説明

車両セキュリティ遠隔監視システム

【課題】車両セキュリティ遠隔監視システムの無力化を効果的に防止すること。
【解決手段】車載バッテリ13からの電力供給が適正である間は情報検知手段であるCCDカメラ2,3およびイモビラセイザ4や異常判定手段であるマイクロプロセッサ6ならびに通信手段である送受信部9の駆動電力の供給元として車載バッテリ13を利用し、この間、エンジンで駆動される充電装置もしくは車載バッテリ13からの電力でバックアップ電源14を定常的に充電する。車載バッテリ13の電力供給の異常を電圧監視部16が検知した時点で電源生成部15内のスイッチング回路を切り替えて駆動電力の供給元をバックアップ電源14に変更する。バックアップ電源14は完全な充電状態にあるので、車載バッテリ13の取り外し後も長時間に亘ってCCDカメラ2,3およびイモビラセイザ4やマイクロプロセッサ6ならびに送受信部9を正常に作動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のセキュリティに関わる異常の発生を基地局やインターネット通信網を利用してユーザ端末に通知する車両セキュリティ遠隔監視システムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両セキュリティ遠隔監視システムとしては、特許文献1に開示された車載セキュリティ装置,特許文献2に開示された車両用異常通知システム,特許文献3に開示された車両セキュリティシステム等が既に知られており、また、モバイルWiMAX(IEEE802.16e)の規格に準拠した無線インターネットワークそれ自体については特許文献4等で既に公知である。
【0003】
特許文献1に開示された車載セキュリティ装置は、シガーソケットからの入力すなわち車両運転時においてのみ充電される二次電池を利用して、シガーソケットからの入力がオフとなる条件下つまり運転キーを抜いたときの車載セキュリティ装置の駆動電力を賄う構成を有するものである。
このため、車載セキュリティ装置の駆動電力は二次電池のみを使用して供給されることになり、唯一の駆動電源である二次電池が消耗すると車載セキュリティ装置が作動しなくなる不都合があり、また、車内に設けられたシガーソケットと二次電池との間を電気配線で接続する関係上、二次電池の設置箇所を容易に突き止めることが可能であり、車両が盗難にあった場合など、二次電池を取り外されて車載セキュリティ装置の作動が妨げられるといった恐れもある。
こういった問題を回避するため、特許文献1に開示された車載セキュリティ装置では、前述の二次電池と並列してバックアップ電池を備えているが、バックアップ電池そのものは充電式の電池ではないため、放電等によって起電力が低下してしまうと、車載セキュリティ装置の作動が維持されなくなる不都合がある。
【0004】
特許文献2,3に開示された車両用異常通知システムは、車両のセキュリティに関わる情報を検知する情報検知手段としてのカメラ,侵入センサ,振動センサ,GPS受信器等を備え、これらの情報検知手段で検知された異常や周囲の画像をインターネット等を利用して特定のユーザ端末に送信する機能を備えるが、情報検知手段としてのカメラ等の作動周期を情報検知手段毎に設定することはできず、また、カメラで撮像された画像は異常の発生タイミングに合わせてユーザ端末に送信するしかなく、例えば、ユーザ端末の利用者が車載カメラを利用して定期的に車両周辺の状況を確認するといったことはできない。
特許文献2,3に開示された車両用異常通知システムにあっては、車両用異常通知システムの駆動電源に関わる格別の工夫はなく、特許文献1記載の発明と同様、車載バッテリの取り外し等によって車両用異常通知システム自体が無力化されるといった恐れがある。
カメラの画像を利用した異常検出処理に関しては、特許文献2の段落0069に記載される通り、既に公知の技術である。
【0005】
【特許文献1】特開2004−130942号公報(段落0023−0026)
【特許文献2】特開2006−27356号公報(段落0020,0045,0047,0063,0069)
【特許文献3】特開2007−126118号公報
