説明

車両の制御装置

【課題】バッテリの残容量が少なくなってエンジンを始動させるときに、排気ガス浄化触媒が活性状態にない場合に、排気エミッションの悪化を抑制する。
【解決手段】エンジンの駆動によるジェネレータの発電電力及びバッテリの放電電力により駆動される走行用モータを有する車両の制御装置において、バッテリの放電電力のみによる走行用モータの駆動時において、バッテリの残容量が許容下限値と該許容下限値よりも高く設定された第1の所定値との間にあるときに、排気ガス浄化触媒が活性状態にない場合は、エンジンの駆動によるジェネレータの発電電力とバッテリの放電電力が走行用モータの駆動に用いる電力となるようにエンジンを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの駆動によるジェネレータの発電電力及びバッテリの放電電力により駆動される走行用モータを有する車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、動力源としてのエンジンとモータを併用して走行するハイブリッド車両が知られている。かかるハイブリッド車両としての所謂シリーズ式のハイブリッド車両では、基本的にバッテリに充電された電気によってモータを駆動させて走行し、エンジンはバッテリの充電のために配設されている。
【0003】
また、前記ハイブリッド車両では、バッテリに充電された電気によってモータを駆動させて走行しているときにバッテリの残容量が少なくなると、エンジンを始動させてエンジンの駆動によりジェネレータで発電を行い、このジェネレータの発電電力によってバッテリを充電するとともにモータを駆動させることが行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−134719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バッテリの放電電力によって走行用モータを駆動させているときにバッテリの残容量が少なくなったので、エンジンを始動させてエンジンの駆動によるジェネレータの発電電力によってバッテリを充電するとともに走行用モータを駆動させる場合、エンジンの始動直後は一般にエンジンの排気系に配設された排気ガス浄化触媒が活性状態にないことから、排気ガスを十分に浄化することができず、排気エミッションの悪化を引き起こす畏れがある。
【0006】
そこで、本発明は、バッテリの放電電力による走行用モータの駆動状態において、バッテリの残容量が少なくなってエンジンを始動させるときに、排気ガス浄化触媒が活性状態にない場合に、排気エミッションの悪化を抑制することができる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本願の請求項1に係る発明は、エンジンと、該エンジンにより駆動されるジェネレータと、該ジェネレータにより発電される電力によって充電されるバッテリと、前記エンジンの駆動によるジェネレータの発電電力及び前記バッテリの放電電力により駆動される走行用モータとを有する車両の制御装置であって、前記エンジンの排気系に配設された排気ガス浄化触媒と、該排気ガス浄化触媒の温度に基づいて該排気ガス浄化触媒の活性状態を判定する触媒活性判定手段と、前記バッテリの残容量を検出する残容量検出手段と、前記バッテリの放電電力のみによる前記走行用モータの駆動時において、前記残容量検出手段によって検出される前記バッテリの残容量が許容下限値と該許容下限値よりも高く設定された第1の所定値との間にあるときに、前記触媒活性判定手段によって前記排気ガス浄化触媒が活性状態にないと判定される場合は、前記エンジンの駆動によるジェネレータの発電電力と前記バッテリの放電電力が前記走行用モータの駆動に用いる電力となるように前記エンジンを制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記制御手段は、前記残容量検出手段によって検出される前記バッテリの残容量が前記許容下限値と前記第1の所定値との間にあるときに、前記触媒活性判定手段によって前記排気ガス浄化触媒が非活性状態にあると判定される場合は、前記排気ガス浄化触媒が活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように且つ空燃比がリーンになるように前記エンジンを制御し、前記触媒活性判定手段によって前記排気ガス浄化触媒が半活性状態にあると判定される場合は、前記排気ガス浄化触媒が活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように又は空燃比がリーンになるように前記エンジンを制御する、ことを特徴とする。
【0009】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記制御手段は、前記残容量検出手段によって検出される前記バッテリの残容量が前記許容下限値と前記第1の所定値との間にあるときに、前記触媒活性判定手段によって前記排気ガス浄化触媒が非活性状態にあると判定される場合は、前記排気ガス浄化触媒が活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように且つ空燃比がリーンになるように前記エンジンを制御し、前記残容量検出手段によって検出される前記バッテリの残容量が前記許容下限値と、該許容下限値と前記第1の所定値との間に設定された第2の所定値との間にあるときに、前記触媒活性判定手段によって前記排気ガス浄化触媒が半活性状態にあると判定される場合は、前記排気ガス浄化触媒が活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように又は空燃比がリーンになるように前記エンジンを制御する、ことを特徴とする。
【0010】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3の何れか1項に係る発明において、車両に対する加速要求があるか否かを判定する加速要求判定手段をさらに有し、前記制御手段は、前記触媒活性判定手段によって前記排気ガス浄化触媒が半活性状態にあると判定されるときに、前記加速要求判定手段によって加速要求があると判定される場合、前記排気ガス浄化触媒が活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように前記エンジンを制御し、前記加速要求判定手段によって加速要求がないと判定される場合、前記排気ガス浄化触媒が活性状態にある場合に比べて空燃比がリーンになるように前記エンジンを制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願の請求項1に係る発明によれば、バッテリの放電電力のみによる走行用モータの駆動時において、バッテリの残容量が許容下限値と該許容下限値よりも高く設定された第1の所定値との間にあるときに、排気ガス浄化触媒が活性状態にない場合は、