説明

車両の電動パーキングブレーキシステム

【課題】パーキングブレーキの作動状態であるケーブルが引かれた状態で、ケーブルの伸びによる引き力の低下を防止し、パーキングブレーキの制動を確実にすること。
【解決手段】ケーブルの作動が完了した時点では、ホールICの出力電圧Vs≧Vtc(目標引き力の電圧値)であるため、作動完了後は出力電圧Vsを監視を続ける。ステップS22で出力電圧Vsと、目標引き力の電圧値Vtcとを比較し、電圧値Vtcの値より出力電圧Vsが低くなった場合には、作動状態においてケーブルの伸びが発生したとして、モータを駆動する(ステップS23参照)。ステップS28でホールICからの出力電圧Vsが目標引き力の電圧値Vtcになるまでモータ11を駆動し、出力電圧Vsが目標引き力の電圧値Vtcになると、モータ11が停止する(ステップS29参照)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキングブレーキの作動、解除をモータとケーブルにて電動で行なうようにした車両の電動パーキングブレーキシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーキングブレーキの作動、解除をモータとケーブルにて電動で行なうようにした車両の電動パーキングブレーキシステムが提供されており、パーキングブレーキを作動させる場合には、モータを例えば正転駆動してケーブルを所定の荷重に達するまで引き作動を行なう。また、パーキングブレーキを解除する場合には、ケーブルに荷重がかからない開放される位置までモータを逆転駆動してケーブルを開放する。
【0003】
この種の車両の電動パーキングブレーキ装置として、例えば下記に示す特許文献1が挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−265048号公報
【0005】
この特許文献1の電動パーキングブレーキ装置では、一端がパーキングブレーキに接続されたPKBケーブルを、電動にて他端側から引き込むことにより摩擦材を動作させて車輪に制動力を付与している。そして、摩擦材を動作させる際に、ECUがPKBケーブルの他端側の引き込み量を算出し、ECUは算出した他端側引き込み量に基づいて、PKBケーブルの一端側の引き込み量を求め、求めた引き込み量が所定の閾値を超えたときに、パーキングブレーキの摩擦材が摩耗状態であると判断している。
【0006】
また、この特許文献1では、摩擦材が摩耗した分だけケーブルの引き込み量が大きくなることを前提として行なっており、さらには、ケーブルを引き込んだ場合にケーブルが若干伸びてしまうことも考慮してケーブルの引き込み量を算出している。つまり、この特許文献1は、ケーブルの伸び分も考慮した上で、摩擦材の摩耗分に対応したケーブルの引き込み量を算出することで、摩擦材の摩耗状態を判断しているものである。
【0007】
しかしながら、この特許文献1においては、ケーブルを引き作動してパーキングブレーキに制動をかけた状態でのケーブルの伸びによる引き力の低下を防止することができないという問題を有している。
すなわち、ケーブルに介装している荷重センサからの信号によりケーブルの引き力を制御し、所定の目標値に達した場合には、パーキングブレーキは確実に制動がかかった状態としている。しかしながら、ケーブルが引かれた状態では、時間と共にケーブルの伸びが発生し、引き力の低下が生じ、パーキングブレーキをかけている状態にも関わらず車両が移動してしまうことになる。特に、ケーブルが新品で十分に伸びきっていない場合などに起こり易い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述の問題点に鑑みて提供したものであって、パーキングブレーキの作動状態であるケーブルが引かれた状態で、ケーブルの伸びによる引き力の低下を防止し、パーキングブレーキの制動を確実にすることを目的とした車両の電動パーキングブレーキシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の請求項1に記載の車両の電動パーキングブレーキシステムでは、モータ11の正転駆動によりケーブル3を介してパーキングブレーキを作動状態とし、前記モータ11の逆転駆動により前記パーキングブレーキを前記ケーブル3を介して解除状態にするアクチュエータ2と、
前記パーキングブレーキに作用するケーブル3の荷重を検出する荷重センサ15と、
前記荷重センサ15からの出力電圧Vsに応じて前記モータ11の回転駆動を制御する制御装置1とを備え、