【特許文献4】特開2006−155560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、車載バッテリの取り外しや電力の供給異常によるシステムの無力化を効果的に防止することのできる車両セキュリティ遠隔監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両セキュリティ遠隔監視システムは、車両のセキュリティに関わる情報を検知する情報検知手段と、前記情報検知手段で検知された情報に基いて車両のセキュリティに関わる異常の発生を判定する異常判定手段と、前記異常判定手段によって判定された異常の発生を車両に近接する基地局およびインターネット通信網とユーザ端末に近接する基地局を経由してユーザ端末に送信する通信手段とを備えた車両セキュリティ遠隔監視システムであり、前記課題を達成するため、特に、
車両のエンジンで駆動される充電装置からの電力もしくは車載バッテリからの電力で充電されるバックアップ電源を前記車載バッテリと独立して車両に配備すると共に、前記車載バッテリからの電力供給の適否を判定し、車載バッテリからの電力供給が適正であれば前記情報検知手段,異常判定手段,通信手段の駆動電力の供給元として前記車載バッテリを選択する一方、車載バッテリからの電力供給が適正でなければ前記情報検知手段,異常判定手段,通信手段の駆動電力の供給元として前記バックアップ電源を選択する入力電源切替回路を備えたことを特徴とする構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両セキュリティ遠隔監視システムは、車載バッテリからの電力供給が適正である間は情報検知手段,異常判定手段,通信手段等の駆動電力の供給元として車載バッテリを利用すると共に、車両のエンジンで駆動される充電装置からの電力もしくは車載バッテリからの電力でバックアップ電源を充電しておき、車載バッテリからの電力供給が適正でなくなった場合に限って、情報検知手段,異常判定手段,通信手段等の駆動電力の供給元としてバックアップ電源を利用するようにしているので、車載バッテリの取り外しやバックアップ電源からの電力の供給異常によるシステムの無力化を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明を適用した一実施形態の車両セキュリティ遠隔監視システム1の構成の概略について示したブロック図である。
【0010】
本実施形態の車両セキュリティ遠隔監視システム1は、車両のセキュリティに関わる情報を検知する情報検知手段の一種であるCCDカメラ2,3と、同様に、車両のセキュリティに関わる情報を検知する情報検知手段の一種として機能するイモビラセイザ4を備える。
【0011】
イモビライザ4は、車両所有者以外の者が車両に対して不正操作を行ったことを検知してエンジン点火回路を自動的に遮断することによってエンジンの始動を禁止する機能を備えたもので、既に、メカキー式のものやスマートエントリー式のものが多数市販されており、その構成に関しても公知である。
【0012】
車両セキュリティ遠隔監視システム1の主要部を構成する車載監視装置5は、異常判定手段および作動タイミング制御手段として機能するマイクロプロセッサ6と、マイクロプロセッサ6の制御プログラムを格納すると共にポーリング周期設定手段および識別情報設定手段としても機能する不揮発性メモリ7と、現在時刻を検知する計時手段として機能するタイマ8と、モバイルWiMAXの規格に準拠した通信手段として機能する送受信部9と、情報検知手段であるCCDカメラ2,3およびイモビラセイザ4を接続した車内ローカルネットワーク12とマイクロプロセッサ6を連絡するユーザーネットワークインターフェイス10を備える。
入力電源切替回路11は、車載バッテリ13からの電力もしくは二次電池等で構成されるバックアップ電源14からの電力を択一的に選択して情報検知手段であるCCDカメラ2,3およびイモビラセイザ4や車載監視装置5に供給する。入力電源切替回路11からCCDカメラ2,3への電力の供給は、図示しない電力線を介して行われるようになっているが、記載が煩雑となるため、図1中では電力線の表示は省略している。
【0013】
車載バッテリ13は、周知のように、車両のエンジンで駆動されるジェネレータやオルタネータ等の充電装置(図示せず)で生成される電力によって、車両運転時あるいはアイドリング時に定常的に充電されるようになっている。
【0014】
この実施形態では車載バッテリ13を利用して二次電池等で構成されるバックアップ電源14に充電を行なうようにしているが、車載バッテリ13を介さずに車両の充電装置(図示せず)からバックアップ電源14に充電を行なうようにしても構わない。
