説明

車両の荷室構造

【課題】車両の後部に設けられた荷室を使用する際の利便性を簡単な構成で効果的に向上させる。
【解決手段】車体の後壁に形成された後端開口部の前方側に位置する荷室3と、この荷室3のフロア面よりも下方に凹入して車幅方向に延びるように設置されたサブトランク21と、上記荷室3内に配設されてその内部を複数のエリアに分割するトノボード4と、上記荷室3の側壁部から車内側に膨出するリヤホイールハウス8とを備えた車両の荷室構造であって、上記リヤホイールハウス8の後方部には、荷室3の側壁部をリヤホイールハウス8の内側壁面よりも車外側に位置させた凹設部14が形成されるとともに、この凹設部14の下端部には、上記サブトランク21の側端部が連設され、かつ上記リヤホイールハウス8と車体の後壁とを連結する連結部材が設けられることにより上記凹設部14の上方部において車体の前後方向に延びる棚部が形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の後壁に形成された後端開口部の前方に位置する荷室と、この荷室のフロア面よりも下方に凹入して車幅方向に延びるように設置されたサブトランクと、上記荷室内に配設されてその内部を複数のエリアに分割するトノボードとを備えた車両の荷室構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車両の後部に設けられた荷室の底面部に、上面が開放されたサブトランク(収納用凹部)を設け、このサブトランクの上面開放部に設置されたリッド部材(蓋体)により荷室のフロア面を構成するとともに、このリッド部材を必要に応じて開放状態とすることにより、上記サブトランク内に荷物等を収容し得るように構成された車両の荷室構造が知られている。
【0003】
また、下記特許文献2に示されるように、車両の後部に設けられた荷室(ラゲージルーム)の上部を覆うように設置されるトノボードを少なくとも2つの分割ボードで構成し、これら分割ボードの端部同士を、ヒンジ軸を介して突合せ連結することにより、上記分割ボードを互いに車体の上下方向に屈曲可能に構成するとともに、上記ヒンジ軸の両端部を、荷室の側壁におけるタイヤハウスの後端側部対向部に形成した係合部に取外し可能に係合し、上記ヒンジ軸を支点としてトノボードを荷室の上部に懸架可能に構成することにより、トノボードの係合部をタイヤハウスの側壁面より車体外方側に位置させて荷室内の収容容積を充分に確保しつつ、荷室を利用する際における利便性を向上させることが行われている。
【特許文献1】特開2007−161106号公報
【特許文献2】特開2006−62618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されるように、車両の後部に設けられた荷室の底面部にサブトランクを設ける場合には、荷室の側壁部から車内側に膨出するリヤホイールハウスとの干渉を避ける必要があるため、上記サブトランクの車幅方向寸法を充分に確保することが困難であり、長尺の物品等をサブトランク内に収納できない等の問題があった。
【0005】
また、上記特許文献2に示されるように、車両後部の荷室に設置されたトノボードの係合部をタイヤハウスの側壁面より車体外方側に位置させるように構成した場合には、上記トノボードの幅寸法を充分に確保することができるという利点がある。この反面、上記トノボードの不使用時には、荷室から取外されたトノボードを収容するためのスペースを確保することが困難であり、この点で利便性に劣るという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車両の後部に設けられた荷室を使用する際の利便性を簡単な構成で効果的に向上させることができる車両の荷室構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体の後壁に形成された後端開口部の前方側に位置する荷室と、この荷室のフロア面よりも下方に凹入して車幅方向に延びるように設置されたサブトランクと、上記荷室内に配設されてその内部を複数のエリアに分割するトノボードと、上記荷室の側壁部から車内側に膨出するリヤホイールハウスとを備えた車両の荷室構造であって、上記リヤホイールハウスの後方部には、荷室の側壁部をリヤホイールハウスの内側壁面よりも車外側に位置させた凹設部が形成されるとともに、この凹設部の下端部には、上記サブトランクの側端部が連設