説明

車両操舵装置の制御装置

【課題】消費電力を低減することができる車両操舵装置の制御装置を提供する。
【解決手段】車両操舵装置1は、互いに異なる巻数の界磁部を用いてステアリングシャフト35にトルクを付与する電動モータ51と、ステアリングホイール12の操作にともないステアリングシャフト35に入力されるトルクである操舵トルクに応じて電動モータ51のトルクを制御する制御装置67とを備えている。制御装置67は、操舵トルクに応じて、電動モータの各界磁部の少なくとも一方に供給するモータ電流を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに異なる巻数の第1界磁手段および第2界磁手段を用いてステアリングシャフトにトルクを付与する電動モータを含む車両操舵装置のための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両操舵装置は、操舵トルク、操舵速度、および車速に基づいて、電動モータからステアリングシャフトに付与するトルクの大きさを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−115954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記車両操舵装置を備えた車両においては、要求トルクが高いとき、車両操舵装置の消費電力が過度に大きくなる。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、消費電力を低減することができる車両操舵装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)第1の手段は、請求項1に記載の発明すなわち、互いに異なる巻数の第1界磁手段および第2界磁手段を用いてステアリングシャフトにトルクを付与する電動モータを含む車両操舵装置のための制御装置であり、ステアリングホイールの操作にともない前記ステアリングシャフトに入力されるトルクである操舵トルクに応じて前記電動モータのトルクを制御する車両操舵装置の制御装置において、前記制御装置は、前記第1界磁手段および前記第2界磁手段のうちの相対的に巻数の多い界磁手段を多巻界磁手段とし、前記第1界磁手段及び前記第2界磁手段のうちの相対的に巻数の少ない界磁手段を少巻界磁手段として、前記操舵トルクに応じて前記多巻界磁手段および前記少巻界磁手段の少なくとも一方に供給する電流を制御することを要旨とする。
【0006】
所定の電流が供給された場合の多巻界磁手段および少巻界磁手段のトルクを比較したとき、多巻界磁手段のトルクの方が大きい。このため、操舵トルクに応じて多巻界磁手段に供給する電流を制御することにより、1つの界磁手段のみを備える構成と比較して、少ない電流で必要なトルクを発生させることができる。すなわち、消費電力を低減することができる車両操舵装置の制御装置を提供することができる。
【0007】
(2)第2の手段は、請求項2に記載の発明すなわち、請求項1に記載の車両操舵装置の制御装置において、前記操舵トルクが前記所定値A以上のとき、前記多巻界磁手段に電流を供給し、かつ前記少巻界磁手段に電流を供給しないことを要旨とする。
【0008】
上記発明によれば、高いトルクが必要とされているときにおいて、多巻界磁手段のみに電流を供給し、少巻界磁手段への電流の供給を停止するため、消費電力を低減することができる。
【0009】
(3)第3の手段は、請求項3に記載の発明すなわち、請求項2に記載の車両操舵装置の制御装置において、前記操舵トルクが前記所定値A未満のとき、前記少巻界磁手段に電流を供給し、かつ前記多巻界磁手段に電流を供給しないことを要旨とする。
【0010】
車両が通常の走行速度で走行しているときには、ステアリングホイールの据え切り時および車両の低速走行時よりも速い速度で転舵角を変化させることが要求されることがある。また、車両が通常の走行速度で走行しているときには、ステアリングホイールの据え切り時および車両の低速走行時と比較して、操舵トルクが小さくなる。そこで上記発明では、操舵トルクが所定値A未満のとき、すなわち車両が通常の走行速度で走行している可能性が高いとき、少巻界磁手段を使用する。このため、転舵角の変化速度に対する要求に適切に応じることができる。
【0011】
