説明

車両の変速制御装置

【課題】 車速検出値の異常に伴う駆動力の急変を回避しつつ、再発進時における発進性能の確保および発進クラッチの保護を図ることができる車両の変速制御装置を提供する。
【解決手段】 MTコントローラ42は、出力軸回転数信号が異常であると判定された場合、異常と判定される直前の出力軸回転数信号に応じた変速段を維持し、出力軸回転数信号が異常と判定されてから出力軸回転数信号とCAN車速信号との偏差が所定の復帰判定閾値以下となった場合、出力軸回転数信号に応じた変速段に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速に基づいて変速機を変速制御する車両の変速制御装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動変速装置では、車速検出手段である車速センサの車速信号が急変した場合、当該車速信号に応じた変速段の切り替えを停止している。これは、車速信号の異常で車速ゼロ、すなわち車両停車との誤判断によりダウンシフトが行われることで、車両が急減速するのを防止するためである(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平08−93912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術にあっては、車速信号の異常判定後に車両を停車させ、再発進させる場合、変速機では高速側変速段が選択された状態であるため、発進性能の低下や発進時に締結される発進クラッチの過熱により耐久性低下を伴うという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、車速検出値(車速信号)の異常に伴う駆動力の急変を回避しつつ、再発進時における発進性能の確保および発進クラッチの保護を図ることができる車両の変速制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明の車両の変速制御装置では、第1車速検出値が異常であると判定された場合、異常と判定される直前の第1車速検出値に応じた変速段を維持し、第1車速検出値が異常と判定されてから第1車速検出値と第2車速検出値との偏差が所定の復帰判定閾値以下となった場合、第1車速検出値に応じた変速段に切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、第1車速検出値の異常判定により異常と判定される直前の第1検出値に応じた変速段を維持するため、走行中に第1車速検出値に異常が発生した場合、実際の車速と乖離した値により変速が行われることで、車両の駆動力が急変するのを回避することができる。
【0007】
また、本発明では、第1車速検出値の異常判定中に第1車速検出値と第2車速検出値との偏差が復帰判定閾値以下となった場合には、第1車速検出値に応じた変速段に切り替えるため、第1車速検出値が正常に戻ったとき、または停車直前の状態となったとき、第1車速検出値に基づき変速段が低速側変速段に切り替えられる。これにより、再発進時における発進性能の確保および発進クラッチの保護を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1,2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、実施例1の車両の変速制御装置を適用したツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションの骨子図である。
【0010】
エンジン1の出力軸(クランクシャフト2)を、奇数変速段(第1速、第3速、第5速、後退)用の自動湿式回転クラッチC1、および、偶数変速段(第2速、第4速、第6速)用の自動湿式回転クラッチC2の共通なクラッチドラム3に駆動結合する。
ツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションは、奇数変速段(第1速、第3速、第5速、後退)用の第1入力軸4、および、偶数変速段(第2速、第4速、第6速)用の第2入力軸5を備え、これら第1入力軸4および第2入力軸5をそれぞれ、個々の自動クラッチC1,C2によりエンジン出力軸2に結合可能とする。
【0011】
ツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションは更に出力軸6を備え、これを第1入力軸4および第2入力軸5と平行になるよう配置し、出力軸6は図示せざるプロペラシャフトやディファレンシャルギア装置を介して左右駆動車輪に結合する。
【0012】
以下、ツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションの歯車変速機構を詳述する。
奇数変速段クラッチC1および偶数変速段クラッチC2を介してエンジン回転を選択的に入力される第1入力軸4および第2入力軸5のうち第2入力軸5は中空とし、これを第1入力軸4上に嵌合するが、内側の第1入力軸4および外側の第2入力軸5を相互に同心状態で回転自在とする。
【0013】
上記のごとく相互に回転自在に嵌合した第1入力軸4および第2入力軸5のエンジン側前端をクラッチC1,C2のクラッチハブ7,8に結合し、第1入力軸4を第2入力軸5の後端から突出させて、第1入力軸4に後端部4aを設定し、第1入力軸4、第2入力軸5、および出力軸6に平行に配してカウンターシャフト10を設ける。
