説明

車両周辺監視装置

【課題】対象物が四足動物に該当するか否かの認識精度の向上を図ることができる装置を提供する。
【解決手段】本発明の車両周辺監視装置によれば、抽出対象物、すなわち、撮像画像から抽出された対象物に、上端部から下端部に向かって間隔が広がる一対の第1線分からなる特定部分が2つ存在するか否かに応じてこの対象物が四足動物に該当するか否かが判定される。歩行中の四足動物を横から見た場合、前後それぞれの左右一対の脚部が上端部から下端部に向かって間隔が広がる姿勢となることに鑑みて、各特定部分は歩行中の四足動物の前または後の左右一対の脚部に該当する可能性が高いため、この判定手法により対象物が四足動物に該当するか否かの認識精度の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された撮像装置によって得られる撮像画像を用いて車両の周辺を監視する車両周辺監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置により撮像された赤外線画像から対象物である歩行者の頭部に相当する領域を抽出し、当該頭部領域に基づいて歩行者の胴体に相当する領域を抽出することにより対象物が歩行者であることを認識し、この歩行者の存在を車両の運転者に知らせる技術が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−328364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、自車両の周辺には歩行者(人間)のみならず、鹿、羊、犬、及び馬等の四足動物も存在する場合がある。この場合、対象物が人間であるか否かを判定する手法が採用されても、対象物が四足動物であるか否かを判定することは困難である。このため、車両の運転者に四足動物の存在を知らせること、さらには、運転者が対象物との接触を回避するように車両を運転することが困難となる。
【0004】
そこで、本発明は、対象物が四足動物に該当するか否かの認識精度の向上を図ることができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明の車両周辺監視装置は、車両に搭載されている撮像装置により得られた撮像画像を用いて車両の周辺を監視する車両周辺監視装置であって、前記撮像画像から対象物を抽出する対象物抽出手段と、前記対象物抽出手段により抽出された前記対象物において、上端部から下端部に向かって間隔が徐々に広がるように配置されている一対の第1線分からなる特定部分が、横に並んで2つ存在するか否かに応じて、前記対象物が四足動物に該当するか否かを判定する対象物判定手段とを備えていることを特徴とする。
【0006】
第1発明の車両周辺監視装置によれば、抽出対象物、すなわち、撮像画像から抽出された対象物に、上端部から下端部に向かって間隔が広がる一対の第1線分からなる特定部分が2つ存在するか否かに応じてこの対象物が四足動物に該当するか否かが判定される。歩行中の四足動物を横から見た場合、前後それぞれの左右一対の脚部が上端部から下端部に向かって間隔が広がる姿勢となることに鑑みて、各特定部分は歩行中の四足動物の前または後の左右一対の脚部に該当する可能性が高いため、この判定手法により対象物が四足動物に該当するか否かの認識精度の向上を図ることができる。なお、第1の線分は直線部分、曲線部分およびこれらの組み合わせを包含する概念であり、また、その幅は撮像画像におけるピクセルの数に換算して「1」であっても「2」以上であってもよく、さらに、その幅は一定であっても一定でなくてもよい。
【0007】
第2発明の車両周辺監視装置は、第1発明の車両周辺監視装置において、前記対象物判定手段が、前記対象物抽出手段により抽出された前記対象物において、2つの前記特定部分のうち一方の上端部よりも上側にある点から伸びる1つの第2線分の有無に応じて、前記対象物が四足動物に該当するか否かを判定することを特徴とする。
【0008】
第2発明の車両周辺監視装置によれば、抽出対象物に前記のように特定部分が2つ存在するか否かに加えて、2つの特定部分のうち一方の上端部よりも上側にある点から伸びる1つの第2線分が存在するか否かに応じてこの対象物が四足動物に該当するか否かが判定される。四足動物を横から見た場合、その頭部が前側脚部の根元の近傍に位置することに鑑みて、第2線分は四足動物の頭部に該当する可能性が高いため、この判定手法により対象物が四足動物に該当するか否かの認識精度の向上を図ることができる。なお、第2の線分は、第1の線分と同様に直線部分、曲線部分およびこれらの組み合わせを包含する概念であり、また、その幅は撮像画像におけるピクセルの数に換算して「1」であっても「2」以上であってもよく、さらに、その幅は一定であっても一定でなくてもよい。
