説明

車両の側部車体構造

【課題】車体後部の車体側壁部において、該車体側壁部の捻り剛性を向上させることができる車両の側部車体構造を提供する。
【解決手段】ホイールハウス10と、車体上下方向に延びるサイドピラー補強部材23と車体上下方向に延びるリアピラー補強部材24とを有する車両の側部車体構造は、ホイールハウスの下端部に配設され車体前後方向に延びるフロア補強部材28と、サイドピラー補強部材とホイールハウスの下端部とを連結するサイドブレース40と、リアピラー補強部材とホイールハウスの後部とを連結するホイールハウス補強部材50と、ホイールハウスの上方においてサイドピラー補強部材とリアピラー補強部材とを連結するベルトライン補強部材26とを備えている。また、ベルトライン補強部材の上方にはサイドピラー補強部材とリアピラー補強部材とを連結するルーフサイド補強部材25を更に備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の側部車体構造、より詳しく言えば、車体後部に形成されるホイールハウスの近傍からその後方における車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車等の車両においては、車体後部の車体側壁部の下方にホイールハウスが形成され、このホイールハウスに、後輪を懸架するサスペンション装置が取り付けられている。上記車両では、走行時に、このサスペンション装置から略鉛直方向に沿った荷重がホイールハウスに繰り返し入力されることとなる。
【0003】
上記車両において、例えば車体変形を抑制したり操縦安定性を向上させたりするために、このようなサスペンション装置からホイールハウスに入力される荷重を車体側壁部に効率的に分散させることが望まれている。例えば特許文献1には、簡単な構成でリアサスペンションからの突き上げ荷重を効果的に分散し得ることを企図した自動車の後部車体構造が開示されている。
【特許文献1】特開2002ー331959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばワンボックス車などの車両においては、車体後壁部に大きな開口部が形成され、該開口部を覆うようにリフトゲートが配設されている。かかる車両では、車体後部における車体側壁部の車体変形が生じ易く、車体側壁部の捻り剛性の更なる向上が望まれている。
【0005】
また、上記車両においても、走行時にはサスペンション装置から略鉛直方向に沿った荷重がホイールハウスに繰り返し入力されるので、車体後部に形成されるホイールハウスの近傍からその後方における車体側壁部において、このホイールハウスにかかる荷重を如何に車体側壁部に伝達させ、車体側壁部の捻り剛性を向上させるかが重要となる。
【0006】
そこで、この発明は、上記技術的課題に鑑みてなされたものであり、車体後部の車体側壁部において、該車体側壁部の捻り剛性を向上させることができる車両の側部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本願の請求項1に係る発明は、車体の側壁部の下方に形成されたホイールハウスと、該ホイールハウスの上方に位置するサイドピラーに配設され該サイドピラーを補強し車体上下方向に延びるサイドピラー補強部材と、前記ホイールハウスの車体後方に位置するリアピラーに配設され該リアピラーを補強し車体上下方向に延びるリアピラー補強部材とを有する車両の側部車体構造であって、前記ホイールハウスの下端部に配設され車体フロア部を補強し車体前後方向に延びるフロア補強部材と、前記サイドピラー補強部材と前記ホイールハウスの下端部とを連結する第1の連結部材と、前記リアピラー補強部材と前記ホイールハウスの後部とを連結する第2の連結部材と、前記ホイールハウスの上方において、前記サイドピラー補強部材と前記リアピラー補強部材とを連結する第3の連結部材とを備えていることを特徴としたものである。
【0008】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記第2の連結部材は、前記ホイールハウスから車体上方へ延びるとともに、前記第3の連結部材と前記リアピラー補強部材との結合部及び/又はその近傍において前記リアピラー補強部材と結合されていることを特徴としたものである。
【0009】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記第2の連結部材は、前記第3の連結部材と前記リアピラー補強部材との結合部より車幅方向内方において前記リアピラー補強部材と結合されていることを特徴としたものである。
