説明

車両の制御装置

【課題】パーキングレンジが解除された際に発生する音およびショックを抑制できる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】パーキング機構86を解除する指令が出力されると、第2電動機MG2によって付与されるトルクTmg2を低下させた後、パーキングギヤ52と噛合歯88との噛合を解除するため、この噛合を解除した際にパーキングギヤ52と駆動輪40との間の動力伝達経路を構成する各種噛合ギヤ同士が衝突することで発生する音やショックを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に係り、特に、パーキングレンジ解除時に発生する音やショックの抑制に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンにギヤ機構を介して動力伝達可能に連結されている駆動輪と、そのギヤ機構の出力部に機械的に連結されているパーキングギヤおよびそのパーキングギヤと噛み合う噛合歯を有するロック部材から構成され、パーキングレンジが選択された際に前記パーキングギヤと前記噛合歯とを噛み合わせてパーキングギヤを回転停止させるパーキングロック機構と、前記ギヤ機構に動力伝達可能に連結され、前記パーキングレンジが選択された際に前記パーキングギヤを前記噛合歯に押し当てるトルクを付与する押当アクチュエータとを、備える車両の制御装置が知られている。特許文献1の車両の制御装置がそれである。
【0003】
特許文献1には、坂路に車両を停車させるためにパーキングレンジに切り替えた際、モータジェネレータMG2を用いてパーキングギヤを噛合歯に押し当てるトルクを付与することにより、ギヤ機構のガタを詰める技術が開示されている。これにより、エンジンのトルク変動が大きい場合にギヤ機構で発生する歯打ち音を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−40296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の車両の制御装置のように、パーキングギヤを噛合歯に押し当てるトルクが付与された状態で、パーキングギヤと噛合歯との噛合が解除されると、パーキングギヤが勢いよく回転し、パーキングギヤと駆動輪との間の動力伝達経路を構成する各種噛合ギヤ(差動歯車装置など)同士で衝突が生じ、音やショックが発生する問題があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、パーキングギヤとロック部材とから構成されるパーキングロック機構と、パーキングレンジが選択された際にギヤ機構を介してパーキングギヤを前記噛合歯に押し当てるトルクを付与する押当アクチュエータとを、備える車両の制御装置において、パーキングレンジが解除された際に発生する音およびショックを抑制できる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、第1発明の要旨とするところは、(a)エンジンにギヤ機構を介して動力伝達可能に連結されている駆動輪と、そのギヤ機構の出力部に機械的に連結されているパーキングギヤおよびパーキングギヤと噛み合う噛合歯を有するロック部材を有し、パーキングレンジが選択された際に前記パーキングギヤと前記噛合歯とを噛み合わせてそのパーキングギヤを回転停止させるパーキングロック機構と、前記ギヤ機構に動力伝達可能に連結され、パーキングレンジが選択された際にパーキングギヤを前記噛合歯に押し当てるトルクを付与する押当アクチュエータとを、備える車両の制御装置であって、(b)パーキングロック機構を解除する指令が出力される、または、前記パーキングロック機構を解除するものと予測されると、前記押当アクチュエータによって付与されるトルクを低下させた後、前記パーキングギヤと前記噛合歯との噛合を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このようにすれば、パーキングロック機構を解除する指令が出力される、または、パーキングロック機構を解除するものと予測されると、前記押当アクチュエータによって付与されるトルクを低下させた後、前記パーキングギヤと前記噛合歯との噛合を解除するため、この噛合を解除した際にパーキングギヤと駆動輪との間の動力伝達経路を構成する各種噛合ギヤ同士が衝突することで発生する音やショックを抑制することができる。
【0009】
また、好適には、第2発明の要旨とするところは、第1発明の車両の制御装置において、前記パーキングロック機構を解除する予測に基づいて前記押当アクチュエータのトルクを低下させている場合であって、そのパーキングロック機構の解除が実施されない場合には、前記押当アクチュエータによって付与されるトルクを再度増加させるものである。このようにすれば、パーキングロック機構の解除が実施されない場合には、再度トルクが増加するので、前記ギヤ機構で発生する歯打ち音が抑制される。
【0010】
また、好適には、第3発明の要旨とするところは、第1発明の車両の制御装置において、前記パーキングロック機構は、電動アクチュエータによって電気的に駆動されるものであり、前記パーキングロック機構が解除される時点で、前記押当アクチュエータのトルクが予め設定されている所定値以下となるように、前記電動アクチュエータが予め回転駆動させられるものである。このようにすれば、パーキングロック機構は、電動アクチュエータによって電気的に駆動されるため、パーキングロック機構が解除されるまでに所定の遅れ時間が生じる。これに対して、この遅れ時間を考慮して予め電動アクチュエータを回転駆動させることで、速やかにパーキングロック機構を解除することができる。
【0011】
また、好適には、第4発明の要旨とするところは、第1発明乃至第3発明のいずれか1の車両の制御装置において、第1電動機に動力伝達可能に連結されて差動状態が制御される差動機構を備え、その差動機構の入力要素が前記エンジンに連結され、その差動機構の出力要素が前記パーキングギヤおよび第2電動機に機械的に連結されており、前記押当アクチュエータは、前記第2電動機である。このようにすれば、第2電動機がトルクを付与するための押当アクチュエータとして機能するため、別個にトルクを付与するためのアクチュエータを設ける必要がなくなり、部品点数の増加が抑制されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が適用されるハイブリッド車両の概略構成を説明する図であると共に、車両の各部を制御する為に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。
【図2】図1のパーキングロック機構の具体的な構成を示す図である。
【図3】図1の電子制御装置による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図4】図1のパーキングロック機構の作動状態を概念的に示す図である。
