説明

車両用のアクセス回路

【課題】セキュリティの改善を保証する、とりわけ後付け式のアクセス回路ないしは該アクセス回路の動作方法を提供することである。
【解決手段】前記課題は、少なくとも1つの移動可能な識別子発生器が、該車両側送受信装置から問い合わせ信号を受信し受信された問い合わせ信号の数を計数するための識別子発生器側装受信装置(SE)と、該受信された問い合わせ信号の数に依存して異なる制御命令を出力するための識別子発生器側制御装置とを有することによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のアクセス回路ないしは識別回路と、該回路の動作方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の車両ないしは自動車では、アクセス権限問い合わせが遠隔操作によって開始される電子的なアクセス権限システムがますます多く設けられるようになっていきている。最も簡単なケースではこのようなアクセス権限システムは、1つまたは複数の電子制御式のキーと、制御部と、該制御部に所属する少なくとも1つの電子キーすなわち遠隔操作部とから構成される。
【0003】
自動車に設けられる現在および将来のアクセス権限システムないしはアクセス回路は、たとえばトランスポンダ技術を使用する電子セキュリティシステムを使用する。ここでは、自動車を開ける前ないしは始動させる前にまず、該自動車に配置されたトランシーバと、たとえば自動車ユーザのキーまたはキーホルダに配置されたトランスポンダとの間で無線データ通信が行われ、符号化されたデータが交換される。この符号化されたデータは、たとえば自動車所有者による有効なアクセス権限を保証するデータである。このようなアクセス権限システムはたとえば、Siemens VDO社によって開発および販売されているPASEシステムである。このPASEは、「パッシブアクセススタートアンドエントリ」(Passive Access Start and Entry)を意味する。アクセス権限問い合わせはここではたとえば、ドアグリップの操作によって開始されるか、または自動車に接近するだけで開始される。機械的または電子的なキーをアクティブに操作する必要がないので、このような種類のアクセス権限はパッシブアクセス権限問い合わせとも称され、相応の施錠システムはパッシブ電子アクセス権限システムと称される。
【0004】
時折、たとえば上記のPASEシステム等であるパッシブ方式のアクセスシステム権限システムを備えていない既存のキーレス式の電子アクセス権限システムに、このパッシブ方式のアクセス権限システムも後付けしなければならないことがある。公知のシステムでは、パッシブ方式のアクセス権限システムを後付けするためには、車両側でとりわけ少なくとも1つの車両ドアに、該パッシブ方式のアクセス権限システム用の電子キー(PASEキー)を探索する送信器を設けなければならない。さらに、車両側に次のような相応の受信器も配置しなければならない。すなわち、従来のシステムの中央ロック装置に電気的に結合されており、PASEキーとのデータ通信の評価結果がポジティブであると、該受信器に電子的に結合されている中央ロック装置へ相応の制御信号を送信する受信器も配置しなければならない。このような後付け可能なパッシブ方式のアクセス権限システムは、たとえばDE102004039835B3から公知である。
【0005】
上記の文献では、パッシブアクセス権限システムが後付けされた車両へのアクセス権を車両ユーザがどのように得るかが記載されている。しかしここでは、車両ユーザがたとえば車両の停止後に該車両を離れた場合に起こる側面は考慮されていない。ここでは、パッシブアクセス用の電子キーが車両内に残され、第2のキーを使用して該キーのロックキーの操作により、車両をロックするための信号が与えられるという事態が生じる。また、別のメカニズムによって車両のロックが実施されることも考えられる。従来のパッシブ方式のアクセス権限システムでは、車両内に残された電子キーをロック後にデアクティベートするために、基本的に車内空間に制限された特別な阻止信号または相応のデアクティベート信号が送信されることにより、車両内に残された電子キーを少なくとも所定の時間にわたって阻止ないしはデアクティベートする。後付けされたパッシブアクセス権限システムの場合、上記で簡単に述べたように、問い合わせ信号を電子キーへ送信するための後付けされた車両側送信ユニットは、とりわけ車両ドア内に設けられる。したがってこのことにより、車両の外側に存在する電子キーを不所望に阻止ないしはデアクティベートすることなく、基本的に車内空間に制限された阻止信号を送信するのは困難である。
【特許文献1】DE102004039835B3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ本発明の課題は、従来技術の上記の問題を解決しセキュリティの改善を保証する、とりわけ後付け式のアクセス回路ないしは該アクセス回路の動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、少なくとも1つの移動可能な識別子発生器が、該車両側送受信装置から問い合わせ信号を受信し受信された問い合わせ信号の数を計数するための識別子発生器側装受信装置(SE)と、該受信された問い合わせ信号の数に依存して異なる制御命令を出力するための識別子発生器側制御装置とを有することによって解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明では、とりわけ車両へのアクセスを制御するための車両用アクセス回路ないしは識別回路は、以下の特徴を有する。車両側の所定数の信号ないしは問い合わせ信号を送信するための車両側送受信装置が設けられている。この問い合わせ信号は所定の情報を有することができ、たとえば種類ないしは目的および/または信号番号を有することができる。ここでは目的は、ドライバないしはユーザ側で車両を離れることとすることができる。このような場合にはたとえば、車両内に残された移動可能な識別子発生器のデアクティベートが望ましい。アクセス回路はまた、少なくとも1つの移動可能な識別子発生器ないしは携帯可能なユーザ識別装置も有し、該移動可能な識別子発生器ないしは携帯可能なユーザ識別装置は、車両側の送受信装置からの問い合わせ信号を受信し問い合わせ信号の受信数を計数するための識別子発生器側の送受信装置を有する。ここではさらに、計数前に、受信された問い合わせ信号の評価を行うこともできる。この評価では、たとえば識別子発生器側の送受信装置が、問い合わせ信号に含まれる情報を分析し、とりわけその後、該問い合わせ信号を分類することができる。このことは、車両側の送受信装置が異なる種類ないしは異なる目的の問い合わせ信号を送信し、かつ次の計数に重要な信号は、所定の目的に割り当てられる受信された問い合わせ信号のみであり、たとえば車両を離れる目的、ないしは車両内に残された識別子発生器をデアクティベートする目的に割り当てられた信号のみである場合に有利である。換言するとたとえば、問い合わせ信号の受信後にフィルタリングを行うことにより、計数のために(同一の目的の)所定の問い合わせが使用される。さらに、問い合わせ信号の信号番号の評価をたとえば識別子発生器側の送受信装置によって行い、とりわけ、所定数の問い合わせ信号のうちどの問い合わせ信号が受信されなかったかを検出することも考えられる。
