説明

車両構造部材の製造方法

【課題】 車両部材のうち一方側に充填材が充填される所定部位に、バーリング孔筒部を形成し、特に充填材の充填後も、所定部位の他方側からクリップ等の係止部材を簡単に且つ確実にバーリング孔筒部に差し込んでその内面に係止して取り付けることができる、車両構造部材の製造方法を提供する
【解決手段】 バーリング加工工程において、車両部材11のうち充填材12が一方側に充填されると共に他方側から係止部材13が取り付けられる所定部位15に、前記一方側にバーリング孔筒部17が突出して形成されるようにバーリング加工を施し、次に、充填材充填工程において、バーリング孔筒部17の孔17a内をマスキングした状態で、前記一方側に充填材12を充填し、次に、係止部材取付工程において、バーリング孔筒部17の内面に係止部材13を係止して取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両部材にバーリング加工を施してバーリング孔筒部を形成し、その車両部材に充填材を充填した後に係止部材をバーリング孔筒部に取り付けるようにした車両構造部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両部材に内装品や外装品を装着するために、車両部材の組み立て後、その車両部材に形成された係止穴にクリップを差し込んで取り付け、そのクリップで内装品や外装品を車両部材に固定する方法が周知であり、このような方法は、サスペンションクロスメンバーにマッドガードを装着する場合等、種々の用途に適用可能である。また、車両部材にバーリング加工を施してバーリング孔筒部を形成し、そのバーリング孔筒部に内嵌されたボルト部材により車両部材同士等を連結する技術が周知である。
【0003】
ここで、特許文献1には、一般的なバーリング孔筒部を特有のプレス金型を用いて形成するバーリング加工方法が開示されている。一方、最近では、車両部材の強度・剛性を高めるために、車両部材の閉断面構造の内側に発泡材を充填する技術が実用化されており、この技術を適用することにより、車両部材の板厚薄肉化等による軽量化、レインフォースメントの省略等が可能になり、車両の軽量化、製造工程の短縮が可能になる。
【特許文献1】特開平8−174087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両部材に内装品や外装品を装着する為のクリップは、車両部材の係止穴に差し込まれ、その爪部が係止穴の外周縁部に係止され取り付けられるが、特に、車両部材のうち係止穴を形成した部分が閉断面構造に構成され、その閉断面構造の内側に発泡材を充填するようにした場合、車両部材に係止穴を予め形成しておいて発泡材を充填し、その後、クリップを取り付けることになるため、また、クリップの爪部が係止される部分は、車両部材の発泡材充填側の係止穴外周縁部となるが、その係止穴外周縁部付近には発泡材が充填された状態になるため、係止穴をマスキングした場合でも、クリップを係止穴に差し込んでその外周縁部に係止させる係止部材取付空間を確保すること、つまり、車両部材にクリップを取り付けることが難しくなる。
【0005】
本発明の目的は、特に、車両部材のうち一方側に充填材が充填される所定部位に、バーリング孔筒部を形成し、充填材の充填後も、前記所定部位の他方側からクリップ等の係止部材を簡単に且つ確実にバーリング孔筒部に差し込んでその内面に係止して取り付けることができる、車両構造部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の車両構造部材の製造方法は、車両部材のうち充填材が一方側に充填されると共に他方側から係止部材が取り付けられる所定部位に、前記一方側にバーリング孔筒部が突出して形成されるようにバーリング加工を施すバーリング加工工程と、次に、前記バーリング孔筒部の孔内をマスキングした状態で、前記一方側に充填材を充填する充填材充填工程と、次に、前記バーリング孔筒部の内面に係止部材を係止して取り付ける係止部材取付工程とを備えたことを特徴とする。
【0007】
前記車両部材は、例えば、フロントフレーム、リヤフレーム、サスペンションクロスメンバー等の車両部材であり、その閉断面構造の内側に充填材を充填すると共に、その車両部材に1又は複数の係止部材により外装品を装着できる。また、前記車両部材は、例えば、ドア、ピラー、サイドシル等の車両部材であり、その閉断面構造の内側に充填材を充填すると共に、その車両部材に1又は複数の係止部材により内装品を装着できる。