【図5】図1の電子制御装置の制御作動の要部すなわちパーキングロック状態からパーキングロック機構を解除する際に発生する音やショックを抑制することができる制御作動を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5のフローチャートに基づいて実行される作動を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の他の実施例である電子制御装置による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図8】図7の電子制御装置の制御作動の要部すなわちパーキングロック状態からパーキングロック機構を解除する際に発生する音やショックを抑制することができる制御作動を説明するためのフローチャートである。
【図9】図8のフローチャートに基づいて実行される作動を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両10(以下、車両10という)の概略構成を説明する図であると共に、車両10の各部を制御する為に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。図1において、車両10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース34内において、走行用の駆動力源としてのエンジン12と、第1電動機MG1と、エンジン12から出力される動力を第1電動機MG1及び出力歯車14へ分配する動力分配機構16(差動機構)と、出力歯車14に連結される歯車機構18と、出力歯車14に歯車機構18を介して動力伝達可能に連結された第2電動機MG2と、出力歯車14から回転が伝達されるカウンタギヤ対24と、ファイナルギヤ対26と、差動歯車装置(終減速機)28とを、備えて構成されている。このように構成された車両10では、エンジン12の駆動軸32を介して入力されるエンジン12の動力や第2電動機MG2の動力が出力歯車14へ伝達され、その出力歯車14からカウンタギヤ対24、ファイナルギヤ対26、差動歯車装置28、一対の車軸38等を順次介して一対の駆動輪40へ伝達される。すなわち、エンジン12が動力分配機構16等を介して動力伝達可能に連結されている。
【0015】
駆動軸32は、エンジン12によって回転駆動させられる。この駆動軸32の端部には、潤滑油供給装置としてのオイルポンプ44が連結されており駆動軸32が回転駆動されることによりオイルポンプ44が回転駆動させられて、動力分配機構16、歯車機構18、不図示のボールベアリング等に潤滑油が供給される。
【0016】
動力分配機構16は、第1サンギヤS1、第1ピニオンギヤP1、その第1ピニオンギヤP1を自転及び公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1ピニオンギヤP1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(回転部材)として備える公知のシングルピニオン型の遊星歯車装置から構成されており、差動作用を生じる差動機構として機能する。この動力分配機構16においては、第1キャリヤCA1は駆動軸32すなわちエンジン12に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機MG1に連結され、第1リングギヤR1は出力歯車14に連結されている。これより、第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1は、それぞれ相互に相対回転可能となることから、エンジン12の出力が第1電動機MG1及び出力歯車14に分配されると共に、第1電動機MG1に分配されたエンジン12の出力で第1電動機MG1が発電され、その発電された電気エネルギがインバータ46を介して蓄電装置48に蓄電されたりその電気エネルギで第2電動機MG2が回転駆動されるので、動力分配機構16は例えば無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン12の所定回転に拘わらず出力歯車14の回転が連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。つまり、動力分配機構16は、差動用電動機として機能する第1電動機MG1の運転状態が制御されることにより、その動力分配機構16の差動状態が制御される電気式差動部(電気式無段変速機)として機能する。これにより、動力分配機構16は、例えば燃費が最もよいエンジン12の動作点(例えばエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとで定められるエンジン12の運転点、以下、エンジン動作点という)に沿ってエンジン12を作動させることができる。この種のハイブリッド形式は、機械分配式或いはスプリットタイプと称される。
【0017】
歯車機構18は、第2サンギヤS2、第2ピニオンギヤP2、その第2ピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2ピニオンギヤP2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を回転要素として備える公知のシングルピニオン型の遊星歯車装置から構成されている。この歯車機構18においては、第2キャリヤCA2は非回転部材であるケース34に連結されることで回転が阻止され、第2サンギヤS2は第2電動機MG2に連結され、第2リングギヤR2は出力歯車14に連結されている。そして、この歯車機構18は、例えば減速機として機能するように遊星歯車装置自体のギヤ比(歯車比=サンギヤS2の歯数/リングギヤR2の歯数)が構成されており、第2電動機MG2からトルク(駆動力)を出力する力行時には第2電動機MG2の回転が減速させられて出力歯車14に伝達され、そのトルクが増大させられて出力歯車14へ伝達される。なお、この出力歯車14は、動力分配機構16のリングギヤR1及び歯車機構18のリングギヤR2としての機能、及びカウンタドリブンギヤ22と噛み合ってカウンタギヤ対24を構成するカウンタドライブギヤとしての機能が1つのギヤに一体化された複合歯車50となっている。さらに、この複合歯車50には、出力歯車14と軸方向に並ぶようにして、後述するパーキングロック機構86を構成するパーキングギヤ52が形成されている。なお、複合歯車50が、本発明のギヤ機構の出力部に対応している。
【0018】
第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、電気エネルギから機械的な駆動力を発生させる発動機としての機能及び機械的な駆動力から電気エネルギを発生させる発電機としての機能のうち少なくとも一方を備えた例えば同期電動機であって、好適には、発動機又は発電機として選択的に作動させられるモータジェネレータである。例えば、第1電動機MG1はエンジン12の反力を受け持つ為のジェネレータ(発電)機能及び運転停止中のエンジン12を回転駆動するモータ(電動機)機能を備え、第2電動機MG2は走行用の駆動力源として駆動力を出力する走行用電動機として機能する為の電動機機能及び駆動輪40側からの逆駆動力から回生により電気エネルギを発生させる発電機能を備える。
【0019】
