説明

車両の下部車体構造

【課題】サイドシルの車室内側に沿って前後方向に延びてシートが取付けられるシートサポートメンバアウタを設け、このシートサポートメンバアウタに一端が接続されトンネル部に向けて延びるクロスメンバを前後に離間させて複数も設けることで、シートの配設と、側突時の車体剛性確保との両立を図ることができる車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【解決手段】前後方向に延びる左右一対のサイドシル1,1間にフロアパネル2が設けられ、フロアパネル2の中央部に前後方向に延びるトンネル部3が設けられ、サイドシル1とトンネル部3との間に乗員用のシート25が配設される車両の下部車体構造であって、サイドシル1の車室内側に沿って前後方向に延びてシート25が取付けられるシートサポートメンバアウタ9を設け、シートサポートメンバアウタ9に一端が接続されトンネル部3に向けて延びるクロスメンバ11,12を前後に離間させて複数配設したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドシル間にフロアパネルが設けられ、このフロアパネルの中央部に車両の前後方向に延びるトンネル部が設けられて、サイドシルとトンネル部との間に乗員用のシートが配設されたような車両の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両の下部車体構造としては特許文献1、2に開示された構造がある。
【0003】
すなわち、これら各特許文献1、2に開示された構造は、その何れもが、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドシルを設け、これら一対のサイドシル間にフロアパネルを設けると共に、このフロアパネルの中央部には、車両の前後方向に延びるトンネル部を設け、またフロアパネル上にはサイドシルとトンネル部とを車幅方向に接続する複数のクロスメンバを前後方向に離間させて配設し、さらに、前方のクロスメンバと後方のクロスメンバとの間には、乗員用のシートを前後方向に案内する一対のシートレールを設けたものである。
【0004】
しかし、このような従来構造においては、側突時の車体剛性が不充分であった。また上記各特許文献に開示されたものは、センタピラーを有する車体構造であるが、乗員の乗降性を考慮してセンタピラーレスの車体構造に上述の下部車体構造を採用する場合には、一般にベルトインシート(シートにシートベルトを巻取るリトラクタが内蔵されたタイプのシート)が用いられ、この場合、シートおよびシートベルトの荷重を前後のクロスメンバで分担させる構造では、車両衝突時にクロスメンバが変形する問題点があった。
【0005】
また、従来の車両の下部車体構造としては上記特許文献1、2に開示された構造の他に、図16に示す構造のものがある。
つまり、同図に示すように、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドシル100,100を設け、これら一対のサイドシル100,100間にフロアパネル101を略水平に設け、このフロアパネル101の中央部には、車室内側に突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部102を設けている。
【0006】
また、サイドシル100の車室内側に沿って前後方向に部分的に延びるポケットロアレール103,103を設け、フロアパネル101上の前方部にはサイドシル100とトンネル部102とを車幅方向に接続するクロスメンバ104を配設し、フロアパネル101上の後方部にはポケットロアレール103とトンネル部102とを車幅方向に接続するクロスメンバ105を配設している。
【0007】
そして、前後に離間配置されたクロスメンバ104,105間には、乗員用のシートを前後方向に案内する一対のシートレール106,106を設けたものである。
【0008】
図16に示す従来構造によれば、上記各特許文献1、2に開示された構造と比較して、ポケットロアレール103を設けた分だけ、若干車体剛性が向上するものの、側突時の車体剛性については未だ不充分であった。
【0009】
また、一対のシートレール106,106が前後のクロスメンバ104,105に接続されている関係上、センタピラーレスの車両で、かつベルトインシートを搭載した場合には、前述同様にして、車両衝突時にクロスメンバが変形する問題点があった。
【特許文献1】特開2005−247003号公報
