説明

車両用位置検出装置

【課題】車両の走行中において、車両用位置検出装置の消費電力を低減する。
【解決手段】本発明の車両用位置検出装置は、GPS受信装置により受信したGPS信号と自律センサから出力されるセンサ信号とに基づいて車両の位置を検出するように構成されたものにおいて、前記GPS受信装置により受信したGPS信号に基づいて検出した車両位置を用いて前記自律センサの補正を行うセンサ補正手段を備え、前記自律センサの補正を完了したときに、前記GPS受信装置への電源供給を停止し、この電源供給停止後、車両の走行距離が設定距離に達したときに、前記GPS受信装置への電源供給を開始する電源制御手段を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS受信装置により受信したGPS信号に基づいて車両の位置を検出する車両用位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載された車載電気機器の消費電力を低減する装置がいろいろ考えられている。例えば、特許文献1に記載された装置では、車両のエンジンがアイドリング中であるか、または、車両の停止中に、車載電気機器への電源供給を制御することにより、消費電力を低減している。また、特許文献2に記載された装置では、車両の速度が設定速度を下回ると、車載電気機器の消費電力を低下させる制御を実行するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−263102号公報
【特許文献2】特許第4011374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記各特許文献に記載された構成の場合、車両の走行中(設定速度以上で走行中)は、消費電力を低下させる制御が実行されないため、例えば車両の長距離連続走行時には、消費電力を低減できないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、車両の走行中においても、消費電力を低減することができる車両用位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明によれば、GPS受信装置により受信したGPS信号に基づいて検出した車両位置を用いて自律センサの補正を行うセンサ補正手段を備え、前記自律センサの補正を完了したときに、前記GPS受信装置への電源供給を停止し、この電源供給停止後、車両の走行距離が設定距離に達したときに、前記GPS受信装置への電源供給を開始する電源制御手段を備えたので、車両の走行中に基本的に前記GPS受信装置への電源供給を停止し、前記自律センサを補正するときに、前記GPS受信装置への電源供給を再開する構成となるから、車両の走行中においても、消費電力を低減することができる。
【0007】
また、請求項2の発明のように、前記電源制御手段は、前記GPS受信装置への電源供給を停止した後、車両の停止状態またはエンジンのアイドリング状態を検出したときに、前記GPS受信装置への電源供給を開始するように構成することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用位置検出装置のブロック図
【図2】車両用位置検出装置の制御のフローチャート
【図3】自車位置計測処理と自律センサ補正処理のフローチャート
【図4】車両の停止判断処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図1ないし図4を参照して説明する。まず、図1は、本実施形態の車両用位置検出装置の概略構成を示すブロック図である。この図1に示すように、車両用位置検出装置1は、アンテナ2と、GPS信号受信部3と、GPS信号デコード部4と、通信部5と、車載機6と、車両LAN7と、電源制御部8と、自律センサ9と、自律センサ補正部10と、自車位置計測部11と、車両信号計測部12とを備えて構成されている。
【0010】
GPS信号受信部3は、アンテナ2を介してGPS信号を受信する。GPS信号デコード部4は、GPS信号受信部3により受信したGPS信号をデコードし、デコードした結果(デコードデータ)を通信部5を通して車載機6へ送信する。GPS信号受信部3とGPS信号デコード部4とからGPS受信装置が構成される。
【0011】
車載機6は、例えばディスプレイ装置、カーナビゲーション装置、車両制御装置などを備えて構成されている。車載機6は、自律センサ9から出力されるセンサ信号に基づいて車両の現在位置(自車位置)を計測する機能を有する。自律センサ9は、例えばジャイロセンサと、加速度センサとを備えて構成されている。
【0012】
また、車載機6は、上記GPS信号のデコード結果に基づいて自律センサ9の補正を行う。具体的には、車載機6は、GPS信号のデコード結果を自車位置計測部11へ与え、自車位置計測部11は、上記GPS信号のデコード結果を用いて車両の現在位置を計測し、計測した車両の現在位置を車載機6へ与える。車載機6は、上記GPS信号を用いて計測した車両の現在位置を自律センサ補正部10へ与え、自律センサ補正部10は、自律センサ9の補正を行う、例えば自律センサ9から出力されるセンサ信号を補正する。そして、自律センサ補正部10は、自律センサ9の補正処理を完了すると、補正完了信号を車載機6へ与える。この場合、車載機6と自律センサ補正部10とからセンサ補正手段が構成されている。
【0013】