【0009】
ここで、たとえば5つの問い合わせ信号が定義済みの時間セグメントにわたって1〜数秒の間隔で送信され、到達範囲内に存在するか否かに応じて、移動可能な識別子発生器によって受信されるかまたは受信されないことが可能である。少なくとも1つの移動可能な識別子発生器はさらに、問い合わせ信号の受信数に依存して異なる制御命令を出力するための識別子発生器側の制御装置も有する。このように、受信された問い合わせ信号の評価ないしは計数によって、識別子発生器側の制御装置は次のことを判定できる。すなわち、たとえば移動可能な識別子発生器を自動車ユーザが車両から離れる際に車両側の送受信装置の到達範囲外に持って行ったために該移動可能な識別子発生器が車両から離れている(問い合わせ信号の受信数が少ない)と判定するか、または、たとえば自動車ユーザが移動可能な識別子発生器を車両内ないしは車室内に忘れたために該移動可能な識別子発生器が未だ車両内に存在する(問い合わせ信号の受信数が多い)と判定する。問い合わせ信号の受信数に相応して、識別子発生器側の制御装置は異なる制御命令を出力することができ、このような制御命令は移動可能な識別子発生器自体で実行されるか、または識別子発生器側の送受信装置によって車両へ伝送された後に該車両で実行することができる。したがって、問い合わせ信号の受信数のこのような計数と、所定の制御命令の相応の送信とによって、必要なセキュリティ手段を実施し、アクセス回路のセキュリティを改善することができる。
【0010】
車両側の送受信装置によって行われる車両側の1つまたは複数の信号ないしは問い合わせ信号の送信をトリガするために、トリガ装置を設けることができる。このトリガ装置は、たとえばトリガ信号等のトリガイベントまたはトリガ状態を検出し、それに応答して、車両側の送受信装置に対し、1つまたは複数の問い合わせ信号を送信するように指示するように構成される。
【0011】
トリガ装置はトリガイベントとしてたとえば、車両の少なくとも1つのドアのロック状態を検出するため、ないしは開閉状態を検出するために使用されるドアセンサを有することができる。トリガ信号またはトリガ状態(トリガ)として、ドアセンサによって検出されたドア閉鎖状態を使用し、この検出されたドア閉鎖状態に応答して、車両側の送受信装置に対し、問い合わせ信号を送信するように指示されるようにすることができる。さらに、1つまたは複数の問い合わせ信号を送信する基準として、まずはドア開放状態が検出され、その後にドア閉鎖状態が検出されたことと決定することができる。
【0012】
このことは、車両ユーザが目的地で降車するために車両ドアを開け、降車した後に該車両ドアを閉める場合に起こる。閉鎖状態を識別すること、ないしは最初に開けられた後に閉められた状態を識別する他に、複数の問い合わせ信号が送信される別の付加的または択一的な基準(トリガイベント)として、車両の少なくとも1つのドアのロック状態が検出されることとすることができる。少なくとも1つのドアのロック状態が検出されると、1つまたは複数の問い合わせ信号の送信が開始される。ドアのロック状態を問い合わせるためにトリガ装置は、車両の少なくとも1つのドアに所属するロック装置を有することができる。さらに、上記の基準の他に別の付加的または択一的な基準として、エンジンないしは内燃機関の運転状態が検出されることとすることができる。エンジンが停止されるかないしは非作動状態にある場合、1つまたは複数の問い合わせ信号の送信が開始される。エンジンないしは内燃機関の運転状態を検出するために、トリガ装置はさらにエンジンセンサも有することができる。
【0013】
また、トリガ装置が車両側の送受信装置自体を有する構成も可能である。この車両側の送受信装置はトリガイベントとして、車両の少なくとも1つのドアをロックするためのロック信号を受信し、該ロック信号の受信に応答して1つまたは複数の問い合わせ信号を送信するように構成される。ここではロック信号は、ロック信号を送信するため(有利には、ロック解除信号を送信するためにも)構成された任意の遠隔制御部から送信することができる。とりわけ、移動可能な識別子発生器がロック信号を(たとえば、ユーザがキーを押したことに応答して)送信する構成が考えられる。このようにロック信号の受信に応答して問い合わせ信号を送信する利点は、以下のケースで得られる。アクセス回路は少なくとも1つの移動可能な第1の識別子発生器と、1つの移動可能な第2の識別子発生器とを有する。車両の停止ないしは駐車後に移動可能な第1の識別子発生器が、該車両から離れていくユーザによって持って行かれ、移動可能な第2の識別子発生器は車両内に忘れられた。ここでユーザないしは該ユーザの移動可能な第1の識別子発生器が、たとえば該移動可能な第1の識別子発生器にロック信号のために設けられたキーが押されることにより、ロック信号を車両に送信すると、車両の1つないしはすべてのドアがロックされ、該車両は問い合わせ信号の送信を開始する。この問い合わせ信号は、車内に忘れられた移動可能な第2の識別子発生器によって受信され、該第2の識別子発生器は相応の制御命令を実行し、とりわけデアクティベートを実行する(下記の詳細な記載を参照されたい)。というのも、該第2の識別子発生器の位置は変化せず、多数の問い合わせ信号を受信できるからである。したがって、車両は「アクティブに」ロックされたにもかかわらず、上記のケースではさらに、問い合わせ信号の送信も行われ、これによって、車両内に残された識別子発生器がデアクティベートされるのが保証される。
【0014】
