説明

車両用ポップアップフード装置

【課題】アクチュエータの上端から水や埃がアクチュエータ内に入り込むことを防止又は効果的に抑制でき、しかも、フードの上昇時や上昇後の下降時においてカウルルーバの影響を無くし、又は、軽減できる車両用ポップアップフード装置を得る。
【解決手段】本車両用ポップアップフード装置10では、カウルルーバ50に形成されたアクチュエータ被覆部58が上側からシリンダ72を覆っているので、異物がシリンダ72の上端部からシリンダ72の内側へ入り込むことを防止又は極めて効果的に抑制できる。しかも、アクチュエータ70の押圧部材76は、上昇する際にアクチュエータ被覆部58の破断部84を破断して変形部90を回動させるように変形部90を変形させて上壁56に孔を形成して上壁56を通過するので、シリンダ72内のピストンの上昇力のうちフード14の上昇に供される力を充分に残すことができ、効率よくフード14を上昇させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームを閉止するフードを所定の条件下で上昇させる車両用ポップアップフード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両が衝突対象物に衝突するとエンジンルーム内に設けられたアクチュエータが作動し、エンジンルームを上方から閉止するフード(ボンネットフード)をアクチュエータが下方から押し上げる車両用ポップアップフード装置(歩行者保護装置)が開示されている。
【0003】
このような車両用ポップアップフード装置のアクチュエータは、ピストンが上方へ摺動可能に配置されたシリンダを備えている。ピストンにはロッドの下端部が一体的に連結されている。ロッドの上端側はシリンダの上端の開口部からシリンダの外部に突出している。ロッドの上端部には押圧部材が一体的に取り付けられており、シリンダ内に急激にガスが供給されることでシリンダの内圧が上昇すると、ピストンと共にロッド、ひいては押圧部材が上昇し、この上昇した押圧部材がフードを下方から押し上げる。このようなアクチュエータを構成するシリンダは、上端部が開口しているので、シリンダの上端部から雨水や埃等の異物が入り込む可能性がある。このため、シリンダをカウルルーバの下方に配置して、シリンダの上端部をカウルルーバで覆うことが考えられる。
【特許文献1】特開2005−324753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ロッドに押し上げられたフードのアクチュエータ取付位置近傍に対して、所定の大きさ以上の荷重が上方から作用した場合にロッドの先端を車両の後方側へ滑らせながらロッドを曲げ塑性変形させ、これにより、上方からフードに作用した荷重を吸収させる構成が考えられる。
【0005】
ここで、上記のように、アクチュエータのシリンダをカウルルーバの下方に配置する構成では、上昇するロッドはカウルルーバと共にフードを押し上げる。このため、このような構成に上記のようなロッドを曲げ塑性変形させて荷重を吸収させる構成を適用すると、ロッドとフードとの間に介在するカウルルーバによって、ロッドを想定していたように曲げ塑性変形させることが難しくなる等、ロッドの変形やフードの下降時等に対してカウルルーバの影響が及ぶ。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、アクチュエータの上端から水や埃がアクチュエータ内に入り込むことを防止又は効果的に抑制でき、しかも、フードの上昇時や上昇後の下降時においてカウルルーバの影響を無くし、又は、軽減できる車両用ポップアップフード装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、作動することで上昇する押圧部材を有し、車両のエンジンルームを上方から閉止するフードの下側に配置され、上昇する前記押圧部材で前記フードを上方へ押圧して前記フードを上昇させるアクチュエータと、前記アクチュエータを上方から覆うと共に上昇する前記押圧部材により破断される被覆手段と、を備え、前記アクチュエータは前記押圧部材で前記被覆手段を破断して前記フードを直接押圧する、ことを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置では、アクチュエータが作動すると押圧部材が上昇して被覆手段を押圧する。押圧部材に押圧されることで被覆手段は破断し、この状態で更に押圧部材が上昇するとエンジンルームを閉止するフードが押圧部材により下方から直接押圧される。これにより、フードが上昇する。
【0009】
一方、上記のようにアクチュエータが作動する前の状態では、アクチュエータは上方から被覆手段により覆われているので、水や埃等の異物がアクチュエータの上端からアクチュエータの内部に入り込むことを防止又は効果的に抑制でき、しかも、アクチュエータにて生じた力を効率よくフードの上昇に供することができる。
【0010】