前記荷重センサ15からの出力電圧Vsが予め設定されている前記ケーブル3の目標引き力の電圧値Vtcになった時点における前記パーキングブレーキの作動完了後、前記荷重センサ15からの出力電圧Vsが前記目標引き力の電圧値Vtcに対して変化した場合に、該出力電圧Vsが前記電圧値Vtcになるまで前記モータ11を正転駆動させる制御手段を設けていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の車両の電動パーキングブレーキシステムによれば、荷重センサ15からの出力電圧Vsが予め設定されている前記ケーブル3の目標引き力の電圧値Vtcになった時点における前記パーキングブレーキの作動完了後、前記荷重センサ15からの出力電圧Vsが前記目標引き力の電圧値Vtcに対して変化した場合に、該出力電圧Vsが前記電圧値Vtcになるまで前記モータ11を正転駆動させる制御手段を設けているので、ケーブル3の制動状態、つまりケーブル3の引き作動が完了してから、荷重センサ15からの出力電圧Vsと目標引き力の電圧値Vtcとを常に比較し、出力電圧Vsが電圧値Vtcより例えば、低くなった場合には、ケーブル3の伸びが発生したとし、モータ11を正転駆動してケーブル3を目標引き力の電圧値Vtcになるまで引き作動する。これにより、パーキングブレーキが引かれた状態で、ケーブル3の伸びによる引き力低下を確実に防止することができる。よって、パーキングブレーキの制動状態において、ケーブル3の伸びによる引き力の低下防止により、パーキングブレーキの制動を確実にでき、車両の移動を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は電動パーキングブレーキシステムの概略ブロック構成図を示し、マイクロコンピュータからなる制御装置1と、この制御装置1により制御されるアクチュエータ2と、このアクチュエータ2によりコントロールケーブル3の引き作動、解除されることで、パーキングブレーキの作動、解除が行なわれるブレーキアッセンブリ4等で構成されている。
また、この電動パーキングブレーキシステムには、パーキングブレーキを作動、解除を行なうために制御装置1に指令を送る操作スイッチ5や、各部の異常(故障)を検出した場合に異常を報知するワーニングランプ6や、かかる故障部位情報を上位のコンピュータに伝送するためのCAN( Controller Area Network )バス等が設けられている。
【0012】
アクチュエータ2は、制御装置1により正転、逆転駆動される正逆回転可能なモータ11と、このモータ11の回転数を減速させる減速機構12と、この減速機構12の出力にて回転駆動されるスクリュー13と、このスクリュー13の回転により該スクリュー13の軸方向に往復動し、イコライザー機構を構成しているナット14と、後述する荷重センサ15等で構成されている。
また、ナット14の一方の端部には図中左側のコントロールケーブル3が接続され、ナット14の他方の端部側は荷重センサ15を介したコントロールケーブル3(図中の右側)が接続され、両コントロールケーブル3の他端はブレーキアッセンブリ4側に接続されている。なお、コントロールケーブル3は、外装のアウターケーブルとこのアウターケーブルの内部を摺動自在としたインナーケーブルとで構成されている。
【0013】
この荷重センサ15はコントロールケーブル3のインナーケーブル(以下、単にコントロールケーブル3と言う。)に作用する荷重(張力)を検出するものであり、図1及び図2に示すように、基本的な構成部材として、シャフト20と、ロッド22と、主ばね24と、副ばね25と、マグネット26と、ホールIC27と、これらの部材を収容するケース本体30等で構成されている。
なお、図2(c)は、図2(b)のA−A断面図である。また、上記ケース本体30は、上面が開口した箱状のケース31と、このケース31の開口面を覆設するフタ体32とからなっている。
【0014】
シャフト20はケース本体30に対して該シャフト20の軸方向に往復動可能であり、ケース本体30の外側に突出している端部にコントロールケーブル3が連結されている。シャフト20の端部には円板状のフランジ部21が一体的に連結固定されている。
また、ロッド22はケース本体30より突出している端部がナット14に回動自在に連結されており、ロッド22の端部には円板状のフランジ部23が一体的に連結固定されている。このロッド22のフランジ部23とシャフト20のフランジ部23とが対面している構造となっている。
【0015】
