説明

車両制御装置

【課題】制御可能なスタビライザを備えた車両における消費エネルギーを低減することができる車両制御装置を提供すること。
【解決手段】車両1のサスペンション4の減衰力を変化させる減衰力可変機構20、あるいはサスペンションの弾性力を変化させる弾性力可変機構の少なくともいずれか一方と、車両に生じるロール方向の振動を抑制するアンチロールモーメントを可変制御する制御量可変スタビライザ10と、を備え、操舵状態と車両に生じる振動に応じて制御量可変スタビライザの制御量を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制御可能なスタビライザを備えた車両が公知である。特許文献1には、ロール量の変化率が大きいときにはロール量の変化率が小さいときに比して減衰力発生手段の減衰特性を高減衰側へ制御すると共にスタビライザ装置の戻り剛性を低くする車輌のロール制御装置の技術が開示されている。特許文献1の技術によれば、消費されるエネルギーを低減することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−256368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制御可能なスタビライザを備えた車両における消費エネルギーを低減することについて更なる改善が求められている。例えば、スタビライザを含む複数の制御デバイスの制御量を適切に配分することについてなお検討の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、制御可能なスタビライザを備えた車両における消費エネルギーを低減することができる車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両制御装置は、車両のサスペンションの減衰力を変化させる減衰力可変機構、あるいは前記サスペンションの弾性力を変化させる弾性力可変機構の少なくともいずれか一方と、前記車両に生じるロール方向の振動を抑制するアンチロールモーメントを可変制御する制御量可変スタビライザと、を備え、操舵状態と前記車両に生じる振動に応じて前記制御量可変スタビライザの制御量を設定することを特徴とする。
【0007】
上記車両制御装置において、前記減衰力可変機構および前記弾性力可変機構のうち少なくとも前記減衰力可変機構を備え、非操舵時、前記制御量可変スタビライザによる前記車両に生じる振動の減衰を前記減衰力可変機構による前記車両に生じる振動の減衰に対して優先することが好ましい。
【0008】
上記車両制御装置において、前記車両に生じる振動を減衰させる減衰量の目標値が前記制御量可変スタビライザによって減衰できる減衰量の上限値を超える場合、前記制御量可変スタビライザによる前記車両に生じる振動の減衰を前記減衰力可変機構によってアシストすることが好ましい。
【0009】
上記車両制御装置において、前記減衰力可変機構および前記弾性力可変機構のうち少なくとも前記弾性力可変機構を備え、操舵時および定常旋回時に前記弾性力可変機構によって前記車両に生じる振動を抑制することが好ましい。
【0010】
上記車両制御装置において、前記弾性力可変機構による前記車両に生じる振動の抑制を前記制御量可変スタビライザによってアシストすることが好ましい。
【0011】
上記車両制御装置において、操舵状態の変動に対応する前記車両に生じる振動を前記制御量可変スタビライザによって抑制することが好ましい。
【0012】
上記車両制御装置において、前記車両に生じる振動は、前記車両のロール方向の振動であることが好ましい。
【0013】
上記車両制御装置において、前記減衰力可変機構は、減衰力可変式のショックアブソーバであり、前記弾性力可変機構は、エアばねであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる車両制御装置は、車両のサスペンションの減衰力を変化させる減衰力可変機構、あるいはサスペンションの弾性力を変化させる弾性力可変機構の少なくともいずれか一方と、車両に生じるロール方向の振動を抑制するアンチロールモーメントを可変制御する制御量可変スタビライザと、を備え、操舵状態と車両に生じる振動に応じて制御量可変スタビライザの制御量を設定する。本発明に係る車両制御装置によれば、制御量可変スタビライザの制御量を操舵状態と車両に生じる振動に応じた適切なものとすることができ、車両の消費エネルギーを低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施形態に係る車両の概略構成図である。
【図2】図2は、実施形態に係る制御系の設計モデルを示す図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る車両制御装置による制御の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、非線形重みの一例を示す図である。
【図5】図5は、第1実施形態の変形例に係る制御の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、評価出力の周波数重みの一例を示す図である。
【図7】図7は、制御入力の周波数重みの一例を示す図である。
【図8】図8は、主としてショックアブソーバで減衰制御を行った場合のばね上振動を示す図である。
【図9】図9は、主としてアクティブスタビライザで減衰制御を行った場合のばね上振動を示す図である。
【図10】図10は、第2実施形態に係る車両の概略構成を示す図である。
【図11】図11は、第2実施形態のアクティブスタビライザの平面図である。
【図12】図12は、第2実施形態のアクティブスタビライザの断面図である。
【図13】図13は、アクティブスタビライザの制御フローを示す図である。
【図14】図14は、横Gとアーム比との関係の一例を示す図である。
【図15】図15は、協調制御の制御フローを示す図である。
【図16】図16は、減衰制御における背反の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態にかかる車両制御装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
(第1実施形態)
図1から図4を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、車両制御装置に関する。図1は、実施形態に係る車両の概略構成図、図2は、実施形態に係る制御系の設計モデルを示す図、図3は、実施形態に係る車両制御装置による制御の構成を示すブロック図である。
【0018】
本実施形態の車両制御装置は、アクティブスタビライザ(図2の符号10参照)とショックアブソーバ(図2の符号20参照)とを協調させることにより、乗り心地と燃費との両立を図る。アクティブスタビライザ10は、電力回生が可能なものであり、入力される車両の振動を電力に変換する回生発電によって当該振動を減衰することができるものである。本実施形態では、電力回生を最大化させる制御ロジックが開示される。
【0019】
具体的には、以下のように制御系が設計されている。
(1)非操舵時にアクティブスタビライザ10は電力を消費してロール剛性を変更させる制御は行わず、車両に発生する振動を減衰する減衰力のみを発生する。これにより、電力を消費せず回生のみを実行することができる。
(2)単純な減衰力だけでは、背反が生じるため、減衰力制御の設計理論を適用し、性能をできるだけ維持する。
(3)回生量を最大化するため、ショックアブソーバ20による減衰力の分担を最小化し、アクティブスタビライザ10の分担を最大化する(制御系設計の重み設定による)。
【0020】
本実施形態は、以下の構成を備えた車両を前提としている。
(1)サスペンションのストローク量、ストローク速度を計測または推定する手段(例えば、ストロークセンサ)。
(2)ストローク量、ストローク速度から目標ロールモーメント、目標減衰力を演算する手段(例えば、ECU)。
(3)目標ロールモーメントになるようにモータにより発生した力をサスペンションに伝える手段(アクティブスタビライザ:電力回生)。