され、かつ上記リヤホイールハウスと車体の後壁とを連結する連結部材が設けられることにより上記凹設部の上方部において車体の前後方向に延びる棚部が形成されたものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の荷室構造において、上記棚部に、トノボードの側辺部を支持するトノボード支持部が設けられたものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の荷室構造において、上記荷室の上方部を覆うように設置されるトノカバーを有し、上記サブトランク内にトノカバーを収容可能なようにサブトランクの車幅方向寸法が設定されたものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記請求項3に記載の車両の荷室構造において、上記サブトランク内にトノボードとトノカバーとを前後に並べた状態で収容可能なようにサブトランクの前後幅が設定されたものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の荷室構造において、上記トノボードが前後に分割された複数枚の分割ボードにより構成されるとともに、上記サブトランク内に収容可能なように分割ボートの前後幅が設定されたものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の荷室構造において、荷室内に配設された乗員用シートのシートバックが、シートクッションに対して起伏可能に支持されるとともに、上記シートクッション上に倒伏されたシートバックの背面と、上記サブトランクの上面開口部を覆うように設置されたリッド部材とにより荷室のフロア面が形成されるとともに、その設置高さが略同一となるように構成されたものである。
【0013】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の荷室構造において、荷室の側壁部に形成された上記凹設部およびサブトランクの側端部に沿って車両用工具の格納部が設けられたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、リヤホイールハウスの後方部に形成された凹設部の下端部に上記サブトランクの側端部を連設することにより、このサブトランクの車幅方向寸法を充分に確保するように構成したため、上記トノボードの不使用時にこれをサブトランク内に収納することが可能であり、上記トノボードが荷室内に露出した状態で放置されること等に起因して外観が悪化するのを防止しつつ、上記荷室の内部空間を効果的に拡大してその利便性を効果的に向上させることができるとともに、上記連結部材を車体のねじれ剛性を向上させるための補強部材として利用することにより、車両の走行時における車体の変形を効果的に抑制できる等の利点がある。
【0015】
請求項2に係る発明では、上記連結部材等からなる棚部にトノボードの側辺部を支持するトノボード支持部を設けため、このトノボードの上面と、上記連結部材等からなる棚部の上面とを面一に連続させることにより、平坦な物品等の載置面を形成することができ、上記荷室内に荷物等を収容する際の利便性を効果的に向上できるという利点がある。
【0016】
請求項3に係る発明では、荷室の上方部を覆うように設置されるトノカバーを備えた車両の荷室構造において、サブトランクの車幅方向寸法を上記トノカバーの全長よりも大きな値に設定することにより、上記サブトランク内にトノカバーを収容可能に構成したため、トノカバーの不使用時に、これが荷室内に残されて邪魔になるのを防止するとともに、荷室内におけるスペースの有効利用を図ることができる等の利点がある。
【0017】
請求項4に係る発明では、サブトランクの内部にトノボードとトノカバーとを前後に並べた状態で収容可能なように上記サブトランクの前後幅を設定したため、上記トノボードおよびトノカバーを上下に重ね合わせることなく、上記トノボードおよびトノカバーの不使用時に、これらを邪魔にならないようにサブトランク内に並列状態で収容することができるとともに、上記トノボードおよびトノカバーの何れか一方だけを使用する際に、必要なものだけをサブトランク内から容易に取り出してこれを荷室内に設置できる等の利点がある。
【0018】