【0014】
カウンターシャフト10の後端にはカウンターギア11を一体回転可能に設け、これと同じ軸直角面内に配して出力歯車12を設け、出力歯車12を出力軸6に結合する。
これらカウンターギア11および出力歯車12を相互に噛合させてカウンターシャフト10を出力軸6に駆動結合する。
【0015】
第1入力軸4の後端部4aとカウンターシャフト10との間に奇数変速段(第1速、第3速、第5速)グループの歯車組G1,G3,G5、および後退変速段の歯車組GRを設け、これらをエンジン1に近いフロント側から、第1速歯車組G1、後退歯車組GR、第5速歯車組G5および第3速歯車組G3の順に配置する。
【0016】
第1速歯車組G1は、第1入力軸4の後端部4aに一体成形した第1速入力歯車13と、カウンターシャフト10上に回転自在に設けた第1速出力歯車14とを相互に噛合させて構成する。
【0017】
後退歯車組GRは、第1入力軸4の後端部4aに一体成形した後退入力歯車15と、カウンターシャフト10上に回転自在に設けた後退出力歯車16と、これら歯車15,16に噛合してこれら歯車15,16間を逆転下に駆動結合するリバースアイドラギア17とで構成し、リバースアイドラギア17を、変速機ケースに植設したリバースアイドラ軸18により回転自在に支持する。
【0018】
第3速歯車組G3は、第1入力軸4の後端部4aに回転自在に設けた第3速入力歯車19と、カウンターシャフト10に駆動結合して設けた第3速出力歯車20とを相互に噛合させて構成する。
第5速歯車組G5は、第1入力軸4の後端部4aに回転自在に設けた第5速入力歯車31と、カウンターシャフト10に駆動結合して設けた第5速出力歯車32とを相互に噛合させて構成する。
【0019】
カウンターシャフト10には更に、第1速出力歯車14および後退出力歯車16間に配して1速−後退用同期噛合機構(選択噛合機構)21を設け、この1速−後退用同期噛合機構(選択噛合機構)21は、カウンターシャフト10と共に回転するカップリングスリーブ21aを図示の中立位置から左行させてクラッチギア21bに噛合させるとき、第1速出力歯車14がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく第1速を選択可能なものとし、カップリングスリーブ21aを図示の中立位置から右行させてクラッチギア21cに噛合させるとき、後退出力歯車16がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく後退を選択可能なものとする。
【0020】
第1入力軸4の後端部4aには更に、第3速入力歯車19および第5速入力歯車31間に配して3速−5速用同期噛合機構(選択噛合機構)22を設け、この3速−5速用同期噛合機構(選択噛合機構)22は、第1入力軸4(その後端部4a)と共に回転するカップリングスリーブ22aを図示の中立位置から右行させてクラッチギア22bに噛合させるとき、第3速入力歯車19が第1入力軸4に駆動結合されて後述するごとく第3速を選択可能なものとし、カップリングスリーブ22aを図示の中立位置から左行させてクラッチギア22cに噛合させるとき、第5速入力歯車31が第1入力軸4に駆動結合されて後述するごとく第5速を選択可能なものとする。
【0021】
中空の第2入力軸5とカウンターシャフト10との間には、偶数変速段(第2速、第4速、第6速)グループの歯車組、つまり、エンジンに近いフロント側から順次、第6速歯車組G6、第2速歯車組G2、および第4速歯車組G4を配して設ける。
【0022】
第6速歯車組G6は第2入力軸5の比較的前部に配置し、第4速歯車組G4は第2入力軸5の後端に配置し、第2速歯車組G2は第2入力軸5のこれら前部および後端間中央部に配置する。
第6速歯車組G6は、第2入力軸5の外周に一体成形した第6速入力歯車23と、カウンターシャフト10上に回転自在に設けた第6速出力歯車24とを相互に噛合させて構成する。
【0023】
第2速歯車組G2は、第2入力軸5の外周に一体成形した第2速入力歯車25と、カウンターシャフト10上に回転自在に設けた第2速出力歯車26とを相互に噛合させて構成する。
【0024】
第4速歯車組G4は、第2入力軸5の外周に一体成形した第4速入力歯車27と、カウンターシャフト10上に回転自在に設けた第4速出力歯車28とを相互に噛合させて構成する。
【0025】
カウンターシャフト10には更に、第6速出力歯車24および第2速出力歯車26間に配して6速専用の同期噛合機構(選択噛合機構)29を設け、この6速専用同期噛合機構(選択噛合機構)29は、
【0026】
カウンターシャフト10と共に回転するカップリングスリーブ29aを図示の中立位置から左行させてクラッチギア29bに噛合させるとき、第6速出力歯車24がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく第6速を選択可能なものとする。
【0027】
またカウンターシャフト10には、第2速出力歯車26および第4速出力歯車28間に配して2速−4速用同期噛合機構(選択噛合機構)30を設け、この2速−4速用同期噛合機構(選択噛合機構)30は、カウンターシャフト10と共に回転するカップリングスリーブ30aを図示の中立位置から左行させてクラッチギア30bに噛合させるとき、第2速出力歯車26がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく第2速を選択可能なものとし、カップリングスリーブ30aを図示の中立位置から右行させてクラッチギア30cに噛合させるとき、第4速出力歯車28がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく第4速を選択可能なものとする。