【0015】
より具体的には、入力電源切替回路11は、図2に示されるように、車載バッテリ13からの電力とバックアップ電源14からの電力を二者択一的に選択して受け入れるスイッチング回路(図示せず)と車載バッテリ13やバックアップ電源14からの電力を車載監視装置5の仕様に適合させるためのレギュレータ等を内蔵した電源生成部15と、車載バッテリ13から電源生成部15に入力される電圧が適正範囲にあるか否かを判定し、車載バッテリ13からの電力供給が適正範囲にあれば車載バッテリ13からの電力を前述のスイッチング回路を介してCCDカメラ2,3やイモビラセイザ4および車載監視装置5に供給する一方、車載バッテリ13から電源生成部15に入力される電圧が降下してCCDカメラ2,3やイモビラセイザ4および車載監視装置5の駆動電源として適さなくなった場合に前述した電源生成部15のスイッチング回路を切り替えてバックアップ電源14からの電力をCCDカメラ2,3やイモビラセイザ4および車載監視装置5に供給させるようにする電圧監視部16と、電圧監視部16が車載バッテリ13の電圧降下を検知した時点で異常判定手段として機能するマイクロプロセッサ6に電圧降下のアラーム信号を送信するアラーム生成部17とによって構成されている。
【0016】
なお、ここでいう車載バッテリ13の電圧降下とは、車載バッテリ13自体の異常たとえば放電等による電圧降下のほか、車載バッテリ13の取り外しによって電源生成部15に車載バッテリ13からの電力が供給されなくなった場合の異常、つまり、車載バッテリ13からの入力電圧が実質的に零となった場合の異常も含めた概念である。
【0017】
電圧監視部16およびアラーム生成部17は車載バッテリ13の電圧降下や車載バッテリ13の取り外しに関わる情報を検知するためのもので、車載バッテリ13の電圧降下や取り外しといった現象は車両のセキュリティすなわち安全,防犯,安全保障等に直接的に関わる情報であるから、これらの電圧監視部16およびアラーム生成部17も、車両のセキュリティに関わる情報を検知するための情報検知手段の一種として機能していることになる。
【0018】
ポーリング周期設定手段および識別情報設定手段として機能する不揮発性メモリ7には、例えば、図3に示されるようなポーリング周期設定テーブル18や図4に示されるような識別情報設定ファイル19が其の記憶領域の一部を利用して構築されている。
【0019】
図3に示されるポーリング周期設定テーブル18には、情報検知手段としてのCCDカメラ2,3を作動させる周期つまりポーリング監視間隔が各CCDカメラ2,3毎に独立して設定されるようになっている。CCDカメラ2,3の用途、たとえば、運転席撮影用あるいは車両周辺撮影用といった用途、もしくは、ユーザが認識する危険度のプライオリティ等に応じて、ポーリング監視間隔を自由に設定することができる。
また、ポーリング周期設定テーブル18には、各CCDカメラ2,3で撮像された画像をセキュリティ関連の異常の有無とは関わり無くポーリング監視間隔で携帯電話等のユーザ端末20に送信してユーザに監視させるか否か(e−mail送信の“有り”または“無し”)、更には、各CCDカメラ2,3で撮像された画像をセキュリティ関連の異常の有無とは関わり無く不揮発性メモリ7に取り込んで保存するか否か(画面キャプチャの“有り”または“無し”)をユーザの都合で手動設定できるようになっている。
【0020】
作動タイミング制御手段とし機能するマイクロプロセッサ6は、ポーリング周期設定テーブル18に設定されたポーリング監視間隔に従って、各CCDカメラ2,3を間欠的に作動させる。
また、マイクロプロセッサ6は、この際、e−mail送信が“有り”に設定されているCCDカメラ2またはCCDカメラ3で撮像された画像を、タイマ8を参照して確認した現在時刻と共に、送受信部9を介してユーザ端末20に送信する。この現在時刻は異常の発生とは無関係なものであるから、異常の発生時刻には相当しない。
CCDカメラ2,3で撮像された画像をリアルタイムでユーザ端末20に送信する場合においては、更に、図5に示されるように、マイクロプロセッサ6を画像符号化手段24および画像圧縮手段25として機能させるための制御プログラムを不揮発性メモリ7に格納し、CCDカメラ2,3で連続的に撮像される画像をマイクロプロセッサ6で逐次動画として符号化し、更に、この動画を圧縮して送受信部9を介してユーザ端末20に送信するようにする。動画の生成および圧縮に関わる技術に関しては既に公知である。