エンジンの駆動によるジェネレータの発電電力とバッテリの放電電力が走行用モータの駆動に用いる電力となるようにエンジンを制御することにより、バッテリの残容量が許容下限値になった際に走行に必要な電力とバッテリを充電するために必要な電力とをエンジンの駆動によって発電する場合に比べて排気ガスの排出量を抑制しつつ排気ガス浄化触媒の温度を向上させることができるので、排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【0012】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、バッテリの残容量が許容下限値と第1の所定値との間にあるときに、排気ガス浄化触媒が非活性状態にある場合は、活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように且つ空燃比がリーンになるようにエンジンを制御し、排気ガス浄化触媒が半活性状態にある場合は、活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように又は空燃比がリーンになるようにエンジンを制御することにより、排気ガス浄化触媒の活性状態に応じてエンジン出力を制限することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0013】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、バッテリの残容量が許容下限値と第1の所定値との間にあるときに、排気ガス浄化触媒が非活性状態にある場合は、活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように且つ空燃比がリーンになるようにエンジンを制御し、バッテリの残容量が許容下限値と、該許容下限値と第1の所定値との間に設定された第2の所定値との間にあるときに、排気ガス浄化触媒が半活性状態にある場合は、活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように又は空燃比がリーンになるようにエンジンを制御することにより、排気ガス浄化触媒の活性状態に応じてエンジン出力を制限することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0014】
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、排気ガス浄化触媒が半活性状態にあるときに、加速要求がある場合、活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるようにエンジンを制御し、加速要求がない場合、活性状態にある場合に比べて空燃比がリーンになるようにエンジンを制御することにより、前記効果を具体的に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す車両の制御システムを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る定常走行時の車両の制御を示すタイムチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る加速走行時の車両の制御を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る触媒温度とバッテリ残容量に応じて設定された制御領域を示すマップである。
【図6】本発明の実施形態に係る車両の制御を示すフローチャートである。
【図7】本発明の別の実施形態に係る触媒温度とバッテリ残容量に応じて設定された制御領域を示すマップである。
【図8】本発明の別の実施形態に係る車両の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の全体構成を示すブロック図であり、図2は、図1に示す車両の制御システムを示す図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両1は、所謂シリーズ式のハイブリッド車両であり、エンジン10と、エンジン10により駆動されるジェネレータ20と、ジェネレータ20により発電される電力が充電可能な高電圧・大容量のバッテリ30と、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力により駆動される走行用モータ40とを有している。
【0017】
また、車両1では、ジェネレータ20、バッテリ30及び走行用モータ40の間にインバータ50が設けられ、インバータ50を介してジェネレータ20の発電電力をバッテリ30及び/又は走行用モータ40に供給することができるとともに、バッテリ30の放電電力を走行用モータ40に供給することができるように構成されている。
【0018】
走行用モータ40は、ジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力の少なくとも一方が供給されることにより駆動され、この走行用モータ40の駆動力がデファレンシャル装置60を介して駆動輪としての左右の前輪61、62に伝達され、これによって、車両1が走行できるようになっている。なお、走行用モータ40はジェネレータとしても作動可能であり、車両1の減速時にはジェネレータとして作動し、発電した電力をバッテリ30に充電することができるようになっている。
【0019】
車両1では、エンジン10は、ジェネレータ20における発電のためにのみ用いられており、本実施形態では、エンジン10として、これに限定されるものではないが、水素燃料タンク70に貯留されている水素ガスが燃料として供給される水素エンジンが用いられる。
【0020】
図2に示すように、エンジン10は、ツインロータ式のロータリエンジンであって、ロータハウジング11のトロコイド面に3点で接して3つの作動室を画成するロータ12を備え、該ロータ12が回転することにより出力軸としてのエキセントリックシャフト13が回転されるようになっている。
【0021】
エンジン10では、ロータハウジング11には吸気通路14と排気通路15が接続され、吸気通路14には、スロットル弁16と予混合方式によって燃料供給を行う場合に水素ガスを噴射するための水素インジェクタ17とが設けられ、排気通路15には、排気ガスを浄化するための排気ガス浄化触媒80が配設されている。
【0022】
ロータハウジング11にはまた、水素ガスを噴射するための水素インジェクタ18及び点火プラグ19がロータハウジング11の作動室を臨むようにして取り付けられている。なお、図2において吸気通路14及び排気通路15に図示した矢印は、吸気又は排気の流れを示している。
【0023】
