説明

車両用シートの移動装置

【課題】比較的簡単な構成によって、車両用シートのシートアレンジメントの自由度を向上させることができるようにする。
【解決手段】車両フロアの左右両側に前後方向のロアレール20A,20Bが延設され前後方向のロアレール20A,20B上をシート10が移動可能に配設された車両用シートの移動装置である。シート10と前後方向のロアレール20A,20Bとの連結構造は車両フロアに設けられた前後方向のロアレール20A,20Bとシート10側に固定設置された前後方向の所定幅をもって形成されたアッパレール14との係合よりなるスライドロック機構により構成される。前後方向のロアレール20A,20B間にはシート10を前後方向のロアレール20A,20B間で移動可能とする車幅方向のロアレール30が設けられており、更にシート10のスライド移動方向を転換する回転盤41A,41Bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの移動装置に関する。詳しくは、車両用シートのシートアレンジメントを変更するべくシートを車両の前後方向及び車幅方向に移動可能とする車両用シートの移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用シートの移動装置としては、例えば後記特許文献1に開示された技術が知られている。
この開示技術では、車両の前後方向及び車幅方向に配置された複数のシートが、フロア面に形成された網目状のスライド溝に沿ってスライド移動可能に構成されている。詳しくは、各シートの下部には、上記スライド溝に対してスライド移動可能に係合する脚部が備え付けられている。このスライド溝は、各シートのスライド移動が相互に連絡されるように、前後方向及び車幅方向にひとつながりに形成されている。これにより、各シートのスライド移動の幅が広がり、シートアレンジメントの自由度を向上させることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−120604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術、例えば特許文献1の開示技術では、各シートをスライド溝に沿って滑らかにスライド移動させることはできたが、シートの車両前後方向にかかる負荷を脚部のみで支持する構成であるため、例えばシートを車両衝突等の比較的大きな負荷にも耐えられるように構成するには不向きなものであった。また、シートの支持強度を高める構成とするためには、支持強度の高いロック機構等の構成を別途に設定しなければならず、かかる場合には構造全体が複雑となる。
【0005】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、比較的簡単な構成によって、車両用シートのシートアレンジメントの自由度を向上させることができるとともに、着座使用時には、充分な支持強度を持って車両フロアに対して支持できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートの移動装置は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、車両フロアの左右両側に車両の前後方向に延びるスライドレールが延設されており、各スライドレール上をシートが車両前後方向に移動可能に配設された車両用シートの移動装置であって、シートをスライドレール上で車両前後方向に移動可能に支持する連結構造は、車両フロアに設けられたロアレールとシート側に固定設置されたアッパレールとの係合よりなり、アッパレールが前後方向の所定幅をもってロアレールに係合されているとともに、ロアレールに対するアッパレールの移動を規制することにより、シートをスライドレール上の所定位置に固定可能とするスライドロック機構によって構成されており、更に、車両フロアの左右両側に延設されたスライドレール間には、シートをスライドレール間で移動可能とする車幅方向移動手段が設けられており、車幅方向移動手段は、車両フロアにスライドレールとは別個独立して配設された両スライドレール上のシートを双方に移動させるための移動経路を有し、移動経路は両スライドレール間に車幅方向に延びる形状として車両フロアに延設された車幅方向のスライドレールであり、シートのスライド移動を前後方向のスライドレール上と車幅方向のスライドレール上との間で転換させる転換移動は、車両フロアに設置された回転盤により行われるものである。
ここで、スライドロック機構としては、例えば車両フロア側に固定されるロアレールとシート側に固定される前後方向の所定幅をもったアッパレールとをシートの着座使用領域の範囲内でスライドロックするように組み付けた周知のスライドロック機構が挙げられる。