(4)第4の手段は、請求項4に記載の発明すなわち、請求項1に記載の車両操舵装置の制御装置において、前記電動モータの出力トルクに占める前記多巻界磁手段のトルクの割合、および前記電動モータの出力トルクに占める前記少巻界磁手段のトルクの割合を前記操舵トルクに応じて変更することを要旨とする。
【0012】
電動モータに要求されるトルクは、操舵トルクに応じて異なる。一方、消費電力の観点からすると、電動モータに要求されるトルクが大きくなるにつれて電動モータの出力トルクに占める多巻界磁手段のトルクを大きくすることが好ましい。そこで上記発明では、電動モータの出力トルクに占める各界磁手段のトルクの割合を操舵トルクに応じて変更している。このため、多巻界磁手段を用いることによる消費電力の低減の効果がより高められる。
【0013】
(5)第5の手段は、請求項5に記載の発明すなわち、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両操舵装置において、前記多巻界磁手段および前記少巻界磁手段に対して個別に接続される主電源および補助電源を備えていること、ならびに、前記操舵トルクが所定値B以上のとき、前記補助電源から前記多巻界磁手段および前記少巻界磁手段の少なくとも一方に電流を供給することを要旨とする。
【0014】
この発明によれば、高いトルクが要求されているときに補助電源が使用されるため、補助電源を使用しない構成と比較して、主電源にかかる負荷が低減される。このため、主電源から電力の供給を受ける他の車載機器の電力が不足することが抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、消費電力を低減することができる車両操舵装置の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の車両操舵装置について、その全体構造を示す模式図。
【図2】同実施形態の車両操舵装置について、電動モータの構成を示す構成図。
【図3】同実施形態の車両操舵装置について、電動モータの回転数と回転トルクとの関係を示すグラフ。
【図4】同実施形態の車両操舵装置について、制御装置により行われる操舵アシスト処理の手順を示すフローチャート。
【図5】本発明のその他の実施形態としての車両操舵装置について、電動モータの一部の断面構造を示す断面図。
【図6】本発明のその他の実施形態としての車両操舵装置について、操舵トルクと第1界磁部および第2界磁部によるトルクとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
図1を参照して、車両操舵装置1の構成について説明する。
車両操舵装置1は、主電源21と、補助電源22と、ステアリングホイール12の操作に応じて転舵輪11の転舵角を変更するステアリング装置30と、ステアリングホイール12の操作を補助する操舵アシスト装置40とを備えている。
【0018】
ステアリング装置30は、ステアリングホイール12に入力されたトルクをピニオンシャフト33に伝達するコラムシャフト31およびインターミディエイトシャフト32と、ピニオンシャフト33の回転をラック軸36に伝達するラックアンドピニオン機構34とを備えている。ステアリングシャフト35は、コラムシャフト31、インターミディエイトシャフト32、およびピニオンシャフト33からなる。
【0019】
操舵アシスト装置40は、コラムシャフト31にトルクτmを付与する操舵アシストアクチュエータ50と、操舵アシストアクチュエータ50を制御する操舵アシスト制御装置60とを備えている。
【0020】
操舵アシストアクチュエータ50は、電動モータ51と、電動モータ51のロータ52と、ロータ52の回転を減速してコラムシャフト31に伝達する減速機構53とを備えている。
【0021】
電動モータ51は、第1駆動回路62から供給される第1モータ電流Ia、または第2駆動回路63から供給される第2モータ電流Ibに応じてロータ52を回転させる。減速機構53は、ロータ52の回転を減速してコラムシャフト31に伝達する。
【0022】
操舵アシスト制御装置60は、トルクセンサ61と、第1駆動回路62と、第2駆動回路63と、主電源リレー64と、補助電源リレー65と、補助電源充電リレー66と、制御装置67とを備えている。
【0023】
トルクセンサ61は、コラムシャフト31が回転するときのトルクを操舵トルクτとして示す信号を出力する。