【0009】
第3発明の車両周辺監視装置は、第1または第2発明の車両周辺監視装置において、前記対象物判定手段が、前記対象物からその形状特性を有する線画像を細線化処理により生成し、前記線画像を直線近似することにより直線部分を生成し、上端部から下端部に向かって間隔が徐々に広がるように配置されている一対の前記直線部分の有無に応じて、前記対象物における前記特定部分の有無を判定することを特徴とする。
【0010】
第3発明の車両周辺監視装置によれば、抽出対象物の細線化処理による線画像の生成および線画像の直線近似による直線部分の抽出により、この抽出対象物における特定部分の有無の判定を容易にすることができるので、対象物が四足動物に該当するか否かの認識精度の向上を図ることができる。なお、直線線分の幅は撮像画像におけるピクセルの数に換算して「1」である。
【0011】
第4発明の車両周辺監視装置は、第1発明の車両周辺監視装置において、前記対象物判定手段が、上端部から下端部に向かって間隔が徐々に広がるように配置されている一対の線分よりなるテンプレートに形状が一致する部分の有無に応じて、前記対象物における前記特定部分の有無を判定することを特徴とする。
【0012】
第4発明の車両周辺監視装置によれば、テンプレートの採用により、この抽出対象物における特定部分の有無の判定を容易にすることができるので、対象物が四足動物に該当するか否かの認識精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の車両周辺監視装置の実施形態について説明する。まず、本実施形態の車両周辺監視装置の構成について説明する。車両周辺監視装置は図1および図2に示されている画像処理ユニット1を備えている。画像処理ユニット1には、自車両10の前方の画像を撮像する撮像装置としての2つの赤外線カメラ2R,2Lが接続されると共に、自車両10の走行状態を検出するセンサとして、自車両10のヨーレートを検出するヨーレートセンサ3、自車両10の走行速度(車速)を検出する車速センサ4、および自車両10のブレーキ操作の有無を検出するブレーキセンサ5とが接続されている。さらに、画像処理ユニット1には、音声などによる聴覚的な通報情報を出力するためのスピーカ6、および赤外線カメラ2R,2Lにより撮像された撮像画像や視覚的な通報情報を表示するための表示装置7が接続されている。なお、赤外線カメラ2R,2Lが本発明における撮像装置に相当する。
【0014】
画像処理ユニット1は、詳細な図示は省略するが、A/D変換回路、マイクロコンピュータ(CPU、RAM、ROM等を有する)、画像メモリなどを含む電子回路により構成され、赤外線カメラ2R,2L、ヨーレートセンサ3、車速センサ4およびブレーキセンサ5から出力されるアナログ信号が、A/D変換回路によりデジタルデータ化されて、マイクロコンピュータに入力される。そして、マイクロコンピュータは、入力されたデータを基に、人(歩行者、自転車に乗っている者)などの対象物を検出し、検出した対象物が所定の通報要件を満す場合にスピーカ6や表示装置7により運転者に通報を発する処理を実行する。なお、画像処理ユニット1は、本発明における対象物抽出手段および対象物判定手段としての機能を備えている。
【0015】
図2に示されているように、赤外線カメラ2R,2Lは、自車両10の前方を撮像するために、自車両10の前部(図ではフロントグリルの部分)に取り付けられている。この場合、赤外線カメラ2R,2Lは、それぞれ、自車両10の車幅方向の中心よりも右寄りの位置、左寄りの位置に配置されている。それら位置は、自車両10の車幅方向の中心に対して左右対称である。赤外線カメラ2R,2Lは、それらの光軸が互いに平行に自車両10の前後方向に延在し、且つ、それぞれの光軸の路面からの高さが互いに等しくなるように固定されている。赤外線カメラ2R,2Lは、遠赤外域に感度を有し、それにより撮像される物体の温度が高いほど、出力される映像信号のレベルが高くなる(映像信号の輝度が高くなる)特性を有している。
【0016】