【0028】
上記の実施例になるツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションの自動変速作用を次に説明する。
動力伝達を希望しない中立(N)レンジや駐車(P)レンジのような非走行レンジにおいては、自動湿式回転クラッチC1,C2の双方を解放しておき、また、同期噛合機構21,22,29,30のカップリングスリーブ21a,22a,29a,30aを全て図示の中立位置にして、ツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションを動力伝達が行われない中立状態にする。
この場合、クラッチC1,C2がともに解放側クラッチとなる。
【0029】
前進動力伝達を希望するDレンジや、後退動力伝達を希望するRレンジのような走行レンジにおいては、エンジン1で駆動されるオイルポンプ(図示せず)からの作動油を媒体とし、以下のごとくに同期噛合機構21,22,29,30のカップリングスリーブ21a,22a,29a,30aをシフト動作させると共に、クラッチC1,C2を締結・解放制御することにより各前進変速段や、後退変速段を選択することができる。
【0030】
Dレンジのような前進走行レンジで第1速を希望する場合、同期噛合機構21のカップリングスリーブ21aを左行させて歯車14をカウンターシャフト10に駆動結合し、これによる奇数変速段の第1速へのプリシフト後、非走行レンジで解放状態だった自動湿式回転クラッチC1を締結する。
【0031】
これによりクラッチC1からのエンジン回転が第1入力軸4、第1速歯車組G1、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より出力され、第1速での動力伝達を行うことができる。
この場合、クラッチC1が締結側クラッチとなり、クラッチC2が解放側クラッチとなる。
【0032】
なお、上記第1速の選択が発進用のものである時は、それ用にクラッチC1を締結進行させるスリップ締結制御により、発進ショックのない滑らかな前発進を行わせることとする。
【0033】
またNレンジからDレンジへのセレクト操作に呼応して上記第1速の選択を行う場合は、上記奇数変速段の第1速へのプリシフトと同時に、同期噛合機構30のカップリングスリーブ30aを左行させて歯車26をカウンターシャフト10に駆動結合し、これにより偶数変速段グループの第2速へのプリシフトも済ませておく。
しかして、クラッチC2が非走行レンジでの解放状態を継続するため、第2速の選択が行われることはない。
【0034】
第1速から第2速へのアップシフトに際しては、N→Dセレクト時に上記のごとく偶数変速段グループが第2速へプリシフトされているため、クラッチC1を解放すると共に、非走行レンジで解放状態だったクラッチC2を締結進行させること(スリップ締結制御)により、つまりクラッチ掛け替えにより第1速から第2速へのアップシフトを行わせることができる。
この場合、クラッチC1が解放側クラッチとなり、クラッチC2が締結側クラッチとなる。
【0035】
これによりクラッチC2からのエンジン回転が第2入力軸5、第2速歯車組G2、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より出力され、第2速での動力伝達を行うことができる。
【0036】
第2速から第3速へのアップシフトに際しては、同期噛合機構21のカップリングスリーブ21aを中立位置に戻して歯車14をカウンターシャフト10から切り離すと共に、同期噛合機構22のカップリングスリーブ22aを右行させて歯車19を第1入力軸4に駆動結合し、これによる奇数変速段グループの1→3プリシフト後、クラッチC2を解放すると共にクラッチC1を締結進行させること(スリップ締結制御)により、つまりクラッチ掛け替えにより第2速から第3速へのアップシフトを行わせる。
この場合、クラッチC1が締結側クラッチとなり、クラッチC2が解放側クラッチとなる。
【0037】
これによりクラッチC1からのエンジン回転が第1入力軸4、第3速歯車組G3、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より出力され、第3速での動力伝達を行うことができる。
【0038】
第3速から第4速へのアップシフトに際しては、同期噛合機構30のカップリングスリーブ30aを中立位置に戻して歯車26をカウンターシャフト10から切り離すと共に、同期噛合機構30のカップリングスリーブ30aを右行させて歯車28をカウンターシャフト10に駆動結合し、これによる偶数変速段グループの2→4プリシフト後、クラッチC1を解放すると共にクラッチC2を締結進行させること(スリップ締結制御)により、つまりクラッチ掛け替えにより第3速から第4速へのアップシフトを行わせる。
この場合、クラッチC1が解放側クラッチとなり、クラッチC2が締結側クラッチとなる。
【0039】
これによりクラッチC2からのエンジン回転が第2入力軸5、第4速歯車組G4、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より出力され、第4速での動力伝達を行うことができる。
【0040】
