説明

車両制御装置

【課題】制御上の不都合を招くことない車両制御装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係わる車両制御装置1は、通信規格を介して接続される複数の電子制御装置2、3と、複数の電子制御装置2、3に電源を遮断可能に供給する遮断供給手段5と、複数の電子制御装置2、3の内一の電子制御装置2に電源を投入する電源投入手段4とを備えるとともに、一の電子制御装置2に電源投入手段4により電源が投入された場合に、一の電子制御装置2の制御に基づいて遮断供給手段5が複数の電子制御装置2、3に電源を供給し、一の電子制御装置2への電源投入手段4による電源の投入が終了された場合に、一の電子制御装置2が他の電子制御装置3に終了処理開始通知を送信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス等の車両に適用して好適な車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両においては、車両における様々な制御を実現するための車載機器を、それぞれの車載機器に対応する電子制御装置すなわちECU(Electronic Control Unit)が制御している。このような複数のECUは、CAN(Controller Area Network)等の通信規格を介して相互に接続されて車両制御装置が構成されており、各ECUは制御に関する情報を含むデータを学習値として内蔵されたEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)に書き込む書込処理を行っている。
【0003】
このような車両制御装置においては、例えば特許文献1に記載のようにそれぞれのECUにバッテリから電源が供給されており、バッテリとそれぞれのECUとの間には、イグニッションスイッチがオンとされた後にオフとされるまでの期間においては、一のECUの制御に基づいてオンを継続する自己保持作用を備えるリレーが挿入されて、イグニッションスイッチがオフとなりかつそれぞれのECUの書込処理が終了した場合にのみ、一のECUの制御に基づいてリレーをオフとすることが行われる。
【特許文献1】特開平11−259375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような車両制御装置においては、一のECU以外のECUが自身の書込処理が終了したとして、リレーのオフを許可する許可通知を一のECUに送信して、その許可通知を受信した後に一のECUがリレーをオフする終了処理を行っても、通信遅延時間が存在することに起因して、再度書込処理を一のECU以外のECUが行っているタイミングにおいて、リレーのオフが一のECUの制御に基づいて行われてしまい、学習値の書込処理が不正に行われてしまい制御上の不都合を生じるという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、制御上の不都合を招くことない車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するため、本発明に係わる車両制御装置は、
通信規格を介して接続される複数の電子制御装置と、前記複数の電子制御装置に電源を遮断可能に供給する遮断供給手段と、前記複数の電子制御装置の内一の電子制御装置に電源を投入する電源投入手段とを備えるとともに、前記一の電子制御装置に前記電源投入手段により電源が投入された場合に、前記一の電子制御装置の制御に基づいて前記遮断供給手段が前記複数の電子制御装置に電源を供給し、前記一の電子制御装置への前記電源投入手段による電源の投入が終了された場合に、前記一の電子制御装置が他の電子制御装置に終了処理開始通知を送信することを特徴とする。
【0007】
ここで、前記通信規格とは、例えばCAN(Controller Area Network)等の通信規格を示し、前記電子制御装置とはECU(Electronic Control Unit)を示す。また、前記遮断供給手段とは前記一の電子制御装置が選択的に励磁して、励磁された場合に接点を閉じてバッテリから前記複数の電子制御装置に電源を供給するリレーを示す。さらに、前記電源投入手段とは例えばイグニッションスイッチ(IGSW)を示し、前記電源の投入とはイグニッションスイッチ(IGSW)のオンを、前記電源の投入の終了とはイグニッションスイッチ(IGSW)のオフを示す。
【0008】
これによれば、前記一の電子制御装置は、前記電源投入手段から電源の投入が終了された場合に、前記複数の電子制御装置の内前記一以外の他の電子制御装置に対して前記終了処理開始通知を送信するので、前記他の電子制御装置に前記電源投入手段から電源の投入が終了されたことを通知することができる。
【0009】
このような前提の元で、前記車両制御装置において、前記他の電子制御装置が前記終了処理開始通知を受信した後に書込処理を禁止する。このことにより、前記一の電子制御装置が、前記電源投入手段から電源の投入が終了された場合に、まず、前記他の電子制御装置に前記終了処理開始通知を送信して、前記遮断供給手段により前記他の電子制御装置に対して電源の供給を遮断する前段階において、前記他の電子制御装置による前記書込処理を禁止させることができる。
【0010】
これにより前記他の電子制御装置が前記書込処理を行っている最中に前記遮断供給手段により電源の供給の遮断が行われて、前記書込処理が不正に行われることを回避することができる。これにより、制御上の不都合が生じることをも防止することができる。
【0011】
さらに、前記車両制御装置において、前記他の電子制御装置が前記書込処理を禁止した後に前記一の電子制御装置に遮断許可通知を送信することが好ましい。
【0012】