また、本実施形態では、表示装置7として、自車両10のフロントウィンドウに画像情報を表示するヘッド・アップ・ディスプレイ7a(以下、HUD7aという)を備えている。なお、表示装置7として、HUD7aの代わりに、もしくは、HUD7aとともに、自車両10の車速などの走行状態を表示するメータに一体的に設けられたディスプレイ、あるいは、車載ナビゲーション装置に備えられたディスプレイを用いてもよい。
【0017】
次に、前記構成の車両周辺監視装置の基本的な機能について図3のフローチャートを用いて説明する。図3のフローチャートの基本的な処理内容は、例えば本出願人による特開2001−6096号の図3および特開2007−310705号の図3に記載されている処理内容と同様である。
【0018】
具体的にはまず、赤外線カメラ2R、2Lから赤外線画像信号が画像処理ユニット1に入力される(図3/STEP11)。次いで、画像処理ユニット1は、赤外線カメラ2R、2Lの出力信号をA/D変換する(図3/STEP12)。そして、画像処理ユニット1は、A/D変換された赤外線画像からグレースケール画像を取得する(図3/STEP13)。その後、画像処理ユニット1は、基準画像(右画像)を2値化する(図3/STEP14)。次いで、画像処理ユニット1は、前記2値化画像に対してSTEP15〜17の処理を実行し、該2値化画像から対象物(より正確には対象物に対応する画像領域)を抽出する。具体的には、前記2値化画像の高輝度領域を構成する画素群をランレングスデータに変換する(図3/STEP15)。次いで、基準画像の縦方向に重なりを有するライン群のそれぞれにラベル(識別子)を付する(図3/STEP16)。そして、ライン群のそれぞれを対象物として抽出する(図3/STEP17)。その後、画像処理ユニット1は、上記の如く抽出した各対象物の重心の位置(基準画像上での位置)、面積、及び外接四角形の縦横比を算出する(図3/STEP18)。次いで、画像処理ユニット1は、前記STEP18で抽出した対象物の時刻間追跡、すなわち、画像処理ユニット1の演算処理周期毎の同一対象物の認識を行なう(図3/STEP19)。そして、画像処理ユニット1は、前記車速センサ4およびヨーレートセンサ5の出力(車速の検出値及びヨーレートの検出値)を読み込む(図3/STEP20)。
【0019】
一方、画像処理ユニット1は、外接四角形の縦横費算出および対象物の時刻間追跡と並行して、まず、前記基準画像のうち、各対象物に対応する領域(例えば該対象物の外接四角形の領域)を探索画像として抽出する(図3/STEP31)。次いで、左画像中から探索画像に対応する画像(対応画像)を探索する探索領域を設定し、相関演算を実行して対応画像を抽出する(図3/STEP32)。そして、対象物の自車両10からの距離(自車両10の前後方向における距離)を算出する(図3/STEP33)。
【0020】
次いで、画像処理ユニット1は、各対象物の実空間上での位置(自車両10に対する相対位置)である実空間位置を算出する(図3/STEP21)。そして、画像処理ユニット1は、対象物の実空間位置(X,Y,Z)のうちのX方向の位置Xを前記STEP20で求めた回頭角の時系列データに応じて補正する(図3/STEP22)。その後、画像処理ユニット1は、対象物の自車両10に対する相対移動ベクトルを推定する(図3/STEP23)。次いで、STEP23において、相対移動ベクトルが求められたら、検出した対象物との接触の可能性を判定し、その可能性が高いときに通報を発する通報判定処理を実行する(図3/STEP24)。そして、対象物が通報判定要件を満たすと判定した場合(図3/STEP24‥YES)、通報判定要件を満たす対象物に関する実際の通報を行うべきか否かの判定を行う通報出力判定処理を実行する(図3/STEP25)。その後、画像処理ユニット1は、通報を行うべきと判定した場合(図3/STEP25‥YES)、運転者に対して自車両10との接触可能性が高い状況である旨の通報をする(図3/STEP26)。具体的には、スピーカ6を介して音声を出力することにより当該状況が通報される。また、HUD7aにおいて対象物を強調表示することによっても当該状況が通報される。以上が本実施形態の周辺監視装置の全体的作動である。なお、画像処理ユニット1によりSTEP11〜18の処理を実行する構成が、本発明の対象物抽出手段に相当する。
【0021】