第4速から第5速へのアップシフトに際しては、同期噛合機構22のカップリングスリーブ22aを中立位置に戻して歯車19を第1入力軸4から切り離すと共に、同期噛合機構22のカップリングスリーブ22aを左行させて歯車31を第1入力軸4に結合し、これによる奇数変速段グループの3→5プリシフト後、クラッチC2を解放すると共にクラッチC1を締結進行させること(スリップ締結制御)により、つまりクラッチ掛け替えにより第4速から第5速へのアップシフトを行わせる。
この場合、クラッチC1が締結側クラッチとなり、クラッチC2が解放側クラッチとなる。
【0041】
これによりクラッチC1からのエンジン回転が第1入力軸4、第5速歯車組G5、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より出力され、第5速での動力伝達を行うことができる。
【0042】
第5速から第6速へのアップシフトに際しては、同期噛合機構30のカップリングスリーブ30aを中立位置に戻して歯車28をカウンターシャフト10から切り離すと共に、同期噛合機構29のカップリングスリーブ29aを左行させて歯車24をカウンターシャフト10に駆動結合し、これによる偶数変速段グループの4→6プリシフト後、クラッチC1を解放すると共にクラッチC2を締結進行させること(スリップ締結制御)により、つまりクラッチ掛け替えにより第5速から第6速へのアップシフトを行わせる。
この場合、クラッチC1が解放側クラッチとなり、クラッチC2が締結側クラッチとなる。
【0043】
これによりクラッチC2からのエンジン回転が第2入力軸5、第6速歯車組G6、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より軸線方向に出力され、第6速での動力伝達を行うことができる。
なお、第6速から順次第1速へとダウンシフトさせるに際しても、上記アップシフトと逆の変速制御を行うことにより、前述したと逆方向のプリシフトおよびクラッチC1,C2の締結・解放制御を介して所定のダウンシフトを行わせることができる。
【0044】
後退走行を希望して非走行レンジからRレンジに切り替えた場合においては、同期噛合機構21のカップリングスリーブ21aを中立位置から右行させて歯車16をカウンターシャフト10に駆動結合し、これによる奇数変速段グループの後退変速段へのプリシフト後、非走行レンジで解放状態であった自動湿式回転クラッチC1を締結する。
この場合、クラッチC1が締結側クラッチとなり、クラッチC2が解放側クラッチとなる。
【0045】
これによりクラッチC1からのエンジン回転が第1入力軸4、後退歯車組GR、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より出力され、この際、後退歯車組GRにより回転方向を逆にされることから、後退変速段での動力伝達を行うことができる。
なお、後退変速段での発進時は、それ用にクラッチC1を締結進行させるスリップ締結制御により、発進ショックのない滑らかな後発進を行わせることとする。
【0046】
次に、実施例1のエンジン回転抑制制御について説明する。
図2は、実施例1の駆動力制御系の構成を示すブロック図である。
エンジンコントローラ40、ABSコントローラ(第2車速検出手段)41およびMTコントローラ(変速制御手段)42は、車内LAN通信線(以下、CAN通信線)43を介して互いに情報のやりとりを行っている。
【0047】
エンジンコントローラ40は、車速表示メータ44からのCAN車速(第2車速検出値)と、アクセル開度センサ45からのアクセル開度と、エンジン回転数センサ46からのエンジン回転数とに基づいて、エンジン1の燃料噴射量を調整し、エンジントルクを制御する。エンジンコントローラ40は、アクセル開度およびエンジン回転数を、CAN通信線43に出力する。
【0048】
ABSコントローラ41は、各車輪(不図示)に設けられた各車輪速センサ47a,47b,47c,47dからの各車輪速に基づいて、擬似車体速を算出し、各車輪速と擬似車体速との偏差に応じて、各車輪のスリップ率が所望の値となるように、各車輪の制動力を調整するABSアクチュエータ48を制御する。ここで、擬似車体速の算出方法は任意であり、例えば、各車輪速のうち最も高い車輪速を擬似車体速とする方法や、左右駆動輪(左右後輪)の車輪速の平均値を擬似車体速とする方法を用いることができる。ABSコントローラ41は、擬似車体速をCAN通信線43に出力する。
【0049】
MTコントローラ42は、アクセル開度と、エンジン回転数と、レンジ位置センサ49からのレンジ位置と、第1入力軸回転数センサ50からの第1入力軸4の回転数と、第2入力軸回転数センサ51からの第2入力軸5の回転数と、出力軸回転数センサ(第1車速検出手段)52からの出力軸6の出力軸回転数(第1車速検出値)と、に基づいて、図外の油圧制御回路を介して各同期噛合機構21,22,29,30および各クラッチC1,C2の状態を制御する。
【0050】
MTコントローラ42は、出力軸回転数とアクセル開度に基づき、あらかじめ設定された変速マップから目標変速段を選択し、上述した変速制御を行う。ここで、変速マップは、横軸を車速、縦軸をアクセル開度とし、車速が高くなるほど高速側変速段を選択する設定としている。
【0051】
また、MTコントローラ42では、トルク容量係数とエンジン回転数から、下記の式(1)に基づいてクラッチトルクを算出し、算出したクラッチトルクが得られるよう、クラッチ容量を制御し、トルクコンバータ特性の模擬を実現している。