カウンタギヤ対24は、カウンタドライブギヤとしての出力歯車14と、その出力歯車14と噛み合うカウンタドリブンギヤ22とから構成されている。ファイナルギヤ対26は、カウンタドリブンギヤ22と一体回転させられるファイナルドライブギヤ54と、差動歯車装置28のデフケースに形成されファイナルドライブギヤ54と噛み合うファイナルドリブンギヤ56とから構成されている。差動歯車装置28は、よく知られたデファレンシャル装置であり、走行状態に応じて左右の車輪38に差回転を付与するものである。なお、差動歯車装置28の具体的な構成および作動については公知であるため、その説明を省略する。
【0020】
また、車両10には、例えばエンジン12、第1電動機MG1、第2電動機MG2等を制御する車両10の制御装置としての電子制御装置200が備えられている。この電子制御装置200は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置200は、エンジン12、第1電動機MG1、第2電動機MG2などに関するハイブリッド駆動制御等の車両制御を実行するようになっており、必要に応じてエンジン12の出力制御用、動力分配機構16の変速制御用等に分けて構成される。
【0021】
電子制御装置200には、シフト操作装置57においてパーキングポジション(Pポジション)以外の非Pポジション(Nポジション、Dポジション、Rポジション等)の何れかへ切り替える為のシフトレバー58の操作位置(操作ポジション、シフトポジション)PSHを表す信号及びシフトポジションをPポジションへ切り替える為のPスイッチ60におけるスイッチ操作に応じたPポジションへの切替要求としての操作ポジションPSHを表す信号、アクセル開度センサ62により検出された運転者による車両10に対する加速要求量(ドライバ要求量)としてのアクセルペダル64の操作量であるアクセル開度Accを表す信号、ブレーキスイッチ66により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの作動中(踏込操作中)を示すフットブレーキペダル68の操作(ブレーキオン)Bonを表す信号、スロットル弁開度センサ70により検出された電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θTHを表す信号、エンジン水温センサ72により検出されたエンジン水温Twを表す信号、クランクポジションセンサ74により検出されたクランク軸42の回転角度(位置)ACR及びエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Neを表す信号、出力回転速度センサ78により検出された車速Vに対応する出力歯車14の回転速度である出力回転速度Noutを表す信号、レゾルバ等の第1電動機回転速度センサ80により検出された第1電動機MG1の回転速度である第1電動機回転速度Nm1を表す信号、レゾルバ等の第2電動機回転速度センサ82により検出された第2電動機MG2の回転速度である第2電動機回転速度Nm2を表す信号、バッテリセンサ84により検出された蓄電装置48のバッテリ温度THBATやバッテリ入出力電流(バッテリ充放電電流)IBATやバッテリ電圧VBATを表す信号、後述するロータリエンコーダ106により検出された後述する電動アクチュエータ104の回転角θを表す信号などが、それぞれ供給される。
【0022】
また、電子制御装置200からは、例えばエンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号や第1電動機MG1及び第2電動機MG2の駆動制御の為のインバータ46へのモータ制御指令信号などのハイブリッド制御指令信号SHVなどが、それぞれ出力される。
【0023】
図2は、パーキングロック機構86の具体的な構成を示す図である。パーキングロック機構86は、複合歯車50に形成されているパーキングギヤ52と、そのパーキングギヤ52と選択的に噛合可能な噛合歯88を有して回転支持軸90を中心に回動可能に設けられているパーキングポール92と、パーキングポール92と当接するテーパ部94に挿し通されてテーパ部94を一端部において支持するパーキングロッド96と、パーキングロッド96に設けられてテーパ部94をその小径方向へ付勢するスプリング98と、パーキングロッド96の他端部に回動可能に接続されて節度機構により少なくともパーキングポジション(Pポジション)に位置決めされるディテントプレート100と、ディテントプレート100に固設されて一軸まわりに回転可能に支持されたシャフト102と、シャフト102を回転駆動させる電動アクチュエータ104と、シャフト102の回転角θを検出するロータリエンコーダ106と、ディテントプレート100の回転に節度を与えて各シフトポジションに固定するディテントスプリング108およびその先端部に設けられた係合部110とを、備えている。なお、パーキングポール92が、本発明のロック部材に対応している。
【0024】
ディテントプレート100は、シャフト102を介して電動アクチュエータ104の駆動軸に作動的に連結されており、パーキングロッド96と共に電動アクチュエータ104により駆動されてシフトポジションを切り替えるためのシフトポジション決め部材として機能する。ディテントプレート100の頂部には、第1凹部112および第2凹部114が形成されている。そして、第1凹部112がパーキングロックポジションに対応しており、第2凹部114が非パーキングロックポジションに対応している。また、ロータリエンコーダ106は、電動アクチュエータ104の駆動量すなわち回転量に応じた計数値(エンコーダカウント)を取得するためのパルス信号を出力する。
【0025】
図2は、パーキングロック機構86がパーキングロック状態にある場合を表している。パーキングレンジが選択されてパーキングロック機構86がパーキングロック状態にある場合、パーキングポール92の噛合歯88とパーキングギヤ52とが噛み合わされることで、パーキングギヤ52が回転停止させられている。なお、パーキングギヤ52は、駆動輪40に機械的に連結されているため、パーキングギヤ52が回転停止状態にあると、駆動輪40も同様に回転停止させられる。パーキングポール92は、パーキングロッド96の一端に設けられているテーパ部94との当接位置が変化させられることで、その位置が調節される。例えば、パーキングポール92がテーパ部94の大径部と当接する場合、パーキングギヤ52とパーキングポール92とが噛み合うことで、パーキングロック状態とされる(図2)。一方、パーキングポール92がテーパ部94の小径部と当接する場合、噛合歯87とパーキングギヤ52との噛合いが外れ、パーキングロックが解除される。
【0026】
上記パーキングポール92とテーパ部94との当接位置は、テーパ部94の軸方向位置に基づいて調節される。テーパ部94の軸方向位置は、パーキングロッド96によって変化させられ、それに伴ってパーキングポール92とテーパ部94との当接位置が調節される。例えば、矢印C方向にテーパ部94が移動させられると、パーキングポール92はテーパ部94の小径側と当接することとなる。したがって、パーキングポール92の先端が鉛直下方に移動されるに伴って、パーキングポール92の噛合歯88とパーキングギヤ52との噛合が解除される。すなわちパーキングロックが解除される。
【0027】