【特許文献2】特開2000−203449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明は、サイドシルの車室内側に沿って前後方向に延びてシートが取付けられるシートサポートメンバアウタを設け、このシートサポートメンバアウタに一端が接続されトンネル部に向けて延びるクロスメンバを前後に離間させて複数も設けることで、シートの配設と、側突時の車体剛性確保との両立を図ることができる車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による車両の下部車体構造は、前後方向に延びる左右一対のサイドシル間にフロアパネルが設けられ、該フロアパネルの中央部に前後方向に延びるトンネル部が設けられ、上記サイドシルと上記トンネル部との間に乗員用のシートが配設される車両の下部車体構造であって、上記サイドシルの車室内側に沿って前後方向に延びて上記シートが取付けられるシートサポートメンバアウタを設け、該シートサポートメンバアウタに一端が接続され上記トンネル部に向けて延びるクロスメンバを前後に離間させて複数配設したものである。
【0012】
上記構成によれば、サイドシル(車体剛性部材)の車室内側に沿って前後方向に延びるシートサポートメンバアウタを設け、このシートサポートメンバアウタにシートを取付けるように構成したので、シートの配設を高い取付け剛性にて行なうことができる。
【0013】
また、シートサポートメンバアウタとトンネル部(車体剛性部材)との間には前後に離間する複数のクロスメンバ(車体剛性部材)を配設したので、側突時の車体剛性確保を図ることができる。
要するに、シートの配設と、側突時の車体剛性確保との両立を図ることができる。
【0014】
さらに、シートおよびシートベルトの荷重は、シートサポートメンバアウタ、サイドシル、クロスメンバ、トンネル部(これらの部材は全て車体剛性部材)にて分担できるので、車両側突時のクロスメンバの変形を防止することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記トンネル部に沿って前後方向に延びて上記シートが取付けられるシートサポートメンバインナを設け、該シートサポートメンバインナに上記クロスメンバの車室内側端部を接続したものである。
【0016】
上記構成によれば、前後に離間する複数のクロスメンバが、サイドシルに沿うシートサポートメンバアウタと、トンネル部に沿うシートサポートメンバインナとの間に接続されるので、車体剛性の向上を図ることができ、側突に対する耐力も向上し、かつシートはシートサポートメンバアウタとシートサポートメンバインナとに取付けられるので、シートの取付け剛性の向上をも図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記複数のクロスメンバは前方に配設されたクロスメンバに比較して、後方に配設されたクロスメンバの断面が小さく設定されたものである。
【0018】
上記構成によれば、シートの配設と、側突時の車体剛性確保とを図りつつ、後方のクロスメンバを小さくしたので、後席乗員の足元スペースを確保することができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記シートサポートメンバアウタと上記シートサポートメンバインナには上記シートのシートレールがそれぞれ取付けられたものである。
【0020】
上記構成によれば、スライド式のシートに対応してシートレールが取付けられ、シートスライドと車体剛性の確保とを両立することができる。特に、シートレールは前後方向に延びるシートサポートメンバアウタとシートサポートメンバインナとにそれぞれ取付けられるので、ボルト、ナット等の取付け部材を用いて複数の取付け箇所にてシートレールを取付ける場合にあっても、該シートレールを好適な前後位置に取付け固定することができる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、上記トンネル部に沿って前後方向に延びるトンネルメンバが設けられ、上記シートサポートメンバインナはフロアパネルとトンネルメンバとの間に接続されたものである。
【0022】
上記構成によれば、フロア剛性、車体剛性の向上を図るトンネルメンバと、フロアパネルとに上記シートサポートメンバインナを接続したので、シートの取付け剛性および側突時の車体剛性のさらなる向上を図ることができる。
【0023】
この発明の一実施態様においては、上記フロアパネルの後部には上方に段上げされたキックアップ部が設けられ、上記シートサポートメンバアウタの後端部は、該キックアップ部の前壁に接続されたものである。
【0024】
上記構成によれば、シートサポートメンバアウタを剛性が高いキックアップ部に接続したので、車体剛性をより一層向上させることができ、また、シートおよびシートベルトの荷重を、シートサポートメンバアウタ、サイドシル、クロスメンバ、トンネル部のみならずキックアップ部においても分担することができる。さらに、上述のシートサポートメンバアウタはそれぞれ車体剛性部材としてのサイドシルとキックアップ部とに接続されることになり、充分な車体剛性を確保することができる。
