説明

車両の前照灯制御装置

【課題】道路勾配の変化の激しい山道などでも、その変化に合わせて前照灯の照射角度を調整することで前方の走行路を十分に照射し、歩行者等を早期に認識して事故を確実に防ぐ。
【解決手段】車両1の前照灯制御装置2に車両1の前方に向けて紫外光を照射するUVライト80(紫外光照射手段)と、UVライト80の照射角度を上下方向で可変とするアクチュエータ60(上下角調整手段)と、車両1の進行路の道路勾配を検知するカメラ20又はナビゲーション装置120(道路勾配検知手段)とを設ける。カメラ20又はナビゲーション装置120によって取得した道路勾配の変化に合わせてアクチュエータ60でUVライト80の照射角度を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前照灯制御装置に関し、特に紫外光をする照射する紫外光照射手段を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の前方に向けて可視光を照射する可視光照射手段と、車両の前方に向けて紫外光を照射する紫外光照射手段とを備えた車両の前照灯制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両の前照灯制御装置では、紫外光が前方歩行者の衣服に反応してこの前方歩行者を明瞭に浮き上がらせるので、運転者から前方歩行者を明確に認識することができる、紫外光を受けても前方歩行者は何ら眩しさを感じることはない、前方歩行者を明確に視認できるようにするために可視光線の光量をいたずらに上げることも不要となり、可視光線により前方歩行者へ眩しさを与えてしまうことも防止できる、という効果を奏する。
【0003】
ところで、特許文献2には、車両前方を撮像する撮像手段と、この撮像手段によって撮像された画像を運転席から視認可能な箇所に表示する表示手段と、この表示手段に表示される画像を制御する制御部とを有する車両用表示装置が開示されている。この車両用表示装置は、車両前方の走行環境を検出する走行環境検出手段と、撮像手段によって撮像される領域を変更可能な画角切替手段とを備え、走行環境検出手段で検出される走行環境に応じて、撮像手段によって撮像される領域を画角切替手段によって広角に切り替えるように構成されている。
【特許文献1】特開2005−081860号公報
【特許文献2】特開2000−203335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の車両の前照灯制御装置に特許文献2の技術を応用し、走行環境検出手段で検出される走行環境に応じて前照灯の照射範囲を広くするなどにより、運転を支援することが考えられる。
【0005】
しかしながら、道路勾配の変化の激しい山道などでは、道路勾配が変化している領域の手前で前方の走行路を十分に照射することができず、歩行者等を早期に発見することができない場合があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、道路勾配の変化の激しい山道などでも、その変化に合わせて前照灯の照射角度を調整することで前方の走行路を十分に照射し、歩行者等を早期に認識して事故を確実に防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、道路勾配の変化に合わせて前照灯の照射角度を変更するようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、車両の前照灯を制御する前照灯制御装置を前提とし、
この前照灯制御装置は、
上記車両の前方に向けて紫外光を照射する紫外光照射手段と、
上記紫外光照射手段の照射角度を上下方向で可変とする上下角調整手段と、
上記車両の進行路の道路勾配を検知する道路勾配検知手段とを備え、
上記道路勾配検知手段によって取得した道路勾配の変化に合わせて上記上下角調整手段で上記紫外光照射手段の照射角度を変更するように構成されている。
【0009】
上記の構成によると、例えば、道路勾配検知手段によって取得された道路勾配が下り方向に変化する時は、上下角調整手段で紫外光照射手段の照射角度を下向きに変更し、道路勾配検知手段によって取得された道路勾配が上り方向に変化する時は、上下角調整手段で紫外光照射手段の照射角度を上向きに変更するようにすれば、道路勾配に合わせて照射方向が調整されるので、できるだけ遠くの歩行者等を照らし、確実に歩行者等が運転手によって認識される。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、
上記道路勾配検知手段によって取得された道路勾配が下り方向に変化する下り変化領域の手前で上記上下角調整手段で上記紫外光照射手段の照射角度を下向きに変更し、上記下り変化領域を通過後、上記紫外光照射手段の照射角度を元に戻し、