マイクロプロセッサ6は、更に、画面キャプチャが“有り”に設定されているCCDカメラ2またはCCDカメラ3で撮像された画像を取り込み、予め決められた記憶容量つまり不揮発性メモリ7の記憶領域のうち画像の保存のために利用を許容された記憶容量の範囲で、最近の幾つかの画像を、タイマ8を参照して確認した現在時刻と共に、不揮発性メモリ7に累積的に保存する。前記と同様、この現在時刻は異常の発生とは無関係なものであるから、異常の発生時刻には相当しない。
同時に、異常判定手段としてのマイクロプロセッサ6は、情報検知手段としてのCCDカメラ2,3で撮像された画像に基いて公知の異常検出処理を実行して車両のセキュリティに関わる異常の有無を判定し、異常があれば、ポーリング周期設定テーブル18におけるe−mail送信の設定の有無や画面キャプチャの設定の有無とは関わり無く、異常の発生と異常の種別を、タイマ8を参照して得た異常発生時刻と共に、通信手段である送受信部9を介してユーザ端末20に送信し、併せて、当該時点で不揮発性メモリ7に累積的に保存されている一連の画面キャプチャ、すなわち、図3のポーリング周期設定テーブル18で画面キャプチャを“有り”に設定されているCCDカメラで撮像された画面キャプチャを、通信手段である送受信部9を介してユーザ端末20に送信する。
【0021】
無論、監視用のCCDカメラの台数は2台とは限らず、適宜、車内ローカルネットワーク12を利用して増設することが可能である。
【0022】
一方、図4に示される識別情報設定ファイル19には、車両のセキュリティに関わる異常の発生や異常の種別およびCCDカメラ2,3で撮像された画像の送信先となるユーザ端末40を特定するための識別情報が、ユーザの都合で手動設定できるようになっている。この実施形態では、識別情報としてユーザ端末40の電子メールアドレス(連絡先e−mail)を利用している。
【0023】
この実施形態においては、モバイルWiMAXの規格に準拠した通信手段として機能する送受信部9と当該車載監視装置5を搭載した車両に近接する基地局21との間の通信が無線通信によって行なわれるようになっており、基地局21の側も、モバイルWiMAXの規格に準拠した無線による送受信処理の機能を備えている。
基地局21とユーザ端末20に近接する基地局22との間の通信は従来と同様にインターネット23を利用して行なわれる。
基地局22とユーザ端末20との間の通信は、従来型のモバイル通信(ユーザ端末20が携帯電話等の場合)であっても、従来型の固定局通信(ユーザ端末20がパーソナルコンピュータ等の場合)であっても構わない。
無論、基地局22とユーザ端末20との間の通信にモバイルWiMAXを適用するようにしてもよい。
【0024】
既に述べた通り、モバイルWiMAX(IEEE802.16e)の規格に準拠した無線インターネットワークそれ自体については公知であるが、特に、車載監視装置9の送受信部9と基地局21との間の通信にモバイルWiMAXの規格を適用することで、たとえば、車両が120km/h程度の速度で移動している場合であっても最高75Mビット/秒(ベストエフォート)の高速かつ安定した通信が可能となり(車載監視装置5と基地局21との通信可能離間距離は2〜3キロメートル)、車載監視装置5から送信された情報をユーザ端末20の側で遅滞なく把握してユーザが必要に応じた適切な処置や判断を行うことができるといった面で、車両セキュリティ遠隔監視システムに特有の効果が発揮されることになる。
特に、モバイルWiMAXの規格は、ハンドオーバー対応の高速無線通信であり、インターネット23に対する常時接続が可能であるため、移動中の盗難車両に搭載された車載監視装置5から時々刻々と送信される情報をユーザ端末20に的確に伝達できるといった意味で利用価値が高い。
【0025】
識別情報設定ファイル19に設定される識別情報すなわちユーザ端末40の電子メールアドレス(連絡先e−mail)は、モバイルWiMAXや従来型のモバイル通信あるいは従来型の固定局通信の何れを利用した場合であっても、車載監視装置5が異常の発生を送信する対象としているユーザ端末20を、基地局21,22の側で特定する際に十分な情報となる。
