説明

車両用の駆動機構

駆動機構1は、クラッチ8を介して、オイル潤滑される変速装置5に結合される駆動源3と、変速装置5と平行に存在する変速装置モジュール13とを含む。変速装置モジュールは、グリース潤滑される衛星歯車14を有し、それらのうち、第一回転部材15が、クラッチ用のシリンダ25を動作するよう取り付けられるインサートスリーブ上に軸受支持され、クラッチの第一クラッチ部分8aに取り付けられる接続プレート31に接続される。第二回転部材17が接続歯車27に接続される。封止リング33が変速装置のハウジングと接続歯車27との間に収容され、更なる封止リング35が接続歯車27とインサートスリーブ29との間に収容される。第三回転部材19は、側方ガード37を有する輪歯車によって形成され、側方ガード37は、グリースが衛星歯車組の内側に残存するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の駆動機構に関し、当該駆動機構は、駆動源と、入力シャフトと出力シャフトとを有し且つハウジングを備える変速装置(transmission)と、駆動源と変速装置との間に存在し且つ駆動源に接続される第一クラッチ部分と変速装置の入力シャフトに接続される第二クラッチ部分とを含むクラッチと、第一クラッチ部分に接続される入力部と変速装置の出力シャフトに接続される出力部とを有する変速装置モジュールとを含み、変速装置モジュールは、ブレーキ並びに接続歯車及び3つの回転部材を含む衛星歯車組を含み、それらのうち、第一回転部材は、入力部に接続され、第二回転部材は、出力部を形成する接続歯車に接続され、第三回転部材は、ブレーキに接続される。
【0002】
本発明は、より具体的には、変速装置モジュールが伝達比の変更中にエンジンの出力を車両の車輪に伝達するために変速装置及びクラッチと平行に配置される車両用の駆動機構に関する。
【背景技術】
【0003】
ここで、変速装置は、連続的に可変な変速装置又は複数のクラッチ歯車である。クラッチ歯車は、歯車減速装置であるように考えられてよく、そこでは、歯車の1つをシャフトに結合可能であり、同期噛み合いクラッチを閉じることによって、歯車の1つがシャフト上で軸受支持される。
【0004】
ブレーキを介して衛星歯車組の第三の回転部材を硬い物体に接続し得る。例えば、硬い物体は、変速装置のハウジングを意味するものと理解され得る。
【0005】
この種類の駆動機構はWO−A−2004/098937から既知である。この既知の駆動機構において、衛星歯車組は、変速装置にオイル接続され、この変速装置は、封止リングによって、ブレーキ及び変速装置と駆動源との間に据え付けられるクラッチに封止される。適切なオイル封止を保証するために、これらの封止リングに厳格な要求が設定されるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既知の駆動機構におけるよりも少ない要求が封止に対して行われる、冒頭段落に定められる種類の駆動機構を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に従った駆動機構は、変速装置モジュールが、インサートスリーブを含み、インサートスリーブは、クラッチ又変速装置のハウジングを動作するための動作シリンダに接続可能であり或いは動作シリンダと一体的であり、接続歯車は、インサートスリーブ上で軸受支持され、更に、変速装置モジュールが、変速装置のハウジングに対して据え付け可能であり或いは変速装置のハウジングと一体的であるハウジングプレートと、2つの封止リングも含み、それらのうち、第一封止リングは、ハウジングプレート又はハウジングと接続歯車又は接続歯車に直接的に接続される接続スリーブとの間に収容され、第二封止リングは、接続歯車又は接続歯車に接続される接続スリーブとインサートスリーブとの間に収容されることを特徴とする。次に、変速装置モジュールをクラッチのハウジング内に収容し得る。
【0008】
本発明に従った駆動機構の衛星組は無オイルであるのに対し、互いに回転し合う構成部品は、好ましくは、グリース潤滑され、且つ/或いは、塗膜を備える。結果的に、オイル潤滑のない状態で衛星組を変速装置と駆動源との間に取り付け得るので、この衛星組は、駆動源の勢輪(フライホイール)及びクラッチと一体的であることができ、それは軸方向におけるコンパクトな構造を可能にする。その場合には、衛星歯車組は、好ましくは、グリース潤滑される。