上記道路勾配検知手段によって取得された道路勾配が上り方向に変化する上り変化領域の手前で上記上下角調整手段で上記紫外光照射手段の照射角度を上向きに変更し、上記上り変化領域を通過後、上記紫外光照射手段の照射角度を元に戻すように構成されている。
【0011】
すなわち、道路勾配が下り方向に変化する領域の手前で通常の照射方向のままでは、前方の低くなった車線を遠くまで照らすことができないが、上記の構成によると、道路勾配が下り方向に変化する時点を検知してその手前から紫外光照射手段の照射方向を下方へ向けることで、低くなった前方の車線が照らされ、また、下り変化領域を通過後には紫外光照射手段の照射角度を元に戻すことで、運転者は歩行者等をより早期に発見することができる。道路勾配が上り方向に変化する場合も同様に道路勾配が上り方向に変化する時点を検知してその手前から紫外光照射手段の照射方向を上方へ向けることで、高くなった前方の車線が照らされ、また、上り変化領域を通過後には紫外光照射手段の照射角度を元に戻すことで、運転者は歩行者等をより早期に発見することができる。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記紫外光照射手段は、可視光照射手段を構成する前照灯のハイビームユニットで構成され、
上記可視光照射手段がロービームのときは、ハイビームユニットから紫外光のみを透過させて照射するように構成されている。
【0013】
上記の構成によると、紫外光照射手段と可視光照射手段とを別々の位置に設ける場合に比べて必要とするスペース及び部品が減る。ハイビームユニットを紫外光照射手段とするときには、例えば、紫外光のみを透過するフィルタを設ければ、ハイビームを照射するときとの使い分けが可能となる。紫外光照射手段と可視光照射手段との照射方向を同時に変化させる場合には、いずれも近くに配置されるので両者の動きを同期させやすい。
【0014】
第4の発明では、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、
車両の車速を検知する車速検知手段をさらに備え、
上記紫外光照射手段は、左右角調整手段によって車幅方向の照射角度を変更可能に構成され、
上記左右角調整手段は、車速が所定速度よりも遅いとき、速いときよりも上記紫外光照射手段によって照射される紫外光の車幅方向の照射角を広く設定するように構成されている。
【0015】
上記の構成によると、車速が速いときには、遠くまで見る必要があるので、左右角調整手段によって照射角を狭めて遠くまで紫外光を照らすようにし、車速が遅いときには、遠くまで見る必要はないので、左右角調整手段によって、照射角を広げて広い範囲を紫外光で照らすことにより、速度に合わせて照射範囲を適切に変更することで物標や進行路の白線が認識しやすくなる。
【0016】
第5の発明では、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、
車両の車速を検知する車速検知手段をさらに備え、
上記上下角調整手段は、車速が所定速度よりも遅いときは、速いときよりも上記紫外光照射手段によって照射される紫外光の上下方向の照射角を低く設定するように構成されている。
【0017】
上記の構成によると、車速が速いときには、遠くまで照射する必要があるので、上下角調整手段によって上下方向の照射角度を高くし、車速が遅いときには、遠くまで照射する必要はないので、上下角調整手段によって上下方向の照射角を低くすることにより、速度に合わせて照射範囲を適切に変更することで近くの物標や進行路の白線が認識しやすくなる。
【0018】
第6の発明では、第1乃至第5のいずれか1つの発明において、
運転者の視線方向を検知する視線検知手段をさらに備え、
上記可視光照射手段は、回動機構によって少なくとも車幅方向に回動可能に構成され、
上記可視光照射手段及び紫外光照射手段は、上記視線検知手段によって検知された視線ベクトルに沿って照射されるように構成されている。
【0019】
上記の構成によると、運転者の視線に合わせて可視光及び紫外光が照射されるので、歩行者のように不規則に動く物標が認識しやすくなり、事故が確実に防止される。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、上記第1の発明によれば、道路勾配検知手段によって取得した道路勾配の変化に合わせて上下角調整手段で紫外光照射手段の照射角度を変更するようにしたことにより、道路勾配の変化の激しい山道などでも、その変化に合わせて紫外光照射手段の照射角度を調整することで前方の走行路を十分に照射し、歩行者等を早期に認識して事故を確実に防ぐことができる。
【0021】
上記第2の発明によれば、道路勾配検知手段によって取得された道路勾配が下り方向に変化する手前で紫外光照射手段の照射角度を下向きに変更し、その変化が終わると照射角度を元に戻し、道路勾配が上り方向に変化する手前で紫外光照射手段の照射角度を上向きに変更し、その変化が終わると照射角度を元に戻すようにしたことにより、道路勾配の変化に合わせて紫外光照射手段の照射角度を調整することで前方の走行路を十分に照射し、歩行者等を早期に認識して事故を確実に防ぐことができる。
