車両の側部車体構造
【課題】部品点数及び組立工程数を増やすことなく、ショルダアンカ部の強度向上を図ることが可能な車両の側部車体構造を提供することにある。
【解決手段】車両の側部にシートベルト用ショルダアンカ部２が設けられ、ショルダアンカ部２のショルダリーンフォースメント９が、サイドボデーアウタパネル７とクォータパネル８との接合部まで延長し、ショルダリーンフォースメント９、サイドボデーアウタパネル７及びクォータパネル８が３枚重ね合わせられた状態で接合されている。
【解決手段】車両の側部にシートベルト用ショルダアンカ部２が設けられ、ショルダアンカ部２のショルダリーンフォースメント９が、サイドボデーアウタパネル７とクォータパネル８との接合部まで延長し、ショルダリーンフォースメント９、サイドボデーアウタパネル７及びクォータパネル８が３枚重ね合わせられた状態で接合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、側部車体構造に係り、詳しくはシートベルト用ショルダアンカ部が設けられている車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【０００２】
一般的な車両の側部車体構造には、シートベルトの取付け部として、ショルダアンカ部とリトラクタアンカ部が設けられており、ショルダアンカ部は、薄板のクォータパネルに設けられている。このような側部車体構造の車両においては、車両前方から荷重が加えられた場合、ショルダアンカ部とリトラクタアンカ部へ加わる大きな荷重を側部車体が受け止めるようになっている。しかし、薄板のクォータパネルでは、ショルダアンカ部へ加わる荷重を受け持つことができない。
そのため、従来の側部車体構造の中には、特許文献１のように、クォータパネルに対して、車両外側（サイドボデーアウタパネルとの間）に断面ハット型のリーンフォースメントを取付け、断面コ字状の閉断面を形成することによって、ショルダアンカ部へ加わる荷重を受け持つ構造が採られている。
【０００３】
また、車両前方から荷重が加えられ、後部座席搭乗者の慣性荷重をシートベルトで受け、ショルダアンカが車両前方斜め下に荷重を受けると、ショルダアンカ部が車両前方に変形することになる。
そのため、従来の側部車体構造の中には、特許文献２のように、クォータパネル及びリーンフォースメント（裏金補強）によりショルダアンカが側部車体からもぎ取れない強度を確保していた。クォータパネルの変形を抑えるためには、クォータパネルの板厚を厚くし、クォータパネル自体の剛性確保と、クォータパネルの他部品への接合による荷重分散で、上記の荷重を吸収する対策が施されている。
あるいは、特許文献３、４のように、クォータパネルの上下方向にメンバを通して配置し、側部車体の剛性を確保するとともに、当該メンバにショルダアンカを接合することによって、荷重吸収を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特許第２８４５０６１号公報
【特許文献２】特開２００７−２９６８９０号公報
【特許文献３】特開２００８−６２７４８号公報
【特許文献４】特開２００８−２３８８８５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、上述した従来の側部車体構造のように、クォータパネルの板厚を厚くすることは、車体の重量増大を招き、車両の燃費に悪影響を及ぼすおそれがあった。
また、上述した従来の側部車体構造のように、クォータパネルに対して補強部品を追加することは、車体の重量増大を招くのみならず、組立工程での取扱い工数が増え、生産効率の低下をきたすおそれがあった。
さらに、特許文献１には、リトラクタアンカ部の構造に関する記載がなく、断面ハット型のリーンフォースメントが車両外側に位置することから、リトラクタアンカ部への荷重を受け止めて保持するには、別部品を設ける必要があった。そのため、上記した同様、車体の重量増大及び組立工程数の増加を招来するという問題があった。
