説明

車両周辺映像表示装置

【課題】一部の撮像画像に影が含まれていることによる合成画像全体の輝度低下を防ぐことができる車両周辺映像表示装置を提供する。
【解決手段】車両周辺を撮像する各カメラ1a〜1dによる複数の撮像画像に基づいて生成された単一の合成画像に影が含まれているか否かを判定し、影が含まれていると判定した場合には合成画像を構成する複数の撮像画像の中から影が含まれている画像を特定する影判定部15と、影判定部15が影が含まれている画像を特定した場合、影が含まれている画像を除いた残りの撮像画像の平均輝度に基づいて撮像画像毎の輝度を調整する調整部5a〜5dと、輝度の調整が行われた後の撮像画像に基づいて生成された合成画像を表示する表示手段3と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の車載カメラにより撮像された複数の撮像画像に基づいて単一の合成画像を生成し表示画面に表示する車両周辺映像表示装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに異なる方向の車両周辺を撮像する複数の車載カメラを有し、これら複数の車載カメラにより撮像された複数の撮像画像に基づいて単一の合成画像を生成し、この合成画像を表示画面に表示する車両周辺映像表示装置が知られている。
【0003】
また、このような車両周辺映像表示装置としては、車載カメラ毎の個体差によって生じる撮像画像間の輝度の差異を解消するため、各車載カメラによる撮像画像毎の平均輝度を検出し、隣接する車載カメラによる撮像画像間で平均輝度が等しくなるように平均輝度の補正(調整)を行うものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−324235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に提案されている車両周辺映像表示装置によれば、複数の撮像画像のうち一部の撮像画像に影が含まれている場合には、この一部の撮像画像の平均輝度は他の撮像画像の平均輝度と比較して著しく低くなるが、このような場合であっても、隣接する車載カメラによる撮像画像間で平均輝度が等しくなるように平均輝度の調整が行われるため、撮像画像に影が含まれていることによる著しい輝度の低下が、結果として合成画像全体の輝度低下を招くことになるという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、一部の撮像画像に影が含まれていることによる合成画像全体の輝度低下を防ぐことができる車両周辺映像表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両周辺映像表示装置は、合成画像に影が含まれているか否かを判定し、影が含まれている場合には、合成画像を構成する複数の撮像画像のうち影が含まれている画像を除いた残りの撮像画像の平均輝度に基づいて、合成画像として合成される撮像画像毎の平均輝度を調整し、調整が行われた後の撮像画像に基づいて生成された合成画像を表示するものである。
【0008】
すなわち、本発明に係る車両周辺映像表示装置は、互いに異なる方向の車両周辺を撮像する複数の車載カメラと、前記車載カメラにより撮像された複数の撮像画像に基づいて単一の合成画像を生成する画像合成手段と、前記撮像画像毎の輝度を調整する輝度調整手段と、前記輝度の調整が行われた後の前記撮像画像に基づいて前記画像合成手段により生成された前記合成画像を表示する表示手段と、を備え、前記輝度調整手段は、前記撮像画像毎の平均輝度を検出する輝度検出部と、前記合成画像に影が含まれているか否かを判定し、影が含まれていると判定した場合には前記合成画像を構成する複数の前記撮像画像の中から前記影が含まれている画像を特定する影判定部と、前記影判定部が前記影が含まれている画像を特定した場合、前記影が含まれている画像を除いた残りの撮像画像の平均輝度に基づいて前記撮像画像毎の輝度を調整する調整部と、を有していることを特徴とする。
【0009】
ここで、「平均輝度」とは、撮像画像全体の輝度の平均値でもよいし、あるいは、撮像画像の一部分である特定の小領域を撮像画像を代表する領域として、この特定の小領域の輝度の平均値であってもよい。
【0010】