一方、矢印Cとは逆方向にテーパ部94が移動させられると、パーキングポール92の先端がテーパ部94の大径側と当接することとなる。したがって、パーキングポール92の先端が鉛直上方に移動されるに伴って、パーキングポール92とパーキングギヤ52とが噛み合わされる。すなわち、パーキングロック状態とされる。
【0028】
また、パーキングロッド96の軸方向への移動は、ディテントプレート100の回動位置すなわちシャフト102の回転位置に応じて調節される。シャフト102は電動アクチュエータ104によって回転させられ、走行レンジを制御する電子制御装置200から出力される電動アクチュエータ104の作動信号に基づいて、その回転位置が制御される。ここで、シャフト102において、ディテントプレート108の第1凹部112とディテントスプリング108に設けられている係合部110とが係合される回転位置がパーキングロック位置、すなわちパーキングギヤ52とパーキングポール92とが噛の噛合歯88み合う位置に対応している。一方、ディテントプレート100の第2凹部114と係合部110とが係合される回転位置がパーキングロック解除位置、すなわちパーキングギヤ52とパーキングポール92の噛合歯88との噛合が解除される位置に対応している。
【0029】
したがって、電子制御装置200からパーキングロック指令が出力されると、電動アクチュエータ104は、シャフト102を上記第1凹部112と係合部110とが係合する回転位置まで回転させる。また、電子制御装置200からパーキングロック解除指令が出力されると、電動アクチュエータ104は、シャフト102を上記第2凹部114と係合部110とが係合する回転位置まで回転させる。なお、シャフト102の回転位置は、予め設定されている基準回転位置よりロータリエンコーダ106によって検出される計数値が、パーキングロック位置およびパーキングロック解除位置に対応する予め設定された回転位置に相当する計数値となるように制御される。
【0030】
図1に戻り、シフト操作装置57は、例えば運転席の近傍に配設され、複数のシフトポジションPSHへ操作されるモーメンタリ式の操作子すなわち操作力を解くと元位置(初期位置)へ自動的に復帰する自動復帰式の操作子としてのシフトレバー58を備えている。また、本実施例のシフト操作装置57は、シフトレンジをパーキングレンジ(Pレンジ)としてパーキングロックする為のPスイッチ60をシフトレバー58の近傍に別スイッチとして備えている。
【0031】
シフトレバー58は、車両の前後方向または上下方向すなわち縦方向に配列された3つのシフトポジションPSHであるRポジション(R位置)、Nポジション(N位置)、Dポジション(D位置)と、それに平行に配列されたMポジション(M位置)、Bポジション(B位置)とへそれぞれ操作されるようになっており、シフトポジションPSHに応じた位置信号を電子制御装置200へ出力する。また、シフトレバー58は、RポジションとNポジションとDポジションとの相互間で縦方向に操作可能とされ、MポジションとBポジションとの相互間で縦方向に操作可能とされ、更に、NポジションとMポジションとの相互間で上記縦方向に直交する車両の横方向に操作可能とされている。
【0032】
Pスイッチ60は、例えばモーメンタリ式の押しボタンスイッチであって、運転者により押込み操作される毎にPスイッチ信号を電子制御装置200へ出力する。例えばシフトレンジが非PレンジにあるときにPスイッチ60が押されると、車両が停止状態である場合やパーキングロック可能な上限速度Vmaxより低い場合などの所定の条件が満たされていれば、シフトレンジがパーキングレンジとされる。このパーキングレンジは、エンジン12と駆動輪40との間の動力伝達経路が遮断され、且つ、パーキングロック機構86により駆動輪40の回転を機械的に阻止するパーキングロックが実行される駐車レンジである。
【0033】
シフト操作装置57のMポジションはシフトレバー58の初期位置(ホームポジション)であり、Mポジション以外のシフトポジションPSH(R,N,D,Bポジション)へシフト操作されていたとしても、運転者がシフトレバー58を解放すれば、すなわちシフトレバー58に作用する外力が無くなれば、バネなどの機械的機構によりシフトレバー58はMポジションへ戻るようになっている。シフト操作装置57が各シフトポジションPSHへシフト操作された際には、電子制御装置200によりシフトポジションPSH(位置信号)に基づいてそのシフト操作後のシフトポジションPSHに対応したシフトレンジに切り替えられる。
【0034】
各シフトレンジについて説明すると、シフトレバー58がRポジションへシフト操作されることにより選択されるRレンジは、車両を後進させる駆動力が駆動輪に伝達される後進走行レンジである。また、シフトレバー58がNポジションへシフト操作されることにより選択されるニュートラルレンジ(Nレンジ)は、エンジン12と駆動輪40との間の動力伝達経路が遮断されるニュートラル状態とするための中立レンジである。また、シフトレバー58がDポジションへシフト操作されることにより選択されるDレンジは、車両を前進させる駆動力が駆動輪に伝達される前進走行レンジである。また、シフトレバー58がBポジションへシフト操作されることにより選択されるBレンジは、Dレンジにおいて例えば電動機に回生トルクを発生させるなどによりエンジンブレーキ効果を発揮させ駆動輪の回転を減速させる減速前進走行レンジ(エンジンブレーキレンジ)である。
【0035】
車両10では、シフト操作装置57の操作位置に応じたシフトレバー58の位置信号に応じて、各シフトレンジの切替が電気的に制御される所謂シフトバイワイヤ形式が採用されている。具体的には、シフト操作装置57の操作位置に応じた位置信号に基づいて、Pレンジおよび非Pレンジ(R,N,D,Bレンジ)の切替が、電動アクチュエータ104の回転角制御によって切り替えられる。
【0036】
図3は、電子制御装置200による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図3において、ハイブリッド制御部すなわちハイブリッド制御手段210は、例えばエンジン12を停止し専ら第2電動機MG2を駆動源とするモータ走行モード、エンジン12の動力に対する反力を第1電動機MG1の発電により受け持つことで出力歯車14(駆動輪40)にエンジン直達トルクを伝達すると共に第1電動機MG1の発電電力により第2電動機MG2を駆動することで出力歯車14にトルクを伝達して走行するエンジン走行モード(定常走行モード)、このエンジン走行モードにおいて蓄電装置48からの電力を用いた第2電動機MG2の駆動力を更に付加して走行するアシスト走行モード(加速走行モード)等を、走行状態に応じて選択的に成立させる。
【0037】