次に、図3に示したフローチャートのSTEP24における通報判定処理について図4のフローチャートを用いて説明する。図4のフローチャートの基本的な処理内容は、例えば本出願人による特開2001−6096号の図4および特開2007−310705号の図4に記載されている処理内容と同様である。
【0022】
具体的にはまず、画像処理ユニット1は、接触判定処理を行う(図4/STEP41)。接触判定処理は、自車両10と対象物との距離が、相対速度Vsと余裕時間Tとを乗じた値以下の場合に、接触の可能性があるものとして判定する。次いで、余裕時間T以内に自車両と対象物とが接触する可能性がある場合(図4/STEP41‥YES)、画像形成ユニット1は、対象物が接近判定領域内に存在するか否かを判定する(図4/STEP42)。そして、対象物が接近判定領域内に存在しない場合(図4/STEP42‥NO)、画像形成ユニット1は、対象物が接近判定領域内に侵入して自車両10と接触する可能性があるか否かを判定する(図4/STEP43)。具体的には、対象物が侵入判定領域に存在し、かつ、STEP23で求めた対象物の移動ベクトルが接近判定領域に向かっているときに、当該接触可能性が高いと判定される。
【0023】
一方、対象物が接近判定領域内に存在している場合(図4/STEP42‥YES)、または対象物が接近判定領域内に侵入して自車両10と接触する可能性がある場合(図4/STEP43‥YES)、画像処理ユニット1は、対象物が人工構造物であるか否かを判定する人工構造物判定処理を行う(図4/STEP44)。人工構造物判定処理は、歩行者にはあり得ない特徴が検出された場合、該対象物を人工構造物と判定する。次いで、対象物は人工構造物ではないと判定された場合(図4/STEP44‥NO)、対象物が歩行者に該当するか否かが判定される(図4/STEP45)。具体的には、グレースケール画像上で対象物の画像領域の形状や大きさ、輝度分散等の特徴から、対象物が歩行者に該当するか否かが判定される。そして、対象物が歩行者に該当すると判定された場合(図4/STEP45‥YES)、検出した対象物を通報または注意喚起の対象として決定する(図4/STEP46)。
【0024】
一方、対象物は人工構造物であると判定された場合(図4/STEP44‥YES)、または対象物が歩行者でないと判定された場合(図4/STEP45‥NO)、この対象物が四足動物に該当するか否かが判定される(図4/STEP47)。対象物が四足動物に該当すると判定された場合(図4/STEP47‥YES)、画像処理ユニット1は、検出した対象物を通報の対象として決定する(図4/STEP46)。その一方、対象物が四足動物に該当しないと判定された場合(図4/STEP47‥NO)、画像処理ユニット1は、検出した対象物を通報の対象から除外される(図4/STEP48)。
【0025】
次に、本発明の車両周辺監視装置の主要な機能である対象物種別判定処理について図5のフローチャートを用いて説明する。
【0026】
対象物抽出手段により抽出された対象物が細線化処理される(図5/STEP100)。細線化処理は、2値化画像から抽出された対象物を幅1ピクセルまたは1画素の線画像に変換する処理であり、対象物の輪郭画素のうち対象物の形状特性を抽出する観点から削除可能な画素をそぎ落としていくことにより実行される。これにより、たとえば図6(a)に示されているグレースケール画像(図3/STEP13参照)から図6(b)に示されている2値化画像が得られた場合(図3/STEP14参照)、図6(c)に示されているように2値化画像において高輝度領域として抽出された対象物の形状特性を有する線画像が取得される。
【0027】
次いで、対象物の線画像から端点が探索される(図5/STEP102)。具体的には、線画像における一の点(ピクセル)を取り囲む8つのピクセルに、線画像の他の点が1つだけ含まれている場合、当該一の点は対象物の端点であると認識される。これにより、たとえば図6(c)に示されている線画像から、図7(a)に丸印で示されているように5つの端点pi+(i=1〜5)が探索される。端点p1+は対象物としての四足動物の頭部の先端部に該当し、端点p2+〜p5+のそれぞれは四足動物の各脚部の先端部に該当する。
【0028】