第1駆動回路62は、主電源21および補助電源22の少なくとも一方から供給される直流電流を、制御装置67によって生成される第1制御信号Saに応じた大きさの3相交流電流に変換し、第1モータ電流Iaとして電動モータ51に供給する3相インバータ回路である。
【0024】
第2駆動回路63は、主電源21および補助電源22の少なくとも一方から供給される直流電流を、制御装置67によって生成される第2制御信号Sbに応じた大きさの3相交流電流に変換し、第2モータ電流Ibとして電動モータ51に供給する3相インバータ回路である。
【0025】
主電源リレー64は、第1駆動回路62および第2駆動回路63と主電源21との接続状態を切り替える。補助電源リレー65は、第1駆動回路62および第2駆動回路63と補助電源22との接続状態を切り替える。補助電源充電リレー66は、主電源21と補助電源22との接続状態を切り替える。
【0026】
制御装置67は、操舵アシスト処理として次の各処理を行う。すなわち、トルクセンサ61から出力される信号に基づいて、第1駆動回路62を制御する第1制御信号Sa、および第2駆動回路63を制御する第2制御信号Sbのいずれかを出力する処理を行う。また、トルクセンサ61から出力される信号に基づいて主電源リレー64、補助電源リレー65、および補助電源充電リレー66のそれぞれに接続状態を指示する処理を行う。
【0027】
車両操舵装置1は、次のように動作する。
運転者によってステアリングホイール12が回転させられるとコラムシャフト31に操舵トルクτが生じる。電動モータ51のトルクτmが、減速機構53を介してコラムシャフト31に付与される。コラムシャフト31は、トルクτmが付与された操舵トルクτで回転する。コラムシャフト31の回転は、インターミディエイトシャフト32を介してピニオンシャフト33に伝達される。ピニオンシャフト33の回転は、ラックアンドピニオン機構34によりラック軸36の軸方向の直線運動に変換される。ラック軸36の軸方向への移動にともない転舵輪11の向きが変更される。
【0028】
図2を参照して、電動モータ51の構成について詳細に説明する。
電動モータ51は、3相誘導モータである。電動モータ51は、ロータ52を回転させる磁力を発する第1界磁部70および第2界磁部80を備えている。
【0029】
第1界磁部70は、第1U相ティース71、第1V相ティース72、および第1W相ティース73を有する。第1U相ティース71には、第1駆動回路62に接続されている第1U相導線74が巻回されている。第1V相ティース72には、第1駆動回路62に接続されている第1V相導線75が巻回されている。第1W相ティース73には、第1駆動回路62に接続されている第1W相導線76が巻回されている。第1U相ティース71〜第1W相ティース73のそれぞれへの導線の巻数は所定値Kaである。
【0030】
第2界磁部80は、第2U相ティース81、第2V相ティース82、および第2W相ティース83を有する。第2U相ティース81には、第1駆動回路62に接続されている第2U相導線84が巻回されている。第2V相ティース82には、第2駆動回路63に接続されている第2V相導線85が巻回されている。第2W相ティース83には、第2駆動回路63に接続されている第2W相導線86が巻回されている。第2U相ティース81〜第2W相ティース83のそれぞれへの導線の巻数は、所定値Kaよりも多い所定値Kbである。
【0031】
以下の説明では、第1界磁部70および第2界磁部80の総称として「界磁部」を用いる。また、第1モータ電流Iaおよび第2モータ電流Ibの総称として「モータ電流」を用いる。
【0032】
図3を参照して、電動モータ51の特性について説明する。
第1曲線TAは、第1界磁部70を用いてロータ52を回転させるときの回転数Nとトルクτmとの特性のうち略直線となる部分を含む実用領域における特性を示している。また第2曲線TBは、第2界磁部80を用いてロータ52を回転させるときの回転数Nとトルクτmとの実用領域における特性を示している。
【0033】
第1界磁部70は、第2界磁部80よりも各導線の巻数が少ないことから、回転数Nの最大値が第2界磁部80よりも高く、かつトルクτmの最大値が第2界磁部80よりも低くなる。一方、第2界磁部80は、第1界磁部70よりも各導線の巻数が多いことから、回転数Nの最大値が第1界磁部70よりも低く、かつトルクτmの最大値が第1界磁部70よりも高くなる。