上記エンジン走行モードにおける制御を一例としてより具体的に説明すると、ハイブリッド制御手段210は、エンジン12を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン12と第2電動機MG2との駆動力の配分や第1電動機MG1の発電による反力を最適になるように変化させて動力分配機構16の電気的な無段変速機としての変速比γ0(=エンジン回転速度Ne/出力回転速度Nout)を制御する。例えば、ハイブリッド制御手段210は、アクセル開度Accや車速Vから車両10の目標出力を算出し、その目標出力と充電要求値とから必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機MG2のアシストトルク等を考慮して目標エンジンパワーPeを算出する。そして、ハイブリッド制御手段210は、例えば運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められた公知のエンジン最適燃費線(燃費マップ)に沿ってエンジン12を作動させつつ目標エンジンパワーPeが得られるエンジン動作点すなわちエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるように、エンジン12を制御すると共に第1電動機MG1の発電量を制御する。尚、上記エンジン動作点とは、エンジン回転速度Ne及びエンジントルクTeなどで例示されるエンジン12の動作状態を示す状態量を座標軸とした二次元座標においてエンジン12の動作状態を示す動作点である。また、本実施例では、燃費とは例えば単位燃料消費量当たりの走行距離であったり、車両全体としての燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)等である。
【0038】
ハイブリッド制御手段210は、スロットル制御の為にスロットルアクチュエータにより電子スロットル弁を開閉制御させる他、燃料噴射制御の為に燃料噴射装置による燃料噴射量FUELや噴射時期を制御し、点火時期制御の為に点火装置による点火時期を制御するエンジン出力制御指令信号を出力し、目標エンジンパワーPeを発生する為のエンジントルクTeが得られるようにエンジン12の出力制御を実行する。また、ハイブリッド制御手段210は、第1電動機MG1による発電を制御させる指令をインバータ46に出力して、目標エンジンパワーPeを発生する為のエンジン回転装度Neが得られるように第1電動機回転速度Nm1を制御する。
【0039】
ハイブリッド制御手段210は、パーキングレンジに切り替えるためのPスイッチ60が運転者によって押されると、車両が停止状態である場合やパーキングロック可能な上限速度Vmaxより低い場合などの所定の条件が満たされていることを判断した後、電動アクチュエータ104を駆動させてパーキングロック機構86をパーキングロック状態に切り替えるパーキングロック機構切換制御部すなわちパーキングロック機構切換制御手段212(以下、Pロック切換制御手段212と記載する)を機能的に備えている。
【0040】
ここで、Pロック切換制御手段212によってパーキングロック機構86がパーキングロック状態に切り替えられると、エンジン12とパーキングギヤ52との間の動力伝達経路が動力伝達遮断状態となる。このとき、エンジン12は空転状態となっており、エンジン12のトルク変動によってエンジン12とパーキングギヤ52との間の動力伝達経路を構成する噛合ギヤ、具体的には、動力分配機構16や歯車機構18を構成する噛合ギヤ同士が衝突して歯打ち音が発生する問題があった。そこで、MGトルク制御部すなわちMG2トルク制御手段214は、第2電動機MG2から所定のトルクTsを付与することで、この歯打ち音の発生を抑制する。なお、第2電動機MG2が本発明のギヤ機構に動力伝達可能に連結された押当アクチュエータに対応しており、動力分配機構16や歯車機構18が本発明のギヤ機構に対応している。
【0041】
第2電動機MG2から所定のトルクTsが付与されると、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、およびリングギヤR2を介してパーキングギヤ52にそのトルクが伝達され、パーキングギヤ52がパーキングポール92の噛合歯88に押し当てられる。従って、サンギヤS2、ピニオンギヤP2およびリングギヤR2についてもギヤ同士が押し付けられた状態となるので、それらの間に形成されているガタが詰められる(ガタ詰め状態)。また、キャリヤCA2の外周端部は、ケース34にスプライン嵌合されることで回転停止させられているが、そのスプライン嵌合で形成されているガタについてもトルクが付与されることにより、ガタが詰められる。
【0042】
このように、第2電動機MG2から所定のトルクTsが付与されてガタが詰められることで、上記エンジン12のトルク変動によって生じる歯打ち音が抑制される。なお、上記所定のトルクTsは、予め実験的に求められており、具体的には、エンジン12のトルク変動によって生じる歯打ち音が抑制される程度の大きさに設定されている。
【0043】
ここで、エンジン12のトルク変動が大きくなると、歯打ち音が発生しやすくなるため、それを打ち消すように第2電動機MG2の所定のトルクTsも大きくなるように設定されている。このエンジン12のトルク変動が大きくなる状態とは、例えば低温時などに相当する。MG2トルク制御手段214は、エンジン12のトルク変動の大きさを例えばエンジン水温Twに基づいて予測し、最適な所定のトルクTsを設定する。具体的には、予め実験的に求められたエンジン水温Twおよび所定のトルクTsから成る関係マップを記憶しており、実際に検出されたエンジン水温Twに基づいて最適な所定のトルクTsを設定する。これより、エンジン12のトルク変動が大きくなる状態であっても、所定のトルクTsがそれに応じて大きくされて、歯打ち音が抑制される。
【0044】
ところで、例えば運転者がシフトレバー58をPポジションから非Pポジション(Nポジション、Dポジション、Rポジション等)に切り替えると、パーキングロック機構86を解除する指令が出力されてパーキングロック機構86が解除されるが、このとき第2電動機MG2から所定のトルクTsが付与されているので、そのトルクTsによってパーキングギヤ52が勢いよく回転し、パーキングギヤ52と駆動輪40との間の動力伝達経路を構成する各噛合ギヤ(カウンタギヤ対24、ファイナルギヤ対26、差動歯車装置28等)の間で衝突が発生して音およびショックが発生する問題あった。なお、パーキングロック機構86の解除とは、具体的には、パーキングギヤ52とパーキングポール92の噛合歯88の噛合が解除されることに対応している。
【0045】
上記現象について図4を用いて説明する。図4は、パーキングロック機構86の作動状態を概念的に示す図であり、図4(a)がパーキングロック機構86がパーキングロック状態にある場合を示し、図4(b)がパーキングロック機構86が解除された直後の状態を示している。また、図4において、X1がエンジン12からパーキングギヤ52までの動力伝達経路で形成されるガタを概念的に示しており、X2がパーキングギヤ52から駆動輪40までの動力伝達経路で形成されるガタを概念的に示している。具体的には、X1が動力分配機構16や歯車機構18等で形成されるガタに対応し、X2がカウンタギヤ対24、ファイナルギヤ対26、差動歯車装置28等で形成されるガタに対応している。
【0046】
図4(a)においては、MG2トルク制御手段214によって所定のトルクTsが付与された状態を示している。このとき、第2電動機MG2によるトルクTsによって、X1で形成されるガタが一方向に詰められてパーキングギヤ52がパーキングポール92の噛合歯88に押し当てられている。一方、パーキングギヤ52と駆動輪40との間の動力伝達経路で形成されるガタX2は、パーキングギヤ52に対して何れの方向にもガタが詰められていない状態となっている。
【0047】
