説明

車両用ホイール駆動装置

【課題】ロータとディスクロータとの固定強度を維持することができる車両用ホイール駆動装置を提供する。
【解決手段】モータ本体11は、スイングアーム3の下端部に締結固定されたシャフト22と、シャフト22に固定されたステータ部20と、ステータ部20に対して回転可能に支持され、ステータ部20を覆うように設けられたロータ部21とを備え、ロータ部21は、鉄鋼材料からなりステータコア30における径方向外側の周囲を囲むように配置される筒状のヨーク部40と、ヨーク部40の軸方向一端側の開口部に取り付けられた非鉄金属材料からなるリヤハウジング41とを備え、ブレーキ装置12のディスクロータ70は、リヤハウジング41とともにヨーク部40にネジ51によって共締めされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ホイール駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータを駆動源に用いた電気自動車等において、伝動効率を高めるべく、ホイールのリム内にモータを収めたインホイールモータが知られている。
このインホイールモータとしては、モータ本体(モータ装置)のシャフトにホイールが固定され、ホイールとシャフトとが共回りするようになっているものがある。
【0003】
また、異なる種のインホイールモータとしては、車体に設けられたサスペンション部材(例えば、スイングアーム)にステータ部を固定する一方、ステータ部の周囲を取り囲むように形成されたロータ部をホイールに固定する場合もある(例えば、特許文献1参照)。
さらに、例えば特許文献1に開示されているインホイールモータは、モータ本体に駆動輪を制動するためのブレーキ装置を組み込んでいる。このブレーキ装置は、ロータ部に円盤状のディスクロータが取り付けられる一方、ステータ部にキャリパが取り付けられている。
【0004】
ところで、電気自動車等の車両において、小型軽量化の要望に伴い、モータ本体の軽量化を図ることがある。モータ本体の軽量化の手段としては、ロータ部の一部(例えば、ハウジング等)を、アルミ等の非鉄金属材料により構成することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−337355公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ブレーキ装置を省スペースに設置しようとした場合、上述したようにロータ部にディスクロータを取り付けることが考えられる。このようにすることで、ブレーキ装置を設置するための部品点数の削減も図ることができる。
【0007】
しかしながら、このような場合にあっては、ロータ部における非鉄金属材料からなる部分に、ブレーキ装置のディスクロータを締結することになる。このため、ディスクロータの固定強度を十分に確保することができないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ロータとディスクロータとの固定強度を維持することができる車両用ホイール駆動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車両の駆動輪と同軸上に設けられ、前記駆動輪を駆動するためのモータ装置と、前記駆動輪を制動するためのブレーキ装置とを有する車両用ホイール駆動装置であって、前記モータ装置は、前記車両の車体に設けられたサスペンション部材に固定されたステータ部と、前記ステータ部に対して回転可能に支持され、前記ステータ部を覆うように設けられたロータ部とを備え、前記ロータ部は、磁性材料からなり少なくとも前記ステータ部の径方向外側の周囲を囲むように配置される筒状のヨーク部と、前記ヨーク部の前記サスペンション部材側の開口部に取り付けられた非鉄金属材料からなるハウジングとを備え、前記ブレーキ装置は、ディスクロータ及びキャリパを備え、前記キャリパは、前記サスペンション部材に固定されている一方、前記ディスクロータは、前記ハウジングとともに前記ヨーク部に締結手段によって共締めされていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載した発明は、前記ハウジングと前記ディスクロータとの間には、低熱伝導率材料からなるスペーサが介在していることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載した発明は、前記ステータ部は、コイルが巻装されたステータコアを備え、前記ヨーク部の内周面には、前記ステータコアの外周面に対向するように、前記内周面の周方向に沿って複数のマグネットが並設され、前記締結手段は、前記マグネットの磁極の中心に対応するように配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載した発明は、前記ディスクロータは、前記駆動輪よりも前記サスペンション部材側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載した発明によれば、磁性材料からなるヨーク部にディスクロータを締結固定することにより、非鉄金属材料からなるハウジングに直接ディスクロータを締結固定する場合に比べて、ディスクロータの固定強度を高めることができる。そのため、より強いブレーキ力に耐えることができ、ディスクロータの脱落を確実に防止することができる。
