説明

車両の制御装置

【課題】摩擦係合要素の移動を規制するスナップリングを備えた摩擦係合装置が搭載された車両において、前記摩擦係合装置のスナップリングのせり出しを抑制する。
【解決手段】車両走行中に、アクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件(例えば、勾配センサによって検出される下り勾配が判定閾値以上であるという条件)で、摩擦係合装置(車両走行時に係合しているクラッチ・ブレーキ)を非係合状態にする。このように、アクセルオフ(アクセル開度=0%)での惰行走行中に摩擦係合装置を非係合状態にすることにより、スナップリングせり出しの要因となる摩擦力を解放(キャンセル)することができるので、スナップリングのせり出しを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン(内燃機関)と駆動輪との間の動力伝達経路に摩擦係合装置が設けられた車両に適用される制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを搭載した車両において、エンジンが発生するトルク及び回転数を車両の走行状態に応じて適切に駆動輪に伝達する変速機として、エンジンと駆動輪との間の変速比を自動的に最適設定する自動変速機が知られている。
【0003】
車両に搭載される自動変速機としては、例えば、クラッチ及びブレーキ等の摩擦係合装置と遊星歯車装置とを用いてギヤ段を設定する有段式(遊星歯車式)の自動変速機や、変速比を無段階に調整するベルト式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)がある。
【0004】
有段式の自動変速機が搭載された車両においては、車速とアクセル開度(またはスロットル開度)に応じた最適なギヤ段を得るための変速線(ギヤ段の切り替えライン)を有する変速マップがECU(Electronic Control Unit)等に記憶されており、車速及びアクセル開度に基づいて変速マップを参照して目標ギヤ段を算出し、その目標ギヤ段に基づいて、クラッチ及びブレーキなどの摩擦係合装置を所定の状態に係合または解放することによってギヤ段(変速比)を自動的に設定している。
【0005】
ベルト式無段変速機は、プーリ溝(V溝)を備えたプライマリプーリ(入力側プーリ)とセカンダリプーリ(出力側プーリ)とにベルトを巻き掛け、一方のプーリのプーリ溝の溝幅を拡大すると同時に、他方のプーリのプーリ溝の溝幅を狭くすることにより、それぞれのプーリに対するベルトの巻き掛け半径(有効径)を連続的に変化させて変速比を無段階に設定するように構成されている。
【0006】
ベルト式無段変速機が搭載された車両では、エンジントルクを伝達するトルクコンバータとベルト式無段変速機との間の動力伝達経路に前後進切替装置が設けられている。前後進切替装置は、遊星歯車機構、摩擦係合装置であるフォワードクラッチ(前進用クラッチ)及びリバースブレーキ(後進用ブレーキ)などを備えている。
【0007】
このような前後進切替装置や有段式の自動変速機に適用される摩擦係合装置は、例えば複数の摩擦プレートからなる摩擦係合要素を係合または解放することによりトルク伝達あるいはトルク伝達の遮断を行う装置である。また、こうした摩擦係合装置は、複数の摩擦プレートからなる摩擦係合要素の軸方向の移動を規制するためのスナップリングを備えている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0008】
スナップリングは、例えば図13に示すように、完全なリング形状ではなく、リング形状の一部が分断されたC型形状に加工されており、例えば摩擦係合要素(複数の摩擦プレート)が嵌合するスプラインの歯部(凸部)等に設けられた溝に嵌め込まれている。
【0009】
なお、車両に搭載される自動変速機の制御に関する技術として、下記の特許文献4に記載の技術がある。この特許文献4に記載の技術では、アクセル閉信号(アクセルオフの状態)が所定時間続いたときのみに、自動変速機をドライブレンジ状態からニュートラル状態へと自動的に変更することで、渋滞時等においてアクセルのオン/オフが繰り返して行われても、変速ショックが発生しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−254311号公報
【特許文献2】特開2008−064276号公報
【特許文献3】特開2008−128365号公報
【特許文献4】実開昭61−073863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、摩擦係合要素の移動を規制するスナップリングを備えた摩擦係合装置(クラッチ・ブレーキ)では、係合状態において正負のトルク入力が加わると、摩擦プレート(もしくはクラッチドラム等)とスナップリングとの間の摩擦力によって、スナップリングが内径側に引き込まれて、スナップリングの一部が溝からせり出した状態(図13の2点鎖線参照)が発生する場合がある。
【0012】
なお、特許文献4には、渋滞時等においてアクセルオフが続く場合は自動変速機をニュートラル状態に移行する点が記載されているだけであり、上記したスナップリングのせり出しについては全く考慮されていない。従って、特許文献4に記載の技術を利用しても、上記した問題を解決することはできない。
【0013】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、摩擦係合要素の移動を規制するスナップリングを備えた摩擦係合装置が搭載された車両の制御装置において、前記摩擦係合装置のスナップリングのせり出しを抑制することが可能な制御を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、摩擦係合要素と、前記摩擦係合要素の軸方向の移動を規制するためのスナップリングとを備えた摩擦係合装置が、エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた車両に適用される制御装置において、車両走行中に、アクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件で、前記摩擦係合装置(クラッチ・ブレーキ等)を非係合状態にすることを技術的特徴としている。
【0015】
このように、アクセルオフでの車両走行中(惰行走行中)に、摩擦係合装置(具体的には、車両走行時に係合しているクラッチ・ブレーキ等)を非係合状態にすることにより、スナップリングのせり出しの要因となる摩擦力(摩擦プレートもしくはクラッチドラム等とスナップリングとの間に作用する摩擦力)を解放することができるので、スナップリングのせり出しを抑制することができる。
【0016】
ここで、車両走行中にアクセルオフ(アクセル開度0%)の条件が成立した場合の全てについて摩擦係合装置を非係合状態にすると、運転者による瞬間的なアクセルのオン・オフ操作があったときに、それに追従できないため、ドライバビリティの点で不具合が発生する可能性がある。このような点を考慮して、本発明では、車両走行中にアクセルがオフであるという条件に加えて、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件が成立している場合に摩擦係合装置を非係合状態にしており、このような構成により、ドライバビリティの悪化を防ぎながら、スナップリングのせり出しを抑制することができる。
【0017】
なお、ベルト式無段変速機が搭載された車両では、惰行走行時(被駆動時)においてエンジンイナーシャの影響により、ベルト挟圧力の安全率を駆動時よりも高く維持する必要があり、この点が燃費(燃料消費率)の低下をもたらす一因となっているが、本発明のように、惰行走行時に摩擦係合装置(具体的には、ベルト式無段変速機の前段の前後進切替装置のクラッチやブレーキ)を非係合状態にすることで、惰行走行時におけるエンジンイナーシャの影響を低減することができる。これによって惰行走行時のベルト挟圧力を下げることが可能となり、燃費の改善を図ることができる。