さらに、対象物の線画像から探索された端点pi+の数が「5」であるか否かが判定される(図5/STEP104)。たとえば、図7(a)に丸印で示されているように5つの端点p1+〜p5+が探索された場合、当該判定結果は肯定的になる。当該判定結果が肯定的である場合(図5/STEP104‥YES)、当該端点pi+を始点とする線分の分岐点pi−が探索される(図5/STEP106)。具体的には、各端点pi+を始点とする線分における一の点(ピクセル)を取り囲む8つのピクセルに、線画像の他の点が3つ含まれている場合、当該一の点はこの線分の分岐点pi−であると認識される。これにより、たとえば図7(a)に示されている5つの端点p1+〜p5+のそれぞれを始点とする5つの線分のそれぞれについて図7(b)に丸印で示されているように5つの分岐点p1−〜p5−が探索される。第4の分岐点p4−および第5の分岐点p5−は同一である。
【0029】
また、各線分が直線近似されることにより直線線分が生成される(図5/STEP108)。具体的には、端点pi+と、この端点pi+を始点とする線分の分岐点pi−とを結ぶことにより直線線分Liが生成される。これにより、たとえば図7(c)に示されているように端点p1+〜p5+のそれぞれと、分岐点p1−〜p5−のそれぞれとを結ぶ5つの直線線分L1〜L5が生成される。なお、図7(c)に示されている直線線分L1〜L5に代わり、図8(a)または図8(b)に示されているような直線線分l1〜L5も生成されうる。
【0030】
さらに、各直線線分Liの傾きが算出される(図5/STEP110)。具体的には、画像右方向を+x方向とし、画像上方向を+y方向として定義された画像座標系(2次元)において、端点pi+および分岐点pi−のそれぞれのx座標およびy座標に基づき、直線線分の傾きが算定される。これにより、たとえば、図7(c)に示されている第1の直線線分L1の傾きは負、第2の直線線分L2の傾きは正、第3の直線線分L3の傾きは負、第4の直線線分L4の傾きは正、第5の直線線分L5の傾きは負となる。また、図8(a)に示されているような直線線分L1〜L5が生成された場合、直線線分L1〜L5のそれぞれの傾きは順に正、正、負、正、負となる。さらに、図8(b)に示されているような直線線分L1〜L5が生成された場合、直線線分L1〜L5のそれぞれの傾きは順に正、負、正、負、正となる。また、各直線線分Li、端点pi+および分岐点pi−を区別するための指数「i」が付される(図5/STEP112)。具体的には、端点pi+が画像左端に近い順に、すなわち、x座標が小さい順に指数iが付される。なお、指数iは端点が探索された段階で付されてもよい。ここで、端点より分岐点が低い直線線分がある場合は、除外して処理を行ってもよい。
【0031】
次いで、第1の直線線分L1と第2の直線線分L2とが特定部分に該当するか否かが判定される(図5/STEP114)。「特定部分」とは、上端部から下端部に向かって間隔が徐々に広がるように配置されている一対の第1線分からなる部分を意味する。具体的には、第1の直線線分L1の傾きが正であり、かつ、第2の直線線分L2の傾きが負であるか否かに応じて、当該2つの直線線分L1およびL2が特定部分に該当するか否かが判定される。たとえば、図7(c)および図8(a)に示されている状況では当該判定結果は否定的となる一方、図8(b)に示されている状況では当該判定結果は肯定的となる。
【0032】
第1の直線線分L1および第2の直線線分L2が特定部分に該当すると判定された場合(図5/STEP114‥YES)、第3の直線線分L3と第4の直線線分L4とが特定部分に該当するか否かが判定される(図5/STEP116)。具体的には、第3の直線線分L3の傾きが正であり、かつ、第4の直線線分L4の傾きが負であるか否かに応じて、当該2つの直線線分L3およびL4が特定部分に該当するか否かが判定される。たとえば、図8(b)に示されている状況では当該判定結果は肯定的となる。そして、第3の直線線分L3および第4の直線線分L4が特定部分に該当すると判定された場合(図5/STEP116‥YES)、対象物が四足動物に該当すると判定される(図5/STEP122)。なお、図8(b)に示されている状況では第1〜第4の直線線分L1〜L4が、四足動物の脚部に相当する「第1線分」に該当する。
【0033】
その一方、第1の直線線分L1および第2の直線線分L2が特定部分に該当しないと判定された場合(図5/STEP114‥NO)、第2の直線線分L2と第3の直線線分L3とが特定部分に該当するか否かが判定される(図5/STEP118)。具体的には、第2の直線線分L2の傾きが正であり、かつ、第3の直線線分L3の傾きが負であるか否かに応じて、当該2つの直線線分L2およびL3が特定部分に該当するか否かが判定される。たとえば、図7(c)および図8(a)に示されている状況では当該判定結果は肯定的となる。