この第1の発明によれば、車幅方向移動手段によって、シートは前後方向の各スライドレール間を車幅方向に移動して双方に行き来可能となる。この車幅方向移動手段は、前後方向のスライドレールとは別個独立して配設された車幅方向のスライドレールを有し、少なくとも乗員が着座しないシートを支持するに充分とされる程度に強度を有した簡素な構成とされている。そして、シートは、回転盤によって、そのスライド移動方向が前後方向のスライドレール上と車幅方向のスライドレール上との間で転換される。この回転盤は、シートを載置した状態で回転させることにより、シートのスライド移動方向を転換する。
【0007】
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、車幅方向のスライドレール及び回転盤は、前後方向の両スライドレールの後端部に各々形成されており、シートは、前後方向のスライドレール上の最後端位置で回転盤上に載置され、回転盤により車幅方向のスライドレール上に転換移動されて車幅方向に移動可能となるものである。
この第2の発明によれば、シートは、前後方向のスライドレールの最後端位置までスライド移動されることにより、車幅方向に移動可能となる。
【0008】
次に、第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、前後方向のスライドレール及び車幅方向のスライドレールは、車両フロアに配設されシートの下部に設けられたアッパレールとスライド移動可能に係合するロアレールであり、更に、回転盤上には、回転盤の回転移動により、前後方向のロアレールとシートのスライド移動経路を接続した状態と、車幅方向のロアレールとシートの移動経路を接続した状態とに切り換えられるロアレール部材が設置されているものである。
この第3の発明によれば、ロアレール部材は、前後方向のロアレールの一部と、車幅方向のロアレールの一部と、を兼ねた共通部品として機能する。したがって、シートは、前後方向のロアレールと車幅方向のロアレールとの間で転換移動する際も、常にロアレール(ロアレール部材)に係合した状態とされる。
【0009】
次に、第4の発明は、上述した第3の発明において、回転盤によるロアレール部材の切り換えは、前後方向の各ロアレール間で連動して行われるものである。
この第4の発明によれば、前後方向の各ロアレールと車幅方向のロアレールとを接続する各回転盤の回転が連動して一斉に行われる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述した手段をとることにより、次の効果を得ることができる。
先ず、第1の発明によれば、周知のスライドロック機構に対し、比較的簡素な構成の車幅方向のスライドレール及び回転盤を設けるという比較的簡素な構成によって、車両用シートのシートアレンジメントの自由度を向上させることができる。また、シートを一定の姿勢状態のままで車幅方向に移動させることができるため、かかる操作を簡単に行うことができる。また、回転盤上でシートのスライド移動方向の転換を行う構成とすることで、シートスライドの位置を特定し易く、使用操作性を向上させることができる。
更に、第2の発明によれば、シートを車幅方向に移動可能とするスライド位置が前後方向のスライドレールの最後端に設定されているため、シートの着座使用領域と区別し易くなり、シートスライドの使用操作性を一層向上させることができる。
更に、第3の発明によれば、シートの前後方向のロアレールと車幅方向のロアレールとの間での転換移動を、スムーズに行うことができる。
更に、第4の発明によれば、各回転盤を一斉に連動回転させることができるため、車幅方向に移動させるシートの移動経路を常に確保することができ、シートスライドの使用操作性を一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための最良の形態の実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
始めに、実施例1としての車両用シートの移動装置の構成について、図1〜図6を用いて説明する。図1は車両用シートの移動装置の概略構成を表した平面図、図2は車両右側の回転盤41B上に載置されたシート10を車幅方向に移動可能な状態に切り換えた状態を表した平面図、図3はシート10が車幅方向にスライド移動する状態を表した平面図、図4は車両左側の回転盤41A上に載置されたシート10を車両の前後方向に移動可能な状態に切り換えた状態を表した平面図、図5は各回転盤41A,41Bを連動させる連動機構の構成を表した平面図、図6は各回転盤41A,41Bを連動させる連動機構の構成を表した側面図である。なお、図1〜図5では紙面内左方向が車両前方向として表されている。
【0013】
本実施例の車両用シートの移動装置は、図1に良く示されるように、車両のリヤシートとして適用されたシート10を車両の前後方向にスライド移動させるための前後方向のロアレール20A,20Bを含む前後方向のスライドロック機構と、同シート10を車幅方向にスライド移動させるための車幅方向のロアレール30を含む車幅方向のスライド機構と、を有して構成されている。なお、前後方向のロアレール20A及び前後方向のロアレール20Bは、実質的に同様の構成を備えている。