有利な構成では識別子発生器側の制御装置は、複数の問い合わせ信号の受信数が、予め決定された最小数以上である場合、移動可能な識別子発生器をデアクティベートするためのデアクティベート信号、とりわけ識別子発生器側の送受信装置をデアクティベートするためのデアクティベート信号を出力するように構成されている。換言すると、移動可能な識別子発生器はたとえば車内に忘れられたために、問い合わせ信号が送信される時間間隔中に移動可能な識別子発生器が同一の場所にとどまっていると推定できる程度に、問い合わせ信号時間間隔内(すなわち、予め決定された数の問い合わせ信号のうちすべての問い合わせ信号が送信される時間間隔内)に受信された問い合わせ信号の数が多いので、識別子発生器側の制御装置は、該移動可能な識別子発生器または識別子発生器側の送受信装置のみのデアクティベートを決定し、該移動可能な識別子発生器は少なくとも所定の時間にわたって、車両側の送受信装置による認証を実行することはできない(場合によっては、車両ドアのロック解除も可能にする)。移動可能な識別子発生器のデアクティベートを行うためにはたとえば、識別子発生器のエネルギー源から該識別子発生器の電子的コンポーネントへの給電を遮断することができる。ここで、デアクティベートされた移動可能な識別子発生器ないしは該移動可能な識別子発生器のデアクティベートされた送受信装置を再びアクティベートするためには、該移動可能な識別子発生器はたとえば、キーとして形成された操作エレメントを有し、ユーザないしは自動車ユーザが該操作エレメントを操作することにより、該移動可能な識別子発生器または該移動可能な識別子発生器の送受信装置のアクティベートが開始されるように構成することができる。したがって、従来のアクセスシステムとは対照的に、移動可能な識別子発生器のデアクティベートは外側から車両側の送受信装置の阻止信号によって行われるのではなく、異なる時点で受信された問い合わせ信号の数を移動可能な識別子発生器自体が分析ないしは計数することによって行われる。相応に、移動可能な識別子発生器自体で直接、再アクティベートを行うこともできる。
【0015】
別の有利な構成では識別子発生器側の制御装置は、受信された複数の問い合わせ信号が、予め決定された最小数より小さい場合、車両のドアをロックするためのロック信号を送出するように構成されている。このことはたとえば、識別子発生器が自動車ユーザのポケット内に存在し、該自動車ユーザによって車両から持ち去られたため、問い合わせ信号時間間隔内に受信された問い合わせ信号の数が少数であり最小数を下回ることを識別子発生器側の制御装置が検出した場合、移動可能な識別子発生器が車両ないしは車両側の送受信装置から離れたこと(かつ、該移動可能な識別子発生器が車両側の送受信装置の到達範囲内でなくなったこと)を該識別子発生器側の制御装置が推定することを意味する。この場合、自動車ユーザ自身は車両のロックを気にかける必要がなく、この車両のロックは移動可能な識別子発生器が引き継ぐ。こうするためには移動可能な識別子発生器は、識別子発生器側の送受信装置を介してロック信号を車両側の送受信装置へ送信し、該送受信装置は(場合によっては車両側の制御装置を介して)少なくとも1つのドアをロックするためにロック装置へ該ロック信号を伝送する。このロック装置は、個々ないしは特定の電子制御式の錠とするか、または車両の中央ロック装置として構成することができる。さらに、受信された問い合わせ信号の数が最小数を下回ると検出された場合には、まず該問い合わせ信号の内容、とりわけ該問い合わせ信号の信号番号を評価ないしは分析することにより、該問い合わせ信号のうちどれが順番に受信されていないかを識別できるようにすることも考えられる。たとえば、予め決定された数の問い合わせ信号の最初の複数の問い合わせ信号が受信されたのに対し、それ以降の問い合わせ信号が受信されなかった場合、上記のようにロック信号を送信するための移動可能な識別子発生器が持ち去られたことが推定される。それに対し、たとえば2番目ごとの問い合わせ信号が受信されなかったことが検出された場合には、どちらかというと、システム内のどこかで妨害が存在するのが推定される。それゆえこの場合には、移動可能な識別子発生器を部分的(たとえば送信機能のみ)または完全にデアクティベートするのが有利である場合がある。
【0016】
別の実施形態では識別子発生器側の制御装置は、所定の第2の最小数に等しい(またはそれより大きい)数の問い合わせ信号が受信された場合に直ちに、移動可能な識別子発生器(少なくとも送信機能)をデアクティベートするためのデアクティベート信号を出力することも考えられる。前記所定の第2の最小数は、前記所定の最小数より小さくすることができ、たとえば1または2の値を有することができる。前記所定の第2の最小数を定義する意義は、上記の構成の場合に問い合わせ信号時間間隔が経過した場合、ないしは、予め決定された数の問い合わせ信号のうちすべての問い合わせ信号が車両側で出力された場合に初めて、制御命令の出力を決定することである。しかし、移動可能な識別子発生器が車両内に忘れられた場合には、セキュリティ上の危険性となり、このような危険性は可能な限り迅速に排除しなければならない。したがってこの構成では、問い合わせ信号時間間隔が経過するまで待機するのではなく、予め決定された第2の最小数に等しい数(またはそれより大きい数)の問い合わせ信号が受信された直後に、「一時的な」デアクティベート信号を送出し、これによって、識別子発生器側の送受信装置が(パッシブアクセス方式の場合のように)少なくとも信号を送信することが阻止される。最後に、問い合わせ時間間隔の経過後に問い合わせ信号の受信総数を考慮し、上記の構成に関して説明したように、終了制御命令を送出することができる。換言すると、識別子発生器のデアクティベートを保持するか、ないしは識別子発生器の別のコンポーネントのデアクティベートを行うことができる。または、識別子発生器が(ユーザによって)車両から持ち去られ、受信された問い合わせ信号が予め決定された最小数より少ない場合に、該識別子発生器を再びアクティベートすることができる。
【0017】
別の構成では問い合わせ信号の送信は、予め決定された数の問い合わせ信号の個々の問い合わせ信号が、特定の時間間隔または周期的に繰り返される時間間隔で送信されるように行われる。このような時間間隔は、移動可能な識別子発生器の移動ないしは持ち去りを検出するために、1秒〜数秒とすることができ、とりわけ5秒(s)とすることができる。すべての問い合わせ信号が、問い合わせ時間間隔以内に送信される。すでに述べたように、問い合わせ信号の送信は1つまたは複数の所定の基準にしたがって行われる。また、1つまたは複数の所定の基準にしたがって終了することもできる。その際には、移動可能な識別子発生器のロック信号の受信を、問い合わせ信号の送信を終了する基準とすることができる。なお、完全にするために述べておくと、たとえば自動車ユーザ側で車両を離れ、少なくとも1つの車両ドアが閉められた後、車内に移動可能な識別子発生器が残されると同時に、別の移動可能な識別子発生器が該自動車ユーザによって該車両から持ち去られる場合がある。その際には、(たとえば後付けされたパッシブアクセスシステムのように)自動車ユーザ側の操作によってロック信号をアクティブに送信することもできる移動可能な識別子発生器により、予め決定された数の問い合わせ信号が送信される前にすでに、アクティブに送信されたロック信号をたとえば車両側の送受信装置によって受信することが可能である。この場合、車両側の送受信装置は有利には、ロック信号を受信したにもかかわらず、予め決定された数の問い合わせ信号を送信することができる。このことにより、車内に残された移動可能な識別子発生器も、問い合わせ信号を規則的に計数し、場合によってはデアクティベートすることもできる。
