説明

車両用ボンネットおよびその製造方法

ボンネット(2)は、アウタースキン(10)と、SMCからなるインナーライニング(20)とを備え、前記ライニングは、前記スキンとは実質的に間隔を開けて広がっている。この構造により、前記ボンネットは、ボンネットに衝突する歩行者頭部の保護という点において十分な機械的挙動を示すことができる。SMCにより、前記ボンネットは破損せず、所定の均一な挙動を示して実質的に弾性的に変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ボンネットに関し、特に、自動車用ボンネットおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、特に自動車である車両との正面衝突時に歩行者を保護するという一般的な問題に対応するものである。一般に、自動車製造業者および部品メーカーでは、車両に跳ねられた歩行者の頭部がボンネットに当たった時に生じる衝撃度を数値で表すために、頭部障害基準(HIC)を用いている。HIC基準は、各種ボンネットに固有のものであり、基本的には衝突時に歩行者頭部にかかる最大減速度を考慮して、頭部とボンネットとの間の衝撃強さの指標を示すものである。HIC基準を満たすことを目的として、特許文献1には、金属製アウタースキンと、「プレミックス」とも呼ばれるバルク成型コンパウンド(BMC)からなるインナーライニングとを備えたハイブリッドボンネット構造が提案されている。BMCは、樹脂、補強材および充填材等の混合物で構成される脆性複合材料であり、織物状ではなく、通常は使用前に射出成型することによって得られるものである。BMCを用いることにより、ボンネットと歩行者頭部の衝突の初期段階において歩行者頭部の減速を迅速に行い、次の段階でBMCインナーレイヤーが脆性破壊されることによって頭部の突然完全停止を防止することができる。
【特許文献1】WO−A−03/04263
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、BMCの脆性評価試験では、重要な欠陥が提示されている。すなわち、BMCの破壊は不規則に生じたり、少なくとも正確に予測することが困難であるため、同一構造の複数のボンネットにおいても、単一のボンネットで複数箇所を測定しても、HIC測定のバラツキが非常に大きくなってしまう。
【0004】
本発明の目的は、歩行者頭部との衝突時に、HICに関して満足できる所定の均一な機械的挙動を示すハイブリッド構造のボンネットを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明は、特に自動車用の、アウタースキンと、複合材料からなるインナーレイヤーとを備えた車両用ボンネットを提供する。このボンネットにおいて、前記レイヤーは、前記スキンとは実質的に間隔を開けて広がっているSMC製のライニングを形成することを特徴とする。
【0006】
SMCは、予備含浸シートとしても知られるシート状成形材料の略語である。SMCは、織糸、マット、有機繊維織物または鉱物繊維織物に、樹脂を含浸させたものからなる1または複数のシート状プリフォームである。SMCは、成型に適した一体組成物であり、圧縮変形されることによって、成型時の合成材料のクリープが制限され、最終製品における繊維の損傷や配向が低減される。
【0007】
本発明のボンネットにおけるSMCライニングは、柔軟性を有しており、ボンネットに均一な機械的挙動を与えている。ボンネットに当たった歩行者頭部の減速中、少なくとも衝突の初期段階において、ボンネットは破損せず、弾性的に撓む。ボンネットが自動車のエンジン部分の硬質部に当たらずに自由に戻ってくる場合には、ボンネットは破損することなく、実質的あるいは限定的に弾性的に撓み、所定の正確な挙動を示す。ボンネットは、スキンおよびSMCライニングの剛性に対応する全体的に均一な剛性を有している。ボンネットが凹んでSMCライニングがエンジン部分の硬質部に当たると、SMCの柔軟性により、ライニングが硬質部の周囲で局所的に変形するので、歩行者頭部の急停止を防止することができる。したがって、SMCライニングは、全範囲にわたって変形する時は全体的に座屈しつつ、かつ/または局所的に平坦化しながら撓むことができ、座屈せずに平坦化することで破損する層を有利に形成している。
【0008】
実際に、SMCライニングは、スキンの主要部とライニングの主要部との間、つまりスキンとライニングとが互いに接触している外側の小領域、とりわけスキンおよびライニングの外周部分の間に間隔ができるように、金属製スキンに組み付けられる。このスキンとライニングとの間の間隔により、ボンネットの全体構造は、製品に対する各種要求に対応する慣性を生じさせる。これは具体的には、屈曲やねじれに対する静剛性すなわち静抵抗である。また、このように間隔を開けて配置されたSMCライニングにより、本発明のボンネットは、スキンにより形成される全体的な外部形状を変更することなく、エンジンのボンネット下の部分の構造にさらに好適に適応するようになる。また、その他の機能をライニングに付加してもよい。例えば、エンジンバッテリの近傍に開口してエンジンバッテリを空冷するエアダクトを付加してもよい。