この状態で、図4(b)のようにパーキングギヤ52と噛合歯88との噛合が解除(パーキングロック解除)されると、第2電動機MG2による所定のトルクTsによってパーキングギヤ52が勢いよく回転し(図4において左側に移動)、パーキングギヤ52と駆動輪40との間の動力伝達経路で形成されるガタX2が一方向側に急激に詰められる。このとき、ガタが形成されている各ギヤ間で衝突が生じ、この衝突によって音およびショックが発生する。
【0048】
そこで、MG2トルク制御手段214は、パーキングロックを解除する指令を受け取ると、第2電動機MG2のトルクTmg2を予め設定されている許容値Taまで低下させる。この許容値Taは、予め実験的に求められた値であり、パーキングロックが解除された際に発生する音およびショックが運転者に殆ど伝達されない、すなわち音およびショックが許容される程度の大きさに設定されている。そして、第2電動機MG2のトルクTmg2が許容値Ta以下となった状態でパーキングロック機構86を解除することで、その際に発生する音およびショックを抑制する。
【0049】
このMG2トルク制御手段214による第2電動機MG2のトルクTmg2を低下する制御を実行するか否かは、MG2トルク判定手段216およびP解除判定手段218に基づいて判断される。
【0050】
MG2トルク判定部すなわちMG2トルク判定手段216は、インバータ46から第2電動機MG2に供給される供給電流Img2を検出し、その供給電流Img2に基づいて第2電動機MGのトルクTmg2を算出する。そして、算出されたトルクTmg2が予め設定されている上記許容値Taよりも大きいか否かを判断する。トルクTmg2が許容値Taよりも小さい場合には、その状態でパーキングロックが解除されても音やショックが運転者に殆ど伝達されないため、パーキングロックを解除する指令が出力されても第2電動機MG2のトルクTmg2を低下させる必要はなく、その状態でパーキングロックが速やかに解除される。一方、トルクTmg2が許容値Taよりも大きい場合には、パーキングロックを解除した際に発生する音やショックが大きいため、第2電動機MG2のトルクTmg2を低下させる制御が必要であるものと判断される。
【0051】
P解除判定部すなわちP解除判定手段218は、運転者のパーキングロック機構86を解除する意思があるか否かを判断する。P解除判定手段218は、例えばシフト操作装置57のシフトレバー58が非Pポジションに操作された指令を検出して、運転者にパーキングロック機構86を解除する意思があるか否かを判断する。具体的には、シフトレバー58がDポジションなどの非Pポジションで予め設定されている所定時間tp(例えば0.1s程度)だけ保持されたことが検出されると、運転者にパーキングロック機構86を解除する意思があるものと判断する。なお、上記所定時間tpは、予め実験的に求められて設定された値であり、運転者の非Pポジションへの切換意思が確実にあるものと判断できる程度の値に設定されている。
【0052】
MG2トルク制御手段214は、第2電動機MG2のトルクTmg2が許容値Taよりも大きい状態で、運転者によるパーキングロック機構86を解除する意思があるものと判断すると、第2電動機MG2のトルクTmg2を漸減(低下)する。このとき、MG2トルク判定手段216は、第2電動機MG2への供給電流Img2を逐次検出し、その供給電流Img2が前記許容値Taに対応する電流値Img2aまで低下したこと、すなわち電動機MG2のトルクTmg2が許容値Taまで低下したか否かを判定する。そして、電動機MG2のトルクTmg2が許容値Taまで低下したものと判定されると、Pロック切換制御手段212は、電動アクチュエータ104を作動させてパーキングギヤ52とパーキングポール92の噛合歯88との噛合を解除する。このとき、第2電動機MG2のトルクTmg2が許容値Ta以下となっているので、パーキングギヤ52の回転による音やショックが運転者には殆ど伝達されない。
【0053】
ここで、パーキングロック機構86は電動アクチュエータ104によって電気的に駆動されるものであるため、電動アクチュエータ104を駆動させて実際にパーキングロック機構86が解除されるまでには所定の遅れ時間taが生じる。そこで、Pロック切換制御手段212は、その遅れ時間taを考慮して実際にパーキングロック機構86が解除される時点で、第2電動機MG2のトルクTmg2が許容値Ta以下となるように、許容値Taよりも高い閾値Tbにおいて電動アクチュエータ104の回転駆動を開始させることもできる。これより、第2電動機MG2のトルクTmg2が許容値Taとなったときに電動アクチュエータ104を駆動させた際に生じる遅れ時間taをなくす、或いは短くすることができ、運転者に与える違和感を抑制することができる。なお、上記閾値Tbは、予め求められて記憶されており、例えば遅れ時間taおよび第2電動機MG2のトルクTmg2の低下率α等に基づいて、電動アクチュエータ104の駆動開始から遅れ時間taの間に、第2電動機MG2のトルクTmg2が許容値Ta以下となる値に設定されている。
【0054】
図5は、電子制御装置200の制御作動の要部すなわちパーキングロック状態からパーキングロック機構86を解除する際に発生する音やショックを抑制することができる制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。なお、この制御は、パーキングロック機構86がパーキングロック状態にあるときに実施される。
【0055】
図5において、MG2トルク判定手段216に対応するステップS10(以下、ステップを省略する)において、第2電動機MG2のトルクTmg2が許容値Taよりも大きいか否かが判定される。S10が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。一方、S10が肯定される場合、P解除判定手段218に対応するS20において、運転者によるパーキングロックを解除する操作が為されたか否かが判定される。S20が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。
【0056】
一方、S20が肯定される場合、MG2トルク制御手段214およびMG2トルク判定手段216に対応するS30において、第2電動機MG2のトルクTmg2が漸減させられる。そして、第2電動機MG2のトルクTmg2が、閾値Tb或いは許容値Taまで低下したことが判断されると、Pロック切換制御手段212に対応するS40において、電動アクチュエータ104の駆動が開始されてパーキングロック機構86が解除される。このパーキングロック機構86が解除される時点において、第2電動機MG2のトルクTmg2が許容値Ta以下まで低下しているので、パーキングギヤ52から駆動輪40までの間の動力伝達経路の各ギヤで発生する音やショックが抑制されることとなる。
【0057】