【0018】
本発明の別の側面では、車両用のアクセス回路を動作する方法を提供する。本方法は以下のステップを有する。車両側で、予め決定された数の問い合わせ信号を送信する。この問い合わせ信号の送信は、たとえばトリガ信号ないしはトリガ状態等のトリガイベントを検出することによってトリガないしは実施することができる。たとえば、車両の少なくとも1つのドアの閉鎖状態を検出することにより、問い合わせ信号の送信を行うことができる。最後に、移動可能な識別子発生器によって、送信された問い合わせ信号が受信および計数される。その次に、受信された問い合わせ信号の数に依存して、異なる相応の制御命令が移動可能な識別子発生器によって出力される。受信された問い合わせ信号をこのように評価ないしは計数することにより、移動可能な識別子発生器がたとえば自動車ユーザによって車両から持ち去られたかまたは車両内に未だ存在して残されたかを、該移動可能な識別子発生器自体が検出することができる。相応に、異なる制御命令を送信することによってセキュリティ関連の手段を開始することができる。
【0019】
上記の回路の有利な構成は、その他の点で方法にも転用できる限り、本方法の有利な構成と見なすことができる。
【0020】
まず図1を参照する。ここではアクセス権限システムないしはアクセス回路1が示されており、このアクセス権限システムないしはアクセス回路1は、ここでは自動車で使用するために構成されている。アクセス権限システム1は、車両側の定置領域2と、キー側の移動可能領域3とを有する。
【0021】
移動可能領域3には、電子キー4として構成された移動可能な識別子発生器が設けられている。電子キー4は2つのキー領域5および6を有する。第1のキー領域5はここでは、詳細に示されていないトランスポンダを有し、たとえばPASEシステム等であるパッシブアクセスシステム用に構成されている。さらに第1のキー領域5は、誘導アンテナないしは受信アンテナ8を有する受信装置7と、前記受信装置7に接続された制御評価回路9とを備えている。第2のキー領域6は、1つまたは複数のドアキーを遠隔制御によってロック解除およびロックするための遠隔操作機能(RKE‐Remote Keyless Entry)を有する。典型的には、この遠隔操作は約447MHzの領域の周波数で動作するが、このことは必ずしも必須ではない。遠隔操作部は複数のスイッチ位置を有することができ、たとえば、運転席ドアのみ、すべてのドア、トランクドア等を開けるべきか、またはこれらのドアを閉めるかないしはロックすべきかを区別するためのスイッチ位置を有することができる。
【0022】
遠隔操作部は少なくとも、図1では示されていない遠隔操作キーを有する。この遠隔操作キーは公知のように、たとえば容量式のピックアップまたは圧力ピックアップ等である相応のピックアップ10に結合されている。このピックアップ10自体は、接続線路を介して制御評価装置11に結合されており、該制御評価装置11は送信装置12に接続されている。キー4内の評価制御回路9,11はたとえば、PLDまたはFPGA等であるプログラマブル論理回路として構成するか、または単なるマイクロプロセッサとして構成することができる。
【0023】
さらに、電子キー4は付加的に、機械的キー領域13も有する。この領域13はドア錠を機械的に開けるために、鍵歯部またはキービット13を備えている。さらにキーTAも設けられている。この機能は以下で、図2ないしは3に基づいて説明する。
【0024】
車両側の定置領域2は、パッシブ電子アクセス権限システム14(または略してパッシブアクセスシステム)とアクティブ電子アクセス権限システム15(または略してアクティブアクセスシステム)とを有する。パッシブアクセスシステム14はここでは後付けシステムとして構成されており、車両のドア内に設けられており(図2も参照されたい)、制御回路16を有する。制御回路16はパッシブアクセス権限問い合わせ17を検出するために、そのために専用に設けられたスイッチまたはセンサ18に接続されている。スイッチ18はたとえばドアグリップ内に配置される。センサとして適しているのは、有利には容量性センサであるか、または光学的センサであり、たとえばライトバリアが適している。制御回路16はさらに送信装置19にも接続されている。この送信装置19自体は、少なくとも1つの誘導アンテナないしは送信アンテナ20に接続されている。誘導アンテナ20の到達範囲は、アクセス権限を検査するために、典型的には車両ドアから約1〜2mまでの範囲に限定される。しかし、自動車ユーザが車両を離れるシナリオのためには、この到達範囲をより大きな数mの到達範囲にすることもできる(図2および3に関する説明を参照されたい)。このような車両側およびキー側の送信装置19ないしは受信装置7により、パッシブアクセスシステム14の適用時には、車両側のベースステーションと第1のキー領域内のトランスポンダとの間で、有利には無指向性のデータ通信が確立され、図1中の相応のアンテナ8,20間の相応の通信区間は参照符号21によって示されている。このデータ通信21は有利には、高周波の電磁波によって行われ、この電磁波はデータセキュリティを改善するために、有利には暗号または固定コードによって保護される。しかし、このことは必須ではない。データ通信が暗号または固定コードによって保護される場合には、該データ通信は有利には双方向で行われる。この場合には、アンテナ8,20はそれぞれ送信アンテナ/受信アンテナとして構成し、相応の要素7,19は送信装置/受信装置(トランシーバ)として構成しなければならない。
【0025】
アクティブアクセスシステム15は制御回路22を有し、たとえば、無線遠隔操作によって制御される中央ロック装置の制御回路22を有する。こうするためには、制御装置22は受信器23に接続されている。第2のキー領域6内の送信器12およびアンテナ40と、アクティブアクセスシステム15内の受信器23およびアンテナ41とを介して、参照符号24によって示された通信接続を確立することができる。制御回路22は少なくとも1つの錠25に接続されており、たとえばタンクカバーまたはトランクカバー等のドア錠に接続されている。
【0026】
さらに、給電電圧源26も設けられている。自動車の場合には給電電圧源26は、出力側で直流電圧を供給する自動車バッテリーとして構成されている。給電電圧源26は2つの給電出力端27,28を有する。第1の給電出力端27は、参照アースの電位GNDを有する。第2の給電端子28はバッテリー電位VBATを供給する。第1の制御回路16および第2の制御回路22はそれぞれ給電線路29,30を介して第2の給電端子28に接続されており、これらの制御回路にはそれぞれバッテリー電位VBATが供給される。さらに両制御回路16,22は、参照アースの電位GNDにも接続されている。