【0025】
この発明の一実施態様においては、上記フロアパネルの後部には上方に段上げされたキックアップ部が設けられ、上記シートサポートメンバインナの後端部は、該キックアップ部の前壁に接続されたものである。
【0026】
上記構成によれば、シートサポートメンバインナを剛性が高いキックアップ部に接続したので、車体剛性をより一層向上させることができ、また、シートおよびシートベルトの荷重を、シートサポートメンバアウタ、シートサポートメンバインナ、サイドシル、クロスメンバ、トンネル部のみならずキックアップ部においても分担することができる。さらに、上述のシートサポートメンバインナはそれぞれ車体剛性部材としてのトンネル部とキックアップ部とに接続されることになり、充分な車体剛性を確保することができる。
【0027】
この発明の一実施態様においては、上記フロアパネルの側方には、仕切りのない乗降口が設けられたものである。
上記構成によれば、仕切りのない乗降口つまりセンタピラーレスの乗降口を設けると、乗員の乗降性が向上する一方で、車体剛性が低下するが、上記各構成により車体剛性を確保することができる。
【0028】
この発明の一実施態様においては、上記シートにはシートベルトを巻取るリトラクタが内蔵されたものである。
上記構成によれば、シートベルトを巻取るリトラクタが内蔵されたシート、つまり、ベルトインシートタイプのシートであっても、上記各構成により、シートおよびシートベルトの荷重を車体剛性部材としてのシートサポートメンバアウタ、サイドシル、クロスメンバ、トンネル部に分担することができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、サイドシルの車室内側に沿って前後方向に延びてシートが取付けられるシートサポートメンバアウタを設け、このシートサポートメンバアウタに一端が接続されトンネル部に向けて延びるクロスメンバを前後に離間させて複数設けたので、シートの配設と、側突時の車体剛性確保との両立を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
シートの配設と、側突時の車体剛性確保との両立を図るという目的を、前後方向に延びる左右一対のサイドシル間にフロアパネルが設けられ、フロアパネルの中央部に前後方向に延びるトンネル部が設けられ、サイドシルとトンネル部との間に乗員用のシートが配設されるものにおいて、サイドシルの車室内側に沿って前後方向に延びてシートが取付けられるシートサポートメンバアウタを設け、シートサポートメンバアウタに一端が接続されトンネル部に向けて延びるクロスメンバを前後に離間させて複数配設するという構成にて実現した。
【実施例】
【0031】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の下部車体構造を示し、図1は下部車体構造の全体を示す概略斜視図、図2は図1の要部の平面図、図3は図2の車両右側部を拡大して示す半裁平面図であって、図1〜図3において、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドシル1,1(但し、図面においてはサイドシルインナのみを示す)間にフロアパネル2を略水平状に設けて、車体の下面(床面)を構成している。
【0032】
上述のフロアパネル2の中央部には、車室内側に突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部3を一体または一体的に形成し、このトンネル部3の上部には該トンネル部3に沿って車両の前後方向に延びるトンネルメンバ4(いわゆるハイマウント・バックボーン・フレーム)を設けている。
【0033】
このトンネルメンバ4は、フロア剛性および車体剛性の向上を図る車体剛性部材である。また、このトンネルメンバ4としては、ダッシュロアパネルから後述するキックアップ部5にわたって一体のトンネルメンバ4を用いてもよく、前後に2分割されたトンネルメンバ4を用いてもよい。
【0034】
上述のフロアパネル2の後部には上方に段上げ形成されたキックアップ部5が設けられている。
このキックアップ部5は、フロアパネル2の後部から上方に立上がる前壁5aと、この前壁5aの上端から後方に向けて延びるキックアップフロア部5bとを備えている。
【0035】
上述のキックアップフロア部5bには、その車幅方向のほぼ全幅にわたって上方に隆起する突出部6が設けられ、この突出部6のトップデッキ面を、リヤシートを取付ける目的で、フラットに形成する一方、該突出部6の車外側下方には大型の車両補機配設スペースを形成し、この車両補機配設スペースには大型の車両補機の一例として、燃料タンクを配設すべく構成している。
【0036】