【0018】
本発明の具体的な構成として、水平面に対する車両の勾配を検出する勾配センサを備えており、前記勾配センサによって検出される車両の勾配が下り勾配であり、その下り勾配が判定閾値以上である場合にアクセルオフでの走行が続くと判断するという構成を挙げることができる。
【0019】
本発明において、車両走行中にアクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件で摩擦係合装置を非係合状態にした後に、アクセルがオンにされたときに当該摩擦係合装置を係合状態にするようにしてもよい。このように構成すれば、惰行走行時に摩擦係合装置を非係合状態にする期間を長くすることができるので、特に、ベルト式無段変速機が搭載された車両において、燃費の改善をより効果的に図ることができる。
【0020】
また、車両走行中にアクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件で摩擦係合装置を瞬時的に非係合状態にし、その後に当該摩擦係合装置を係合状態にするようにしてもよい。このような構成を採用しても、スナップリングのせり出しの要因となる摩擦力を解放することができるので、スナップリングのせり出しを抑制することができる。なお、この場合、「瞬時的」とは、スナップリングのせり出しを保持する摩擦力が解放され、スナップリングが張力にて元の形状に戻ることが可能な程度の短い時間のことである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、車両走行中にアクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件で摩擦係合装置を非係合状態にするので、摩擦係合装置のスナップリングのせり出しを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用する車両の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1の車両に適用される前後進切替装置の要部縦断面図である。
【図3】ベルト式無段変速機の変速制御に用いるマップの一例を示す図である。
【図4】ベルト式無段変速機のベルト挟圧力制御に用いるマップの一例を示す図である。
【図5】ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】スナップリングの摩擦力解放制御の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の制御装置を適用する車両の他の例に搭載されるエンジン、自動変速機及び制御系を示す概略構成図である。
【図8】図7に示す自動変速機の部分縦断面図である。
【図9】図7に示す自動変速機の作動表である。
【図10】図7に示す自動変速機の油圧制御回路の一部を示す回路構成図である。
【図11】図7に示すエンジン及び自動変速機の制御系の構成を示すブロック図である。
【図12】図7に示す自動変速機の変速制御に用いる変速マップの一例を示す図である。
【図13】スナップリングの一例を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
[実施形態1]
図1は、本発明を適用する車両の一例を示す概略構成図である。
【0025】
この例の車両は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両であって、走行用動力源であるエンジン(内燃機関)1、流体伝動装置としてのトルクコンバータ2、前後進切替装置3、ベルト式無段変速機(CVT)4、減速歯車装置5、差動歯車装置6、及び、ECU8などが搭載されており、そのECU8、後述する油圧制御回路20、トルクコンバータ2、前後進切替装置3(フォワードクラッチC1及びリバースブレーキB1等)、ベルト式無段変速機4、図5に示すアクセル開度センサ107及び勾配センサ108等の各種センサ類などによって車両の制御装置が実現されている。
【0026】
エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11はトルクコンバータ2に連結されており、エンジン1の出力が、トルクコンバータ2から前後進切替装置3、ベルト式無段変速機4及び減速歯車装置5を介して差動歯車装置6に伝達され、左右の駆動輪7へ分配される。
【0027】
これらエンジン1、トルクコンバータ2、前後進切替装置3、ベルト式無段変速機4、及び、ECU8の各部について以下に説明する。
【0028】
−エンジン−
エンジン1は、例えば多気筒ガソリンエンジンである。エンジン1に吸入される吸入空気量は電子制御式のスロットルバルブ12により調整される。スロットルバルブ12は運転者のアクセルペダル操作とは独立してスロットル開度を電子的に制御することが可能であり、その開度(スロットル開度)はスロットル開度センサ102によって検出される。また、エンジン1の冷却水温は水温センサ103によって検出される。
【0029】
スロットルバルブ12のスロットル開度はECU8によって駆動制御される。具体的には、エンジン回転数センサ101によって検出されるエンジン回転数Ne、及び、運転者のアクセルペダル踏み込み量(アクセル操作量Acc)等のエンジン1の運転状態に応じた最適な吸入空気量(目標吸気量)が得られるようにスロットルバルブ12のスロットル開度を制御している。より詳細には、スロットル開度センサ102を用いてスロットルバルブ12の実際のスロットル開度を検出し、その実スロットル開度が、上記目標吸気量が得られるスロットル開度(目標スロットル開度)に一致するようにスロットルバルブ12のスロットルモータ13をフィードバック制御している。
【0030】
−トルクコンバータ−
トルクコンバータ2は、入力側のポンプインペラ21、出力側のタービンランナ22、及び、トルク増幅機能を発現するステータ23などを備えており、ポンプインペラ21とタービンランナ22との間で流体(作動油)を介して動力伝達を行う。ポンプインペラ21はエンジン1のクランクシャフト11に連結されている。タービンランナ22はタービンシャフト27を介して前後進切替装置3に連結されている。
【0031】
トルクコンバータ2には、当該トルクコンバータ2の入力側と出力側とを直結するロックアップクラッチ24が設けられている。ロックアップクラッチ24は、係合側油室25内の油圧と解放側油室26内の油圧との差圧(ロックアップ差圧)を制御することにより完全係合・半係合(スリップ状態での係合)または解放される。
【0032】
ロックアップクラッチ24を完全係合させることにより、ポンプインペラ21とタービンランナ22とが一体回転する。また、ロックアップクラッチ24を所定のスリップ状態(半係合状態)で係合させることにより、駆動時には所定のスリップ量でタービンランナ22がポンプインペラ21に追随して回転する。一方、ロックアップ差圧を負に設定することによりロックアップクラッチ24は解放状態となる。
【0033】
そして、トルクコンバータ2にはポンプインペラ21に連結して駆動される機械式のオイルポンプ(油圧発生源)10が設けられている。
【0034】
−前後進切替装置−
前後進切替装置3は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構30、フォワードクラッチ(前進用クラッチ)C1及びリバースブレーキ(後進用ブレーキ)B1を備えている。
【0035】
遊星歯車機構30のサンギヤ31はトルクコンバータ2のタービンシャフト27に一体的に連結されており、キャリア33はベルト式無段変速機4の入力軸40に一体的に連結されている。これらキャリア33とサンギヤ31とはフォワードクラッチC1を介して選択的に連結されている。また、リングギヤ32はリバースブレーキB1を介してハウジング300に選択的に固定されるようになっている。
【0036】