請求項5に係る発明のように、トノボードを前後に分割された複数枚の分割ボードにより構成するとともに、この分割ボードの前後幅を上記サブトランク内に収容可能なように設定した場合には、上記各分割ボードを重ね合わせてコンパクト化した状態で上記サブトランク内に収容することができるため、上記サブトランクの前後幅をそれ程大きな値に設定することなく、上記トノボードの不使用時にこれが邪魔になるのを効果的に防止できる等の利点がある。
【0019】
請求項6に係る発明では、荷室内に配設された乗員用シートのシートバックをシートクッションに対して起伏可能に支持し、このシートクッション上にシートバックを倒伏させた格納状態に移行させることにより、その上方空間を荷物等の格納部として利用するように構成したため、この荷室の内部空間を拡大させるための作業を極めて簡単に行うことができる。しかも、上記のようにシートバックの背面とサブトランクのリッド部材とにより荷室の連続したフロア面を形成するとともに、上記シートバックおよびリッド部材の設置高さ略同一高さが略同一となるように構成したため、車両の後端開口部から搬入された大きな荷物等を荷室内の前方部にスライド変位させる際にその操作等をスムーズに行うことができるとともに、上記荷室のフロア面上に載置された荷物等が傾斜状態となるのを防止することにより、荷物等の安定した載置状態が得られる等の利点がある。
【0020】
請求項7に係る発明では、荷室の側壁部に形成された上記凹設部およびサブトランクの側端部に沿って車両用工具の格納部を設けたため、上記荷室の側方部に位置する空間部を有効に利用して車両用工具を格納できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1〜図3は、本発明の第1実施形態に係る車両の荷室構造を備えたワンボックス車両またはハッチバック車両の後部車体を示している。この後部車体には、図外のバックドアにより開閉される後端開口部1が形成された後端パネル2からなる後壁と、その前方側に位置する荷室3と、この荷室3内に配設されてその内部を複数のエリアに分割するトノボード4と、その上方部を覆うように設置されるトノカバー5とが設けられている。上記荷室3の前方側に位置する車室内には、運転席および助手席等からなる1列目シート(図示せず)と、その後方に位置する2列目シート6とが配設されている。
【0022】
上記荷室3の側壁部を構成するリヤサイドインナパネル7には、図3および図4に示すように、車内側に膨出するリヤホイールハウス8が設けられるとともに、このリヤホイールハウス8の上端部と上記後端パネル2の側方部2aとを連結する連結部材9が設けられている。この連結部材9は、所定幅で車体の前後方向に延びる平板部9aと、その内側辺部から下方に突設された内側フランジ部9bと、上記平板部9aの外側辺部から上方に突設された外側フランジ部9cと、上記平板部9aの後端部に設けられた後側フランジ部9dとを有している。
【0023】
そして、上記連結部材9の後側フランジ部9dが後端パネル2の側方部2aに接合されるとともに、上記平板部9aの前端部がリヤホイールハウス8の上端面に接合され、かつ上記内側フランジ部9bがリヤサイドインナパネル7に接合されることにより、上記連結部材9の平板部9a等からなる所定幅の棚部が、上記リヤホイールハウス8の上端部と後端パネル2との間を車体の前後方向に延びるように設けられている。
【0024】
上記連結部材9の内側フランジ部9bには、トノボード4の側辺部を係脱可能に支持するトノボード支持部10が設けられている。このトノボード支持部10は、図5および図6に示すように、金属製パイプ材等からなる支持バー10aと、その前後両端部が側方に折曲げられることにより形成された一対のスライド基部10b,10bとを備えている。そして、上記トノボード支持部10のスライド基部10b,10bが、上記連結部材9の内側フランジ部9bに設けられたホルダー11にスライド自在に保持されることにより、上記支持バー10aが、図6の実線で示すように、連結部材9の設置部を覆うように配設されたトリム材12よりも車室内側に突出した状態と、図6の仮想線で示すようにトリム材12の下方側に格納された状態とに変位可能に支持されている。なお、図5および図6において、符号10dは、トノボード支持部10のスライド基部10b,10bがホルダー11から引き抜かれるのを防止するためのストップリングである。
【0025】