【0022】
上記第3の発明によれば、紫外光照射手段を可視光照射手段を構成する前照灯のハイビームユニットで構成したことにより、小さなスペースで物標や進行路の白線を認識しやすくする紫外光照射手段を設置することができる。
【0023】
上記第4の発明によれば、車速に合わせて紫外光の車幅方向の照射角を可変にしたことにより、物標や進行路の白線を紫外光で照らして認識しやすくして事故をさらに確実に防ぐことができる。
【0024】
上記第5の発明によれば、車速に合わせて左右角調整手段によって紫外光の上下方向の照射角を可変にしたことにより、物標や進行路の白線を紫外光で照らして認識しやすくして事故をさらに確実に防ぐことができる。
【0025】
上記第6の発明によれば、可視光照射手段及び紫外光照射手段を視線検知手段によって検知された視線ベクトルに沿って照射するようにしたことにより、動く物標でも認識しやすくなるので、事故を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
−システム構成−
本発明の実施形態による車両1の前照灯制御装置2のシステム構成を図1(a)に示す。図1(b),(c)にUVライト80及び可視光ライト110の実装形態を示す。車両前部のフロントグリル付近には、車両前方の歩行者や対向車3などの物標を検知するレーダ10が配置され、車室内のルーフ前端部に車両1の進行路の道路勾配を検知する道路勾配検知手段としてのカメラ20が配置されている。レーダ10及びカメラ20を利用して、車両前方の映像、車両前方の物標までの距離、物標の形状、物標の方向等が検出される。車室内のインストルメントパネルやダッシュボード上部等には、視線検知手段としてのアイカメラ30が配置され、可視光領域や赤外線領域にて運転者の目を撮影するようになっている。アイカメラ30によって撮影された画像を利用して運転者の視線ベクトルEV(視線方向)が検出される。車速検知手段としての車速センサ41は自車両の走行速度を検出する。ヨーレートセンサ40は、自車両のヨーレート(車が曲がろうとする割合)を検知し、車速センサ41とともに自車両の進行路を推定する。ナビゲーション装置120は、自車両の現在位置表示や目的地への走行経路案内等のナビゲーション機能を行うと共に、車両1の進行路の道路勾配を検知する道路勾配検知手段としての役割も果たしている。ナビゲーション装置120は、2次元地図データや三次元地図データを有している。ECU50は、運転支援のための各種演算処理を行うコンピュータである。
【0028】
車両前部の左右には、車両1の前方に向けて紫外光を照射する紫外光照射手段としてのUVライト80がそれぞれ配置され、車両前方に紫外光を照射する。UVライト80から照射される紫外光には波長315nm以上のものを使用することが好ましい。UV−Aに分類され、人体への影響がほとんどないためである。前照灯制御装置2は、上下角調整手段及び左右角調整手段としてのアクチュエータ60を備え、このアクチュエータ60は、UVライト80から照射される紫外光の照射角を上下方向及び左右方向に制御するように構成されている。
【0029】
車両前部の左右には、車両1の前方に向けて可視光を照射する可視光照射手段としての可視光ライト110が配置され、車両前方に可視光を照射する。アクチュエータ100は、可視光ライト110から照射される可視光の照射方向を上下方向及び左右方向に制御するように構成されている。
【0030】
図3(a)に道路勾配の変化のない平坦な進行路での紫外光及び可視光の照射例を示す。図3(b)に下り変化領域の手前での紫外光及び可視光の照射例を示す側面図である。図3(c)に上り変化領域の手前での紫外光及び可視光の照射例を示す側面図である。図4(a)に視線ベクトルEV及びレーンベクトルLVの一例を示す。図4(b)に対向車3ありのときの紫外光及び可視光の照射例を示す。図4(c)に対向車3なしのときの紫外光及び可視光の照射例を示す。なお、図3及び図4において、U1はUVライト80の低速時の照射領域を示し、U2はUVライト80の高速時の照射領域を示す。V1は可視光ライト110のロービームの照射領域を示し、V2は可視光ライト110のハイビームの照射領域を示す。
【0031】
前照灯制御装置2は、カメラ20及びナビゲーション装置120によって取得した道路勾配の変化に合わせてアクチュエータ60でUVライト80の照射角度を変更するように構成されている。具体的には、ナビゲーション装置120の2次元地図データとカメラ20の前方の画像より道路勾配を推定し、道路勾配が下り方向に変化する下り変化領域P1の手前でアクチュエータ60でUVライト80の照射角度を下向きに変更し、下り変化領域P1を通過後、UVライト80の照射角度を元に戻し、カメラ20又はナビゲーション装置120によって取得された道路勾配が上り方向に変化する上り変化領域P2の手前でアクチュエータ60でUVライト80の照射角度を上向きに変更し、上り変化領域P2を通過後、UVライト80の照射角度を元に戻すように構成されている。なお、図3では簡略化のために、下り変化領域P1及び上り変化領域P2を点で示しているが、下り変化領域P1及び上り変化領域P2は、点だけでなく、ある程度の広さのある領域も含むものとする。