これによれば、前記他の電子制御装置が前記書込処理を禁止した後に、前記一の電子制御装置の制御に基づく前記遮断供給手段による前記複数の電子制御装置への電源の供給の遮断を許可することができる。
【0013】
このような前提の元で、前記車両制御装置において、前記一の電子制御装置が遮断許可通知を受信した後に、前記一の電子制御装置の制御に基づいて前記遮断供給手段が前記複数の電子制御装置への電源の供給を遮断する。
【0014】
これにより前記他の電子制御装置が前記書込処理を禁止した後に、前記一の電子制御装置の制御に基づいて前記遮断供給手段により電源の供給の遮断を行うことをより確実に行うことができるので、前記他の電子制御装置が前記書込処理を行っている最中に電源の供給の遮断が行われて、前記書込処理が不正に行われることに起因して、制御上の不都合が生じることをもより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、制御上の不都合を招くことない車両制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明に係わる車両制御装置の一実施形態を示す模式図であり、図2は、本発明に係わる車両制御装置の制御内容を示すフローチャートである。
【0018】
図1に示すように、本実施例の車両制御装置1は、EFIECU2(Electronic Fuel Injection Electronic Control Unit)と、ECTECU3(Electronic Controlled Transmission Electronic Control Unit)とイグニッションスイッチ4(IGSW)と、リレー5とを備えて構成される。
【0019】
EFIECU2とECTECU3は複数の電子制御装置を構成し、CANを介して相互に接続される。リレー5は、バッテリBとEFIECU2との間に介装されて複数の電子制御装置に電源を遮断可能に供給する遮断供給手段を構成する。イグニッションスイッチ4は、複数の電子制御装置の内一の電子制御装置ここではEFIECU2に電源を投入する電源投入手段を構成する。
【0020】
EFIECU2は、例えばCPU、ROM、RAM、EEPROM及びそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、フラッシュメモリに格納されたプログラムに従い、図示しないエンジンのスロットル開度や燃料噴射量等を制御するとともに、燃料噴射補正係数、インジェクタ特性、ソレノイド特性などの制御に関する情報を学習値としてEEPROMに書き込む書込処理を行い、以下に述べるようにリレー5を制御し、CANを介してECTECU3と相互に通信を行うものである。
【0021】
ECTECU3は、例えばCPU、ROM、RAM、EEPROM及びそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、フラッシュメモリに格納されたプログラムに従い、ここでは図示しないAT(Automatic Transmission)を制御し、ATの制御に関する情報を学習値としてEEPROMに書き込む書込処理を行い、CANを介してEFIECU2と相互に通信を行うものである。
【0022】
リレー5は、EFIECU2にイグニッションスイッチ4のオンにより電源が投入された場合に、EFIECU2の制御に基づいてコイルが励磁されて接点をオンとしてEFIECU2及びECTECU3に電源を供給し、EFIECU2にイグニッションスイッチ4のオフにより電源の投入が終了された場合に、EFIECU2が他の電子制御装置であるECTECU3に終了処理開始通知を、CANを介して送信する。
【0023】
これに伴い、ECTECU3は、EFIECU2からCANを介して送信された終了処理開始通知を受信した後に書込処理を禁止し、ECTECU3は、書込処理を禁止した後にEFIECU2にCANを介して遮断許可通知を送信する。さらに、EFIECU2がECTECU3の送信した遮断許可通知を、CANを介して受信した後に、EFIECU2はリレー5のコイルの励磁を停止して、これに伴い、EFIECU2の制御に基づいてリレー5が接点を開いてEFIECU2及びECTECU3への電源の供給を遮断する。
【0024】
以下に以上述べたEFIECU2及びECTECU3の制御内容を、図2に示すフローチャートを用いて説明する。
【0025】
図2に示すように、S1において、EFIECU2はイグニッションスイッチ4のオン又はオフを検出し、S2において、EFIECU2はイグニッションスイッチ4がオンであるかを判定する。S2において、肯定である場合には、S3にすすみ、否定である場合にはS1にもどる。
【0026】
S3において、EFIECU2はリレー5のコイルを励磁して、これに伴いリレー5の接点は閉とされて、図1に示したバッテリBからEFIECU2及びECTECU3の双方に電源が供給され、EFIECU2のコイルが励磁されている間は電源の供給が保持される。
【0027】
S4において、EFIECU2は再度イグニッションスイッチ4のオン又はオフを検出し、S5において、EFIECU2はイグニッションスイッチ4がオフであるかを判定する。S5において、肯定である場合には、S6にすすみ、否定である場合にはS4にもどる。
【0028】
S6においては、EFIECU2に対してイグニッションスイッチ4による電源の投入が終了された場合であるので、EFIECU2は、ECTECU3に終了処理開始通知を、CANを介して送信する。
【0029】
つづいて、S7において、ECTECU3は、EFIECU2からCANを介して送信された終了処理開始通知を受信して、その後S8にすすみ、学習値の書込処理を禁止する。この書込処理の禁止が終了した後すなわちS9において、ECTECU3は、EFIECU2にCANを介して遮断許可通知を送信する。