フォワードクラッチC1及びリバースブレーキB1は、油圧制御回路20によって係合・解放される油圧式の摩擦係合装置であって、フォワードクラッチC1が係合され、リバースブレーキB1が解放されることにより、前後進切替装置3が一体回転状態となって前進用動力伝達経路が成立(達成)し、この状態で、前進方向の駆動力がベルト式無段変速機4側へ伝達される。
【0037】
一方、リバースブレーキB1が係合され、フォワードクラッチC1が解放されると、前後進切替装置3によって後進用動力伝達経路が成立(達成)する。この状態で、ベルト式無段変速機4の入力軸40がタービンシャフト27に対して逆方向へ回転し、この後進方向の駆動力がベルト式無段変速機4側へ伝達される。また、フォワードクラッチC1及びリバースブレーキB1がともに解放されると、前後進切替装置3は動力伝達を遮断するニュートラル(遮断状態)になる。
【0038】
次に、フォワードクラッチC1及びリバースブレーキB1の各構造について、図2を参照して説明する。
【0039】
まず、フォワードクラッチC1は、クラッチ構成部材である摩擦係合要素301を備えている。摩擦係合要素301は、複数のアウタ摩擦プレート311と、その各アウタ摩擦プレート311の間に配置された複数のインナ摩擦プレート312によって構成されている。
【0040】
アウタ摩擦プレート311は、クラッチドラム310の内径側に設けられたスプライン310aに嵌合されており、軸方向に移動可能となっている。インナ摩擦プレート312は、キャリア33の摩擦板支持部33aの外径側にスプライン嵌合されており、軸方向に移動可能となっている。
【0041】
クラッチドラム310のスプライン310aには、摩擦係合要素301の軸方向の移動(クラッチ用アクチュエータ314とは反対側への移動)を規制するためのスナップリング313が設けられている。スナップリング313は、例えば、図13の実線で示すように、リング形状の一部が分断されたC型形状に加工されており、クラッチドラム310のスプライン310aの歯部(凸部)に設けた溝310bに嵌め込まれている。
【0042】
クラッチ用アクチュエータ314は、クラッチピストン314a、そのクラッチピストン314aとクラッチドラム310との間に形成された油室314b、及び、クラッチピストン314aを解放側へ付勢するリターンスプリング(圧縮コイルばね)314cなどによって構成されている。
【0043】
以上の構造のフォワードクラッチC1において、油室314bに所定の圧力の作動油を供給すると、クラッチピストン314aが摩擦係合要素301側に移動し、このクラッチピストン314aの先端部の押圧部材314Aが摩擦係合要素301を押圧する。このようにして摩擦係合要素301が押圧されることにより、当該摩擦係合要素301を構成するアウタ摩擦プレート311とインナ摩擦プレート312とが互いに係合してフォワードクラッチC1が係合状態となる。一方、油室314bに作動油を供給しない状態(作動油をドレンした状態)では、リターンスプリング314cの弾性力によってクラッチピストン314aが摩擦係合要素301に対して離反する向きに移動して、フォワードクラッチC1が解放状態になる。
【0044】
リバースブレーキB1は、ブレーキ構成部材である摩擦係合要素302を備えている。摩擦係合要素302は、上記したフォワードクラッチC1と同様に、複数のアウタ摩擦プレート321と、その各アウタ摩擦プレート321の間に配置された複数のインナ摩擦プレート322とによって構成されている。
【0045】
アウタ摩擦プレート321は、ハウジング300の内径側に設けられたスプライン300aに嵌合されており、軸方向に移動可能となっている。インナ摩擦プレート322は、リングギヤ32の外径側にスプライン嵌合されており、軸方向に移動可能となっている。
【0046】
ハウジング300のスプライン300aには、摩擦係合要素302の軸方向の移動(ブレーキ用アクチュエータ324とは反対側への移動)を規制するためのスナップリング323が設けられている。スナップリング323は、例えば図13の実線で示すように、リング形状の一部が分断されたC型形状に加工されており、ハウジング300のスプライン300aの歯部(凸部)に設けた溝300bに嵌め込まれている。
【0047】
ブレーキ用アクチュエータ324は、ブレーキピストン324a、そのブレーキピストン324aとハウジング300との間に形成された油室324b、及び、ブレーキピストン324aを解放側へ付勢するリターンスプリング(圧縮コイルばね)324cなどによって構成されている。
【0048】
以上の構造のリバースブレーキB1において、油室324bに所定の圧力の作動油を供給すると、ブレーキピストン324aが摩擦係合要素302側に移動し、このブレーキピストン324aの先端部の押圧部材324Aが摩擦係合要素302を押圧する。このようにして摩擦係合要素302が押圧されることにより、当該摩擦係合要素302を構成するアウタ摩擦プレート321とインナ摩擦プレート322とが互いに係合してリバースブレーキB1が係合状態となる。一方、油室324bに作動油を供給しない状態(作動油をドレンした状態)では、リターンスプリング324cの弾性力によってクラッチピストン324aが摩擦係合要素302に対して離反する向きに移動して、リバースブレーキB1が解放状態になる。
【0049】
−ベルト式無段変速機−
ベルト式無段変速機4は、図1に示すように、入力側のプライマリプーリ41、出力側のセカンダリプーリ42、及び、これらプライマリプーリ41とセカンダリプーリ42とに巻き掛けられた金属製のベルト43などを備えている。
【0050】
プライマリプーリ41は、有効径が可変な可変プーリであって、入力軸40に固定された固定シーブ411と、入力軸40に軸方向のみの摺動が可能な状態で配設された可動シーブ412とによって構成されている。セカンダリプーリ42も同様に有効径が可変な可変プーリであって、出力軸44に固定された固定シーブ421と、出力軸44に軸方向のみの摺動が可能な状態で配設された可動シーブ422とによって構成されている。
【0051】
プライマリプーリ41の可動シーブ412側には、固定シーブ411と可動シーブ412との間のV溝幅を変更するための油圧アクチュエータ413が配置されている。また、セカンダリプーリ42の可動シーブ422側にも同様に、固定シーブ421と可動シーブ422との間のV溝幅を変更するための油圧アクチュエータ423が配置されている。
【0052】
以上の構造のベルト式無段変速機4において、プライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413の油圧を制御することにより、プライマリプーリ41及びセカンダリプーリ42の各V溝幅が変化してベルト43の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(γ=プライマリプーリ回転数(入力軸回転数)Nin/セカンダリプーリ回転数(出力軸回転数)Nout)が連続的に変化する。また、セカンダリプーリ42の油圧アクチュエータ423の油圧は、ベルト滑りが生じない所定の挟圧力でベルト43が挟圧されるように制御される。これらの制御はECU8及び油圧制御回路20によって実行される。
【0053】
−油圧制御回路−
油圧制御回路20は、図1に示すように、変速速度制御部20a、ベルト挟圧力制御部20b、ライン圧制御部20c、ロックアップクラッチ24の係合(完全係合及び半係合)または解放を制御するロックアップ係合圧制御部20d、前後進切替装置3のフォワードクラッチC1及びリバースブレーキB1の係合または解放を制御するクラッチ圧力制御部20e、並びに、マニュアルバルブ20fなどを備えている。なお、クラッチ圧力制御部20eには、リニアソレノイドバルブSLTにて制御されたライン圧が供給される。
【0054】
また、油圧制御回路20には、変速速度制御用の変速制御ソレノイドバルブDS1及び変速制御ソレノイドバルブDS2、ベルト挟圧力制御用のリニアソレノイドバルブSLS、ライン圧制御用のリニアソレノイドバルブSLT、並びに、ロックアップ係合圧制御用のデューティソレノイドバルブDSUを備えている。これらソレノイドバルブDS1,DS2,SLS,SLT,DSUにはECU8からの制御信号が供給される。