ポーリング周期設定テーブル18においてe−mail送信を“有り”に設定されたCCDカメラ2,3で撮像された画像と其の撮像時刻、および、異常判定手段としてのマイクロプロセッサ6によって判定された異常の種別と其の発生時刻といった情報は、識別情報設定ファイル19に設定された電子メールアドレス(連絡先e−mail)と共にパケット化され、通信手段として機能する送受信部9を介してモバイルWiMAXに適合する仕様で車両に近接した基地局21に無線送信され、インターネット23に接続された基地局21や基地局22が、この電子メールアドレス(連絡先e−mail)に基いて基地局21と基地局22との間、および、基地局22とユーザ端末20との間の通信を確立して、これらの情報をユーザ端末20に送信する。
【0026】
情報検知手段としてのCCDカメラ2,3を作動させるポーリング監視間隔や画像に関わるe−mail送信の“有り”/“無し”、更には、画面キャプチャの“有り”/“無し”を不揮発性メモリ7のポーリング周期設定テーブル18に設定する処理、および、連絡先e−mail等を不揮発性メモリ7の識別情報設定ファイル19に設定する処理は、ユーザ端末20を利用して基地局22,インターネット23,基地局21,送受信部9を経由して車載監視装置5のマイクロプロセッサ6にアクセスし、ユーザ端末20側からの設定操作によってマイクロプロセッサ6に内部処理を行なわせて設定できるように構成する。
車載監視装置5それ自体に手動操作盤等のマンマシンインターフェイスを設置して同等の設定操作を行う場合に比べ、外部からの悪戯等に対するセキュリティが向上するからである。
【0027】
この実施形態では、図4の識別情報設定ファイル19が、更に、異常発生履歴記憶ファイルとしても利用されるようになっている。
この識別情報設定ファイル19には、情報検知手段としてのCCDカメラ2,3からの画像やイモビラセイザ4からの不正操作検出信号およびアラーム生成部17からのアラーム信号に基いて異常判定手段であるマイクロプロセッサ6が判定した異常の発生と其の種別(アラーム情報)、ならびに、タイマ9を参照して得られた異常発生時刻(タイムスタンプ)と、同種の異常の発生回数の積算値(発生積算回数)とが一対一に対応して、予め決められた記憶容量つまり不揮発性メモリ7の記憶領域のうち異常発生履歴の記録のために利用を許容された記憶容量の範囲で、最近の幾つかの履歴が記録される。
【0028】
異常発生履歴記憶ファイルとして利用される識別情報設定ファイル19を参照することによって同種の異常の発生頻度を容易に調査することができ、また、不揮発性メモリ7の他の記憶領域に累積的に保存されたCCDカメラ2,3の画像を確認することで、盗難発生時の状況確認等を効率よく進めることができる。
【0029】
異常発生履歴記憶ファイルの内容や不揮発性メモリ7内に蓄積された画像データ等を読み出してユーザ端末20に転送すること、および、其の内容をユーザ端末20のディスプレイに表示するといったことは技術的に容易である。
【0030】
また、異常発生履歴記憶ファイルとして利用される識別情報設定ファイル19やCCDカメラ2,3の画像の保存に際して不揮発性メモリ7の記憶容量が不十分であるような場合には、他の記憶装置たとえばハードディスク等を増設することもある。
【0031】
マイクロプロセッサ6が判定できる異常の種別には、少なくとも、情報検知手段としてのアラーム生成部17から出力されるアラーム信号に基く車載バッテリ13の電圧降下と不適当な車載バッテリ13の取り外し行為(入力電圧が実質的に零となった場合は車載バッテリ13の不適当な取り外し行為/CCDカメラ2,3やイモビラセイザ4あるいはマイクロプロセッサ6や送受信部9の駆動電源として不適となる程度の車載バッテリ13の電圧降下は単なる放電による電圧降下)と、情報検知手段としてのイモビライザ4から出力される信号に基くエンジン始動の不正操作がある。
CCDカメラ2,3で取得された画像から判定可能な異常は、公知の範囲では、たとえば、泥棒の侵入や暴漢の来襲といった異常である。
【0032】
以上の構成において、車載バッテリ13は車両運転時およびアイドリング時を通じてエンジンで駆動される充電装置(図示せず)により定常的に充電され、また、バックアップ電源14も車載バッテリ13から供給される電力もしくは充電装置(図示せず)から供給される電力によって定常的に充電される。従って、車両を適切に運用する限りにおいては、車載バッテリ13やバックアップ電源14が使用に適さない状態にまで自然放電するといった現象は殆ど発生せず、特に、バックアップ電源14の自然放電等による性能の劣化が未然に防止される。
【0033】
