説明

車両用カウルルーバー

【課題】車両用カウルルーバーの組付け工程での作業性を向上し、カウルルーバー本体とフロントガラスの表面との段差を小さくして見栄えをよくするとともに、不織布やスライド型などの廃止を可能とする。
【解決手段】カウルルーバー本体10が、フロントガラス30との間のシール機能を果たすためのプロテクター20を備えている車両用カウルルーバーであって、カウルルーバー本体10とプロテクター20とが個別に成形され、カウルルーバー本体10がフロントガラス30の表面と直交する方向から組付けることで車体側の部材(例えば結合リブ22)に結合されるように構成されている。また、プロテクター20がフロントガラス30の表面と直交する方向から組付けることでカウルルーバー本体10に結合されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントガラスとエンジンフードとの間に設けられるカウルルーバー本体が、フロントガラスとの間のシール機能を果たすためのプロテクターを備えている車両用カウルルーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用カウルルーバーは、フロントガラスの表面形状に倣って車幅方向へ連続して延びた形状であり、その断面は例えば図6で示す形状のものが一般的である。この図面で示すように従来のカウルルーバー本体50は、フロントガラス30の下部に取付けられる把持部52を備えている。この把持部52は、フロントガラス30の下部を表裏両側から挟み付ける形状になっている。そして、把持部52の表側部分52aの縁には、カウルルーバー本体50とは別に成形されたプロテクター56が取付けられ、裏側部分52bの表面には不織布54が貼付けられている。プロテクター56は、弾性を有する柔軟な素材からなり、フロントガラス30の表面に押付けられてシール機能を果たす。不織布54は、フロントガラス30の裏面に接触してカウルルーバー本体50とフロントガラス30との間の振動伝達を抑える。
なお、カウルルーバー本体およびプロテクターと、フロントガラスとの位置関係については特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−205967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6で示すカウルルーバー本体50の把持部52は、フロントガラス30の下部を表裏両側から挟み付ける構成であるため、カウルルーバー本体50を図6の矢印Aで示すようにフロントガラス30の表面と平行方向に組付ける必要があり、作業性がわるい。また、把持部52の表側部分52aがフロントガラス30の表面に重なることから、カウルルーバー本体50の表面とフロントガラス30の表面との間に図6で示す段差Bが生じてしまう。そして、カウルルーバー本体50とフロントガラス30との間の振動を吸収する不織布54が必要であるばかりか、不織布54を貼付ける把持部52の裏側部分52bなどを要することから、カウルルーバー本体50の成形金型にスライド型などを用いなければならず、作業の煩雑化ならびにコストアップの原因となる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、車両用カウルルーバーの組付け工程での作業性を向上し、カウルルーバー本体とフロントガラスの表面との段差を小さくして見栄えをよくするとともに、不織布やスライド型などの廃止を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
車両のフロントガラスとエンジンフードとの境に設けられるカウルルーバー本体が、フロントガラスとの間のシール機能を果たすためのプロテクターを備えている車両用カウルルーバーであって、カウルルーバー本体とプロテクターとが個別に成形され、カウルルーバー本体が、フロントガラスの表面と直交する方向から組付けることで車体側の部材に結合されるように構成されている。また、プロテクターが、フロントガラスの表面と直交する方向から組付けることでカウルルーバー本体に結合されるように構成されている。
【0007】
より好ましくは、カウルルーバー本体にプロテクターを結合する手段が、カウルルーバー本体に成形された結合溝に対してプロテクターに成形された結合突起をフロントガラスの表面と直交する方向から挿入して相互に結合させる構成にすることである。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、カウルルーバー本体およびプロテクターを、フロントガラスの表面と直交する方向から組付けることにより、この組付け工程での作業性が向上し、作業要員の省人化を図ることができる。
また、カウルルーバー本体をフロントガラスではなく、車体側の部材に結合することにより、カウルルーバー本体とフロントガラスの表面との段差を小さくして見栄えをよくすることができる。同じ理由により、カウルルーバー本体とフロントガラスとの間の振動を吸収する不織布が不要となり、かつ、この不織布を貼付ける部分などを成形するスライド型を廃止することができ、さらなる省人化ならびにコスト軽減をはかることができる。