【0034】
図4を参照して、制御装置67の操舵アシスト処理の詳細について説明する。なお、制御装置67は、この処理を所定の制御周期で繰り返し実行する。すなわち、終了のステップに到達した後、所定の制御周期が経過するまではステップS11の処理の実行を保留し、所定の制御周期が経過したときに再びステップS11の処理を行う。
【0035】
ステップS11では、トルクセンサ61から操舵トルクτを取得する。
ステップS12では、操舵トルクτが所定値A以上か否かを判定する。すなわち、ステアリングホイール12の据え切り操作、または車両の低速走行時におけるステアリングホイール12の操作が行われているか否かを判定する。ステップS12において、肯定判定したとき、ステップS21の処理に進む。ステップS12において、否定判定したとき、ステップS31の処理に進む。
【0036】
ステップS21では、主電源リレー64をオフにする。すなわち、第1駆動回路62および第2駆動回路63への主電源21による電力の供給を停止する。
ステップS22では、補助電源充電リレー66をオフにする。すなわち、補助電源22への主電源21による充電を停止する。
【0037】
ステップS23では、補助電源リレー65をオンにする。すなわち、第1駆動回路62および第2駆動回路63への補助電源22による電力の供給を開始する。
ステップS24では、ステップS11で取得した操舵トルクτに比例するように、コラムシャフト31に付与するトルクτmを計算する。
【0038】
ステップS25では、ステップS24で計算したトルクτmが電動モータ51から出力されるように第2モータ電流Ibを計算する。
ステップS26では、ステップS25において計算した第2モータ電流Ibが第2駆動回路63から電動モータ51に供給されるように第2制御信号Sbを生成する。
【0039】
ステップS31では、主電源リレー64をオンにする。すなわち、第1駆動回路62および第2駆動回路63への主電源21による電力の供給を開始する。
ステップS32では、補助電源充電リレー66をオンにする。すなわち、補助電源22への主電源21による充電を開始する。
【0040】
ステップS33では、補助電源リレー65をオフにする。すなわち、第1駆動回路62および第2駆動回路63への補助電源22による電力の供給を停止する。
ステップS34では、ステップS11で取得した操舵トルクτに比例するように、コラムシャフト31に付与するトルクτmを計算する。
【0041】
ステップS35では、ステップS34で計算したトルクτmが電動モータ51から出力されるように第1モータ電流Iaを計算する。
ステップS36では、ステップS35において計算した第1モータ電流Iaが第1駆動回路62から電動モータ51に供給されるように第1制御信号Saを生成する。
【0042】
(実施形態の効果)
本実施形態の車両操舵装置1によれば以下の効果が得られる。
(1)制御装置67は、第1界磁部70を少巻界磁部とし、第2界磁部80を多巻界磁部として、操舵トルクτに応じて多巻界磁部および少巻界磁部の少なくとも一方に供給するモータ電流を制御する。
【0043】
所定のモータ電流が供給された場合の多巻界磁部および少巻界磁部のトルクτmを比較したとき、多巻界磁部のトルクτmの方が大きい。このため、操舵トルクτに応じて多巻界磁部に供給する第2モータ電流Ibを制御することにより、1つの界磁部のみを備える構成と比較して、少ないモータ電流で必要なトルクτmを発生させることができる。すなわち、消費電力を低減することができる車両操舵装置1の制御装置67を提供することができる。
【0044】
(2)制御装置67は、操舵トルクτが所定値A以上のとき、多巻界磁部に第2モータ電流Ibを供給し、かつ少巻界磁部に第1モータ電流Iaを供給しない。
この構成によれば、高いトルクτmが必要とされているときにおいて、多巻界磁部のみに第2モータ電流Ibを供給し、少巻界磁部への第1モータ電流Iaの供給を停止するため、消費電力を低減することができる。
【0045】
(3)制御装置67は、操舵トルクτが所定値A未満のとき、少巻界磁部に第1モータ電流Iaを供給し、かつ多巻界磁部に第2モータ電流Ibを供給しない。