車載バッテリ13から入力電源切替回路11の電源生成部15に入力される電圧が適正範囲にある限り、電圧監視部16は電源生成部15のスイッチング回路の接続態様を初期の接続状態に保持するので、情報検知手段の一種であるCCDカメラ2,3とイモビライザ4、および、異常判定手段や作動タイミング制御手段として機能するマイクロプロセッサ6、ならびに、送受信部9は、車載バッテリ13から入力電源切替回路11を介して入力される電力によって駆動される。
【0034】
また、盗難等の理由で車両から車載バッテリ13が取り外されたような状況下では、車載バッテリ13から入力電源切替回路11の電源生成部15への電力の入力が断たれ、電圧監視部16が電圧降下を検知して電源生成部15のスイッチング回路を切り替えるので、情報検知手段の一種であるCCDカメラ2,3とイモビライザ4、および、異常判定手段や作動タイミング制御手段として機能するマイクロプロセッサ6、ならびに、送受信部9は、バックアップ電源14から入力電源切替回路11を介して入力される電力によって駆動されるようになる。
【0035】
従って、車載バッテリ13の取り外しによってCCDカメラ2,3およびイモビライザ4等の情報検知手段や車載監視装置5(異常判定手段および作動タイミング制御手段としてのマイクロプロセッサ6,送受信部9,計時手段としてのタイマ8)の作動を停止させることはできず、車載バッテリ13の取り外しによる車両セキュリティ遠隔監視システム1の無力化が未然に防止される。
【0036】
しかも、電力の供給元が車載バッテリ13からバックアップ電源14に切り替えられた直後の時点では、二次電池等で構成されるバックアップ電源14が完全に充電された状態となっているので、車載バッテリ13が取り外された後も比較的に長い時間に亘ってCCDカメラ2,3およびイモビライザ4等の情報検知手段や車載監視装置5(異常判定手段および作動タイミング制御手段としてのマイクロプロセッサ6,送受信部9,計時手段としてのタイマ8)を安定的に作動させることができる。
【0037】
車載バッテリ13が取り外されて電圧監視部16が電圧降下を検知した際には、情報検知手段としてのアラーム生成部17からマイクロプロセッサ6に向けて電圧降下のアラームが送信されるが、その場合の処理については、既に述べた通りである。
【0038】
本実施形態においては、車載監視装置5がモバイルWiMAXで基地局21を経由してインターネット23に接続されていることから、車載監視装置5のドメイン名やグローバルIPアドレスを知ることで、誰でもが車載監視装置5から送信される情報にアクセスすることが可能であり、たとえば、ユーザ端末20の所有者が車両の状況を監視できない状況下にあっても、知人や友人等に容易に車両の監視を委託することができる。
あるいは、車載監視装置5のドメイン名やグローバルIPアドレスを開示する代わりに、識別情報設定ファイル19に車両所有者以外の第三者の電子メールアドレスを連絡先e−mailとして登録することも可能であり、そうした場合は、車両の監視を委託した第三者に対してのみ車載監視装置5から送信される情報に対するアクセスを許容できる。
【0039】
特に、ユーザ端末20として携帯電話等を利用する(連絡先e−mailとして携帯電話のアドレスを設定する)ことで、既存の携帯電話にて何時でも車両の状況を確認できるようになる。
その理由は、現行の携帯電話の殆どがインターネット接続を行える環境にあり、JAVAアプリケーション等(JAVAは登録商標)による動画再生が可能な為である。WiMAX技術の有する最高75Mビット/秒(ベストエフォート)の帯域幅により、通常のMPEG圧縮動画等であれば、ストレスなく受信を行うことができる。
【0040】
図6は前述の構成に加え、更に、エンジン点火回路を含むエンジンスターター26に設けられた赤外線通信部と通信するための赤外線通信用インターフェイス27を車内ローカルネットワーク12に接続し、車両のエンジンを遠隔地から始動できるようにした実施形態について簡略化して示したブロック図である。
赤外線通信用インターフェイス27は、スマートエントリー式のエンジンキーから送出される赤外線を感知してエンジンスターター26のエンジン点火回路やセルモーター等を作動させるもので、其の構成や機能については既に公知である。