【0027】
第1のキー領域5内の制御評価回路9は電気的な接続線路31を介して、第2のキー領域内の相応の制御評価回路11に接続されている。付加的または択一的に、機械的な操作装置を介して制御評価回路9と第2のキー領域6内の相応のピックアップ10とが結合される構成も可能である。このような構成により、制御評価回路9による制御によって、ピックアップ10に及ぼされた機械的な圧力をシミュレートすることができる。このことは図1では、接続部分32によって示されている。
【0028】
すでに簡単に述べたように、アクセス権限システム1内には、パッシブアクセスシステム14等である第1のキー領域5が後付けされている。すなわち本来のアクセス権限システム1は、第2のキー領域6を有する電子キー4とアクティブアクセスシステム15のみを有していた。パッシブアクセスシステム14をバッテリー26に結合し、第1のキー領域5を電子キー4に結合することにより、アクセス権限システムの非常に簡単かつ洗練された後付けを行うことができる。
【0029】
以下で、(後付けされた)アクセス権限システム1の動作を図1に沿って、ユーザまたは自動車ユーザが車両にアクセスしたい場合に関して説明する。ここではまず、パッシブアクセス権限問い合わせを行う場合のみを考察する。
【0030】
パッシブアクセス権限問い合わせの場合、たとえば自動車ユーザが自動車に近づく場合、まずはスイッチ18のうち少なくともいずれか1つが操作されるか、または相応のセンサ18が応答する。このスイッチ18ないしはセンサ18はセンサ信号33を生成し、該センサ信号33は制御回路16によって評価される。センサ信号33の評価結果が肯定的である場合、第1のデータ通信21が行われる。この第1のデータ通信21では、パッシブアクセスシステム14と第1のキー領域5内のトランスポンダとの間で暗号データが交換され、これにより、アクセス権限問い合わせ17が正当であるか否かが検出される。正当なキーが与えられた自動車ユーザが自動車に近づく場合、パッシブアクセス権限問い合わせ17は正当である。このことは、トランスポンダ内の制御評価回路9および制御回路16で検出される。正当なアクセス権限問い合わせ17の評価結果が肯定的である場合、制御評価回路9は制御信号34を生成し、該制御信号34は第2のキー領域6内の制御評価回路11へ供給される。
【0031】
この制御信号34によって、操作後のピックアップ10の信号に相応するアクティブアクセス権限問い合わせがシミュレートされる。これによって、送信器12ないしはアンテナ40を介してアクセス制御信号が、第2のデータ通信24によってアクティブアクセス権限システム15の受信装置23へ送信される。ここではこのアクセス制御信号がパッシブアクセス権限問い合わせであるにもかかわらず、第2の制御回路22は、該アクセス制御信号をアクティブアクセス権限問い合わせと見なす。ここで、制御回路22は錠を(または、中央ロック装置の錠も)相応に駆動制御し、該錠25はロック解除される(または、下記でも説明するように、ロックされる)。したがって、この車両側のロック解除ないしはロック過程は、キー4の遠隔操作キーを手動で操作する場合の従来の遠隔制御式のロック解除過程とは異ならない。
【0032】
ここに図示されたアクセス権限システム1はもちろん、ユーザが電子キーの遠隔操作部を操作する場合、すなわち実際のアクティブアクセス権限問い合わせが存在する場合にも機能する。この場合、アクティブアクセスシステム15との直接的なデータ通信24を行うためには、第2のキー領域6の要素を使用するだけである。さらに錠25は、キービット13のみを使用してロック解除および/またはロックすることができる。
【0033】
以上では図1を参照して、自動車ユーザが自動車にアクセスしたい場合を説明したが、以下では図2ないしは3を参照して、自動車ユーザがたとえば車両を停止ないしは駐車して離れたい場合を考察する。ここで図2には車両FZの平面図が示されており、該車両FZは車両ドアTFZ(ここでは見やすくするために縮尺どおりではなく、いくらか拡大して示されている)を有し、該車両ドアTFZ内には、図1の車両側の定置領域2の幾つかの構成要素が収容されている。しかしここでは、アクティブアクセスシステムの構成要素(41,22,23)が車両FZの別の場所に設けられている構成も可能である。1つまたは複数のスイッチ18も車両ドア内に設けることができるが、図2には示されていない。というのも、このスイッチ18は以下の説明では必要でないからである。
【0034】
図2は車両FZの他に、移動可能な識別子発生器ないしは電子キーを示している。ここでは、1つの電子キーIDIは車内に存在し、たとえば車両座席空間内に存在し、別の電子キーIDAは車両FZの外側に存在する。ここでは、外側にある電子キーIDAは第1の位置POS1から第2の位置POS2へ移動する。各電子キーIDIおよびIDAは双方とも同じ構成を有し(キー4に相応する)、見やすく図示するために、重要な構成要素のみを概略的に図示した。これらの電子キーIDIないしはIDAは、アンテナAN(たとえば、キー4のアンテナ8,40の代わり)と、送受信装置SE(キー4の受信装置7および送信装置12をまとめたもの、ないしは該受信装置7および送信装置12の代わり)と、(識別子発生器側の)制御装置ST(キー4の制御評価回路9,11をまとめたもの、または該制御評価回路9,11の代わり)とを有する。ここで、アンテナANは3次元構造を有することにより、受信された問い合わせ信号のフィールド方向の変化を検出できるように構成することも可能であることも述べておく。また、電子キーIDIないしはIDAはキーTAも有し、該キーTAは自動車ユーザによって操作可能であり、制御装置STに接続されている。このキーTAの意義を、以下で詳細に説明する。
【0035】
ここで、自動車ユーザが車両FZの停止後に該車両を離れようとしており、1つの電子キーIDIは未だ車内に存在するのに対し、別の電子キーIDAは自動車ユーザによって持って行かれ、車両から移動され、ないしは車両FZから持ち去られるケースを考察する。電子キーIDIはたとえば、同様に車両FZのアクセス権限システムに対する電子キーを有する同乗者によって、座席上に誤って残される。自動車ユーザが車両を離れる際の可能なフローが、図3の実施例で示されている。
【0036】
自動車ユーザが車両FZを離れようとする場合、まず車両FZのドアTFZを開け、車両から降車し、ドアTFZを再び閉める。したがって、ステップS1において後続のステップを開始する第1の基準(ないしはトリガイベント)を、ドアの閉鎖状態が識別されることとすることができる。また、最初にドアの開放状態が識別された後にドアの閉鎖状態が識別されることを基準とすることも考えられる。その時点のドア状態は、ここではドア閉鎖センサTSSによって識別される。このドア閉鎖センサTSSは制御回路16に接続されている。さらに、後続のステップを開始する別の基準として、車両のエンジンないしは内燃機関が停止されたか否かを検査することもできる。このことは、車両の停止ないしは駐車を表す指標と見なすことができる。こうするために、車両はエンジンセンサMSを有し、エンジンセンサMSも、(図示されていないが)制御回路16に接続されている。