【０００６】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、部品点数及び組立工程数を増やすことなく、ショルダアンカ部の強度向上を図ることが可能な車両の側部車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、シートベルト用ショルダアンカ部が設けられている車両の側部車体構造において、前記ショルダアンカ部のショルダリーンフォースメントが、サイドボデーアウタパネルとクォータパネルとの接合部まで延長し、前記ショルダリーンフォースメント、前記サイドボデーアウタパネル及び前記クォータパネルが３枚重ね合わせられた状態で接合されている。
【０００８】
また、本発明において、前記ショルダリーンフォースメントは、前記ショルダアンカ部に位置するリヤピラーと接合されている。
【０００９】
さらに、本発明において、前記ショルダアンカ部の下位において、前記クォータパネルを車両外側へ向かって屈曲させて逃がすことにより、車両内側にスペースが形成されているとともに、前記スペースの車両内側には、前記リヤピラーが設けられている。
そして、本発明において、前記リヤピラーは、前記ショルダアンカ部の直下に設けられている。
【００１０】
また、本発明において、前記リヤピラーは側面視で車両前方へ凸状に湾曲しており、前記リヤピラーと前記クォータパネルとの接合によって、前記ショルダアンカ部の下位が閉断面形状に形成されている。
【発明の効果】
【００１１】
上述の如く、本発明に係る車両の側部車体構造は、シートベルト用ショルダアンカ部が設けられているものであって、前記ショルダアンカ部のショルダリーンフォースメントが、サイドボデーアウタパネルとクォータパネルとの接合部まで延長し、前記ショルダリーンフォースメント、前記サイドボデーアウタパネル及び前記クォータパネルが３枚重ね合わせられた状態で接合されているので、ショルダアンカ部における車両前方へ加わる荷重に対して、サイドボデーアウタパネルを補強部材としてショルダアンカ部の強度向上に寄与させることができる。
【００１２】
また、本発明において、前記ショルダリーンフォースメントは、前記ショルダアンカ部に位置するリヤピラーと接合されているので、厚板同士が結合することになり、薄板のクォータパネルのみでショルダアンカ部に加わる荷重を受ける箇所を無くし、ショルダアンカ部の強度を大きく向上させることができる。
【００１３】
さらに、本発明において、前記ショルダアンカ部の下位において、前記クォータパネルを車両外側へ向かって屈曲させて逃がすことにより、車両内側にスペースが形成されているとともに、前記スペースの車両内側には、前記リヤピラーが設けられているので、シートベルト用リトラクタアンカ部をリヤピラーに設けることができ、部品点数の削減を図ることができる。
【００１４】
そして、本発明において、前記リヤピラーは、前記ショルダアンカ部の直下に設けられているので、リヤピラーがつっかい棒としての役割を果たし、車両前方への荷重が加わった際のショルダアンカ部の倒れこみを防止することができる。
【００１５】
また、本発明において、前記リヤピラーは側面視で車両前方へ凸状に湾曲しており、前記リヤピラーと前記クォータパネルとの接合によって、前記ショルダアンカ部の下位が閉断面形状に形成されているので、ショルダアンカ部から受ける荷重を閉断面全体で受けることが可能となり、リヤピラーの剛性を最大限に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１６】
【図１】本発明の実施形態に係る側部車体構造が適用される車両の室内側から見た車体の一部を示す斜視図である。
【図２】図１におけるＸ−Ｘ線断面図である。
【図３】図１におけるＹ−Ｙ線断面図である。
【図４】本発明の実施形態の側部車体構造において、リトラクタアンカ部が設けられた箇所を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１７】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図１〜図４は本発明の実施形態に係る車両の側部車体構造を示すものである。なお、図において、矢印Ａは車両前方向を示し、矢印Ｂは車両下方向を示す、矢印Ｆは荷重の入力方向を示している。
【００１８】
