説明

車両搭載機器の固定構造

【課題】車両の衝突時などにおいても、インバータ等の車両搭載機器を保護することができ、さらに、コンパクト化の図られた車両搭載機器の固定構造を提供する。
【解決手段】インバータ720の固定構造は、インバータ720を収容可能なエンジンコンパートメントが形成された車両本体に固定され、インバータ720が搭載される載置台211と、載置台211上のインバータ720よりも車両本体の後方側に延在し、該インバータ720から後方に向かうにしたがって、インバータ720に対して後方側に間隔をあけて設けられた後方部材の上方に向けて傾斜した案内部150と、案内部150に対して、該案内部150の延在方向に摺動可能に設けられ、少なくとも一部が、案内部150の後方側の端部から突出可能とされた案内部160とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載機器の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両の衝突時における車両搭載機器への影響の低減等が図られた車両搭載機器の固定構造が各種提案されている。
【0003】
たとえば、特開2001−97052号公報に記載された車両用補機部品の固定構造においては、インバータは、その長手方向が車両の前後方向に対して傾斜した状態で、サスタワの直前に配置されている。そして、エンジンコンパートメントが圧縮変形した際に、インバータは、フロントサイドメンバに対して移動可能に設けられている。これにより、車両の衝突などによってインバータに衝撃が加わると、インバータは、サスタワによって案内され、インバータの長手方向がトーボードに沿うように変位する。このように、サスタワによってインバータの後退が食い止められ、インバータの長手方向がトーボードに沿うように変位するので、衝突による衝撃がインバータを介してトーボードに伝達されることが抑制されている。
【0004】
また、特開平6−48185号公報に記載された電気自動車のバッテリ取付構造においては、一方の端部がフロアに軸支されたバッテリキャリアと、このバッテリキャリアの他方の端部に設けられたスライダと、このスライダのヘッドを支持するガイドレールと、衝撃吸収体とを備えている。そして、バッテリキャリアに所定以上の慣性力が加えられると、バッテリキャリアは、ガイドレールに沿って変位し、その後、衝撃吸収体と衝突し、バッテリキャリアの運動エネルギが吸収される。これにより、衝突時における車両前部に加えられる衝撃力が緩和されている。
【特許文献1】特開2001−97052号公報
【特許文献2】特開平6−48185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特開2001−97052号公報に記載された車両用補機部品の固定構造においては、インバータよりも前方側の他の車両搭載機器がインバータと接触して、インバータが損傷するおそれがある。
【0006】
さらに、特開平6−48185号公報に記載されたバッテリの取付構造においては、ガイドレールや衝撃吸収体を設ける必要があり、エンジンコンパートメント内において大きな容量を占めることになる。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両の衝突時などにおいても、インバータ等の車両搭載機器を保護することができ、さらに、コンパクト化の図られた車両搭載機器の固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両搭載機器の固定構造は、車両搭載機器を収容可能な収容室が形成された車両本体に固定され、車両搭載機器が搭載される載置台と、載置台上の車両搭載機器よりも車両本体の後方側に延在し、該車両搭載機器から後方に向かうにしたがって、車両搭載機器に対して後方側に間隔をあけて設けられた後方部材の上方に向けて傾斜した第1案内部とを備えている。さらに、この車両搭載機器の固定構造は、第1案内部に対して、該第1案内部の延在方向に摺動可能に設けられ、少なくとも一部が、第1案内部の後方側の端部から突出可能とされた第2案内部とを備えている。好ましくは、上記第1案内部の車両本体の前方側の端部は、車両搭載機器下に配置され、載置台に固定される。
【0009】
好ましくは、上記載置台のうち、車両搭載機器が搭載される搭載面は、車両の前方側から後方側に向かうにしたがって、上方に向かうように傾斜する。
【0010】
好ましくは、上記第2案内部は、該第2案内部のうち、載置台に載置された車両搭載機器よりも車両本体後方側に位置する部分に設けられ、載置台に載置された車両搭載機器の底面よりも上方に達する突出部を含む。
【0011】
好ましくは、上記車両搭載機器は、第2案内部に向けて張り出すと共に、突出部に向けて垂下する垂下部を含み、突出部は、垂下部に対して車両搭載機器側から垂下部に係止される。好ましくは、上記車両本体の後方に向けて車両搭載機器が押圧されると、車両搭載機器と載置台との連結状態を解除可能に車両搭載機器を載置台に固定する固定部材をさらに備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る車両搭載機器の固定構造においては、車両の衝突時などにおいても、インバータ等の車両搭載機器と他の機器との衝突によりインバータ等の車両搭載機器が損傷することを抑制することができ、コンパクトな構成でインバータ等の車両搭載機器を固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る車両搭載機器の固定構造について、図1から図14を用いて説明する。