前者のスライドロック機構は、車両のリヤシートとして車幅方向に並べて配置された車両左側のシート(図示省略)と車両右側のシート10とにそれぞれ配設されている。詳しくは、車両フロアに対し、車両の前後方向に延びる形状として形成された車両左側の前後方向のロアレール20Aと、車両右側の前後方向のロアレール20Bと、が車幅方向に並べて配設されている。このスライドロック機構は、車両走行中にシート10上に乗員が着座しても良い充分な強度を持たせるべく、車両フロア側に固定される前後方向のロアレール20A,20Bと、シート10側に固定されたアッパレール14(図6参照)とをシート10の着座使用領域でスライドロックするように組み付けた周知の構成とされている。
後者の車幅方向のスライド機構は、図1に良く示されるように、車両左側の前後方向のロアレール20Aと車両右側の前後方向のロアレール20Bとの間に配設されている。この車幅方向のスライド機構は、車両フロア面Fに対しスライドロック機構とは別個独立して配設されている。詳しくは、車両フロアに対し、車幅方向に延びる形状として形成された車幅方向のロアレール30が、シート10の前後方向スライド位置が最後端となる位置に配設されている。この車幅方向のロアレール30は、シート10を車両右側の前後方向のロアレール20Bと車両左側の前後方向のロアレール20Aとの間で移動可能とするべく配設されており、少なくとも乗員が着座しないシート10を支持するに充分とされる程度に強度を有した簡素な構成とされている。
更に、前後方向のロアレール20A,20Bの後端部には、シート10のスライド移動を、前後方向のロアレール20A,20B上と車幅方向のロアレール30上との間で転換させる転換機構40A,40Bが設置されている。これら転換機構40A,40Bは、図6に良く示されるように、車両フロアに埋め込まれて設置された回転盤41A,41Bを有し、これら回転盤41A,41Bの回転移動によってシート10のスライド移動方向の転換を行う構成となっている。
以下、上記各構成について詳細に説明する。
【0014】
先ず、シート10の構成について説明する。シート10は、図1に良く示されるように、シートクッション11をシートバック12の側に向けて跳ね上げ回動させた状態で保持可能なチップアップ機構(図示省略)を備えている。これにより、シート10をチップアップ状態として前後方向のロアレール20B上をスライド移動させることができる。なお、チップアップ機構の構成は、公知のものであるため、詳細な説明は省略する。
また、図6に良く示されるように、シート10の左右両側下部には、シート10を車両フロアに対して支持する支持部材13が設けられている。この支持部材13は、シート10を前後方向のロアレール20A,20Bに対してスライドロック可能とするアッパレール14を一体的に有する。このアッパレール14は、前後方向に所定幅をもって形成されており、前後方向のロアレール20Bに対してスライド移動可能に組み付けられている。また、アッパレール14は、シート10のスライド位置が着座使用領域にあるときには、前後方向のロアレール20Bとスライドロックされるように構成されている。このアッパレール14と前後方向のロアレール20Bとをスライドロックさせるロック機構(図示省略)の構成としては、例えば両者を噛合歯によって噛合状態とする構成のものが挙げられるが、このような構成は公知のものであるため、詳細な説明は省略する。
【0015】
次に、前後方向のロアレール20A,20Bは、図6に良く示されるように、その上面が車両フロア面Fと面一となるように、車両フロアに埋め込まれた状態として配設されている。すなわち、前後方向のロアレール20A,20Bは、車両フロア面Fから実質的に突出することのない形状として形成されている。また、図1に良く示されるように、前後方向のロアレール20A,20Bの後端部は、後述するロアレール部材42A,42Bと移動経路を接続するべく円弧状に切断された形状として形成されている。
【0016】
次に、車幅方向のロアレール30は、図6に良く示されるように、前述した前後方向のロアレール20A,20Bと同様に、その上面が車両フロア面Fと面一となるように、車両フロアに埋め込まれた状態として配設されている。すなわち、車幅方向のロアレール30は、車両フロア面Fから実質的に突出することのない形状として形成されている。また、図1に良く示されるように、車幅方向のロアレール30の両端部は、後述するロアレール部材42A,42Bと移動経路を接続するべく円弧状に切断された形状として形成されている。この車幅方向のロアレール30は、アッパレール14(図6参照)を長手方向(車幅方向)に沿ってスライド移動可能に係合させることのできる形状として形成されている。
【0017】