車両が通常の走行速度で走行しているときには、ステアリングホイール12の据え切り時および車両の低速走行時よりも速い速度で転舵角を変化させることが要求されることがある。また、車両が通常の走行速度で走行しているときには、ステアリングホイール12の据え切り時および車両の低速走行時と比較して、操舵トルクτが小さくなる。そこで上記構成では、操舵トルクτが所定値A未満のとき、すなわち車両が通常の走行速度で走行している可能性が高いとき、少巻界磁部を使用する。このため、転舵角の変化速度に対する要求に適切に応じることができる。
【0046】
(その他の実施形態)
本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示すように変更することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を組み合わせて実施することもできる。
【0047】
・上記実施形態では、第1U相導線74〜第1W相導線76および第2U相導線84〜第2W相導線86をそれぞれ異なるティースに巻回したが、図5に示すように、単独のティースに同じ相の導線を巻回することもできる。この場合、単独U相ティース91に第1U相導線74および第2U相導線84を巻回する。単独V相ティース92に第1V相導線75および第2V相導線85を巻回する。単独W相ティース93に第1W相導線76および第2W相導線86を巻回する。
【0048】
・上記実施形態では、操舵トルクτが所定値A以上となるか否かの判定結果に応じて第1界磁部70および第2界磁部80のいずれかを用いた。しかし、計算したトルクτmを合計トルクとして、この合計トルクにおける第1界磁部70によるトルクの割合と第2界磁部80によるトルクの割合とを操舵トルクτに応じて決定することによってこれらの界磁部を切り替えることもできる。つまり、制御装置67は、操舵トルクτに応じて多巻界磁部および少巻界磁部のそれぞれに供給する電流を制御することもできる。
【0049】
図6は、少巻界磁部によるトルクの合計トルクに占める割合を第1トルク係数TCで示し、多巻界磁部によるトルクの合計トルクに占める割合を第2トルク係数TDで示すグラフである。図6に示すように、操舵トルクτが所定値C以上であるときに、電動モータ51に要求されるトルクτmとしての合計トルクが大きくなるのにしたがって、操舵トルクτと所定値Cとの差に応じて、多巻界磁部によるトルクの割合が大きくなるように第2モータ電流Ibを決定する。この場合、少巻界磁部によるトルクの割合は、所定値Cよりも大きい所定値D以上となったときにゼロとなるようにすることもできる。
【0050】
電動モータ51に要求されるトルクτmは、操舵トルクτに応じて異なる。一方、消費電力の観点からすると、電動モータ51に要求されるトルクτmが大きくなるにつれて電動モータ51のトルクτmに占める多巻界磁部のトルクを大きくすることが好ましい。そこで上記構成では、電動モータ51のトルクτmに占める各界磁部のトルクの割合を操舵トルクτに応じて決定している。このため、多巻界磁部を用いることによる消費電力の低減の効果がより高められる。
【0051】
・上記実施形態では、操舵トルクτと所定値Aとの比較結果のみを用いて、第1界磁部70および第2界磁部80の中から電動モータ51の駆動に用いる界磁部と、主電源21および補助電源22の中から電力を供給する電源とを判定した。しかし、使用する界磁部の判定と、使用する電源の判定とに異なる所定値を用いることもできる。例えば、界磁部の判定に所定値Aを用い、電源の判定に所定値Bを用いることもできる。
【0052】
・上記実施形態では、ステアリングホイール12の据え切り時および車両が低速で走行しているか否かを判定するために操舵トルクτと所定値Aとの比較結果のみを用いるものとしたが、車両の走行速度Vと所定値Eの比較結果を加えて判定することもできる。この場合、操舵トルクτが所定値A以上かつ走行速度Vが所定値E未満である場合に、ステアリングホイール12の据え切り時または車両が低速で走行していると判定し、第2界磁部80を用いる。その他の場合には、第1界磁部70を用いる。
【0053】
・上記実施形態では、操舵トルクτに基づいて第1界磁部70および第2界磁部80のいずれを用いるかを判定したが、一方の界磁部の故障を検出したときに他方の界磁部を用いることもできる。界磁部の故障としては、界磁部の各コイルのいずれかの断線故障、界磁部を駆動する駆動装置のスイッチング素子の短絡故障、およびこのスイッチング素子が常時開放する故障などが挙げられる。