【0037】
制御回路16によって各センサTSSを使用してドアの閉鎖状態が識別されたか、またはドアの開放状態が識別された後にドアの閉鎖状態が識別され、センサMSによってエンジンの停止状態が識別された場合(ここではトリガイベントは、1つまたは複数の基準が満たされたことを含むことができる)、制御回路16は所定の数VBA(この例では5つ)の問い合わせ信号を送信装置19からアンテナ20を介して送信し始める。この問い合わせ信号は数秒の時間間隔で送信され、たとえば5sの時間間隔で送信される。この問い合わせ信号は所定の情報を有することができ、たとえば種類ないしは目的および/または信号番号を有することができる。とりわけ、ここでは問い合わせ信号は目的ステートメントとして、ユーザ側が車両を離れたことを示すシグナリングを含むことができる。図3には、送信装置19から送信される問い合わせ信号AS1〜AS5が5つのみ示されているが、送信される問い合わせ信号を5つより多くすること、または5つより少なくすることも考えられる。
【0038】
ここで再び図3を参照すると、時間的順序にしたがってステップS2で第1の問い合わせ信号AS1が送信され、該第1の問い合わせ信号AS1はその後、ステップS3で電子キーIDIおよびIDAによって、車両ないしは送信装置19に対する現在位置に応じて受信および計数される。ここではまず、受信された問い合わせ信号の数を表す計数変数EAZがゼロにセットされ、その後、問い合わせ信号AS1が受信されると該計数変数EAZは値1ごとに増加される。これに相応して、ステップS4で車両ないしは送信装置19から送信された第2の問い合わせ信号AS2〜第5の問い合わせ信号AS5が、場合によっては電子キーIDI,IDAの現在位置に応じて、ステップS5で受信および計数される。ここでは、受信後に問い合わせ信号がさらに評価され、ないしは問い合わせ信号に含まれる情報が分析される構成が可能である。たとえば問い合わせ信号の目的ステートメントを分析し、その後、問い合わせ信号のみを計数過程に転送することができる。問い合わせ信号の目的ステートメントは、ユーザ側が車両を離れたことを示すシグナリングである。電子キーIDAが問い合わせ信号の送信中に車両ないしは送信装置19から持ち去られた場合、問い合わせ信号がすべて受信されることがなくなる。
【0039】
すなわち、場合によって問い合わせ信号が受信および計数された場合、ステップS6で各制御装置STにおいて、受信された問い合わせ信号の数EAZと所定の最小数MAZとの比較が行われる。ここで、たとえばキーIDIである電子キーが車内に忘れられ、かつ自動車ユーザが車両から離れたケースを前提とすると、通常の場合にはAS1〜AS5のすべての問い合わせ信号が、車内に存在する電子キーIDIによって受信および計数される。それゆえ、車両内において基本的に移動しない電子キーIDIの場合、問い合わせ信号時間間隔中(すなわち、所定の数の問い合わせ信号のうちすべての問い合わせ信号が送信される時間間隔中)に受信された問い合わせ信号の数EAZが最小数MAZ(この例では4つ)以上である場合には、ここでは図中の「いいえ」分岐に分かれる。換言すると、電子キーIDIが内部に存在する場合、制御装置STは、受信された問い合わせ信号の数が多かったことを検出する。このことは、キーIDIはここでは車内に忘れられたために動かなかったことを意味する。車内に存在するこのようなキーは、上記のアクセス権限過程に対してセキュリティホールとなるため、キーIDIの制御装置STはステップS7でキーIDIをデアクティベートないしは阻止する。その際には、キーIDIの送受信装置SEのみを所定の時間にわたって阻止するかないしは永続的に阻止することにより、たとえば認証過程を行えなくなるようにすることができる。または、たとえばキーの未図示のエネルギー源からのエネルギー供給をスイッチによって遮断することにより、キーIDI全体を阻止ないしはデアクティベートすることができる。
【0040】
このように、車両の問い合わせ信号を受信および計数することにより、内部に存在するキー自体によって、該キーが車内に存在し、セキュリティ上の危険性を低減するために該キー自体をデアクティベートしなければならないことを検出することができる。その際には、上記のキーTAを使用して自動車ユーザは、該キーを単純に操作するかまたは所定の「アクティベートパターン」にしたがって操作することにより、部分的または完全に阻止ないしはデアクティベートされたキーを再びアクティベートすることができる。
【0041】
ここで、電子キーIDAが自動車ユーザによって(たとえば該自動車ユーザのズボンポケットまたはバッグに入れて)持っていかれ、該自動車ユーザが車両FZから降車し、ドアを閉めた後に自動車FZから離れるケースを説明する。
【0042】
自動車ユーザが車両FZからの降車後にドアTFZを閉めると、すでに述べたように、所定の数VBAの問い合わせ信号の送信が送信装置19によって開始される。その際には第1の位置POS1に、外側の電子キーIDAがアンテナ20からわずかな距離FA1で存在する。この距離FA1はたとえば、車内の電子キーIDIの距離FIに相応することもある。しかし、外側の電子キーIDAは自動車ユーザによって車両FZから持ち去られるので、アンテナ20までの間隔FA2はたとえば位置POS2で拡大される。したがって、問い合わせ信号の到達範囲が小さく決定されている場合、この例では送信された問い合わせ信号は、位置POS2でキーIDAによって受信されなくなる。それゆえ、外側の電子キーIDAの制御装置STは位置POS2で(ステップS6を参照されたい)、問い合わせ信号が受信されなくなったことを検出するか、ないしは所定の問い合わせ信号時間間隔の経過後に、数EAZが最小数より小さいことを検出する。この検出に基づいて、制御装置STはステップS8でキーIDAをデアクティベートせず、その代わりに有利な実施形態では、たとえば位置POS2でロック信号VSを生成し、ステップS9で送受信ユニットSEおよびアンテナANを介して、アクティブアクセスシステム(15,図1を参照されたい)のアンテナ41へ該ロック信号VSを送信する。ここでロック信号は受信器23によって受信され、制御回路22によって評価され、最後に錠25へ伝送されるか、ないしは錠25の代わりとなる中央ロック装置へ伝送される。錠25ないしは中央ロック装置はステップS10で、対応する1つまたは複数のドア錠をロックする。このようにして、図1および2によれば後付けされたパッシブアクセス権限システムでも、電子キーが車両から移動されるかないしは持ち去られたことを識別した場合に該電子キーが車両を自動的にロックすることにより、高いセキュリティ水準が実現される。