しかも、被覆手段は押圧部材により破断され、これにより、押圧手段が被覆手段を貫通してフードに直接当接してフードを押圧するので、被覆手段を破断した後のフードの上昇や上昇終了後のフードの下降に際してカウルルーバの影響がないか、又は、カウルルーバの影響が小さい。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、請求項1に記載の本発明において、前記エンジンルームを構成する前記車体に取り付けられたカウルルーバに前記被覆手段を形成したことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置によれば、車両のエンジンルームを構成する車体に設けられたカウルルーバに被覆手段が形成される。このため、カウルルーバを車体に取り付けることで被覆手段も車体に取り付けられる。
【0013】
請求項3に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、開口した下端が前記カウルルーバに繋がった筒状の周壁と、前記周壁の上端を閉塞するように前記周壁の上端に形成された上壁と、を含めて前記被覆手段を構成し、上昇する前記押圧部材が前記上壁を破断する、ことを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置によれば、被覆手段を構成する周壁は、開口した下端にてカウルルーバに繋がり、上端は上壁にて閉塞される。アクチュエータが作動することで上昇した押圧部材は、被覆手段を構成する上壁を破断してフードを直接押圧する。
【0015】
ここで、カウルルーバに周壁の下端が繋がっていることで、周壁の上端に設けられる上壁はカウルルーバよりもフードに近い。しかも、周壁が中空であるため、例えば、押圧部材やアクチュエータの一部(アクチュエータの上下方向中間部よりも上側の部分)を周壁の内側に配置することで、押圧部材がフードに当接するまでの上昇ストロークを短くできる。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の本発明において、前記アクチュエータの近傍に設けられた被覆部本体と、前記アクチュエータが前記被覆手段を押圧する際の押圧方向に沿って前記アクチュエータに対向して前記被覆部本体に部分的に形成された変形部と、前記変形部の外周一部と前記被覆部本体との境に形成され、前記被覆部本体及び前記変形部よりも機械的強度が弱い連結部と、前記変形部の外周部一部と前記被覆部本体との間に設けられ、前記連結部よりも機械的強度が弱く、前記アクチュエータからの押圧力で破断する破断部と、を含めて前記被覆手段を構成し、前記アクチュエータからの押圧力で前記破断部が破断されつつ前記連結部を軸に前記変形部が回動する、ことを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置によれば、アクチュエータが作動して押圧部材が上昇すると、押圧部材は被覆手段を構成する被覆部本体に設けられた変形部に当接して変形部を下方から押圧する。変形部と被覆部本体との間に設定された破断部は、被覆部本体や変形部よりも機械的強度が弱い連結部よりも更に機械的強度が弱く、上記のように押圧部材からの押圧力が変形部に付与されると、破断部に応力が集中して破断部が破断する。さらに、変形部の外周一部と被覆部本体との間に形成された連結部は上記のように被覆部本体及び変形部よりも機械的強度が弱いので、破断部で破断が生じた状態で押圧部材からの押圧力を変形部が受けると、連結部を軸に変形部が回動するように変形部が変形する。これにより、変形部の設定範囲に孔が形成され、押圧部材が被覆手段から抜け出てフードを下方から直接押圧する。
【0018】
ここで、被覆手段から押圧部材が抜け出るに際して、上記の変形部には変形が生じるものの連結部を介して被覆部本体に繋がっている。このため、被覆手段から押圧部材が抜け出るための孔が形成される際に被覆手段の一部が他の部分から分離して押圧部材とフードとの間に挟み込まれたり、上記のように分離した部分が飛散したりすることが防止又は効果的に抑制される。
【0019】
請求項5に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、請求項4に記載の本発明において、前記押圧部材を前記フードの側へ向けて漸次先細に形成すると共に、前記押圧部材の先端を前記破断部に対向させることを特徴としている。
【0020】
請求項5に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置によれば、フードの側へ向けて先細とされたアクチュエータの押圧部材は、被覆手段に設定された破断部に対向している。このため、アクチュエータが作動して押圧部材が被覆手段を押圧した際には、押圧力を破断部に集中させ、効果的に破断部にて破断を生じさせることができ、効率よく変形部にて変形を生じさせることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、水や埃等の異物がアクチュエータの上端からアクチュエータの内部に入り込むことを防止又は効果的に抑制でき、しかも、押圧部材が上昇する力を効率よくフードに伝えてフードを上昇させることができる。