【0014】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下に複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合わせることは、当初から予定されている。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るハイブリッド車両の概略構成を示すブロック図である。この図1に示すように、ハイブリッド車両200は、モノコックボディなどの車両本体101と、車両本体101に規定されたエンジンコンパートメント201内に収容された複数の車両搭載機器とを備えている。そして、このハイブリッド車両200は、エンジン100と、モータジェネレータ350と、動力分割機構300と、ディファレンシャル機構400と、ドライブシャフト500と、前輪である駆動輪600L,600Rと、PCU(Power Control Unit)700と、エアクリーナ800と、バッテリ1000と、A/C(air/conditioner)コンプレッサ1100とを備える。
【0016】
そして、エンジン100と、モータジェネレータ350と、動力分割機構300と、PCU700と、A/Cコンプレッサ1100とは、エンジンコンパートメント201内に配設される。モータジェネレータ350とPCU700とは、ケーブル900Aにより接続される。PCU700とバッテリ1000とは、ケーブル900Bにより接続される。PCU700とA/Cコンプレッサ1100とは、ケーブル900Cにより接続される。また、エンジン100およびモータジェネレータ350からなる動力出力装置は、動力分割機構300を介してディファレンシャル機構400に連結されている。ディファレンシャル機構400は、ドライブシャフト500を介して駆動輪600L,600Rに連結されている。
【0017】
モータジェネレータ350は、3相交流同期電動発電機であって、PCU700から受ける交流電力によって駆動力を発生する。また、モータジェネレータ350は、ハイブリッド車両200の減速時等においては発電機としても使用され、その発電作用(回生発電)により交流電力を発電し、その発電した交流電力をPCU700へ出力する。
【0018】
PCU700は、バッテリ1000から受ける直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ350を駆動制御する。また、PCU700は、モータジェネレータ350が発電した交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ1000を充電する。
【0019】
動力分割機構300は、たとえばプラネタリギヤ(図示せず)を含んで構成される。エンジン100および/またはモータジェネレータ350から出力された動力は、動力分割機構300からディファレンシャル機構400を介してドライブシャフト500に伝達される。ドライブシャフト500に伝達された駆動力は、駆動輪600L,600Rに回転力として伝達されて、車両を走行させる。このように、モータジェネレータ350は、電動機として作動する。
【0020】
一方、車両の減速時等においては、駆動輪600L,600Rあるいはエンジン100によってモータジェネレータ350が駆動される。このとき、モータジェネレータ350が発電機として作動する。モータジェネレータ350により発電された電力は、PCU700内のインバータを介してバッテリ1000に蓄えられる。
【0021】
図2は、PCU700の主要部の構成を示す回路図である。図2を参照して、PCU700は、コンバータ710と、インバータ720と、制御装置730と、コンデンサC1,C2と、電源ラインPL1〜PL3と、出力ライン740U,740V,740Wとを含む。コンバータ710は、バッテリ1000とインバータ720との間に接続され、インバータ720は、出力ライン740U,740V,740Wを介してモータジェネレータ350と接続される。
【0022】
コンバータ710に接続されるバッテリ1000は、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池である。バッテリ1000は、発生した直流電圧をコンバータ710に供給し、また、コンバータ710から受ける直流電圧によって充電される。
【0023】
コンバータ710は、パワートランジスタQ1,Q2と、ダイオードD1,D2と、リアクトルLとからなる。パワートランジスタQ1,Q2は、電源ラインPL2,PL3間に直列に接続され、制御装置730からの制御信号をベースに受ける。ダイオードD1,D2は、それぞれパワートランジスタQ1,Q2のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ1,Q2のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続される。リアクトルLは、バッテリ1000の正極と接続される電源ラインPL1に一端が接続され、パワートランジスタQ1,Q2の接続点に他端が接続される。