【0043】
なお、以上で説明した電子キーIDAが車両の外側領域において時間とともに移動しないかまたはほとんど移動せず、(問い合わせ信号時間間隔中に)受信された問い合わせ信号の数EAZが最小数MAZ以上となる可能性もあることを述べておく。このような場合には、外側領域に存在する電子キーもデアクティベートされる。しかしこのようなデアクティベートは、上記のキーTAを押すことによって中止することができる。有利な構成ではまた、たとえば電子キーの所定のキー(ピックアップ10に接続された遠隔操作キーがこれに相応する)を押すことによってロック信号を送出するために該電子キーを使用する場合(アクティブアクセス回路の遠隔操作に相応する)、デアクティベートされた電子キーを再びアクティベートすることも可能である。換言すると、電子キーのキーを押すことにより、たとえば遠隔操作信号(たとえばロック信号等)を送信するためのキーを押すことにより、デアクティベートされた電子キーを再びアクティベートする。
【0044】
以上に記載された実施形態では、ドアTFZの閉鎖状態が検出された後に問い合わせ信号の送信が送信装置19によって開始されるのに対し、別の実施形態では、「アクティブ」に使用されるかないしは遠隔操作として使用されるキーの(たとえばピックアップ10に相応に接続された遠隔操作キーを押すことによってトリガされた)ロック信号が受信器23によって受信された場合に、問い合わせ信号の送信を開始することも考えられる。この問い合わせ信号の送信はとりわけ、車内に存在するかないしは忘れられた電子キーを上記のようにデアクティベートするのに使用される。しかし、アクティブなロック時ないしはロック後にデアクティベートが起こらないという問題を防止するためにこの別の実施形態では、電子キーが「アクティブ」に使用される場合、ないしはロック信号を送信する場合、後続の受信された問い合わせ信号(ロック信号の次にトリガされる問い合わせ信号)の評価ないしは計数は抑圧ないしは中断される。換言すると、「アクティブ」に使用される電子キーによって、受信される問い合わせ信号が消失されることにより、該電子キーはデアクティベートされない。受信される問い合わせ信号のこのような消失は、ここではとりわけ、ロック信号の送出後の所定の時間にわたって行われる。有利には、この所定の時間は少なくとも、(ロック信号によってトリガされた)問い合わせ信号の送信が持続する間の時間に選択される(問い合わせ信号時間間隔)。
【0045】
以下で、アクセス権限システムの上記に挙げられた実施形態に関する幾つかの有利な構成を簡単に説明する。
【0046】
たとえば、車両FZからないしは送信装置19を介して送信された1つまたはすべての問い合わせ信号によって、該車両FZのその時点のロック状態を通知することが可能である。このことに関連して、車両のその時点のロック状態を通知する代わりに、新規の(所望の)ロック状態(たとえば非ロック状態からロック状態への移行)を通知することもできる。ここで、移動可能な識別子発生器ないしは移動キーが問い合わせ信号の評価後にその時点のロック状態ないしは所望の状態変化を把握した場合、ロックまたはロック解除のための相応の信号を車両へ送信し戻すことができる。
【0047】
また自動車ユーザが、電子キーで操作エレメントの異なる操作を行うことにより、異なる機能(たとえばロックおよびロック解除等)をトリガすることも可能である。たとえば、ピックアップ10(図1)に接続された上記の未図示の遠隔操作キーを個々に短時間操作することにより、たとえば移動可能な識別子発生器からロック解除信号が直接送信されるのに対し、たとえば該遠隔操作キーを比較的長時間操作した場合、または短い時間間隔以内に複数回操作した場合、移動可能な識別子発生器からロック信号が車両へ送信される構成が可能である。
【0048】
とりわけ車内に忘れられた移動可能な識別子発生器ないしは電子キーに関するセキュリティをさらに改善するためには、車両のロックが(たとえば、制御回路16に接続され図には示されていないロックセンサによって)検出された後に所定の時間間隔が経過した後、制御回路16が、送信装置19の近距離の受信領域内(送信装置19の周囲約1〜2m以内)に存在する識別子発生器をデアクティベートないしは阻止するためのデアクティベート信号を送信するかないしは送信できる構成が考えられる。この構成ではまず、たとえば外側の移動可能な識別子発生器のロック信号によってロックが行われたか、またはたとえば、自動車ユーザによる機械的なロックによってロックが完了されている。このことに関しては、制御回路16は所定の数の問い合わせ信号の送信なしで、所定の期間ないしは時間間隔の経過後に、車両の少なくとも1つのドアのロックが検出された後に、デアクティベート信号を送信することも考えられる。
【0049】
新規の移動可能な識別子発生器ないしは電子キーが、図中に示された上記のアクセス権限システムによって登録される場合、この新規の移動可能な識別子発生器をまず学習しなければならない。複数の移動可能な識別子発生器を学習しなければならない場合、これら複数の移動可能な識別子発生器が相互に衝突する問題が生じる。したがって、複数の移動可能な識別子発生器を学習する場合には、これらの識別子発生器を逐次的ないしは連続的に学習することにより、衝突を回避することを提案する。
【実施例】
【0050】
以下で、本発明の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の1つの実施形態によるキーレス方式の電子的アクセス権限システムないしはアクセス回路のブロック回路図である。
【図2】自動車ユーザが車両を離れ、移動可能な識別子発生器は車内に残されたシナリオ、またはドライバによって持って行かれたシナリオを概略的に示す図である。
【図3】自動車ユーザが車両を離れた場合に車両でも所属の識別子発生器でも実行される個々の過程のフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 アクセス権限システム/アクセス回路
2 車両側の定置領域
3 電子キー側の移動可能領域
4 電子キー
5 第1のキー領域
6 第2のキー領域
7 受信装置
8 誘導アンテナ/受信アンテナ
9,11 制御評価回路
10 ピックアップ
12,19 送信装置
13 機械的キー領域
14 パッシブ電子アクセス権限システム/パッシブアクセスシステム
15 アクティブ電子アクセス権限システム/アクティブアクセスシステム
16,22 制御回路
17 パッシブアクセス権限問い合わせ
18 スイッチ/センサ
20 送信アンテナ
21,24 通信区間
23 受信器