本発明の実施形態に係る車両の側部車体構造には、図１〜図４に示すように、後部座席搭乗者のシートベルト１の取付け部として、ショルダアンカ部２とリトラクタアンカ部３とが車両の上下方向に間隔を置いて設けられている。そして、ショルダアンカ部２には、ショルダアンカ４が取付けられ、リトラクタアンカ部３には、リトラクタアンカ５及びリトラクタ６が取付けられている。
【００１９】
ショルダアンカ部２は、車両外側のサイドボデーアウタパネル７と共に車両側部の車体を構成する薄板のクォータパネル８に配設されており、該クォータパネル８は、車両の前後及び上下方向に沿って延在している。また、ショルダアンカ部２が設置されるクォータパネル８の裏面側（サイドボデーアウタパネル７側）には、クォータパネル８を補強する厚板のショルダリーンフォースメント９が設けられている。
【００２０】
本実施形態のショルダリーンフォースメント９の後端部９ａは、図２に示すように、サイドボデーアウタパネル７とクォータパネル８との接合部まで延長されており、これらショルダリーンフォースメント９の後端部９ａ、サイドボデーアウタパネル７及びクォータパネル８は、３枚重ね合わせられた状態で、スポット溶接によって接合されている。３枚重ね合わせられた状態では、ショルダリーンフォースメント９の後端部９ａがサイドボデーアウタパネル７とクォータパネル８との間に配置されている。これにより、サイドボデーアウタパネル７も、強度部材として利用することが可能となる。
一方、ショルダリーンフォースメント９の前端部９ｂは、クォータパネル８に沿って折り曲げられ、クォータパネル８の裏面に重ね合わせられた状態で、スポット溶接によって接合されている。
【００２１】
また、本実施形態のショルダリーンフォースメント９の下端部９ｃは、図３に示すように、クォータパネル８に沿って折り曲げられ、クォータパネル８を介在させた３枚重ねの状態で、ショルダアンカ部２に位置する厚板のリヤピラー１０の上端部１０ａとスポット溶接によって接合されている。これにより、ショルダアンカ部２の下位の箇所が厚板同士の結合となり、薄板のクォータパネル８のみでショルダアンカ部２への荷重を受ける箇所が無くなることになる。そして、ショルダリーンフォースメント９の上端部９ｄは、クォータパネル８に沿って折り曲げられ、クォータパネル８の裏面に重ね合わせられた状態で、スポット溶接によって接合されている。
【００２２】
さらに、本実施形態のショルダアンカ部２の下位においては、図３に示すように、クォータパネル８を車両外側（サイドボデーアウタパネル７側）へ向かって屈曲させて逃がすことにより、車両内側にスペースＳが形成されている。このスペースＳの車両内側には、上記したリヤピラー１０が設けられている。
このリヤピラー１０は、ショルダアンカ部２の直下に設けられており、ショルダアンカ部２への荷重入力時に、リヤピラー１０がつっかい棒として機能するように構成され、ショルダアンカ部２の倒れこみを防ぐようになっている。しかも、リヤピラー１０は、車両前後の側面形状を車両前方へ向かって、くの字状に湾曲して形成されており、これらリヤピラー１０とクォータパネル８との接合によって、ショルダアンカ部２の下位が閉断面形状に形成されている。これにより、ショルダアンカ部２に加わる荷重は、下位の閉断面部分の正面全体で受け止められ、リヤピラー１０の剛性を最大限利用する構造となっている。
【００２３】
一方、リヤピラー１０は、図４に示すように、スペースＳの箇所において、水平断面ハット型を有しており、クォータパネル８との接合によってこの箇所が閉断面形状に形成されている。このリヤピラー１０には、リトラクタ６が設けられ、リトラクタ６は、閉断面形状の部分に収納されている。これによって、リヤピラー１０は、ショルダアンカ部２の取付け強度を向上させると同時に、リトラクタアンカ部３の取付け強度を向上させる部品としての役割を担っており、リトラクタアンカ部３への強度部材の使用が不要となる。
【００２４】
また、リヤピラー１０の車両後方の下部は、図１に示すように、車両下方へ向かって延長されており、ホイールハウスインナパネル１１とスポット溶接によって接合されている。これにより、ショルダアンカ部２及びリトラクタアンカ部３に加わる荷重がホイールハウスインナパネル１１に分散できる構造となっている。