次に、転換機構40A,40Bは、図6に良く示されるように、車両フロアに埋め込まれて設置された回転盤41A,41Bと、これら回転盤41A,41B上に設置されたロアレール部材42A,42Bと、両回転盤41A,41Bを連動回転させるための連動機構と、を有する。
詳しくは、回転盤41A,41Bは、その中央部に設けられた回転盤軸43A,43Bによって、車両フロアに対してそれぞれ相対回転可能に支持されている。次いで、ロアレール部材42A,42Bは、各回転盤41A,41B上にそれぞれ固定配置されている。これらロアレール部材42A,42Bは、図1及び図3に良く示されるように、各回転盤41A,41B(図6参照)の回転移動によって、前後方向のロアレール20A,20Bの側に向けられた状態(図1参照)と、車幅方向のロアレール30の側に向けられた状態(図3参照)と、に切り換えられる。詳しくは、ロアレール部材42A,42Bは、その長手方向端部の形状が、前述した前後方向のロアレール20A,20Bの後端部の形状や車幅方向のロアレール30の両端部の形状と適合する円弧形状に形成されている。そして、ロアレール部材42A,42Bは、図6に良く示されるように、前後方向のロアレール20A,20Bや車幅方向のロアレール30と同様に、アッパレール14をその長手方向に沿ってスライド移動可能に係合させることのできる形状に形成されており、その上面が車両フロア面Fと面一となるように、車両フロアに埋め込まれた状態として配設されている。したがって、回転盤41A,41Bを回転移動させることにより、ロアレール部材42A,42Bの移動経路を、前後方向のロアレール20A,20Bと接続した状態(図1参照)と、車幅方向のロアレール30と接続した状態(図3参照)と、に切り換えることができる。
したがって、図1に良く示されるように、前後方向のロアレール20B上にあるシート10を車両後方に向けてスライド移動させることにより、このシート10をロアレール部材42B上(回転盤41B上)に配置することができる(図2参照)。そして、図2に良く示されるように、シート10がロアレール部材42B上に載置された状態で、回転盤41Bを時計回り方向に回転させることにより、ロアレール部材42A,42Bの移動経路を車幅方向のロアレール30と接続することができる。これにより、シート10が車幅方向にスライド移動可能な状態となる。すなわち、回転盤41Bの回転移動によって、シート10のスライド移動方向を車両の前後方向から車幅方向に転換することができる。
また、図3に良く示されるように、ロアレール部材42A,42Bの移動経路を車幅方向のロアレール30と接続した状態では、車幅方向のロアレール30上にあるシート10を車幅方向(同図では車両の左方向)に向けてスライド移動させることにより、このシート10をロアレール部材42A上(回転盤41A上)に配置することができる(図4参照)。そして、図4に良く示されるように、シート10がロアレール部材42A上に載置された状態で、回転盤41Aを反時計回り方向に回転させることにより、ロアレール部材42A,42Bの移動経路を前後方向のロアレール20A,20Bと接続することができる。これにより、シート10が前後方向にスライド移動可能な状態となる。すなわち、回転盤41Aの回転移動によって、シート10のスライド移動方向を車幅方向から車両の前後方向に転換することができる。
【0018】
次に、連動機構は、図5及び図6に良く示されるように、回転盤軸43A,43Bと平行に配置された軸44A,44Bと、これら回転盤軸43A,43Bと軸44A,44Bとの間に巻き掛けられて双方の回転力を伝達するベルト46A,46Bと、各軸44A,44Bに設けられて噛合状態とされたギヤ45A,45Bと、を有する。この連動機構によれば、回転盤41Aと回転盤41Bとの回転力を双方に伝達することができるため、両回転盤41A,41Bの回転を連動させて行うことができる。具体的には、図5に良く示されるように、回転盤41Bが反時計回り方向に回転するときには、回転盤41Aは、これに連動して時計回り方向に回転する。これにより、ロアレール部材42A,42Bを、前後方向のロアレール20A,20Bに対して接続された状態(同図の実線で示された状態)から車幅方向のロアレール30に対して一斉に接続させた状態(同図の仮想線で示された状態)に切り換えることができる。また、回転盤41Bが時計回り方向に回転するときには、回転盤41Aは、これに連動して反時計回り方向に回転する。これにより、ロアレール部材42A,42Bを、車幅方向のロアレール30に対して接続された状態(同図の仮想線で示された状態)から前後方向のロアレール20A,20Bに対して一斉に接続させた状態(同図の実線で示された状態)に切り換えることができる。
【0019】
続いて、本実施例の車両用シートの移動装置の使用方法について説明する。ここでは、図1に良く示されるように、車両右側のロアレール20B上にあるシート10を車両左側のロアレール20A上に移動させる方法について説明する。なお、シート10が前後方向のロアレール20B上で車両前後方向にスライド移動可能とされた状態では、ロアレール部材42A,42Bは前後方向のロアレール20A,20Bと接続された状態とされている。