【0014】
請求項2に記載した発明によれば、ブレーキ装置で発生する摩擦熱は、まずディスクロータからスペーサに伝達される。スペーサは、熱伝導率の低い材料により構成されているため、ディスクロータで発生する熱は、ハウジングに伝わり難くなる。さらに、ディスクロータとハウジングとが、スペーサのみを介して接触しているため、スペーサを用いずディスクロータとハウジングとを直接締結する場合に比べて、両者間の接触面積が少ない。そのため、ディスクロータで発生した熱を、ハウジングに伝達される前段で効率的に遮断することができる。
したがって、ブレーキ装置からの熱がモータ装置に伝わり難くなるので、モータ装置が熱の影響を受けてその特性が悪化することを防止し得る。
【0015】
ところで、ヨーク部内の磁束は、隣接するマグネットの各磁極を結ぶ閉ループとなるため、ヨーク部内に締結手段等の非磁性材料が存在すると、ヨーク部の磁気抵抗が大きくなりモータ装置の有効磁束が減少したり、ヨーク部内の磁束分布がアンバランスになったりするという問題がある。そのため、ハウジングとヨーク部との締結位置は、磁束の流れを妨げないようにレイアウトする必要がある。
そこで、請求項3に記載した発明によれば、最も磁束の量が少ない部分(疎となる部分)、すなわちマグネットの磁極の中心に対応するように締結手段を配置することで、ヨーク部内において締結手段が磁束の妨げになることを最小限に抑えることが可能になる。
【0016】
請求項4に記載した発明によれば、ディスクロータが駆動輪よりもサスペンション部材側に設けられているため、レイアウト性を向上させることができる。すなわち、ディスクロータの外径が駆動輪のリムの内径との兼ね合いで制限されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態における電気自動車における左後輪部分の水平面に沿う断面図である。
【図2】本発明の実施形態におけるDDモータの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は例えば電気自動車における左後輪部分の水平面に沿う断面図である。
図1に示すように、本実施形態の車両用ホイール駆動装置は、電気自動車における車体1の駆動輪2に、駆動輪2と同軸上に設けられたインホイールタイプのDD(ダイレクトドライブ)モータ10であって、車体1から延出するスイングアーム(サスペンション部材)3の下端部(遊端側)に設けられている。
【0019】
駆動輪2は、ホイール4と、ホイール4のリム4aに組み付けられたタイヤ5とを備えている。ホイール4は、軸方向が車幅方向に一致した状態で配置された有底筒状のものである。具体的に、ホイール4は、車幅方向外側に位置するディスク部(エンド部)4bと、ディスク部4bの外周縁に形成された上述したリム4aとで構成されている。
【0020】
DDモータ10は、駆動輪2を回転させるためのモータ本体(モータ装置)11と、駆動輪2を制動するためのブレーキ装置12とを備えている。
【0021】
モータ本体11は、スイングアーム3の下端部に締結固定されたシャフト22と、シャフト22に固定されたステータ部20と、ステータ部20に対して(シャフト22回りに)回転可能に支持され、ステータ部20を覆うように設けられたロータ部21とを備えている。
【0022】
ステータ部20は、ステータベース24及びステータコア30を備えている。
ステータベース24は、シャフト22の径方向外側に固定されている。具体的には、ステータベース24は、シャフト22の軸方向一端側(車幅方向内側)に形成された大径部22aの周囲を囲むように配置された筒部24aと、筒部24aの車幅方向外側から径方向内側に向かって延出する内フランジ部24bと、筒部24aの車幅方向内側から径方向外側に向かって延出する外フランジ部24cとを備えている。
【0023】
内フランジ部24bの径方向内側は、シャフト22の軸方向他端側(車幅方向外側)に形成された小径部22bに挿入され、シャフト22とステータベース24とは、大径部22aの端面と内フランジ部24bの内周部分において締結固定されている。また、内フランジ部24bには、後述するセンサマグネット25の磁束を検出して、DDモータ10の回転角度を検出するためのセンサ26が配置されている。
【0024】