シャフト20のフランジ部21の上面にはマグネット26が配設されており、シャフト20の往復動と共に該シャフト20の軸方向に沿って往復動可能となっている。このマグネット26の上部は、フタ体32に形成した凹所33内に位置しており、この凹所33の長手方向に沿ってシャフト20と共に往復動可能となっている。
上記凹所33を形成している断面が略コ字型の突部34の一方の側面にホールIC27が配設されていて、このホールIC27とマグネット26とは一定の間隔を設けて配設されている。シャフト20と共にマグネット26が往復動することで、マグネット26とホールIC27との相対変位量、すなわち、コントロールケーブル3の荷重に相当する主ばね24と副ばね25との圧縮、伸張変形量に応じた出力電圧Vsを制御装置1に出力するようになっている。
【0016】
コイルスプリング状の主ばね24は、ケース31の内面31aとシャフト20のフランジ部21の側面21aとの間に設けられた圧縮スプリングである。そして、図2に示す状態ではパーキングブレーキが解除の状態であって、主ばね24は開放された状態であり、弾性変形量はゼロの状態である。なお、パーキングブレーキの作動状態においては主ばね24は、弾性圧縮変形される。
【0017】
圧縮コイルスプリング状の副ばね25は、シャフト20の外周面側に組み付けられると共に、ケース31の内面31aとシャフト20のフランジ部21の側面21aとの間に弾発付勢された状態で設けられている。
また、副ばね25のばね定数は、主ばね24のばね定数に比べて小さく設定されていて、副ばね25の弾発力によりシャフト20のフランジ部21を常時ロッド22のフランジ部23側に付勢している。
【0018】
ここで、荷重センサ15の主ばね24は、開放されている状態では、該主ばね24の先端面とシャフト20のフランジ部21の側面21aとが接触ないし弾発している必要はなく、後述するように副ばね25の作用により主ばね24のばねゼロ位置を補正可能にしている。
なお、副ばね25はコントロールケーブル3のインナーケーブルを確実に無負荷域まで戻すため(インナーケーブルの無負荷摺動抵抗分を確実に戻す)に使用しているものである。
【0019】
図3は本発明の電動パーキングブレーキ装置に関連したブロック図を示し、制御装置1には、モータ11に流れる電流を検知する電流センサ16からの信号と、ホールIC27にて検出した出力電圧Vsと、操作スイッチ5からの信号(作動、解除)が入力される。また、制御装置1からはモータ11を制御する信号と、ワーニングランプ6を点灯、消灯させるための信号が出力される。
【0020】
制御装置1は、電流センサ16からの電流値を監視してモータ11の異常を検出するモータ異常検出部41と、ホールIC27からの出力電圧Vsが入力される電圧値入力部42と、所定の時間毎の出力電圧Vsの傾きを計算する演算部43と、この演算部43による計算結果を前回のと比較する比較部44と、モータ11を駆動制御するモータ駆動制御部45と、タイマー部46と、上記演算部43にて計算した結果(データ)を一時的に記憶するRAMや本制御装置1の制御用プログラムを格納しておくROM等からなる記憶部47と、全体の制御を司る制御部48等で構成されている。
【0021】
図4はホールIC27の出力電圧(ばねの撓み量)Vs(V)と、コントロールケーブル3の引き力(N)との関係を示す図であり、ばね特性線イが初期の副ばね25と主ばね24との特性線である。横軸におけるVss0が副ばね25のゼロ点位置に対応したホールIC27の出力電圧値であり、Vs0が主ばね24のゼロ点位置に対応したホールIC27の出力電圧値であり、Vtcがコントロールケーブル3の目標引き力に対応したホールIC27の出力電圧値である。また、ΔVは、目標引き力の主ばね24のばね撓みに対応した電圧値(Vtc−Vs0)である。なお、上記Vss0及びΔVは予め設定されている数値である。
【0022】
そして、パーキングブレーキを作動する場合には、ホールIC27からの出力電圧Vsが、ばね特性線イに示すVtcとなるまで、モータ11を正転駆動してコントロールケーブル3を作動し、出力電圧VsがVtcとなると目標引き力となって作動を完了する。
また、パーキングブレーキを解除する場合には、ホールIC27からの出力電圧Vsが、ばね特性線イのVss0になるまで、モータを逆転駆動してコントロールケーブル3を解いていき、出力電圧VsがVss0となった時点でモータ11を停止させる。
【0023】
このように、図1に示す構成の電動パーキングブレーキシステムにおいて、荷重センサ15に取り付けてあるばね(主ばね24、副ばね25)の撓みを電圧値(ホールIC27の出力電圧Vs)に変換してコントロールケーブル3の引き力等を制御している。