このように構成された本発明に係る車両周辺映像表示装置によれば、影判定部が、合成画像を構成する撮像画像の中から影が含まれている画像を特定した場合には、調整部が、影が含まれている画像を除いた残りの撮像画像の平均輝度に基づいて撮像画像毎の輝度を調整し、画像合成手段が、輝度が調整された撮像画像に基づいて合成画像を生成し、表示手段がこの生成された合成画像を表示するため、一部の撮像画像に影が含まれていることによる合成画像全体の輝度低下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両周辺映像表示装置によれば、一部の撮像画像に影が含まれていることによる合成画像全体の輝度低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の車両周辺映像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の車載カメラの設置位置を説明する説明図である。
【図3】図2の車載カメラによる撮像画像に基づいて生成された合成画像を例示する図である。
【図4】図1の輝度調整手段の構成を示すブロック図である。
【図5】(a)は、一部の撮像画像に影が含まれている状況を示す合成画像の一例であり、(b)は、図5(a)に示す状況であって、従来の車両周辺映像表示装置による輝度の調整が行われた後の撮像画像に基づいて生成され、表示された合成画像の一例を示す図である。
【図6】図1の車両周辺映像表示装置による輝度調整処理の流れを説明するフローチャートである。
【図7】図4の輝度検出部が撮像画像毎の平均輝度を検出するために、予め特定された小領域を例示する図である。
【図8】(a)は、一部の撮像画像に影が含まれている状況を示すための合成画像の一例であり、(b)は、図8(a)に示す状況であって、図1に示す車両周辺映像表示装置による輝度の調整が行われた後の撮像画像に基づいて生成され、表示された合成画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の車両周辺映像表示装置を実現する実施の形態を、図面に基づいて説明する。
[全体の構成]
図1は、本実施形態の車両周辺映像表示装置100の構成を示すブロック図であり、図2は、図1の車載カメラ1の設置位置を説明する説明図であり、図3は、図2の車載カメラ1による撮像画像に基づいて生成された合成画像を例示する図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の車両周辺映像表示装置100は、車載カメラ1と、車載カメラ1により撮像された複数の撮像画像に対して信号処理を行う画像信号処理手段2と、画像信号処理手段2により信号処理が行われた後の画像を表示するモニタ3(表示手段)と、を有する。
【0015】
車載カメラ1は、図2に示すように、車両周辺映像表示装置100が設けられた車両Aの前面のバンパー位置等に設けられたフロントカメラ1a、車両Aの左側面のドアミラー位置等に設けられた左サイドカメラ1b、車両Aの後面のバンパー位置等に設けらたリアカメラ1c、および車両Aの右側面のドアミラー位置等に設けられた右サイドカメラ1dの4台により構成され、これらは互いに異なる方向の車両Aの周辺を撮像する。以下、フロントカメラ1a、左サイドカメラ1b、リアカメラ1cおよび右サイドカメラ1dの4台のカメラを、各カメラ1a〜1dという。
【0016】
画像信号処理手段2は、図1に示すように、A/D変換器4a〜4d、デコーダ5a〜5d(調整部)、座標変換器6a〜6d、画像合成手段7、エンコーダ8、D/A変換器9および目標輝度算出手段10、を備えている。また、デコーダ5a〜5dおよび目標輝度算出手段10を輝度調整手段20とする。
【0017】
A/D変換器4a〜4dは、それぞれ対応する各カメラ1a〜1dに接続され、各カメラ1a〜1dによる撮像画像のアナログ信号をアナログデジタル変換する。
【0018】
デコーダ5a〜5dは、それぞれ対応するA/D変換器4a〜4dに接続され、A/D変換器4a〜4dからの入力信号に対して、画像合成手段7およびデコーダ5a〜5dに接続された目標輝度算出手段10から出力される目標輝度値の信号(デコーダパラメータ)に基づいてデコードすることにより、撮像画像毎に輝度の調整を行なう。
【0019】
なお、この目標輝度算出手段10およびデコーダ5a〜5dを合わせた輝度調整手段20の詳細な構成についての説明は後述する。