筒部24aの径方向外側には、円環状のステータコア30が外嵌されている。ステータコア30は、磁性材料の板材を軸線方向に積層して形成したものであって、周方向に沿って等間隔に複数の孔31が形成されている。そして、この孔31には、ステータコア30をステータベース24に締結固定するためのネジ32が挿入され、ステータベース24の外フランジ部24cに螺入されている。これにより、ステータコア30とステータベース24とが締結固定される。
さらに、ステータコア30の外周側には、径方向外側に向かって放射状に延出する複数のティース33が周方向に等間隔に設けられている。これらティース33には、それぞれインシュレータ34が装着され、このインシュレータ34を介してコイル35が巻装されている。
【0025】
ここで、図1,2に示すように、ロータ部21は、筒状のヨーク部40と、ヨーク部40の車幅方向内側(軸方向一端側)の開口部を閉塞するように設けられたリヤハウジング(ハウジング)41と、車幅方向外側(軸方向他端側)の開口部を閉塞するように設けられたフロントハウジング42とで外観構成されている。
【0026】
ヨーク部40は、例えば鉄等の磁性材料により構成されたものであって、ティース33の径方向外側の先端面(外周面)を取り囲むように設けられている。ヨーク部40の内周面40aには、ティース33の先端面に対向するように複数(例えば、32個)のマグネット43が設けられている。これらマグネット43は、ヨーク部40の内周面40aの全周に亘って周方向に磁極が交互となるように等間隔に設けられている。また、ヨーク部40の車幅方向両端面には、それぞれ軸方向に沿ってネジ孔40b,40cが形成されている。これらネジ孔40b,40cは、各ハウジング41,42とヨーク部40とを締結固定するための後述するネジ(締結手段)50,51が螺入されるものであって、ヨーク部40の周方向に沿って等間隔に複数(例えば、8個)形成されている。具体的には、図2に示すように、ネジ孔40b,40cは、マグネット43の裏面側(径方向外側)において、マグネット43の磁極中心(本実施形態では、マグネット43の周方向における中心部)に対応するように配置されている。すなわち、ネジ孔40b,40cは、マグネット43の極数の約数個形成されている。
【0027】
図1,2に示すように、フロントハウジング42は、磁性材料よりも軽量材料であるアルミ等の非鉄金属材料からなる円盤状のものであり、その径方向中央部には軸方向に貫通する貫通孔45が形成されている。この貫通孔45には、車幅方向内側から軸受け46が内嵌固定され、軸受け46の内側にシャフト22の小径部22bが挿入されている。貫通孔45の径方向外側には、フロントハウジング42の軸方向に沿ってネジ孔47が形成されている。ネジ孔47は、フロントハウジング42の周方向に沿って複数形成されている。ディスク部4bの孔48(図1参照)からネジ49を挿通して、フロントハウジング42のネジ孔47に螺入することで、ホイール4とロータ部21とが締結固定され、両者が共回りするようになっている。
【0028】
また、ネジ孔47の径方向外側、すなわちフロントハウジング42における外周側には、軸方向に沿って貫通する複数(例えば、8個)の孔55が、周方向に沿って等間隔に形成されている。これら孔55は、フロントハウジング42とヨーク部40とを締結するためのネジ50が挿通される孔である。各孔55とヨーク部40の車幅方向外側に形成されたネジ孔40bとには、互い重ね合わさった状態でネジ50が螺入されている。なお、フロントハウジング42の車幅方向内側の面内には、上述したセンサ26と所定距離を空けた状態でセンサマグネット25が対向配置されている。
【0029】
一方、リヤハウジング41は、フロントハウジング42と同様にアルミ等の非鉄金属材料からなる円盤状のものであり、その径方向中央部には軸方向に貫通する貫通孔60が形成されている。この貫通孔60には、車幅方向外側から軸受け61が内嵌固定され、軸受け61の径方向内側にシャフト22の大径部22aが挿入されている。そして、貫通孔60の径方向外側、すなわちリヤハウジング41における外周側には、軸方向に沿って貫通する複数(例えば、8個)の孔62が、周方向に沿って等間隔に形成されている。これら孔62は、リヤハウジング41とヨーク部40とを、ブレーキ装置12の後述するディスクロータ70とともに共締めするためのネジ51が挿通される孔である。なお、本実施形態で用いるネジ(例えば、ネジ32,50,51)は、耐食性を確保するためにステンレス等の非磁性材料が好適に採用されている。
【0030】
このように、本実施形態のモータ本体11は、ロータ部21がホイール4のリム4aの径方向内側に収容されている。この場合、ロータ部21の車幅方向内側の領域、すなわちリヤハウジング41は、駆動輪2の車幅方向内側の端部よりも車幅方向内側に向けて突出している。そして、ロータ部21は、軸受け46,61を介してシャフト22に対して回転可能に支持され、ロータ部21に固定された駆動輪2とともに共回りするように構成されている。
