説明

車両の車体構造

【課題】車両衝突時にフレームの屈曲による下方の構造物の破損を防止する。
【解決手段】ボディに設けられ、左右一対のサイドメンバの間を車両前後方向に延び、前端がサイドメンバに接続されるバックボーンストリンガ7を備えた車両において、バックボーンストリンガ7が、中間部で切断されて車両前後方向に互いに離間して配置され、バックボーンストリンガ7の上方に配置されている前席16のスライドフレーム20によって、バックボーンストリンガ7の切断された部位を連結する構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体構造に関し、車体下部のフレーム形状に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、設計コストや部品コストを低減させるために、ガソリンエンジン車をベースとして、車体等の共通化を極力図った電気自動車が開発されている。
このようにガソリンエンジン車をベースとした電気自動車では、通常、荷室等のスペースを確保するために、フロアパネルの下方にバッテリが搭載されている。
ところで、ガソリンエンジン車や電気自動車等の車両では、一般的に、車体の下部に強度部材として、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバが備えられている。更に、車体の強度を向上させるために、フロアパネルの下方に、車両前後方向に延びるフレームが備えられている車両がある。フレームは、サイドメンバの間に互いに略平行に配置され、両端部がサイドメンバ間に設けられたクロスメンバに固定されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4286884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のようなサイドメンバ及びフレームを備えた車体を、電気自動車に利用した場合、例えば、バッテリは上記のようにフロアパネルの下方に配置されるとともに、側方衝突時での保護を図るためにサイドメンバの間に配置される。よって、バッテリは、上面視でフレームに重なるように配置される。したがって、例えば前方衝突時に車両に過大な荷重を受けた場合、サイドメンバとともにフレームが座屈して下方に屈曲し、フレームによってバッテリを破損させてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、衝突時にフレームの屈曲による下方の車両構造物の破損を防止可能な車両の車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の車両の車体構造は、車体に設けられ、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、一対のサイドメンバの間に配置され、車両前後方向に延びると共に前端がサイドメンバに固定されたフレームと、を備え、フレームは、中間部で切断されて車両前後方向に互いに離間して配置され、フレームの上方に、フレームの切断された部位を連結する連結手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の車両の車体構造は、請求項1において、サイドメンバ及びフレームは、車両のフロアパネルの下方に配置されていることを特徴とする。
また、請求項3の車両の車体構造は、請求項2において、車両は、走行駆動電力を蓄えるバッテリがフロアパネルの下方に配置された電動車両であることを特徴とする。
また、請求項4の車両の車体構造は、請求項1〜3のいずれか1項において、連結手段は、車両の前席の支持部材であるスライドフレームであることを特徴とする。
【0008】
また、請求項5の車両の車体構造は、請求項1〜4のいずれか1項において、サイドメンバが、フレームの前端部との固定位置で車両左右方向外方に屈曲するように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、サイドメンバの間に設けられたフレームが中間部で切断され車両前後方向に互いに離間して配置されているので、車両の前方衝突時にフレームに前方から後方に向かって過度な荷重が作用しても、フレームが屈曲せず、よってフレームの屈曲による周囲の車両構造物の破損を防止することができる。
更に、フレームの上方に、フレームの切断された部位を連結する連結手段を備えているので、フレームに前方から後方に向かって作用する荷重は、連結手段によって車体後方にスムーズに伝達される。よって、フレームが中間部で切断されていても車体の強度を確保することができる。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、サイドメンバ及びフレームが車両のフロアパネルの下方に配置されているので、フロアパネルの下方に配置されている車両構造物に対してフレームの屈曲による破損を防止することができる。
また、請求項3の発明によれば、走行駆動動力源として走行駆動電力を蓄えるバッテリがフロアパネルの下方に配置されているので、フレームの屈曲によるバッテリの破損を防止することができる。
【0011】
また、フレームが中間部で切断され車両前後方向に互いに離間して配置されているので、この離間したフレームの間をバッテリ搭載用のスペースとして利用することが可能となり、バッテリの容量を増加させることができる。