【0009】
この他にも、SMCを使用することによる利点が挙げられる。SMC樹脂は導電性であってもよく、特に組立ラインにおいて、塗装または静電気塗装を施すことが可能である。また、SMCは約5000メガパスカル(MPa)〜40,000MPaの弾性率を有するため、特定の用途において、ボンネットのHIC値および/またはボンネットが凹む際の最大深さを最適化するのにより適した弾性率を有するSMCを選択することができる。さらに、一層のスキンを、弾性率の異なるSMCからなる2つの異なるライニングとともに用いて、歩行者保護レベルの異なる規定または推奨基準を満たす2つのボンネットを得ることも可能である。
【0010】
第1の実施形態において、ボンネットのアウタースキンは金属製であり、鋼、アルミニウムまたは自動車の車体に用いられるその他の金属合金からなる。
【0011】
第2の実施形態において、ボンネットのアウタースキンは、熱可塑性材料または例えばSMC等の複合材料からなる。このようにして得られたボンネットは、金属製スキンを供えたボンネットよりも剛性が低く、例えば、エンジンを後部に配した自動車の前部トランクを覆うために用いることができる。
【0012】
単独または技術的に実現可能に組み合わせて採用されるボンネットのその他の特徴によれば、
・スキンとライニングとの間の空間は、中空である。
【0013】
・ライニングは、スキンと反対の方向を向いている面において、自動車のボディの剛性部材に当接する少なくとも1つの面を有している。
【0014】
・ライニングは、ライニングのその他の部分からスキンとは反対の方向に突出する少なくとも1つの変形領域を有し、この変形領域が当接面を形成している。
【0015】
・スキンおよびライニングは、スキンのライニングに対向する面と、ライニングのスキンに対向する面との間に介在されるスポット状および/または線状接着剤によって互いに恒久的に固定されている。
【0016】
・ボンネットは、特にスキンおよびライニングが互いに恒久的に固定される前に、スキンおよびライニングの相対位置を少なくとも一時的に決定するための少なくとも1つの剛性ベースプレートをさらに備えている。
【0017】
本発明はまた、ボンネット用アウタースキンを設けることを含む、特に自動車用の車両用ボンネットの製造方法を提供する。該方法は、前記スキンを得る工程とは別の工程において、SMC層を成型してボンネット用インナーライニングを設け、前記スキンを得る工程および前記SMC層を成型する工程の後に、前記スキンが前記ライニングを覆い、前記ライニングが前記スキンとは実質的に間隔を開けて広がるように、前記スキンおよび前記ライニングを恒久的に結合させることを特徴とする。
【0018】
本発明の方法によれば、上記に説明したボンネットを得ることができる。したがって、この方法によれば、ボンネットのアウタースキンを得る工程とは別に成型されたSMCライニングの柔軟な機械的特性を利用することにより、申し分のないHICを示すハイブリッド構造のボンネットを得ることができる。
【0019】
ここで製造されるボンネットのアウタースキンは金属製であり、このスキンを得る工程は、特に金属シートを成形する工程により構成される。アウタースキンが熱可塑性材料または複合材料からなる場合には、スキンを得る工程は、例えば成型工程であってもよい。
【0020】
本発明のその他の有利な特徴によれば、
・スキンおよびライニングを恒久的に結合させる前に、スキンおよびライニングの間に配置されてその両方に固定された少なくとも1つの剛性ベースプレートを用いて、スキンをライニングに対する固定位置に組み付ける。
【0021】
・スキンおよびベースプレートが金属製である場合には、ベースプレートは溶接等によってスキンに固定されて両者間に電気を導通させる。
【0022】
・スキンをライニングに恒久的に結合するために、ベースプレートによってスキンおよびライニングが互いに固定された状態で、好適に架橋されるスポット状接着剤または線状接着剤をスキンとライニングとの間に介在させ、好ましくは自動車のその他の部分に組み付けられたボンネットが電気泳動槽を通過する間に、これらの接着剤を架橋させる。
【0023】
・ベースプレートは、ボンネットを開けるためのヒンジ等のボンネットの機械的部材を支持するために用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を、図面に基づき、例示のみを目的とする以下の記載により詳細に説明する。
【0025】
図1に、フロントボンネット2、自動車のボディの一部を形成するフロントパネル3および左側フロントフェンダ4を有する自動車1を示す。ボンネット2は、自動車1のエンジンを保護するカバーを構成し、ボンネット2の前端部の下に垂直に配置されたパネル3は、ラジエータグリル31やヘッドライトユニット32等の部材を支持している。
【0026】
図2にさらに詳細に示すように、ボンネット2は、アウタースキン10と、インナーライニング20とを備えている。ライニング20はSMC複合材料層からなる。SMCは、シート状成形材料の略であり、予備含浸シートとも呼ばれることもある。この材料は、織糸、マット、有機繊維織物または鉱物繊維織物に、樹脂を含浸させたものからなるプリフォームに相当する。例えば、この樹脂は不飽和ポリエステルである。