【0022】
請求項2に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、カウルルーバに被覆手段を形成したのでカウルルーバを車体に取り付けられることで被覆手段も車体に取り付けられる。
【0023】
請求項3に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、押圧部材がフードに当接するまでの上昇ストロークを短くできる。
【0024】
請求項4に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、アクチュエータの押圧部材が被覆手段から抜け出るに際して、被覆手段の一部が他の部分から分離して押圧部材とフードとの間に挟み込まれたり、上記のように分離した部分が飛散したりすることを防止又は効果的に抑制できる。
【0025】
請求項5に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、押圧部材からの押圧力を効果的に破断部に集中させることができ、効率よく変形部にて変形を生じさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一実施の形態に係る車両用ポップアップフード装置10を搭載した車両12の要部の構成の概略が斜視図により示されている。また、図2には本ポップアップフード装置10の構成の概略が側面図により示されている。
【0027】
これらの図に示されるように、車両12はフード14を備えている。フード14は、金属平板をプレス加工することで形成されて表面が車両12の意匠面の一部を構成するアウタパネル16を備えている。アウタパネル16の裏面側(下側)にはアウタパネル16と共に車両12を構成するインナパネル18が配置されている。インナパネル18は金属平板をプレス加工することにより形成されており、その外周部はアウタパネル16の外周部近傍に形成されたヘム部20に挟み込まれてアウタパネル16に一体的に結合されている。
【0028】
図2に示されるように、車両12の前後方向に沿ったフード14の後端側では、車両12の幅方向に沿ったフード14の両端部近傍にヒンジ22の一部が固定されている。このヒンジ22は車両12のエンジンルーム36を構成する車体に他の一部が固定されており、車両12の幅方向を軸方向とする軸周りに回動可能にフード14を車体に連結している。エンジンルーム36を構成する車体に対してフード14が回動することで、エンジンルーム36が開閉されるようになっている。
【0029】
図1に示されるように、フード14の後端部近傍におけるフード14の下側にはカウルルーバ50が設けられている。カウルルーバ50は車両12の幅方向両端側がエンジンルーム36を構成する車体に連結されている。また、車両12の前後方向に沿ったカウルルーバ50が前端部又はその近傍では、カウルルーバ50の表面(上面)側にウエザストリップ52が設けられている。ウエザストリップ52は、ゴム材又はゴム材程度の弾性を有する合成樹脂材により車両12の幅方向に沿って長手の長尺状に形成されている。フード14がエンジンルーム36を閉止した状態でウエザストリップ52はカウルルーバ50とは反対側でフード14のインナパネル18に圧接しており、カウルルーバ50の表面を伝った水等がエンジンルーム36に入り込むことを抑制したり、フード14が上下に振動することを抑制したりしている。
【0030】
このウエザストリップ52の配置位置よりも後方側では、カウルルーバ50に被覆手段としてのアクチュエータ被覆部58が形成されている。アクチュエータ被覆部58は被覆本体としての周壁54を備えている。本実施の形態において周壁54は断面矩形の筒形状に形成されており、その一端はカウルルーバ50の本体部分にて開口している。周壁54の他端には周壁54と共に被覆部本体を構成する上壁56が形成されており、周壁54の他端は上壁56にて閉止されている。このように、アクチュエータ被覆部58はカウルルーバ50の一部を車両12の上方へ向けて突出した中空の断面凸形状に成形することで形成されている。
【0031】
アクチュエータ被覆部58の上壁56を介してフード14とは反対側にはアクチュエータ70が配置されている。アクチュエータ70はシリンダ72を備えている。シリンダ72の内部には図示しないピストンが概ね車両12の上下方向に摺動可能に配置されている。また、シリンダ72の下端部にはガスジェネレータやガスボンベ等のガス供給手段が設けられており、ガス発生手段が作動するとシリンダ72の内部にガスが供給され、短時間でピストンよりも下側でシリンダ72の内圧が上昇する。これにより、シリンダ72内のピストンが上昇するようになっている。