25 錠
26 給電電圧源
29,30 給電線路
33 センサ信号
34 制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(FZ)用のアクセス回路において、
所定の数(VBA)の問い合わせ信号(AS1,AS2〜AS5)を送信するための車両側送受信装置(19)と、少なくとも1つの移動可能な識別子発生器(IDI,IDA)とを備えており、
該少なくとも1つの移動可能な識別子発生器(IDI,IDA)は、
該車両側送受信装置(19)から問い合わせ信号(AS1,AS2)を受信し、受信された問い合わせ信号の数(EAZ)を計数するための識別子発生器側装受信装置(SE)と、
該受信された問い合わせ信号の数(EAZ)に依存して異なる制御命令(VS,DS)を出力するための識別子発生器側制御装置(ST)とを有することを特徴とする、アクセス回路。
【請求項2】
前記車両の少なくとも1つのドア(TFZ)の開放状態または閉鎖状態を検出するためのドアセンサ(TSS)を有し、
前記車両側送受信装置(19)は、該ドアセンサによってドアの閉鎖状態が識別された場合に、前記所定の数(VBA)の問い合わせ信号(AS1,AS2〜AS5)を送信する、請求項1記載のアクセス回路。
【請求項3】
前記車両側送受信装置(19)はさらに、前記車両の少なくとも1つのドア(TFZ)をロックするためのロック信号を受信するようにも構成されており、
該車両側送受信装置(19)は、該ロック信号の受信に応答して、前記所定の数(VBA)の問い合わせ信号(AS1,AS2〜AS5)を送信する、請求項1記載のアクセス回路。
【請求項4】
受信された問い合わせ信号の数(EAZ)が所定の最小数(MAZ)以上である場合、前記識別子発生器側制御装置(ST)は、前記少なくとも1つの識別子発生器(IDI)をデアクティベートするためのデアクティベート信号(DS)、たとえば該識別子発生器側制御装置をデアクティベートするためのデアクティベート信号(DS)を出力する、請求項1から3までのいずれか1項記載のアクセス回路。
【請求項5】
受信された問い合わせ信号の数(EAZ)が所定の最小数(MAZ)を下回る場合、前記識別子発生器側制御装置(ST)は、前記車両(FZ)の少なくとも1つのドア(TFZ)をロックするためのロック信号(VS)を出力する、請求項1または2記載のアクセス回路。
【請求項6】
問い合わせ信号(AS1,AS2〜AS5)の送信は、所定の時間間隔に制限されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のアクセス回路。
【請求項7】
問い合わせ信号(AS1,AS2〜AS5)の送信は、周期的に繰り返す時間間隔で行われる、請求項1から6までのいずれか1項記載のアクセス回路。
【請求項8】
前記移動可能な識別子発生器はさらに、ユーザによって操作するための操作エレメント(TA)を有し、
該操作エレメント(TA)の操作によって、前記少なくとも1つの移動可能な識別子発生器(IDI)が再びアクティベートされ、とりわけ該少なくとも1つの移動可能な識別子発生器(IDI)のデアクティベートされた識別子発生器側制御装置(SE)が再びアクティベートされるように構成されている、請求項4記載のアクセス回路。
【請求項9】
前記車両をロックするためのロック信号を送信した移動可能な識別子発生器は、所定の時間にわたって問い合わせ信号を受信または評価しない、請求項1から8までのいずれか1項記載のアクセス回路。
【請求項10】
車両(FZ)用のアクセス回路(1)を動作させる方法において、
該車両(FZ)側で所定の数(VBA)の問い合わせ信号(AS1,AS2〜AS5)を送信するステップと、
少なくとも1つの移動可能な識別子発生器(IDI,IDA)によって該問い合わせ信号(AS1,AS2〜AS5)を受信し、受信された問い合わせ信号を計数するステップと、
受信された問い合わせ信号の数(EAZ)に依存して異なる制御命令(DS,VS)を該少なくとも1つの移動可能な識別子発生器から出力するステップ
とを有することを特徴とする方法。
【請求項11】
まず、前記車両(FZ)の少なくとも1つのドア(TFZ)の閉鎖状態を検出し、その後、ドアの閉鎖状態が検出された場合、該車両(FZ)側で所定の数(VBA)の問い合わせ信号(AS1,AS2〜AS5)を送信する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
まず、前記車両からロック信号を受信し、該ロック信号に応答して該車両(FZ)側で前記所定の数(VBA)の問い合わせ信号(AS1,AS2〜AS5)を送信する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
受信された問い合わせ信号の数(EAZ)が所定の最小数(MAZ)を下回る場合、前記移動可能な識別子発生器(IDA)は、前記車両(FZ)の少なくとも1つのドアをロックするためのロック信号(VS)を出力する、請求項10または11記載の方法。
【請求項14】
受信された問い合わせ信号の数(EAZ)が所定の最小数(MAZ)以上である場合、前記移動可能な識別子発生器(IDI)は、該少なくとも1つの識別子発生器(IDI)をデアクティベートするためのデアクティベート信号(DS)を出力する、請求項10から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記移動可能な識別子発生器(IDI)はさらに、ユーザによって操作するための操作エレメント(TA)を有し、
該操作エレメント(TA)の操作によって、デアクティベートされた前記移動可能な識別子発生器は再びアクティベートされるように構成されている、請求項15記載の方法。
【請求項16】
受信された問い合わせ信号の数が所定の第2の最小数(MAZ)以上である場合、前記移動可能な識別子発生器(IDI)は、該少なくとも1つの識別子発生器をデアクティベートするための第2のデアクティベート信号(DS)を出力する、請求項10から15までのいずれか1項記載のアクセス回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−69629(P2008−69629A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238292(P2007−238292)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(507229032)ジーメンス ヴィディーオー オートモーティヴ アクチエンゲゼルシャフト (46)
【氏名又は名称原語表記】Siemens VDO Automotive AG
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】