このように、スマートエントリー式のエンジンキーと同等の赤外線を送出する赤外線通信用インターフェイス27を車内ローカルネットワーク12に接続し、ユーザ端末20からの操作により基地局22,インターネット23,基地局21,車載監視装置5の送受信部9を経由してマイクロプロセッサ6に指令を出し、マイクロプロセッサ6の処理で赤外線通信用インターフェイス27を作動させることで、携帯電話等のユーザ端末20を利用して遠隔地から簡単に車両のエンジンを起動することが可能となる。
無論、赤外線の代わりに超音波や微弱電波を利用したスマートエントリーシステムを適用した車両にあっても、赤外線通信用インターフェイス27に代えて其のスマートエントリーシステムに応じた態様の通信用インターフェイスを設けることで、上記と同等の操作が可能である。
仮に、自宅に車庫や駐車場がある場合でも、スマートエントリー用のエンジンキーから送出される赤外線や超音波あるいは微弱電波等が届き難い位置に車庫や駐車場が位置する場合も多いので、スマートエントリー用のエンジンキーの操作では困難な状況下でも車両のエンジンを確実に起動できるといったメリットは大きい。
携帯電話等のユーザ端末20を利用して遠隔地から車両のエンジンを起動させる構成を適用する場合、第三者による悪戯等でエンジンが起動されるといった可能性もあるので、この実施形態では、図4に示されるような識別情報設定ファイル19に加え、更に、ユーザ端末40を特定するための端末特定情報と車両を所有するユーザのみが知る起動用識別コード(パスワード)を登録するための起動情報設定ファイル28を不揮発性メモリ7の記憶領域の一部を利用して設けている。起動情報設定ファイル28の構成例を図7の概念図に示す。
ユーザ端末20からの操作でエンジンを起動する場合、ユーザはユーザ端末20を利用してエンジン起動指令と共に端末特定情報および起動用識別コードを前述の経路で車載監視装置5のマイクロプロセッサ6に送信し、マイクロプロセッサ6は、受信した端末特定情報および起動用識別コードが起動情報設定ファイル28に登録されている端末特定情報や起動用識別コードと一致した場合に限り、スマートエントリー用のエンジンキーに代わる赤外線通信用インターフェイス27の作動を許容して、エンジンスターター26を機能させると共に、タイマ8を参照して確認した現在時刻を起動情報設定ファイル28の最終アクセスの欄に更新記憶させ、起動情報設定ファイル28のアクセス回数の値を1インクリメントする。
【0041】
また、車載のGPSナビゲーションシステムと連携し、携帯電話等のユーザ端末20によって車両の現在位置を特定したり、あるいは、車両の側からユーザ端末20の所有者の位置を特定するといったことも容易に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明を適用した一実施形態の車両セキュリティ遠隔監視システムの構成の概略について示したブロック図である。
【図2】同実施形態の車両セキュリティ遠隔監視システムにおける入力電源切替回路の構成を示した機能ブロック図である。
【図3】同実施形態の車両セキュリティ遠隔監視システムの不揮発性メモリに構築されたポーリング周期設定テーブルについて示した概念図である。
【図4】同実施形態の車両セキュリティ遠隔監視システムの不揮発性メモリに構築された識別情報設定ファイルについて示した概念図である。
【図5】同実施形態の車両セキュリティ遠隔監視システムにおいてCCDカメラで撮像された画像をリアルタイムでユーザ端末に送信する場合のマイクロプロセッサの内部処理を示した機能ブロック図である。
【図6】エンジンスターターに設けられた赤外線通信部と通信するための赤外線通信用インターフェイスを車内ローカルネットワークに接続し、車両のエンジンを遠隔地から始動できるようにした実施形態について簡略化して示したブロック図である。
【図7】同実施形態の車両セキュリティ遠隔監視システムの不揮発性メモリに構築された起動情報設定ファイルについて示した概念図である。
【符号の説明】
【0043】
1 車両セキュリティ遠隔監視システム
2 CCDカメラ(情報検知手段)
3 CCDカメラ(情報検知手段)
4 イモビラセイザ(情報検知手段)
5 車載監視装置
6 マイクロプロセッサ(異常判定手段,作動タイミング制御手段)
7 不揮発性メモリ(ポーリング周期設定手段,識別情報設定手段)
8 タイマ(計時手段)
9 送受信部(通信手段)
10 ユーザーネットワークインターフェイス
11 入力電源切替回路
12 車内ローカルネットワーク
13 車載バッテリ
14 バックアップ電源
15 電源生成部
16 電圧監視部(情報検知手段)
17 アラーム生成部(情報検知手段)