【0008】
バーリング加工工程においては、例えば、バーリング孔筒部の内面に、係止部材が係止される係止部を形成することが好ましい。この場合、前記所定部位に、プレス加工により、前記他方側から穴開けを行うと共にその穴の外周側に前記係止部を形成し、次に、絞り曲げ加工により、前記穴の外周側部分を前記一方側に突出させて、前記係止部が孔内面に位置するようにバーリング孔筒部を形成してもよい。但し、バーリング孔筒部を形成してから、その内面に前記係止部を形成してもよい。
【0009】
充填材充填工程においては、バーリング孔筒部に、その孔と同径のピン状のマスキング部材を挿入して、バーリング孔筒部の孔内をマスキングしてもよい。この場合、充填材の充填後にバーリング孔筒部からマスキング部材を取り外して、係止部材取付工程を行う。また、充填材充填工程において、バーリング孔筒部の前記一方側の先端部に蓋状のマスキング部材を取り付けてカバーし、バーリング孔筒部の孔内をマスキングしてもよい。この場合、充填材の充填後、マスキング部材を取り外すことなく係止部材取付工程を行える。
【0010】
請求項1の発明においては、次の構成を採用可能である。
前記充填材が発泡タイプの充填材である(請求項2)。前記車両部材のうち前記所定部位を含む部分が閉断面構造であり、前記充填材充填工程において、前記閉断面構造の内側に充填材を充填する(請求項3)。前記バーリング加工工程において、前記閉断面構造に構成する前の所定部位を含む車両部材の素材にバーリング加工を施し、その後、前記素材を溶接により組み立てて閉断面構造を構成してから、前記充填材充填工程において、前記バーリング孔筒部にその孔と同径のマスキング部材を閉断面構造の外側から挿入してマスキングする(請求項4)。前記バーリング加工工程において、車両部材の前記所定部位に、プレス加工により、穴開けを行うと共にその穴の外周側に係止部材が係止される係止部を形成し、次に、絞り曲げ加工により、前記穴の外周側部分を前記一方側に突出させて、前記係止部が孔内面に位置するようにバーリング孔筒部を形成する(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の車両構造部材の製造方法によれば、バーリング加工工程において、車両部材のうち充填材が一方側に充填されると共に他方側から係止部材が取り付けられる所定部位に、前記一方側にバーリング孔筒部が突出して形成されるようにバーリング加工を施し、次に、充填材充填工程において、バーリング孔筒部の孔内をマスキングした状態で、前記一方側に充填材を充填するので、充填材の充填後も、係止部材をバーリング孔筒部に差し込んでその内面に係止して取り付ける係止部材取付空間を確実に確保でき、つまり、係止部材取付工程において、前記他方側から係止部材を簡単に且つ確実にバーリング孔筒部に差し込んでその内面に係止して取り付けることが可能になる。
【0012】
請求項2の車両構造部材の製造方法によれば、充填材が発泡タイプの充填材であるので、充填材充填工程において、充填材を発泡させて確実に充填できるが、その際に、バーリング孔筒部の孔内をマスキングしない場合には、その孔内に充填材が侵入して、前記係止部材取付空間を確保できなくなる虞が高いが、これを確実に防止して、請求項1の効果を達成することができる。
【0013】
請求項3の車両構造部材の製造方法によれば、車両部材のうち前記所定部位を含む部分が閉断面構造であり、充填材充填工程において、閉断面構造の内側に充填材を充填するので、バーリング孔筒部を閉断面構造の内側に突出させた状態にして、前記係止部材取付空間を確実に確保して、係止部材取付工程において、閉断面構造の外側から係止部材をバーリング孔筒部に差し込んでその内面に係止して取り付けることができる。
【0014】
請求項4の車両構造部材の製造方法によれば、バーリング加工工程において、閉断面構造に構成する前の所定部位を含む車両部材の素材にバーリング加工を施すので、このバーリング加工を簡単且つ確実に実施することができ、その後、その素材を溶接により組み立てて閉断面構造を構成するので、閉断面構造を構成した段階では既にバーリング孔筒部を形成しておくことができ、次に、充填材充填工程において、バーリング孔筒部にその孔と同径のマスキング部材を閉断面構造の外側から挿入して簡単に確実にマスキングすることができ、充填材の充填後も、マスキング部材を閉断面構造の外側へ簡単に確実に取り外して、係止部材取付工程を実施することができる。