【0024】
このコンバータ710は、リアクトルLを用いてバッテリ1000から受ける直流電圧を昇圧し、その昇圧した昇圧電圧を電源ラインPL2に供給する。また、コンバータ710は、インバータ720から受ける直流電圧を降圧してバッテリ1000を充電する。
【0025】
インバータ720は、U相アーム750U、V相アーム750VおよびW相アーム750Wからなる。各相アームは、電源ラインPL2,PL3間に並列に接続される。U相アーム750Uは、直列に接続されたパワートランジスタQ3,Q4を含み、V相アーム750Vは、直列に接続されたパワートランジスタQ5,Q6を含み、W相アーム750Wは、直列に接続されたパワートランジスタQ7,Q8を含む。ダイオードD3〜D8は、それぞれパワートランジスタQ3〜Q8のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ3〜Q8のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続される。そして、各相アームにおける各パワートランジスタの接続点は、出力ライン740U,740V,740Wを介してモータジェネレータ350の各相コイルの反中性点側にそれぞれ接続されている。
【0026】
このインバータ720は、制御装置730からの制御信号に基づいて、電源ラインPL2から受ける直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ350へ出力する。また、インバータ720は、モータジェネレータ350によって発電された交流電圧を直流電圧に整流して電源ラインPL2に供給する。
【0027】
コンデンサC1は、電源ラインPL1,PL3間に接続され、電源ラインPL1の電圧レベルを平滑化する。また、コンデンサC2は、電源ラインPL2,PL3間に接続され、電源ラインPL2の電圧レベルを平滑化する。
【0028】
制御装置730は、モータトルク指令値、モータジェネレータ350の各相電流値、およびインバータ720の入力電圧に基づいてモータジェネレータ350の各相コイル電圧を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ3〜Q8をオン/オフするPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成してインバータ720へ出力する。
【0029】
また、制御装置730は、上述したモータトルク指令値およびモータ回転数に基づいてインバータ720の入力電圧を最適にするためのパワートランジスタQ1,Q2のデューティ比を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ1,Q2をオン/オフするPWM信号を生成してコンバータ710へ出力する。
【0030】
さらに、制御装置730は、モータジェネレータ350によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ1000を充電するため、コンバータ710およびインバータ720におけるパワートランジスタQ1〜Q8のスイッチング動作を制御する。
【0031】
このPCU700においては、コンバータ710は、制御装置730からの制御信号に基づいて、バッテリ1000から受ける直流電圧を昇圧して電源ラインPL2に供給する。そして、インバータ720は、コンデンサC2によって平滑化された直流電圧を電源ラインPL2から受け、その受けた直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ350へ出力する。
【0032】
また、インバータ720は、モータジェネレータ350の回生動作によって発電された交流電圧を直流電圧に変換して電源ラインPL2へ出力する。そして、コンバータ710は、コンデンサC2によって平滑化された直流電圧を電源ラインPL2から受け、その受けた直流電圧を降圧してバッテリ1000を充電する。
【0033】
ここで、インバータ720に供給される電圧は、600V程度となっており、衝突時においても、インバータを保護する必要がある。
【0034】
図3は、エンジンコンパートメント201内におけるエンジン100やインバータ720などの配置状態を模式的に示す模式図である。この図3を参照して、車両本体101は、乗員を収容可能な車室と、この車室に対して前方側に形成されたエンジンコンパートメント201と、車室に対して後方側に規定されたラゲッジルームとを備えている。
【0035】
そして、エンジンコンパートメント201内には、エンジン100やインバータ720等の複数の車両搭載機器が搭載されている。エンジン100は、エンジンコンパートメント201の幅方向の中央部に対して、車両本体101の一方の側面側にオフセットするように配置されている。そして、エンジン100の端部は、エンジンマウント191によって支持されている。
【0036】
さらに、エンジンコンパートメント201を規定する車両本体101の両側面には、サスタワ190が設けられており、サスタワ190は、エンジン100に対して車両本体101の幅方向に配列している。インバータ720は、エンジンマウント191およびサスタワ190に対して車両本体101の前方側に配置されている。
【0037】