【0020】
また、座標変換器6a〜6dは、それぞれ対応するデコーダ5a〜5dに接続され、デコーダ5a〜5dからの輝度の調整が行われた後の入力信号に対して、図示しないROM等に格納された視点変換テーブルに従い座標変換処理により俯瞰画像(車両の上方の仮想点から下方を見下ろしたときに観察される画像)を生成する。
【0021】
画像合成手段7は、座標変換器6a〜6dからの入力信号(輝度の調整および座標変換処理が行われた後の複数の撮像画像の信号)に基づいて、例えば図3に示すような単一の合成画像として俯瞰画像を生成する。
【0022】
エンコーダ8は、画像合成手段7から入力された合成画像の信号をエンコードしてD/A変換器9に出力し、D/A変換器9は、エンコーダ8から入力された信号をデジタルアナログ変換し、モニタ3に出力する。
【0023】
モニタ3は、車両Aの車室内に設けられ、D/A変換器9から入力された合成画像の信号に基づいて、合成画像を表示する。
[輝度調整手段の詳細な構成]
図4は、図1の輝度調整手段20の構成を示すブロック図である。
【0024】
輝度調整手段20のうち目標輝度算出手段10は、図4に示すように、輝度検出部11a〜11d、比較判定部12、時計13(日時情報取得部)、ナビゲーション装置14(位置方位検出部)、影判定部15、平均輝度算出部16およびデコーダパラメータ算出部17、を有する。
【0025】
輝度検出部11a〜11dは、合成画像を構成する各カメラ1a〜1dによる撮像画像毎の平均輝度Ea、Eb、Ec、Edを検出する。
【0026】
すなわち、輝度検出部11aはフロントカメラ1aによる撮像画像の平均輝度Eaを検出し、輝度検出部11bは左サイドカメラ1bによる撮像画像の平均輝度Ebを検出し、輝度検出部11cはリアカメラ1cによる撮像画像の平均輝度Ecを検出し、輝度検出部11dは右サイドカメラ1dによる撮像画像の平均輝度Edを検出する。
【0027】
比較判定部12は、輝度検出部11a〜11dにより検出された各撮像画像の平均輝度Ea、Eb、Ec、Edのうち、著しく低い平均輝度(例えば、全ての平均輝度の平均値の所定割合より低い平均輝度)が有るか否かを比較判定する。
【0028】
また、影判定部15は、比較判定部12による比較結果に基づいて合成画像に影が含まれているか否かを判定し、影が含まれていると判定した場合には、時計13による時刻情報、ナビゲーション装置14による車両Aの位置情報および方位情報に基づいて、合成画像を構成する複数の撮像画像の中から影が含まれている画像を特定する。
【0029】
平均輝度算出部16は、輝度検出部11a〜11dにより検出された各撮像画像の平均輝度Ea、Eb、Ec、Edおよび影判定部15による判定結果に基づいて、撮像画像の輝度を調整するための目標輝度値としての平均輝度E2を算出する。
【0030】
デコーダパラメータ算出部17は、平均輝度算出部16により算出された平均輝度E2に基づいて目標輝度値の信号(デコーダパラメータ)を算出し、デコーダ5a〜5dに出力する。
【0031】
次に、車両周辺映像表示装置100の作用について、[全体の流れ]および[輝度調整処理]に分けて説明する。
[全体の流れ]
各カメラ1a〜1dにより車両Aの周辺が撮像されると、各々の撮像画像はA/D変換器4a〜4dによりデジタル信号に変換されて、デコーダ5a〜5dに出力される。
【0032】
そして、デコーダ5a〜5dが、目標輝度算出手段10のうちデコーダパラメータ算出部17により出力されたデコーダパラメータに基づいて輝度の調整を行い、輝度の調整が行われた後の撮像画像を座標変換器6a〜6dに出力する。
【0033】
さらに、座標変換器6a〜6dが、輝度の調整が行われた後の撮像画像が俯瞰画像となるように座標変換して画像合成手段7に出力する。そして、画像合成手段7が、入力された複数の撮像画像の信号に基づいて単一の合成画像を生成する。
【0034】
このように生成された合成画像は、エンコーダ8およびD/A変換器9を経由して、車室内のモニタ3に表示される。
[輝度調整処理]
図5(a)は、一部の撮像画像に影が含まれている状況を示す合成画像の一例であり、図5(b)は、図5(a)に示す状況であって、従来の車両周辺映像表示装置による輝度の調整が行われた後の撮像画像に基づいて生成され、表示された合成画像の一例を示す図である。