【0015】
請求項5の車両構造部材の製造方法によれば、バーリング加工工程において、車両部材の前記所定部位に、プレス加工により、穴開けを行うと共にその穴の外周側に係止部材が係止される係止部を形成し、次に、絞り曲げ加工により、前記穴の外周側部分を前記一方側に突出させて、前記係止部が孔内面に位置するようにバーリング孔筒部を形成するので、バーリング加工工程を簡単化でき、係止部材取付工程において、係止部材をバーリング孔筒部の内面に確実に係止して取り付けることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本実施形態の車両構造部材の製造方法は、車両部材のうち充填材が一方側に充填されると共に他方側から係止部材が取り付けられる所定部位に、前記一方側にバーリング孔筒部が突出して形成されるようにバーリング加工を施すバーリング加工工程と、次に、前記バーリング孔筒部の孔内をマスキングした状態で、前記一方側に充填材を充填する充填材充填工程と、次に、前記バーリング孔筒部の内面に係止部材を係止して取り付ける係止部材取付工程とを備えたものであり、バーリング加工工程において、前記所定部位に、プレス加工により、穴開けを行うと共にその穴の外周側に係止部材が係止される係止部を形成し、次に、絞り曲げ加工により、前記穴の外周側部分を突出させて、前記係止部が孔内面に位置するようにバーリング孔筒部を形成するバーリング加工方法を適用したものである。
【実施例】
【0017】
図1〜図4に示すように、自動車(車両)には車体前部にサスペンションクロスメンバー1が設けられ、このサスペンションクロスメンバー1の前端部に上方へ延びる左右1対のタワー部2が設けられ、これらタワー部2の上端部が車体所定部に連結される。各タワー部2の大部分が、断面コ字部材3とこの断面コ字部材3に溶接された板部材4により閉断面構造5に構成され、その閉断面構造5の内側に発泡タイプの充填材6が充填され、各タワー部2に泥避けとなるマッドカバー7が1又は複数のクリップ8により固定され装着されている。尚、タワー部2の板部材4には穴4a〜4cが形成されている。
【0018】
さて、図11は、金属製の車両部材11の一方側に発泡タイプの充填材12(発泡樹脂材)が充填され、他方側から車両部材11にクリップ等の係止部材13が取り付けられ、その係止部材13により外装品や内装品の合成樹脂製の装備品14が車両部材11に装着された車両構造部材10の要部を示している。車両部材11のうち一方側に充填材12が充填されると共に他方側から係止部材13が取り付けられる所定部位15を含む部分は閉断面構造16に構成され、この閉断面構造16の内側に充填材12が充填されている。車両部材11の所定部位15には前記一方側(内側)へ突出するバーリング孔筒部17が形成され、そのバーリング孔筒部17の内面に係止部18が形成されている。係止部材13は、ヘッド部13aと爪部13bを有し、その爪部13bがバーリング孔筒部17の孔17aに前記他方側(外側)から差し込まれ、係止部18に係止され取り付けられている。
【0019】
前記タワー部2の大部分もこの車両構造部材10に相当するが、以下、この車両構造部材10の製造方法について、図5〜図11に基づいて説明する。車両構造部材10の製造方法は、図5〜図8に示すバーリング加工工程と、図9に示す充填材充填工程と、図10と図11に示す係止部材取付工程とを備えている。
【0020】
バーリング加工工程においては、車両部材11の所定部位15に、前記一方側にバーリング孔筒部17が突出して形成されるようにバーリング加工が施される。ここで、閉断面構造16に構成する前の所定部位15を含む車両部材11の素材にバーリング加工が施される。前記タワー部2の場合には、断面コ字部材3の素材にバーリング加工が施され、例えば、バーリング加工と並行して又はバーリング加工後に曲げ加工等が施されて、断面コ字部材3が形成される。
【0021】