【0009】
本発明に従った駆動機構の実施態様は、入力部が接続プレートによって形成され、接続プレートは、衛星歯車組の第一回転部材に結合するためのスプラインを備え、且つ、第一クラッチ部材に接続可能であり或いは第一クラッチ部材と一体的であることによって特徴付けられる。
【0010】
本発明に従った駆動機構の更なる実施態様は、ブレーキが作動手段を含み、作動手段は、少なくとも3つのブレーキシリンダと、ブレーキシリンダ内に存在するブレーキプランジャと、ブレーキシリンダの中に存在するブレーキラインとを含み、作動手段は、変速装置のハウジング内に別個に据え付けられる閉塞的な油圧ユニットを形成することによって特徴付けられる。結果的に、変速装置のハウジングが油圧通路を備える必要はない。好ましくは、ブレーキシリンダ及びブレーキラインは、1つのプラスチックユニットとして配置される。
【0011】
以下に、図面に示される本発明に従った変速装置モジュールの実施態様の実施例に基づき、本発明をより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従った変速装置モジュールを備える駆動機構の実施態様を示す概略図である。
【図2】変速装置と駆動源との間に存在する図1中に示される駆動機構の一部を示す断面図である。
【図3】図2に示される部分を具体的に示す断面図である。
【図4】閉塞された油圧ユニットとしてブレーキの作動手段を示す概略図である。
【図5】1つのプラスチックユニットとしてブレーキシリンダとブレーキラインとを示す概略図である。
【図6】ある実施態様を具体的な形態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に従った変速装置モジュールを備える駆動機構の実施態様の概略図を示している。駆動機構1は、駆動源3と、オイル潤滑変速装置5とを含み、変速装置は、クラッチ8を介して駆動源3に結合される入力シャフト7と、車両の被駆動車輪11に接続される出力シャフト9とを備える。駆動機構1は、変速装置モジュール13を更に含み、変速装置モジュールは、変速装置5と平行に、入力シャフト7及び出力シャフト9にそれぞれ接続される。
【0014】
変速装置モジュール13は、3つの回転部材を備えるグリース潤滑された衛星歯車14を有し、それらのうち、第一回転部材15は、第一クラッチ部分8aに接続され、第二回転部材17は、出力シャフト9に結合され、第三回転部材19は、ブレーキ21を介して、変速装置のハウジング23に接続され得る。
【0015】
図2及び3は、変速装置5と駆動源3との間に存在する図1に示される駆動機構の一部の概略的な断面図をもたらし、その部分を具体的な形態でそれぞれ示している。変速装置の入力シャフト7の周りには、変速装置と駆動源との間に存在するクラッチ8を動作するための油圧シリンダ25が同心円状に存在する。太陽歯車によって形成される第一回転部材15、及び、衛星枠によって形成される第二回転部材17に接続される接続歯車27は、油圧シリンダ25に取り付けられるインサートスリーブ29(図3)上に軸受支持される。
【0016】
次に、接続歯車27は、平軸受を用いて、軸方向及び径方向においてインサートスリーブ29上に軸受取り付けられる。接続歯車27は、スプラインsを介して、第二回転部材17に接続される。第一回転部材15は、更なるスプラインsを介して、クラッチの第一クラッチ部分8aに取り付けられる接続プレート31に接続される。クラッチの第二クラッチ部分8bが変速装置5の入力シャフト7に接続される。
【0017】
変速装置のハウジング23と接続歯車27との間には、封止リング33が適用され、接続歯車27とインサートスリーブ29との間には、更なる封止リング35が適用される。
【0018】
第三回転部材19は、側方ガード37を有する輪歯車によって形成され、側方ガード37は、グリースが歯車の衛星歯車組の内側に残存するようにする。
【0019】
ブレーキ21は、2つの相互接続されるブレーキプレート39,41と、それらの間に配置されるブレーキディスク43とを含む。
【0020】