【0032】
シリンダ72内のピストンには、図3や図4に示されるロッド74の下端が一体的に連結されている。ロッド74は長手方向がシリンダ72内におけるピストンの摺動方向とされており、その上端にはシリンダ72の上側に設けられた押圧部材76に一体的に連結されている。押圧部材76はピストンの摺動方向に沿った中間部よりも先端側(シリンダ72とは反対側)が略半球形状とされており、ピストンの摺動方向に沿った押圧部材76の中心線周りの押圧部材76の外周長は、押圧部材76の中間部よりも先端側へ向けて漸次短く(すなわち、先細)となっている。押圧部材76はアクチュエータ被覆部58の内側で上壁56に対向しており、シリンダ72内のピストンの上昇により押圧部材76が上壁56を下方から押圧する。
【0033】
図1に示されるように、押圧部材76に対向した上壁56には連結部(ヒンジ)82が形成されている。図6に示されるように、連結部82は上壁56の外周形状に沿った矩形状に形成されており、この連結部82が形成された部分では上壁56の肉厚が上壁56の他の部分よりも薄肉とされている。また、上壁56には破断部84が形成されている。破断部84は連結部82の形状を矩形とみなした場合にこの矩形の対角線上に形成されている。
【0034】
破断部84が形成された部分の上壁56の肉厚は連結部82が形成された部分での上壁56の肉厚よりも更に薄肉とされ、このため、連結部82よりも破断部84の方で機械的強度が小さくなっている。また、連結部82の形状は矩形であることから、上壁56には破断部84が2本形成され、双方の破断部84は連結部82の略中央部にて互いに交差している。この一方の破断部84と他方の破断部84との交差部分は破断起点部88とされ、破断部84が形成された部分において上壁56の肉厚が最も薄い部位とされている。
【0035】
上壁56において破断起点部88と連結部82の角部を結ぶことで形成される三角形に囲まれた部分は変形部90とされており、破断部84が破断した状態では変形部90の外周形状である三角形の一辺を構成する連結部82を中心に変形部90は回動するように変形できる。また、上記の押圧部材76はその先端が破断起点部88と対向しており、シリンダ72内のピストンが上昇すると、押圧部材76は先ず破断起点部88にて上壁56に接することになる。
【0036】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0037】
以上の構成の本車両用ポップアップフード装置10を搭載した車両12では、車両12に搭載されたECU等の制御手段から出力された作動信号がアクチュエータ70に入力されると、アクチュエータ70を構成するガス発生手段からシリンダ72の内部へガスが供給される。このようにガスが供給されることでピストンよりも下側でシリンダ72の内圧が上昇すると、ピストンがシリンダ72内を上昇する。ピストンが上昇することでロッド74を介してピストンに連結された押圧部材76が上昇する。
【0038】
上昇した押圧部材76はアクチュエータ被覆部58の上壁56において先ず破断起点部88に下方から接して上壁56を押圧する。ここで、押圧部材76は先端側が半球形状であるので、押圧部材76を円柱形状にした場合に比べて押圧部材76の先端と上壁56との接触面積は極めて小さい。これにより、押圧部材76が上壁56に付与する押圧力は破断起点部88に集中する。
【0039】
上壁56において破断部84が形成された部位は、連結部82が形成された部位よりも肉厚が薄く、しかも、破断起点部88とされた部位では最も上壁56の肉厚が薄いので、破断起点部88に上壁56からの押圧力が集中することで、先ず、破断起点部88において破断が生じる。このように、破断起点部88に破断が生じた状態で更に押圧部材76が上壁56を押圧すると、破断部84の破断起点部88の側から連結部82の角部の側へ向けて破断部84に漸次破断が生じ、各変形部90は破断起点部88の側から漸次フード14の側へ湾曲するように変形する(図3参照)。
【0040】
この状態で更に押圧部材76が上壁56を押圧し、この押圧力で連結部82の角部まで破断部84の破断が達すると、それまで破断部84を介して繋がっていた変形部90が互いに分離し、この状態で連結部82を中心に変形部90が回動するように変形する。これにより、上壁56に矩形の孔が形成され、押圧部材76はこの孔を通過してフード14に更に接近する。このようにしてフード14に接近した押圧部材76は、フード14のインナパネル18に直接当接してインナパネル18、ひいてはフード14を下方から押圧してフード14を押し上げる。これにより、フード14は車両12の前端側での車体との連結部分、例えば、フード14によるエンジンルーム36の閉止状態を維持するロック機構を中心に後端側が上昇するように回動する。
【0041】
このようにフード14が上昇することで、エンジンルーム36内のエンジン等の各種装置や部材と、フード14との間に充分なスペース(エネルギー吸収ストローク)を確保できる。
