説明

車両用ナビゲーション装置

【課題】運転者が、容易に、道路標識に示されている正しいタイミングで交差点を曲がることができる車両用ナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】交差点を曲がることができるタイミングを示す道路標識が交差点またはその付近に設けられている地域において用いられる車両用ナビゲーション装置において、交差点を曲がることができるタイミングをその交差点の位置と対応付けて記憶しておき、車両の現在位置が予定走行経路において曲がるべき交差点の所定距離手前となり(S20がYES)、その交差点を曲がることができるタイミングが記憶されている場合(S30がYES)には、その交差点を曲がるべきことに加えて、曲がることができるタイミングをスピーカを用いて運転者に報知する(S50)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ナビゲーション装置に関し、特に、交差点を曲がることができるタイミングが交差点(またはその付近)に設けられた道路標識に示されている地域に用いると好適な車両用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ナビゲーション装置(以下、単にナビゲーション装置という)が種々知られている。ナビゲーション装置は、予定走行経路が設定された状態では、車両が予定走行経路において曲がるべき交差点に差しかかる手前で、運転者に対して、次の交差点を曲がるべきことを、音声、文字、図形などで案内する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、交通規則は国や地域によって異なっており、中には、交差点を曲がることができるタイミングを示す道路標識が交差点(またはその付近)に示されている地域がある。このような国の例として、たとえば大韓民国がある。
【0004】
大韓民国では、信号機とは別に、交差点を左折やUターンすることができるタイミングが道路標識に示されている交差点がある。図3は、大韓民国における左折タイミングを示す道路標識100の一例を示す図である。この例では、信号機110の横に、左折可能であることを示す標識120が設けられており、その下に、左折タイミングを示す道路標識100が設けられている。この例の場合、左折したい車両は、赤信号時に左折しなければならない。
【0005】
上記タイミングとしては、上記「赤信号時」のほかに、「矢印信号時」、「歩行者青信号時」、「注意して」など複数種類があり、運転者は、道路標識に定められたタイミングで交差点を曲がらなければならない。また、大韓民国では、右折のタイミングも交差点によって異なることがある。すなわち、原則として右折はいつでも可能であるが、赤信号時右折禁止の道路標識が設けられている交差点もあり、この交差点では青信号時に右折しなければならない。
【0006】
このような国では、次の交差点で曲がる(Uターンも含む)べきことを案内されただけでは、運転者はどのタイミングで交差点を曲がってよいかがか分からないため、運転操作に戸惑う恐れがあった。
【0007】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、運転者が、容易に、道路標識に示されている正しいタイミングで交差点を曲がることができる車両用ナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、交差点を曲がることができるタイミングを示す道路標識が前記交差点またはその付近に設けられている地域において用いられる車両用ナビゲーション装置であって、交差点を曲がることができるタイミングをその交差点の位置と対応付けて記憶した記憶装置と、車両の予定走行経路を設定する経路設定手段と、前記車両の現在位置を逐次検出する位置検出器と、その位置検出器によって検出された現在位置が、前記経路設定手段によって設定された予定走行経路において曲がるべき交差点の所定距離手前であって、且つ、その交差点が前記記憶装置にタイミングが記憶されている交差点であることに基づいて、その交差点を曲がるべきことを運転者に報知するとともに、その交差点を曲がることができるタイミングを前記記憶装置の記憶内容に基づいて決定して、その交差点を曲がることができるタイミングも運転者に報知する報知手段とを含むことを特徴とする。
【0009】
このようにすれば、予定走行経路を走行中は、曲がるべき交差点の手前でその交差点を曲がるべきタイミングが報知されることになるので、運転者は、容易に定められたタイミングでその交差点を曲がることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用されたナビゲーション装置10の要部構成を示すブロック図であり、このナビゲーション装置10は大韓民国において用いることができるように構成されている。
【0011】