クラッチトルク=トルク容量係数×(エンジン回転数×オフセット値)2 …(1)
「トルク容量係数」は、クラッチの速度比(出力回転数/入力回転数)に基づいて設定する。速度比は、例えば、1.0よりも小さい所定比から1.0まで徐々に減少し、1.0で極小値を取り、1.0を超えると所定の速度比まで徐々に増加し、一定の値となるように設定している。
【0052】
ここで、入力回転数はエンジン回転数センサ46の検出値とトーショナルダンパ8の特性から算出することができる。また、出力回転数は、第1入力軸回転数センサ50または第2入力軸回転数センサ51により検出することができる。
なお、トルク容量係数は、エンジン回転の吹け上がりを防止するために、アクセル開度が高いほど小さくなるように設定してもよい。
「オフセット値」は、アクセル開度に応じて設定し、アクセル開度が所定値(例えば、開度2/8)までは所定値から徐々に減少し、開度2/8を超えるとゼロとなるように設定している。これにより、アイドル回転時等、エンジン回転数が低い場合には、クラッチトルクを小さくすることで、エンジンストールの発生を抑制している。また、実施例1では、出力軸回転数がゼロ、すなわち車速ゼロでアクセルOFFの場合、クラッチ容量をゼロとしてクラッチを解放することで、エンジンストールの発生を抑制している。
【0053】
車速表示メータ44は、図外のインストルメントパネルに配置されて運転者に車速を表示するものであって、擬似車体速から例えばタイヤの変形等に伴うノイズを除去したCAN車速を算出し、表示する。車速表示メータ44は、CAN車速をCAN通信線43に出力する。
【0054】
次に、出力軸回転数信号の異常発生時における変速制御について説明する。
MTコントローラ42は、出力軸回転数センサ52からの出力軸回転数信号の異常を判定する異常判定部(異常判定手段)42aを備えている。この異常判定部42aは、出力軸回転数信号の前回値からの減少分が所定の異常判定閾値(例えば、800rpm)以上である場合、出力軸回転数信号の異常と判定する。また、出力軸回転数信号が異常である状態が所定の故障判定時間(例えば、5秒程度)継続した場合、出力軸回転数センサ52の故障と判定する。
【0055】
MTコントローラ42では、異常判定部42aにより出力軸回転数信号が異常と判定された場合、異常と判定される直前の出力軸回転数信号に応じた変速段を維持する。そして、異常判定中に出力軸回転数信号とCAN車速信号との偏差が所定の復帰判定閾値(例えば、400rpm)以下となった場合、出力軸回転数信号に応じた変速段に切り替える。なお、異常判定部42aにより出力軸回転数センサ52の故障と判定された場合には、出力軸回転数センサ52の故障と判定し、出力軸回転数信号に基づく変速制御から、CAN車速信号に基づく変速制御へと切り替える。
【0056】
[車速設定処理]
図3は、実施例1のMTコントローラ42で実行される出力軸回転数信号に応じた車速設定処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
【0057】
ステップS1では、出力軸回転数センサ52から出力軸回転数信号を読み込み、ステップS2へ移行する。
【0058】
ステップS2では、ステップS1で読み込んだ出力軸回転数信号が、前回の制御周期における出力軸回転数信号(前回値)よりも異常判定閾値(例えば、800rpm)以上減少したか否かを判定する。YESの場合にはステップS3へ移行し、NOの場合にはステップS8へ移行する。ここで、「異常判定閾値」とは、走行時に想定される1制御周期における車速変化量の最大値よりも大きな値とする。すなわち、実際の車両の車速変化量がこの値を超えることは有り得ないため、出力軸回転数信号に異常が発生している状態を正確に判定することができる。
【0059】
ステップS3では、故障判定カウンタをインクリメントし、ステップS4へ移行する。
【0060】
ステップS4では、故障判定カウンタのカウンタ値が所定の故障判定値以上であるか否かに基づいて、出力軸回転数信号の異常が所定の故障判定時間(例えば、5秒程度)継続したか否かを判定する。YESの場合にはステップS5へ移行し、NOの場合にはステップS6へ移行する。
【0061】
ステップS5では、出力軸回転数信号をCAN車速信号に置き換え、リターンへ移行する。
【0062】
ステップS6では、CAN車速信号とステップS1で読み込んだ出力軸回転数信号との偏差が復帰判定閾値(例えば、400rpm)よりも大きいか否かを判定する。YESの場合にはステップS7へ移行し、NOの場合にはステップS9へ移行する。
【0063】
ステップS7では、出力軸回転数信号を前回値とし、リターンへ移行する。
【0064】
ステップS8では、故障判定カウンタをリセット(=0)し、ステップS9へ移行する。
【0065】
ステップS9では、出力軸回転数信号をステップS1で読み込んだ出力軸回転数信号とし、リターンへ移行する。
【0066】
次に、作用を説明する。
[車速信号異常時の変速段維持作用]
図2に示したように、実施例1の駆動力制御系では、車速に応じた信号として、出力軸回転数センサ52からの出力軸回転数信号と、ABSコントローラ41で演算され、車速表示メータ44でノイズ補正された各車輪速に基づくCAN車速信号とを用いているが、MTコントローラ42では、制御の動きや方向性の統一を図るために、出力軸回転数信号のみを用いて変速制御を行っている。
【0067】
