるとともに、材料費を節約して製造コストを安価に抑制することができる。また、上記助手席シート4をシートレールにより前後移動可能に支持した場合のように、助手席シート4を前後移動させる際に車体との干渉を回避するために助手席シート4のレイアウトを工夫する必要がないという利点がある。しかも、上記フロア膨出部9の下方部を有効に活用することにより、車体をコンパクト化したツーシータタイプのスポーツカー等においても、上記車載バッテリ39等からなる車両用補機の収納スペースを充分に確保することができる。
【0037】
しかも、上記第1,2連結部材34,35等を介して上記サイドパネル6a,6bからなる車体部材(車室1の内壁)に連結されたシートフレーム部材24を、車体の補強材として利用することができるため、車体重量を増大させることなく、その剛性を充分に確保することができる。特に、車室1の上方にルーフ部材が開閉可能に設けられたオープンカーからなる車両、つまりその走行性が重視されるスポーツカーに本発明を適用した場合には、車体重量を軽量して走行性を効果的に向上させることができるとともに、車両の側突時等に入力された衝撃荷重が車室内に及ぶのを効果的に防止して安全性を充分に確保できるという利点がある。
【0038】
また、上記実施形態に示すように、助手席シート4の上方に延びるように設置されて助手席シート4に着座した乗員を保護するロールバー部材30と、上記助手席シート4のシートバック19を補強するシートフレーム部材24とを一体的に連結した構成によれば、該シートフレーム部材24を上記ロールバー部材30の支持部材として利用することができるため、上記ロールバー部材30を簡単かつ適正に設置して、車両の横転時等に助手席シート4に着座した乗員を効果的に保護できるという利点がある。
【0039】
なお、パイプ材等により上記シートフレーム部材24と、ロールバー部材30とを一体的に形成してなる上記実施形態に代え、上記シートフレーム部材24とロールバー部材30とを別体に形成し、これらをボルト止めする等の手段で連結することも可能である。また、上記シートフレーム部材24を丸パイプ材により構成した上記実施形態に代え、鋼板等のプレート材により上記助手席シート4のシートフレーム部材を構成するとともに、該シートフレーム部材に上記ロールバー部材30を連結した構造とすることも可能である。
【0040】
上記実施形態のように、シートフレーム部材24とロールバー部材30とを一体的に形成するとともに、上記シートフレーム部材24および第1,2連結部材34,35を介して該ロールバー部材30を上記サイドパネル6a,6bからなる車体部材(車室1の内壁)に連結するように構成した場合には、上記シートフレーム部材24およびロールバー部材30からなる構造体を容易に形成できるとともに、その強度をより効果的に向上できる等の利点がある。
【0041】
また、上記実施形態では、上記第1,2連結部材34,35等を介してシートフレーム部材24の左右両側部を上記サイドパネル6a,6bからなる車体部材(車室1の内壁)にそれぞれ連結するように構成した例について説明したが、この構成に代え、上記第1,2連結部材34,35の一方を省略し、シートフレーム部材24の左側部または右側部の一方のみを車室1の内壁に連結した構造としてもよい。
【0042】
さらに、上記助手席シート4のシートバック19を支持するシートフレーム部材24を設けてなる上記実施形態に代え、助手席シート4のシートクッション18からなるシート本体部を支持するシートフレーム部材を設け、該シートクッション18用のシートフレーム部材を上記サイドパネル6a,6bからなる車体部材(車室1の内壁)に連結した構造としてもよい。
【0043】
また、図7および図8に示すように、上記助手席シート4のシートフレーム部材24を構成する横部材40を助手席シート4の設置部から運転席シート3の設置部に向けて車幅方向に延びるように設置するとともに、その上部に一体的に連結されたロールバー部材41を、助手席シート4の上方から運転席シート3の上方に向けて車幅方向に延びるように設置した構造としてもよい。
【0044】
そして、上記横部材40の左右両端部を支持する側方部材42および縦部材43に設けられた第1,第2連結部材44,45によりシートフレーム部材24を上記サイドパネル6a,6b等からなる車体部材(車室1の内壁)にそれぞれ連結するように構成するように構成すれば、助手席シート4に着座した乗員を保護するために設置された上記ロールバー部材41に、運転席シート3に着座した運転者を保護する機能を兼ね備えさせることができるため、簡単な構成で運転席シート3および助手席シート4に着座した乗員の両方を効果的に保護できるという利点がある。
【0045】