また、上述のキックアップフロア部5bの後端には、後方に向けて略水平に延びるリヤフロア7を一体に連設し、このリヤフロア7には下方に段下げ形成されたスペアタイヤパン8を設けている。
【0037】
図4はサイドシル1を車室内側から見た状態で示す側面図であって、このサイドシル1はその前部に対して後部が漸次高くなるように形成され、このサイドシル構造により車体剛性の向上を図るように構成している。サイドシル1は図示のサイドシルインナと、図外のサイドシルアウタとを接合して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面をもった車体剛性部材であり、必要に応じてサイドシルインナとサイドシルアウタとの間にはサイドシルレインフォースメントが設けられる。
【0038】
図1〜図3に示すように、上述のサイドシル1の車室内側には、該サイドシル1に沿って車両の前後方向に延びて後述するシート25(図13参照)が取付けられるシートサポートメンバアウタ9を設けている。
【0039】
図5は車両右側のシートサポートメンバアウタ9の斜視図、図6はその平面図であって、このシートサポートメンバアウタ9は、フラット形状の上片9aと、この上片9aの車室内側から下方に立下がる側片9bと、前部において上片9aと側片9bとを連設する前片9cと、上片9aに折曲げ形成されたサイドシルインナに対する接合片9dと、前片9cおよび側片9bに屈曲形成されたフロアパネル2に対する接合片9e,9f,9g,9hと、上片9aおよび側片9bの後部に屈曲形成されたキックアップ部5の前壁5aに対する接合片9i,9jとを備え、これらの各片9a〜9jを金属板のプレス加工により一体形成したものである。
【0040】
そして、図1〜図3に示すように、接合片9dをサイドシル1に、接合片9e,9f,9g,9hをフロアパネル2に、接合片9i,9jをキックアップ部5の前壁5aにそれぞれ接合固定して、このシートサポートメンバアウタ9をサイドシル1の車室内側に沿設固定したものである。
【0041】
なお、車両左側のシートサポートメンバアウタ9は車両右側のシートサポートメンバアウタ9と左右対称に形成されるので、右左のシートサポートメンバアウタ9の同一部分には同一符号を付している。
【0042】
図1〜図3に示すように、トンネルメンバ4およびトンネル部3に沿って車両の前後方向に延びて後述するシート25(図13参照)が取付けられるシートサポートメンバインナ10を設けている。
【0043】
図7は車両右側のシートサポートメンバインナ10の斜視図、図8はその平面図であって、このシートサポートメンバインナ10は、フラット形状の上片10aと、この上片10aの車外側から下方に立下がる側片10bと、前部において上片10aと側片10bとを連設する前片10cと、シートサポートメンバインナ10の前側の主体部から後方に向けて延びる断面L字状の延出片10dと、上片10aの車室内側に段差片10eを介して折曲げ形成されたトンネルメンバ4に対する接合片10fと、側片10bおよび延出片10dの側壁に屈曲形成されたフロアパネル2に対する接合片10g,10h,10iと、延出片10dの上壁に屈曲形成されたトンネルメンバ4に対する接合片10jと、延出片10dの後端に屈曲形成されたキックアップ部5の前壁5aに対する接合片10k,10lとを備え、これらの各片10a〜10lを金属板のプレス加工により一体形成したものである。
【0044】
そして、図1〜図3に示すように、接合片10f,10jをトンネルメンバ4を介してトンネル部3に、接合片10g,10h,10iをフロアパネル2に、接合片10k,10lをキックアップ部5の前壁5aにそれぞれ接合固定して、このシートサポートメンバインナ10を、トンネルメンバ4を介して、トンネル部3に沿設固定したものである。
【0045】
なお、車両左側のシートサポートメンバインナ10は車両右側のシートサポートメンバインナ10と左右対称に形成されるので、左右のシートサポートメンバインナ10の同一部分には同一符号を付している。
【0046】
さらに、図1〜図3に示すように、シートサポートメンバアウタ9の側片9bに車室外側端部(車幅方向の外端部)が接続され上述のトンネル部3に向けて車幅方向に延びるクロスメンバ11,12を前後に離間させて複数配設し、これらの各クロスメンバ11,12の車室内側端部(車幅方向の内端部)を、シートサポートメンバインナ10の側片10bに接続している。
【0047】
前方に配設されたクロスメンバ11(いわゆるNo.2クロスメンバ)は、図3に示すように、その前後に車幅方向に延びる接合片11a,11bを有し、これらの接合片11a,11bはフロアパネル2に接合固定されている。
【0048】
同様に、後方に配設されたクロスメンバ12(いわゆるNo.2.5クロスメンバ)も、図3に示すように、その前後に車幅方向に延びる接合片12a,12bを有し、これらの接合片12a,12bもフロアパネル2に接合固定されている。