先ず、図1に良く示されるように、前後方向のロアレール20B上のシート10を最後端位置までスライド移動させる。これにより、図2に良く示されるように、シート10がロアレール部材42B上に配置される。そして、シート10がロアレール部材42B上に載置された状態で、回転盤41Bを反時計回り方向に回転させる。これにより、ロアレール部材42A,42Bの移動経路が車幅方向のロアレール30と接続され、シート10が車幅方向にスライド移動可能な状態(同図の実線で示された状態)となる。すなわち、シート10のスライド移動方向が車両の前後方向から車幅方向に転換される。
次に、図3に良く示されるように、シート10を車幅方向のロアレール30に沿って車幅方向にスライド移動させロアレール部材42A上に配置させる。そして、図4に良く示されるように、シート10がロアレール部材42A上に載置された状態で、回転盤41Aを反時計回り方向に回転させる。これにより、ロアレール部材42A,42Bの移動経路が前後方向のロアレール20A,20Bと接続され、シート10が前後方向にスライド移動可能な状態(同図の実線で示された状態)となる。すなわち、シート10のスライド移動方向が車幅方向から車両の前後方向に転換される。
なお、車両左側の前後方向のロアレール20A上にあるシート(図示省略)を車両右側の前後方向のロアレール20B上に移動させる場合にも、上記した方法と同様にして行うことができる。
【0020】
このように、本実施例の車両用シートの移動装置によれば、周知のスライドロック機構に対し、比較的簡素な構成の車幅方向のロアレール30や回転盤41A,41Bを有する転換機構40A,40Bを設けただけの簡単な構成によって、車両用シートのシートアレンジメントの自由度を向上させることができる。また、本実施例では荷室空間を広く確保するためにシート10をチップアップ状態としてスライド移動させたものを示したが、このように姿勢状態を変えなくてもシート10を車両の前後方向や車幅方向にスライド移動させることができる。したがって、かかる操作を簡単に行うことができる。更に、シート10を車幅方向に移動可能とするスライド位置が前後方向のロアレール20A,20Bの最後端に設定されているため、このスライド位置とシート10の着座使用領域とを区別し易くなり、シートスライドの節度感を良くして使用操作性を向上させることができる。更に、ロアレール部材42A,42Bによって、シート10は常に前後方向のロアレール20A,20Bや車幅方向のロアレール30やロアレール部材42A,42Bと係合した状態とされるため、シート10のスライド移動方向の転換を、スムーズに行うことができる。更に、各回転盤41A,41Bを連動回転させることができるため、車幅方向に移動させるシート10の移動経路を常に確保することができ、シートスライドの使用操作性を一層向上させることができる。更に、前後方向のロアレール20A,20B、車幅方向のロアレール30、及びロアレール部材42A,42Bが車両フロア面Fから実質的に突出しない形状に形成されているため、シート10を車両前後方向に移動させても車幅方向に移動させても、車両フロア面Fの荷室機能を良好に発揮させることができる。更に、シート10は車幅方向への移動時に予期せぬ位置で固定(スライドロック)されることがないため、シート10の予期せぬ位置での使用を防止することができる。
【0021】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例により説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施ができるものである。
例えば、シートの移動方向の切り換えられる位置は、必ずしも前後方向スライド位置の最後端位置である必要はなく、スライド領域の途中位置に設定してもよい。但し、この場合には、例えば上記切り換え位置とシートの着座使用領域との区別がし難くなったり、シートスライドの節度感がなくなったりすることがあることに留意が必要である。
また、前後方向のロアレール、車幅方向のロアレール、及びロアレール部材等の車両フロア側に設置される構成を、車両フロア面から突出した構成としたものであっても良い。但し、この場合には、車両フロア面の荷室機能が損なわれることがある。
また、シートを回転盤上に直接載置させる構成とし、ロアレール部材のない構成としてもよい。但し、この場合には、シートが回転盤上に載置されることにより、アッパレールとロアレールとの係合状態が解除されるため、移動方向の転換がスムーズに行えないことがあることに留意が必要である。
また、各回転盤が同一方向に連動回転するように設定してもよい。また、ロアレール部材は、前後方向のロアレールや車幅方向のロアレールと接続される端部形状が、回転盤の回転によって各ロアレールの端部形状(凹状の円弧形状)と適合するような円弧形状に形成されていてもよい。すなわち、上記実施例で示したような各ロアレールとの接続形状がロアレール部材の各端部形状に形成されているものであってもよい。これらの構成を組合わせることにより、例えばシートを移動後のロアレール上においても車両前方を向けた状態として前後方向にスライド移動させることができる。