【００２５】
本発明の実施形態に係る側部車体構造が適用された車両において、車両前方から荷重が加えられ、後部座席搭乗者の慣性加重をシートベルト１で受け、ショルダアンカ部２が図２及び図３の矢印で示すように、車両前方及び車両下方へ向かって荷重Ｆを受けると、ショルダアンカ４は、車両前方に移動する。これに伴い、サイドボデーアウタパネル７が変形することになる。このサイドボデーアウタパネル７の変形により、その変形分だけ荷重Ｆの分散が可能となり、その結果、ショルダアンカ部２の変形が低減することになる。
また、ショルダアンカ４が車両前方に移動すると、これに引きずられてリヤピラー１０の上部が車両前方へ向かって変形しようとする。しかし、リヤピラー１０の足部が変形を押し留める効果を発揮するため、ショルダアンカ部２の変形が低減することになる。
【００２６】
このように、本発明の実施形態に係る側部車体構造においては、ショルダアンカ部２に設けられるショルダリーンフォースメント９の後端部９ａがサイドボデーアウタパネル７とクォータパネル８との接合部まで延長され、これらショルダリーンフォースメント９の後端部９ａ、サイドボデーアウタパネル７及びクォータパネル８が、３枚重ね合わせられた状態で、スポット溶接によって接合されているため、ショルダアンカ部２の強度を向上させることができ、ショルダアンカ部２に加わる荷重Ｆの分散によりショルダアンカ部２の変形を抑えることができる。
【００２７】
また、本実施形態の側部車体構造では、ショルダリーンフォースメント９がショルダアンカ部２の直下に設けられるリヤピラー１０とスポット溶接で接合されているため、厚板同士の結合となり、ショルダアンカ部２の強度を大きく向上させることができるとともに、車両前方への荷重入力時のショルダアンカ部２の倒れこみを防止できる。しかも、本実施形態の側部車体構造では、リヤピラー１０の車両前後の側面形状が車両前方へ向かって、くの字状に湾曲して形成され、リヤピラー１０とクォータパネル８との接合によって、ショルダアンカ部２の下位が閉断面形状に形成されているため、ショルダアンカ部２に加わる荷重を当該閉断面部分の全体で受け止めることができ、剛性を有するリヤピラー１０の最大限の利用によってショルダアンカ部２の変形を抑えることができる。
【００２８】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【００２９】
１ シートベルト
２ ショルダアンカ部
３ リトラクタアンカ部
４ ショルダアンカ
５ リトラクタアンカ
６ リトラクタ
７ サイドボデーアウタパネル
８ クォータパネル
９ ショルダリーンフォースメント
１０ リヤピラー
Ｆ 荷重
Ｓ スペース
【技術分野】
【０００１】
本発明は、側部車体構造に係り、詳しくはシートベルト用ショルダアンカ部が設けられている車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【０００２】
一般的な車両の側部車体構造には、シートベルトの取付け部として、ショルダアンカ部とリトラクタアンカ部が設けられており、ショルダアンカ部は、薄板のクォータパネルに設けられている。このような側部車体構造の車両においては、車両前方から荷重が加えられた場合、ショルダアンカ部とリトラクタアンカ部へ加わる大きな荷重を側部車体が受け止めるようになっている。しかし、薄板のクォータパネルでは、ショルダアンカ部へ加わる荷重を受け持つことができない。
そのため、従来の側部車体構造の中には、特許文献１のように、クォータパネルに対して、車両外側（サイドボデーアウタパネルとの間）に断面ハット型のリーンフォースメントを取付け、断面コ字状の閉断面を形成することによって、ショルダアンカ部へ加わる荷重を受け持つ構造が採られている。
【０００３】
また、車両前方から荷重が加えられ、後部座席搭乗者の慣性荷重をシートベルトで受け、ショルダアンカが車両前方斜め下に荷重を受けると、ショルダアンカ部が車両前方に変形することになる。