【0027】
図に示すボンネットにおいて、スキン10は、鋼またはアルミニウム等の金属で構成されている。不図示の変形例においては、スキンは熱可塑性材料または複合材料で構成されていてもよい。
【0028】
図に示すボンネット2は、金属製のアウターレイヤーと複合材料からなるインナーレイヤーとが結合された一般的なハイブリッド構造物である。
【0029】
スキン10は、薄くて平坦な板であり、上から見ると実質的に矩形状である。自動車1の前面部の外観に応じて、この基本的な形状に、細かい畝または凹凸を設けてもよい。
【0030】
SMCライニング20は、全体としてスキン10と同様に構成されている。実際には、ライニングはスキンよりも肉厚で、その外形はスキンよりもわずかに小さくなっているので、外から見た時、つまりボンネット2を図1のように見た時には、ライニングはスキンに完全に覆い隠されるようになっている。
【0031】
最終的に組み立てられた状態のボンネット2においては、図1および図2に示すように、SMCライニング20は、その大部分が金属製スキン10と間隔を開けて支持されており、ライニングの上面21とスキンの底面11との間に中空の空間Vが画定されている。図2のeは、この2つの面の間の間隔を示している。スキン10およびライニング20は、それぞれの周辺端部と、それぞれの主要部の所定の領域とにおいて、互いに恒久的に固定されている。
【0032】
より正確に言えば、図2の左側部分に示すスキンおよびライニングの前端部において、スキンはライニングの前端部22を収容するように折り曲げられた前端部12を備えている。つまり、前端部12は、ライニングを機械的に保持するフックを形成している。この部分は、例えば周辺部に線状に設けられた接着剤36等の構造用接着剤または類似の手段を介在させることによって有利に補強されている。
【0033】
中空の空間Vによって隔てられたスキン10およびライニング20の主要部13および23において、面11および21は、スポット状または線状に形成されたマスチック等のほとんど収縮しない接着剤によって、恒久的に結合されている。この接着剤は、図2の右側部分にスポット37として図示されている。スポット状または線状の接着剤はそれぞれ、ライニングの局所的に変形した領域28に設けられる。この領域は、主要部23以外の部分からスキンに向かって突出している。この変形領域28は、上記スポット状または線状の接着剤が介在された状態で、各変形領域の上端部がスキンの面11に並列となるように、スキンおよびライニング間の間隔eと略同一の高さを有している。各変形領域28の高さ以外の2つの寸法のうちの一方または他方は、図2に示すように、空間Vが実質的に中空となるように、空間Vの対応する2つの寸法よりも小さい。
【0034】
自動車1に跳ねられた歩行者の頭部がボンネット2に当たると、ボンネットは、HIC値を好適に制限する比較的柔軟な機械的挙動を示す。例えば、図2の右側部分に矢印40で示す衝撃について検討すると、歩行者頭部の減速度は、図3に示すように、時間に応じて変化する。HIC値は図3の曲線の下側領域に相当する。
【0035】
時間がたつにつれて、この曲線はボンネット2の全体的な変形に対応する第1ピーク強度Aを示す。これはスキン10の比較的剛性の変形とSMCライニング20の弾性変形とに対応するピークである。その後、ボンネットの構造により、ライニングが実質的に弾性的に撓むため、ボンネットの全体的な剛性は中程度にとどまる。
【0036】
第1ピーク強度Aの後、図3の曲線は第2ピーク強度Bを示す。これは、SMCライニング20が歩行者頭部との衝突の影響下で変形した時に、ライニングが当たる硬質部があることに対応するものである。より詳細に言えば、図2の右側部分に示すように、ライニング20の一部23Aは、例えばエンジンボックス等の、自動車1の剛性エンジン部材で形成される硬質部5に重なっている。矢印40で示す衝撃の影響下において、ボンネット2は、ライニング20の底面24が硬質部5に押し付けられるまで矢印41の方向に変形する。その結果、歩行者頭部の減速度は図3の曲線のピーク強度Bまで増加する。SMCにより、硬質部に対応する減速度の強度Bは中程度にとどまり、硬質部に接触しないボンネットの全体的な変形に対応する減速度の強度Aより低くなる。この好都合なボンネット2の挙動は、主としてSMCライニングの弾性的挙動によるものであり、より少ない程度にはライニングとスキンとの間の間隔によるものである。実際に、硬質部5に押し付けられると、ライニングは硬質部の周囲で局所的に変形し、硬質部への衝撃によるエネルギーの相当分を吸収する。不図示の変形例において、ライニングの一部23Aの幾何学的形状、特に厚さを変更することも可能である。
【0037】
間隔dにより、ライニングの一部23Aの底面と硬質部5の上端部とが隔てられている。ボンネット2は、小さい間隔だけでなく、一般的に35mmより大きい標準的な間隔dに対しても有利な挙動を示す。
【0038】