【0055】
そして、ECU8は、例えば図3に示すマップ、つまり、運転者の出力要求量を表すアクセル操作量Acc及び車速Vをパラメータとして予め設定された変速マップから入力側の目標回転数Nintを算出し、実際の入力軸回転数Ninが目標回転数Nintと一致するように、それらの偏差(Nint−Nin)に応じて変速制御ソレノイドバルブDS1,DS2を制御してベルト式無段変速機4の変速制御する。すなわち、変速制御ソレノイドバルブDS1,DS2の制御により、プライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413に対する作動油の供給・排出によって変速制御圧が制御されて変速比γが連続的に変化する。図3のマップは変速条件に相当し、ECU8のROM82(図5参照)内に記憶されている。
【0056】
なお、図3のマップにおいて、車速Vが小さくてアクセル操作量Accが大きい程大きな変速比γになる目標回転数Nintが設定されるようになっている。また、車速Vはセカンダリプーリ回転数(出力軸回転数)Noutに対応するため、プライマリプーリ回転数(入力軸回転数)Ninの目標値である目標回転数Nintは目標変速比に対応し、ベルト式無段変速機4の最小変速比γminと最大変速比γmaxの範囲内で設定されている。
【0057】
また、ECU8は、例えば図4に示すマップ、つまり、伝達トルクに対応するアクセル開度Acc及び変速比γ(γ=Nin/Nout)をパラメータとし、ベルト滑りが生じないように、予め設定された必要油圧(ベルト挟圧力に相当)のマップに従って、油圧制御回路20のベルト挟圧力制御用のリニアソレノイドバルブSLSを制御し、セカンダリプーリ42の油圧アクチュエータ423の油圧を調圧制御することによってベルト式無段変速機4のベルト挟圧力を制御する。図4のマップは挟圧力制御条件に相当し、ECU8のROM82(図5参照)内に記憶されている。
【0058】
−ECU−
ECU8は、図5に示すように、CPU81、ROM82、RAM83及びバックアップRAM84などを備えている。
【0059】
ROM82には、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU81は、ROM82に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM83はCPU81での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM84はエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0060】
これらCPU81、ROM82、RAM83、及び、バックアップRAM84はバス87を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース85及び出力インターフェース86に接続されている。
【0061】
入力インターフェース85には、エンジン回転数センサ101、スロットル開度センサ102、水温センサ103、タービン回転数センサ104、プライマリプーリ回転数センサ105、セカンダリプーリ回転数センサ106、アクセル開度センサ107、水平面に対する車両の勾配を検出する勾配センサ108、ブレーキペダルセンサ109、及び、シフトレバー9のレバーポジション(操作位置)を検出するレバーポジションセンサ110などが接続されており、その各センサの出力信号、つまり、エンジン1の回転数(エンジン回転数)Ne、スロットルバルブ12のスロットル開度θth、タービンシャフト27の回転数(タービン回転数)Nt、プライマリプーリ回転数(入力軸回転数)Nin、セカンダリプーリ回転数(出力軸回転数)Nout、アクセルペダルの操作量(アクセル関度)Acc、車両勾配α、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無(ブレーキON・OFF)、及び、シフトレバー9のレバーポジション(操作位置)などを表す信号がECU8に供給される。
【0062】
出力インターフェース86には、スロットルモータ13、燃料噴射装置14、点火装置15、及び、油圧制御回路20などが接続されている。
【0063】
ここで、ECU8に供給される信号のうち、タービン回転数Ntは、前後進切替装置3のフォワードクラッチC1が係合する前進走行時にはプライマリプーリ回転数(入力軸回転数)Ninと一致し、セカンダリプーリ回転数(出力軸回転数)Noutは車速Vに対応する。また、アクセル操作量Accは運転者の出力要求量を表している。なお、車両勾配αは、勾配センサ108のほか、例えば前後加速度センサなどの他のセンサの出力信号から算出するようにしてもよい。
【0064】
また、シフトレバー9は、駐車のためのパーキング位置「P」、後進走行のためのリバース位置「R」、動力伝達を遮断するニュートラル位置「N」、前進走行のためのドライブ位置「D」、前進走行時にベルト式無段変速機4の変速比γを手動操作で増減できるマニュアル位置「M」などの各位置に選択的に操作されるようになっている。
【0065】
マニュアル位置「M」には、変速比γを増減するためのダウンシフト位置やアップシフト位置、あるいは、変速範囲の上限(変速比γが小さい側)が異なる複数の変速レンジを選択できる複数のレンジ位置等が備えられている。
【0066】
レバーポジションセンサ110は、例えば、パーキング位置「P」、リバース位置「R」、ニュートラル位置「N」、ドライブ位置「D」、マニュアル位置「M」やアップシフト位置、ダウンシフト位置、あるいはレンジ位置等へシフトレバー9が操作されたことを検出する複数のON・OFFスイッチ等を備えている。なお、変速比γを手動操作で変更するために、シフトレバー9とは別にステアリングホイール等にダウンシフトスイッチやアップシフトスイッチ、あるいはレバー等を設けることも可能である。
【0067】
そして、ECU8は、上記した各種のセンサの出力信号などに基づいて、エンジン1の出力制御、ロックアップクラッチ24の係合・解放制御、後進切替装置3のフォワードクラッチC1及びリバースブレーキB1の各係合・解放制御、並びに、上述したベルト式無段変速機4の変速速度制御及びベルト挟圧力制御などを実行する。なお、エンジン1の出力制御は、スロットルモータ13、燃料噴射装置14、点火装置15及びECU8などによって実行される。さらに、ECU8は、下記の[スナップリングの摩擦力解放制御]を実行する。
【0068】
−スナップリングの摩擦力解放制御−
まず、この例の車両では、上述したように、ベルト式無段変速4の前段に配置の前後進切替装置3に、摩擦係合装置であるフォワードクラッチC1及びリバースブレーキB1が設けられている。これらフォワードクラッチC1及びリバースブレーキB1には、それぞれ、摩擦係合要素301,302の軸方向の移動を規制するスナップリング313,323が設けられている。
【0069】
このようにスナップリングを備えた摩擦係合装置(フォワードクラッチC1またはリバースブレーキB1)においては、上述したように、係合状態において正負のトルク入力が加わると、摩擦プレート(もしくはクラッチドラムやハウジング等)とスナップリングとの間の摩擦力によって、スナップリングが内径側に引き込まれて、スナップリングの一部が溝からせり出した状態(図13の2点鎖線参照)が発生する場合がある。特に、前後進切替装置3のフォワードクラッチC1は、通常制御では前進走行中において係合状態が継続されるので、上記したスナップリングのせり出し状態が長く保持される可能性が高い。
【0070】
このような点を解消するために、この例では、車両走行中にアクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件で摩擦係合装置を非係合状態にする制御を行うことで、スナップリングのせり出しを抑制する点に特徴がある。
【0071】