【0010】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一に係る発明において、前記フロア補強部材が、車体前後方向に延びるサイドフレームに結合され、前記リアピラー補強部材が、前記サイドフレームの後端部に結合されていることを特徴としたものである。
【0011】
また更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか一に係る発明において、前記第3の連結部材の上方において、前記サイドピラー補強部材の上端部と前記リアピラー補強部材の上端部とを連結する第4の連結部材を更に備えていることを特徴としたものである。
【0012】
また更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか一に係る発明において、乗員を拘束するためのシートベルトを車体に対して支持させる複数の支持部材が、前記サイドピラー補強部材、前記リアピラー補強部材、前記フロア補強部材、前記第1の連結部材、前記第2の連結部材及び前記第3の連結部材のうち互いに異なる部材にそれぞれ取り付けられていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本願の請求項1の発明に係る車両の側部車体構造によれば、サイドピラー補強部材とホイールハウスの下端部とを連結する第1の連結部材と、リアピラー補強部材とホイールハウスの後部とを連結する第2の連結部材と、ホイールハウスの上方においてサイドピラー補強部材とリアピラー補強部材とを連結する第3の連結部材とを備えているので、ホイールハウスの上方及びその後方において、車体側壁部を補強することができ、車体側壁部の捻り剛性を向上させることができる。
【0014】
また、本願の請求項2の発明によれば、第2の連結部材は、ホイールハウスから車体上方へ延びるとともに、第3の連結部材とリアピラー補強部材との結合部及び/又はその近傍においてリアピラー補強部材と結合されることにより、ホイールハウスの上方及びその後方において、サイドピラー補強部材、第1の連結部材、フロア補強部材、第2の連結部材、リアピラー補強部材及び第3の連結部材を側面視で四角形状に連結させて車体側壁部を補強することができ、車体側壁部の捻り剛性を更に向上させることができる。
例えばサスペンション装置等を通じてホイールハウスにかかる荷重を、第1の連結部材を介してサイドピラー補強部材に伝達するとともに、第2の連結部材を介してリアピラー補強部材に伝達することができ、上記荷重を車体各部に効果的に分散させ、操縦安定性の向上を図ることもできる。
【0015】
更に、本願の請求項3の発明によれば、第2の連結部材は、第3の連結部材とリアピラー補強部材との結合部より車幅方向内方においてリアピラー補強部材と結合されるので、ホイールハウスの上方及びその後方において、車体側壁部の車幅方向の捻り剛性を更に向上させることができる。
【0016】
また更に、本願の請求項4の発明によれば、フロア補強部材が、車体前後方向に延びるサイドフレームに結合され、リアピラー補強部材が、サイドフレームの後端部に結合されるので、ホイールハウスの後方において、フロア補強部材、サイドフレーム、リアピラー補強部材及び第2の連結部材を側面視で三角形状に連結させて車体側壁部を補強することができ、車体側壁部の捻り剛性の更なる向上を図ることができる。
【0017】
また更に、本願の請求項5の発明によれば、第3の連結部材の上方において、サイドピラー補強部材の上端部とリアピラー補強部材の上端部とを連結する第4の連結部材を備えていることにより、ホイールハウスの上方及びその後方において、サイドピラー補強部材、第1の連結部材、フロア補強部材、第2の連結部材、リアピラー補強部材及び第3の連結部材を四角形状に連結させるとともに、サイドピラー補強部材、第3の連結部材、リアピラー補強部材及び第4の連結部材を四角形状に連結させ、 上記補強部材及び上記連結部材を側面視で“日”の字状に連結させて車体側壁部を補強することができ、捻り剛性を更に向上させることができる。
【0018】