【0032】
前照灯制御装置2は、アイカメラ30によって検知された視線ベクトルEVに沿って可視光ライト110及びUVライト80を照射するように構成されている。すなわち、アイカメラ30で運転者が見ている方向を検知し、その方向を可視光ライト110及びUVライト80で照らす。但し、可視光ライト110に関しては、前方に対向車3などがあるときやハイビームのときは、照射方向の制御を行わないように構成するとよい。対向車3などが眩惑するためである。
【0033】
また、図3及び図4においてV1で示すように、車速が所定速度よりも遅いときは、速いときよりもUVライト80によって照射される紫外光の車幅方向の照射角を広く設定するように構成されている。さらに、車速が所定速度よりも遅いときは、速いときよりもUVライト80によって照射される紫外光の上下方向の照射角を低く設定するように構成されている。
【0034】
−UVライト、可視光ライトの実装形態−
UVライト80の実装形態には「独立タイプ」と「ヘッドライト内蔵タイプ」がある。
【0035】
(1)独立タイプでは、図1(b)に示すように、UVライト80は、車両前方に可視光(ハイビーム,ロービーム)を照射する可視光ライト110を構えた前照灯130とは別体に構成されている。UVライト80の光源バルブ81から紫外光が放出され、この紫外光が可動リフレクタ82によって車両前方に反射される。アクチュエータ60は、可動リフレクタ82を鉛直方向及び水平方向に回動制御することで紫外光の照射方向を制御する。また、アクチュエータ60は、可動リフレクタ82の絞りを調整することで、紫外光の照射範囲を広くしたり狭くしたりすることができるようになっている。独立タイプでは、UVライト80の配置スペースを十分に確保できるので、そのアクチュエータ60の設置が容易である。
【0036】
一方、前照灯130では、可視光ライト110の光源バルブ111から可視光が放出され、この可視光が可動リフレクタ112によって車両前方に反射されるようになっている。アクチュエータ100は、可動リフレクタ112を鉛直方向及び水平方向に回動制御することで可視光の照射方向を制御可能となっている。前照灯130内に同様の構成のロービームユニットとハイビームユニットとが並べて配置されている。
【0037】
(2)ヘッドライト内蔵タイプでは、図1(c)に示すように、UVライト80は、前照灯130のハイビームユニットで構成されている。光源バルブ81からは紫外光のみならず可視光も放出されるが、フィルタ83により紫外光のみが透過されて車両前方に照射される。また、上記「独立タイプ」と同様、アクチュエータ60により紫外光の照射方向が制御可能となっている。なお、フィルタ83は、車両前方に紫外光を照射するときにのみ機能し、車両前方に可視光(ハイビーム)を照射するときには機能しない。ハイビーム時には、フィルタ83の機能を停止することで、紫外光を含む可視光が照射される。
【0038】
可視光ライト110は、前照灯130のロービームユニットで構成されている。ヘッドライト内蔵タイプでは、UVライト80と可視光ライト110とを別々の位置に設ける場合に比べて必要とするスペースが減る。UVライト80と可視光ライト110とを同時に回動させる場合には、いずれも近くに配置されるので両者の動きを同期させやすい。
【0039】
−動作フロー−
次に、以上のように構成された車両の前照灯制御装置の動作について図2のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、ここでは、UVライト80及び可視光ライト110が「独立タイプ」のものについて説明する。
【0040】
まず、ステップST01において、道路形状認識が行われる。つまり、ECU50は、ナビゲーション装置120の道路地図情報やカメラ20の撮影画像等に基づいて、前方の道路形状を認識する。
【0041】
次いで、ステップST02において、周辺環境認識が行われる。ECU50は、レーダ10,カメラ20等からの情報に基づいて、車両1の走行状態等の各種周辺環境を認識する。
【0042】
次に、ステップST03において、視線認識、視線ベクトル演算が行われる。ECU50は、アイカメラ30によって撮影された運転者の目の画像に基づいて運転者の視線ベクトルEV(図4参照)を算出する。このとき、視線ベクトルEVの演算フィルタとしてローパスフィルタや移動平均などを用いることにより、視線変動の影響を低減することができる。
【0043】