その具体的な制御について図6のフローチャートを参照して説明する。この図6の制御ルーチンは、前後進切替装置3のフォワードクラッチC1に設けたスナップリング313のせり出しを抑制する場合の制御の例を示す。
【0072】
まず、ステップST101では、セカンダリプーリ回転数センサ106の出力信号から算出される出力軸回転数Nout(車速V)に基づいて、車両走行中であるか否かを判定し、その判定結果が否定判定である場合はリターンする。ステップST101の判定結果が肯定判定である場合(車両走行中である場合)はステップST102に進む。
【0073】
ステップST102では、アクセル開度センサ107の出力信号から算出されるアクセル開度Accが0%(Acc=0%)つまりアクセルオフであるか否かを判定する。ステップST102の判定結果が否定判定である場合はリターンする。ステップST102の判定結果が肯定判定である場合はステップST103に進む。
【0074】
ステップST103では、勾配センサ108の出力信号から算出される車両勾配αが下り勾配であり、かつ、その下り勾配(勾配角度)が所定の判定閾値以上(下り勾配≧判定閾値)であるか否かを判定する。ステップST103の判定結果が否定判定である場合はリターンする。ステップST103の判定結果が肯定判定である場合はステップST104に進む。
【0075】
ここで、ステップST103は、アクセルオフでの走行が続けられるか否かを判断する処理ステップであって、このステップST103に判断に用いる判定閾値は、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件(下り勾配の角度)を、実験・計算等によって経験的に求め、その結果を基に適合した値を設定する。
【0076】
以上のステップST101、ステップST102及びステップST103の全ての条件が成立したとき、すなわち、車両走行中に、アクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断したときには、油圧制御回路20(クラッチ圧力制御部20e等)を制御して、フォワードクラッチC1を非係合状態(解放状態)にする(ステップST104)。
【0077】
そして、その後、車両走行中にアクセル開度センサ107の出力信号から算出されるアクセル開度Accが0%よりも大きい値(Acc>0%:アクセルオン)となった時点(ステップST105の判定結果が肯定判定となった時点)で、フォワードクラッチC1を係合状態にする(ステップST106)。
【0078】
以上のように、この例では、アクセルオフでの車両走行中(惰行走行中)に、摩擦係合装置であるフォワードクラッチC1を非係合状態(解放状態)にするので、スナップリングのせり出し状態を保持しようとする摩擦力(アウタ摩擦プレート311もしくはクラッチドラム310のスプライン310aとスナップリング313との間に作用する摩擦力)を解放(キャンセル)することができ、スナップリング313が張力にて元の形状に戻ることができる。これによってスナップリング313のせり出しを抑制することができる。
【0079】
しかも、この例では、車両走行中にアクセルオフ(アクセル開度0%)の条件が成立した場合の全てについてフォワードクラッチC1を非係合状態にするのではなく、車両走行中にアクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件(下り勾配≧判定閾値)が成立している場合に、摩擦係合装置を非係合状態にするので、運転者による瞬間的なアクセルのオン・オフ操作があったときには、それに追従することができる。これによってドライバビリティの悪化を防ぎながら、スナップリングのせり出しを抑制することができる。
【0080】
ここで、ベルト式無段変速機が搭載された車両では、惰行走行時(被駆動時)においてエンジンイナーシャの影響により、ベルト挟圧力の安全率を駆動時よりも高く維持する必要があり、この点が燃費の低下をもたらす一因となっているが、この例では、惰行走行時に、ベルト式無段変速機4の前段に配置の前後進切替装置3のフォワードクラッチC1を非係合状態(エンジン1とベルト式無段変速機4とを遮断状態)にするので、惰行走行時におけるエンジンイナーシャの影響を低減することができる。これによって惰行走行時のベルト挟圧力を下げることが可能となる結果、燃費の改善を図ることができる。
【0081】
以上の例では、車両走行(前進走行)中にアクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件が成立したときに、前後進切替装置3のフォワードクラッチC1を非係合状態にしているが、後進惰行走行時(リバースブレーキB1係合時)において、上記した条件が成立するような状況となったときには、前後進切替装置3のリバースブレーキB1を非係合状態にするようにしてもよい。
【0082】
なお、以上のスナップリングの摩擦力解放制御は、例えばエンジンブレーキの要求があったときには実行しないようにしてもよい。
【0083】
[実施形態2]
次に、本発明の他の実施形態を図7〜図12に基づいて説明する。
【0084】
この例では、有段式の自動変速機が搭載された車両に適用される制御装置について説明する。この例においても、後述するECU1000、油圧制御回路800、トルクコンバータ600、自動変速機700(クラッチ・ブレーキ等の摩擦係合装置を含む)、アクセル開度センサ926、及び、勾配センサ927等の各種センサ類などによって車両の制御装置が実現されている。
【0085】
図7は有段式の自動変速機(トルクコンバータを含む)の一例を示すスケルトン図である。この例の自動変速機700はFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に搭載される。
【0086】
まず、トルクコンバータ600は、入力軸側のポンプインペラ601と、出力軸側のタービンランナ602と、トルク増幅機能を発現するステータ603と、ワンウェイクラッチ604とを備え、ポンプインペラ601とタービンランナ602との間で流体を介して動力伝達を行う。
【0087】
トルクコンバータ600には、入力側と出力側とを直結状態にするロックアップクラッチ605が設けられており、このロックアップクラッチ605を完全係合させることにより、ポンプインペラ601とタービンランナ602とが一体回転する。また、ロックアップクラッチ605を所定のスリップ状態で係合させることにより、駆動時には所定のスリップ量でタービンランナ602がポンプインペラ601に追随して回転する。
【0088】
自動変速機700は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置701を主体として構成される第1変速部700Aと、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置702及びダブルピニオン型の第3遊星歯車装置703を主体として構成される第2変速部700Bとを同軸線上に有し、入力軸711の回転を変速して出力軸712に伝達し、出力歯車713から出力する遊星歯車式の多段変速機(前進6段速、後進1段速)である。出力歯車713は、車両に搭載される差動歯車装置に直接的に連結されるか、もしくはカウンタ軸を介して差動歯車装置に連結される。
【0089】
なお、自動変速機700及びトルクコンバータ600は中心線に対して略対称的に構成されているので、図7では中心線の下半分を省略している。
【0090】
第1変速部700Aを構成している第1遊星歯車装置701は、サンギヤS1、キャリアCA1、及び、リングギヤR1の3つの回転要素を備えており、サンギヤS1が入力軸711に連結される。さらに、サンギヤS1は、リングギヤR1が第3ブレーキB3を介してハウジングケース710に固定されることにより、キャリアCA1を中間出力部材として入力軸711に対して減速回転される。
【0091】
第2変速部700Bを構成している第2遊星歯車装置702及び第3遊星歯車装置703においては、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されている。