また更に、本願の請求項6の発明によれば、シートベルトを車体に対して支持させる複数の支持部材が、サイドピラー補強部材、リアピラー補強部材、フロア補強部材、第1の連結部材、第2の連結部材及び第3の連結部材のうち互いに異なる部材にそれぞれ取り付けられることにより、シートベルトから入力される荷重を車体側壁部の車体各部に広範囲に伝達し分散させることができるので、シートベルトの支持剛性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る車両の車体後部を概略的に示す斜視図であり、図2は、上記車体後部においてインナパネルを部分的に取り除いた状態を示す斜視図である。また、図3は、図1におけるY3−Y3線に沿った断面説明図、図4は、図1におけるY4−Y4線に沿った断面説明図、図5は、図1におけるY5−Y5線に沿った断面説明図である。
【0020】
この車両1は、例えばワンボックス車などの車両であり、車室の床面を構成する車体フロア部2と、車体の側面を構成する車体側壁部3と、車体の後面を構成する車体後壁部4と、車室の天井面を構成するルーフ部5とを有している。なお、ルーフ部5においては、車幅方向に延び、ルーフ部5を補強するルーフ補強部材6、7のみが示されている。
【0021】
上記車両1では、車体後部の車体側壁部3の下方に、後輪(不図示)を受け入れるためのホイールハウス10が形成され、該ホイールハウス10の後部には、後輪を懸架するためのサスペンション装置(不図示)を取り付けるサスペンション装置取付用開口部11が形成されている。この開口部11を介して、ホイールハウス10にはサスペンション装置から略鉛直方向に沿った荷重が入力される。
【0022】
上記車体側壁部3は、図3に示すように、車体内側を構成するインナパネル20と車体外側を構成するアウタパネル21とを組み合わせて形成され、ホイールハウス10の上方において車体上下方向に延びるサイドピラー12と、ホイールハウス10の車体後方において車体上下方向に延びるリアピラー13と、車体側壁部3の上端において車体前後方向に延びるルーフサイド14とを備えている。
【0023】
上記リアピラー13は、車体側壁部3と車体後壁部4とに亘って設けられ、車体上下方向に延びるとともにその上端部が車体前方へ傾斜して延びている。このリアピラー13の車幅方向内方側には、リフトゲート(不図示)で覆われるリフトゲート用開口部15が設けられている。
【0024】
また、車体側壁部3には、サイドピラー12の車体前方側にリアサイドドア(不図示)が配設されるリアサイドドア用開口部16が設けられ、サイドピラー12の車体後方側にはサイドピラー12とリアピラー13との間に、リアクォータウインド(不図示)が配設されるリアクォータウインド用開口部17が設けられている。
【0025】
図2では、リアクォータウインド用開口部17の周縁部において車体側壁部3のインナパネル20が部分的に取り除かれて示されている(図2のA部)。図2に示すように、サイドピラー12には、車体上下方向に延び該サイドピラー12を補強するサイドピラー補強部材23が配設されている。また、リアピラー13には、車体上下方向に延び該リアピラー13を補強するリアピラー補強部材24が配設されている。
【0026】
本実施形態では、リアクォータウインド用開口部17の上側の周縁部において、車体前後方向に延びルーフサイド14を補強するルーフサイド補強部材25が配設されている。ルーフサイド補強部材25は、図3及び図4に示すように、インナパネル20に設けられルーフサイド14の車体内側を構成するルーフサイドインナ31と、アウタパネル21に設けられルーフサイド14の車体外側を構成するルーフサイドアウタ32との間に配設されている。このルーフサイド補強部材25は、その車体前方側の端部がサイドピラー補強部材23に重ね合わせて接合され、その車体後方側の端部がリアピラー補強部材24に重ね合わせて接合されており、サイドピラー補強部材23の上端部とリアピラー補強部材24の上端部とを連結している。
【0027】
また、本実施形態では、リアクォータウインド用開口部17の下側の周縁部において、車体前後方向に延びるようにベルトライン補強部材26が配設されている。ベルトライン補強部材26は、図4に示すように、その上端部がインナパネル20とアウタパネル21とともにフランジ結合され、その下端部がインナパネル20の車幅方向外側に接合されている。
【0028】
図5に示すように、ベルトライン補強部材26は、その車体前方側の端部がサイドピラー補強部材23に重ね合わせて接合され、その車体後方側の端部がリアピラー13を構成するインナパネル20の車体外方側に接合されるとともにリアピラー補強部材24と接合され、ホイールハウス10の上方において、サイドピラー補強部材23とリアピラー補強部材24とを連結している。
【0029】
上述したように、車体側壁部3の下方にはホイールハウス10が設けられており、ホイールハウス10は、車幅方向内方へ膨出するホイールハウスインナ18と車体外方へ膨出するホイールハウスアウタ19とで構成されている。なお、ホイールハウスインナ18は、インナパネル20と一体的に形成され、車体フロア部2まで延びている。