しかしながら、使用に伴い、主ばね24のヘタリ(ばねの縮み)が発生すると、ばね特性線ロに示すように主ばね24のゼロ位置が変化し、ヘタリが発生すると出力電圧Vs(Vs0)の値が変化することになる。
【0024】
そこで、本発明では、主ばね24のゼロ位置が変化すると、目標引き力を正確に制御できなくなるため、パーキングブレーキの作動中に副ばね特性と、主ばね+副ばね特性の変化点(図4の破線と実線との結合点)を検出して、主ばね24のばねゼロ位置を補正することによって、正確に目標引き力を制御することを可能にしたものである。
【0025】
図4に示すように、副ばね25に対する引き力はばね定数が主ばね24の場合よりも小さいので、コントロールケーブル3の引き力が少しで済み、そのため、傾きは緩やかである。主ばね24に対する引き力はばね定数が大きいため、主ばね24のゼロ位置を経過した時点から引き力が大きくなり、そのため、傾きは副ばね25の場合と比べてかなりきつくなっている。
なお、副ばね25のみの副ばね特性と、主ばね24と副ばね25との主ばね+副ばね特性との傾きは一定であり、副ばね特性から主ばね+副ばね特性、あるいは主ばね+副ばね特性から副ばね特性に変わるときに傾きが変化して、この変化を検出するようにしている。
【0026】
図5はコントロールケーブル3の作動方向における時間(sec)とホールIC27の出力電圧Vsとの関係を示しており、時間に対するホールIC27の出力電圧Vsの傾きは図4の場合と逆になっている。つまり、副ばね25の場合はばね定数が小さいため、時間当たりのホールIC27の出力電圧Vsの変化量は大きく、また、副ばね25+主ばね24の場合はばね定数が大きくなるため、時間当たりのホールIC27の主ばね24の変化量は小さくなる。
この変化量、つまり傾きが大きく変化する点が主ばね24のゼロ位置を示しており、副ばね25に対応した出力電圧Vsの傾きから、副ばね25+主ばね24に対応した出力電圧Vsの傾きを、所定の時間毎に計算を行ない、出力電圧Vsの傾きが大きく変化した点を検出し、その変化点を主ばね24のゼロ位置として補正を行ない、コントロールケーブル3を制御するものである。
【0027】
なお、図5では、計算間隔として、副ばね特性の場合と、副ばね特性から副ばね+主ばね特性の場合と、主ばね+副ばね特性との3つを例示しているが、これは副ばね25から副ばね25+主ばね24へと以降するために分かり易くするために描いたものである。実際はコントロールケーブル3を引き作動の開始から停止するまで、出力電圧Vsの傾きを演算している。なお、主ばね24のゼロ位置に対応した変化点を検出した後は、出力電圧Vsの傾きを演算しないようにしても良い。
【0028】
次に、本発明の制御動作をフローチャートに基づいて説明する。図6はパーキングブレーキを作動する場合を示し、先ず、操作スイッチ5により作動操作を行なうとステップS1に示すようにモータ11が正転駆動される。次に、ステップS2では、例えばモータ11が異常がどうかを電流値でもってモータ異常検出部41が監視し、ステップS3で異常(故障)であればワーニングランプ6を点灯させると共に、モータ11を停止し(ステップS4参照)、次いでフェールセーフ制御に移行する(ステップS5参照)。
【0029】
ステップS3において故障が無い場合にはステップS6に移行して、出力電圧Vsの傾きVs’を計算する。これは作動中に一定時間当たり、例えば50msec毎の出力電圧Vsの変化量を計算するものであり、この出力電圧Vsの変化量が傾きVs’となる。ホールIC27からの出力電圧Vsは制御装置1の電圧値入力部42に入力されており、タイマー部46からのタイマー信号により上記50msec毎の変化量を演算部43にて計算を行なう。
例えば、上記のように一定時間を50msecとすると、
傾きVs’=(前回の出力電圧Vs−今回の出力電圧Vs)/50msec
であり、上記の「前回の出力電圧Vs」は、50msec前の出力電圧Vsである。
【0030】
このようにホールIC27からの出力電圧Vsの変化量(傾きVs’)を演算部43にて作動中に計算をしていき、ステップS7において、図5に示す主ばね24のゼロ位置では、主ばね24+副ばね25の特性により傾きVs’が主ばね+副ばね特性に変化するとステップS8に移行する。
ここで、主ばね+副ばね特性では、その変化量(傾きVs’)は図5に示すように小さくなり、そのときに計算した傾きVs’と、前回に計算して記憶部47に格納しておいた傾きVs’とを比較部44で比較をし、その比較の結果、傾きVs’に変化があった場合には、主ばね24のゼロ位置を検出したとして、その信号を制御部48に出力する。