また、車両1には、バッテリ30に出入りする電流及びバッテリ30の電圧を検出するバッテリ電流・電圧センサ(バッテリ残容量検出手段)101と、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ102と、車速を検出する車速センサ103と、エンジン10の回転数を検出するエンジン回転数センサ104と、空燃比を検出する空燃比センサ105と、排気ガス浄化触媒80の温度を検出する触媒温度検出センサ106とが搭載されている。
【0024】
車両1にはまた、該車両1に関係する構成を総合的に制御するコントロールユニット100が設けられ、このコントロールユニット100には、バッテリ電流・電圧センサ101、アクセル開度センサ102、車速センサ103、エンジン回転数センサ104、空燃比センサ105及び触媒温度検出センサ106などからの各種信号が入力されるようになっている。コントロールユニット100はまた、インバータ50、スロットル弁アクチュエータ107、水素インジェクタ17、18及び点火プラグ19などに制御信号を出力することができるようになっている。
【0025】
コントロールユニット100はさらに、触媒温度検出センサ106によって検出された排気ガス浄化触媒80の温度に基づいて、排気ガス浄化触媒80の活性状態を判定することができるようになっている。具体的には、排気ガス浄化触媒80の温度が所定の活性温度T1以上であるときは活性状態と判定し、所定の活性温度T1未満であるときは活性状態にないと判定するとともに、活性状態にない場合は、所定の半活性温度T2以上であるときは半活性状態と判定し、半活性温度T2未満であるときは非活性状態と判定する。
【0026】
また、コントロールユニット100は、アクセル開度センサ102によって検出されるアクセル開度に基づいて、車両1に対する加速要求があるか否かを判定することができるようになっている。具体的には、アクセル開度が所定開度、例えば50%以上であるときは加速要求がある加速走行と判定し、アクセル開度が所定開度、例えば50%未満であるときは加速要求のない定常走行と判定する。
【0027】
車両1ではまた、コントロールユニット100によって、バッテリ30の放電電力のみによって走行用モータ40を駆動させて定常走行しているときに、バッテリ電流・電圧センサ101によって検出されるバッテリ30の電流・電圧値に基づいて算出されるバッテリ30の残容量SOCが所定の許容下限値SMIN、例えば40%になったとき、排気ガス浄化触媒80が活性温度T1以上である活性状態にある通常運転においては、走行要求、具体的には車速及びアクセル開度と発電要求に基づいてエンジン10を駆動させてジェネレータ20の発電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて定常走行するとともにバッテリ30を充電するように制御される。
【0028】
また、バッテリ30の放電電力のみによって走行用モータ40を駆動させてアクセル開度が所定開度、例えば50%以上である加速走行しているときに、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINになったとき、排気ガス浄化触媒80が活性温度T1以上である活性状態にある通常運転においては、走行要求、具体的には車速及びアクセル開度と発電要求に基づいてエンジン10を駆動させてジェネレータ20の発電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて加速走行するとともにバッテリ30を充電するように制御される。
【0029】
しかしながら、前述したように、バッテリ30の放電電力のみによる走行用モータ40の駆動時において、排気ガス浄化触媒80が活性状態にない場合にバッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINになったときにエンジン10を始動させると、排気エミッションの悪化を引き起こすことから、本実施形態に係る車両1では、以下のように制御する。
【0030】
図3は、本発明の実施形態に係る定常走行時の車両の制御を示すタイムチャートである。図3に示すように、バッテリ30の放電電力のみによって走行用モータ40を駆動させてアクセル開度が所定開度、例えば50%未満である定常走行しているときに排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1未満のT0であり排気ガス浄化触媒80が活性状態にない場合は、バッテリ30の残容量SOCが所定の許容上限値S0、例えば80%から次第に低下して時間t1において許容下限値SMIN、例えば40%よりも高く設定された第1の所定値S1、例えば60%になると、エンジン10を始動させ、走行要求、具体的には車速及びアクセル開度に基づいて、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて定常走行するようにエンジン10を駆動制御する。
【0031】
具体的には、排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1未満であるとともに半活性温度T2未満であり排気ガス浄化触媒80が非活性状態にある場合、排気ガス浄化触媒80が活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように且つ空燃比がリーンになるようにエンジン10の出力を制限した状態でエンジン10を駆動制御する。
【0032】
図3では、排気ガス浄化触媒80が活性状態にある通常運転時のエンジン回転数Nが一点鎖線で示されるとともに空燃比λS、例えば2.0〜2.2が一点鎖線で示されているが、バッテリ30の残容量SOCが第1の所定値S1になったときに、排気ガス浄化触媒80が非活性状態にある場合、排気ガス浄化触媒80が活性状態にある通常運転時に比べてエンジン回転数が低回転である所定のエンジン回転数N1になるように且つ空燃比がリーンである所定の空燃比λ1、例えば2.4になるようにエンジン10を制御する。
【0033】
コントロールユニット100は、エンジン回転数が低回転になるように且つ空燃比がリーンになるようにエンジン10を制御し、具体的には、エンジン回転数を低回転化するためにスロットル弁アクチュエータ107の作動を制御し、空燃比をリーン化するために水素インジェクタ17、18の作動を制御する。
【0034】
エンジン10の駆動に伴ってエンジン10から排出される排気ガスによって排気ガス浄化触媒80の温度Tcが次第に上昇し、時間t2において排気ガス浄化触媒80の温度Tcが半活性温度T2以上である半活性状態になっても、走行要求に基づいて、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて定常走行するようにエンジン10の出力を制限した状態でエンジン10を駆動制御する。
【0035】
しかしながら、排気ガス浄化触媒80の温度Tcが半活性温度T2以上である半活性状態になると、排気ガス浄化触媒80が活性状態にある場合のエンジン回転数Nになるように、且つ、排気ガス浄化触媒80が活性状態にある場合に比べて空燃比がリーンである空燃比λ1になるようにエンジン10を制御する。