(4)目標減衰力になるように減衰力を変えられる手段(ショックアブソーバ:バウンス、ピッチ方向などロール以外を制御)。
【0021】
図1に示すように、車両1は、車体2、車輪3、アクティブスタビライザ10、ショックアブソーバ20およびECU30を備えている。アクティブスタビライザ10は、車両1の前輪および後輪にそれぞれ配置されている。また、ショックアブソーバ20は、車両の各輪に配置されている。車両1は、エンジンあるいは電動機等の動力源を備えており、動力源から出力される動力によって車輪3を回転させて走行することができる。本実施形態の車両制御装置1−1は、アクティブスタビライザ10、ショックアブソーバ20およびECU30を有する。
【0022】
アクティブスタビライザ10は、車両1のロール(ロール方向の振動)を抑制するアンチロールモーメントを可変制御できる制御量可変スタビライザとしての機能を有する。また、ショックアブソーバ20は、車体2を支持しており、車輪3と車体2との相対運動を減衰させる減衰装置である。
【0023】
図2には、背面(後方)から見た車両1のモデルが示されている。図2に示すように、サスペンション4は、ショックアブソーバ20およびスプリング21を有する。サスペンション4は、車両1の各車輪3に配置されており、車輪3と車体2とを接続している。サスペンション4は、車両1のばね上部材とばね下部材とを上下方向において接続するものである。ばね上部材とは、サスペンション4によって支持される部材であり、車体2を含む。また、ばね下部材とは、サスペンション4よりも車輪3側に配置された部材であり、車輪3に連結されたナックルや、ナックルに連結されたロアアーム等を含むものである。
【0024】
ショックアブソーバ20は、車体2と車輪3との相対運動を減衰させる減衰力を発生させる。ショックアブソーバ20は、減衰係数C、すなわち発生させる減衰力を可変に制御可能な減衰力可変ショックアブソーバであり、AVS(Adaptive Variable Suspension System)としての機能を有する。つまり、ショックアブソーバ20は、サスペンション4の減衰力を変化させる減衰力可変機構としての機能を有する。ここで、車体2と車輪3との相対運動とは、車体2と車輪3とがサスペンション4のストローク方向(本実施形態では車両1の上下方向)において接近あるいは離間する方向の相対運動である。ショックアブソーバ20は、この相対運動における車体2と車輪3との相対速度に応じた減衰力を発生させることで相対運動を減衰させる。
【0025】
ショックアブソーバ20の減衰係数Cavsは、線形減衰係数Csと、非線形減衰係数Cvとを含む。線形減衰係数Csは、車体2と車輪3との相対速度と減衰力とが線形に対応する減衰係数である。非線形減衰係数Cvは、可変に制御される減衰係数であって、車体2と車輪3との相対速度に対して減衰力を非線形に変化させるものである。つまり、線形減衰係数Csに応じた減衰力に対して非線形減衰係数Cvに応じた減衰力が加算されることで、車体2と車輪3との相対速度に対してショックアブソーバ20が発生させる減衰力が増減する。
【0026】
ショックアブソーバ20は、車輪3側に接続され、作動流体が封入されたシリンダー20aと、車体2側に接続され、シリンダー20a内を往復動するピストン部20bを有するピストンロッド20cとを有する。減衰係数Cavsを可変に制御する手段は、例えば、ピストン部20bのロータリーバルブを回転させることでピストン上室と下室とを連通する油路の流路面積を制御するアクチュエータとすることができる。本実施形態のショックアブソーバ20は、段数指令に応じてアクチュエータによって流路面積が段階的に変化させられることで、互いに異なる複数の減衰係数(減衰力)を選択的に実現することができる。なお、減衰係数Cavsを可変とする機構は、これには限定されず、他の公知の機構が用いられてもよい。ショックアブソーバ20は、ECU30によって制御される。
【0027】
スプリング21は、ショックアブソーバ20と並列に設けられている。スプリング21は、ばね上部材とばね下部材とを接続し、車体2と車輪3との相対変位に応じた弾性力(ばね力)を発生させる。車体2と車輪3との相対変位とは、車体2と車輪3とがサスペンション4のストローク方向において接近あるいは離間する方向の相対変位である。
【0028】
スプリング21のばね定数Kは、線形ばね定数である。すなわち、スプリング21のばね定数Kは、車体2と車輪3との相対変位とばね力とが線形に対応するものである。
【0029】
アクティブスタビライザ10は、スタビライザバー部材11,12およびアクチュエータ13を有する。スタビライザバー部材11は、アクチュエータ13と車両1の左側の車輪(以下、単に「左車輪」とも記載する。)3Lとを接続する。一方、スタビライザバー部材12は、アクチュエータ13と車両1の右側の車輪(以下、単に「右車輪」とも記載する。)3Rとを接続する。スタビライザバー部材11,12は、アクチュエータ13から対応する車輪3に向けて車幅方向に延在しており、車輪3側の端部が車両1の前後方向に向けて折り曲げられている。折り曲げられたスタビライザバー部材11,12の先端部は、車輪3を保持する部材、例えばロアアームに接続されている。スタビライザバー部材11,12は、マウント14を介して車体2に取付けられている。
【0030】
アクチュエータ13は、左車輪3L側のスタビライザバー部材11と右車輪3R側のスタビライザバー部材12との相対的なねじれ量を制御する。アクチュエータ13は、固定子および回転子を有するモータを備えている。スタビライザバー部材11,12の一方がモータの固定子側に、他方がモータの回転子側に接続されている。従って、モータの回転量を制御することによって、スタビライザバー部材11とスタビライザバー部材12との相対回転量を制御することができる。
【0031】
車両1のロールによってスタビライザバー部材11,12に捻り力が作用するときに、アクチュエータ13によってこの捻り力による捻り方向と反対方向にスタビライザバー部材11,12を相対回転させることによって、ロールモーメントに対抗するアンチロールモーメントを発生させることができる。モータ力によってアクチュエータ13の回転量を変化させることで左右のスタビライザバー部材11,12の相対回転量を変化させれば、ロール抑制力としてのアンチロールモーメントが変化し、車体2のロールをアクティブに抑制することが可能となる。
【0032】
なお、アクチュエータ13の回転量とは、車両1が平坦路に制止している状態を基準状態とする。その基準状態でのアクチュエータ13の回転位置を中立位置とした場合の中立位置からの回転量、すなわち動作量がアクチュエータ13の回転量である。従って、アクチュエータ13の回転量が大きくなるほど、アクチュエータ13の回転位置が中立位置から離れ、スタビライザバー部材11,12の捻り反力、言い換えるとロール抑制力も大きくなる。このように、アクティブスタビライザ10は、左右のスタビライザバー部材11,12間の捻り角を可変に制御可能な可変捻り角スタビライザである。アクティブスタビライザ10は、蓄電装置としてのバッテリと接続されており、バッテリから供給される電力によってアンチロールモーメントを発生させることができる。アクティブスタビライザ10は、電力を消費することでロールを含む車両1の振動を抑制する力を能動的に発生させることができる。また、アクティブスタビライザ10は、振動を抑制する力を能動的に発生させるときの制御量、すなわち出力トルクや回転角度、回転角速度等を可変に制御可能である。
【0033】
また、アクティブスタビライザ10は、アクチュエータ13のモータを発電機として機能させて減衰力制御を行うことができる。アクティブスタビライザ10による減衰力制御では、車両1に発生するロール等の振動の入力に対してアクティブスタビライザ10のパッシブ制御を行う。振動の入力によってスタビライザバー部材11,12が相対回転すると、アクチュエータ13のモータにおいて回転子と固定子とが相対回転する。これにより、モータにおいて発電を行わせることができる。モータの発電により、スタビライザバー部材11,12に対して、振動の入力による相対回転の方向と反対となる回転方向の反力が作用する。