図6は、図5のフローチャートに基づいて実行される作動を示すタイムチャートである。図6において、横軸は時間tを示しており、縦軸は上から順番にシフトレバー位置PSH、第2電動機MG2のトルクTmg2、シフトレンジ切換の指令信号PCON、電動アクチュエータ104の回転角θを示している。図6において、t0時点において非Pポジションへの切換が検出され、t1時点においてシフトレバー58が非Pポジション(notP)で所定時間tp(例えば0.1s)保持されたことを判断すると、所定の演算時間tc経過後、t2時点において、パーキングロック機構86の解除要求が出力されたものと判断され、パーキングロック機構86の解除信号(notP)が出力されるとともに、第2電動機MG2のトルクTmg2の低下が開始される。そして、t3時点において第2電動機MG2のトルクTmg2が閾値Tbに低下したことが判断されると、電動アクチュエータ104がパーキングロック機構86を解除する方向に回転駆動させられ、t4時点においては、電動アクチュエータ104の回転角θがパーキングロックが解除される回転角θnpに到達し、パーキングロック機構86が解除される。ここで、t4時点では、第2電動機MG2のトルクTmg2が許容値Ta以下の値となっており、t4時点において発生する音やショックが抑制されることとなる。
【0058】
上述のように、本実施例によれば、パーキング機構86を解除する指令が出力されると、第2電動機MG2によって付与されるトルクTmg2を漸減させた後、パーキングギヤ52と噛合歯88との噛合を解除するため、この噛合を解除した際にパーキングギヤ52と駆動輪40との間の動力伝達経路を構成する各種噛合ギヤ同士が衝突することで発生する音やショックを抑制することができる。また、この構成により、第2電動機MG2によるトルクを従来よりも高い値にすることもできる。
【0059】
また、本実施例によれば、パーキングロック機構86は、電動アクチュエータ104によって電気的に駆動されるものであり、パーキングロック機構86が解除される時点で、第2電動機MG2のトルクTmg2が予め設定されている所定値Ta以下となるように、電動アクチュエータ104が予め回転駆動させられるものである。このようにすれば、パーキングロック機構86は、電動アクチュエータ104によって電気的に駆動されるため、パーキングロック機構86が解除されるまでに所定の遅れ時間taが生じる。これに対して、この遅れ時間taを考慮して予め電動アクチュエータ104を回転駆動させることで、速やかにパーキングロック機構86を解除することができる。
【0060】
また、本実施例によれば、第1電動機MG1に動力伝達可能に連結されて差動状態が制御される動力分配機構16を備え、その動力分配機構16の入力要素がエンジン12に連結され、その動力分配機構16の出力要素がパーキングギヤ52および第2電動機MG2に機械的に連結されており、第2電動機MG2によってトルクが付与される。このようにすれば、第2電動機MG2がトルクを付与するためのアクチュエータとして機能するため、別個にトルクを付与するためのアクチュエータを設ける必要がなくなり、部品点数の増加が抑制されることとなる。
【0061】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0062】
図7は、本発明の他の実施例である電子制御装置300による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図7を前述の実施例と比較すると、P解除判定手段218がP解除予測手段302に変更され、さらにP解除意思確定手段304が追加されている。
【0063】
本実施例においては、前述した実施例のようにP解除判定手段218によって運転者のパーキングロック機構86を解除する意思(解除意思)を判定した後に第2電動機MG2のトルクTmg2を低下させるのはなく、前記解除意思を予測して予め第2電動機MG2のトルクTmg2を低下するものである。
【0064】
図7のP解除予測手段302は、運転者によるパーキングロック機構86の解除を予測する。具体的には、P解除予測手段302は、例えばシフトレバー58がDポジションなどの非Pポジションで予め設定されている所定時間tq(例えば0.02s程度)だけ保持されたことを検出して、運転者にパーキングロックを解除する意思があるものと予測する。この所定時間tqは、前記所定時間tpよりも短い時間に設定されている。すなわち、一般に設定されている非Pポジションへの切換を判断可能なシフトレバー58の保持時間(所定時間tp)よりも短い所定時間tqでパーキングロック機構86の解除意思を予測する。
【0065】
或いは、P解除予測手段302は、シフト操作装置57に設けられているシフトレバー58の操作位置を検出するシフトレバーセンサからシフトレバー58の移動を検出すると、パーキングロック機構86の解除意思があるものと予測する。或いは、P解除予測手段302は、運転者によフットブレーキペダル68の踏み込みを検出すると、パーキングロック機構86の解除意思があるものと予測する。これは、Pレンジにおいてフットブレーキペダル68が踏み込まれると、通常、運転者に非Pレンジへの切換意思すなわちパーキングロック機構86の解除意思があるものと判断されるためである。
【0066】
MG2トルク制御手段214は、P解除予測手段302からパーキングロック機構86を解除するという予測を受けると、第2電動機MG2のトルクTmg2の低下を開始する。これより、パーキングロック機構86を解除する意思が確定される前にMG2トルク制御手段214によるトルク低下が開始されることとなる。
【0067】
P解除意思確定手段304は、シフトレバー58が非Pポジションに予め設定されている所定時間tp(例えば0.1s程度)だけ保持されたことが検出されると、運転者にパーキングロック機構86を解除する意思があることを確定する。そして、P解除意思確定手段304に基づいて、パーキングロック機構86を解除する意思があることが確定されると、Pロック切換制御手段212は、電動アクチュエータ104をパーキングロック機構86が解除される方向に回転駆動させる。
【0068】
一方、P解除意思確定手段304が否定される場合、すなわちパーキングロック機構86の解除が実施されないことが判断された場合、MG2トルク制御手段214は、第2電動機MG2のトルクTmg2の減減を停止して、トルクTmg2を所定のトルクTsに向かって再度増加させる。なお、P解除意思確定手段304が否定される場合とは、例えば運転者のシフトレバー58の誤操作等が該当する。
【0069】
図8は、本実施例の電子制御装置300の制御作動の要部すなわちパーキングロック状態からパーキングロック機構86を解除する際に発生する音やショックを抑制することができる制御作動を説明するためのフローチャートである。
【0070】
図8において、MG2トルク判定手段216に対応するS10において、第2電動機MG2のトルクTmg2が許容値Taよりも大きいか否かが判定される。S10が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。一方、S10が肯定される場合、P解除予測手段302に対応するS20’において、運転者にパーキングロック機構86を解除する意思があるか否かを予め予測する。S20’が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。S20’が肯定される、すなわち運転者にパーキングロック機構86を解除する意思があるものと予測される場合、MG2トルク制御手段214に対応するS30において、第2電動機MG2のトルクTmg2が漸減させられる。そして、P解除意思確定手段304に対応するS35において、運転者にパーキングロック機構86を解除する意思があるか否かを確定する。S35が肯定される場合、Pロック切換制御手段212に対応するS40において、電動アクチュエータ104の駆動が開始されてパーキングロック機構86が解除される。一方、S35が否定される場合、MG2トルク制御手段214に対応するS50において、低下している第2電動機MG2のトルクTmg2が再び所定のトルクTsに復帰させられる。