【0030】
図3に示すように、ホイールハウスアウタ19は、その車幅方向内方端部がホイールハウスインナ18と接合され、その車幅方向外方端部がアウタパネル21と接合されている。また、ホイールハウスアウタ19の車幅方向略中央部には、サイドピラー補強部材23が接合されている。
【0031】
一方、ホイールハウスインナ18の下端部には、車体フロア部2を補強するフロア補強部材28が配設されている。フロア補強部材28は、車体前後方向に延びるとともに、その車幅方向外方端部が上方へ折り曲げられ、ホイールハウス10の周縁部に沿ってホイールハウス10の下端部にフランジ結合されている。
【0032】
また、車体フロア部2の下方には、車幅方向の両端部にそれぞれ車体前後方向に延びるフレーム部材としてのサイドフレーム35が設けられている。サイドフレーム35は、上方が開口した略断面コ字状に形成され、その車幅方向内方端部が、フロア補強部材28と、車体フロア部2を構成するフロアパネル29とに重ね合わせて接合され、その車幅方向外方端部が、ホイールハウス10、具体的にはホイールハウスインナ18の下端部においてホイールハウスインナ18とフロア補強部材28との間に挿入されて接合されている。上記サイドフレーム35の後端部には、車体フロア部2から上方へ延びるフランジ部36が備えられ、該フランジ部36がリアピラー13に接合されるとともにリアピラー補強部材24にも接合されている。
【0033】
本実施形態では、ホイールハウス10の車体内側には、ホイールハウスインナ18に略沿って形成され車体上下方向に延びるサイドブレース40が配設されている。サイドブレース40は、図3に示すように、その上端部がインナパネル20に接合され、その下端部がブレースブラケット41を介してフロア補強部材28に連結されている。
【0034】
なお、サイドブレース40が、ブレースブラケット41を介してフロア補強部材28に連結されているが、サイドブレース40をホイールハウス10の下端部まで延びるように形成し該ホイールハウス10の下端部に接合するようにしてもよく、あるいは、サイドブレース40をフロア補強部材28まで延びるように形成し該フロア補強部材28と接合するようにしてもよい。
【0035】
サイドブレース40は、図4に示す位置においては、その上端部がインナパネル20に接合されるとともに、インナパネル20を介してサイドピラー補強部材23と接合されている。かかる位置では、サイドピラー補強部材23は、その上端部がインナパネル20に接合され、その下端部がホイールハウスアウタ19に接合されている。
【0036】
上記サイドブレース40の車体後方側には、ホイールハウスインナ18に略沿ってホイールハウスガセット45が配設されている。ホイールハウスガセット45は、ホイールハウス10の車室内側において該ホイールハウス10の車体後部を略覆うように設けられている。なお、ホイールハウスガセット45は、サイドブレース40と一体的に形成することも可能である。
【0037】
また、本実施形態では、ホイールハウス10に形成された開口部11の車体後方に、ホイールハウス10の後部とリアピラー補強部材24とを互いに連結させるホイールハウス補強部材50が配設されている。ホイールハウス補強部材50の下端部は、ホイールハウス10の後部に締結ボルト52(図6参照)によって締結固定されるとともに、その下側の端部がフロア補強部材28に沿って車体後方側に折り曲げられ、締結ボルト54(図6参照)を用いてフロア補強部材28にも接合されている。
【0038】
上記ホイールハウス補強部材50は、ホイールハウス10から車体上方へ延びるとともにその上端側が車体後方側に曲げられ、側面視で略弓形状に形成されている。ホイールハウス補強部材50は、その上端部にリアピラー13に沿って下方に折り曲げられたフランジ部51を備え、該フランジ部51がリアピラー13を構成するインナパネル20に接合されている。このホイールハウス補強部材50は、リアピラー13に対してリフトゲート用開口部15の周縁部において、その上下方向の略中間位置で接合されている。
【0039】
図5では、リアピラー13に接合されるホイールハウス補強部材50が、二点鎖線により示されている。ホイールハウス補強部材50は、ベルトライン補強部材26とリアピラー補強部材24との結合部53近傍において、インナパネル20に接合されるとともに、該インナパネル20を介してリアピラー補強部材24と接合されている。図5に示すように、ホイールハウス補強部材50とリアピラー補強部材24とは、ベルトライン補強部材26とリアピラー補強部材24との結合部53より車幅方向内方において結合されている。