図4は、インバータ720の固定構造10を示し、車両の前方側から見た斜視図である。図5は、インバータ720の固定構造10を示し、車両の後方側から見た斜視図である。図4および図5に示すように、インバータ720の固定構造10は、エンジンコンパートメント201内に配設されたサイドメンバ230に固定され、上面にインバータ720が固定された載置台211と、載置台211上に搭載されたインバータ720に対して、車両本体101の後方側に延在する案内部材170と、インバータ720を載置台211に固定する固定機構250とを備えている。
【0038】
サイドメンバ230は、図2に示すエンジンコンパートメント201を規定する車両本体101の両側面に沿ってそれぞれ配設されている。載置台211は一方のサイドメンバ230に連結部材212によって固定されている。インバータ720は、載置台211の上面である搭載面251上に、固定機構250によって固定されている。
【0039】
固定機構250は、インバータ720の前面部と載置台211とを固定する前面固定部材121,122と、インバータ720の背面部と載置台211とを固定する背面固定部材124,125とを備えている。
【0040】
そして、前面固定部材121は、インバータ720の下側に位置する一方の角部と載置台211とを連結固定しており、前面固定部材122は、他方の角部と載置台211とを連結固定している。
【0041】
図6は、前面固定部材121の斜視図である。この図6に示すように、前面固定部材121は、L字状に屈曲する連結具260と、この連結具260に形成された貫通孔131,133に装着される複数のボルト128a,128bとを備えている。
【0042】
連結具260は、図4に示す搭載面251と当接する底壁135と、この底壁135の端部から立ち上がるように屈曲した立上壁134とを備えている。底壁135には、ボルト128aが挿入される貫通孔131と、この貫通孔131から車両本体101の前方に向けて延びる切欠部132とが形成されている。この貫通孔131の径は、装着されるボルト128aのヘッド部の径よりも小さく、ボルト128aの軸部よりも大きくなるように形成されている。さらに、切欠部132の幅は、ボルト128aの軸部の径よりも大きくされており、ボルト128aの軸部が切欠部132を通ることが可能となっている。
【0043】
そして、立上壁134には、高さ方向に間隔を隔てて形成された複数の貫通孔133が形成されており、この貫通孔133にそれぞれボルト128bが装着され、連結具260とインバータ720とを固定している。
【0044】
ここで、インバータ720が外部から車両本体101の後方に向けて押圧されると、連結具260はボルト128bによってインバータ720に固定されており、ボルト128aは、載置台211に固定されているため、連結具260は、インバータ720と共に後方に変位する一方で、128aは、切欠部132内を通り、載置台211上に残る。
【0045】
このため、前面固定部材121は、インバータ720が車両本体101の後方に向けて押圧されると、インバータ720と載置台211との連結固定状態を解除可能に、インバータ720と載置台211とを連結固定している。なお、前面固定部材122も、前面固定部材121と同様に構成されている。
【0046】
図7は、背面固定部材124の斜視図である。この図7に示すように、背面固定部材124は、L字状に屈曲する連結具261と、この連結具261に形成された貫通孔141,143に装着された複数のボルト126a,126bとを備えている。
【0047】
連結具261は、図4に示す搭載面251と当接する底壁145と、この底壁145の端部から立ち上がる立上壁144とを備えている。底壁145には、ボルト126aが挿入される貫通孔141と、この貫通孔141から車両本体101の前方側に向けて延びる切欠部142とが形成されている。
【0048】
この貫通孔141の径は、ボルト126aのヘッド部よりも小径とされており、ボルト126aの軸部が挿入可能とされている。さらに、切欠部132の幅は、ボルト126aの軸部が摺動可能な程度とされている。
【0049】
そして、立上壁144には、高さ方向に間隔を隔てて形成された複数の貫通孔143が形成されており、それぞれにボルト126bが装着されており、連結具261がインバータ720に固定されている。さらに、この立上壁144には、切欠部142に連通し、ボルト126aのヘッド部通過可能な貫通孔146が形成されている。
【0050】
このため、外部からインバータ720が車両本体101の後方側に向けて押圧されると、連結具261は、ボルト126bによってインバータ720に固定されており、ボルト126aは、載置台211に固定されているので、連結具261とボルト126aとは相対的に変位する。そして、ボルト126aは、切欠部142および貫通孔146を通って、底壁145から外れる。このように、背面固定部材124は、インバータ720が車両本体101の後方に向けて押圧されることで、インバータ720と載置台211との連結固定状態を解除可能なように、インバータ720と載置台211とを連結固定している。
【0051】
図5において、案内部材170は、載置台211上に搭載されたインバータ720よりも、車両本体101の後方側にまで延在している。案内部材170は、一方の端部が載置台211に固定され、他方の端部がインバータ720よりも車両本体101の後方側まで延びる案内部150と、この案内部150に対して、案内部150の延在方向に摺動可能に設けられた案内部160とを備えている。