このバーリング加工方法においては、先ず、図5、図6に示すように、穴開け用穴21aを有するダイ21とパンチ22とブランクホルダー23を有するプレス加工機20を用いて、ダイ21に車両部材11(の素材)を位置決めしてセットし、パンチ22とブランクホルダー23を下降させることにより、車両部材11の所定部位15に、パンチ22が車両部材11を貫通して穴11aを形成すると共に、ブランクホルダー23がその穴11aの外周側に車両部材11を凹まして係止部材13が係止される係止部18を形成する。
【0022】
次に、図7、図8に示すように、絞り曲げ用穴26aを有するダイ26と絞りピン27を有する絞り曲げ加工機25を用いて、ダイ26に車両部材11を位置決めしてセットし、絞りピン27を下降させることにより、その絞りピン27が穴11aを貫通するように穴11aの外周側部分を下方へ突出させて、絞り曲げ用穴26aの内面に密着させて、係止部18が孔17aの内面に位置するようにバーリング孔筒部17を形成する。その後、車両部材11の素材を溶接により組み立てて閉断面構造16を構成する。前記タワー部2の場合には、断面コ字部材3と板部材4とを溶接して閉断面構造5を構成する。
【0023】
次に、充填材充填工程において、図9に示すように、バーリング孔筒部17にその孔17aと同径のピン状のマスキング部材19を閉断面構造16の外側から挿入して、バーリング孔筒部17の孔17a内をマスキングした状態で、充填材充填装置を用いて、車両部材11に形成された充填穴から、閉断面構造16の内側に充填材12を充填し発泡させる。ここで、例えば、充填材12は、常温硬化型発泡充填材であり約5倍に膨張し発泡するものである。前記タワー部2の場合には、その閉断面構造5の下側が開放し、板部材4には穴4a〜4cも形成されているため、これら開放部を何らかの部材で塞いだ状態にして、閉断面構造5の内側に充填材6を充填する。
【0024】
ところで、図9に示すように、マスキング部材19は、詳細には、バーリング孔筒部17の孔17aと同径の部分を有するテーパピン状に形成され、マスキング部材19はその小径側部分からバーリング孔筒部17に挿入され取り付けられる。マスキング部材19がバーリング孔筒部17に内嵌されて比較的強力に取り付けられ、この状態で、マスキング部材19は車両部材11から外側へ突出し、これにより、マスキング部材19の取り外しを容易に行うことが可能になる。また、マスキング部材19はバーリング孔筒部17の内側にも所定長さ突出し、これにより、充填材12の硬化後にマスキング部材19を取り外すと、その突出していた部分に空間12aが形成された状態となり、その空間12aも含めて係止部材13をバーリング孔筒部17に差し込んでその内面に係止して取り付ける係止部材取付空間を確実に確保することができる。
【0025】
次に、係止部材取付工程において、図10、図11に示すように、バーリング孔筒部17の内面の係止部18に係止部材13を係止して取り付ける。この場合、装備品14の固定部を車両部材11の所定部15に位置合わせし、その固定部の穴14aとバーリング孔筒部17の孔17aとを一致させた状態で、この穴14aから係止部材13の爪部13bをバーリング孔筒部17に挿入していき、バーリング孔筒部17の内面の係止部18に係止して取り付け、係止部材13により装備品14が車両部材11に固定され装着される。
【0026】
以上説明した車両構造部材10の製造方法によれば次の効果を奏する。
バーリング加工工程において、車両部材11のうち充填材12が一方側に充填されると共に他方側から係止部材13が取り付けられる所定部位15に、前記一方側にバーリング孔筒部17が突出して形成されるようにバーリング加工を施し、次に、充填材充填工程において、バーリング孔筒部17の孔17a内をマスキングした状態で、前記一方側に充填材12を充填するので、充填材12の充填後も、係止部材13をバーリング孔筒部17に差し込んでその内面に係止して取り付ける係止部材取付空間を確実に確保でき、つまり、係止部材取付工程において、前記他方側から係止部材13を簡単に且つ確実にバーリング孔筒部17に差し込んでその内面に係止して取り付けることが可能になる。
【0027】
充填材12が発泡タイプの充填材であるので、充填材充填工程において、充填材12を発泡させて確実に充填できるが、その際に、バーリング孔筒部17の孔17a内をマスキングしない場合には、その孔17a内に充填材12が侵入して、前記係止部材取付空間を確保できなくなる虞が高いが、これを確実に防止して、上記効果を達成できる。