そのため、従来の側部車体構造の中には、特許文献２のように、クォータパネル及びリーンフォースメント（裏金補強）によりショルダアンカが側部車体からもぎ取れない強度を確保していた。クォータパネルの変形を抑えるためには、クォータパネルの板厚を厚くし、クォータパネル自体の剛性確保と、クォータパネルの他部品への接合による荷重分散で、上記の荷重を吸収する対策が施されている。
あるいは、特許文献３、４のように、クォータパネルの上下方向にメンバを通して配置し、側部車体の剛性を確保するとともに、当該メンバにショルダアンカを接合することによって、荷重吸収を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特許第２８４５０６１号公報
【特許文献２】特開２００７−２９６８９０号公報
【特許文献３】特開２００８−６２７４８号公報
【特許文献４】特開２００８−２３８８８５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、上述した従来の側部車体構造のように、クォータパネルの板厚を厚くすることは、車体の重量増大を招き、車両の燃費に悪影響を及ぼすおそれがあった。
また、上述した従来の側部車体構造のように、クォータパネルに対して補強部品を追加することは、車体の重量増大を招くのみならず、組立工程での取扱い工数が増え、生産効率の低下をきたすおそれがあった。
さらに、特許文献１には、リトラクタアンカ部の構造に関する記載がなく、断面ハット型のリーンフォースメントが車両外側に位置することから、リトラクタアンカ部への荷重を受け止めて保持するには、別部品を設ける必要があった。そのため、上記した同様、車体の重量増大及び組立工程数の増加を招来するという問題があった。
【０００６】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、部品点数及び組立工程数を増やすことなく、ショルダアンカ部の強度向上を図ることが可能な車両の側部車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、シートベルト用ショルダアンカ部が設けられている車両の側部車体構造において、前記ショルダアンカ部のショルダリーンフォースメントが、サイドボデーアウタパネルとクォータパネルとの接合部まで延長し、前記ショルダリーンフォースメント、前記サイドボデーアウタパネル及び前記クォータパネルが３枚重ね合わせられた状態で接合されている。
【０００８】
また、本発明において、前記ショルダリーンフォースメントは、前記ショルダアンカ部に位置するリヤピラーと接合されている。
【０００９】
さらに、本発明において、前記ショルダアンカ部の下位において、前記クォータパネルを車両外側へ向かって屈曲させて逃がすことにより、車両内側にスペースが形成されているとともに、前記スペースの車両内側には、前記リヤピラーが設けられている。
そして、本発明において、前記リヤピラーは、前記ショルダアンカ部の直下に設けられている。
【００１０】
また、本発明において、前記リヤピラーは側面視で車両前方へ凸状に湾曲しており、前記リヤピラーと前記クォータパネルとの接合によって、前記ショルダアンカ部の下位が閉断面形状に形成されている。
【発明の効果】
【００１１】
上述の如く、本発明に係る車両の側部車体構造は、シートベルト用ショルダアンカ部が設けられているものであって、前記ショルダアンカ部のショルダリーンフォースメントが、サイドボデーアウタパネルとクォータパネルとの接合部まで延長し、前記ショルダリーンフォースメント、前記サイドボデーアウタパネル及び前記クォータパネルが３枚重ね合わせられた状態で接合されているので、ショルダアンカ部における車両前方へ加わる荷重に対して、サイドボデーアウタパネルを補強部材としてショルダアンカ部の強度向上に寄与させることができる。
【００１２】
また、本発明において、前記ショルダリーンフォースメントは、前記ショルダアンカ部に位置するリヤピラーと接合されているので、厚板同士が結合することになり、薄板のクォータパネルのみでショルダアンカ部に加わる荷重を受ける箇所を無くし、ショルダアンカ部の強度を大きく向上させることができる。
【００１３】