【0034】
第2の直線線分L2および第3の直線線分L3が特定部分に該当すると判定された場合(図5/STEP118‥YES)、第4の直線線分L4と第5の直線線分L5とが特定部分に該当するか否かが判定される(図5/STEP120)。具体的には、第4の直線線分L4の傾きが正であり、かつ、第5の直線線分L5の傾きが負であるか否かに応じて、当該2つの直線線分L4およびL5が特定部分に該当するか否かが判定される。たとえば、図7(c)および図8(a)に示されている状況では当該判定結果は肯定的となる。そして、第4の直線線分L4および第5の直線線分L5が特定部分に該当すると判定された場合(図5/STEP120‥YES)、対象物が四足動物に該当すると判定される(図5/STEP122)。なお、図7(c)および図8(a)に示されている状況では第2〜第5の直線線分L2〜L5が、四足動物の脚部に相当する「第1線分」に該当する。
【0035】
なお、画像処理ユニット1により対象物種別判定処理(STEP100〜122、STEP200〜206)を実行する構成(メモリと、このメモリからプログラムを読み出し、このプログラムにしたがって担当演算処理を実行する演算処理装置(CPU)とが該当する。)が「対象物判定手段」に該当する。
【0036】
前記機能を発揮する車両周辺監視装置によれば、抽出対象物、すなわち、撮像画像から抽出された対象物に、上端部から下端部に向かって間隔が広がる一対の第1線分からなる特定部分が2つ存在するか否かに応じてこの対象物が四足動物に該当するか否かが判定される(図5/S114〜S122、図7(c)、図8(a)および図8(b)参照)。歩行中の四足動物を横から見た場合、前後それぞれの左右一対の脚部が上端部から下端部に向かって間隔が広がる姿勢となることに鑑みて、各特定部分は歩行中の四足動物の前または後の左右一対の脚部に該当する可能性が高いため、この判定手法により対象物が四足動物に該当するか否かの認識精度の向上を図ることができる。また、抽出対象物の細線化処理による線画像の生成および線画像の直線近似による直線部分の抽出により、この抽出対象物における特定部分の有無の判定を容易にすることができるので、対象物が四足動物に該当するか否かの認識精度の向上を図ることができる。
【0037】
なお、細線化処理(図5/STEP100)が省略され、上端部から下端部に向かって間隔が広がるように配置されている一対の第1線分(幅は2ピクセル以上であってもよく、その幅は一定でも一定でなくてもよい。)が特定部分として認識されてもよい。
【0038】
前記実施形態では対象物の線画像の端点数が「5」であることを要件として対象物における特定部分の有無が判定されたが(図5/STEP104,S114〜S120参照)、これは、四足動物であれば頭部および4本の脚部のそれぞれの先端部に相当する端点が抽出されるはずであるという思想に基づいている。そのほか、四足動物であれば少なくとも4本の脚部のそれぞれの先端部に相当する端点が抽出されるはずであるという思想に基づき、端点数が「4」であることを要件として対象物における特定部分の有無が判定されてもよい。
【0039】
また、抽出対象物に前記のように特定部分が2つ存在するか否かに加えて、2つの特定部分のうち一方の上端部よりも上側にある点から伸びる1つの第2線分が存在するか否かに応じてこの対象物が四足動物に該当するか否かが判定されてもよい。たとえば、図7(c)および図8(a)に示されている線画像において認識された第1の直線線分L1が「第2線分」として認識される。また、図8(b)に示されている線画像において認識された第5の直線線分L5が「第2線分」として認識される。四足動物を横から見た場合、その頭部が前側脚部の根元の近傍に位置することに鑑みて、第2線分は四足動物の頭部に該当する可能性が高いため、この判定手法により対象物が四足動物に該当するか否かの認識精度の向上を図ることができる。
【0040】