【0042】
ここで、本車両用ポップアップフード装置10では、アクチュエータ被覆部58がシリンダ72の上側からシリンダ72を覆っているため、車両12の外部からフード14の裏面側に入り込んだ雨水や洗車した際の水、更には、埃等の異物がシリンダ72の上端部からシリンダ72の内側へ入り込むことを防止又は極めて効果的に抑制できる。
【0043】
しかも、アクチュエータ被覆部58をカウルルーバ50に対して上方へ突出するように形成され、更に、アクチュエータ被覆部58を構成する周壁54の内側にアクチュエータ70のシリンダ72の上端側が入り込んでいる。このため、カウルルーバ50を伝って流れる水がシリンダ72に被ることを更に効果的に防止又は抑制できる。
【0044】
また、上記のように上昇した押圧部材76及びロッド74は、アクチュエータ被覆部58の上壁56(すなわち、カウルルーバ50)を貫通するので、フード14と押圧部材76との間にカウルルーバ50が介在しない。このため、例えば、図5に示されるように、フード14の上昇後にフード14の上方から所定の大きさ以上の荷重がフード14に作用した場合には、押圧部材76がカウルルーバ50の影響を受けることなくフード14に沿って押圧部材76が後方に滑ることができ、このように押圧部材76が後方に滑りながらロッド74が円滑に曲げ変形させられて、上記の荷重を効率よく吸収できる。
【0045】
さらに、アクチュエータ70が作動してシリンダ72内のピストンが上昇した際の上昇力は、破断起点部88を含む破断部84を破断して変形部90を回動させるために供されるが、カウルルーバ50の全体に比べると変形部90は充分に小さく、また、破断部84では上壁56の他の部分(すなわち、アクチュエータ被覆部58で、ひいてはカウルルーバ50全体)に比べて機械的強度も低いので、破断部84を破断させるために要する力や変形部90が回動するように変形部90を回動させるために要する力は、カウルルーバ50全体を上方へ押し上げるのに要する力に比べて充分に小さい。このため、シリンダ72内のピストンの上昇力のうちフード14の上昇に供される力を充分に残すことができ、効率よくフード14を上昇させることができる。
【0046】
しかも、押圧部材76の通過が可能な孔が上壁56に形成された状態でも、変形部90は連結部82を介して上壁56に繋がっており、変形部90が上壁56から完全に分離してはいない。このため、変形部90が押圧部材76とインナパネル18(フード14)との間に挟み込まれることはなく、押圧部材76がインナパネル18(フード14)を直接押し上げることができ、シリンダ72内のピストンの上昇力を効率よくフード14に伝えることができる。
【0047】
さらに、アクチュエータ被覆部58はカウルルーバ50の一部として形成されているので、実質的に部品点数は増加せず、また、カウルルーバ50を成形するにあたりアクチュエータ被覆部58も形成できるので部品コストが大きく増加することはない。しかも、カウルルーバ50を組み付ければアクチュエータ被覆部58の組み付けもできるので作業工数も大幅に増えることがない。
【0048】
なお、本実施の形態では、押圧部材76の先端側を半球形状としたが、押圧部材76の先端側は外周形状が先端側へ向けて漸次小さくなる先細状になればよい。したがって、押圧部材76の形状を図7に示されるような円錐形状や図8に示されるような先端が半球形状の円錐状としてもよい。
【0049】
また、本実施の形態では、シリンダ72(アクチュエータ70)を上方から覆うアクチュエータ被覆部58をカウルルーバ50の一部として構成したが、本発明がこのような構成に限定されるものではない。その一例を図9に示す。図9に示される構成では、アクチュエータ被覆部58に代わり被覆手段としての被覆部材102を備えている。被覆部材102はカウルルーバ50(図9では図示省略)とは別体で構成されている。また、被覆部材102は内径寸法がシリンダ72の外径寸法に略等しく、シリンダ72の上端部近傍でシリンダ72に嵌め込まれてシリンダ72に固定される円筒形状の周壁104を備えている。周壁104の上端部には上壁56に対応する円板状の底壁108が設けられており、底壁108により周壁104の上端部が閉止されている。
【0050】
底壁108には連結部82に対応した多角形(好ましくは正多角形)状の連結部(ヒンジ)110が形成されている。この連結部110の角部には破断部84に対応する破断部112が形成されている。破断部112の他端は連結部110の中心を介して破断部112の一端が位置する連結部110の角部とは反対側の連結部110の角部に繋がっている。これらの破断部112は連結部110の中央で交わっており、この破断部112の交差部分が破断起点部88に対応する破断起点部114とされている。
【0051】
連結部110と破断部112に囲まれた三角形状の部分は変形部90に対応する変形部116とされ、上昇する押圧部材76に底壁108が押圧されると、破断起点部114を含む破断部112にて破断部84と同様に破断が生じ、変形部116が変形部90と同様に回動するように変形する。このような構成とした場合には、カウルルーバ50の位置に関係なくアクチュエータ70を配置できるという利点がある。