【0036】
そして、エンジン10から排出される排気ガスによって排気ガス浄化触媒80の温度Tcがさらに上昇し、時間t3においてバッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINになったときに排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1になると、エンジン回転数が所定回転数Nとなるように且つ空燃比が空燃比λとなるようにエンジン10を駆動させてエンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて定常走行するとともにバッテリ30を充電するように制御する通常運転制御が行われる。
【0037】
なお、図3では、時間t3においてバッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINになったときに排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1になって通常運転制御が行われているが、車両1では、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINになったとき、あるいは排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1になったときに通常運転制御が行われる。
【0038】
このように、本実施形態では、定常走行において、バッテリ30の放電電力のみによる走行用モータ40の駆動時において、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINと該許容下限値SMINよりも高く設定された第1の所定値S1との間にあるときに、排気ガス浄化触媒80が活性状態にない場合は、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力とバッテリ30の放電電力が走行用モータ40の駆動に用いる電力となるようにエンジン10を制御する。これにより、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINになった際に走行に必要な電力とバッテリ30を充電するために必要な電力とをエンジン10の駆動によって発電する場合に比べて排気ガスの排出量を抑制しつつ排気ガス浄化触媒80の温度を向上させることができるので、排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【0039】
また、排気ガス浄化触媒80が非活性状態にある場合は、活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように且つ空燃比がリーンになるようにエンジン10を制御し、排気ガス浄化触媒80が半活性状態にある場合は、活性状態にある場合に比べて空燃比がリーンになるようにエンジン10を制御することにより、排気ガス浄化触媒80の活性状態に応じてエンジン出力を制限することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0040】
図4は、本発明の実施形態に係る加速走行時の車両の制御を示すタイムチャートである。図4に示すように、バッテリ30の放電電力のみによって走行用モータ40を駆動させてアクセル開度が所定開度、例えば50%以上である加速走行しているときに排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1未満のT0であり排気ガス浄化触媒80が活性状態にない場合は、バッテリ30の残容量SOCが所定の許容上限値S0、例えば80%から次第に低下して時間t1において許容下限値SMIN、例えば40%よりも高く設定された第1の所定値S1、例えば60%になると、エンジン10を始動させ、走行要求、具体的には車速及びアクセル開度に基づいて、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて加速走行するようにエンジン10の出力を制限した状態でエンジン10を駆動制御する。
【0041】
具体的には、排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1未満であるとともに半活性温度T2未満であり排気ガス浄化触媒80が非活性状態にある場合、排気ガス浄化触媒80が活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように且つ空燃比がリーンになるようにエンジン10の出力を制限した状態でエンジン10を駆動制御する。
【0042】
図4では、排気ガス浄化触媒80が活性状態にある通常運転時のエンジン回転数のラインLが一点鎖線で示されるとともに空燃比λS、例えば2.0〜2.2が一点鎖線で示されているが、バッテリ30の残容量SOCが第1の所定値S1になったときに、排気ガス浄化触媒80が非活性状態にある場合、排気ガス浄化触媒80が活性状態にある通常運転時に比べてエンジン回転数が低回転であるエンジン回転数のラインL1になるように且つ空燃比がリーンである所定の空燃比λ1、例えば2.4になるようにエンジン10を制御する。
【0043】
コントロールユニット100は、エンジン回転数が低回転になるように且つ空燃比がリーンになるようにエンジン10を制御し、具体的には、エンジン回転数を低回転化するためにスロットル弁アクチュエータ107の作動を制御し、空燃比をリーン化するために水素インジェクタ17、18の作動を制御する。
【0044】
エンジン10の駆動に伴ってエンジン10から排出される排気ガスによって排気ガス浄化触媒80の温度Tcが次第に上昇し、時間t2において排気ガス浄化触媒80の温度Tcが半活性温度T2以上である半活性状態になっても、走行要求に基づいて、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて加速走行するようにエンジン10の出力を制限した状態でエンジン10を駆動制御する。
【0045】
しかしながら、排気ガス浄化触媒80の温度Tcが半活性温度T2以上である半活性状態になると、排気ガス浄化触媒80が活性状態にある場合の空燃比λになるように、且つ、排気ガス浄化触媒80が活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転であるエンジン回転数のラインL1になるようにエンジン10を制御する。
【0046】