また、回転盤が図1や図3で示された状態位置で位置固定されるような適宜ロック手段を設けても良い。これにより、移動方向の転換をよりスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車両用シートの移動装置の概略構成を表した平面図である。
【図2】車幅方向移動前の回転盤上に載置されたシートを車幅方向に移動可能な状態に切り換えた状態を表した平面図である。
【図3】シートが車幅方向にスライド移動する状態を表した平面図である。
【図4】車幅方向移動後の回転盤上に載置されたシートを車両の前後方向に移動可能な状態に切り換えた状態を表した平面図である。
【図5】各回転盤を連動させる連動機構の構成を表した平面図である。
【図6】各回転盤を連動させる連動機構の構成を表した側面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 シート
11 シートクッション
12 シートバック
13 支持部材
14 アッパレール
20A,20B 前後方向のロアレール
30 車幅方向のロアレール
40A,40B 転換機構
41A,41B 回転盤
42A,42B ロアレール部材
43A,43B 回転盤軸
44A,44B 軸
45A,45B ギヤ
46A,46B ベルト
F 車両フロア面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両フロアの左右両側に車両の前後方向に延びるスライドレールが延設されており、該各スライドレール上をシートが車両前後方向に移動可能に配設された車両用シートの移動装置であって、
前記シートをスライドレール上で車両前後方向に移動可能に支持する連結構造は、車両フロアに設けられたロアレールとシート側に固定設置されたアッパレールとの係合よりなり、該アッパレールが前後方向の所定幅をもって該ロアレールに係合されているとともに、該ロアレールに対する該アッパレールの移動を規制することにより、シートをスライドレール上の所定位置に固定可能とするスライドロック機構によって構成されており、
更に、前記車両フロアの左右両側に延設されたスライドレール間には、シートをスライドレール間で移動可能とする車幅方向移動手段が設けられており、
該車幅方向移動手段は、車両フロアに前記スライドレールとは別個独立して配設された前記両スライドレール上のシートを双方に移動させるための移動経路を有し、該移動経路は両スライドレール間に車幅方向に延びる形状として車両フロアに延設された車幅方向のスライドレールであり、前記シートのスライド移動を前記前後方向のスライドレール上と前記車幅方向のスライドレール上との間で転換させる転換移動は、前記車両フロアに設置された回転盤により行われることを特徴とする車両用シートの移動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートの移動装置であって、
前記車幅方向のスライドレール及び前記回転盤は、前記前後方向の両スライドレールの後端部に各々形成されており、
前記シートは、前記前後方向のスライドレール上の最後端位置で前記回転盤上に載置され、該回転盤により前記車幅方向のスライドレール上に転換移動されて車幅方向に移動可能となることを特徴とする車両用シートの移動装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートの移動装置であって、
前記前後方向のスライドレール及び前記車幅方向のスライドレールは、前記車両フロアに配設され前記シートの下部に設けられたアッパレールとスライド移動可能に係合するロアレールであり、
更に、前記回転盤上には、該回転盤の回転移動により、前記前後方向のロアレールと前記シートのスライド移動経路を接続した状態と、前記車幅方向のロアレールと前記シートの移動経路を接続した状態とに切り換えられるロアレール部材が設置されていることを特徴とする車両用シートの移動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用シートの移動装置であって、
前記回転盤による前記ロアレール部材の切り換えは、前記前後方向の各ロアレール間で連動して行われることを特徴とする車両用シートの移動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−321414(P2006−321414A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147906(P2005−147906)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】