【0030】
さらにS10において、EFIECU2がECTECU3の送信した遮断許可通知を、CANを介して受信する。この後S11において、EFIECU2はリレー5のコイルの励磁を停止する。これにより、EFIECU2の制御に基づいてリレー5が接点を開いてEFIECU2及びECTECU3への電源の供給を遮断する。
【0031】
これらの制御内容により実現される本実施例の車両制御装置1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。つまり、一の電子制御装置を構成するEFIECU2は、イグニッションスイッチ4がオフされて電源の投入が終了された場合に、複数の電子制御装置の内EFIECU2以外の他の電子制御装置つまりはECTECU3に対して終了処理開始通知を送信するので、ECTECU3にイグニッションスイッチ4がオフされて電源の投入が終了されたことを予め通知することができる。
【0032】
このようにEFIECU2がECTECU3に予め終了処理通知を通知することにより、ECTECU3は終了処理開始通知を受信に基づいて、自身の書込処理を禁止することができる。このことにより、EFIECU2が、イグニッションスイッチ4のオフに伴って電源の投入が終了された場合に、まず、ECUECU3に終了処理開始通知を送信しておいて、EFIECU2の励磁停止制御に基づいてリレー5によりECTECU3に対して電源の供給を遮断する前段階において、ECTECU3による書込処理を禁止させることができる。
【0033】
これによりECTECU3が書込処理を行っている最中に、リレー5により電源の供給の遮断が行われて、書込処理が不正に行われてしまうことを回避することができる。これにより、不正に書込処理が行われた学習値に基づいて制御が行われて、制御上の不都合が生じることをも防止することができる。
【0034】
さらに、本実施例の車両制御装置1において、ECTECU3が書込処理を禁止した後にEFIECU2に遮断許可通知を送信することにより、ECTECU3が書込処理を禁止した後に、ECTECU2の励磁停止制御に基づいて、リレー5による複数の電子制御装置への電源の供給の遮断を許可することができる。
【0035】
これらのことにより、本実施例の車両制御装置1において、EFIECU2がECTECU3から遮断許可通知を受信した後に、EFIECU2の励磁停止制御に基づいてリレー5がEFIECU2及びECTECU3の双方への電源の供給を遮断することを実現することができる。
【0036】
これにより、ECTECU3が書込処理を禁止した後に、EFIECU2の制御に基づいてリレー5により電源の供給の遮断を行うことをより確実なものとすることができるので、ECTECU3が書込処理を行っている最中に電源の供給の遮断が行われて、書込処理が不正に行われることに起因して、制御上の不都合が生じることをより確実に防止することができる。
【0037】
また、本実施例の車両制御装置1によれば、電源の供給及び遮断を行うリレー5を一つとすることができるので、リレー5の数の増加に伴って、車両搭載上あるいはコスト上の制約が増大することをも防止することができる。
【0038】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の電子制御装置によれば、制御上の不都合を招くことない車両制御装置を提供することができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係わる車両制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係わる車両制御装置の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1 車両制御装置
2 EFIECU
3 ECTECU
4 イグニッションスイッチ
5 リレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信規格を介して接続される複数の電子制御装置と、前記複数の電子制御装置に電源を遮断可能に供給する遮断供給手段と、前記複数の電子制御装置の内一の電子制御装置に電源を投入する電源投入手段とを備えるとともに、前記一の電子制御装置に前記電源投入手段により電源が投入された場合に、前記一の電子制御装置の制御に基づいて前記遮断供給手段が前記複数の電子制御装置に電源を供給し、前記一の電子制御装置への前記電源投入手段による電源の投入が終了された場合に、前記一の電子制御装置が他の電子制御装置に終了処理開始通知を送信することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記他の電子制御装置が前記終了処理開始通知を受信した後に書込処理を禁止することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記他の電子制御装置が前記書込処理を禁止した後に前記一の電子制御装置に遮断許可通知を送信することを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記一の電子制御装置が遮断許可通知を受信した後に、前記一の電子制御装置の制御に基づいて前記遮断供給手段が前記複数の電子制御装置への電源の供給を遮断することを特徴とする請求項3に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−47119(P2010−47119A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213203(P2008−213203)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】