そして、エンジン10から排出される排気ガスによって排気ガス浄化触媒80の温度Tcがさらに上昇し、時間t3においてバッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINになったときに排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1になると、エンジン回転数がラインL’となるように且つ空燃比が空燃比λとなるようにエンジン10を駆動させてエンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて加速走行するとともにバッテリ30を充電するように制御する通常運転制御が行われる。
【0047】
なお、図4では、時間t3においてバッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINになったときに排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1になって通常運転制御が行われているが、車両1では、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINになったとき、あるいは排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1になったときに通常運転制御が行われる。
【0048】
このように、本実施形態では、加速要求がある加速走行において、バッテリ30の放電電力のみによる走行用モータ40の駆動時において、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINと該許容下限値SMINよりも高く設定された第1の所定値S1との間にあるときに、排気ガス浄化触媒80が活性状態にない場合は、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力とバッテリ30の放電電力が走行用モータ40の駆動に用いる電力となるようにエンジン10を制御する。これにより、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINになった際に走行に必要な電力とバッテリ30を充電するために必要な電力とをエンジン10の駆動によって発電する場合に比べて排気ガスの排出量を抑制しつつ排気ガス浄化触媒80の温度を向上させることができるので、排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【0049】
また、排気ガス浄化触媒80が非活性状態にある場合、活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように且つ空燃比がリーンになるようにエンジン10を制御し、排気ガス浄化触媒80が半活性状態にある場合は、活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるようにエンジン10を制御することにより、排気ガス浄化触媒80の活性状態に応じてエンジン出力を制限することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0050】
図5は、本発明の実施形態に係る触媒温度とバッテリ残容量に応じて設定された制御領域を示すマップである。前述したように、本実施形態では、排気ガス浄化触媒80の温度とバッテリ30の残容量SOCに応じてエンジン10が制御され、コントロールユニット100には、排気ガス浄化触媒80の温度Tcとバッテリ残容量SOCによって区分される制御領域A及び制御領域Bが予め設定されている。
【0051】
制御領域Aは、触媒温度Tcが半活性温度T2未満であるとともに、バッテリ残容量SOCが許容下限値SMINと該許容下限値SMINよりも高く設定された第1の所定値S1との間にある領域であり、この制御領域Aにあるとき、コントロールユニット100は、エンジン回転数を低回転化すると共に空燃比をリーン化してエンジン10を駆動制御する。
【0052】
また、制御領域Bは、触媒温度Tcが半活性温度T2以上で活性温度T1未満であるとともに、バッテリ残容量SOCが許容下限値SMINと第1の所定値S1との間にある領域であり、この制御領域Bにあるとき、コントロールユニット100は、加速要求に応じて加速要求がある場合にはエンジン回転数を低回転化してエンジン10を駆動制御し、加速要求がない場合には空燃比をリーン化してエンジン10を駆動制御する。
【0053】
図6は、本発明の実施形態に係る車両の制御を示すフローチャートである。図6に示すように、車両1では、バッテリ30の放電電力のみによる走行用モータ40の駆動によって走行している時に、先ず、ステップ#1において各種信号の読込みが行われる。具体的には、バッテリ30の電流・電圧値、アクセル開度、車速、エンジン回転数、空燃比、排気ガス浄化触媒80の温度Tc等の各種信号が読み込まれる。
【0054】
次に、ステップ#2において、バッテリ30の電流・電圧値に基づいて算出されるバッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINとしての40%より高く設定された第1の所定値S1としての60%未満であるか否かが判定される。ステップ#2の判定結果がノー(NO)の場合、すなわちバッテリ30の残容量SOCが60%以上であるときはステップ#1及びステップ#2が繰り返されるが、ステップ#2での判定結果がイエス(YES)になったときは、すなわちバッテリ30の残容量SOCが60%未満になったときは、排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1未満であるか否かが判定され、排気ガス浄化触媒80が活性状態にないか否かが判定される(ステップ#3)。
【0055】
ステップ#3での判定結果がノーの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1以上である活性状態にある場合、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて定常走行又は加速走行するとともにバッテリ30を充電する通常運転制御が行われる(ステップ#8)。
【0056】
一方、ステップ#3での判定結果がイエスの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1未満であり排気ガス浄化触媒80が活性状態にない場合、バッテリ30の残容量SOCが40%より高いか否かが判定される(ステップ#4)。ステップ#4での判定結果がノーの場合、すなわちバッテリ30の残容量SOCが40%以下である場合、ステップ#8においてエンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて定常走行又は加速走行するとともにバッテリ30を充電する通常運転制御が行われるが、ステップ#4での判定結果がイエスの場合、すなわちバッテリ30の残容量SOCが40%より高い場合は次に、排気ガス浄化触媒80の温度Tcが半活性温度T2未満であるか否かが判定され、排気ガス浄化触媒80が非活性状態にあるか半活性状態にあるかが判定される(ステップ#5)。
【0057】