また、上記実施形態では、車室1内のフロアパネル2上に運転席シート3および助手席シート4だけが設置されたツーシータタイプで、ルーフパネルおよびこれを支持するピラーのないオープンカーに本発明を適用した例について説明したが、これに限られず、セダンタイプまたはハッチバックタイプ等の種々の車両についても、本発明を適用可能である。
【0046】
例えば、図9および図10に示すように、フロアパネル2上に運転席シート3および助手席シート4からなる左右一対の前列シートが並設されるとともに、その後方側に左右一対の後列シート46が並設され、かつ上記助手席シート4の上方にリヤヘッダ47が車幅方向に延びるように設置されたセダンタイプ等の車両において、上記助手席シート4のシートバック19の上辺部に沿って車幅方向に延びる横部材48と、その車幅方向の外側端部から下方に延びる側方部材49と、上記横部材48の車幅方向の内側端部を支持する縦部材50とを有するシートフレーム部材51を設け、該シートフレーム部材51を上記リヤヘッダ47からなる車体部材に上記を連結した構造としてもよい。
【0047】
すなわち、図11に示すように、上記側方部材49の上端から上方に延びるように連設された第1連結部52の上端部に形成された平坦部を、リヤヘッダ47の下面に固定されたアングル材54にボルト止めするとともに、上記側方部材49の上端から上方に延びるように連設された第2連結部53の上端部に形成された平坦部を、リヤヘッダ47の下面に固定されたアングル材54にボルト止めする等により、車室1の上方に設置されたルーフ部の内壁を構成する上記リヤヘッダ47にシートフレーム部材51を連結するように構成してもよい。この構成によれば、上記シートバック19の側方にシートフレーム部材51を連結するためのサイドパネル等が存在しない場合においても、上記助手席シート4の支持剛性を効果的に向上させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 車室
2 フロアパネル
3 運転席シート
4 助手席シート
6a,6b サイドパネル(車室の内壁)
19 シートバック(シート本体部)
24 シートフレーム部材
30,41 ロールバー部材
47 リヤヘッダ(車体部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の底面を形成するフロアパネルの上方に少なくとも運転席シートと助手席シートとが車幅方向に並設された車両の上部車体構造であって、助手席シートは、上記フロアパネルに固定されるシートフレーム部材と、該シートフレーム部材に支持されたシート本体部とを具備し、車室の内壁を構成する車体部材に上記シートフレーム部材が連結されたことを特徴とする車両の上部車体構造。
【請求項2】
上記助手席シートの側方に配設された車室の側壁パネルからなる車体部材に上記シートフレーム部材が連結されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の上部車体構造。
【請求項3】
上記助手席シートの上方に配設された車幅方向に延びるリヤヘッダからなる車体部材に上記シートフレーム部材が連結されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の上部車体構造。
【請求項4】
上記助手席シートには、該助手席シートに着座した乗員を保護するロールバー部材が上方に延びるように設置され、該ロールバー部材が上記シートフレーム部材に連結されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の上部車体構造。
【請求項5】
上記ロールバー部材とシートフレーム部材とが一体的に形成され、該シートフレーム部材を介して該ロールバー部材が上記車体部材に連結されたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の上部車体構造。
【請求項6】
上記ロールバー部材が、助手席シートの上方から運転席シートの上方に向けて車幅方向に延びるように設置されることにより、該運転席シートに着座した乗員が保護されるように構成されたことを特徴とする請求項4または5に記載の車両の上部車体構造。
【請求項7】
上記車両が、車室上方にルーフ部材が開閉可能に設けられたオープンカーであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の車両の上部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−157007(P2011−157007A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21393(P2010−21393)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】