【0035】
例えば、従来の車両周辺映像表示装置によれば、図5(a)に示すように、一部の撮像画像に影が含まれている場合には、隣接する車載カメラによる撮像画像間で平均輝度が等しくなるように平均輝度の調整が行われるため、輝度の調整が行われた後の撮像画像に基づいて生成された合成画像は、図5(b)に示すように、合成画像全体の輝度低下を招く。
【0036】
これに対し、本実施形態の車両周辺映像表示装置100では、以下のような輝度調整処理を行うことにより、一部の撮像画像に影が含まれていることによる合成画像全体の輝度低下を防ぐことができる。
【0037】
図6は、車両周辺映像表示装置100による輝度調整処理の流れを説明するフローチャートであり、図7は、輝度検出部11a〜11dが撮像画像毎の平均輝度を検出するために、予め特定された小領域を例示する図であり、図8(a)は、一部の撮像画像に影が含まれている状況を示すための合成画像の一例であり、図8(b)は、図8(a)に示す状況であって、車両周辺映像表示装置100による輝度の調整が行われた後の撮像画像に基づいて生成され、表示された合成画像の一例を示す図である。
【0038】
画像合成手段7により合成画像が生成されると、輝度調整手段20が、この合成画像の信号が目標輝度算出手段10に出力されて輝度調整処理を開始する。
【0039】
まず、図6に示すように、輝度検出部11a〜11dは、それぞれ対応する各カメラ1a〜1dによる撮像画像(各カメラ表示領域)の平均輝度Ea、Eb、Ec、Edを検出する(ステップS1)。
【0040】
このとき、輝度検出部11a〜11dは、撮像画像毎の全体の輝度の平均値を算出することも可能であるが、演算処理量を減らして処理を迅速にするため、例えば、図7に示す8つの小領域(a1、a2、b1、b2、c1、c2、d1、d2)のように、合成画像が生成された場合の隣接する撮像画像同士の境界付近である複数の小領域を予め特定し、この複数の特定された小領域毎の輝度の平均値を、その撮像画像の平均輝度とすることも可能である。
【0041】
すなわち、小領域a1、a2の輝度の平均値を、フロントカメラ1aによる撮像画像の平均輝度Eaとし、小領域b1、b2の輝度の平均値を、左サイドカメラ1bによる撮像画像の平均輝度Ebとし、小領域c1、c2の輝度の平均値を、リアカメラ1cによる撮像画像の平均輝度Ecとし、小領域d1、d2の輝度の平均値を、右サイドカメラ1dによる撮像画像の平均輝度Edとすることができる。
【0042】
このようにして検出された平均輝度Ea、Eb、Ec、Edが比較判定部12に出力されると、比較判定部12がこれらの平均輝度Ea、Eb、Ec、Edのうち、全ての平均輝度の平均値E1(=(Ea+Eb+Ec+Ed)/4)の所定割合(例えば、E1/4)より低い平均輝度が有るか否かを比較判定し、その結果を影判定部15に出力する(ステップS2)。
【0043】
そして、比較判定部12が、平均輝度Ea、Eb、Ec、Edのうち所定割合(E1/4)より低い平均輝度が有ると判定した場合には、ステップS3に移行し、影判定部15が、平均輝度が所定割合より低い撮像画像に影が含まれているか否かを判定する(ステップS3)。
【0044】
具体的には、まず、影判定部15は、ナビゲーション装置14により検出された車両Aの位置および時計13により取得された日時情報に基づいて、車両Aの位置を基準とした太陽の方位を特定する。そして、影判定部15は、特定された太陽の方位およびナビゲーション装置14により検出された車両Aが向いている方位に基づいて、車両Aの影が現れる方位を特定する。さらに、影判定部15は、比較判定部12が平均輝度が所定割合(E1/4)より低いと判定した撮像画像が、車両Aの影が現れる方位に対応した撮像画像であるか否かを判定する。
【0045】
例えば、午後3時に日本では太陽は西の方位に位置するため、車両Aが北を向いているとすると、東の方位(すなわち右サイドカメラ1dが撮像する方位)が、車両Aの影が現れる方位であると特定される。
【0046】
すなわち、ステップS2において、比較判定部12が、この右サイドカメラ1dによる撮像画像の平均輝度Edが所定割合よりも低い(Ed<(E1/4))と比較判定した場合であって、ステップS3において、影判定部15が、右サイドカメラ1dが撮像する方位が車両Aの影が現れる方位であると特定した場合には、影判定部15は、右サイドカメラ1dによる撮像画像に影が含まれていると判定し、ステップS4に移行する。