【0034】
この反力の大きさは、回転子と固定子との相対回転によって単位時間に磁界を切る量、すなわちスタビライザバー部材11,12の相対回転速度に比例する。つまり、モータの発電によって発生する反力は、車両1のロールを減衰する減衰力として働く。言い換えると、アクティブスタビライザ10は、入力される車両1のロール等の振動を電力に変換する回生発電を行うことができ、この回生発電によって車両1の振動を減衰することができる。アクティブスタビライザ10は、車両1の振動を受動的に減衰するときの制御量、すなわち減衰係数(発電負荷)を可変に制御可能である。
【0035】
アクティブスタビライザ10のアクチュエータ13は、ECU30と接続されており、ECU30はアクチュエータ13の制御量を調節する。ECU30は、アクティブスタビライザ10によってアンチロールモーメントを発生させるときのアクチュエータ13の制御量、すなわち電力を消費して能動的にスタビライザバー部材11,12を相対回転させるときのアクチュエータ13の回転量や回転速度等を制御することができる。
【0036】
また、ECU30は、アクティブスタビライザ10による減衰力制御を行うときのアクチュエータ13の制御量、すなわち、モータに発電を行わせるときに発電する電力を制御することができる。モータが発電する電力を増減させることにより、車両1の振動を減衰する減衰力を増減させることができる。アクチュエータ13に発電を行わせるときのアクティブスタビライザ10の減衰係数Castbは、線形減衰係数Cφsと、非線形減衰係数Cφvとを含む。非線形減衰係数Cφvは、アクチュエータ13が発電する電力に応じて変化するものである。
【0037】
ECU30には、各サスペンション4のストローク量を検出するストロークセンサが接続されている。ECU30は、ストロークセンサの検出結果に基づいて、各サスペンション4のストローク量およびストローク速度を取得することができる。言い換えると、ECU30は、ストロークセンサの検出結果に基づいて、車両1のばね上部材とばね下部材とのストローク方向の相対変位や相対速度を取得することができる。
【0038】
また、ECU30には、アクティブスタビライザ10のアクチュエータ13の回転量を検出する回転量センサが接続されている。ECU30は、回転量センサの検出結果に基づいてアクチュエータ13の回転量および回転速度を取得することができる。また、ECU30には、操舵角を検出する操舵角センサが接続されている。操舵角は、操舵ハンドルの中立位置に対する回転角度である。操舵角センサは、例えば、ステアリングシャフトに設けられている。ECU30は、操舵角センサの検出結果に基づいて、操舵角や操舵速度を取得することができる。
【0039】
ECU30は、各サスペンション4のストローク量およびストローク速度に基づいて、目標ロールモーメントおよび目標減衰力を演算する。目標ロールモーメントは、車両1のロールを抑制するために発生させるモーメントの目標値である。また、目標減衰力は、ロールを含む車両1の振動を減衰させる減衰力の目標値である。ECU30は、算出した目標ロールモーメントおよび目標減衰力に応じてアクティブスタビライザ10およびショックアブソーバ20をそれぞれ制御する。ECU30は、例えば、目標ロールモーメントを発生させるようにアクティブスタビライザ10を制御し、目標減衰力を発生させるようにショックアブソーバ20を制御することができる。
【0040】
また、ECU30は、操舵状態と車両1に生じる振動に応じてアクティブスタビライザ10の制御量を設定する。例えば、本実施形態のECU30は、操舵状態に応じてアクティブスタビライザ10によるアクティブ制御とパッシブ制御とを切替える。ここで、操舵状態とは、操舵角や操舵速度等の操舵量とすることができる。また、操舵状態は、操舵量に応じて変化する物理量、例えば車両1に発生する横Gやヨーレート等を含むことができる。例えば、ECU30は、予め定められた横Gの閾値に基づいて、アクティブスタビライザ10にアクティブ制御を行わせるか、パッシブ制御を行わせるかを切替えるようにしてもよい。一例として、ECU30は、車両1の横Gが閾値未満である(操舵量が小さい)場合にアクティブスタビライザ10にパッシブ制御を行わせて回生発電による振動の減衰を行わせ、横Gが閾値以上である場合にアクティブスタビライザ10にアクティブ制御を行わせて電力を消費してアンチロールモーメントを発生させるようにアクティブスタビライザ10の制御量を設定することができる。
【0041】
なお、アクティブ制御あるいはパッシブ制御のいずれを実行するかは、操舵時と非操舵時とで切替えるようにしてもよい。例えば、操舵時にはアクティブ制御が選択され、非操舵時にはパッシブ制御が選択される。操舵時は、例えば、所定値以上の操舵トルクが発生しているときとしてもよく、操舵角が所定値以上であるときとしてもよい。また、非操舵時は、例えば、操舵トルクが所定値未満のときとしてもよく、操舵角が所定値未満であるときとしてもよい。
【0042】
ここで、車両1の減衰制御を行う場合、単純な減衰係数増(または減)としてしまうと、以下に図16を参照して説明するように、低周波性能と高周波性能とに背反が生じてしまう。図16は、減衰制御における背反の説明図である。図16において、横軸は周波数、縦軸は減衰能力を示す。符号A1,A2およびA3は、それぞれアクティブスタビライザ10やショックアブソーバ20の減衰係数を周波数によらず一定とした場合の減衰能力を示す曲線である。A2は、A1に対して単純に減衰係数を減少させた場合の減衰能力を示し、A3は、A1に対して単純に減衰係数を増加させた場合の減衰能力を示す。
【0043】
図16に示すように、A1からA3に単純に減衰係数を増加させた場合、高周波領域では減衰能力が向上するものの、低周波領域では減衰能力が低下してしまう。これとは逆に、A1からA2に減衰係数を減少させた場合、低周波領域では減衰能力が向上するものの、高周波領域では減衰能力が低下してしまう。このように、単純に減衰係数を増減させるだけでは、低周波領域における減衰能力と高周波領域における減衰能力とに背反が生じてしまう。入力される振動に応じた適切な減衰係数とすることで乗り心地を向上できることが望ましい。
【0044】
また、電力消費を抑制する観点からは、減衰制御においてアクティブスタビライザ10の電力回生による振動の減衰を優先して実行できることが望ましい。
【0045】
本実施形態では、ショックアブソーバ20を設計するときの枠組みに減衰力制御としてアクティブスタビライザ10の制御が追加されており、アクティブスタビライザ10による回生量をできるだけ大きくすることができるように制御系が設計されている。具体的には、車両1に生じる振動が小さく制御量が小さい領域では、主にアクティブスタビライザ10を減衰力発生装置として用いることで専ら回生を行うように制御系が設計される。つまり、非操舵時は、アクティブスタビライザ10による車両1に生じる振動の減衰がショックアブソーバ20による車両1に生じる振動の減衰に対して優先される。なお、非操舵時に限らず、操舵量が小さい場合、アクティブスタビライザ10の回生発電による振動の減衰がショックアブソーバ20による振動の減衰に対して優先されるようにしてもよい。
【0046】
なお、このようにアクティブスタビライザ10の回生発電による振動の減衰を優先する場面は、アクティブスタビライザ10が振動を抑制する力を能動的に発生させない場合、すなわちアクチュエータ13がアンチロールモーメントを能動的に発生させない場合である。
【0047】
また、アクティブスタビライザ10の回生発電による振動の減衰をショックアブソーバ20による振動の減衰に対して優先する場面とは、車両1に発生する振動が小さい場合である。車両1の振動が大きい場合、車両1に生じる振動を減衰させる減衰量の目標値が回生発電によって減衰できる減衰量の上限を超えることがある。このようにアクティブスタビライザ10による減衰能力を超えて制御量が大きくなる領域では、ショックアブソーバ20で制御量を補い、アクティブスタビライザ10による車両1に生じる振動の減衰をショックアブソーバ20によってアシストするように制御系が設計される。つまり、車両1の振動が大きい場合、振動が小さい場合よりも、回生発電による振動の減衰をショックアブソーバ20による振動の減衰に対して優先する度合いが低下する。また、後述する図3に示す一般化プラントにおいて、外生入力wから評価出力zまでの閉ループ伝達関数の評価値を小さくするようコントローラKが設計される。これにより、高周波領域と低周波領域との背反を抑制しつつ適切な減衰係数や減衰手段を選択することが可能となっている。