【0052】
さらに、載置台211の搭載面251は、車両本体101の前方側から後方側に向けて上方に向かうように傾斜している。そして、案内部材170の一方の端部は、インバータ720下であって搭載面251上に固定されている。そして、案内部材170は、搭載面251に沿って延び、載置台211の後方側端部から車両本体101の後方に向けて突出している。このため、案内部材170は、搭載面251に沿って、車両本体101の前方側から後方側に向けて上方に向かうように傾斜している。
【0053】
図8は、インバータ720および案内部材170の断面図である。図9は、案内部材170の正面図である。図8において、案内部150は、車両本体101の前方側の端部がボルト291によって載置台211に固定されている。そして、案内部150は、搭載面251に沿って延びており、案内部150に摺動可能に支持された案内部160も同様に、車両本体101の前方側から後方側に向かうにしたがって、上方に向けて傾斜している。
【0054】
ここで、インバータ720および案内部材170に対して、車両本体101の後方側には、エンジンマウント191が配置されている。そして、案内部材170は、車両本体101の前方側からエンジンマウント191および図3に示すサスタワ190の上方に向けて延びている。
【0055】
図9に示すように、案内部150は、間隔をあけて配置された天板部270,271と、この天板部270と天板部271との間に形成された凹部と、天板部271,271の側辺部から下方に向けて垂下する側壁部273,274と、この側壁部273,274の下端部から内側に屈曲する係止部275,276とを備えている。そして、天板部270と天板部271との間に形成され凹部の底部272には、案内部150の延在方向に延びるスリット151が形成されている。天板部270および天板部271は、平坦面状とされている。
【0056】
案内部160は、天板部270,271と接触する天板部280,281と、案内部150に形成された凹部に沿って屈曲する底部282と、天板部280,281の側辺部から下方に向けて垂下し、係止部275,276によって支持される側壁部283,284とを備えている。このように、案内部160は、案内部150内を案内部150の延在方向に摺動可能に設けられており、案内部150内に収容されている。
【0057】
さらに、図5および図9に示すように、案内部160のうち、インバータ720側の端部には、底部282に連設され、スリット151を通って、上方に向けて突出する突出部161が形成されている。そして、インバータ720のうち、車両本体101後方側の背面には、垂下部180が形成されている。この垂下部180は、インバータ720の背面290に設けられた固定部181にボルト182によって固定されており、案内部160の上方に向けて張り出すと共に、突出部161に向けて垂下している。
【0058】
そして、案内部160が案内部150内に収容され、さらに、インバータ720が載置台211上に搭載された状態においては、突出部161は、垂下部180に対してインバータ720側から垂下部180に係止されている。
【0059】
このため、インバータ720が載置台211に載置された状態においては、突出部161と垂下部180とが係合しており、案内部160は、車両本体101の後方に向けて案内部150内を摺動することが抑制され、案内部150内に収容されている。
【0060】
このため、通常の状態においては、案内部材170は、車両本体101の前方側から後方側に向かう方向の長さは、案内部150の長さとされており、コンパクトなものとされている。ここで、突出部161は、インバータ720の底面よりも上方に達しており、案内部材170の延在方向から正面視すると、突出部161の上端部は、インバータ720の背面290にまで達している。
【0061】
ここで、図10から図12を用いて、ハイブリッド車両が他の車両等と衝突などしたときのインバータの振る舞いについて説明する。図10は、ハイブリッド車両が他の車両等と衝突したときのインバータ720の振る舞いを示す斜視図であり、図11は、図10に示された状態におけるインバータ720および案内部材170等の断面図である。
【0062】
図10および図11において、前面側からハイブリッド車両が他の車両等と衝突すると、エンジンコンパートメントを規定する車両本体101の前面側が変形し、インバータ720より、前方側に位置する他の車両搭載機器がインバータ720を車両本体101の後方側に向けて押圧する。
【0063】
このように、インバータ720が押圧されると、図6等の示す固定機構250は、インバータ720と載置台211との連結固定状態を解除する。このため、インバータ720は、車両本体101の後方に向けて変位可能となり、さらに、インバータ720が他の車両搭載機器によって車両本体101の後方に向けて押圧されることで、インバータ720は、車両本体101の後方側に変位する。
【0064】
この際、搭載面251および案内部材170は、車両本体101の後方に向かうにしたがって、上方に向かうによう傾斜しており、インバータ720は、案内部材170の上面に乗り、案内部材170によって案内され始める。また、インバータ720が車両本体101の後方に向けて変位し始めることで、案内部160の突出部161と、垂下部180とが離間し、案内部160が案内部150に対して、摺動可能となる。