【0028】
車両部材11の所定部位15を含む部分が閉断面構造16であり、充填材充填工程において、閉断面構造16の内側に充填材12を充填するので、バーリング孔筒部17を閉断面構造16の内側に突出させた状態にして、前記係止部材取付空間を確実に確保して、係止部材取付工程において、閉断面構造16の外側から係止部材13をバーリング孔筒部17に差し込んでその内面に係止して取り付けることができる。
【0029】
ここで、車両部材11にバーリング孔筒部17を充填材12が充填される前記一方側(閉断面構造16の内側)へ突出させるように形成し、そのバーリング孔筒部17に係止部材13を取り付け可能にしたので、車両部材11の少なくともバーリング孔筒部17付近の前記他方側の面(閉断面構造16の外側の面)に、装備品14を取り付ける為の平滑な取付面を確保することが可能になり、その取付面に装備品14を当接させた状態で係止部材13により簡単に固定し装着することが可能になる。
【0030】
バーリング加工工程において、閉断面構造16に構成する前の所定部位15を含む車両部材11の素材にバーリング加工を施すので、このバーリング加工を簡単且つ確実に実施することができ、その後、その素材を溶接により組み立てて閉断面構造16を構成するので、閉断面構造16を構成した段階では既にバーリング孔筒部17を形成しておくことができ、次に、充填材充填工程において、バーリング孔筒部17にその孔17aと同径のマスキング部材19を閉断面構造16の外側から挿入して簡単に確実にマスキングすることができ、充填材12の充填後も、マスキング部材19を閉断面構造16の外側へ簡単に確実に取り外して、係止部材取付工程を実施することができる。
【0031】
特に、バーリング加工工程において、車両部材11の所定部位15に、プレス加工により、穴開けを行うと共にその穴11aの外周側に係止部材13が係止される係止部18を形成し、次に、絞り曲げ加工により、穴11aの外周側部分を前記一方側に突出させて、係止部18が孔17aの内面に位置するようにバーリング孔筒部17を形成するので、バーリング加工工程を簡単化でき、係止部材13をバーリング孔筒部17の内面に確実に係止して取り付けることができる。こうして、車両部材11を板厚薄肉化等により軽量化し、また、レインフォースメントを省略して、車両構造部材10の所期の強度・剛性を確保することが可能になるため、車両の軽量化、製造工程の短縮が可能になる。
【0032】
次に、前記車両構造部材10の製造方法の変更形態について説明する。
1]図12に示すように、バーリング加工工程において、車両部材11にテーパ筒状のバーリング孔筒部17Aを形成し、充填材充填工程において、このバーリング孔筒部17Aにテーパピン状のマスキング部材19を挿入して取り付け、この状態で、充填材12を充填する。バーリング孔筒部17Aとマスキング部材19のテーパ角を同じにすることにより、バーリング孔筒部17Aとそれに内嵌されたマスキング部材19との間に隙間が殆ど生じなくなり、それらの間に充填材12が確実に侵入しにくくなって、バーリング孔筒部17の孔17a内を確実にマスキングすることができる。
【0033】
2]或いは、図示していないが、ストレート筒状のバーリング孔筒部17の孔17aと同径のストレートピン状のマスキング部材を使用して、バーリング孔筒部17とそれに内嵌されたマスキング部材との間に隙間が殆ど生じないようにしてもよい。この場合、バーリング孔筒部17に対してマスキング部材を抜け止めする何らかの抜け止め機構を採用することが好ましい。
【0034】
3]図13に示すように、充填材充填工程において、バーリング孔筒部17の前記一方側の先端部に蓋状のマスキング部材19Aを取り付けてカバーし、バーリング孔筒部17の孔17a内をマスキングしてもよい。この場合、閉断面構造16の構成前にバーリング孔筒部17にマスキング部材19Aを取り付けることになり、その後、閉断面構造16を構成して充填材12の充填後、マスキング部材19Aを取り外すことなく係止部材取付工程を行える。但し、係止部材13の爪部13aの長さ多少短くする等の対処は必要となる。
【0035】
4]充填材6,12については、発泡タイプ以外の充填材を適用してもよい。