【0048】
このように、本実施形態の車両制御装置1−1は、乗り心地性能をできるだけ維持しつつ、極力エネルギーを回生するように減衰制御の設計がなされている。図3を参照して、本実施形態の制御系の設計について説明する。本実施形態では、車両1の制御系を一般化プラントGとし、非線形H∞制御理論を適用して設計を行う。
【0049】
図3に示すように、車両1には、外生入力wとして路面外乱が入力される。また、車両1には、制御入力uとしてショックアブソーバ20の減衰係数Cavsおよびアクティブスタビライザ10の減衰係数Castbが入力される。一般化プラントGの評価出力zは、車両状態に基づくものと、制御入力に基づくものとを含む。本実施形態では、各評価出力zは、周波数重みWo,Wavs,Wastbに加えて非線形重みa1,a2が乗算されて出力される。例えば、車両状態に基づく評価出力は、車両状態に対して周波数重みWoおよび非線形重みa1が乗算されたものである。また、ショックアブソーバ20の制御入力(Wavs)に基づく評価出力は、周波数重みWavsおよび非線形重みa2が乗算されて出力される。アクティブスタビライザ10の制御入力(Wastb)に基づく評価出力は、周波数重みWastbおよび非線形重みa2が乗算されて出力される。
【0050】
ストロークセンサの検出結果等のセンサ出力、あるいは車両1の状態量は、コントローラKに入力される。コントローラKは、ショックアブソーバ20用コントローラKavsおよびアクティブスタビライザ10用コントローラKastbを有する。コントローラKは、入力されたセンサ出力あるいは状態量に基づいてショックアブソーバ20およびアクティブスタビライザ10の減衰係数Cavs,Castbをそれぞれ生成・出力する。
【0051】
ここで、図2から、車両1に関する運動方程式は、下記式(1)、(2)で表される。
Mzg''=Fr+Fl …(1)
φφ''=−(T/2)Fr+(T/2)Fl …(2)
なお、FrおよびFlは、それぞれ右車輪3Rのサスペンション4および左車輪3Lのサスペンション4からばね上部材に作用する上下方向の力であり、上向きを正とする。zgは、ばね上変位を示す。ばね上変位zgは上向きを正とする。また、M;ばね上質量[kg]、Iφ;ばね上ロール慣性モーメント[kg m2]、φ;ばね上のロール方向の回転角度、T;トレッド[m]である。ロール方向の回転角度φは、右車輪3のサスペンション4が収縮して左車輪3Lのサスペンション4が伸張する回転方向を正とする。また、数式等における記号「'」は1階微分を表し、記号「''」は2階微分を表す。
【0052】
右車輪3Rのサスペンション4からばね上部材に作用する力Frは、下記式(3)で表される。
r=K(zwr−zbr)+(Cs+Cvr)(zwr'−zbr')
+(Cφs+Cφv){(zwr'−zbr')−(zwl'−zbl')}…(3)
ここで、Kはスプリング21のばね定数[N/m]である。また、zwr、zbrは、それぞれ右車輪3R側のばね下変位およびばね上変位、zwl、zblは、それぞれ左車輪3L側のばね下変位およびばね上変位を示す。各変位は上向きを正とする。Cvrは、右車輪3Rのサスペンション4(ショックアブソーバ20R)の非線形減衰係数である。
【0053】
左車輪3Lのサスペンション4から作用する力Flは、下記式(4)で表される。
l=K(zwl−zbl)+(Cs+Cvl)(zwl'−zbl')
+(Cφs+Cφv){(zwl'―zbl')−(zwr'−zbr')}…(4)
ここで、Cvrは、左車輪3Lのサスペンション4(ショックアブソーバ20L)の非線形減衰係数である。
【0054】
上記式(1)から式(4)に基づいて、図2に示す設計モデルを状態空間表現すると、下記式(5)、(6)および(7)で表すことができる。
x'=Ax+B1w+B2u …(5)
1=a1(x)C11x …(6)
2=a2(x)C12x+a2(x)D122u …(7)
【0055】
定理として、上記一般化プラントのD122-1が存在し、正の定数γが与えられている条件の下で、非線形重みa1(x)およびa2(x)がそれぞれ下記[数1]および[数2]で示すものである場合、閉ループシステムを内部安定にし、L2ゲイン(伝達関数のH∞ノルム)をγ以下とする制御則u=k(x)の一つは、次の[数3]で与えられる。
【0056】
【数1】


【数2】


【数3】


ただし、Pは下記[数4]を満たす正定対称解、m1(x)は任意の正定関数である。
【0057】
【数4】

【0058】
本実施形態では、以下に説明するように、減衰量が小さい領域ではアクティブスタビライザ10を用いてエネルギーを専ら回生し、減衰量が大きくなる領域では、回生による減衰で不足する減衰量をショックアブソーバ20で補うように制御系を設計する。
【0059】
まず、正定関数m1(x)として、下記[数5]で示す関数を選択する。
【数5】


ここで、K0は、下記[数6]で示される。
【数6】


また、qは要素が正のベクトルであり、アクティブスタビライザ10とショックアブソーバ20の制御量の非線形性を調整するパラメータである。diag(q)は、ベクトルqの要素を主対角成分とする正方行列である。
【0060】
上記の定理より、下記[数7]で示す制御則を得る。
【数7】

【0061】
本実施形態の一実施例について説明する。上記のK0は、非線形重みがないときの制御ゲインに相当する。すなわち、非線形重みがないときの制御入力uは下記式(8)で表される。
u=K0x …(8)
【0062】
ここで、制御入力uは、下記式(9)で表すことができる。
u=[Cφv,CvT …(9)
また、ベクトルqは、下記式(10)とする。
q=[qφv,0]T …(10)
本明細書では、ベクトルqの要素qφvを「調整パラメータ」と記載する。
【0063】
この場合、正定関数m1(x)は、下記式(11)となる。つまり、正定関数m1(x)は、アクティブスタビライザ10の非線形減衰係数Cφvの増加に対して指数関数的に値が増加する。
1=qφvφv2n …(11)
【0064】
従って、制御入力uに対する非線形重みa2は、図4に示すようになる。図4は、非線形重みa2の一例を示す図である。図4において、横軸はアクティブスタビライザ10の非線形減衰係数Cφv、縦軸は非線形重みa2を示す。領域1は、アクティブスタビライザ10の制御量が小さな領域である。図4は、xT11-T11-1x=1として、調整パラメータqφv=1e-6、n=4として描いたものである。なお、実際には状態量が変動しているため、時間応答を見ながら調整パラメータqφvをチューニングするようにすればよい。
【0065】
領域1では、非線形重みa2がほぼ1となる。つまり、領域1は、実質的に周波数重みだけで制御量uが決まる領域であり、非線形重みなしのときのフィードバックゲインK0で制御がなされる。例えば、アクティブスタビライザ10の周波数重みWastbを小さく、ショックアブソーバ20の周波数重みWavsを大きくとれば、ショックアブソーバ20の制御量を抑え、アクティブスタビライザ10の制御量を相対的に大きくすることができる。これにより、減衰量をほとんどアクティブスタビライザ10で制御することが可能となる。つまり、目標とする減衰量に対してアクティブスタビライザ10による減衰量の割合を高くすることができ、電力回生の最大化を図ることができる。
【0066】
一方、領域2は、非線形重みa2がほぼ0となる。つまり、領域2は、制御量自体のペナルティがない状態、すなわち制御量uに対する制約がほぼない状態である。つまり領域2は、制御量uが大きくなってもよい領域である。領域2では、アクティブスタビライザ10の非線形減衰係数Cφvだけでなく、ショックアブソーバ20の非線形減衰係数Cvも大きくなる。領域2では、アクティブスタビライザ10とショックアブソーバ20とが協調して減衰力を発生させることができる。