しかしながら、ボンネット2の前端部においては、SMCライニング20とパネル3の剛性部材33との間隔は、上記間隔dよりも小さい。許容可能なHIC値を維持しつつ、ボンネット2の凹部のストローク(indentation stroke)を制限するために、ライニング20の主要部23の前端部23Bには、局所的に変形した領域25が設けられている。この領域は、図2の左側部分に示すように、主要部23のその他の部分から、スキン10と反対側の方向に突出している。この領域25は、衝撃時にはパネル部材33の上端部に当接し、実質的に点状の当接面25Aを形成するように構成されている。領域25とパネル部材33との間には遊びがあるが、これは衝撃の初期段階において吸収される。
【0039】
図2の左側部分に矢印42で示すように、歩行者の頭部がボンネット2の前端部に当たった時は、ボンネット2は、図2の右側部分を参照して上記で説明したように変形する。しかしながら、衝撃が与えられている間、応力を受けるライニングの一部23Bは面25Aを介してパネル部材33に当接するため、ボンネットの凹部のストロークは中程度にとどまる一方、HIC値は、SMCの弾性的挙動によって所定の制限値よりも小さくなる。
【0040】
次に、ボンネット2の製造方法について説明する。
【0041】
ボンネット2を得るためには、まず金属シートを用意し、次いでSMC層を用意する。この2つを得るために必要な作業は、それぞれ独立して行われる。例えば、シートを打ち抜き加工および/または折り曲げ加工によって成型してスキン10とする。また、ライニング20の最終的な幾何学的形状を得ることができる金型を用いてSMCを成型する。
【0042】
このようにして得られたスキン10およびライニング20を、図2に示すようにスキンがライニングを覆い隠すようにして組み合わせる。この時、これらの間に介在する中空の空間Vの範囲を決定する。スキンおよびライニングを相対的に適切な位置となるように組み合わせた後は、接着部材36および37または類似の手段を用いて互いに固定する。
【0043】
この組み立てを容易に行うには、図4および図5に示すように、金属製のベースプレート50を用いることが有利である。図示したベースプレートは、ボンネット2の右側後方の角部に配置されているが、実際には複数のベースプレートを用いることが有利である。特に、ボンネット後方の2つの角部に1つずつ用いることが有利である。
【0044】
ベースプレート50は通常、プレートと一体化してプレートの一辺から伸びる折り曲げタブ52を有する平板51である。ベースプレート50は、ライニングをスキン10に組み付ける前に、ライニング20の上面22に配置する。平板51を面21の上に水平に置き、タブ52をライニングの右側端部27に形成された実質的に相補形の開口26に挿入する。この状態のベースプレートにおいて、平板51を、例えば領域53をクリンチナット等(図示せず)でリベット締めすることによって、ライニングの主要部23に固定する。このナットにより、例えばボンネット2を開けるためのヒンジといった自動車1のボディのその他の部材を、ベースプレートに支持させることができる。そして、ベースプレート50が図5に示すように空間Vの内側に配置されるように、スキン10をライニングに組み付ける。タブ52は、スキン10に固定される。より正確には、タブ52は、スキンの右側の折り曲げ端部14にスポット溶接箇所54で溶接される。
【0045】
ベースプレート50を使うと、ベースプレートの剛性によってスキン10とライニング20とが相対的に移動するのを防止することができ、自動車1のボディへの取り付けの際に、ボンネット2を容易に取り扱うことができる。その後、ボディを電気泳動槽に浸漬するか、または類似の熱処理を行うと、処理熱により、接着部材36および37ならびにその他類似のスポット状または線状接着剤が架橋される。これにより、最終的に、スキンとライニングとが互いに恒久的に結合される。スポット溶接箇所54およびリベット箇所53は、ボンネット2が部材36、37を介して恒久的に結合される前に、ボンネット2を取り扱う際に十分な強度を与えるためにのみ設けられたものである。
【0046】
例えば、ライニング20を構成するSMCが、非導電性であったり、導電性が不十分である場合、ベースプレートの平板51にボンネットを開けるための上記ヒンジ等のボディ部材が支持されている時は、1つ以上のベースプレート50を用いることにより、ボンネット2のスキン10と自動車1のボディのその他の金属部材との間に電気を導通させることができる。この導電性により、ボンネットを静電塗装材料で塗装することができ、さらに/またはスキンを干渉防止部材として用いることができる。また、特別な装置を使用しなくても、電気泳動および/または塗装作業において、ボンネット2を適切な電気位置とすることができる。
【0047】
上記ボンネット2およびその製造方法もまた、様々に改変または変更してもよい。例えば
・スポット31および32に用いた接着剤を、自動車1のボディ全体の電気泳動中に架橋させるかわりに、ボディのその他の部分の加工とは関係なく、ボンネットを自動車のその他の部分に取り付ける前に架橋を行ってもよい。この方法は、スキンが熱可塑性材料または複合材料からなる場合に好ましい。