さらに、本発明において、前記ショルダアンカ部の下位において、前記クォータパネルを車両外側へ向かって屈曲させて逃がすことにより、車両内側にスペースが形成されているとともに、前記スペースの車両内側には、前記リヤピラーが設けられているので、シートベルト用リトラクタアンカ部をリヤピラーに設けることができ、部品点数の削減を図ることができる。
【００１４】
そして、本発明において、前記リヤピラーは、前記ショルダアンカ部の直下に設けられているので、リヤピラーがつっかい棒としての役割を果たし、車両前方への荷重が加わった際のショルダアンカ部の倒れこみを防止することができる。
【００１５】
また、本発明において、前記リヤピラーは側面視で車両前方へ凸状に湾曲しており、前記リヤピラーと前記クォータパネルとの接合によって、前記ショルダアンカ部の下位が閉断面形状に形成されているので、ショルダアンカ部から受ける荷重を閉断面全体で受けることが可能となり、リヤピラーの剛性を最大限に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１６】
【図１】本発明の実施形態に係る側部車体構造が適用される車両の室内側から見た車体の一部を示す斜視図である。
【図２】図１におけるＸ−Ｘ線断面図である。
【図３】図１におけるＹ−Ｙ線断面図である。
【図４】本発明の実施形態の側部車体構造において、リトラクタアンカ部が設けられた箇所を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１７】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図１〜図４は本発明の実施形態に係る車両の側部車体構造を示すものである。なお、図において、矢印Ａは車両前方向を示し、矢印Ｂは車両下方向を示す、矢印Ｆは荷重の入力方向を示している。
【００１８】
本発明の実施形態に係る車両の側部車体構造には、図１〜図４に示すように、後部座席搭乗者のシートベルト１の取付け部として、ショルダアンカ部２とリトラクタアンカ部３とが車両の上下方向に間隔を置いて設けられている。そして、ショルダアンカ部２には、ショルダアンカ４が取付けられ、リトラクタアンカ部３には、リトラクタアンカ５及びリトラクタ６が取付けられている。
【００１９】
ショルダアンカ部２は、車両外側のサイドボデーアウタパネル７と共に車両側部の車体を構成する薄板のクォータパネル８に配設されており、該クォータパネル８は、車両の前後及び上下方向に沿って延在している。また、ショルダアンカ部２が設置されるクォータパネル８の裏面側（サイドボデーアウタパネル７側）には、クォータパネル８を補強する厚板のショルダリーンフォースメント９が設けられている。
【００２０】
本実施形態のショルダリーンフォースメント９の後端部９ａは、図２に示すように、サイドボデーアウタパネル７とクォータパネル８との接合部まで延長されており、これらショルダリーンフォースメント９の後端部９ａ、サイドボデーアウタパネル７及びクォータパネル８は、３枚重ね合わせられた状態で、スポット溶接によって接合されている。３枚重ね合わせられた状態では、ショルダリーンフォースメント９の後端部９ａがサイドボデーアウタパネル７とクォータパネル８との間に配置されている。これにより、サイドボデーアウタパネル７も、強度部材として利用することが可能となる。
一方、ショルダリーンフォースメント９の前端部９ｂは、クォータパネル８に沿って折り曲げられ、クォータパネル８の裏面に重ね合わせられた状態で、スポット溶接によって接合されている。
【００２１】
また、本実施形態のショルダリーンフォースメント９の下端部９ｃは、図３に示すように、クォータパネル８に沿って折り曲げられ、クォータパネル８を介在させた３枚重ねの状態で、ショルダアンカ部２に位置する厚板のリヤピラー１０の上端部１０ａとスポット溶接によって接合されている。これにより、ショルダアンカ部２の下位の箇所が厚板同士の結合となり、薄板のクォータパネル８のみでショルダアンカ部２への荷重を受ける箇所が無くなることになる。そして、ショルダリーンフォースメント９の上端部９ｄは、クォータパネル８に沿って折り曲げられ、クォータパネル８の裏面に重ね合わせられた状態で、スポット溶接によって接合されている。
【００２２】