MTコントローラ41は、出力軸回転数信号が正常である場合には、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップ→ステップS8→ステップS9へと進む流れとなり、ステップS1で読み込んだ出力軸回転数信号とアクセル開度とに基づいて、変速マップから所定の変速段を選択する。
【0068】
MTコントローラ41は、極低速走行以外の走行時、例えば、高速走行時に出力軸回転数信号が車速ゼロを示す値を出力した場合には、出力軸回転数信号の異常と判定し、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6→ステップS7へと進む流れとなり、異常判定直前の出力軸回転数信号とアクセル開度とに基づいて変速段を選択し、異常判定直前の変速段を維持する。
これにより、出力軸回転数信号が車速ゼロを示すことで運転者の予期せぬダウンシフト(第5速→第4速→第3速→第2速→第1速)に伴う車両の急減速を防止することができる。
【0069】
MTコントローラ41は、出力軸回転数信号の異常と判定してから故障判定時間内にCAN車速信号と出力軸回転数信号との偏差が復帰判定閾値以下となった場合には、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6→ステップS9へと進む流れに復帰し、ステップS1で読み込んだ出力軸回転数信号とアクセル開度とに基づいて変速制御を行う。
【0070】
一方、故障判定時間内にCAN車速信号と出力軸回転数信号との偏差が復帰判定閾値以下とならなかった場合、出力軸回転数センサ52の故障と判定し、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進む流れとなり、ステップS5では出力軸回転数信号をCAN車速信号に置き換える。よって、CAN車速信号とアクセル開度とに基づいて変速制御を行う。
【0071】
図4は、実施例1の車速信号異常時の変速段維持作用を示すタイムチャートで、第6速変速段から減速する際に出力軸回転数信号に異常が発生した状況を示している。
時点t0と時点t1との間の区間では、出力軸回転数センサ52からのセンサ入力信号(出力軸回転数信号)は正常であるため、センサ入力信号に応じて第6速変速段から第5速変速段へのダウンシフトを行う。
【0072】
時点t1では、センサ入力信号が車速ゼロを示したため、前回値との偏差が異常判定閾値を超えることにより、センサ入力信号の異常と判定すると共に、故障判定カウンタによる異常継続時間のカウントを開始する。時点t1と時点t2との間の区間では、時点t1でのセンサ入力信号を処理後車速信号とすることで、第5速変速段を維持する。
【0073】
時点t2では、故障判定時間経過前にセンサ入力信号とCAN車速信号との偏差が復帰判定閾値以下となったため、時点t2と時点t3との間の区間では、センサ入力信号(0km/h)に応じて第5速変速段から第4速変速段へのダウンシフトを行う。
時点t3では、車両が停車し、時点t3と時点t4との間の区間では、センサ入力信号(0km/h)に応じた第4速変速段から第1速変速段まで連続してダウンシフトを行う。
【0074】
ここで、従来制御では、時点t1でセンサ入力信号の異常と判定した場合、常に第5速変速段が維持されるため、停車直前の時点t2ではアクセルOFFによりエンジン回転数は低下しているものの、発進クラッチC1は時点t1でのエンジン回転数等に応じたクラッチ容量のままである。このため、エンジン回転に対しクラッチトルクが過大となり、エンジンストールが発生するおそれがある。
【0075】
また、従来制御では、エンジンストールを回避して停車した場合であっても、時点t4以降に車両を再発進させる際、第5速変速段を選択した状態で発進しなければならず、駆動力不足による発進性能の低下や、発進クラッチC1の負荷が過大となることで発進クラッチC1が過熱し、耐久性の低下を招くという問題があった。
【0076】
これに対し、実施例1のMTコントローラ42では、時点t1からの処理後車速信号の保持状態で、出力軸回転数センサ52のセンサ入力信号とCAN車速信号とを比較し、差分が復帰判定閾値以下となる時点t2以降、センサ入力信号に応じた変速段を選択する。CAN車速信号は4つの車輪速センサからのセンサ信号に基づいて演算しているため、演算不能な状態となることが極めて少なく、復帰判定が不能となることはない。
【0077】
センサ入力信号とCAN車速信号との偏差が小さくなる状況としては、以下の2つのケースが考えられる。
ケース1: センサ入力信号が正常に戻った場合
ケース2:出力軸回転数センサ52は故障しており、車両が停車状態(0km/h)に近づいた場合
【0078】
つまり、実施例1では、センサ入力信号とCAN車速信号との差分が復帰判定閾値以下となった場合にセンサ入力信号に応じた変速段の切り替えを行っているため、上記2つのケースのいずれにも対応することができる。すなわち、出力軸回転数信号の異常が一時的(ケース1)であるか継続的(ケース2)であるかにかかわらず、時点t3で車両停車状態となる前の段階から、センサ入力信号(0km/h)を読み込んでクラッチを解放するため、エンジンストールの発生を回避できる。そして、停車後の再発進時には、第1速変速段での発進により、十分な発進性能を確保できると共に、発進クラッチC1の過熱を抑制できる。
【0079】