【0049】
図9は図3のA−A線矢視断面図、図10は図3のB−B線矢視断面図、図11は図3のC−C線で断面した斜視図、図12は図3のD−D線矢視断面図であって、前方に配設されたクロスメンバ11とフロアパネル2との間には車幅方向に延びる閉断面13(図9参照)が形成され、後方に配設されたクロスメンバ12とフロアパネル2との間にも車幅方向に延びる閉断面14(図10参照)が形成されている。
【0050】
しかも、前方に配設されたクロスメンバ11(No.2クロスメンバ)と比較して、後方に配設されたクロスメンバ12(No.2.5クロスメンバ)の閉断面14が小さく設定されており、この構成により、後席乗員の足元スペースを確保すべく構成している。
【0051】
また、図9、図10に示すように、サイドシル1とシートサポートメンバアウタ9とフロアパネル2との間には車両の前後方向に延びる閉断面15が形成され、トンネルメンバ4とトンネル部3とシートサポートメンバインナ10との間には車両の前後方向に延びる閉断面16が形成されており、この閉断面構造により下部車体剛性の向上を図るように構成している。
【0052】
さらに、図9、図10に示すように、サイドシル1とトンネル部3との中間部において、フロアパネル2の下面にはフロアフレーム17を接合固定し、このフロアフレーム17とフロアパネル2との間には、車両の前後方向に延びる閉断面18を形成して、この閉断面構造により下部車体剛性の向上を図るように構成している。
【0053】
ところで、図11、図12に示すようにシートサポートメンバアウタ9のフラット形状の上片9aと、シートサポートメンバインナ10のフラット形状の上片10aとには、スペーサ19,20,21,22を介して前後方向に延びるシートレール23,24をそれぞれ取付けている。具体的には、シートレール23,24は各スペーサ19,20,21,22の配設部位において、ボルト、ナット等の取付け部材を用いて対応するシートサポートメンバに固定される。
そして、左右一対のシートレール23,24上には、図13に示すように、乗員用のシート25(フロントシート)を前後位置調整可能に取付けている。
【0054】
このシート25は、シートクッション26と、シートバック27と、ヘッドレスト28とを有すると共に、シートバック27にはシートベルト29を巻取るリトラクタ30を内蔵し、該シート25(フロントシート)をベルトインシート構造に構成している。
【0055】
また、図13に示すように、フロアパネル2の側方には、仕切りのない乗降口31を設け、所謂センタピラーレスのドア開口部を形成している。なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0056】
このように、図1〜図13で示した実施例の車両の下部車体構造は、前後方向に延びる左右一対のサイドシル1,1間にフロアパネル2が設けられ、該フロアパネル2の中央部に前後方向に延びるトンネル部3が設けられ、上記サイドシル1と上記トンネル部3との間に乗員用のシート25が配設される車両の下部車体構造であって、上記サイドシル1の車室内側に沿って前後方向に延びて上記シート25が取付けられるシートサポートメンバアウタ9を設け、該シートサポートメンバアウタ9に一端が接続され上記トンネル部3に向けて延びるクロスメンバ11,12を前後に離間させて複数配設したものである。
【0057】
この構成によれば、サイドシル1(車体剛性部材)の車室内側に沿って前後方向に延びるシートサポートメンバアウタ9を設け、このシートサポートメンバアウタ9にシート25を取付けるように構成したので、シート25の配設を高い取付け剛性にて行なうことができる。
【0058】
また、シートサポートメンバアウタ9とトンネル部3(車体剛性部材)との間には前後に離間する複数のクロスメンバ11,12(車体剛性部材)を配設したので、側突時の車体剛性確保を図ることができる。
要するに、シート25の配設と、側突時の車体剛性確保との両立を図ることができる。
【0059】
さらに、シート25およびシートベルト29の荷重は、シートサポートメンバアウタ9、サイドシル1、クロスメンバ11,12、トンネル部3(これらの部材は全て車体剛性部材)にて分担できるので、車両側突時のクロスメンバ11,12の変形を防止することができる。
しかも、上記トンネル部3に沿って前後方向に延びて上記シート25が取付けられるシートサポートメンバインナ10を設け、該シートサポートメンバインナ10に上記クロスメンバ11,12の車室内側端部を接続したものである。
【0060】