【0047】
さらに、平均輝度算出部16が、目標輝度値として、影が含まれている画像を除いた残りの撮像画像の平均輝度の平均値を算出する(ステップS4)。
【0048】
上記の例であれば、右サイドカメラ1dによる撮像画像に影が含まれていると影判定部15が判定したため、フロントカメラ1a、左サイドカメラ1b、リアカメラ1cによる撮像画像の平均輝度Ea、Eb、Ecの平均値((Ea+Eb+Ec)/3)を目標輝度値である平均輝度E2として、平均輝度算出部16が算出するE2(=(Ea+Eb+Ec)/3)。
【0049】
一方、ステップS2において、比較判定部12が、平均輝度Ea、Eb、Ec、Edのうち所定割合(E1/4)より低い平均輝度が無いと判定し、合成画像に影が含まれていないと判定した場合、または、ステップS2において、比較判定部12が、平均輝度Ea、Eb、Ec、Edのうち所定割合(E1/4)より低い平均輝度が有ると判定したが、ステップS3において、影判定部15が、この平均輝度が所定割合より低い撮像画像が車両Aの影が現れる方位に対応した撮像画像ではないと判定した場合は、ステップS5に移行する。
【0050】
そして、ステップS5では、平均輝度算出部16が、全ての平均輝度の平均値E1(=(Ea+Eb+Ec+Ed)/4)を目標輝度値である平均輝度E2とするE2(=E1)(ステップS5)。
【0051】
その後、デコーダパラメータ算出部17が、平均輝度算出部16により算出された目標輝度値としての平均輝度E2に基づいてデコーダパラメータを算出してデコーダ5a〜5dに出力し、デコーダ5a〜5dがこのデコーダパラメータに基づいて、撮像画像毎の輝度の調整を行う(ステップS6)。
【0052】
すなわち、図8(a)に示すように、一部の撮像画像に影が含まれている場合(ステップS3、S4を経由してステップS6に移行してきた場合)、デコーダ5a〜5dは、影が含まれている画像を除いた撮像画像の平均輝度Ea、Eb、Ecが目標輝度値としての平均輝度E2(=(Ea+Eb+Ec)/3)となるように輝度の調整を行なう。そして、この輝度の調整が行われた後の撮像画像に基づいて生成された合成画像は、図8(b)に示すような合成画像となる。
【0053】
一方、合成画像に影が含まれていない場合(ステップS5を経由してステップS6に移行してきた場合)は、デコーダ5a〜5dは、全ての撮像画像の平均輝度Ea、Eb、Ec、Edが目標輝度値としての平均輝度E2(=(Ea+Eb+Ec+Ed)/4)となるように輝度の調整を行う。
【0054】
その後、画像合成手段7により生成された合成画像が再び目標輝度算出手段10に出力される場合には、最初から輝度調整処理が開始され、ステップS1〜ステップS6が繰り返される。
【0055】
一方、車両周辺映像表示装置100のスイッチがOFFに切り替えられる等して、画像合成手段7により生成された合成画像が目標輝度算出手段10に出力されない場合には、輝度調整処理が終了する(ステップS7)。
【0056】
なお、上述した本実施形態では、比較判定部12は、各撮像画像の平均輝度のうち、全ての平均輝度の平均値E1(=(Ea+Eb+Ec+Ed)/4)の所定割合(例えば、E1/4)より低い平均輝度が有るか否かを比較判定することを説明した。
【0057】
しかし、本発明に係る車両周辺映像表示装置は必ずしもこのような構成に限定されず、各撮像画像の平均輝度のうち著しく低い平均輝度が有るか否かを比較判定することができれば、他の基準値を採用することも可能である。
【0058】
また、本実施形態では、ステップS2において、比較判定部12が撮像画像毎の平均輝度の比較判定を行った後に、ステップS3において、影判定部15が太陽の方位等に基づいて車両Aの影が現れる方位を特定し、輝度の低い撮像画像に影が含まれているか否かを判定することを説明した。
【0059】
しかし、本発明の車両周辺映像表示装置はこのような形態に限定されるものではなく、例えば、影判定部15が車両Aの影が現れる方位を特定した後に、比較判定部12が、この影が現れる方位に対応した撮像画像の平均輝度を他の撮像画像の平均輝度と比較判定することにより、撮像画像に影が含まれているか否かを判定する構成としてもよい。
【0060】