加えて、実施例1では、センサ入力信号と前回値との偏差が異常判定閾値異常である状態が故障判定時間継続した場合には、出力軸回転数センサ52の故障と判定し、CAN車速信号に応じた変速制御へと切り替えるため、出力軸回転数センサ52が断線等により故障した場合であっても、実際の車速に応じた変速段の切り替えが可能となり、走行性能を維持することができる。
【0080】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両の変速制御装置にあっては、以下に列挙する効果が得られる。
【0081】
(1) MTコントローラ42は、出力軸回転数信号が異常であると判定された場合、異常と判定される直前の出力軸回転数信号に応じた変速段を維持し、出力軸回転数信号が異常と判定されてから出力軸回転数信号とCAN車速信号との偏差が所定の復帰判定閾値以下となった場合、出力軸回転数信号に応じた変速段に切り替える。これにより、出力軸回転数信号の異常に伴う駆動力の急変を回避しつつ、再発進時における発進性能の確保および発進クラッチC1の保護を図ることができる。
【0082】
(2) 異常判定部42aは、出力軸回転数信号が前回値に対して所定の異常判定閾値以上変化した場合、出力軸回転数信号が異常であると判定する。すなわち、実際には起こり得ない出力軸回転数信号の変動が発生した場合にのみ出力軸回転数信号の異常を判定することで、異常判定の正確性を高めることができる。
【0083】
(3) 第1車速検出手段を、変速機の出力軸回転数センサ52とし、第2車速検出手段を、各車輪に配置された車輪速センサ47a〜47dの検出信号からCAN車速信号を演算するABSコントローラ41とした。これにより、新規に車速検出手段を設けることなく、既存のABSコントローラ41により演算されるCAN車速信号(擬似車体速)に基づいて、出力軸回転数信号の異常状態からの復帰判定を行うことができる。また、CAN車速信号は、4つの車輪速センサ47a〜47dの検出信号を用いて演算しているため、演算不能な状態となることが極めて少なく、復帰判定が不能となる状態を回避することができる。
【0084】
(4) 異常判定部42aは、出力軸回転数信号が異常であるとの判定が所定の故障判定時間継続した場合、出力軸回転数センサ52の故障と判定し、MTコントローラ41は、出力軸回転数センサ52の故障と判定された場合、CAN車速信号に基づいて変速制御を行う。これにより、出力軸回転数センサ52が断線等により故障した場合であっても、実際の車速に応じた変速段の切り替えが可能となるため、走行性能を維持することができる。
【実施例2】
【0085】
実施例2では、出力軸回転数信号が異常であると判定された場合、CAN車速信号に基づいて変速制御を行う例である。
なお、ツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションおよび駆動力制御系の構成については、実施例1と同様であるため、図示ならびに説明を省略する。
【0086】
[車速設定処理]
実施例2の車速設定処理では、図3に示した実施例1の処理とほぼ同じであるが、ステップS7の処理のみ実施例1と異なる。
ステップS7では、出力軸回転数信号をCAN車速信号に置き換え、リターンへ移行する。
【0087】
次に、作用を説明する。
[車速信号異常時の車速信号代替値に基づく変速作用]
実施例2では、出力軸回転数信号が異常と判定された場合、出力軸回転数信号とCAN車速信号との偏差が復帰判定閾値以下となるまでの間、CAN車速信号とアクセル開度とに応じて変速段を選択する。
【0088】
このため、高速走行中に出力軸回転数信号が車速ゼロを示す異常発生時であっても、実際の車速に対応するCAN車速信号に基づいて変速段を切り替えるため、予期せぬダウンシフトに伴う車両の急減速を防止することができる。
また、車両停車時にはCAN車速信号(0km/h)に応じてクラッチを解放するため、エンジンストールは発生せず、発進時にも第1速変速段を選択しての発進であるため、発進性能の低下や発進クラッチC1の過熱を伴うおそれがない。
【0089】
次に、効果を説明する。
実施例2の車両の変速制御装置では、実施例1の効果(2)〜(4)に加え、以下の効果が得られる。
【0090】
(5) MTコントローラ42は、出力軸回転数信号が異常であると判定された場合、出力軸回転数信号とCAN車速信号との偏差が復帰判定閾値以下となるまでの間、CAN車速信号に基づいて変速制御を行う。これにより、出力軸回転数信号の異常に伴う駆動力の急変を回避しつつ、再発進時における発進性能の確保および発進クラッチC1の保護を図ることができる。
【0091】
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づく実施例1,2により説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例1,2に示したものに限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない程度の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0092】
例えば、実施例1,2では、ツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションを有する車両を例に示したが、車速に応じて変速機の変速段を切り替える構成であれば、本発明を適用でき、実施例1,2と同様の作用効果を得ることができる。
【0093】