上記トノボード4は、図1および図7に示すように、前後に分割された複数枚の分割ボード4a〜4cにより構成されている。そして、トリム材12の車室内側に突出した上記支持バー10a上に各分割ボード4a〜4cの側辺部が載置されて支持されることにより、荷室3の内部が上記トノボード4により上部空間と下部空間とに区画されるようになっている。また、図6に示すように、上記分割ボード4a〜4cの上面と、上記連結部材9の上面を覆うように設置されたトリム材12の上面とが面一に連続することにより、平坦な物品等の載置面が形成されている。上記各分割ボード4a〜4cの側辺部裏面には、トノボード支持部10が係合される凹部13が形成されている。
【0026】
上記リヤホイールハウス8の後方部には、荷室3の側壁部を車体の外方側に凹入させた凹設部14が上記連結部材9等からなる棚部の下方に設けられている。この凹設部14は、上記リヤホイールハウス8の後壁面8bと、後端パネル2の側方部2aとの間に配設された荷室3の側壁部(リヤサイドインナパネル7)を、リヤホイールハウス8の内側壁面(車内側に位置する壁面)8aよりも所定距離だけ車外側に位置させることにより形成されている。このように上記荷室3の後方部に側壁部を車外側に位置させた凹設部14が設けられることにより、荷室3の後方部における車幅方向寸法が、その前方部に比べて広くなるように構成されている。
【0027】
上記トノカバー5は、図1に示すように、2列目シート6を構成するシートバック6aの上端部背面に対向して車幅方向に延びるように設置された収納ケース15と、この収納ケース15内に配設された巻取ローラ16と、この巻取ローラ16により巻取可能に支持されたシート材17とを有している。そして、上記収納ケース15内からシート材17が引き出されるとともに、その後端部に設けられた支持バー18の左右両端部が荷室3の側壁後部等に係止されることにより、上記荷室3の上方部がシート材17を介して仕切られた状態となるように構成されている。
【0028】
また、上記荷室3の側壁後端部等に係止された支持バー18の係止状態が解除されると、シート材17が巻取ローラ16により自動的に巻き取られて収納ケース15内に収納される。上記トノカバー5の収納ケース15は、荷室3の側壁部に対して着脱可能に係止され、その不使用時に荷室3の側壁部から取り外すことができるようになっている。
【0029】
上記荷室3の下端部には、車室のフロアパネルに連続して車体の後方側に延びるリヤフロアパネル19が設置されるとともに、リヤフロアパネル19の前方側部位には、図8に示すように、3列目シート20が設置されている。この3列目シート20の後方側には、物品等の収容部となるサブトランク21が車幅方向に延びるように設置されるとともに、その下方部には、リヤフロアパネル19の車幅方向の略中央部分を下方に凹入させてなるスペアタイヤの収納部22が形成されている。
【0030】
上記3列目シート20は、シートクッション23およびシートバック24を有し、このシートクッション23およびシートバック24は、それぞれリヤフロアパネル19上に設置された左右一対の支持プレート28に、上下方向に延びる前側リンク26および後側リンク27を介して支持されている。この前側リンク26は、その上端部が上記シートクッション23の前方部側面に支軸29を介して枢支されるとともに、前側リンク26の下端部が上記支持プレート28の前方部に支軸30を介して枢支されている。また、上記後側リンク27は、その上端部がシートバック24の下方部側面に図略の締結部材等を介して固定されるとともに、後側リンク27の下端部が上記支持プレート28の後方部に支軸31を介して枢支されている。
【0031】
上記シートクッション23の後方部側面には、連結リンク34が締結部材を介して固定されている。この連結リンク34は、その後方部が上記シートクッション23との固定部から上部後方に湾曲するように延びるとともに、後方部先端が上記後側リンク27の上端部に支軸33を介して枢支されている。また、上記支持プレート28には、後側リンク27の下端部を保持することにより、この後側リンク27が支軸31を支点に回動するのを規制するロック装置(図示せず)が設けられている。そして、上記3列目シート20の使用時には、上記ロック装置を介して後側リンク27の回動変位が規制されることにより、図8に示すように、上記シートバック24がシートクッション23の後端部から上方に起立した状態に保持されるとともに、上記シートクッション23が支持プレート28に対して所定距離上方に離間した位置に保持されている。
【0032】