さらに、上述した本実施形態では、車載カメラが4台の場合について説明したが、4台に限定されるものではなく、複数の車載カメラが設けられていればよい。
【0061】
このように構成された本実施形態に係る車両周辺映像表示装置100によれば、影判定部15が、合成画像を構成する複数の撮像画像の中から影が含まれている画像を特定した場合には、デコーダ5a〜5dが、影が含まれている画像を除いた残りの撮像画像の平均輝度に基づいて撮像画像毎の輝度を調整し、画像合成手段7が、輝度が調整された撮像画像に基づいて合成画像を生成し、モニタ3が生成された合成画像を表示するため、一部の撮像画像に影が含まれていることによる合成画像全体の輝度低下を防ぐことができる。
【0062】
また、デコーダ5a〜5dは、影判定部15が合成画像に影が含まれていないと判定した場合には、撮像画像毎の平均輝度Ea、Eb、Ec、Edを、全ての平均輝度の平均値E2(=(Ea+Eb+Ec+Ed)/4)と等しくなるように調整するため、各カメラ1a〜1d毎の個体差によって生じる撮像画像間の輝度の差異が解消され見やすい合成画像を生成することができる。
【0063】
一方、影判定部15が合成画像に影が含まれていると判定し、影が含まれている画像を特定した場合には、影が含まれている画像を除いた残りの撮像画像の平均輝度(例えば、Ea、Eb、Ec)を、影が含まれている画像を除いた残りの撮像画像の平均輝度の平均値E2(=(Ea+Eb+Ec)/3)と等しくなるように調整するため、影が含まれている画像を除いた残りの撮像画像間の輝度の差異が解消され見やすい合成画像を生成することができ、かつ、影が含まれている撮像画像については輝度の調整が行われないため影の部分の輝度が高くなることを防ぎ、運転者に対して影を正確に認識させることができる。
【0064】
さらに、輝度調整手段20は、撮像画像毎の平均輝度のうちEa、Eb、Ec、Ed、全ての平均輝度の平均値E1(=(Ea+Eb+Ec+Ed)/4)の所定割合(例えば、E1/4)より低い平均輝度が有るか否かを比較判定する比較判定部12を有し、影判定部15は、比較判定部12が所定割合(E1/4)より低い平均輝度が無いと判定した場合には合成画像に影が含まれていないと判定するため、合成画像に影が映っていないことを迅速に判定することができる。
【0065】
そして、影判定部15は、比較判定部12が平均輝度Ea、Eb、Ec、Edのうち所定割合(E1/4)より低い平均輝度が有ると判定した場合には、位置方位検出部14により検出された車両Aの位置および日時情報取得部13により取得された日時情報に基づいて車両Aの位置を基準とした太陽の方位を特定し、太陽の方位および位置方位検出部14により検出された車両Aが向いている方位に基づいて車両Aの影が現れる方位を特定し、所定割合(E1/4)より低い平均輝度である撮像画像が車両Aの影が現れる方位に対応した撮像画像である場合には、所定割合(E1/4)より低い平均輝度である撮像画像が車両Aの影が含まれている画像であると特定するため、影が含まれている撮像画像の特定を正確に行うことができる。
【0066】
また、撮像画像毎の平均輝度Ea、Eb、Ec、Edは、撮像画像の一部分である特定の小領域(例えば、小領域a1、a2、b1、b2、c1、c2、d1、d2)の平均輝度とすることにより、平均輝度を算出するための領域の面積が小さくなるため、演算処理を軽減し、処理を迅速にすることができる。
【0067】
さらに、合成画像が生成された場合に隣接する撮像画像同士の境界付近に(すなわち、撮像画像毎の輝度の差異が目立ちやすい部分)、この特定の小領域を設定することにより、一層見やすい合成画像を生成することができる。
(変形例1)
本発明の車両周辺映像表示装置は本実施形態の形態に限定されるものではなく、例えば、輝度調整手段20は、所定時間以上継続して同一の撮像画像が、影が含まれている画像であると影判定部15により特定された場合に、撮像画像毎の平均輝度を調整する構成としてもよい。
【0068】
このように構成された車両周辺映像表示装置によれば、同一の撮像画像に所定時間以上継続して影が含まれていない場合には平均輝度の調整が行われないため、モニタ3に表示される合成画像の輝度が頻繁に変化することによるちらつき感を運転者に与えるのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0069】
1 車載カメラ