【0092】
具体的には、第3遊星歯車装置703のサンギヤS3によって第1回転要素RM1が構成されており、第2遊星歯車装置702のリングギヤR2及び第3遊星歯車装置703のリングギヤR3が互いに連結されて第2回転要素RM2が構成されている。さらに、第2遊星歯車装置702のキャリアCA2及び第3遊星歯車装置703のキャリアCA3が互いに連結されて第3回転要素RM3が構成されている。また、第2遊星歯車装置702のサンギヤS2によって第4回転要素RM4が構成されている。
【0093】
第2遊星歯車装置702及び第3遊星歯車装置703は、キャリアCA2及びCA3が共通の部材にて構成されているとともに、リングギヤR2及びR3が共通の部材にて構成されている。さらに、第2遊星歯車装置702のピニオンギヤが第3遊星歯車装置703の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
【0094】
第1回転要素RM1(サンギヤS3)は、中間出力部材である第1遊星歯車装置701のキャリアCA1に一体的に連結されており、第1ブレーキB1によってハウジングケース710に選択的に連結されて回転停止される。
【0095】
第2回転要素RM2(リングギヤR2及びR3)は、第2クラッチC2を介して入力軸711に選択的に連結される一方、第2ブレーキB2を介してハウジングケース710に選択的に連結されて回転停止される。また、第2回転要素RM2はワンウェイクラッチF1によって、常に、逆方向の回転が阻止される。
【0096】
第3回転要素RM3(キャリアCA2及びCA3)は出力軸712に一体的に連結されている。第4回転要素RM4(サンギヤS2)は、第1クラッチC1を介して入力軸711に選択的に連結される。
【0097】
次に、自動変速機1の構成部材のうち、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の各構造について図8を参照して説明する。
【0098】
第1クラッチC1は、第1摩擦係合要素720を備えている。第1摩擦係合要素720は、複数のアウタ摩擦プレート721及びその各アウタ摩擦プレート721の間に配置された複数のインナ摩擦プレート722によって構成されている。
【0099】
第1摩擦係合要素720を構成するアウタ摩擦プレート721はクラッチドラム740の筒部741の内周面に加工されたスプライン742に嵌合されており、軸方向に移動可能となっている。インナ摩擦プレート722は第1クラッチハブ771の外周面にスプライン嵌合されており、軸方向に移動可能となっている。
【0100】
クラッチドラム740のスプライン742には、第1摩擦係合要素720の軸方向の移動(第2摩擦係合要素730側への移動)を規制するためのスナップリング723が設けられている。スナップリング723は、例えば図13の実線で示すように、リング形状の一部が分断されたC型形状に加工されており、クラッチドラム740のスプライン742の歯部(凸部)に設けた溝743に嵌め込まれている。
【0101】
また、第2クラッチC2は第2摩擦係合要素730を備えている。第2摩擦係合要素730も、同様に、複数のアウタ摩擦プレート731及びその各アウタ摩擦プレート731の間に配置された複数のインナ摩擦プレート732によって構成されている。
【0102】
第2摩擦係合要素730を構成するアウタ摩擦プレート731はクラッチドラム740の筒部741の内周面に加工されたスプライン742に嵌合されており、軸方向に移動可能となっている。インナ摩擦プレート732は第2クラッチハブ772の外周面にスプライン嵌合されており、軸方向に移動可能となっている。
【0103】
クラッチドラム740のスプライン742には、第2摩擦係合要素730の軸方向の移動(第1摩擦係合要素720側への移動)を規制するためのスナップリング733が設けられている。スナップリング733は、例えば図13の実線で示すように、リング形状の一部が分断されたC型形状に加工されており、クラッチドラム740のスプライン742の歯部(凸部)に設けた溝744に嵌め込まれている。
【0104】
クラッチドラム740の前面側(第1クラッチC1側)に、第1ピストン750が配置されている。第1ピストン750は入力軸711に対し軸方向に摺動自在に嵌め込まれている。第1ピストン750は略円板状の部材で、外周縁に押圧部材751が一体形成されている。第1ピストン750はクラッチドラム740と一体的に回転する。
【0105】
以上の第1ピストン750とクラッチドラム740の側壁745との間に第1油室750aが形成されており、この第1油室750a内に作動油が供給されると、第1ピストン750がクラッチドラム740に対して離間する方向(第1摩擦係合要素720側)に移動し、この第1ピストン750の先端部の押圧部材751が第1摩擦係合要素720を押圧する。このようにして第1摩擦係合要素720が押圧されることにより、当該第1摩擦係合要素720を構成するアウタ摩擦プレート721とインナ摩擦プレート722とが互いに係合して、第1クラッチC1が係合状態となる。
【0106】
一方、第1油室750aに作動油を供給しない状態(作動油をドレンした状態)では、後述するリターンスプリング750bの弾性力によって第1ピストン750が第1摩擦係合要素720に対して離反する向きに移動して、第1クラッチC1が解放状態になる。
【0107】
第1ピストン750の前面側(クラッチC1側)には円環状のバランサ781が配置されている。バランサ781は入力軸711に外嵌されており、入力軸711に固定されたスナップリング783によって第1ピストン750に対して離間する方向への移動が規制されている。バランサ781と第1ピストン750との間にはリターンスプリング(圧縮コイルばね)750bが配置されており、そのリターンスプリング750bの弾性力によって、第1ピストン750がバランサ781に対して離間する方向(クラッチドラム740側)に付勢されている。そして、このようなバランサ781と第1ピストン750との間に、第1油室750aの遠心油圧をキャンセルするキャンセル室(油室)791が形成されている。なお、以上の第1ピストン750、第1油室750a及びリターンスプリング750b等によって第1クラッチ用アクチュエータが構成されている。
【0108】
クラッチドラム740の背面側(第1ピストンの反対側)に第2ピストン760が配置されている。第2ピストン760は、クラッチドラム740の基部材740aに対し軸方向に摺動自在に嵌め込まれている。第2ピストン760はクラッチドラム740と一体的に回転する。
【0109】
第2ピストン760は、クラッチドラム740の外周部を覆う円筒状のシリンダ部材761と、そのシリンダ部材761の一端部に嵌め込まれた円環状の側壁762と、この側壁762をシリンダ部材761に固定するスナップリング763とによって構成されている。シリンダ部材761の先端(他端)には、内側(回転中心側)に突出する押圧部材763が一体形成されている。
【0110】
以上の第2ピストン760の側壁762とクラッチドラム740の側壁745との間に第2油室760aが形成されており、この第2油室760a内に作動油が供給されると、第2ピストン760がクラッチドラム740に対して離間する方向(第1ピストン750とは逆の方向)に移動し、この第2ピストン760の先端部の押圧部材763が第2摩擦係合要素730を押圧する。このようにして第2摩擦係合要素730が押圧されることにより、当該第2摩擦係合要素730を構成するアウタ摩擦プレート731とインナ摩擦プレート732とが互いに係合して、第2クラッチC2が係合状態となる。
【0111】
一方、第2油室760aに作動油を供給しない状態(作動油をドレンした状態)では、後述するリターンスプリング760bの弾性力によって第2ピストン760が第2摩擦係合要素730に対して離反する向きに移動して、第2クラッチC2が解放状態になる。
【0112】