【0031】
ステップS8に示すように、今回の主ばね+副ばね特性に変化した場合のホールIC27からの出力電圧Vsを主ばね24のゼロ点電圧Vs0として、補正を行なう。次に、ステップS9に進み、目標引き力の電圧値Vtcを計算する。ここでは、図4に示すように、主ばね24のゼロ点電圧Vs0に目標引き力のばね撓みに対応した電圧値ΔVを加算することで、目標引き力の電圧値Vtcが計算される。
【0032】
ステップS10では、ステップS2の場合と同様に故障の判定が行なわれ、ステップS11において、故障の場合には上記と同様にステップS4、S5に進み、故障が無い場合にはステップS12に進む。ステップS12では、比較部44において、格納していた記憶部47からの上記目標引き力の電圧値Vtcと、電圧値入力部42からの出力電圧Vsとを比較し、入力された出力電圧Vsが目標引き力の電圧値Vtcに達した場合には、ステップS13に移行する。ステップS13に移行するとモータ11がモータ駆動制御部45により停止制御され、これにより作動が完了する。
【0033】
このように本実施形態では、主ばね24にヘタリが発生して主ばね24のゼロ位置が変化しても、コントロールケーブル3の作動中でのばねの撓み量に対応したホールIC27の出力電圧Vsにおける副ばね特性から主ばね+副ばね特性への変化点を検出し、この変化点の検出時点を主ばね24のゼロ位置として、このゼロ位置に対応したホールIC27の出力電圧Vsを主ばね24のゼロ位置に対応したゼロ点電圧Vs0とする補正を行なっている。
このゼロ点電圧Vs0に予め設定されている目標引き力の副ばね25と主ばね24とのばね撓み量に対応した電圧値ΔVを加算して、この加算した電圧値を目標引き力の電圧値Vtcとしている。そして、作動中においてホールIC27からの出力電圧Vsが目標引き力の電圧値Vtcとなるまで、コントロールケーブル3の引き作動を行なう。これにより正確に目標引き力を制御することが可能になる。
【0034】
次に、上述のようにしてパーキングブレーキに制動がかけられた状態、つまり、コントロールケーブル3が引かれた状態(作動状態)で、コントロールケーブル3の伸びによる引き力の低下を防止する場合の制御動作について図7に示すフローチャートにより説明する。
【0035】
先ず、ステップS21に示す引き作動の完了状態で、コントロールケーブル3が伸びると、該コントロールケーブル3にかかる張力が低下する。そのため、荷重センサ15内のばね(主ばね24と副ばね25)の撓み量が小さくなるため、ホールIC27の出力電圧Vsが低くなる。
すなわち、コントロールケーブル3の作動が完了した時点では、図6のステップS12に示すように、ホールIC27の出力電圧Vs≧Vtc(目標引き力の電圧値)であるため、作動完了後はホールIC27からの出力電圧Vsを監視を続ける。
【0036】
そこで、ステップS22に示すように、ホールIC27からの出力電圧Vsと、記憶部47から読み込んだ目標引き力の電圧値Vtcとを比較し、目標引き力の電圧値Vtcの値よりホールIC27の出力電圧Vsが低くなった場合には、作動状態においてコントロールケーブル3の伸びが発生したとして、ステップS23に移行する。
このステップS23ではコントロールケーブル3を引き作動すべくモータ11を正転駆動してステップS24に移行する。ステップS24では、例えばモータ11が異常がどうかを電流値でもってモータ異常検出部41が監視し、ステップS25で異常(故障)であればワーニングランプ6を点灯させると共に、モータ11を停止し(ステップS26参照)、次いでフェールセーフ制御に移行する(ステップS27参照)。
【0037】
ステップS25で故障がない場合にはステップS28に進み、ホールIC27からの出力電圧Vsが目標引き力の電圧値Vtcになるまでモータ11を駆動し、出力電圧Vsが目標引き力の電圧値Vtcになると、モータ11が停止する(ステップS29参照)。
そして、モータ11が停止した後は、ステップS22に戻り、ホールIC27からの出力電圧Vsを監視し、常に目標引き力の電圧値Vtcとの比較を行なう。出力電圧Vsが電圧値Vtcより低くなると、コントロールケーブル3の伸びが発生したとして、ステップS23以降の手順を繰り返す。
【0038】