この構成によれば、前後に離間する複数のクロスメンバ11,12が、サイドシル1に沿うシートサポートメンバアウタ9と、トンネル部3に沿うシートサポートメンバインナ10との間に接続されるので、車体剛性の向上を図ることができ、側突に対する耐力も向上し、かつシート25はシートサポートメンバアウタ9とシートサポートメンバインナ10とに取付けられるので、シート25の取付け剛性の向上をも図ることができる。
【0061】
また、上記複数のクロスメンバ11,12は前方に配設されたクロスメンバ11(No.2クロスメンバ) に比較して、後方に配設されたクロスメンバ12(No.2.5クロスメンバ)の断面が小さく設定されたものである。
【0062】
この構成によれば、シート25の配設と、側突時の車体剛性確保とを図りつつ、後方のクロスメンバ12を小さくしたので、後席乗員の足元スペースを確保することができる。
さらに、上記シートサポートメンバアウタ9と上記シートサポートメンバインナ10には上記シート25のシートレール23,24がそれぞれ取付けられたものである。
【0063】
この構成によれば、スライド式のシート25に対応してシートレール23,24が取付けられ、シートスライドと車体剛性の確保とを両立することができる。特に、シートレール23,24は前後方向に延びるシートサポートメンバアウタ9とシートサポートメンバインナ10とにそれぞれ取付けられるので、ボルト、ナット等の取付け部材を用いて複数の取付け箇所にてシートレール23,24を取付ける場合にあっても、該シートレール23,24を好適な前後位置に取付け固定することができる。
【0064】
加えて、上記トンネル部3に沿って前後方向に延びるトンネルメンバ4が設けられ、上記シートサポートメンバインナ10はフロアパネル2とトンネルメンバ4との間に接続されたものである。
【0065】
この構成によれば、フロア剛性、車体剛性の向上を図るトンネルメンバ4と、フロアパネル2とに上記シートサポートメンバインナ10を接続したので、シート25の取付け剛性および側突時の車体剛性のさらなる向上を図ることができる。
【0066】
また、上記フロアパネル2の後部には上方に段上げされたキックアップ部5が設けられ、上記シートサポートメンバアウタ9の後端部は、該キックアップ部5の前壁5aに接続されたものである。
【0067】
この構成によれば、シートサポートメンバアウタ9を剛性が高いキックアップ部5に接続したので、車体剛性をより一層向上させることができ、また、シート25およびシートベルト29の荷重を、シートサポートメンバアウタ9、サイドシル1、クロスメンバ11,12、トンネル部3のみならずキックアップ部5においても分担することができる。さらに、上述のシートサポートメンバアウタ9はそれぞれ車体剛性部材としてのサイドシル1とキックアップ部5とに接続されることになり、充分な車体剛性を確保することができる。
【0068】
同様に、上記フロアパネル2の後部には上方に段上げされたキックアップ部5が設けられ、上記シートサポートメンバインナ10の後端部は、該キックアップ部5の前壁5aに接続されたものである。
【0069】
この構成によれば、シートサポートメンバインナ10を剛性が高いキックアップ部5に接続したので、車体剛性をより一層向上させることができ、また、シート25およびシートベルト29の荷重を、シートサポートメンバアウタ9、シートサポートメンバインナ10、サイドシル1、クロスメンバ11,12、トンネル部3のみならずキックアップ部5においても分担することができる。さらに、上述のシートサポートメンバインナ10はそれぞれ車体剛性部材としてのトンネル部3とキックアップ部5とに接続されることになり、充分な車体剛性を確保することができる。
【0070】
さらに、上記フロアパネル2の側方には、仕切りのない乗降口31が設けられたものである。
この構成によれば、仕切りのない乗降口31つまりセンタピラーレスの乗降口31を設けると、乗員の乗降性が向上する一方で、車体剛性が低下するが、上記各構成により車体剛性を確保することができる。
【0071】
また、上記シート25には、シートベルト29を巻取るリトラクタ30が内蔵されたものである。
この構成によれば、シートベルト29を巻取るリトラクタ30が内蔵されたシート25、つまり、ベルトインシートタイプのシート25であっても、上記各構成により、シート25およびシートベルト29の荷重を車体剛性部材としてのシートサポートメンバアウタ9、サイドシル1、クロスメンバ11,12、トンネル部3に分担することができる。
【0072】
図14はシートサポートメンバインナ10の他の実施例を示し、図7で示したシートサポートメンバインナ10は、該シートサポートメンバインナ10の前側の主体部から後方に向けて延びる段差状の延出片10dを一体形成したが、図14に示すこの実施例のシートサポートメンバインナ10は該シートサポートメンバインナ10の前側の主体部から後端に向けて斜め後方に傾斜するスラント形状の延出片10dを一体形成したものである。
【0073】