【0040】
このようにして、車両1では、サイドピラー補強部材23と、サイドブレース40と、フロア補強部材28と、ホイールハウス補強部材50と、リアピラー補強部材24と、ベルトライン補強部材26とが、実質的に側面視で四角形状に連結され、サイドピラー補強部材23と、ベルトライン補強部材26と、リアピラー補強部材24と、ルーフサイド補強部材25とが、実質的に側面視で四角形状に連結されている。また、上記車両1では、フロア補強部材28と、サイドフレーム35と、リアピラー補強部材24と、ホイールハウス補強部材50とが、実質的に側面視で三角形状に連結されている。
【0041】
なお、本実施形態では、ホイールハウス補強部材50が、ベルトライン補強部材26とリアピラー補強部材24とが結合される結合部53近傍において、リアピラー補強部材24に結合されているが、ベルトライン補強部材26とリアピラー補強部材24との結合部53に、ホイールハウス補強部材50を結合させるようにしてもよい。
【0042】
このように、本実施形態に係る車両の側部車体構造によれば、サイドピラー補強部材23とホイールハウス10の下端部とを連結するサイドブレース40と、リアピラー補強部材24とホイールハウス10の後部とを連結するホイールハウス補強部材50と、ホイールハウス10の上方においてサイドピラー補強部材23とリアピラー補強部材24とを連結するベルトライン補強部材26とを備えているので、ホイールハウスの上方及びその後方において車体側壁部を補強することができ、車体側壁部の捻り剛性を向上させることができる。
【0043】
また、ホイールハウス補強部材50は、ホイールハウス10から車体上方へ延びるとともに、ベルトライン補強部材26とリアピラー補強部材24との結合部及び/又はその近傍においてリアピラー補強部材24と結合されることにより、ホイールハウスの上方及びその後方において、サイドピラー補強部材、サイドブレース、フロア補強部材、ホイールハウス補強部材、リアピラー補強部材及びベルトライン補強部材を側面視で四角形状に連結させて車体側壁部を補強することができ、車体側壁部の捻り剛性を更に向上させることができる。
例えばサスペンション装置等を通じてホイールハウスにかかる荷重を、サイドブレースを介してサイドピラー補強部材に伝達するとともにホイールハウス補強部材を介してリアピラー補強部材に伝達することができ、上記荷重を車体各部に効果的に分散させ、操縦安定性の向上を図ることもできる。
【0044】
更に、ホイールハウス補強部材50は、ベルトライン補強部材26とリアピラー補強部材24との結合部53より車幅方向内方においてリアピラー補強部材24と結合されるので、ホイールハウスの上方及びその後方において車体側壁部の車幅方向の捻り剛性を更に向上させることができる。
【0045】
また更に、フロア補強部材28が、車体前後方向に延びるサイドフレーム35に結合され、リアピラー補強部材24が、サイドフレーム35の後端部に結合されるので、ホイールハウスの後方において、フロア補強部材、サイドフレーム、リアピラー補強部材及びホイールハウス補強部材を側面視で三角形状に連結させて車体側壁部を補強することができ、車体側壁部の捻り剛性の更なる向上を図ることができる。
【0046】
また更に、ベルトライン補強部材26の上方において、サイドピラー補強部材23の上端部とリアピラー補強部材24の上端部とを連結するルーフサイド補強部材25を備えていることにより、ホイールハウスの上方及びその後方において、サイドピラー補強部材、サイドブレース、フロア補強部材、ホイールハウス補強部材、リアピラー補強部材及びベルトライン補強部材を四角形状に連結させるとともに、サイドピラー補強部材、ベルトライン補強部材、リアピラー補強部材及びルーフサイド補強部材を四角形状に連結させ、上記補強部材及び上記連結部材を側面視で“日”の字状に連結させて車体側壁部を補強することができ、捻り剛性を更に向上させることができる。
【0047】
なお、車両1では、サイドピラー補強部材23の上方に車幅方向に延びるルーフ補強部材6が設けられ、リアピラー補強部材24の上方に車幅方向に延びるルーフ補強部材7が設けられているので、サイドピラー補強部材23やリアピラー補強部材24に伝達される荷重を、ルーフ補強部材6、7に伝達し分散させることができる。
【0048】