【0031】
ブレーキ装置12は、例えば油圧式のディスクブレーキであって、ロータ部21に固定され、ロータ部21と共回りするディスクロータ70と、車体1のスイングアーム3に固定され、ディスクロータ70との摩擦によってディスクロータ70の回転を停止または減速させるキャリパ71とを備えている。
【0032】
ディスクロータ70は、リヤハウジング41の車幅方向内側の外周縁に固定された環状のものであり、ロータ部21の軸方向と同軸上に配置されている。ディスクロータ70は、外径がロータ部21の外径よりも大きく形成され、リヤハウジング41の車幅方向内側の端面に鍔状に設けられている。具体的には、ディスクロータ70の外径は、ホイール4のリム4aの内径よりも大きく設定され、リム4aから径方向外側に若干突出している。なお、ディスクロータ70の外径は適宜設計変更が可能であり、例えばリム4aの内径よりも小さく設定しても構わない。
【0033】
ディスクロータ70の内周縁には、径方向内側に向けて突出する複数(例えば、8個)のフランジ部70aが、周方向に沿って等間隔に形成されている。これらフランジ部70aには、軸方向に貫通する複数(例えば、8個)の孔70bが形成されている。この孔70bは、リヤハウジング41の孔62及びヨーク部40のネジ孔40cに対応して形成され、リヤハウジング41とディスクロータ70との間にスペーサ73を挟んだ状態で、車幅方向内側からネジ51が螺入されている。これにより、リヤハウジング41及びディスクロータ70が、ネジ51によってヨーク部40に共締めされる。なお、スペーサ73は、熱伝導率の比較的低い材料、例えばステンレス等により構成されている。
【0034】
また、車体1のスイングアーム3におけるモータ本体11の取付位置より上方には、ディスクロータ70とともにブレーキ装置12を構成するキャリパ71が固定されている。このキャリパ71は、ディスクロータ70の外周部分が回転可能に入り込む開口部71aと、この開口部71aに入り込んだディスクロータ70を摩擦力で制動可能なパッド部(不図示)とを備えている。
【0035】
次に、作用を説明する。
まず、DDモータ10の図示しない制御装置から、ステータ部20のコイル35に駆動指令信号に応じた電流を流すことで、モータ本体のロータ部21を回転させる。これにより、ロータ部21の回転とともに駆動輪2が回転駆動して、車両が走行する。
車両の制動時には、キャリパ71に油圧をかけることで、キャリパ71のパッド部によりディスクロータ70を車幅方向両側から挟み込む。これにより、パッド部とディスクロータ70との間で摩擦力が発生し、駆動輪2及び車両を制動することができる。
【0036】
ところで、車両の制動時にはディスクロータ70とキャリパ71との間の摩擦によって熱が発生する。そして、ブレーキ装置12で発生した摩擦熱が、ブレーキ装置12に連結されたモータ本体11に伝達される。その結果、モータ本体11が熱による影響を受け、モータ特性が悪化する虞がある。
【0037】
そこで、本実施形態においてブレーキ装置12で発生する摩擦熱は、まずディスクロータ70からスペーサ73に伝達される。スペーサ73は、熱伝導率の低い材料により構成されているため、ディスクロータ70で発生する熱は、リヤハウジング41に伝わり難くなっている。さらに、ディスクロータ70とリヤハウジング41とが、スペーサ73のみを介して接触しているため、スペーサ73を用いずディスクロータ70とリヤハウジング41とを直接締結する場合に比べて、両者間の接触面積が少ない。そのため、ディスクロータ70で発生した熱を、リヤハウジング41に伝達される前段で効率的に遮断することができる。なお、スペーサ73の構成材料に、熱伝導率が大きく低い材料を用いることによりディスクロータ70から伝達される熱を、ほぼ完全に遮断することもできるが、材料費が高騰する場合には、熱によるモータ特性の悪化の程度と照らし合わせて、許容できる範囲となる程度の熱伝導低下率の素材のものを選択すると良い。
【0038】
一方、キャリパ71で発生する熱は、固定相手のスイングアーム3に伝わるため、スイングアーム3を通ってステータ部20に至る熱伝導経路が長く、ステータ部20に至る途中のスイングアーム3やシャフト22等で大量に放熱され、伝熱量が低減される。したがって、コイル35には大量の熱が伝わることがない。
【0039】
したがって、本実施形態のようなインホイールモータタイプのDDモータ10において、ブレーキ装置12からの熱がモータ本体11に伝わり難くなるので、モータ本体11が熱の影響を受けてその特性が悪化することを防止し得る。
【0040】
特に、本実施形態によれば、磁性材料からなるヨーク部40にディスクロータ70が締結固定されているため、非鉄金属材料からなるリヤハウジング41にディスクロータ70を締結固定する場合に比べて、ディスクロータ70の固定強度を高めることができる。そのため、より強いブレーキ力に耐えることができ、ディスクロータ70の脱落を確実に防止することができる。