ステップ#5での判定結果がイエスの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80の温度Tcが半活性温度T2未満であり排気ガス浄化触媒80が非活性状態にある場合、エンジン回転数を低回転化すると共に空燃比をリーン化してエンジン10を駆動制御し(ステップ#6)、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて定常走行又は加速走行するように制御する。
【0058】
そして、ステップ#7において排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1以上であるか否かが判定され、排気ガス浄化触媒80が活性状態になったか否かが判定される。ステップ#7での判定結果がノーの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80が活性状態にない場合、ステップ#4に戻ってバッテリ30の残容量SOCが40%より高いか否かが判定されるが、ステップ#7での判定結果がイエスの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80が活性状態になった場合には通常運転制御が行われる(ステップ#8)。
【0059】
一方、ステップ#5での判定結果がノーの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80の温度Tcが半活性温度T2以上であり排気ガス浄化触媒80が半活性状態にある場合、アクセル開度が50%未満であるか否かが判定される(ステップ#9)。本実施形態では、アクセル開度が50%未満である場合は加速要求がない定常走行と判定し、アクセル開度が50%以上であるときは加速要求がある加速走行と判定して制御する。
【0060】
ステップ#9での判定結果がイエスの場合、すなわちアクセル開度が50%未満である定常走行である場合、空燃比をリーン化してエンジン10を駆動制御し(ステップ#10)、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて定常走行するように制御する。
【0061】
そして、ステップ#7において、排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1以上であるか否かが判定され、排気ガス浄化触媒80が活性状態になったか否かが判定される。ステップ#7での判定結果がノーの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80が活性状態にない場合、ステップ#4に戻ってバッテリ30の残容量SOCが40%より高いか否かが判定されるが、ステップ#7での判定結果がイエスの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80が活性状態になった場合には通常運転制御が行われる(ステップ#8)。
【0062】
また、ステップ#9での判定結果がノーの場合、すなわちアクセル開度が50%以上である加速走行である場合、エンジン回転数を低回転化してエンジン10を駆動制御し(ステップ#11)、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて加速走行するように制御する。
【0063】
そして、ステップ#7において、排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1以上であるか否かが判定され、ステップ#7での判定結果がノーの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80が活性状態にない場合、ステップ#4に戻ってバッテリ30の残容量SOCが40%より高いか否かが判定されるが、ステップ#7での判定結果がイエスの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80が活性状態になった場合には通常運転制御が行われる(ステップ#8)。
【0064】
このように、本実施形態では、バッテリ30の放電電力のみによる走行用モータ40の駆動時において、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINと該許容下限値SMINよりも高く設定された第1の所定値S1との間にあるときに、排気ガス浄化触媒80が活性状態にない場合は、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力とバッテリ30の放電電力が走行用モータ40の駆動に用いる電力となるようにエンジン10を制御することにより、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINになった際に走行に必要な電力とバッテリ30を充電するために必要な電力とをエンジン10の駆動によって発電する場合に比べて排気ガスの排出量を抑制しつつ排気ガス浄化触媒80の温度を向上させることができるので、排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【0065】
また、排気ガス浄化触媒80が非活性状態にある場合は、活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように且つ空燃比がリーンになるようにエンジン10を制御し、排気ガス浄化触媒80が半活性状態にある場合は、活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように又は空燃比がリーンになるようにエンジン10を制御することにより、排気ガス浄化触媒80の活性状態に応じてエンジン出力を制限することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0066】
前述した実施形態では、図5に示すように、エンジン回転数を低回転化して又は空燃比をリーン化してエンジン10を制御する制御領域Bは、エンジン回転数を低回転化すると共に空燃比をリーン化してエンジン10を制御する制御領域Aと同様に、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINと第1の所定値S1との間にある領域として設定されているが、バッテリ残容量SOCを許容下限値SMINと、該許容下限値SMINと第1の所定値S1の間に設定された第2の所定値S2との間に設定することも可能である。
【0067】
図7は、本発明の別の実施形態に係る触媒温度とバッテリ残容量に応じて設定された制御領域を示すマップである。本発明の別の実施形態においても、排気ガス浄化触媒80の温度とバッテリ30の残容量SOCに応じてエンジン10が制御され、コントロールユニット100には、排気ガス浄化触媒80の温度Tcとバッテリ残容量SOCによって区分される制御領域A及び制御領域B’が予め設定される。