【0054】
・上記実施形態では、操舵トルクτが所定値A以上であるときに補助電源22のみを用いるものとしたが、主電源21を併用することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1…車両操舵装置、11…転舵輪、12…ステアリングホイール、21…主電源、22…補助電源、30…ステアリング装置、31…コラムシャフト、32…インターミディエイトシャフト、33…ピニオンシャフト、34…ラックアンドピニオン機構、35…ステアリングシャフト、36…ラック軸、37…転舵輪、40…操舵アシスト装置、50…操舵アシストアクチュエータ、51…電動モータ、52…ロータ、53…減速機構、60…操舵アシスト制御装置、61…トルクセンサ、62…第1駆動回路、63…第2駆動回路、64…主電源リレー、65…補助電源リレー、66…補助電源充電リレー、67…制御装置、70…第1界磁部(界磁手段、第1界磁手段、少巻界磁手段)、71…第1U相ティース、72…第1V相ティース、73…第1W相ティース、74…第1U相導線、75…第1V相導線、76…第1W相導線、80…第2界磁部(界磁手段、第2界磁手段、多巻界磁手段)、81…第2U相ティース、82…第2V相ティース、83…第2W相ティース、84…第2U相導線、85…第2V相導線、86…第2W相導線、90…単独界磁部、91…単独U相ティース、92…単独V相ティース、93…単独W相ティース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる巻数の第1界磁手段および第2界磁手段を用いてステアリングシャフトにトルクを付与する電動モータを含む車両操舵装置のための制御装置であり、ステアリングホイールの操作にともない前記ステアリングシャフトに入力されるトルクである操舵トルクに応じて前記電動モータのトルクを制御する車両操舵装置の制御装置において、
前記制御装置は、前記第1界磁手段および前記第2界磁手段のうちの相対的に巻数の多い界磁手段を多巻界磁手段とし、前記第1界磁手段及び前記第2界磁手段のうちの相対的に巻数の少ない界磁手段を少巻界磁手段として、
前記操舵トルクに応じて前記多巻界磁手段および前記少巻界磁手段の少なくとも一方に供給する電流を制御する
ことを特徴とする車両操舵装置の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両操舵装置の制御装置において、
前記操舵トルクが前記所定値A以上のとき、前記多巻界磁手段に電流を供給し、かつ前記少巻界磁手段に電流を供給しない
ことを特徴とする車両操舵装置の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両操舵装置の制御装置において、
前記操舵トルクが前記所定値A未満のとき、前記少巻界磁手段に電流を供給し、かつ前記多巻界磁手段に電流を供給しない
ことを特徴とする車両操舵装置の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両操舵装置の制御装置において、
前記電動モータの出力トルクに占める前記多巻界磁手段のトルクの割合、および前記電動モータの出力トルクに占める前記少巻界磁手段のトルクの割合を前記操舵トルクに応じて変更する
ことを特徴とする車両操舵装置の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両操舵装置において、
前記多巻界磁手段および前記少巻界磁手段に対して個別に接続される主電源および補助電源を備えていること、
ならびに、前記操舵トルクが所定値B以上のとき、前記補助電源から前記多巻界磁手段および前記少巻界磁手段の少なくとも一方に電流を供給する
ことを特徴とする車両操舵装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−71550(P2013−71550A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211130(P2011−211130)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】