図1に示すように、ナビゲーション装置10は、位置検出器12、記憶装置14、操作スイッチ群16、ディスプレイ18、スピーカ20、音声認識装置22、マイク24と、これら各機器が接続されたナビゲーションECU30とを備えている。
【0012】
位置検出器12は、車両の絶対方位を検出するための地磁気センサ、車両の相対方位を検出するためのジャイロスコープ、車両の走行距離を検出する距離センサ、衛星からの電波に基づいて車両の位置を測定するグローバルポジショニングシステム(GPS)のためのGPS受信機など、位置検出のための公知のセンサ等を少なくとも一つ有しており、車両の現在位置を逐次検出する。
【0013】
記憶装置14は、たとえばハードディスクなどの図示しない記憶媒体を内部に有しており、その記憶媒体には、デジタル道路地図データが記憶されている。このデジタル道路地図データは、道路データ、背景データ、文字データおよび施設データなどのデータからなるものであり、それらのデータをナビゲーションECU30からの要求信号に従って逐次出力する。
【0014】
上記道路データは、交差点、分岐点、合流点を示すノードと、ノード間の道路形状を示すリンクとを含んでいる。そして、ノードには、ノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、交差点種類等のノードデータが付与されている。
【0015】
一方、リンクには、リンクを特定する固有番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンクの始端及び終端ノード座標(緯度・経度)、道路名称、道路種別、道路幅員、車線数、右折・左折専用車線の有無とその専用車線の数、及び制限速度等のリンクデータが付与されている。また、リンクデータには、始端および終端のノードの交差点種類に応じて、左折可能であるか、Uターン可能であるかを示すデータも含まれている。さらに、始端および終端のノードが、曲がることができるタイミングを示す道路標識が設けられている交差点である場合には、その道路標識に示されているタイミング(時点)もリンクデータとして付与されている。
【0016】
曲がることができるタイミングとしては、たとえば、交差する歩行者信号青時、矢印信号青時、赤信号時が付与されている。また、大韓民国には「非保護左折」と示されている道路標識もある。この場合、青信号時に左折することになるので、上記道路標識が設けられている交差点における左折タイミングとしては「青信号時」が付与されている。
【0017】
操作スイッチ群16は、ディスプレイ18と一体になったタッチスイッチもしくはディスプレイ18の周辺に設けられるメカニカルなスイッチ等からなり、ユーザがナビゲーション装置10に対して種々の動作指示を与えるために操作する。なお、この操作スイッチ群16に加えて同様の機能を有するリモコンを設けてもよい。
【0018】
ディスプレイ18は、たとえば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイによって構成され、所定の地図表示領域には車両周辺の道路地図が表示される。また、ディスプレイ18には、その他に、現在時刻、渋滞情報などの他の情報表示を付加的に表示することもできる。
【0019】
スピーカ20からは種々のメッセージが外部に出力される。このスピーカ20から出力されるメッセージとしては、経路案内のためのメッセージ、画面操作説明のためのメッセージ、音声認識結果を表すメッセージなどがある。
【0020】
マイク24は、ユーザが発声した音声を電気信号として音声認識装置22に入力する。音声認識装置22は、マイク24から入力された操作者の入力音声と、内部に記憶する認識辞書(不図示)中の語彙データ(比較対照パターン)とを照合し、最も一致度の高いものを認識結果としてナビゲーションECU30に入力する。
【0021】
ナビゲーションECU30は、通常のコンピュータであり、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/Oおよびこれらの構成を接続するためのバスラインを備えている。ROMには、ナビゲーションECU30が実行するためのプログラムが書き込まれており、このプログラムに従ってCPU等が所定の演算処理を実行する。
【0022】
上記演算処理としては、たとえば、出発地および目的地設定処理、経路設定処理がある。出発地としては、通常、現在位置を設定するが、ユーザによって別の地点が指定されたときはその指定された地点を出発地に設定する。経路設定処理は、出発地から目的地へ到達するための経路をダイクストラ法等の公知の経路探索アルゴリズムを用いて複数種類探索し、探索した複数の経路をディスプレイ18に表示して、ユーザに選択を求める。そして、ユーザによって選択された一つの経路を予定走行経路として設定する。ナビゲーションECU30はこのように予定走行経路を設定するので、経路設定手段として機能する。
【0023】
また、ナビゲーションECU30は、上記処理の他に、メニュー表示選択処理、経路案内処理、現在位置修正処理、表示画面変更処理、音量調整処理等も実行する。また、上記経路案内処理は、報知手段に相当する報知処理を含んでいる。