【0067】
本実施形態では、アクティブスタビライザ10で発生できる非線形減衰係数の限界値Cφvmaxが領域1と領域2との境界となるように調整パラメータqφvが定められている。このようにすれば、アクティブスタビライザ10が限界に達したときにショックアブソーバ20がアクティブスタビライザ10をカバーすることが可能となる。調整パラメータqφvは、例えば、限界値Cφvmaxと非線形重みa2の変曲点とが一致するように定められる。言い換えると、調整パラメータqφvは、限界値Cφvmaxにおいて非線形重みa2の減少速度が極大となるように定められる。ただし、これには限定されず、調整パラメータqφvは、アクティブスタビライザ10の非線形減衰係数Cφvが限界に達するときにショックアブソーバ20がこれをカバーして減衰力を発生できるように適宜定められる。
【0068】
ECU30は、このように設計された制御系のコントローラとして機能することができる。すなわち、ECU30は、制御系全体に要求される非線形減衰係数が、上記の限界値Cφvmaxを超えない範囲では、専らアクティブスタビライザ10の非線形減衰係数Cφvをコントロールすることによって減衰制御を行う。一方、制御系に要求される非線形減衰係数が限界値Cφvmaxを超える範囲では、アクティブスタビライザ10およびショックアブソーバ20を協調させて減衰制御を行う。例えば、アクティブスタビライザ10の非線形減衰係数Cφvで不足する分の減衰係数をショックアブソーバ20の非線形減衰係数Cvで補う。
【0069】
このように、本実施形態の車両制御装置1−1によれば、アクティブスタビライザ10による電力回生を優先させた減衰制御が実行される。電力回生により発電した電力をバッテリに充電したり、電気負荷に供給したりすることで、電力の消費を抑制することができる。また、ロールを抑制する際のショックアブソーバ20の制御量や減衰係数の変更頻度が低減することで、ショックアブソーバ20の制御によるエネルギーの損失を抑制することができる。
【0070】
本実施形態では、サスペンション4のスプリング21のばね定数は一定であったが、これに代えて、スプリング21はばね定数を可変に制御可能な可変ばねとされてもよい。つまり、サスペンション4は、減衰力可変機構および弾性力可変機構の両方を備えるものであってもよい。
【0071】
また、本実施形態では、制御系の設計に非線形H∞制御理論が適用されたが、これには限定されない。他の公知の制御理論が制御系の設計に用いられてもよい。また、制御に係る各係数や重み等は、本明細書に開示されたものに限定されるものではない。
【0072】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の変形例について説明する。上記第1実施形態では、制御系に非線形重みa1,a2を組み込むことで車両1の振動が小さい場合に振動が大きい場合よりもアクティブスタビライザ10の回生発電による減衰をショックアブソーバ20による減衰に対して優先させたが、これに代えて、周波数重みを切替えることでアクティブスタビライザ10による減衰の優先度合いを可変とするようにしてもよい。
【0073】
図5は、本変形例に係る制御の構成を示すブロック図である。図5に示すブロック図において、上記第1実施形態(図3)のブロック図と異なる点は、非線形重みa1,a2が省略されている点である。コントローラKとしてのECU30は、目標とする減衰量に応じて周波数重みを変化させる。
【0074】
外生入力wは、例えば、下記式(12)で表される。
w=[zwr,zwlT …(12)
また、評価出力zは、例えば、下記式(13)で表される。
z=[zg'',φ'',Cvr,Cvl,CφvT …(13)
例えば、外生入力wから評価出力zまでのH∞ノルムを1未満とするフィードバックゲインの設計がなされる。
【0075】
図6は、評価出力の周波数重みWoの一例を示す図である。図6には、バウンス(zg)やロール(φ)に対する周波数重みWoのゲインが示されている。図6において、横軸は周波数、縦軸は周波数重みのゲインを示す。ロールに対するゲインgain_rollや、バウンスに対するゲインgain_heaveは、例えば、1次遅れの伝達関数として表現される。すなわち、ロールの周波数freq_rollやバウンスの周波数freq_heave以下の周波数域ではゲインが一定とされ、これらの周波数freq_roll,freq_heaveを超える周波数域では、周波数の増加に応じてゲインが減少するように定められる。評価出力の周波数重みWoは、例えば、制御量uにかかわらず変化しないものとされる。
【0076】
バウンスの場合、例えば、周波数freq_heave=7に対してゲインgain_heave=4×1e-5とすることができる。また、ロールの場合、例えば、周波数freq_roll=7に対してゲインgain_roll=3とすることができる。
【0077】
図7は、制御入力の周波数重みの一例を示す図である。図7には、ショックアブソーバ20の非線形減衰係数Cvr,Cvlに対する周波数重みWavsのゲインgain_cvr,gain_cvlや、アクティブスタビライザ10の非線形減衰係数Cφvに対する周波数重みWastbのゲインgain_cphiが示されている。制御入力の周波数重みのゲインは、例えば、周波数によらない定数とすることができる。ショックアブソーバ20の非線形減衰係数Cvr,Cvlに対する周波数重みWavsのゲインgain_cvr,gain_cvl、およびアクティブスタビライザ10の非線形減衰係数Cφvに対する周波数重みWastbのゲインgain_cphiを調節することにより、アクティブスタビライザ10の回生発電による減衰の優先度合いを制御することができる。
【0078】
ショックアブソーバ20で減衰制御し、アクティブスタビライザ10による回生がほとんどなされないようにする場合、例えば、下記式(14)から式(16)のように各ゲインを定める。このように制御系設計時のアクティブスタビライザ10の制御量重み(ペナルティ)を大きくすることで相対的にショックアブソーバ20の制御量が大きくなるようにすることができる。
gain_cvr=1e-5 …(14)
gain_cvl=1e-5 …(15)
gain_cphi=1e-2 …(16)
【0079】
一方、アクティブスタビライザ10のみで減衰制御する場合、すなわちアクティブスタビライザ10による回生量を大とする場合、例えば、下記式(17)から式(19)のように各ゲインを定める。このように制御系設計時のショックアブソーバ20の制御量重み(ペナルティ)を大きくすることで相対的にアクティブスタビライザ10の制御量が大きくなるようにすることができる。
gain_cvr=1e-2 …(17)
gain_cvl=1e-2 …(18)
gain_cphi=1e-5 …(19)
【0080】
ECU30は、例えば、制御系全体に要求される非線形減衰係数がアクティブスタビライザ10の非線形減衰係数Cφvの限界値Cφvmaxを超えない場合、上記式(17)から式(19)のように各ゲインを定めることにより、アクティブスタビライザ10による減衰制御を優先させることができる。また、ECU30は、制御系に要求される非線形減衰係数が上記限界値Cφvmaxを超える場合、上記式(14)から式(16)のように各ゲインを定めることにより、アクティブスタビライザ10とショックアブソーバ20を協調させて減衰制御を行うことができる。
【0081】
図8は、主としてショックアブソーバ20で減衰制御を行った場合のばね上振動を示す図、図9は、主としてアクティブスタビライザ10で減衰制御を行った場合のばね上振動を示す図である。図8および図9において、横軸は周波数、縦軸はばね上加速度のパワースペクトル密度(Power Spectral Density)をそれぞれ示す。
【0082】
主としてショックアブソーバ20で減衰制御を行った場合(図8)、および主としてアクティブスタビライザ10で減衰制御を行った場合(図9)のいずれにおいても、ロール等に対応する低周波の振動が低減されることがわかる。つまり、ショックアブソーバ20あるいはアクティブスタビライザ10のいずれかを優先して減衰制御を行ったとしても、適切にロールやバウンス等を減衰してドライバビリティを向上させることができる。