次に、ステップST04において、レーンベクトル演算が行われる。ECU50は、上記ステップST02,ST03において取得された各種情報に基づいて、レーンベクトルLV(自車両の走行レーンの方向ベクトル:図4参照)を算出する。
【0044】
次いで、ステップST05において、前方に道路勾配の変化があるか判定する。ECU50は、カメラ20及びナビゲーション装置120によって取得された道路勾配の変化領域P1,P2を検知又は推定する。そして、道路勾配の変化があれば、ステップST06に進み、なければステップST07に進む。
【0045】
ステップST06において、主軸勾配補正が行われる。つまり、図3(b)のU2に示すように、道路勾配が下り方向に変化する時は、UVライト80の照射角度を道路勾配の下り変化領域P1の勾配の変化に合わせて低くする。逆に図3(c)のU2に示すように、道路勾配が上り方向に変化する時は、UVライト80の照射角度を道路勾配の上り変化領域P2の勾配の変化に合わせて高くする。
【0046】
すなわち、道路勾配が下り方向に変化する領域の手前で通常の照射方向のままでは、前方の低くなった車線を遠くまで照らすことができないが、上記のように主軸勾配補正を行うことにより、道路勾配が下り方向に変化する下り変化領域P1を検知してその手前からUVライト80の照射方向を通常よりも下方へ向けることで、低くなった前方の車線が照らされ、運転者は歩行者等をより早期に発見することができる。道路勾配が上り方向に変化する場合も同様に道路勾配が上り方向に変化する上り変化領域P2を検知してその手前からUVライト80の照射方向を通常よりも上方へ向けることで、高くなった前方の車線が照らされ、運転者は歩行者等をより早期に発見することができる。
【0047】
次に、ステップST07において、前方に危険歩行者がいないか判定される。ECU50は、前方の走行路に衝突する可能性のある歩行者が存在するか否かをレーダ10及びカメラ20からの情報に基づいて判定する。存在する場合には、ステップST08に進み、存在しない場合には、ステップST09に進む。
【0048】
ステップST08において、ECU50は、UVライト80で危険歩行者をスポット的に照らすように配光角を算出する。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ60は可動リフレクタ82を回動制御し、UVライト80からの紫外光が歩行者に照射される。紫外光であるので、歩行者は眩しさを感じず、歩行者が暗闇で浮かび上がる。また、可視光ライト110は、対向車3があればロービームを使用し、なければハイビームを使用する。ECU50は、上記ステップST04において取得されたレーンベクトルLVに沿って可視光ライト110からの可視光を照射するための配光角を算出する。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ100は可動リフレクタ112を回動制御し、可視光ライト110からの可視光がレーンベクトルLVに沿って照射され、ステップST18に進む。
【0049】
ステップST09において、ECU50は、車両1に対する対向車3が存在するか否かをレーダ10及びカメラ20からの情報に基づいて判定する。
【0050】
対向車3が存在すると判定された場合は、ステップST10において、低速時の仰角及び広角の設定を行う。つまり、図5に示すように、照射角度は低く広くする。図4(b)に示すように、ECU50は、上記ステップST03において取得された視線ベクトルEVに沿ってUVライト80からの紫外光を照射するための配光角を算出する。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ60は可動リフレクタ82を回動制御し、UVライト80からの紫外光が視線ベクトルEVに沿って照射される。また、可視光ライト110はロービームを使用し、ECU50は、上記ステップST04において取得されたレーンベクトルLVに沿って可視光ライト110からの可視光を照射するための配光角を算出する。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ100は可動リフレクタ112を回動制御し、可視光ライト110からの可視光がレーンベクトルLVに沿って照射され、ステップST18に移る。紫外光のみを対向車3に向けているので、対向車3は眩しさを感じない。
【0051】
対向車3が存在しないと判定された場合は、ステップST12において、先行車が存在するかどうかを判定する。存在する場合には、先行車が眩しさを感じないようにするためにステップST10に進み、存在しない場合には、ステップST13に進む。
【0052】
ステップST13において、車速に感応した仰角及び広角の設定を行う。つまり、ステップST14において、ECU50は、車速センサ41から得られた車速が、所定値よりも低速かどうかを判定する。低速の場合には、ステップST15に進み、所定値以上のときは、ステップST16に進む。
【0053】