このように構成しても、図7の実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図14において、図7と同一の部分には同一符合を付して、その詳しい説明を省略する。
【0074】
また、図15に示すように左右のシートサポートメンバインナ10を一体に形成し、部品点数の削減を図るように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の車両の下部車体構造を示す斜視図
【図2】図1の要部の平面図
【図3】車両右側の車体構造を拡大して示す半裁平面図
【図4】サイドシルの側面図
【図5】シートサポートメンバアウタの斜視図
【図6】シートサポートメンバアウタの平面図
【図7】シートサポートメンバインナの斜視図
【図8】シートサポートメンバインナの平面図
【図9】図3のA−A線矢視断面図
【図10】図3のB−B線矢視断面図
【図11】図3のC−C線で断面した斜視図
【図12】図3のD−D線矢視断面図
【図13】シートを配設した状態で示す斜視図
【図14】シートサポートメンバインナの他の実施例を示す斜視図
【図15】車両の下部車体構造の他の実施例を示す斜視図
【図16】従来構造を示す平面図
【符号の説明】
【0076】
1…サイドシル
2…フロアパネル
3…トンネル部
4…トンネルメンバ
5…キックアップ部
5a…前壁
9…シートサポートメンバアウタ
10…シートサポートメンバインナ
11,12…クロスメンバ
23,24…シートレール
25…シート
29…シートベルト
30…リトラクタ
31…乗降口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる左右一対のサイドシル間にフロアパネルが設けられ、
該フロアパネルの中央部に前後方向に延びるトンネル部が設けられ、
上記サイドシルと上記トンネル部との間に乗員用のシートが配設される車両の下部車体構造であって、
上記サイドシルの車室内側に沿って前後方向に延びて上記シートが取付けられるシートサポートメンバアウタを設け、
該シートサポートメンバアウタに一端が接続され上記トンネル部に向けて延びるクロスメンバを前後に離間させて複数配設した
車両の下部車体構造。
【請求項2】
上記トンネル部に沿って前後方向に延びて上記シートが取付けられるシートサポートメンバインナを設け、
該シートサポートメンバインナに上記クロスメンバの車室内側端部を接続した
請求項1記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
上記複数のクロスメンバは前方に配設されたクロスメンバに比較して、後方に配設されたクロスメンバの断面が小さく設定された
請求項1または2記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
上記シートサポートメンバアウタと上記シートサポートメンバインナには上記シートのシートレールがそれぞれ取付けられた
請求項2または3記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
上記トンネル部に沿って前後方向に延びるトンネルメンバが設けられ、上記シートサポートメンバインナはフロアパネルとトンネルメンバとの間に接続された
請求項2〜4の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
上記フロアパネルの後部には上方に段上げされたキックアップ部が設けられ、上記シートサポートメンバアウタの後端部は、該キックアップ部の前壁に接続された
請求項1〜5の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項7】
上記フロアパネルの後部には上方に段上げされたキックアップ部が設けられ、上記シートサポートメンバインナの後端部は、該キックアップ部の前壁に接続された
請求項2〜6の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項8】
上記フロアパネルの側方には、仕切りのない乗降口が設けられた
請求項1〜7の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項9】
上記シートにはシートベルトを巻取るリトラクタが内蔵された
請求項1〜8の何れか1に記載の車両の下部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−152998(P2007−152998A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347414(P2005−347414)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】