5a,5b,5c,5d デコーダ(調整部)
10 目標輝度算出手段
11a,11b,11c,11d 輝度検出部
12 比較判定部
13 時計(日時情報取得部)
14 ナビゲーション装置(位置方位検出部)
15 影判定部
16 平均輝度算出部
17 デコーダパラメータ算出部
20 輝度調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる方向の車両周辺を撮像する複数の車載カメラと、前記車載カメラにより撮像された複数の撮像画像に基づいて単一の合成画像を生成する画像合成手段と、前記撮像画像毎の輝度を調整する輝度調整手段と、前記輝度の調整が行われた後の前記撮像画像に基づいて前記画像合成手段により生成された前記合成画像を表示する表示手段と、を備え、
前記輝度調整手段は、前記撮像画像毎の平均輝度を検出する輝度検出部と、前記合成画像に影が含まれているか否かを判定し、影が含まれていると判定した場合には前記合成画像を構成する複数の前記撮像画像の中から前記影が含まれている画像を特定する影判定部と、前記影判定部が前記影が含まれている画像を特定した場合、前記影が含まれている画像を除いた残りの撮像画像の平均輝度に基づいて前記撮像画像毎の輝度を調整する調整部と、を有していることを特徴とする車両周辺映像表示装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記影判定部が前記合成画像に影が含まれていないと判定した場合には、前記撮像画像毎の前記平均輝度を、全ての前記平均輝度の平均値と等しくなるように調整し、前記影判定部が前記合成画像に影が含まれていると判定し、前記影が含まれている画像を特定した場合には、前記影が含まれている画像を除いた残りの撮像画像の平均輝度を、前記影が含まれている画像を除いた残りの撮像画像の平均輝度の平均値と等しくなるように調整することを特徴とする請求項1に記載の車両周辺映像表示装置。
【請求項3】
前記輝度調整手段は、前記撮像画像毎の前記平均輝度のうち、全ての前記平均輝度の平均値の所定割合より低い平均輝度が有るか否かを比較判定する比較判定部を有し、
前記影判定部は、前記比較判定部が前記所定割合より低い平均輝度が無いと判定した場合には前記合成画像に影が含まれていないと判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両周辺映像表示装置。
【請求項4】
前記輝度調整手段は、前記車両の位置および前記車両が向いている方位を検出する位置方位検出部と、日時情報を取得する日時情報取得部と、を有し、
前記影判定部は、前記比較判定部が前記平均輝度のうち前記所定割合より低い平均輝度が有ると判定した場合には、前記位置方位検出部により検出された前記車両の位置および前記日時情報取得部により取得された前記日時情報に基づいて前記車両の位置を基準とした太陽の方位を特定し、前記太陽の方位および前記位置方位検出部により検出された前記車両が向いている方位に基づいて前記車両の影が現れる方位を特定し、前記所定割合より低い平均輝度である撮像画像が前記車両の影が現れる方位に対応した撮像画像である場合には、前記所定割合より低い平均輝度である撮像画像が前記車両の影が含まれている画像であると特定することを特徴とする請求項3に記載の車両周辺映像表示装置。
【請求項5】
前記輝度調整手段は、所定時間以上継続して同一の撮像画像が前記影が含まれている画像であると前記影判定部により特定された場合に、前記撮像画像毎の前記平均輝度を調整することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両周辺映像表示装置。
【請求項6】
前記撮像画像毎の前記平均輝度は、前記撮像画像の一部分である特定の小領域の平均輝度であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両周辺映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−250376(P2011−250376A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124397(P2010−124397)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】