【0052】
なお、上記の各実施の形態は、押圧部材76がフード14に直接当接してフード14を押し上げる構成であったが、フード14を直接押圧する態様としては、フード14そのものを直接押圧する態様の他に、フード14に一体的に結合された部材を押圧部材76が押圧する態様(すなわち、部材の構成としては別であっても、一体的に結合されていることで実質的にフード14の一部とみなせる部材を押圧部材76が押圧する態様)も含まれる。したがって、例えば、フード14のヒンジを構成して先端がインナパネル18に固定されるヒンジアームを押圧部材により押し上げる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両用ポップアップフード装置を適用した車両の要部を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る車両用ポップアップフード装置を適用した車両の要部を概略的に示す側面図である。
【図3】押圧部材が被覆手段の破断を開始した状態を示す図1に対応した斜視図である。
【図4】押圧部材が被覆手段を通過してフードを押し上げた状態を示す図1に対応した斜視図である。
【図5】押圧部材が後方に滑ってロッドが曲げ塑性変形した状態を示す図2に対応した側面図である。
【図6】被覆手段を裏面側からみた断面図である。
【図7】押圧部材の変形例を示す図1に対応した斜視図である。
【図8】押圧部材の他の変形例を示す図1に対応した斜視図である。
【図9】被覆手段の変形例を示す斜視図である。す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
10 車両用ポップアップフード装置
12 車両
14 フード
36 エンジンルーム
50 カウルルーバ
54 周壁(被覆部本体)
56 底壁(被覆部本体)
58 アクチュエータ被覆部(被覆手段)
70 アクチュエータ
76 押圧部材
82 連結部
84 破断部
90 変形部
102 被覆部材(被覆手段)
104 周壁(被覆部本体)
108 底壁(被覆部本体)
110 連結部
112 破断部
116 変形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動することで上昇する押圧部材を有し、車両のエンジンルームを上方から閉止するフードの下側に配置され、上昇する前記押圧部材で前記フードを上方へ押圧して前記フードを上昇させるアクチュエータと、
前記アクチュエータを上方から覆うと共に上昇する前記押圧部材により破断される被覆手段と、
を備え、前記アクチュエータは前記押圧部材で前記被覆手段を破断して前記フードを直接押圧する、
ことを特徴とする車両用ポップアップフード装置。
【請求項2】
前記エンジンルームを構成する前記車体に取り付けられたカウルルーバに前記被覆手段を形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項3】
開口した下端が前記カウルルーバに繋がった筒状の周壁と、
前記周壁の上端を閉塞するように前記周壁の上端に形成された上壁と、
を含めて前記被覆手段を構成し、上昇する前記押圧部材が前記上壁を破断する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項4】
前記アクチュエータの近傍に設けられた被覆部本体と、
前記アクチュエータが前記被覆手段を押圧する際の押圧方向に沿って前記アクチュエータに対向して前記被覆部本体に部分的に形成された変形部と、
前記変形部の外周一部と前記被覆部本体との境に形成され、前記被覆部本体及び前記変形部よりも機械的強度が弱い連結部と、
前記変形部の外周部のうち前記連結部が設定された部分とは別の部分と前記被覆部本体との間に設けられ、前記連結部よりも機械的強度が弱く、前記アクチュエータからの押圧力で破断する破断部と、
を含めて前記被覆手段を構成し、前記アクチュエータからの押圧力で前記破断部が破断されつつ前記連結部を軸に前記変形部が回動する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項5】
前記押圧部材を前記フードの側へ向けて漸次先細に形成すると共に、前記押圧部材の先端を前記破断部に対向させることを特徴とする請求項4に記載の車両用ポップアップフード装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−179112(P2009−179112A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18110(P2008−18110)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】