【0065】
そして、インバータ720が後方に変位することで、案内部160の突出部161にインバータ720の背面290が当接し、突出部161を車両本体101の後方に向けて押圧し始める。これにより、案内部160は、案内部150内を摺動し始め、案内部160の後方側の端部が案内部150の後方側端部から車両本体101の後方側に突出し始める。
【0066】
インバータ720が案内部150の上面上に沿って変位し、案内部150の後方側の端部に達するときには、突出部161は、スリット151の終端部にまで達する。そして、突出部161は、スリット151を規定する案内部150の内表面に当接し、案内部160の変位が停止する。
【0067】
このように、案内部160の変位が完了したときには、案内部160は、エンジンマウント191およびサスタワ190の上方にまで達するように延びている。そして、さらに、インバータ720が他の車両搭載機器によって車両本体101の後方側に向けて押圧されると、インバータ720の背面290は、突出部161を車両本体101の後方に向けて押圧する。
【0068】
ここで、図9において、インバータ720が載置される天板部270および天板部271と、底部282とは、離間しており、突出部161は底部282から上方に突出している。このため、突出部161がスリット151の終端部で係止された状態で、天板部270,271上に載置されたインバータ720が突出部161の上端部を押圧すると、突出部161の付根部に生じる曲げモーメントは大きく、突出部161は、インバータ720に押圧されることで容易に変形する。
【0069】
図12は、図10および図11に示された状態後におけるインバータ720および案内部材170の状態を示す断面図である。この図11に示すように、突出部161は、インバータ720によって曲げられ、インバータ720は、曲げられた突出部161を乗り越えて案内部160の上面上に乗り上げる。そして、案内部160の上面にそって、さらに、車両本体101の後方側に案内される。
【0070】
ここで、案内部160も、案内部150の後方側端部から、車両本体101の後方側に向かうに従って、上方に向かうように傾斜しているので、インバータ720は、さらに、上方に向けて案内される。そして、エンジンマウント191やサスタワ190の上方を経由して、車両本体101の後方側に変位する。
【0071】
このように、本実施の形態に係るインバータ720の固定構造によれば、ハイブリッド車両が他の車両等と衝突した際においても、インバータ720は、後方に変位することで、インバータ720に対して前方側に位置する車両搭載機器によって、大きな圧力で押圧されることが抑制されており、損傷することが抑制されている。さらに、インバータ720が後方に退避する際においても、上方に変位しつつ、後方に変位するため、インバータ720に対して後方に位置するエンジンマウント191やサスタワ190等の後方部材と衝突することが抑制されており、インバータ720が損傷することが抑制されている。また、案内部材170は、案内部150から案内部160がさらに延びるような多段式となっており、案内部材170がインバータ720を案内する案内距離を長く確保することができ、インバータ720の案内方向を正確に規定することができる。
【0072】
なお、本実施の形態1においては、インバータ720の固定構造について説明したが、これに限られず、他の車両搭載機器について適用してもよい。特に、コンバータ、リアクトルおよびバッテリ等の電機機器類の固定構造には、好適である。さらに、インバータとコンバータとを一体として固定してもよい。
【0073】
(実施の形態2)
図13および図14を用いて、本発明の実施の形態2に係るインバータ720の固定構造について説明する。
【0074】
図13は、本発明の実施の形態2に係るインバータ720の固定構造を示し、前方側からの斜視図であり、図14は、図13に示されたインバータ720の固定構造の後方側からの斜視図である。なお、これら、図13および図14において、上記図1から図12に示した構成と同一または相当する構成については、同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0075】
この図13および図14に示すように、ハイブリッド車両が平坦面上に位置している場合には、載置台211の搭載面251は、略水平面となるように配設されている。
【0076】
そして、案内部150の車両本体101の前方側の端部は、搭載面251に固定されている。この案内部150のうち、インバータ720下に位置する部分は、搭載面251の表面に沿って略水平に延びており、インバータ720より後方側で、上方に向けて傾斜するように屈曲している。この屈曲部分は、車両本体101の後方に向かうにしたがって、たとえば、サスタワ190やエンジンマウント191の上方に向かうように延びている。さらに、案内部160は、案内部150のうち、上方に向けて屈曲する部分に収容されている。
【0077】
そして、インバータ720が車両本体101の後方に向けて変位すると、まず、案内部150の傾斜部分に乗り、案内される。この際、垂下部180と、突出部161との係合状態が解除されると共に、インバータ720が突出部161を押圧する。