5]車両部材の閉断面構造以外の部位の車両構造部材を製造する方法に、本発明を適用してもよい。
6]前記バーリング加工工程において、図5〜図8に示すバーリング加工方法については、車両部材のうち充填材が充填される部位以外の所定部位に前記穴、係止部を形成し、バーリング孔筒部を形成する場合に適用できる。
【0036】
7]その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前記開示した事項以外の種々の変更を付加して実施可能であるし、具体的には、サスペンションクロスメンバーのタワー部以外の、フロントフレーム、リヤフレーム、ドア、ピラー、サイドシル等の車両部材を有する車両構造部材の製造方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例に係る車両のサスペンションクロスメンバーの底面図である。
【図2】サスペンションクロスメンバーのタワー部の斜視図である。
【図3】タワー部の縦断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】バーリング加工工程のプレス加工を示す図である。
【図6】バーリング加工工程のプレス加工を示す図である。
【図7】バーリング加工工程の絞り曲げ加工を示す図である。
【図8】バーリング加工工程の絞り曲げ加工を示す図である。
【図9】充填材充填工程を示す図である。
【図10】係止部材取付工程を示す図である。
【図11】係止部材取付工程を示す図である。
【図12】変更形態に係る充填材充填工程を示す図である。
【図13】別の変更形態に係る充填材充填工程を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 サスペンションクロスメンバー
2 タワー部
5 閉断面構造
6 充填材
8 クリップ
10 車両構造部材
11 車両部材
12 充填材
13 係止部材
16 閉断面構造
17,17A バーリング孔筒部
18 係止部
19,19A マスキング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両部材のうち充填材が一方側に充填されると共に他方側から係止部材が取り付けられる所定部位に、前記一方側にバーリング孔筒部が突出して形成されるようにバーリング加工を施すバーリング加工工程と、
次に、前記バーリング孔筒部の孔内をマスキングした状態で、前記一方側に充填材を充填する充填材充填工程と、
次に、前記バーリング孔筒部の内面に係止部材を係止して取り付ける係止部材取付工程と、
を備えたことを特徴とする車両構造部材の製造方法。
【請求項2】
前記充填材が発泡タイプの充填材であることを特徴とする請求項1に記載の車両構造部材の製造方法。
【請求項3】
前記車両部材のうち前記所定部位を含む部分が閉断面構造であり、
前記充填材充填工程において、前記閉断面構造の内側に充填材を充填することを特徴とする請求項2に記載の車両構造部材の製造方法。
【請求項4】
前記バーリング加工工程において、前記閉断面構造に構成する前の所定部位を含む車両部材の素材にバーリング加工を施し、その後、前記素材を溶接により組み立てて閉断面構造を構成してから、前記充填材充填工程において、前記バーリング孔筒部にその孔と同径のマスキング部材を閉断面構造の外側から挿入してマスキングすることを特徴とする請求項3に記載の車両構造部材の製造方法。
【請求項5】
前記バーリング加工工程において、車両部材の前記所定部位に、プレス加工により、穴開けを行うと共にその穴の外周側に係止部材が係止される係止部を形成し、次に、絞り曲げ加工により、前記穴の外周側部分を前記一方側に突出させて、前記係止部が孔内面に位置するようにバーリング孔筒部を形成することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の車両構造部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−168397(P2006−168397A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359712(P2004−359712)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】