【0009】
そして、カウルルーバー本体の結合溝にプロテクターの結合突起を挿入してカウルルーバー本体にプロテクターを結合する構成では、結合溝および結合突起の傾斜角度を調整することにより、車幅方向に連続しているプロテクターがフロントガラスの曲面に倣ったラウンド部分で浮き上がるのを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1における車両用カウルルーバーを表した断面図。
【図2】図1のカウルルーバー本体とプロテクターとを分離状態で表した斜視図。
【図3】実施の形態2における車両用カウルルーバーを表した断面図。
【図4】実施の形態3における車両用カウルルーバーの一部を表した断面図。
【図5】実施の形態4における車両用カウルルーバーの一部を表した断面図。
【図6】従来の車両用カウルルーバーを表した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜図5を用いて説明する。
まず、本発明の実施の形態1を図1および図2によって説明する。
カウルルーバー本体10は、ポリプロピレン(PP)などの樹脂材による一体成形品であり、車両のフロントガラス30とエンジンフード(図示省略)との境に配置される。つまり、カウルルーバー本体10は、車両の前後方向へ所定の幅をもってフロントガラス30に沿って左右方向(車幅方向)へ長く延びている。
【0012】
カウルルーバー本体10は、フロントガラス30側の縁において図1で示すカウルアッパー32側に張り出した縦壁12を備えている。この縦壁12の一部には、カウルルーバー本体10の表面側で開口した結合溝14が設けられている。この結合溝14は、車幅方向へ連続しているとともに、その開口部から底部に向けて溝幅が漸減する断面「V」字形状になっている。また、結合溝14の開口部と底部を結ぶ溝の中心線は、カウルルーバー本体10の表面とほぼ直角に設定されている。
縦壁12の下部には、フロントガラス30の裏面と所定の間隔をもって対向する樋16が位置している(図1)。この樋16は、カウルルーバー本体10の内側に位置するワイパーモータや車室内への通気口(いずれも図示省略)等の箇所において、雨水等を受けて適宜に排水する役割を果たす。
【0013】
同じく縦壁12の下部には、樋16の下面からカウルアッパー32に向かって突出したクリップ18が位置している(図1)。このクリップ18は、縦壁12(樋16)と一体の支柱18aと、該支柱18aの先端から両側に張り出した一対の弾性爪18bとによって構成されている。そして、支柱18aの軸線は、カウルルーバー本体10の表面とほぼ直角に設定されている。
一方、カウルアッパー32には、その表裏に貫通した取付け孔34が開けられており、この取付け孔34にクリップ18が挿入される。カウルアッパー32の取付け孔34に挿入されたクリップ18は、両弾性爪18bが取付け孔34の縁に係合する(図1)。
【0014】
プロテクター20は、エラストマー(TPE)などの弾性素材による一体成形品であり、カウルルーバー本体10とフロントガラス30との間でシール機能を果たす。したがって、このプロテクター20もカウルルーバー本体10と同様にフロントガラス30に沿って車幅方向へ長く延びている。
なお、弾性材からなるプロテクター20は、その先端側20aがフロントガラス30の表面に接触したときに弾性によってフロントガラス30に押付けられる(図1)。
【0015】
プロテクター20の基端側20bには、その裏面からプロテクター20の表面とほぼ直角に結合リブ22が設けられている。この結合リブ22は車幅方向へ連続しているとともに、カウルルーバー本体10の結合溝14に挿入される。また、結合リブ22の両側面には複数枚のヒレ24がそれぞれ設けられている。これらの各ヒレ24は、結合溝14の断面形状に対応させるために、結合リブ22の先端部から基部にかけて個々の突出量が大きくなっている。これにより、結合溝14に挿入された結合リブ22は、各ヒレ24が結合溝14の両側面に押付けられて弾性変形し、その摩擦抵抗によって結合溝14から抜けないように保持される。
したがって、この結合リブ22が本発明の「結合突起」に相当する。
【0016】
既に述べたように、クリップ18における支柱18aの軸線はカウルルーバー本体10の表面とほぼ直角であり、結合リブ22はプロテクター20の表面とほぼ直角である。一方、車体側に取付けられた状態でのカウルルーバー本体10およびプロテクター20の表面とフロントガラス30の表面とは同じ傾きである(図1)。
そこで、車体側に対してカウルルーバー本体10をフロントガラス30の表面と直交する方向から組付けることにより、クリップ18をカウルアッパー32の取付け孔34に挿入することができる。また、カウルルーバー本体10に対してプロテクター20をフロントガラス30の表面と直交する方向から組付けることにより、結合リブ22をカウルルーバー本体10の結合溝14に挿入することができる。
【0017】
カウルルーバー本体10のクリップ18がカウルアッパー32の取付け孔34に挿入されることで、前述のようにクリップ18の両弾性爪18bが取付け孔34の縁に係合し、カウルルーバー本体10が車体側の部材であるカウルアッパー32に結合される。そしてプロテクター20の結合リブ22がカウルルーバー本体10の結合溝14に挿入されることで、前述のように結合リブ22が結合溝14から抜けないように保持され、プロテクター20がカウルルーバー本体10に結合される。