作動手段は、ハウジング内に収容される3つのブレーキシリンダ45によって形成され、シリンダの内側に可動ブレーキプランジャ47を備える。ブレーキシリンダ45は、ブレーキライン49を介して互いに接続され、接続片51に接続される。図4を参照。作動手段は、変速装置のハウジング内に別個の収容される閉塞油圧ユニット53を形成する。ブレーキシリンダ並びにブレーキラインは、プラスチック内に1つの完全体として配置される。図5を参照。
【0021】
図6は、ある実施態様の他の具体的な図面を例証によって断面図で示している。ここでは、ハウジングプレート23は、ハウジング23に接続される別個のプレートであり、接続スリーブ27は、この実施態様では、一例として、スプラインを用いて、接続歯車27に直接的に接続されるが、これを異なる方法でもたらし得ることも明らかであろう。
【0022】
本発明は図面中に示される実施態様に基づき前述されたが、如何なる方法又は手段でも本発明が図面中に示される実施態様に限定されないことが観察されるべきである。本発明は請求項によって定められる精神及び範囲内で図面中に示される実施態様に由来する全ての実施態様にも拡張し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のための駆動機構であって、
駆動源と、入力シャフトと出力シャフトとを有し且つハウジングを備える変速装置と、前記駆動源と前記変速装置との間に存在し且つ前記駆動源に接続される第一クラッチ部分と前記変速装置の前記入力シャフトに接続される第二クラッチ部分とを含むクラッチと、前記第一クラッチ部分に接続される入力部と前記変速装置の前記出力シャフトに接続される出力部とを有する変速装置モジュールとを含み、
該変速装置モジュールは、ブレーキ、並びに、接続歯車、及び、3つの回転部材を含む衛星歯車組を含み、それらのうち、第一回転部材は、前記入力部に接続され、第二回転部材は、前記出力部を形成する前記接続歯車に接続され、第三回転部材は、前記ブレーキに接続され、
前記変速装置モジュールは、インサートスリーブを含み、該インサートスリーブは、前記クラッチ又は前記変速装置の前記ハウジングを動作するための動作シリンダに接続可能であり或いは該動作シリンダと一体的であり、前記接続歯車は、前記インサートスリーブ上で軸受支持され、
前記変速装置モジュールは、前記変速装置の前記ハウジングに対して据え付け可能であり或いは前記変速装置の前記ハウジングと一体的であるハウジングプレートと、2つの封止リングとを含み、それらのうち、第一封止リングは、前記ハウジングプレート又はハウジングと前記接続歯車又は前記接続歯車に直接的に接続される接続スリーブとの間に収容され、第二封止リングは、前記接続歯車又は前記接続歯車に接続される接続スリーブと前記インサートスリーブとの間に収容されることを特徴とする、
駆動機構。
【請求項2】
前記入力部は、接続プレートによって形成され、該接続プレートは、前記衛星歯車組の前記第一回転部材に結合するためのスプラインを備え、且つ、前記第一クラッチ部材に接続可能であり或いは前記第一クラッチ部材と一体的であることを特徴とする、請求項1に記載の駆動機構。
【請求項3】
前記ブレーキは、作動手段を含み、該作動手段は、少なくとも3つのブレーキシリンダと、該ブレーキシリンダ内に存在するブレーキプランジャと、前記ブレーキシリンダの中に存在するブレーキラインとを含み、前記作動手段は、前記変速装置の前記ハウジング内に別個に据え付けられる閉塞的な油圧ユニットを形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の駆動機構。
【請求項4】
前記ブレーキシリンダ及び前記ブレーキラインは、1つのプラスチックユニットとして配置される、請求項3に記載の駆動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−510598(P2012−510598A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539463(P2011−539463)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050732
【国際公開番号】WO2010/064909
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(507130624)ディーティーアイ グループ ビー.ブイ. (11)
【Fターム(参考)】