上記シートクッション23またはシートバック24の所定部位には、上記ロック装置のギア機構等と連係された図略の操作レバーが設けられ、この操作レバーが乗員によって操作されるのに応じ、上記ロック装置35による後側リンク27のロックが解除されるようになっている。この後側リンク27のロックが解除された状態で、上記シートバック24を前方に押圧するように力が加えられると、上記シートバック24と上記後側リンク27とが一体となって前方に回動変位するとともに、連結リンク34が前方かつ下方に揺動変位する。このようにして上記3列目シート20の不使用時には、図1に示すように、上記前側リンク26が前方に回動変位してシートクッション23が前方かつ下方に沈み込むとともに、このシートクッション23上にシートバック24が倒伏した状態に変位することにより、このシートバック24の背面により荷室3のフロア面が形成されるようになっている。
【0033】
上記サブトランク21は、上面が開口した箱形形状の物品収納部36と、この物品収納部36の上面開口部を覆うように設置される開閉リッド37とを有し、上記物品収納部36の左右両側方部および後辺部等が、上記リヤフロアパネル19の側方部上面および後端パネル2の後辺部前面等に、図示を省略した係止具を介して係脱可能に係止されることにより、上記倒伏状態にあるシートバック24の背面からなる荷室3のフロア面よりも下方に凹入して車幅方向に延びるように設置されている。そして、上記物品収納部36の上面に設置された開閉リッド37により、上記倒伏状態にあるシートバック24の背面と連続するとともに、略同一の設置高さを有するフロア面が形成されるように、上記開閉リッド37およびシートバック24が配設されている。
【0034】
上記サブトランク21は、3列目シート20の後方側部位において荷室3の車幅方向の略全域に亘るように設置されることにより、サブトランク21の側端部が上記凹設部14の下端部に連続して下方に延びるように形成されている。そして、上記サブトランク21は、その車幅方向寸法が、上記トノカバー5の収納ケース15の全長よりも大きく設定されることにより、サブトランク21の内部にトノカバー5を収容可能に構成されている。
【0035】
また、上記サブトランク21は、その前後方向長さからなる幅寸法が、上記トノボード4の分割ボード4a〜4cよりも大きく形成されるとともに、物品収納部36の深さが各分割ボード4a〜4cの板厚を合計した値よりも大きく形成されることにより、分割ボード4a〜4cを重ね合わせた状態でサブトランク21内に収容可能に構成されている。さらに、この第1実施形態では、図8等に示すように、上記サブトランク21の内部にトノカバー5とトノボード4とを前後に並べた状態で収容可能なように、上記サブトランク21の前後幅が設定されている。
【0036】
上記構成において荷室3内に配設された上記3列目シート20の不使用時には、図1に示すように、そのシートクッション23を前方かつ下方に沈み込ませるとともに、その上にシートバック24を倒伏させることにより、車両の後部に設けられた上記荷室3の全体を荷物等の収納部として利用することができる。そして、上記荷室3の側壁部に設けられたトノボード支持部10上にトノボード4の各分割ボード4a〜4cを載置することにより、上記荷室3の内部を上下複数のエリアに分割することができる。したがって、荷室3の下方エリアに収容された荷物を上記トノボード4により隠蔽することができるとともに、このトノボード4を荷物の載置板として利用することも可能であるため、荷室3内に荷物等を格納する際の利便性を効果的に向上させることができる。
【0037】
さらに、上記荷室3の前部上方に設置されたトノカバー5の収納ケース15内からシート材17を引き出し、その後端部に設けられた支持バー18の左右両端部を荷室3の側壁後端部等に係止することにより、上記トノカバー5のシート材17をトノボード4の上方部に設置すれば、このトノボード4上に載置された荷物等が車外から視認されるのを上記トノカバー5によって効果的に阻止することができる。
【0038】