・介在空間Vは、SMCライニング20の弾性的挙動、特に、金属製スキン10に対する挙動を阻害するものでない限り、充填材料で充填されていてもよい。さらに/または
・ボンネットの塗装作業は、特にボディの塗装作業後にボンネットを取り付ける場合には、自動車にボンネットを取り付ける前に行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明のボンネットを有する自動車を正面から見た時の概略斜視図である。
【図2】図2は、図1の面IIにおける概略断面図である。
【図3】図3は、図1および図2のボンネットのHICを示すグラフである。
【図4】図4は、図1の円IVで囲まれた箇所を拡大して示す部分切断斜視図である。
【図5】図5は、図4の面Vにおける断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車(1)用の、アウタースキン(10)と、複合材料からなるインナーレイヤーとを備えた車両用ボンネット(2)であって、
前記レイヤーは、前記スキンとは実質的に間隔を開けて広がっているSMC製のライニング(20)を形成し、前記スキン(10)と前記ライニング(20)との間の空間(V)は、中空であることを特徴とするボンネット。
【請求項2】
請求項1のボンネットにおいて、
前記スキン(10)は金属製であることを特徴とするボンネット。
【請求項3】
請求項1のボンネットにおいて、
前記スキンは熱可塑性材料または複合材料からなることを特徴とするボンネット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つのボンネットにおいて、
前記ライニング(20)は、前記スキン(10)と反対の方向を向いている面(24)において、前記自動車(1)のボディの剛性部材(33)に当接する少なくとも1つの面(25A)を有していることを特徴とするボンネット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つのボンネットにおいて、
前記ライニング(20)に対する前記スキン(10)の位置を少なくとも一時的に決定するのに適した、少なくとも1つの剛性ベースプレート(50)をさらに備えることを特徴とするボンネット。
【請求項6】
ボンネット用アウタースキン(10)を設けることを含む、特に自動車(1)用の車両用ボンネット(2)の製造方法であって、
前記スキンを得る工程とは別の工程において、SMC層を成型してボンネット用インナーライニング(20)を設け、前記スキンを得る工程および前記SMC層を成型する工程の後に、前記スキンが前記ライニングを覆い、前記ライニングが前記スキンとは実質的に間隔を開けて広がるように、前記スキンおよび前記ライニングを恒久的に結合させることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6の方法において、
前記スキンおよび前記ライニングを恒久的に結合させる前に、前記スキンおよび前記ライニングの間に配置されてその両方に固定された少なくとも1つの剛性ベースプレート(50)を用いて、前記スキン(10)を前記ライニング(20)に固定することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7の方法において、
前記スキン(10)および前記ベースプレート(50)は金属製であり、前記ベースプレートは溶接等によって前記スキンに固定されることにより、両者間に電気を導通させることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7または8の方法において、
前記スキン(10)を前記ライニング(20)に恒久的に結合するために、前記ベースプレート(50)によって前記スキン(10)および前記ライニング(20)が互いに固定された状態で、好適に架橋されるスポット状接着剤(37)または線状接着剤(36)を前記スキンと前記ライニングとの間に介在させ、好ましくは自動車(1)のその他の部分に組み付けられたボンネット(2)が電気泳動槽を通過する間に、前記接着剤を架橋させることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1つの方法において、
ベースプレート(50)は、ボンネットを開けるためのヒンジ等のボンネット(2)の機械的部材を支持するために用いられることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−517283(P2009−517283A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542813(P2008−542813)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/FR2006/051262
【国際公開番号】WO2007/063256
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(506286412)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】