【0078】
これにより、案内部160が案内部150内を摺動し、案内部160の後方側の端部が、案内部150の後方側の端部から突出する。これにより、案内部材170がインバータ720を案内する案内距離が長くすることができる。
【0079】
このように、本実施の形態2に係るインバータ720の固定構造においても、上記実施の形態1に係るインバータ720の固定構造と同様の作用・効果を得ることができる。
【0080】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。さらに、上記数値などは、例示であり、上記数値および範囲にかぎられない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、車両搭載機器の固定構造に適用することができ、特に、車両搭載機器のうち、電気機器の固定構造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態1に係るハイブリッド車両の概略構成を示すブロック図である。
【図2】PCUの主要部の構成を示す回路図である。
【図3】エンジンコンパートメント内におけるエンジン、サスタワおよびインバータなどの車両搭載機器の配置関係を示す模式図である。
【図4】インバータの固定構造を示し、車両の前方側から見た斜視図である。
【図5】インバータの固定構造を示し、車両の後方側から見た斜視図である。
【図6】前面固定部材の斜視図である。
【図7】背面固定部材の斜視図である。
【図8】インバータおよび案内部材の断面図である。
【図9】案内部材の正面図である。
【図10】ハイブリッド車両が他の車両等と衝突したときのインバータの振る舞いを示す斜視図である。
【図11】図10に示された状態におけるインバータおよび案内部材等の断面図である。
【図12】図10および図11に示された状態後におけるインバータおよび案内部材の状態を示す断面図である。
【図13】インバータの固定構造を示し、前方側からの斜視図である。
【図14】図13に示されたインバータの固定構造の後方側からの斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
100 エンジン、101 車両本体、121 前面固定部材、122 前面固定部材、123 ボルト、124 背面固定部材、125 背面固定部材、126,127,128,129 ボルト、131 貫通孔、132 切欠部、150 案内部、151 ガイド、160 案内部、161 突出部、170 案内部材、180 垂下部、181 固定部、191 エンジンマウント、190 サスタワ、200 ハイブリッド車両、201 エンジンコンパートメント、211 載置台、212 連結部材、230 サイドメンバ、250 固定機構、251 搭載面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両搭載機器を収容可能な収容室が形成された車両本体に固定され、前記車両搭載機器が搭載される載置台と、
前記載置台上の前記車両搭載機器よりも前記車両本体の後方側に延在し、該車両搭載機器から前記後方に向かうにしたがって、前記車両搭載機器に対して前記後方側に間隔をあけて設けられた後方部材の上方に向けて傾斜した第1案内部と、
前記第1案内部に対して、該第1案内部の延在方向に摺動可能に設けられ、少なくとも一部が、前記第1案内部の前記後方側の端部から突出可能とされた第2案内部とを備えた、車両搭載機器の固定構造。
【請求項2】
前記第1案内部の前記車両本体の前方側の端部は、前記車両搭載機器下に配置され、前記載置台に固定された、請求項1に記載の車両搭載機器の固定構造。
【請求項3】
前記載置台のうち、前記車両搭載機器が搭載される搭載面は、前記車両の前方側から後方側に向かうにしたがって、上方に向かうように傾斜する、請求項1または請求項2に記載の車両搭載機器の固定構造。
【請求項4】
前記第2案内部は、該第2案内部のうち、前記載置台に載置された前記車両搭載機器よりも前記車両本体後方側に位置する部分に設けられ、前記載置台に載置された前記車両搭載機器の底面よりも上方に達する突出部を含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両搭載機器の固定構造。
【請求項5】
前記車両搭載機器は、前記第2案内部に向けて張り出すと共に、前記突出部に向けて垂下する垂下部を含み、
前記突出部は、前記垂下部に対して前記車両搭載機器側から前記垂下部に係止された、請求項4に記載の車両搭載機器の固定構造。
【請求項6】
前記車両本体の後方に向けて前記車両搭載機器が押圧されると、前記車両搭載機器と前記載置台との連結状態を解除可能に前記車両搭載機器を前記載置台に固定する固定部材をさらに備えた、請求項1から請求項5のいずれかに記載の車両搭載機器の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−83591(P2009−83591A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253981(P2007−253981)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】