【0068】
制御領域Aは、図5に示すマップと同様に、触媒温度Tcが半活性温度T2未満であるとともに、バッテリ残容量SOCが許容下限値SMINと該許容下限値SMINよりも高く設定された第1の所定値S1との間にある領域であり、この制御領域Aにあるとき、コントロールユニット100は、エンジン回転数を低回転化すると共に空燃比をリーン化してエンジン10を駆動制御する。
【0069】
一方、制御領域B’は、触媒温度Tcが半活性温度T2以上で活性温度T1未満であるとともに、バッテリ残容量SOCが許容下限値SMINと、該許容下限値SMINと第1の所定値S1との間に設定された第2の所定値S2との間にある領域であり、この制御領域B’にあるとき、コントロールユニット100は、加速要求に応じて加速要求がある場合にはエンジン回転数を低回転化してエンジン10を駆動制御し、加速要求がない場合には空燃比をリーン化してエンジン10を駆動制御する。
【0070】
図8は、本発明の別の実施形態に係る車両の制御を示すフローチャートである。図8に示す本発明の別の実施形態に係る車両の制御は、前述した図6に示す車両の制御と、ステップ#5での判定結果がノーの場合にバッテリ30の残容量が50%未満であるか否かが判定されることが加えられていること以外は同様であるので、同様のステップについては同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
本発明の別の実施形態に係る車両の制御においても、ステップ#1からステップ#5が行われ、ステップ#5での判定結果がイエスの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80の温度Tcが半活性温度T2未満であり排気ガス浄化触媒80が非活性状態にある場合、エンジン回転数を低回転化すると共に空燃比をリーン化してエンジン10を駆動制御し(ステップ#6)、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて定常走行又は加速走行するように制御する。
【0072】
そして、ステップ#7において排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1以上であるか否かが判定され、排気ガス浄化触媒80が活性状態になったか否かが判定される。ステップ#7での判定結果がノーの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80が活性状態にない場合、ステップ#4に戻ってバッテリ30の残容量SOCが40%より高いか否かが判定されるが、ステップ#7での判定結果がイエスの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80が活性状態になった場合には通常運転制御が行われる(ステップ#8)。
【0073】
しかしながら、ステップ#5での判定結果がノーの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80の温度Tcが半活性温度T2以上であり排気ガス浄化触媒80が半活性状態にある場合、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINとしての40%と第1の所定値S1としての60%との間に設定された第2の所定値S2としての50%未満であるか否かが判定される(ステップ#12)。
【0074】
ステップ#12での判定結果がノーの場合、すなわちバッテリ30の残容量SOCが50%以上である場合、ステップ#8においてエンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて定常走行又は加速走行するとともにバッテリ30を充電する通常運転制御が行われるが、ステップ#12での判定結果がイエスの場合、すなわちバッテリ30の残容量SOCが50%未満である場合、アクセル開度が50%未満であるか否かが判定される(ステップ#9)。
【0075】
ステップ#9での判定結果がイエスの場合、すなわちアクセル開度が50%未満である定常走行である場合、空燃比をリーン化してエンジン10を駆動制御し(ステップ#11)、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて定常走行するように制御する。
【0076】
そして、ステップ#7において、排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1以上であるか否かが判定され、ステップ#7での判定結果がノーの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80が活性状態にない場合、ステップ#4に戻ってバッテリ30の残容量SOCが40%より高いか否かが判定されるが、ステップ#7での判定結果がイエスの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80が活性状態になった場合には通常運転制御が行われる(ステップ#8)。
【0077】
また、ステップ#9での判定結果がノーの場合、すなわちアクセル開度が50%以上である加速走行である場合、エンジン回転数を低回転化してエンジン10を駆動制御し(ステップ#11)、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力を用いて走行用モータ40を駆動させて加速走行するように制御する。
【0078】
そして、ステップ#7において、排気ガス浄化触媒80の温度Tcが活性温度T1以上であるか否かが判定され、ステップ#7での判定結果がノーの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80が活性状態にない場合、ステップ#4に戻ってバッテリ30の残容量SOCが40%より高いか否かが判定されるが、ステップ#7での判定結果がイエスの場合、すなわち排気ガス浄化触媒80が活性状態になった場合には通常運転制御が行われる(ステップ#8)。
【0079】
このように、本発明の別の実施形態においても、バッテリ30の放電電力のみによる走行用モータ40の駆動時において、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINと該許容下限値SMINよりも高く設定された第1の所定値S1との間にあるときに、排気ガス浄化触媒80が活性状態にない場合は、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力とバッテリ30の放電電力が走行用モータ40の駆動に用いる電力となるようにエンジン10を制御することにより、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINになった際に走行に必要な電力とバッテリ30を充電するために必要な電力とをエンジン10の駆動によって発電する場合に比べて排気ガスの排出量を抑制しつつ排気ガス浄化触媒80の温度を向上させることができるので、排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【0080】