【0083】
(第2実施形態)
図10から図15を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態の車両制御装置1−2において、上記第1実施形態の車両制御装置1−1と異なる点は、アクティブスタビライザとばね切替システムを協調制御することで、定常旋回時の消費電流低減と過渡ロール低減との両立を実現する点である。図10は、本実施形態に係る車両の概略構成を示す図、図11は、本実施形態のアクティブスタビライザの平面図、図12は、本実施形態のアクティブスタビライザの断面図、図13は、アクティブスタビライザの制御フローを示す図、図14は、横Gとアーム比との関係の一例を示す図、図15は、協調制御の制御フローを示す図である。
【0084】
図10に示すように、車両100は、アクティブスタビライザ110、可変ばね120、ECU130を備える。アクティブスタビライザ110は、サスペンションストロークに対してスタビライザバーのねじれ角を可変とするアーム比可変機構を有するものである。ECU130には、4輪各輪のばね上Gを示す信号、操舵角を示す信号、車速を示す信号がそれぞれ入力される。
【0085】
ばね上Gは、例えば、ばね上部材に配置された加速度センサによって検出される。なお、ばね上Gは、車体を含むばね上部材の上下方向の加速度である。操舵角は、例えば、ステアリングシャフトに設けられた操舵角センサによって検出される。車速は、例えば、各車輪3に配置された車輪速センサによって検出される。ECU130は、取得した操舵角および車速に基づいて横Gを演算することができる。横Gは、車両100に対して車幅方向に作用する加速度である。
【0086】
図11および図12を参照して、アクティブスタビライザ110について説明する。図12には、図11のI−I断面が示されている。本実施形態のアクティブスタビライザ110は、スタビリンクの取付け部のアーム比を変更することにより、旋回時の沈み込むロール姿勢による旋回安定性向上と直進時の乗り心地向上をそれぞれ実現することができる。
【0087】
図11に示すように、アクティブスタビライザ110は、スタビライザバー部材111,112、アクチュエータ113およびアーム比可変機構114を備える。スタビライザバー部材111は、アクチュエータ113と左車輪3Lとを接続しており、スタビライザバー部材112は、アクチュエータ113と右車輪3Rとを接続している。アクティブスタビライザ110は、左右対称に構成されている。ここでは、右車輪3R側を例にアクティブスタビライザ110およびアーム比可変機構114について説明する。
【0088】
スタビライザバー部材112は、第一部材112aおよび第二部材112bを有する。第一部材112aは、アクチュエータ113から右車輪3R側に向けて車幅方向に延在している。第二部材112bの一端は、連結ピン112eを介して第一部材112aと接続されており、他端は、ナット115を介してねじ軸116に接続されている。ねじ軸116は、車幅方向に延在している。ナット115およびねじ軸116は、ボールねじ機構の一部として機能するものである。ねじ軸116の外周面には、ねじ山が形成されており、ナット115の内周面には、当該ねじ山に対応するねじ溝が形成されている。ねじ軸116のねじ山とナット115のねじ溝との間には、ボールが介在している。ねじ軸116の一端は、軸受117を介して右車輪3Rのロアアーム101によって支持されている。また、ねじ軸116の他端は、モータ118を介してロアアーム101によって支持されている。
【0089】
モータ118は、ねじ軸116と同軸上にねじ軸116に対して直列に配置されている。モータ118は、ねじ軸116をねじ軸116の中心軸線を回転中心として回転させることができる。モータ118がねじ軸116を回転させると、その回転運動がボールねじ機構によってナット115の直線運動に変換される。また、モータ118は、ねじ軸116を任意の回転方向に回転させることが可能である。これにより、ナット115がねじ軸116に対して軸方向に進退することができる。ナット115がねじ軸116の軸方向に移動すると、第二部材112bにおけるナット115と接続された端部がねじ軸116に沿ってねじ軸116の軸方向に移動する。連結ピン112eは、ナット115の移動に応じた第二部材112bの回動を許容する。すなわち、連結ピン112eは、第一部材112aの中心軸線とねじ軸116の中心軸線とを含む平面上で第二部材112bが連結ピン112eを回転中心として回動することを許容するものである。
【0090】
第二部材112bは、軸方向に伸縮自在である。第二部材112bは、連結ピン112eに連結された基端側第二部材112cおよびナット115に連結された先端側第二部材112dを有する。基端側第二部材112cと先端側第二部材112dとは、同軸上に配置されており、かつその軸方向に相対移動可能であるように嵌合している。基端側第二部材112cと先端側第二部材112dとは、例えば、スプライン嵌合しており、摺動しつつ軸方向に相対移動することができる。また、先端側第二部材112dは、連結ピン等を介してナット115に連結されており、ねじ軸116と先端側第二部材112dとのなす角度が変化するように回動することができる。よって、第二部材112bは、ナット115がねじ軸116の軸方向に移動することに追随して、伸縮しつつ連結ピン112e回りに回動することができる。
【0091】
アクティブスタビライザ110のアクチュエータ113は、電動モータを有する電動式のアクチュエータである。アクチュエータ113が発生させるトルクは、第一部材112a、第二部材112b、ナット115、ねじ軸116、軸受117、モータ118およびロアアーム101を介して右車輪3Rに伝達される。
【0092】
ここで、ナット115の位置は、スタビライザバー部材112における右車輪3R側の端部位置であり、アクティブスタビライザ110と右車輪3R側とのリンク位置(以下、単に「スタビライザリンク位置」とも記載する。)である。つまり、ナット115がねじ軸116の軸方向において移動すると、スタビライザリンク位置もねじ軸116の軸方向において移動する。また、ナット115の移動に応じて第二部材112bが伸縮する。従って、モータ118は、ねじ軸116を回転させることによってアクティブスタビライザ110のアーム比を変化させるアーム比制御アクチュエータとして機能することができる。ここで、アーム比とは、第一部材112aの長さに対する第二部材112bの長さの比である。モータ118は、ねじ軸116の軸方向においてナット115を右車輪3Rに向けて移動させることでアーム比を増加させることができ、ナット115を右車輪3Rから離間する方向に移動させることでアーム比を減少させることができる。
【0093】
図12には、スタビライザリンク位置に応じたアクティブスタビライザ110のねじれ量が示されている。ナット115が右車輪3Rに向けて移動してアーム比が増加すると、第一部材112aの同じ回転量に対してねじれ量が増大する。一方、ナット115がモータ118に向けて移動してアーム比が減少すると、第一部材112aの同じ回転量に対してねじれ量が減少する。
【0094】
こうしたアーム比可変機構114は、アクティブスタビライザ110における左車輪3L側にも配置されている。また、車両100の前輪および後輪のアクティブスタビライザ110にそれぞれアーム比可変機構114が配置されている。ECU130は、各アーム比可変機構114を制御することで、各車輪3のアーム比を独立して制御することができる。
【0095】
図13に示すように、ECU130は、操舵による横Gを演算する横G演算部130aを有する。横G演算部130aは、操舵角センサから入力される操舵角および車速センサから入力される車速に基づいて、操舵による横Gを演算する。横G演算部130aによって算出された横Gは、アーム比演算部130bに出力される。アーム比演算部130bは、横Gに基づいてアーム比の目標値を演算する。ECU130は、例えば、横Gとアーム比との対応関係を示すマップを予め記憶しており、このマップを参照してアーム比の目標値を算出する。