図6は、シートベルトを備えた上記車体後部を示す側面説明図である。なお、図6では、リアクォータウインド用開口部17の周縁部においてインナパネル20が部分的に取り除かれて示されている(図6のB部)。図6に示すように、車両1の車体側壁部3には、二列目シート及び三列目シート(共に不図示)に対応して、該シートに着座した乗員を拘束可能なシートベルト70及び60がそれぞれ配設されている。
【0049】
三列目シート用のシートベルト60は、一方の端部にシートベルト60を巻き取り収納するシートベルトリトラクタ61を備えており、該シートベルトリトラクタ61は、ホイールハウス補強部材50とリアピラー13とに跨って設けられるブラケット部材62に、締結ボルト63によって締結固定されている。このブラケット部材62は、ホイールハウス補強部材50の車幅方向内方側に接合されるとともに、図5に示すように、リアピラー13に沿って車幅方向内方側に折り曲げられたフランジ部64を備え、該フランジ部64がインナパネル20とリアピラー補強部材24とに接合されている。
【0050】
一方、シートベルト60の他方の端部には、車体側壁部3の下部においてシートベルト60を車体に対して支持させる、アンカプレート等の下側支持部材65が取り付けられている。下側支持部材65は、ホイールハウスガセット45に、締結ボルト66によって締結固定されている。なお、ホイールハウスガセット45が、サイドブレース40と一体的に形成され、該サイドブレース40に、シートベルト60を車体に対して支持させる支持部材を取り付けるようにしてもよい。
【0051】
また、シートベルト60は、車体側壁部3の上部において、リアピラー補強部材24の上部に取り付けられた、ショルダアンカ等の上側支持部材66に支持されている。このようにして、シートベルト60は、車体側壁部3において、シートベルトリトラクタ61から上方に延びるとともに、上側支持部材66を介して下側支持部材65まで下方に延びるように配設されている。
【0052】
なお、シートベルト60は、一方の端部がブラケット部材62によってホイールハウス補強部材50とリアピラー補強部材24に取り付けられ、他方の端部が下側支持部材65によってホイールハウスガセット45に取り付けられているが、シートベルトを車体に対して支持させる複数の支持部材をそれぞれ、サイドピラー補強部材、リアピラー補強部材、フロア補強部材、サイドブレース、ホイールハウス補強部材及びベルトライン補強部材のうち互いに異なる部材に取り付けるようにすることが可能である。
【0053】
二列目シート用のシートベルト70についても同様に、該シートベルト70は、一方の端部にシートベルトリトラクタ71を備え、該シートベルトリトラクタ71は、サイドブレース40に取り付けられたブラケット部材72に、締結ボルト73を用いて締結固定されている。また、シートベルト70は、サイドピラー補強部材23に取り付けられた上側支持部材74と、締結ボルト75を用いてフロア補強部材28に締結固定された下側支持部材76とによって車体に対して支持されている。
なお、シートベルト70には、上側支持部材74の下方に乗員を固定するためのタングプレート77が備えられており、また、シートベルト60には、上側支持部材66の下方にタングプレート67が備えられている。
【0054】
このように、シートベルト60、70を車体に対して支持させる複数の支持部材62、65、72、76が、サイドピラー補強部材23、リアピラー補強部材24、フロア補強部材28、サイドブレース40、ホイールハウス補強部材50及びベルトライン補強部材26のうち互いに異なる部材にそれぞれ取り付けられることにより、シートベルトから入力される荷重を車体側壁部の車体各部に広範囲に伝達し分散させることができるので、シートベルトの支持剛性を確保することができる。
【0055】
本実施形態では、シートベルトの端部に備えられたシートベルトリトラクタが、ブラケット部材を介して車体に取り付けられているが、シートベルトリトラクタに、該シートベルトリトラクタを車体に対して取り付ける支持部を設け、該支持部によって取り付けるようにしてもよい。かかる場合においても、ブラケット部材を用いる場合と同様の効果を奏することができる。
【0056】
また、本実施形態では、サイドピラー補強部材23とホイールハウス10の下端部とを連結するサイドブレース40が第1の連結部材に相当し、リアピラー補強部材24とホイールハウス10の後部とを連結するホイールハウス補強部材50が第2の連結部材に相当し、ホイールハウス10の上方においてサイドピラー補強部材23とリアピラー補強部材24とを連結するベルトライン補強部材26が第3の連結部材に相当し、ベルトライン補強部材26の上方においてサイドピラー補強部材23の上端部とリアピラー補強部材24の上端部とを連結するルーフサイド補強部材25が第4の連結部材に相当する。