また、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINと第1の所定値S1との間にあるときに、排気ガス浄化触媒80が非活性状態にある場合は、活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように且つ空燃比がリーンになるようにエンジン10を制御し、バッテリ30の残容量SOCが許容下限値SMINと、該許容下限値SMINと第1の所定値S1との間に設定された第2の所定値S2との間にあるときに、排気ガス浄化触媒80が半活性状態にある場合は、活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように又は空燃比がリーンになるようにエンジン10を制御することにより、排気ガス浄化触媒80の活性状態に応じてエンジン出力を制限することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0081】
本実施形態では、エンジン10としてロータリエンジンが用いられているが、これに限定されるものでなく、レシプロエンジンを用いることも可能である。また、エンジン10として水素エンジンが用いられているが、例えば、燃料としてガソリンを用いるガソリンエンジンや燃料として軽油を用いるディーゼルエンジンなどを用いることも可能である。なお、これらのエンジンに適用した場合、本実施形態に記載される空燃比λは、例えばλ=1(理論空燃比)に設定され、所定の空燃比λ1は、理論空燃比よりもリーンに設定される。
【0082】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明によれば、エンジンの駆動によるジェネレータの発電電力及びバッテリの放電電力により駆動される走行用モータを有する車両において、バッテリの放電電力による走行用モータの駆動時に、バッテリの残容量が少なくなってエンジンを始動させるときに排気ガス浄化触媒が活性状態にない場合に排気エミッションの悪化を抑制することができることから、この種の車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0084】
1 車両
10 エンジン
20 ジェネレータ
30 バッテリ
40 走行用モータ
80 排気ガス浄化触媒
100 コントロールユニット
101 バッテリ電流・電圧センサ
102 アクセル開度センサ
106 触媒温度検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンにより駆動されるジェネレータと、該ジェネレータにより発電される電力によって充電されるバッテリと、前記エンジンの駆動によるジェネレータの発電電力及び前記バッテリの放電電力により駆動される走行用モータとを有する車両の制御装置であって、
前記エンジンの排気系に配設された排気ガス浄化触媒と、
該排気ガス浄化触媒の温度に基づいて該排気ガス浄化触媒の活性状態を判定する触媒活性判定手段と、
前記バッテリの残容量を検出する残容量検出手段と、
前記バッテリの放電電力のみによる前記走行用モータの駆動時において、前記残容量検出手段によって検出される前記バッテリの残容量が許容下限値と該許容下限値よりも高く設定された第1の所定値との間にあるときに、前記触媒活性判定手段によって前記排気ガス浄化触媒が活性状態にないと判定される場合は、前記エンジンの駆動によるジェネレータの発電電力と前記バッテリの放電電力が前記走行用モータの駆動に用いる電力となるように前記エンジンを制御する制御手段と、
を有することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記残容量検出手段によって検出される前記バッテリの残容量が前記許容下限値と前記第1の所定値との間にあるときに、前記触媒活性判定手段によって前記排気ガス浄化触媒が非活性状態にあると判定される場合は、前記排気ガス浄化触媒が活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように且つ空燃比がリーンになるように前記エンジンを制御し、前記触媒活性判定手段によって前記排気ガス浄化触媒が半活性状態にあると判定される場合は、前記排気ガス浄化触媒が活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように又は空燃比がリーンになるように前記エンジンを制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記残容量検出手段によって検出される前記バッテリの残容量が前記許容下限値と前記第1の所定値との間にあるときに、前記触媒活性判定手段によって前記排気ガス浄化触媒が非活性状態にあると判定される場合は、前記排気ガス浄化触媒が活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように且つ空燃比がリーンになるように前記エンジンを制御し、前記残容量検出手段によって検出される前記バッテリの残容量が前記許容下限値と、該許容下限値と前記第1の所定値との間に設定された第2の所定値との間にあるときに、前記触媒活性判定手段によって前記排気ガス浄化触媒が半活性状態にあると判定される場合は、前記排気ガス浄化触媒が活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように又は空燃比がリーンになるように前記エンジンを制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
車両に対する加速要求があるか否かを判定する加速要求判定手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記触媒活性判定手段によって前記排気ガス浄化触媒が半活性状態にあると判定されるときに、前記加速要求判定手段によって加速要求があると判定される場合、前記排気ガス浄化触媒が活性状態にある場合に比べてエンジン回転数が低回転になるように前記エンジンを制御し、前記加速要求判定手段によって加速要求がないと判定される場合、前記排気ガス浄化触媒が活性状態にある場合に比べて空燃比がリーンになるように前記エンジンを制御する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−254698(P2012−254698A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128443(P2011−128443)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】