このように本実施形態では、コントロールケーブル3の制動状態、つまりコントロールケーブル3の引き作動が完了してから、ホールIC27の出力電圧Vsと目標引き力の電圧値Vtcとを常に比較し、出力電圧Vsが電圧値Vtcより低くなった場合には、コントロールケーブル3の伸びが発生したとし、モータ11を駆動してコントロールケーブル3を目標引き力の電圧値Vtcになるまで引き作動する。これにより、パーキングブレーキが引かれた状態で、コントロールケーブル3の伸びによる引き力低下を確実に防止することができる。
よって、パーキングブレーキの制動状態において、コントロールケーブル3の伸びによる引き力の低下防止により、パーキングブレーキの制動を確実にでき、車両の移動を防ぐことができる。
【0039】
次に、パーキングブレーキの解除の動作について図8により説明する。先ず、操作スイッチ5にて解除操作を行なうことで、ステップS31に示すようにモータ11が逆転駆動されて、コントロールケーブル3を戻す方向に制御される。ステップS32では、図6の場合と同様にモータ11の故障の有無を判定し、故障の場合にはステップS33からステップS34に移行してモータ11を停止させ、フェールセーフ制御が行なわれる(ステップS35参照)。
【0040】
ステップS33において故障が無い場合にはステップS36に移行して、ホールIC27の出力電圧Vsが副ばね25のゼロ点位置に対応したゼロ点電圧値Vss0(図4参照)に低下するか否かが判断される。ホールIC27からの出力電圧Vsがゼロ点電圧値Vss0に達すると、ステップS37に移行してモータ11を停止させることで、パーキングブレーキの解除動作が完了する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態における電動パーキングブレーキシステムの概略ブロック構成図である。
【図2】(a)(b)は本発明の実施の形態における荷重センサの断面図及び側面図であり、(c)は図2(b)のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるホールICの出力電圧(ばねの撓み量)とコントロールケーブルの引き力との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるコントロールケーブルの作動中でのホールICの出力電圧との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるコントロールケーブルの作動の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態におけるパーキングブレーキが引かれた状態でのケーブルの伸びによる引き力低下防止の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態におけるコントロールケーブルの解除の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1 制御装置
2 アクチュエータ
3 コントロールケーブル
11 モータ
15 荷重センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(11)の正転駆動によりケーブル(3)を介してパーキングブレーキを作動状態とし、前記モータ(11)の逆転駆動により前記パーキングブレーキを前記ケーブル(3)を介して解除状態にするアクチュエータ(2)と、
前記パーキングブレーキに作用するケーブル(3)の荷重を検出する荷重センサ(15)と、
前記荷重センサ(15)からの出力電圧(Vs)に応じて前記モータ(11)の回転駆動を制御する制御装置(1)とを備え、
前記荷重センサ(15)からの出力電圧(Vs)が予め設定されている前記ケーブル(3)の目標引き力の電圧値(Vtc)になった時点における前記パーキングブレーキの作動完了後、前記荷重センサ(15)からの出力電圧(Vs)が前記目標引き力の電圧値(Vtc)に対して変化した場合に、該出力電圧(Vs)が前記電圧値(Vtc)になるまで前記モータ(11)を正転駆動させる制御手段を設けていることを特徴とする車両の電動パーキングブレーキシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−128389(P2008−128389A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314856(P2006−314856)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコ−ポレ−ション (362)
【Fターム(参考)】