また、請求項4の発明によれば、フレームの切断された部位を連結する連結手段が、車両の前席のスライドフレームであるので、既に車両に設けられている部品を利用して連結手段を設けることができ、部品点数の増加を抑制することができる。
【0012】
また、請求項5の発明によれば、サイドメンバがフレームの前端部との固定位置で車両左右方向外方に屈曲するように形成されているので、車両の前方衝突時にサイドメンバに前方から過度な荷重が作用したとしても、サイドメンバが車両左右方向外方に屈曲する。したがって、サイドメンバ間に配置されている車両構造物をより確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る車両のボディの構造を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両のボディの構造を示す平面図である。
【図3】前席の下方でのバックボーンストリンガの構造を示す断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る車両のボディの構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両1のボディ2の構造を示す側面図である。
図2は、車両1のボディ2の構造を示す平面図である。
本実施形態の車両1は、走行駆動源として、大容量のバッテリ3及び図示しない電動モータを搭載した電気自動車である。車両1のボディ2(車体)は、ガソリンエンジン車においても採用可能な仕様となっている。
【0015】
車両1は図1、2に示すように、ボディ2の骨格部材として、下部に断面コの字型のサイドメンバ5及びバックボーンストリンガ7(フレーム)を備えている。
サイドメンバ5は、車両前後方向に延び、左右1個ずつ備えられている。サイドメンバ5の前端部5aはバンパ8を支持するクロスメンバ9によって連結されている。サイドメンバ5の後端部5bはボディ後部2aに夫々固定されている。
【0016】
バックボーンストリンガ7は、サイドメンバ5の間に、車両左右方向に互いに間隔をおいて2個設けられ、車両前後方向に延びるように配置されている。バックボーンストリンガ7の前端部7aは、車室の床部分となるフロアパネル10の前端部付近で、車両左右方向外方に屈曲し、左右のサイドメンバ5に夫々固定されている。バックボーンストリンガ7の後端部7bは、夫々ボディ後部2aに固定されている。
【0017】
サイドメンバ5及びバックボーンストリンガ7は、フロアパネル15の下方に配置され、フロアパネル15を支持する機能を有している。
バッテリ3は、フロアパネル15の下方に配置されている。バッテリ3は、上記のように、走行駆動用の電動モータの電力供給源として大容量のもの、即ち外形の比較的大きなものが採用されており、サイドメンバ2の間のスペースを略一杯に使用するような左右幅寸法となっている。
【0018】
また、車両1の左右の前席16の下方には、夫々、車両左右方向に延びるクロスメンバ17a、17bが設けられている。クロスメンバ17a、17bは、車両前後方向に間隔をおいて左右に一対ずつ配置されており、サイドメンバ5とバックボーンストリンガ7とを連結している。
図3は、前席16の下方でのバックボーンストリンガ7の構造を示す説明図である。
【0019】
図3に示すように、本実施形態では、バックボーンストリンガ7は、前席16の下方で切断され、車両前後方向に離間して配置されており、クロスメンバ17a、17b間の部分が除去されたような構造となっている。
更に、クロスメンバ17a、17bの上面には、前席16のスライド用支持部材であるスライドレール20a、20b(連結手段)の端部が、ブラケット21を介してボルトによって夫々締結されている。スライドレール20a、20bは、車両左右方向に互いに離間して1つの座席に1対備えられており、車両前後方向に互いに離間する1対のクロスメンバ17a、17bを連結するような構造となっている。この1対のスライドレール20a、20bのうちの内側の1本(20a)は、バックボーンストリンガ7の上方に近接して配置されている。よって、バックボーンストリンガ7の切断された部位は、クロスメンバ17a、17b及びブラケット21を介してスライドレール20aによって連結された構造となっている。
【0020】
また、クロスメンバ17a、17bの間では、フロアパネル15は、上方に折り曲げられて、凸部15aが形成されている。
以上のような構造により、本実施形態では、例えば前方衝突時に車両前端部から入力した荷重がサイドメンバ5によって、ボディ後部2aに伝達される。更に、サイドメンバ5間にバックボーンストリンガ7が設けられているので、車両前方からサイドメンバ5に入力した荷重を分割して受け、ボディ2の中央部の強度を向上させることができる。
【0021】
特に、本実施形態では、バックボーンストリンガ7のクロスメンバ17a、17b間の部位が切断除去された構造となっているので、例えば前方衝突時のように、バックボーンストリンガ7に前方から後方に向かって過度な荷重が作用したとしても、バックボーンストリンガ7が屈曲せず、よってバックボーンストリンガ7が下方へ突出することを防止して、バッテリ3の破損を防止することができる。
【0022】