一方、荷室3内に配設された上記3列目シート20の使用時には、トノボード4の各分割ボード4a〜4cをトノボード支持部10から取り外して上記サブトランク21内に収容する。また、上記支持バー18の係止状態を解除してトノカバー5のシート材17を収納ケース15内に収納した後、この収納ケース15を荷室3の側壁部から取り外して上記サブトランク21内に収容する。そして、図8に示すように、上記3列目シート20のシートバック24をシートクッション23の後端部から上方に起立させた状態に保持するとともに、上記シートクッション23を支持プレート28に対して所定距離上方に離間させた状態に保持することにより、上記荷室3の前方部を、乗員が着座可能な車室の一部として利用することが可能となる。
【0039】
上記のように後端パネル2からなる車体の後壁に形成された後端開口部1の前方側に位置する荷室3と、この荷室3のフロア面よりも下方に凹入して車幅方向に延びるように設置されたサブトランク21と、上記荷室3内に配設されてその内部を複数のエリアに分割するトノボード4と、上記荷室3の側壁部から車内側に膨出するリヤホイールハウス8とを備えた車両の荷室構造において、上記リヤホイールハウス8の後方部に、荷室3の側壁部をリヤホイールハウス8の内側壁面8aよりも車外側に位置させた凹設部14を形成するとともに、この凹設部14の下端部に、上記サブトランク21の側端部を連設し、かつ上記リヤホイールハウス8と車両の後端パネル2からなる車体後壁とを連結する連結部材9を設けることにより上記凹設部14の上方部において車体の前後方向に延びる棚部を形成したため、車両の後部に設けられた荷室3を使用する際の利便性を簡単な構成で効果的に向上させることができる。
【0040】
すなわち、上記リヤホイールハウス8の後方部に形成された凹設部14の下端部に上記サブトランク21の側端部を連設することにより、このサブトランク21の車幅方向寸法を充分に確保するように構成したため、上記トノボード4の不使用時にこれをサブトランク21内に収納することが可能となる。したがって、図8に示すように、上記荷室3内に配設されたトノボード4を取り外して3列目シート20を乗員が着座可能な状態とする際等に、上記サブトランク21内にトノボード4を収納することにより、このトノボード4が荷室3に露出した状態で放置されることに起因して外観が悪化するのを防止しつつ、荷室3の内部空間を効果的に拡大してその利便性を効果的に向上させることができる。
【0041】
また、上記連結部材9からなる棚部に、トノボードの側辺部を支持するトノボード支持部10を設け、このトノボード支持部10にトノボード4の側辺部を係脱可能に支持することにより、荷室3の内部を複数のエリアに分割するとともに、上記トノボード4を物品等の載置部として利用可能に構成したため、上記荷室3を物品の収納部として利用する際の利便性を効果的に向上させることができる。しかも、上記連結部材9を車体のねじれ剛性を向上させるための補強部材として利用することができるため、車両の後端パネル2に大面積を有する後端開口部1を形成した場合においても、後端パネル2の面剛性を充分に確保して、車両の走行時における車体の変形を効果的に抑制できるという利点がある。
【0042】
なお、上記のように連結部材9からなる棚部に設けられたトノボード支持部10にトノボード4の側辺部を係脱可能に支持させる構成した上記第1実施形態に代え、複数の分割ボード4a〜4c等からなるトノボード4の側辺部を、上記連結部材9またはこれを覆うように設置されたトリム材12等からなる棚部上に載置することにより、この棚部自体をトノボード4の支持部として利用することも可能である。
【0043】
しかし、上記第1実施形態に示すようにトノボード4の側辺部を支持するトノボード支持部10を上記棚部に設け、このトノボード支持部10にトノボード4の側辺部を係脱可能に支持するように構成した場合には、このトノボード4の上面と、上記連結部材9等からなる棚部の上面を覆うように設置されたトリム材12の上面とを面一に連続させることにより、平坦な物品等の載置面を形成することができる。したがって、上記トノボード4の車幅方向寸法をそれ程大きな値に設定することなく、荷室3の車幅方向全域に亘る広い物品等の載置面を形成することができ、これによって上記荷室3内に荷物等を収容する際の利便性を効果的に向上できるという利点がある。
【0044】
また、上記第1実施形態では、荷室3の上方部を覆うように設置されるトノカバー5を備えた車両の荷室構造において、サブトランク21の車幅方向寸法を上記収納ケース15の全長よりも大きな値に設定することにより、上記サブトランク21内にトノカバー5を収容可能に構成したため、上記トノカバー5の不使用時に、これが荷室3内に残されて邪魔になるのを防止し、荷室3内におけるスペースの有効利用を図ることができる等の利点がある。