さらに、本実施形態のショルダアンカ部２の下位においては、図３に示すように、クォータパネル８を車両外側（サイドボデーアウタパネル７側）へ向かって屈曲させて逃がすことにより、車両内側にスペースＳが形成されている。このスペースＳの車両内側には、上記したリヤピラー１０が設けられている。
このリヤピラー１０は、ショルダアンカ部２の直下に設けられており、ショルダアンカ部２への荷重入力時に、リヤピラー１０がつっかい棒として機能するように構成され、ショルダアンカ部２の倒れこみを防ぐようになっている。しかも、リヤピラー１０は、車両前後の側面形状を車両前方へ向かって、くの字状に湾曲して形成されており、これらリヤピラー１０とクォータパネル８との接合によって、ショルダアンカ部２の下位が閉断面形状に形成されている。これにより、ショルダアンカ部２に加わる荷重は、下位の閉断面部分の正面全体で受け止められ、リヤピラー１０の剛性を最大限利用する構造となっている。
【００２３】
一方、リヤピラー１０は、図４に示すように、スペースＳの箇所において、水平断面ハット型を有しており、クォータパネル８との接合によってこの箇所が閉断面形状に形成されている。このリヤピラー１０には、リトラクタ６が設けられ、リトラクタ６は、閉断面形状の部分に収納されている。これによって、リヤピラー１０は、ショルダアンカ部２の取付け強度を向上させると同時に、リトラクタアンカ部３の取付け強度を向上させる部品としての役割を担っており、リトラクタアンカ部３への強度部材の使用が不要となる。
【００２４】
また、リヤピラー１０の車両後方の下部は、図１に示すように、車両下方へ向かって延長されており、ホイールハウスインナパネル１１とスポット溶接によって接合されている。これにより、ショルダアンカ部２及びリトラクタアンカ部３に加わる荷重がホイールハウスインナパネル１１に分散できる構造となっている。
【００２５】
本発明の実施形態に係る側部車体構造が適用された車両において、車両前方から荷重が加えられ、後部座席搭乗者の慣性加重をシートベルト１で受け、ショルダアンカ部２が図２及び図３の矢印で示すように、車両前方及び車両下方へ向かって荷重Ｆを受けると、ショルダアンカ４は、車両前方に移動する。これに伴い、サイドボデーアウタパネル７が変形することになる。このサイドボデーアウタパネル７の変形により、その変形分だけ荷重Ｆの分散が可能となり、その結果、ショルダアンカ部２の変形が低減することになる。
また、ショルダアンカ４が車両前方に移動すると、これに引きずられてリヤピラー１０の上部が車両前方へ向かって変形しようとする。しかし、リヤピラー１０の足部が変形を押し留める効果を発揮するため、ショルダアンカ部２の変形が低減することになる。
【００２６】
このように、本発明の実施形態に係る側部車体構造においては、ショルダアンカ部２に設けられるショルダリーンフォースメント９の後端部９ａがサイドボデーアウタパネル７とクォータパネル８との接合部まで延長され、これらショルダリーンフォースメント９の後端部９ａ、サイドボデーアウタパネル７及びクォータパネル８が、３枚重ね合わせられた状態で、スポット溶接によって接合されているため、ショルダアンカ部２の強度を向上させることができ、ショルダアンカ部２に加わる荷重Ｆの分散によりショルダアンカ部２の変形を抑えることができる。
【００２７】
また、本実施形態の側部車体構造では、ショルダリーンフォースメント９がショルダアンカ部２の直下に設けられるリヤピラー１０とスポット溶接で接合されているため、厚板同士の結合となり、ショルダアンカ部２の強度を大きく向上させることができるとともに、車両前方への荷重入力時のショルダアンカ部２の倒れこみを防止できる。しかも、本実施形態の側部車体構造では、リヤピラー１０の車両前後の側面形状が車両前方へ向かって、くの字状に湾曲して形成され、リヤピラー１０とクォータパネル８との接合によって、ショルダアンカ部２の下位が閉断面形状に形成されているため、ショルダアンカ部２に加わる荷重を当該閉断面部分の全体で受け止めることができ、剛性を有するリヤピラー１０の最大限の利用によってショルダアンカ部２の変形を抑えることができる。
【００２８】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【００２９】
１ シートベルト