ステップST15において、アクチュエータ60によってUVライト80の照射角を低く、広くし(図3及び図4にU1で示し、図5の左側に該当する)、ステップST17に進む。
【0054】
ステップST16において、アクチュエータ60によってUVライト80の照射角を高く、狭くし(図3及び図4にU2で示し、図5の左側に該当する)、ステップST17に進む。
【0055】
このように、車速が速いときには、遠くまで見る必要があるので、アクチュエータ60によって照射角を狭めかつ高くして遠くまで紫外光を照らすようにし、車速が遅いときには、遠くまで見る必要はないので、アクチュエータ60によって、照射角を広げかつ低くして広い範囲を紫外光で照らすことにより、速度に合わせて照射範囲を適切に変更することで物標や進行路の白線が認識しやすくなる。
【0056】
ステップST17において、UVライト80を視線ベクトルEVに沿って配光する。可視光ライト110はハイビームを使用し、視線ベクトルEV又はレーンベクトルLVに沿って照射される。
【0057】
このように、運転者の視線に合わせて可視光及び紫外光が照射されるので、歩行者のように不規則に動く物標が認識しやすくなり、事故が確実に防止される。
【0058】
ステップST18において、前方の道路勾配の変化が終了したか判定する。ECU50は、カメラ20又はナビゲーション装置120によって取得された道路勾配の変化領域P1,P2が終了したのを確認してステップST19に進む。
【0059】
ステップST19において、主軸勾配補正をリセットする。すなわち、下り変化領域P1を通過後にはUVライト80の照射角度を上げて元の補正のない状態に戻し、また、上り変化領域P2を通過後にはUVライト80の照射角度を下げて元の補正のない状態に戻す。
【0060】
なお、UVライト80及び可視光ライト110が「ヘッドライト内蔵タイプ」のものでは、ロービーム使用時には、上記と同様の制御を行い、ハイビーム使用時には、UVライト80及び可視光ライト110が同じ領域を照らすことになるので、アクチュエータ60による照射角の制御は行わない。
【0061】
−実施形態の効果−
したがって、本実施形態にかかる車両の前照灯制御装置によると、カメラ20又はナビゲーション装置120によって取得した道路勾配の変化に合わせてアクチュエータ60でUVライト80の照射角度を変更するようにしたことにより、道路勾配の変化の激しい山道などでも、その変化に合わせてUVライト80の照射角度を調整することで前方の走行路を十分に照射し、歩行者等を早期に認識して事故を確実に防ぐことができる。
【0062】
上記実施形態によれば、カメラ20又はナビゲーション装置120によって取得された道路勾配が下り方向に変化する手前でUVライト80の照射角度を下向きに変更し、その変化が終わると照射角度を元に戻し、道路勾配が上り方向に変化する手前でUVライト80の照射角度を上向きに変更し、その変化が終わると照射角度を元に戻すようにしたことにより、道路勾配の変化に合わせてUVライト80の照射角度を調整することで前方の走行路を十分に照射し、歩行者等を早期に認識して事故を確実に防ぐことができる。
【0063】
上記実施形態によれば、UVライト80を可視光ライト110を構成する前照灯のハイビームユニットで構成したことにより、小さなスペースで物標や進行路の白線を認識しやすくするUVライト80を設置することができる。
【0064】
上記実施形態によれば、車速に合わせて紫外光の車幅方向の照射角を可変にしたことにより、物標や進行路の白線を紫外光で照らして認識しやすくして事故をさらに確実に防ぐことができる。
【0065】
上記実施形態によれば、車速に合わせてアクチュエータ60によって紫外光の上下方向の照射角を可変にしたことにより、物標や進行路の白線を紫外光で照らして認識しやすくして事故をさらに確実に防ぐことができる。
【0066】
上記実施形態によれば、可視光ライト110及びUVライト80をアイカメラ30によって検知された視線ベクトルEVに沿って照射するようにしたことにより、動く物標でも認識しやすくなるので、事故を確実に防止することができる。
【0067】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0068】
すなわち、上記実施形態では、紫外光についてのみ車速に合わせてアクチュエータ60によって車幅方向及び上下方向の照射角を可変にしたが、可視光についても車速に合わせてアクチュエータ100によって車幅方向及び上下方向の照射角を可変に制御するようにしてもよい。
【0069】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】(a)本発明の実施形態による車両の前照灯制御装置のシステム構成を示すブロック図である。(b)(c)UVライト及び可視光ライトの実装形態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態による車両の前照灯制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】(a)視線ベクトル及びレーンベクトルの一例と紫外光及び可視光の照射例を示す平面図である。(b)対向車ありのときの紫外光及び可視光の照射例を示す平面図である。(c)対向車なしのときの紫外光及び可視光の照射例を示す平面図である。