また、バックボーンストリンガ7は、切断された部位がスライドレール20によって連結されているので、バックボーンストリンガ20の切断に伴うボディ2の中央部の強度低下を抑制することができる。また、バックボーンストリンガ7の切断された部位の端部がクロスメンバ17a、17bを介してサイドメンバ5に固定されているので、ボディ2の中央部の強度低下を更に抑制することができる。
【0023】
また、バックボーンストリンガ7のクロスメンバ17a、17b間の部位が切断除去された構造となっていることから、クロスメンバ17a、17bの間では、バックボーンストリンガ7に干渉せずにバッテリ3を上方に配置させることができる。また、クロスメンバ17a、17b間では、フロアパネル15を上方に突出させて凸部15aを設けているので、前席16下のデッドスペースをバッテリ3の搭載スペースとして有効に活用することができる。これらにより、バッテリ3の搭載スペースを増加させ、バッテリ容量を増大させることができる。
【0024】
また、バックボーンストリンガ7の切断された部位を連結するために、既に備えられている前席16のスライドレール20aを利用しているので、新たに連結用の部材を設ける必要がなく、部品点数の増加を抑制することができる。
なお、本実施形態では、クロスメンバ17a、17bが左右前席毎に設けられているが、車両1の左右方向中央部に構造物がなければ、左右のクロスメンバ17a、17bを連結して、1本のクロスメンバで左右のサイドメンバ5間を連結する構造としてもよい。これにより、クロスメンバ5の強度を大幅に向上させることができ、よってボディ2の中央部の強度をより向上させることができる。
【0025】
図4は、本発明の他の実施形態における車両1のボディ2の構造を示す上面図である。
図4に示すように、更に、サイドメンバ5が、バックボーンストリンガ7の前端部7aとの固定部付近で車両左右方向外方に屈曲している構造であるとよい。このような構造であると、前方衝突時にサイドメンバ5に前方から過度な荷重が作用したとしても、サイドメンバ5が車両左右方向外方に屈曲する。したがって、サイドメンバ5間に配置されているバッテリ3をより確実に保護することができる。また、このサイドメンバ5の屈曲部にバックボーンストリンガ7の前端部7aが固定されているので、サイドメンバ5の座屈を抑制する効果を有し、ボディ2の強度が十分に確保された構造となっている。
【0026】
なお、以上の実施形態では、バックボーンストリンガ7の前端がサイドメンバ5に直接固定されているが、本発明はこれに限定するものではなく、例えばクロスメンバを介して
バックボーンストリンガ7の前端とサイドメンバ5とが固定されている構造のボディを有する車両でも本発明を適用することができる。
また、以上の実施形態では、バックボーンストリンガ7の屈曲によるバッテリ3の保護を可能としているが、バックボーンストリンガ7の下方に配置されるバッテリ以外の車両構造物でも保護を図ることができる。
【0027】
また、以上の実施形態では、電気自動車に本発明の車体構造を適用しているが、ハイブリッド車やガソリンエンジン車でも適用することが可能である。例えばガソリンエンジン車では、前席の下にガソリンタンクが設けられている場合、ガソリンタンクの保護を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
2 ボディ
5 サイドメンバ
7 バックボーンストリンガ
15 フロアパネル
20a スライドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられ、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、
前記一対のサイドメンバの間に配置され、車両前後方向に延びると共に前端部が前記サイドメンバに固定されたフレームと、を備え、
前記フレームは、中間部で切断されて車両前後方向に互いに離間して配置され、
前記フレームの上方に、前記フレームの切断された部位を連結する連結手段を備えたことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
前記サイドメンバ及び前記フレームは、前記車両のフロアパネルの下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の車体構造。
【請求項3】
前記車両は、走行駆動電力を蓄えるバッテリが前記フロアパネルの下方に配置された電動車両であることを特徴とする請求項2に記載の車両の車体構造。
【請求項4】
前記連結手段は、前記車両の前席の支持部材であるスライドフレームであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の車体構造。
【請求項5】
前記サイドメンバは、前記フレームの前端部との固定位置で車両左右方向外方に屈曲するように形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の車体構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−166599(P2012−166599A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27154(P2011−27154)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】