第2ピストン760の背面側(第2油室760aの反対側)には円環状のバランサ782が配置されている。バランサ782はクラッチドラム740の基部材740aに外嵌されており、基部材740aに固定されたスナップリング784によって第2ピストン760に対して離間する方向への移動が規制されている。バランサ782と第2ピストン760の側壁762との間にはリターンスプリング(圧縮コイルばね)760bが配置されており、そのリターンスプリング760bの弾性力によって第2ピストン760がバランサ782に対して離間する方向(クラッチドラム740側)に付勢されている。そして、このようなバランサ782と第2ピストン760との間に、第2油室760aの遠心油圧をキャンセルするキャンセル室(油室)792が形成されている。なお、以上の第2ピストン760、第2油室760a及びリターンスプリング760b等によって第2クラッチ用アクチュエータが構成されている。
【0113】
以上の自動変速機2では、摩擦係合要素である第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3、及び、ワンウェイクラッチF1などが、所定の状態に係合または解放されることによって変速段が設定される。
【0114】
図9は、自動変速機700の各変速段を成立させるためのクラッチ及びブレーキの係合作動を説明する係合表であり、「○」は係合を、「×」は解放をそれぞれ表している。
【0115】
この図9に示すように、自動変速機700のクラッチC1を係合させると前進段の1速(1st)が成立し、この1速ではワンウェイクラッチF1が係合する。第1クラッチC1及びブレーキB1を係合させると前進段の2速(2nd)が成立する。第1クラッチC1及び第3ブレーキB3を係合させると前進段の3速(3rd)が成立する。
【0116】
また、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を係合させると前進段の4速(4th)が成立する。第2クラッチC2及び第3ブレーキB3を係合させると前進段の5速(5th)が成立する。第2クラッチC2及び第1ブレーキB1を係合させると前進段の6速(6th)が成立する。一方、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3を係合させると後進段(Rev)が成立する。
【0117】
そして、図7に示すように、自動変速機700の入力軸711の回転数(タービン回転数)は入力軸回転数センサ924によって検出される。また、自動変速機700の出力軸712の回転数は出力軸回転数センサ925によって検出される。これら入力軸回転数センサ924及び出力軸回転数センサ925の出力信号から算出される回転数の比(出力回転数/入力回転数)に基づいて自動変速機700の現在ギヤ段を判定することができる。
【0118】
次に、自動変速機700の油圧制御回路800の一部を図10を参照して説明する。
【0119】
この例の油圧制御回路800は、第1クラッチC1の係合・解放を制御するためのリニアソレノイドバルブ(SL1)801、第2クラッチC1の係合・解放を制御するためのリニアソレノイドバルブ(SL2)802、第1ブレーキB1の係合・解放を制御するためのリニアソレノイドバルブ(SL3)803、及び、第3ブレーキB3の係合・解放を制御するためのリニアソレノイドバルブ(SL4)804などを備えている。
【0120】
リニアソレノイドバルブ(SL1)801は、図示しないマニュアルバルブから出力されたDレンジ圧PDを元圧として第1クラッチC1の係合状態を制御するための第1油圧PC1を発生し、その第1油圧PC1を第1クラッチC1の油圧サーボに繋がる第1油路811に出力する。リニアソレノイドバルブ(SL2)802は、Dレンジ圧PDを元圧として第2クラッチC2の係合状態を制御するための第2油圧PC2を発生し、その第2油圧PC2を第2クラッチC2の油圧サーボに繋がる第2油路812に出力する。
【0121】
リニアソレノイドバルブ(SL3)803は、Dレンジ圧PDを元圧として第1ブレーキB1の係合状態を制御するための第3油圧PB1を発生し、その第3油圧PB1を第1ブレーキB1の油圧サーボに繋がる第3油路813に出力する。リニアソレノイドバルブ(SL4)804は、ライン圧PLを元圧として第3ブレーキB3の係合状態を制御するための第4油圧PB3を発生し、その第4油圧PB3を第3ブレーキB3の油圧サーボに繋がる第4油路814に出力する。なお、第2ブレーキB2は、図示しないリニアソレノイドバルブ(SLU、SL)及びB2コントロールバルブ等によって制御される。
【0122】
以上のリニアソレノイドバルブ(SL1)801、リニアソレノイドバルブ(SL2)802、リニアソレノイドバルブ(SL3)803、リニアソレノイドバルブ(SL4)804、リニアソレノイドバルブ(SLU、SL)などはECU1000によって制御される。
【0123】
−ECU−
ECU1000は、図5に示すECU8と同様に、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、及び、入力・出力インターフェースなどを備えている。
【0124】
ECU1000には、図11に示すように、エンジン回転数センサ921、スロットル開度センサ922、水温センサ923、入力軸回転数(タービン回転数)センサ924、出力軸回転数センサ925、アクセル開度センサ926、水平面に対する車両の勾配を検出する勾配センサ927、及び、シフトレバーのレバーポジション(操作位置)を検出するレバーポジションセンサ928などが接続されており、その各センサの出力信号がECU1000に入力される。また、ECU1000には、エンジンのスロットルモータ911、燃料噴射装置912、点火装置913、及び、油圧制御回路800などが接続されている。
【0125】
ECU1000は、油圧制御回路800にソレノイド制御信号を出力する。このソレノイド制御信号に基づいて油圧制御回路800のリニアソレノイドバルブ801〜804などが制御され、所定の変速ギヤ段(1速〜6速)を構成するように、自動変速機700の第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3、及び、ワンウェイクラッチF1などが所定の状態に係合または解放される。また、ECU1000は下記の[変速制御]、及び、[スナップリングの摩擦力解放制御]を実行する。
【0126】
−変速制御−
まず、この例の変速制御に用いる変速マップについて図12を参照して説明する。
【0127】
図12に示す変速マップは、車速及びアクセル開度をパラメータとし、それら車速及びアクセル開度に応じて、適正なギヤ段を求めるための複数の領域が設定されたマップであって、ECU1000のROM内に記憶されている。変速マップの各領域は複数の変速線(ギヤ段の切り替えライン)によって区画されている。なお、図12に示す変速マップには、シフトアップ変速線のみを示している。
【0128】
次に、変速制御の基本動作について説明する。
【0129】
ECU1000は、出力軸回転数センサ925の出力信号から車速を算出するとともに、アクセル開度センサ926の出力信号からアクセル開度を算出し、それら車速及びアクセル開度に基づいて図12の変速マップを参照して目標ギヤ段を算出する。さらに、入力軸回転数センサ924及び出力軸回転数センサ925の出力信号から算出される回転数の比(出力回転数/入力回転数)を求めて現在ギヤ段を判定し、その現在ギヤ段と目標ギヤ段とを比較して変速操作が必要であるか否かを判定する。
【0130】
その判定結果により、変速の必要がない場合(現在ギヤ段と目標ギヤ段とが同じで、ギア段が適切に設定されている場合)には、現在ギヤ段を維持するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機700の油圧制御回路800に出力する。
【0131】