18 ポーリング周期設定テーブル
19 識別情報設定ファイル(異常発生履歴記憶ファイル)
20 ユーザ端末
21 車両に近接する基地局
22 ユーザ端末に近接する基地局
23 インターネット
24 画像符号化手段
25 画像圧縮手段
26 エンジンスターター
27 赤外線通信用インターフェイス
28 起動情報設定ファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のセキュリティに関わる情報を検知する情報検知手段と、前記情報検知手段で検知された情報に基いて車両のセキュリティに関わる異常の発生を判定する異常判定手段と、前記異常判定手段によって判定された異常の発生を車両に近接する基地局およびインターネット通信網とユーザ端末に近接する基地局を経由してユーザ端末に送信する通信手段とを備えた車両セキュリティ遠隔監視システムであって、
車両のエンジンで駆動される充電装置からの電力もしくは車載バッテリからの電力で充電されるバックアップ電源を前記車載バッテリと独立して車両に配備すると共に、前記車載バッテリからの電力供給の適否を判定し、車載バッテリからの電力供給が適正であれば前記情報検知手段,異常判定手段,通信手段の駆動電力の供給元として前記車載バッテリを選択する一方、車載バッテリからの電力供給が適正でなければ前記情報検知手段,異常判定手段,通信手段の駆動電力の供給元として前記バックアップ電源を選択する入力電源切替回路を備えたことを特徴とする車両セキュリティ遠隔監視システム。
【請求項2】
前記入力電源切替回路が、前記車載バッテリの電圧降下に基いて車載バッテリからの電力供給の適否を判定するように構成されると共に、車載バッテリからの電力供給が適正でなくなった際に、前記異常判定手段に電圧降下の異常を通知する電圧監視部を備えたことを特徴とする請求項1記載の車両セキュリティ遠隔監視システム。
【請求項3】
前記情報検知手段を作動させる周期を情報検知手段毎に設定するポーリング周期設定手段と、前記ポーリング周期設定手段に設定された周期に基いて前記情報検知手段を作動させる作動タイミング制御手段を車載すると共に、該作動タイミング制御手段の駆動電力の供給元を前記入力電源切替回路によって選択するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2のうち何れか一項に記載の車両セキュリティ遠隔監視システム。
【請求項4】
前記情報検知手段として、画像取得用のCCDカメラとイモビライザーを備え、前記CCDカメラで取得された画像を、前記異常判定手段における異常判定の有無とは関わりなく、前記ポーリング周期設定手段に設定されたポーリング周期に従って前記ユーザ端末に送信するようにしたことを特徴とする請求項3記載の車両セキュリティ遠隔監視システム。
【請求項5】
異常の発生を送信する対象とするユーザ端末を前記各基地局が特定するために必要とされる識別情報を設定する識別情報設定手段を備え、前記通信手段は、前記識別情報設定手段に設定された識別情報に設定された識別情報に基いてユーザ端末に送信するように構成されていることを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3または請求項4のうち何れか一項に記載の車両セキュリティ遠隔監視システム。
【請求項6】
現在時刻を検知する計時手段を備え、異常判定手段によって判定された異常と共に異常の発生時刻をユーザ端末に送信するようにしたことを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5のうち何れか一項に記載の車両セキュリティ遠隔監視システム。
【請求項7】
少なくとも車両に近接する前記基地局と通信手段がモバイルWiMAX規格に準拠して構成されていることを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5または請求項6のうち何れか一項に記載の車両セキュリティ遠隔監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−161093(P2009−161093A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2062(P2008−2062)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】