なお、カウルルーバー本体10をカウルアッパー32に結合する工程と、プロテクター20をカウルルーバー本体10に結合する工程との順序は特に問われない。しかし、一般的には、プロテクター20が結合された状態のカウルルーバー本体10をカウルアッパー32に結合する手順がとられる。
【0018】
このように、カウルルーバー本体10あるいはプロテクター20を共にフロントガラス30の表面と直交する方向から組付け可能とすることにより、図6で示されているようにカウルルーバー本体50をフロントガラス30の表面と平行な矢印Aの方向から組付ける場合と比較して組付け作業が各段に向上する。
また、前述のようにカウルルーバー本体10は、車体側の部材であるカウルアッパー32に直接結合される。このため、カウルルーバー本体10およびプロテクター20とフロントガラス30の表面との段差を、図6の段差Bと比較して小さくすることができる。なお、カウルルーバー本体10がカウルアッパー32に直接結合されることは、図6で示す不織布54を廃止でき、該不織布54を貼付ける作業も不要になる。しかも、前述のようにカウルルーバー本体10の成形型からスライド型等を廃止することも可能になる。
【0019】
カウルルーバー本体10の結合溝14とプロテクター20の結合リブ22との傾斜角度について、プロテクター20をフロントガラス30の表面と直交する方向から組付けることが可能な範囲で調整することができる。周知のようにフロントガラス30は車幅方向に関して湾曲しており、このフロントガラス30に沿って取付けられるプロテクター20はラウンド部分で膨れてフロントガラス30の表面から浮き上がることがある。このようなおそれのあるラウンド部分では、結合溝14および結合リブ22の中心線を例えば図1の線aから線bに変えることで、プロテクター20の浮き上がりを解消することができる。
【0020】
つぎに、本発明の実施の形態2〜4を図3〜図5によって説明する。
図3で表した実施の形態2では、図1で示すカウルルーバー本体10と一体のクリップ18に代えてカウルルーバー本体10とは別体のクリップ19を使用している。すなわち、カウルルーバー本体10の縦壁12には、樋16の反対側において取付け座部13が設けられ、この取付け座部13にクリップ19の取付け部19aが取付けられている。そして、クリップ19の弾性挿入部19bをカウルアッパー32の取付け孔34に挿入することにより、カウルルーバー本体10がカウルアッパー32に結合される。
【0021】
図4および図5で表した実施の形態3,4では、プロテクター20の結合リブ22を撓み片26,27に代えている。これらの撓み片26,27は、それぞれの肉厚を押し潰す方向へ弾性変形することが可能である。
図4で示す撓み片26は、カウルルーバー本体10の結合溝14に挿入されたときに該結合溝14の両側面によって押し潰され、その摩擦抵抗によって結合溝14から抜けないように保持される。一方、図5で示す撓み片27は、結合溝14に挿入されたときに一旦押し潰された後、結合溝14の両側面に開けた係止孔15の箇所で復元して該係止孔15に係合し、結合溝14から抜けないように保持される。
実施の形態3,4では、プロテクター20の撓み片26,27が本発明の「結合突起」に相当する。
【符号の説明】
【0022】
10 カウルルーバー本体
14 結合溝
20 プロテクター
22 結合リブ(係合突起)
30 フロントガラス
32 カウルアッパー(車体側の部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントガラスとエンジンフードとの境に設けられるカウルルーバー本体が、フロントガラスとの間のシール機能を果たすためのプロテクターを備えている車両用カウルルーバーであって、
カウルルーバー本体とプロテクターとが個別に成形され、カウルルーバー本体が、フロントガラスの表面と直交する方向から組付けることで車体側の部材に結合されるように構成され、プロテクターが、フロントガラスの表面と直交する方向から組付けることでカウルルーバー本体に結合されるように構成されている車両用カウルルーバー。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用カウルルーバーであって、
カウルルーバー本体にプロテクターを結合する手段が、カウルルーバー本体に成形された結合溝に対してプロテクターに成形された結合突起をフロントガラスの表面と直交する方向から挿入して相互に結合させるように構成されている車両用カウルルーバー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−218457(P2012−218457A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82599(P2011−82599)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】