一方、現在ギヤ段と目標ギヤ段とが異なる場合には変速制御を行う。例えば自動変速機700のギヤ段が「4速」の状態で走行している状況から、車両の走行状態が変化して、例えば図12に示す点Xから点Yに変化した場合は、シフトアップ変速線[4→5]を跨ぐ変化となるので、変速マップから算出される目標ギヤ段が「5速」となり、その5速のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機700の油圧制御回路800に出力して、4速のギヤ段から5速のギヤ段への変速(4→5アップ変速)を行う。
【0132】
−スナップリングの摩擦力解放制御−
この例においても、上記した[実施形態1]と同様に、車両走行中に、アクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件で、摩擦係合装置を非係合状態にする。
【0133】
具体的には、上記した図6の処理と同様に、まずは、車両走行中に、アクセル開度センサ926の出力信号から算出されるアクセル開度Accが0%(Acc=0%)であり、さらに勾配センサ927の出力信号から算出される勾配(下り勾配)が所定の判定閾値以上であるときに、現在のギヤ段で係合している自動変速機700の摩擦係合装置(例えばギヤ段が1stの場合は第1クラッチC1、4thの場合は第1クラッチC1及び第2クラッチC2;図9参照)を非係合状態(解放状態)にする。そして、その後、車両走行中にアクセル開度センサ926の出力信号から算出されるアクセル開度Accが0%よりも大きい値(Acc>0%:アクセルオン)となった時点で、摩擦係合装置(第1クラッチC1や第2クラッチC2等)を係合状態にする。
【0134】
この例においても、アクセルオフでの車両走行中(惰行走行中)に、摩擦係合装置(例えば、自動変速機700の第1クラッチC1や第2クラッチC2等)を非係合状態にするので、スナップリングのせり出しの要因となる摩擦力(アウタ摩擦プレート721,731もしくはクラッチドラム740のスプライン742とスナップリング723,733との間に作用する摩擦力)を解放(キャンセル)することができる。これによってスナップリング723,733のせり出しを抑制することができる。
【0135】
また、この例においても、車両走行中にアクセルオフ(アクセル開度0%)の条件が成立した場合の全てについて摩擦係合装置(第1クラッチC1や第2クラッチC2等)を非係合状態にするのではなく、車両走行中にアクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件(下り勾配≧判定閾値)が成立している場合に、摩擦係合装置を非係合状態にするので、運転者による瞬間的なアクセルのオン・オフ操作があったときには、それに追従することができる。これによってドライバビリティの悪化を防ぎながら、スナップリングのせり出しを抑制することができる。
【0136】
なお、車両走行中に第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3が係合している場合、上記条件(アクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件)が成立したときに、それらブレーキB1,B2,B3を非係合状態にしてもよい。
【0137】
−他の実施形態−
以上の例では、車両走行中にアクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件で摩擦係合装置(クラッチ・ブレーキ)を非係合状態にした後、アクセルオンとなるまでの間は摩擦係合装置の非係合状態を維持しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、車両走行中にアクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件で摩擦係合装置を瞬時的に非係合状態にし、その後に摩擦係合装置を係合状態にするようにしてもよい。このような構成を採用しても、スナップリングのせり出しの要因となる摩擦力を解放することができるので、スナップリングのせり出しを抑制することができる。
【0138】
なお、アクセルオフでの走行(惰行走行)が続くと判断する条件としては、「下り勾配が所定の判定閾値以上である」という条件以外の条件であってもよい。例えば、[アクセル開度=0%]の状態が所定の時間続いたことを条件として、摩擦係合装置を非係合状態にするようにしてもよい。
【0139】
以上の例では、ガソリンエンジンを搭載した車両の制御装置に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、ディーゼルエンジン等の他のエンジンを搭載した車両の制御装置にも適用可能である。
【0140】
また、車両に搭載される無段変速機としては、上記したベルト式無段変速機に限られることなく、トロイダル式無段変速機などの他の形式の無段変速機であってもよい。
【0141】
また、本発明の制御装置は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に限れられることなく、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両、4輪駆動車にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、エンジン(内燃機関)と駆動輪との間の動力伝達経路に摩擦係合装置が設けられた車両の制御に利用可能であり、さらに詳しくは、摩擦係合要素の移動を規制するスナップリングを有する摩擦係合装置が搭載された車両の制御に利用することができる。
【符号の説明】
【0143】
1 エンジン
2 トルクコンバータ
3 前後進切換装置
C1 フォワードクラッチ(摩擦係合装置)
B1 リバースブレーキ(摩擦係合装置)
4 ベルト式無段変速機
106 セカンダリプーリ回転数センサ
107 アクセル開度センサ
108 勾配センサ
20 油圧制御回路
20e クラッチ圧力制御部
SLT リニアソレノイドバルブ
8 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦係合要素と、前記摩擦係合要素の軸方向の移動を規制するためのスナップリングとを備えた摩擦係合装置が、エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた車両に適用される制御装置において、
車両走行中に、アクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件で、前記摩擦係合装置を非係合状態にすることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の制御装置において、
水平面に対する車両の勾配を検出する勾配センサを備え、前記勾配センサによって検出される勾配が下り勾配であり、その下り勾配が判定閾値以上である場合にアクセルオフでの走行が続くと判断することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両の制御装置において、
車両走行中に、アクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件で前記摩擦係合装置を非係合状態にした後、アクセルがオンにされたときに当該摩擦係合装置を係合状態にすることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の車両の制御装置において、
車両走行中に、アクセルがオフであり、かつ、アクセルオフでの走行が続くと判断される条件で前記摩擦係合装置を瞬時的に非係合状態にし、その後に当該摩擦係合装置を係合状態にすることを特徴とする車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−99470(P2011−99470A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253033(P2009−253033)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】