【0045】
さらに、上記第1実施形態では、サブトランク21の内部にトノボード4とトノカバー5とを前後に並べた状態で収容可能なように上記サブトランク21の前後幅を設定したため、上記トノボード4およびトノカバー5を上下に重ね合わせることなく、これらをサブトランク21内に並列状態で収容することができる(図8参照)。したがって、上記トノボード4およびトノカバー5の不使用時に、これらを邪魔にならないように収容することができるとともに、上記トノボード4およびトノカバー5の何れか一方だけを使用する際に、必要なものだけをサブトランク21内から取り出してこれを荷室3内に設置する作業を容易に行うことができるという利点がある。
【0046】
また、上記第1実施形態に示すように、トノボード4を前後に分割された複数枚の分割ボード4a〜4cにより構成するとともに、この分割ボード4a〜4cの前後幅を上記サブトランク21内に収容可能なように設定した場合には、上記各分割ボード4a〜4cを重ね合わせてコンパクト化した状態で上記サブトランク21内に収容することができるため、上記サブトランク21の前後幅をそれ程大きな値に設定することなく、上記トノボード4の不使用時にこれが邪魔になるのを効果的に防止できるという利点がある。しかも、上記棚部に設けられたトノボード支持部10に分割ボード4a〜4cの一部を支持させるとともに、残りをサブトランク21内に収容する等により、上記トノボード4の使用態様を種々に変化させることができるという利点がある。
【0047】
さらに、上記第1実施形態に示すように、荷室3内に配設された3列目シート20からなる乗員用シートのシートバック24を、シートクッション23に対して起伏可能に支持するとともに、このシートクッション23上に倒伏されたシートバック24の背面と、上記サブトランク21の上面開口部を覆うように設置された開閉リッド37からなるリッド部材とにより、荷室3のフロア面を形成するとともに、その設置高さが略同一となるように上記開閉リッド37およびシートバック24の設置高さを定めた場合には、上記荷室3の内部全体を荷物等の収納部として利用する際の利便性を、簡単な構成で効果的に向上できるという利点がある。
【0048】
例えば、上記3列目シート20の不使用時に、この3列目シート20を荷室3から取り外し、車庫内等に移動させて格納することも可能であるが、このように構成した場合には、上記3列目シート20を着脱する作業が極めて繁雑になるという問題がある。これに対して上記実施形態に示すように、3列目シート20のシートバック24をシートクッション23に対して起伏可能に支持し、このシートクッション23上にシートバック24を倒伏させた格納状態に移行させることにより、その上方空間を荷物等の格納部として利用するように構成した場合には、この荷室3の内部空間を拡大させるための作業を極めて簡単に行うことができる。
【0049】
しかも、上記のようにシートバック24の背面と開閉リッド37とにより荷室3の連続したフロア面を形成するとともに、上記シートバック24および開閉リッド37の設置高さ略同一高さが略同一となるように構成したため、車両の後端開口部1から搬入された大きな荷物等を荷室3内の前方部にスライド変位させる際にその操作等をスムーズに行うことができるとともに、上記荷室3のフロア面上に載置された荷物等が傾斜状態となるのを防止することにより、安定した載置状態が得られるという利点がある。
【0050】
図9および図10は、本発明に係る車両の荷室構造の第2実施形態を示している。この第2実施形態では、上記リヤホイールハウス8の後方部に位置する荷室3の一側壁部(リヤサイドインナパネル7)にジャッキ等からなる車両用工具38の係止部39が形成されることにより、荷室3の側壁部に形成された上記凹設部14およびサブトランク21の側端部に沿って車両用工具38の格納部が設けられている。この構成によれば、上記荷室3の側方部に位置する空間部を有効に利用して車両用工具38を格納することができる。また、サブトランク21の一側辺部に上記車両用工具38の格納部に対応した切欠き部40を設けることにより、この車両用工具38の格納部を正面視でサブトランク21の側端部の一部と重合させるように配設するとともに、上記トノボード4およびトノカバー5を収容するためのスペースをサブトランク21内に確保するように構成した場合には、荷室3の側方部に位置する空間部を有効に利用して車両用工具38等を適正に格納できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る車両の荷室構造の第1実施形態を示す側面断面図である。