【0096】
(アーム比可変機構による車両制御の例)
図14には、横Gとアーム比との対応関係の一例が示されている。図14を参照して、アーム比可変機構114を利用した車両制御の例について説明する。図14において、横軸は横G、縦軸はアーム比を示す。
【0097】
ECU130は、例えば、旋回時に、旋回外輪のアーム比を旋回内輪のアーム比に対して小さくすることで旋回安定性を高めることができる。図14のマップでは、実線で示す旋回内輪のアーム比よりも、破線で示す旋回外輪のアーム比が小さくされている。例えば、車両100が左旋回する場合、ECU130は、旋回内輪である左車輪3Lのアーム比に対して、旋回外輪である右車輪3Rのアーム比を小さくする。このようにすると、外輪に対するアンチロール荷重(上向き)の大きさに対して内輪に対するアンチロール荷重(下向き)の大きさが上回る。従って、内外輪の荷重差は、下向きの荷重が大きくなり、車両100の重心が下がる。重心の位置が下がることで、車両100は安定した旋回を行うことができるようになる。また、重心位置が低下することで、路面の凹凸に対するロール量が低下し乗り心地が向上する。
【0098】
また、ECU130は、直進時に左右輪のアーム比をそれぞれ小さくする。図14に示すように、横Gが小さいときのアーム比は、横Gが大きいときのアーム比よりも小さな値とされる。アクティブスタビライザ110のアーム比は、横Gが予め定められた下限値Gmin以下である場合に最小のアーム比とされる。下限値Gminは、例えば、直進時に車両100に作用する横Gに基づいている。一例として、直進時に車両100に作用すると想定される横Gの上限が下限値Gminとされる。横Gが下限値Gmin以下であると、左右輪のアーム比が共に最小のアーム比とされる。
【0099】
直進時に左右輪のアーム比が小さくされることで、路面入力(ストローク)に対して、スタビライザリンク位置でのストローク、すなわちナット115の上下動が小さくなり、アクティブスタビライザ110の捻り角が小さくなる。捻り角が小さくなることで、アクティブスタビライザ110に入力される荷重が低減し、乗り心地が向上するという利点がある。
【0100】
また、ECU130は、限界時は左右輪のアーム比をそれぞれ大きくする。左右輪のアーム比は、図14に示すように、横Gが予め定められた上限値Gmax以上である場合に最大のアーム比とされる。横Gの上限値Gmaxは、例えば、アクチュエータ113の出力特性に基づいて定められる。ECU130は、横Gが上限値Gmax以上である限界時に左右輪のアーム比をそれぞれ最大のアーム比とする。これにより、限界時にアクチュエータ113の発生トルクを効率よくタイヤ接地部に作用させて大きなアンチロールモーメントを発生させることができる。これにより、限界付近でも車両100のロールを適切に抑制することができる。
【0101】
このように、ECU130は、横Gに応じてアーム比を可変とすることで、旋回安定性の向上、乗り心地の向上、ロール抑制能力の確保等をバランスさせることができる。図13に戻り、アーム比演算部130bによって演算されたアーム比の目標値は、目標値演算部130cおよびアーム比制御アクチュエータとしてのモータ118にそれぞれ出力される。目標値演算部130cは、アクティブスタビライザ110によって発生させる目標アンチロールモーメントを演算する。目標値演算部130cは、アーム比演算部130bから入力されるアーム比の目標値に基づいて目標アンチロールモーメントを演算し、算出した目標アンチロールモーメントMstbをアクティブスタビライザ110のアクチュエータ113に出力する。アクチュエータ113は、目標アンチロールモーメントMstbに基づいてトルクを発生させる。また、モータ118は、アーム比の目標値に基づいてねじ軸116を回転させてナット115の位置を制御する。
【0102】
図10に示す可変ばね120は、ばね上部材とばね下部材とを接続するサスペンション懸架ばねであり、ばね定数Ksを可変にできるばね定数可変装置を有している。つまり、可変ばね120は、サスペンション4の弾性力を変化させる弾性力可変機構としての機能を有する。なお、サスペンション4は、可変ばね120に加えて上記第1実施形態のショックアブソーバ20と同様のショックアブソーバを有していてもよい。
【0103】
可変ばね120のばね定数可変装置は、ばね定数Ksを変化させるときに電力等のエネルギーを消費するものである。可変ばね120は、例えば、エアサスペンション装置(エアばね)であってもよい。エアサスペンション装置では、ばね定数Ksを変化させるときに、コンプレッサーと各車輪3のエアチャンバー間のエア流路を開閉するコントロールバルブを作動させることで電力が消費される。また、ばね定数を変化させることでコンプレッサーが作動する場合、コンプレッサーにおいて電力が消費される。ばね定数可変装置は、ばね定数を変化させる過渡状態ではエネルギーを消費するが、ばね定数を一定に保つ間はエネルギーを消費しないものである。
【0104】
本実施形態では、ECU130は、定常旋回時に主に可変ばね120のばね定数Ksを大きくすることでロールを低減する。つまり、本実施形態では、定常旋回時に可変ばね120によりサスペンション4の弾性力を変化させることによってロール等の車両100に生じる振動を抑制する。また、ECU130は、定常旋回時に限らず、操舵時に車両100に生じる振動を可変ばね120によって抑制することができる。これにより、アクティブスタビライザ110によってロール制御を行う場合よりも消費エネルギーを低減することが可能となる。なお、定常旋回とは、横Gの変動が少ない旋回であり、例えば、操舵角や車速が略一定に維持される旋回や、操舵角の変化や車速の変化が小さい旋回を含むものである。
【0105】
旋回時にアクティブスタビライザ110のみで目標アンチロールモーメントを分担する場合、アクチュエータ113の消費電流が大きくなってしまう。また、大きな出力トルクが要求されることで、アクチュエータ113等の体格が大きくなってしまう。これに対して、定常旋回分のアンチロールモーメントを可変ばね120のばね定数可変装置に分担させることで、アクティブスタビライザ110の消費電流を低減させることができる。可変ばね120では、一度ばね定数を変化させた後は、再度ばね定数を変化させるまでエネルギーを消費することなくアンチロールモーメントを発生してロールを抑制することができる。
【0106】
ロールを低減するように可変ばね120のばね定数を変化させる場合、例えば、旋回外輪の可変ばね120のばね定数を直進時等のばね定数に対して増加させる。旋回外側の可変ばね120のばね定数を増加させた場合、ばね上部材における旋回外側の沈み込みを抑制し、ロールを低減させることができる。旋回外側の可変ばね120は、ばね定数が増加することで、同じサスペンションストロークに対してより大きなばね力を発生してアンチロールモーメントを車両100に作用させることができる。なお、ロールを低減するためのばね定数の制御はこれには限定されず、例えば、旋回時に全ての車輪3の可変ばねのばね定数を直進時等に対して増加させてもよい。
【0107】
ECU130は、目標のアンチロールモーメントに対して不足するアンチロールモーメントや、旋回初期などの過渡ロール分のアンチロールモーメントをアクティブスタビライザ110に分担させる。つまり、ECU130は、可変ばね120による車両100に生じる振動の抑制をアクティブスタビライザ110によってアシストする。例えば、過渡ロール分のアンチロールモーメントをアクティブスタビライザ110に分担させることにより、操舵状態の変動に対応する車両100の振動をアクティブスタビライザ110によって抑制することができる。これにより、目標アンチロールモーメントの全てをアクティブスタビライザ110によって分担させる場合と同様の応答性や精度でロールを抑制することが可能となる。
【0108】