【0041】
また、ディスクロータ70がホイール4よりも車幅方向内側に設けられているため、レイアウト性を向上させることができる。すなわち、ディスクロータ70の外径がホイール4の内径との兼ね合いで制限されることがない。
【0042】
ところで、本実施形態では、各ハウジング41,42とヨーク部40とを締結するために非磁性材料からなるネジ50,51を用いている。ヨーク部40内の磁束は、隣接するマグネット43の各磁極を結ぶ閉ループとなるため、ヨーク部40内に非磁性材料が存在すると、ヨーク部40の磁気抵抗が大きくなりモータ本体11の有効磁束が減少したり、ヨーク部40内の磁束分布がアンバランスになったりするという問題がある。そのため、ハウジング41,42とヨーク部40との締結位置は、磁束の流れを妨げないようにレイアウトする必要がある。
そこで、本実施形態のように、最も磁束の量が少ない部分(疎となる部分)、すなわちマグネット43の磁極中心にネジ50,51を配置することで、ヨーク部40内においてネジ50,51が磁束の妨げになることを最小限に抑えることが可能になる。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0044】
例えば、上述の実施形態では、DDモータを電気自動車に採用した場合について説明したが、これに限らず、ソーラーカー等に採用することも可能である。
また、ディスクロータの外径等は適宜設計変更が可能である。
また、上述した実施形態では、各ハウジング41,42の構成する非鉄金属材料として、アルミを採用する場合について説明したが、これに限らずヨーク部40の構成材料よりも比重が小さい種々の非鉄金属材料を採用することが可能である。
また、上述した実施形態では、スイングアーム3にDDモータ10を設ける場合について説明したが、これに限らずアップライト等、その他のサスペンション部材に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
2…駆動輪
3…スイングアーム(サスペンション部材)
4…ホイール
5…タイヤ
10…DDモータ(車両用ホイール駆動装置)
11…モータ本体(モータ装置)
12…ブレーキ装置
20…ステータ部
21…ロータ部
40…ヨーク部
41…リヤハウジング(ハウジング)
50,51…ネジ(締結手段)
70…ディスクロータ
71…キャリパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪と同軸上に設けられ、前記駆動輪を駆動するためのモータ装置と、
前記駆動輪を制動するためのブレーキ装置とを有する車両用ホイール駆動装置であって、
前記モータ装置は、
前記車両の車体に設けられたサスペンション部材に固定されたステータ部と、前記ステータ部に対して回転可能に支持され、前記ステータ部を覆うように設けられたロータ部とを備え、
前記ロータ部は、
磁性材料からなり少なくとも前記ステータ部の径方向外側の周囲を囲むように配置される筒状のヨーク部と、前記ヨーク部の前記サスペンション部材側の開口部に取り付けられた非鉄金属材料からなるハウジングとを備え、
前記ブレーキ装置は、ディスクロータ及びキャリパを備え、
前記キャリパは、前記サスペンション部材に固定されている一方、
前記ディスクロータは、前記ハウジングとともに前記ヨーク部に締結手段によって共締めされていることを特徴とする車両用ホイール駆動装置。
【請求項2】
前記ハウジングと前記ディスクロータとの間には、低熱伝導率材料からなるスペーサが介在していることを特徴とする請求項1記載の車両用ホイール駆動装置。
【請求項3】
前記ステータ部は、コイルが巻装されたステータコアを備え、
前記ヨーク部の内周面には、前記ステータコアの外周面に対向するように、前記内周面の周方向に沿って複数のマグネットが並設され、
前記締結手段は、前記マグネットの磁極の中心に対応するように配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用ホイール駆動装置。
【請求項4】
前記ディスクロータは、前記駆動輪よりも前記サスペンション部材側に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用ホイール駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−163037(P2010−163037A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6648(P2009−6648)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】