２ ショルダアンカ部
３ リトラクタアンカ部
４ ショルダアンカ
５ リトラクタアンカ
６ リトラクタ
７ サイドボデーアウタパネル
８ クォータパネル
９ ショルダリーンフォースメント
１０ リヤピラー
Ｆ 荷重
Ｓ スペース
【特許請求の範囲】
【請求項１】
シートベルト用ショルダアンカ部が設けられている車両の側部車体構造において、
前記ショルダアンカ部のショルダリーンフォースメントが、サイドボデーアウタパネルとクォータパネルとの接合部まで延長し、前記ショルダリーンフォースメント、前記サイドボデーアウタパネル及び前記クォータパネルが３枚重ね合わせられた状態で接合されていることを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項２】
前記ショルダリーンフォースメントは、前記ショルダアンカ部に位置するリヤピラーと接合されていることを特徴とする請求項１に記載の車両の側部車体構造。
【請求項３】
前記ショルダアンカ部の下位において、前記クォータパネルを車両外側へ向かって屈曲させて逃がすことにより、車両内側にスペースが形成されているとともに、前記スペースの車両内側には、前記リヤピラーが設けられていることを特徴とする請求項１に記載の車両の側部車体構造。
【請求項４】
前記リヤピラーは、前記ショルダアンカ部の直下に設けられていることを特徴とする請求項３に記載の車両の側部車体構造。
【請求項５】
前記リヤピラーは側面視で車両前方へ凸状に湾曲しており、前記リヤピラーと前記クォータパネルとの接合によって、前記ショルダアンカ部の下位が閉断面形状に形成されていることを特徴とする請求項３または４に記載の車両の側部車体構造。
【請求項１】
シートベルト用ショルダアンカ部が設けられている車両の側部車体構造において、
前記ショルダアンカ部のショルダリーンフォースメントが、サイドボデーアウタパネルとクォータパネルとの接合部まで延長し、前記ショルダリーンフォースメント、前記サイドボデーアウタパネル及び前記クォータパネルが３枚重ね合わせられた状態で接合されていることを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項２】
前記ショルダリーンフォースメントは、前記ショルダアンカ部に位置するリヤピラーと接合されていることを特徴とする請求項１に記載の車両の側部車体構造。
【請求項３】
前記ショルダアンカ部の下位において、前記クォータパネルを車両外側へ向かって屈曲させて逃がすことにより、車両内側にスペースが形成されているとともに、前記スペースの車両内側には、前記リヤピラーが設けられていることを特徴とする請求項１に記載の車両の側部車体構造。
【請求項４】
前記リヤピラーは、前記ショルダアンカ部の直下に設けられていることを特徴とする請求項３に記載の車両の側部車体構造。
【請求項５】
前記リヤピラーは側面視で車両前方へ凸状に湾曲しており、前記リヤピラーと前記クォータパネルとの接合によって、前記ショルダアンカ部の下位が閉断面形状に形成されていることを特徴とする請求項３または４に記載の車両の側部車体構造。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２０１１−２２５０４６（Ｐ２０１１−２２５０４６Ａ）
【公開日】平成２３年１１月１０日（２０１１．１１．１０）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−９４９５０（Ｐ２０１０−９４９５０）
【出願日】平成２２年４月１６日（２０１０．４．１６）
【出願人】（０００００２０８２）スズキ株式会社 (3,196)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年１１月１０日（２０１１．１１．１０）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年４月１６日（２０１０．４．１６）
【出願人】（０００００２０８２）スズキ株式会社 (3,196)
【Ｆターム（参考）】
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