ばね定数可変装置の応答性は、アクティブスタビライザ110の応答性よりも低い場合がある。この場合、過渡ロール分のアンチロールモーメントをばね定数可変装置によって発生させようとすると、実際のアンチロールモーメントが目標値に対して遅れる可能性がある。これに対して、本実施形態のようにアクティブスタビライザ110によって過渡ロール分のアンチロールモーメントを発生させるようにすれば、応答よく目標アンチロールモーメントを発生させることができる。定常旋回時には横Gが大きく変動しないため、可変ばね120に目標アンチロールモーメントの多く(過渡ロール分のアンチロールモーメントを除いたアンチロールモーメント)を分担させることで十分にロールを抑制することができる。
【0109】
また、可変ばね120は、アクティブスタビライザ110とは異なり、発生させるアンチロールモーメントの大きさに応じて消費エネルギーが増大するものではない。可変ばね120は、ばね定数を一定に保っているときであれば、発生させるアンチロールモーメントの大きさにかかわらず、エネルギーを消費することなしにアンチロールモーメントを発生させることができる。これに加えて、アクティブスタビライザ110に要求されるアンチロールモーメントは、可変ばね120が発生させるアンチロールモーメントで過不足が生じた分のみである。よって、本実施形態の振動抑制制御によれば、アクティブスタビライザ110の消費電流が抑えられ、車両10全体の消費エネルギーが低減される。本実施形態の振動抑制制御は、大きな横Gが作用する旋回時に実行されることで消費エネルギーを抑制する効果が高くなる。
【0110】
図15を参照して、本実施形態の制御のフローについて説明する。ECU130の横G演算部130dは、操舵角と車速とに基づいて操舵による横Gを演算する。算出された横Gは、ばね係数演算部130eおよび目標アンチロールモーメント演算部130fに出力される。ばね係数演算部130eは、入力される横Gに基づいて可変ばね120のばね定数(ばね係数)Ksを演算する。ECU130は、例えば、横Gとばね定数Ksの目標値との対応関係を定めたマップを予め記憶している。ばね係数演算部130eは、このマップを参照して、ばね定数Ksの目標値を算出する。ばね係数演算部130eは、算出した目標のばね定数Ksを可変ばね120およびロールモーメント演算部130gに出力する。
【0111】
ロールモーメント演算部130gは、可変ばね120が発生させるロールモーメントMspringを演算する。ロールモーメント演算部130gは、例えば、目標のばね定数Ksと横Gとに基づいて可変ばね120が発生させるロールモーメントMspringを演算する。
【0112】
目標アンチロールモーメント演算部130fは、横G演算部130dから出力される横Gに基づいて、目標アンチロールモーメントMtargetを演算する。ECU130は、例えば、横Gと目標アンチロールモーメントMtargetとの対応関係を示すマップを予め記憶しており、このマップを参照して目標アンチロールモーメントMtargetを算出することができる。
【0113】
横G微分演算部130hは、操舵角速度による横G微分を演算する。横G微分は、横Gの変化速度である。横G微分演算部130hは、操舵角速度と車速とに基づいて横G微分を演算する。ここで、操舵角速度は、操舵角センサの検出結果に基づいて算出可能である。横G微分演算部130hによって算出された横G微分は、目標過渡アンチロールモーメント演算部130iに出力される。
【0114】
目標過渡アンチロールモーメント演算部130iは、過渡ロール分に対応する目標アンチロールモーメントM過渡を演算する。過渡ロール分に対応する目標アンチロールモーメントM過渡は、操舵角や車速の変化によるロールの増減に対応する目標アンチロールモーメントの増減分である。
【0115】
アクティブスタビライザ110のアクチュエータ113によって発生させるアンチロールモーメントの目標値Mstbは、目標アンチロールモーメントMtargetと、過渡ロール分の目標アンチロールモーメントM過渡とを加算したものから、可変ばね120が発生させるロールモーメントMspringを減算したものである。
【0116】
可変ばね120のばね定数可変装置は、目標のばね定数Ksとなるように可変ばね120のばね定数を制御する。また、アクティブスタビライザ110のアクチュエータ113は、アンチロールモーメントの目標値Mstbを実現するように制御される。
【0117】
このように、本実施形態では、定常旋回分のアンチロールモーメントを可変ばね120に分担させ、可変ばね120だけでは不足する分や過渡ロール分のアンチロールモーメントをアクティブスタビライザ110に分担させる。これにより、電動のアクティブスタビライザ110の消費電流が小さくなり、かつ車両100全体の消費エネルギーも抑制できるという効果を奏することができる。
【0118】
上記の各実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0119】
1−1,1−2 車両制御装置
1,100 車両
3 車輪
4 サスペンション
10,110 アクティブスタビライザ
13,113 アクチュエータ
20 ショックアブソーバ
30,130 ECU
114 アーム比可変機構
120 可変ばね
s,Cφs 線形減衰係数
v,Cφv 非線形減衰係数
φvmax 非線形減衰係数の限界値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサスペンションの減衰力を変化させる減衰力可変機構、あるいは前記サスペンションの弾性力を変化させる弾性力可変機構の少なくともいずれか一方と、
前記車両に生じるロール方向の振動を抑制するアンチロールモーメントを可変制御する制御量可変スタビライザと、
を備え、
操舵状態と前記車両に生じる振動に応じて前記制御量可変スタビライザの制御量を設定する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記減衰力可変機構および前記弾性力可変機構のうち少なくとも前記減衰力可変機構を備え、
非操舵時、前記制御量可変スタビライザによる前記車両に生じる振動の減衰を前記減衰力可変機構による前記車両に生じる振動の減衰に対して優先する
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記車両に生じる振動を減衰させる減衰量の目標値が前記制御量可変スタビライザによって減衰できる減衰量の上限値を超える場合、前記制御量可変スタビライザによる前記車両に生じる振動の減衰を前記減衰力可変機構によってアシストする
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記減衰力可変機構および前記弾性力可変機構のうち少なくとも前記弾性力可変機構を備え、
操舵時および定常旋回時に前記弾性力可変機構によって前記車両に生じる振動を抑制する
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記弾性力可変機構による前記車両に生じる振動の抑制を前記制御量可変スタビライザによってアシストする
請求項4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
操舵状態の変動に対応する前記車両に生じる振動を前記制御量可変スタビライザによって抑制する
請求項4または5に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記車両に生じる振動は、前記車両のロール方向の振動である
請求項1から6のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記減衰力可変機構は、減衰力可変式のショックアブソーバであり、前記弾性力可変機構は、エアばねである
請求項1から7のいずれか1項に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−148681(P2012−148681A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9103(P2011−9103)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】