【0024】
図2は、その報知処理を示すフローチャートである。この図2に示す処理は、予定走行経路が設定された状態で車両が走行しているときに所定周期で実行するようになっている。
【0025】
図2において、まず、ステップS10では、位置検出器10から車両の現在位置を取得する。そして、続くステップS20では、ステップS10で取得した現在位置が、予定走行経路において曲がるべきことになっている交差点の手前の所定位置に到達したか否かを判断する。上記所定位置は、たとえば、交差点の手前300mなど、曲がるべきことを案内された運転者が、その後、車線変更をすることができる程度の距離だけ交差点の手前に設定されている。
【0026】
なお、ステップS20における曲がるべき交差点には、左折すべき交差点が含まれることはもちろん、Uターンすべき交差点も含まれる。また、右折すべき交差点も含まれるが、右折はいつでも行える交差点がほとんどであるので、左折すべき交差点およびUターンすべき交差点のみをステップS20の対象としてもよい。
【0027】
このステップS20が否定判断である場合には本ルーチンを終了する。一方、ステップS20が肯定判断である場合には、ステップS30へ進んで、上記交差点を曲がるタイミングが記憶装置14に記憶されているか否かを判断する。この判断が肯定判断である場合には、ステップS40へ進む。
【0028】
ステップS40では、記憶装置14から、次の交差点に対して記憶されている曲がることができるタイミングを読み出す。そして、ステップS50では、次の交差点を曲がるべきことを示すメッセージ、および、ステップS40で読み出したタイミングを示すメッセージを、スピーカ20から出力させる。このメッセージを例示すれば、「この先300m、歩行者信号が青の時左折です。ご注意ください。」「この先300m、矢印信号が表示されているときに左折です。ご注意ください。」などである。
【0029】
一方、ステップS30が否定判断である場合には、ステップS60へ進んで、次の交差点を曲がるべきことを示すメッセージのみをスピーカ20から出力させる。
【0030】
以上、説明した本実施形態によれば、予定走行経路を走行中は、曲がるべき交差点の手前でその交差点を曲がるべきタイミングがスピーカ20から出力されることになるので、運転者は、容易に定められたタイミングでその交差点を曲がることができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0032】
たとえば、前述の実施形態では、曲がることができるタイミングをスピーカ20から出力していたが、スピーカ20に代えて、または、スピーカ20に加えて、曲がることができるタイミングをディスプレイ18に出力してもよい。また、予定走行経路の設定を、過去の走行履歴に基づいて自動的に行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明が適用されたナビゲーション装置10の要部構成を示すブロック図である。
【図2】図1のナビゲーションECU30が実行する報知処理をフローチャートにして示す図である。
【図3】大韓民国における左折タイミングを示す道路標識100の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10:ナビゲーション装置
12:位置検出器
14:記憶装置
16:操作スイッチ群
18:ディスプレイ
20:スピーカ
22:音声認識装置
24:マイク
30:ナビゲーションECU(経路設定手段、報知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点を曲がることができるタイミングを示す道路標識が前記交差点またはその付近に設けられている地域において用いられる車両用ナビゲーション装置であって、
交差点を曲がることができるタイミングをその交差点の位置と対応付けて記憶した記憶装置と、
車両の予定走行経路を設定する経路設定手段と、
前記車両の現在位置を逐次検出する位置検出器と、
その位置検出器によって検出された現在位置が、前記経路設定手段によって設定された予定走行経路において曲がるべき交差点の所定距離手前であって、且つ、その交差点が前記記憶装置にタイミングが記憶されている交差点であることに基づいて、その交差点を曲がるべきことを運転者に報知するとともに、その交差点を曲がることができるタイミングを前記記憶装置の記憶内容に基づいて決定して、その交差点を曲がることができるタイミングも運転者に報知する報知手段と
を含むことを特徴とする車両用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−202968(P2008−202968A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36614(P2007−36614)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】