さらに、上端部から下端部に向かって間隔が徐々に広がるように配置されている一対の線分よりなるテンプレートに形状が一致する部分の有無に応じて、対象物における特定部分の有無が判定されてもよい。具体的には、まずメモリにあらかじめ保存されている前記のようなテンプレートが選択される(図9/STEP200)。次いで、パターンマッチングにより、抽出対象物においてテンプレートと形状が一致する部分の有無が判定される(図9/STEP202)。そして、対象物に該当部分が2つ存在するか否かが判定される(図9/STEP204)。当該判定結果が肯定的である場合(図9/STEP204‥YES)、対象物が四足動物であると判定される(図9/STEP206)。なお、テンプレートは、一対の線分の間隔の変化態様が異なる複数のテンプレートが採用されてもよい。当該他の実施形態の車両周辺監視装置によれば、テンプレートの採用により、この抽出対象物における特定部分の有無の判定を容易にすることができるので、対象物が四足動物に該当するか否かの認識精度の向上を図ることができる。
【0041】
また、本実施形態においては、画像処理ユニット1の処理結果に基づいて、所定の通報を行うように構成されているが、該処理結果に基づいて車両挙動を制御するように構成してもよい。さらに、前記実施形態では、2台の赤外線カメラ2R,2Lを備えたが、1台の赤外線カメラを自車両10に搭載するようにしてもよい。この場合には、対象物との距離をレーダーなどにより検出するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の車両の周辺監視装置の一実施形態の全体構成を示す図
【図2】図1の周辺監視装置を備えた車両の斜視図
【図3】図1の周辺監視装置に備えた画像処理ユニットの処理を示すフローチャート
【図4】図1の周辺監視装置に備えた画像処理ユニットの処理を示すフローチャート
【図5】本実施形態における対象物種別判定処理を示すフローチャート
【図6】画像処理ユニットの処理を説明するための図
【図7】画像処理ユニットの処理を説明するための図
【図8】画像処理ユニットの処理を説明するための図
【図9】本実施形態における他の対象物種別判定処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0043】
1…画像処理ユニット(対象物抽出手段、対象物判定手段)、2R,2L…赤外線カメラ(撮像装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されている撮像装置により得られた撮像画像を用いて車両の周辺を監視する車両周辺監視装置であって、
前記撮像画像から対象物を抽出する対象物抽出手段と、
前記対象物抽出手段により抽出された前記対象物において、上端部から下端部に向かって間隔が徐々に広がるように配置されている一対の第1線分からなる特定部分が、横に並んで2つ存在するか否かに応じて、前記対象物が四足動物に該当するか否かを判定する対象物判定手段とを備えていることを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両周辺監視装置において、
前記対象物判定手段が、前記対象物抽出手段により抽出された前記対象物において、2つの前記特定部分のうち一方の上端部よりも上側にある点から伸びる1つの第2線分の有無に応じて、前記対象物が四足動物に該当するか否かを判定することを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両周辺監視装置において、
前記対象物判定手段が、前記対象物からその形状特性を有する線画像を細線化処理により生成し、前記線画像を直線近似することにより直線部分を生成し、上端部から下端部に向かって間隔が徐々に広がるように配置されている一対の前記直線部分の有無に応じて、前記対象物における前記特定部分の有無を判定することを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項4】
請求項1記載の車両周辺監視装置において、
前記対象物判定手段が、上端部から下端部に向かって間隔が徐々に広がるように配置されている一対の線分よりなるテンプレートに形状が一致する部分の有無に応じて、前記対象物における前記特定部分の有無を判定することを特徴とする車両周辺監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−9372(P2010−9372A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168868(P2008−168868)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】