【図4】(a)道路勾配の変化のない平坦な進行路での紫外光及び可視光の照射例を示す側面図である。(b)下り変化領域の手前での紫外光及び可視光の照射例を示す側面図である。(c)上り変化領域の手前での紫外光及び可視光の照射例を示す側面図である。
【図5】車速感応仰角及び広角の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0071】
1 車両
2 前照灯制御装置
20 カメラ(道路勾配検知手段)
30 アイカメラ(視線検知手段)
41 車速センサ(車速検知手段)
60 アクチュエータ(上下角調整手段、左右角調整手段)
80 UVライト(紫外光照射手段)
100 アクチュエータ(回動機構)
110 可視光ライト(可視光照射手段)
111 光源バルブ
120 ナビゲーション装置(道路勾配検知手段)
130 前照灯
P1 下り変化領域
P2 上り変化領域
EV 視線ベクトル
LV レーンベクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前照灯を制御する前照灯制御装置において、
上記車両の前方に向けて紫外光を照射する紫外光照射手段と、
上記紫外光照射手段の照射角度を上下方向で可変とする上下角調整手段と、
上記車両の進行路の道路勾配を検知する道路勾配検知手段とを備え、
上記道路勾配検知手段によって取得した道路勾配の変化に合わせて上記上下角調整手段で上記紫外光照射手段の照射角度を変更するように構成されている
ことを特徴とする車両の前照灯制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の前照灯制御装置において、
上記道路勾配検知手段によって取得された道路勾配が下り方向に変化する下り変化領域の手前で上記上下角調整手段で上記紫外光照射手段の照射角度を下向きに変更し、上記下り変化領域を通過後、上記紫外光照射手段の照射角度を元に戻し、
上記道路勾配検知手段によって取得された道路勾配が上り方向に変化する上り変化領域の手前で上記上下角調整手段で上記紫外光照射手段の照射角度を上向きに変更し、上記上り変化領域を通過後、上記紫外光照射手段の照射角度を元に戻すように構成されている
ことを特徴とする車両の前照灯制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の前照灯制御装置において、
上記紫外光照射手段は、可視光照射手段を構成する前照灯のハイビームユニットで構成され、
上記可視光照射手段がロービームのときは、ハイビームユニットから紫外光のみを透過させて照射するように構成されている
ことを特徴とする車両の前照灯制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の車両の前照灯制御装置において、
車両の車速を検知する車速検知手段をさらに備え、
上記紫外光照射手段は、左右角調整手段によって車幅方向の照射角度を変更可能に構成され、
上記左右角調整手段は、車速が所定速度よりも遅いとき、速いときよりも上記紫外光照射手段によって照射される紫外光の車幅方向の照射角を広く設定するように構成されている
ことを特徴とする車両の前照灯制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の車両の前照灯制御装置において、
車両の車速を検知する車速検知手段をさらに備え、
上記上下角調整手段は、車速が所定速度よりも遅いときは、速いときよりも上記紫外光照射手段によって照射される紫外光の上下方向の照射角を低く設定するように構成されている
ことを特徴とする車両の前照灯制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の車両の前照灯制御装置において、
運転者の視線方向を検知する視線検知手段をさらに備え、
上記可視光照射手段は、回動機構によって少なくとも車幅方向に回動可能に構成され、
上記可視光照射手段及び紫外光照射手段は、上記視線検知手段によって検知された視線ベクトルに沿って照射されるように構成されている
ことを特徴とする車両の前照灯制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−40227(P2009−40227A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207632(P2007−207632)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】