【0071】
図9は、図8のフローチャートに基づいて実行される作動を示すタイムチャートであり、前述した実施例の図6に対応している。なお、図9の実線が、運転者のパーキングロック機構86を解除する意思が確定された場合に対応している。
【0072】
図9において、t0時点において運転者による非Pポジションへの切換が検出され、その非ポジションに所定時間tq(例えば0.02s)だけ保持されたことが判断されると、t1’時点において第2電動機MG2のトルクTmg2の漸減が開始される。そして、シフトレバー58の非Pポジションへの保持時間が所定時間tp以上であることを判断する、すなわち非Pポジションへの切換が確定したことを判断すると、t2時点において、電動アクチュエータ104がパーキングロック機構86を解除する方向に回転駆動させられる。なお、予め第2電動機MG2のトルクTmg2が低下させられているので、t2時点において既にトルクTmg2が閾値Tb以下となっている。そして、t4’時点において、電動アクチュエータ104の回転角θがパーキングロックが解除される回転角θnpに到達し、パーキングロック機構86が解除される。ここで、t4’時点では、既に第2電動機MG2のトルクTmg2が許容値Ta以下の値となっており、t4’時点において発生する音やショックが抑制されることとなる。
【0073】
図9において、破線が運転者のパーキングロック機構86を解除する位置が否定された場合を示している。例えば破線で示すように、シフトレバー58の非Pポジションに保持される時間が所定時間tpに満たなかった場合等に対応している。このような場合、t2時点において非Pレンジに切り換えられないものと判断され、破線で示すように、電動アクチュエータ104の回転角θがPポジションの回転角で維持される。また、破線で示すように、第2電動機MG2のトルクTmg2が所定のトルクTsに復帰するように漸増している。
【0074】
上述のように、本実施例によれば、パーキングロック機構86を解除するものと予測されると、第2電動機MG2によって付与されるトルクTmg2を漸減させた後、パーキングギヤ52と噛合歯88との噛合を解除するため、この噛合を解除した際にパーキングギヤ52と駆動輪40との間の動力伝達経路を構成する各種噛合ギヤ同士が衝突することで発生する音やショックを抑制することができる。また、予測に基づいて第2電動機MG2のトルクTmg2が漸減させられるので、速やかなパーキングロック機構86の解除が可能となる。
【0075】
また、本実施例によれば、パーキングロック機構86を解除する予測に基づいて第2電動機MG2のトルクTmg2を漸減している場合であって、そのパーキングロック機構86の解除が実施されない場合には、第2電動機MG2によって付与されるトルクTmg2を再度増加させるものである。このようにすれば、パーキングロック機構86の解除が実施されない場合には、再度トルクが増加するので、動力分配機構16や歯車機構18等で発生する歯打ち音が抑制される。
【0076】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0077】
例えば、前述の実施例のハイブリッド車両10では、パーキングギヤ52をパーキングポール92の噛合歯88の押し当てるトルクを第2電動機MG2によって付与していたが、必ずしも第2電動機MG2に限定されず、別個に設けられたアクチュエータ等によって付与するものであっても構わない。
【0078】
また、前述の実施例のハイブリッド車両10では、シフトバイワイヤ方式が適用されていたが、必ずしもシフトバイワイヤ方式に限定されず、機械的にシフトレンジが切り替えられる構成にも適用することができる。
【0079】
また、前述の実施例に記載されている具体的な数値は、一例であって車両に応じて適宜変更されるものである。
【0080】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0081】
10:ハイブリッド車両(車両)
12:エンジン
16:動力分配機構(差動機構、ギヤ機構)
18:歯車機構(ギヤ機構)
40:駆動輪
50:複合歯車(ギヤ機構の出力部)
52:パーキングギヤ
86:パーキングロック機構
88:噛合歯
92:パーキングポール(ロック部材)
104:電動アクチュエータ
MG1:第1電動機
MG2:第2電動機(押当アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにギヤ機構を介して動力伝達可能に連結されている駆動輪と、該ギヤ機構の出力部に機械的に連結されているパーキングギヤおよび該パーキングギヤと噛み合う噛合歯を有するロック部材を有し、パーキングレンジが選択された際に前記パーキングギヤと前記噛合歯とを噛み合わせて該パーキングギヤを回転停止させるパーキングロック機構と、前記ギヤ機構に動力伝達可能に連結され、前記パーキングレンジが選択された際に前記パーキングギヤを前記噛合歯に押し当てるトルクを付与する押当アクチュエータとを、備える車両の制御装置であって、
前記パーキングロック機構を解除する指令が出力される、または、該パーキングロック機構を解除するものと予測されると、前記押当アクチュエータによって付与される前記トルクを低下させた後、前記パーキングギヤと前記噛合歯との噛合を解除することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記パーキングロック機構を解除する予測に基づいて前記押当アクチュエータのトルクを低下させている場合であって、前記パーキングロック機構の解除が実施されない場合には、前記押当アクチュエータによって付与されるトルクを再度増加させることを特徴とする請求項1の車両の制御装置。
【請求項3】
前記パーキングロック機構は、電動アクチュエータによって電気的に駆動されるものであり、
前記パーキングロック機構が解除される時点で、前記押当アクチュエータのトルクが予め設定されている所定値以下となるように、前記電動アクチュエータが予め回転駆動させられることを特徴とする請求項1の車両の制御装置。
【請求項4】
第1電動機に動力伝達可能に連結されて差動状態が制御される差動機構を備え、該差動機構の入力要素が前記エンジンに連結され、該差動機構の出力要素が前記パーキングギヤおよび第2電動機に機械的に連結されており、
前記押当アクチュエータは、前記第2電動機であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−113434(P2013−113434A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263354(P2011−263354)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】