【図2】上記荷室構造の第1実施形態を示す平面断面図である。
【図3】連結部材の具体的構成を示す説明図である。
【図4】上記荷室の具体的構成を示す斜視図である。
【図5】トノボード支持部の具体的構成を示す平面断面図である。
【図6】トノボード支持部の具体的構成を示す正面断面図である。
【図7】トノボードの設置状態を示す平面図である。
【図8】乗員用シートの使用状態を示す側面断面図である。
【図9】本発明に係る車両の荷室構造の第2実施形態を示す側面断面図である。
【図10】上記荷室構造の第2実施形態を示す平面断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 後端開口部
2 後端パネル(後壁)
3 荷室
4 トノボード
4a〜4c 分割ボード
5 トノカバー
7 リヤサイドインナパネル(側壁)
8 リヤホイールハウス
9 連結部材
10 トノボード支持部
14 凹設部
20 乗員用シート
21 サブトランク
24 シートバック
37 開閉リッド(リッド部材)
38 車両用工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後壁に形成された後端開口部の前方側に位置する荷室と、この荷室のフロア面よりも下方に凹入して車幅方向に延びるように設置されたサブトランクと、上記荷室内に配設されてその内部を複数のエリアに分割するトノボードと、上記荷室の側壁部から車内側に膨出するリヤホイールハウスとを備えた車両の荷室構造であって、上記リヤホイールハウスの後方部には、荷室の側壁部をリヤホイールハウスの内側壁面よりも車外側に位置させた凹設部が形成されるとともに、この凹設部の下端部には、上記サブトランクの側端部が連設され、かつ上記リヤホイールハウスと車体の後壁とを連結する連結部材が設けられることにより上記凹設部の上方部において車体の前後方向に延びる棚部が形成されたことを特徴とする車両の荷室構造。
【請求項2】
上記棚部に、トノボードの側辺部を支持するトノボード支持部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の車両の荷室構造。
【請求項3】
上記荷室の上方部を覆うように設置されるトノカバーを有し、上記サブトランク内にトノカバーを収容可能なようにサブトランクの車幅方向寸法が設定されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の荷室構造。
【請求項4】
上記サブトランク内にトノボードとトノカバーとを前後に並べた状態で収容可能なようにサブトランクの前後幅が設定されたことを特徴とする請求項3に記載の車両の荷室構造。
【請求項5】
上記トノボードが前後に分割された複数枚の分割ボードにより構成されるとともに、上記サブトランク内に収容可能なように分割ボートの前後幅が設定されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の荷室構造。
【請求項6】
荷室内に配設された乗員用シートのシートバックが、シートクッションに対して起伏可能に支持されるとともに、上記シートクッション上に倒伏されたシートバックの背面と、上記サブトランクの上面開口部を覆うように設置されたリッド部材とにより荷室のフロア面が形成されるとともに、その設置高さが略同一となるように構成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の荷室構造。
【請求項7】
荷室の側壁部に形成された上記凹設部およびサブトランクの側端部に沿って車両用工具の格納部が設けられたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の荷室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−83719(P2009−83719A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257695(P2007−257695)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】