また、実施例1では、第1車速検出手段として出力軸回転数センサを用い、第2車速検出手段として各車輪速から擬似車体速を演算するABSコントローラを用いた例を示したが、第1車速検出手段および第2車速検出手段は任意であり、例えば、第2車速検出手段として、第1入力軸回転数センサまたは第2入力軸回転数センサを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施例1の車両の変速制御装置を適用したツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションの骨子図である。
【図2】実施例1の駆動力制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】実施例1のMTコントローラ42で実行される出力軸回転数信号に応じた車速設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】実施例1の車速信号異常時の変速段維持作用を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0095】
1 エンジン(駆動源)
2 クランクシャフト
C1 奇数変速段クラッチ(発進クラッチ)
C2 偶数変速段クラッチ
3 クラッチドラム
4 第1入力軸
5 第2入力軸
6 出力軸
7 クラッチハブ
8 クラッチハブ
10 カウンターシャフト
11 カウンターギア
12 出力歯車
G1 第1速歯車組
G2 第2速歯車組
G3 第3速歯車組
G4 第4速歯車組
G5 第5速歯車組
G6 第6速歯車組
GR 後退歯車組
21 1速−後退用同期噛合機構
22 3速−5速用同期噛合機構
29 6速用同期噛合機構
30 2速−4速用同期噛合機構
40 エンジンコントローラ
41 ABSコントローラ(第2車速検出手段)
42 MTコントローラ(変速制御手段)
42a 異常判定部(異常判定手段)
43 CAN通信線
44 車速表示メータ
45 アクセル開度センサ
46 エンジン回転数センサ
47a〜47d 車輪速センサ
48 ABSアクチュエータ
49 レンジ位置センサ
50 第1入力軸回転数センサ
51 第2入力軸回転数センサ
52 出力軸回転数センサ(第1車速検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源と駆動輪との間の駆動伝達経路上に配置され、車速に応じた第1車速検出値を出力する第1車速検出手段と、
前記第1車速検出値に基づいて変速機の変速段を車速に応じた変速段に切り替える変速制御手段と、
を備えた車両の変速制御装置において、
前記駆動伝達経路上に配置され、車速に応じた第2車速検出値を出力する第2車速検出手段と、
前記第1車速検出値の異常を判定する異常判定手段と、
を設け、
前記変速制御手段は、前記第1車速検出値が異常であると判定された場合、異常と判定される直前の第1車速検出値に応じた変速段を維持し、前記第1車速検出値が異常と判定されてから前記第1車速検出値と前記第2車速検出値との偏差が所定の復帰判定閾値以下となった場合、前記第1車速検出値に応じた変速段に切り替えることを特徴とする車両の変速制御装置。
【請求項2】
車両の駆動源と駆動輪との間の駆動伝達経路上に配置され、車速に応じた第1車速検出値を出力する第1車速検出手段と、
前記第1車速検出値に基づいて変速機の変速段を車速に応じた変速段に切り替える変速制御手段と、
を備えた車両の変速制御装置において、
前記駆動伝達経路上に配置され、車速に応じた第2車速検出値を出力する第2車速検出手段と、
前記第1車速検出値の異常を判定する異常判定手段と、
を設け、
前記変速制御手段は、前記第1車速検出値が異常であると判定された場合、前記第1車速検出値と前記第2車速検出値との偏差が所定の復帰判定閾値以下となるまでの間、前記第2車速検出値に基づいて前記変速制御を行うことを特徴とする車両の変速制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両の変速制御装置において、
前記異常判定手段は、前記第1車速検出値が前回の第1車速検出値に対して所定の異常判定閾値以上変化した場合、前記第1車速検出手段が異常であると判定することを特徴とする車両の変速制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両の変速制御装置において、
前記第1車速検出手段は、前記変速機の出力軸回転数センサであり、
前記第2車速検出手段は、各車輪に配置された車輪速センサの検出信号から前記第2車速検出値を演算することを特徴とする車両の変速制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両の変速制御装置において、
前記異常判定手段は、前記第1車速検出値が異常であるとの判定が所定の故障判定時間継続した場合、前記第1車速検出手段の故障と判定し、
前記変速制御手段は、前記第1車速検出手段の故障と判定された場合、前記第1車速検出値に基づく変速制御から前記第2車速検出値に基づく変速制御へと切り替えることを特徴とする車両の変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−127828(P2009−127828A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306674(P2007−306674)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】