【0057】
なお、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、車体後部の車体側壁部の捻り剛性を向上させることができる車両の側部車体構造であり、車体後部に開口部を有する、例えばワンボックス車などの車両において好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態に係る車両の車体後部を概略的に示す斜視図である。
【図2】インナパネルを部分的に取り除いた上記車体後部を示す説明図である。
【図3】図1におけるY3ーY3線に沿った断面説明図である。
【図4】図1におけるY4ーY4線に沿った断面説明図である。
【図5】図1におけるY5ーY5線に沿った断面説明図である。
【図6】シートベルトを備えた上記車体後部を示す側面説明図である。
【符号の説明】
【0060】
2 車体フロア部
3 車体側壁部
10 ホイールハウス
12 サイドピラー
13 リアピラー
23 サイドピラー補強部材
24 リアピラー補強部材
25 ルーフサイド補強部材
26 ベルトライン補強部材
28 フロア補強部材
35 サイドフレーム
40 サイドブレース
50 ホイールハウス補強部材
60、70 シートベルト
62、72 ブラケット部材
65、76 下側支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側壁部の下方に形成されたホイールハウスと、該ホイールハウスの上方に位置するサイドピラーに配設され該サイドピラーを補強し車体上下方向に延びるサイドピラー補強部材と、前記ホイールハウスの車体後方に位置するリアピラーに配設され該リアピラーを補強し車体上下方向に延びるリアピラー補強部材とを有する車両の側部車体構造であって、
前記ホイールハウスの下端部に配設され車体フロア部を補強し車体前後方向に延びるフロア補強部材と、
前記サイドピラー補強部材と前記ホイールハウスの下端部とを連結する第1の連結部材と、
前記リアピラー補強部材と前記ホイールハウスの後部とを連結する第2の連結部材と、
前記ホイールハウスの上方において、前記サイドピラー補強部材と前記リアピラー補強部材とを連結する第3の連結部材と、
を備えていることを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項2】
前記第2の連結部材は、前記ホイールハウスから車体上方へ延びるとともに、前記第3の連結部材と前記リアピラー補強部材との結合部及び/又はその近傍において前記リアピラー補強部材と結合されていることを特徴とする請求項1記載の車両の側部車体構造。
【請求項3】
前記第2の連結部材は、前記第3の連結部材と前記リアピラー補強部材との結合部より車幅方向内方において前記リアピラー補強部材と結合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の側部車体構造。
【請求項4】
前記フロア補強部材が、車体前後方向に延びるサイドフレームに結合され、前記リアピラー補強部材が、前記サイドフレームの後端部に結合されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の車両の側部車体構造。
【請求項5】
前記第3の連結部材の上方において、前記サイドピラー補強部材の上端部と前記リアピラー補強部材の上端部とを連結する第4の連結部材を更に備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一に記載の車両の側部車体構造。
【請求項6】
乗員を拘束するためのシートベルトを車体に対して支持させる複数の支持部材が、前記サイドピラー補強部材、前記リアピラー補強部材、前記フロア補強部材、前記第1の連結部材、前記第2の連結部材及び前記第3の連結部材のうち互いに異なる部材にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一に記載の車両の側部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−261481(P2007−261481A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91002(P2006−91002)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】