車載機6は、自律センサ補正部10から自律センサ9の補正完了信号を受けると、電源制御部8を介してGPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を停止する。この電源供給停止制御については、詳しくは後述する。この場合、車載機6と電源制御部8とから電源制御手段が構成されている。
【0014】
また、車載機6は、車両LAN7を介して車両に搭載された各種のECUや各種のスイッチや各種のセンサから出力された種々の車両信号を受信するように構成されている。上記車両信号としては、車両の速度(車速)信号、パーキングブレーキのオンオフ信号、エンジンの回転数を示す回転数信号などの信号が含まれている。
【0015】
そして、車載機6は、上記車両信号を車両信号計測部12へ与える。車両信号計測部12は、上記車両信号を用いて、例えば、車速が0であるか、パーキングブレーキが作動(オン)しているか、エンジンが停止状態であるかによって、車両の停止状態を判断し、また、エンジンの回転数が設定値以下であるかによって、エンジンのアイドリング状態を判断し、各判断結果を車載機6に与える。そして、車両信号計測部12は、車速、パーキングブレーキの非作動(オフ)、エンジンの回転数などによって、車両が走行中であること(走行状態)を判断し、走行状態であると判断した場合には、車速に基づいて車両の走行距離を計測し、計測した走行距離が設定距離に達したか否かを判断し、その判断結果を車載機6に与える。
【0016】
車載機6は、車両信号計測部12により計測した走行距離が設定距離に達したことを示す信号を車両信号計測部12から受けると、電源制御部8を介してGPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を開始し、前述した自律センサ補正処理を実行する。この電源供給制御については、詳しくは後述する。
【0017】
尚、車載機6は、周知構成のカーナビゲーション装置としての機能、即ち、操作スイッチ群(図示しない)により目的地の位置が入力されると、現在位置からその目的地までの最適な経路を自動的に選択して誘導経路を形成して表示装置(図示しない)に表示する機能、いわゆる経路案内機能を備えている。車載機6は、表示装置の画面に、計測された車両の現在位置を示す車両現在位置マークと、データ入力器(図示しない)より入力された地図データと、地図上に表示する誘導経路や設定地点の目印等の付加データとを重ねて表示する。また、車載機6は、表示装置の画面に、複数の選択肢を表示するメニュー画面やその中の選択肢を選んだ場合に、さらに複数の選択肢を表示するコマンド入力画面なども表示する。更に、車載機6は、例えば携帯電話機等の移動体通信機によって構成される通信装置(図示しない)を介して外部の情報センタや外部の連絡先などと通信を行う機能を備えている。
【0018】
次に、上記構成の動作について、図2ないし図4のフローチャートを参照して説明する。まず、車両用位置検出装置1の電源がオンされると、図2のステップS10へ進み、車載機6は、電源制御部8を介してGPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を開始して、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4の動作(即ち、GPS受信装置の動作)を開始させる。この場合、GPS信号受信部3はアンテナ2を介してGPS信号を受信し、GPS信号デコード部4は上記GPS信号受信部3により受信したGPS信号をデコードし、このデコードした結果(デコードデータ)を車載機6へ与える。
【0019】
続いて、ステップS20へ進み、ここでは、上記GPS信号のデコード結果を用いて車両の現在位置(自車位置)を計測する処理と、計測した車両の現在位置を用いて自律センサ9を補正する処理とを実行する。これら2つの処理について、図3に示すサブルーチンのフローチャートを参照して説明する。まず、図3のステップS100においては、車載機6は、GPS信号のデコード結果を自車位置計測部11へ与え、自車位置計測部11は、上記GPS信号のデコード結果を用いて車両の現在位置を計測する。続いて、ステップS110へ進み、自車位置計測部11は上記計測した車両の現在位置を車載機6へ与え、車載機6は自車位置計測完了のフラグをセット(オン)する。
【0020】
次いで、ステップS120へ進み、車載機6は上記計測した車両の現在位置を自律センサ補正部10へ与え、自律センサ補正部10は自律センサ9の補正を実行する。そして、ステップS130へ進み、自律センサ補正部10は自律センサ9の補正完了通知を車載機6へ与え、車載機6は自律センサ補正完了のフラグをセット(オン)する。これにて、図3のサブルーチンをリターンし、図2のステップS30へ進む。
【0021】
このステップS30においては、自車位置計測処理と自律センサ補正処理を完了したか否かを、各完了フラグによって判断する。ここで、完了していない場合には、「NO」へ進み、ステップS20へ戻る。上記ステップS30において、自車位置計測と自律センサ補正が完了しているときには、「YES」へ進み、ステップS40へ進む。このステップS40では、車載機6は、電源制御部8を介してGPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を停止して、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4(即ち、GPS受信装置)の動作を停止させ、消費電力を低減する。続いて、ステップS50へ進み、車両の走行距離をリセット(ゼロクリア)する。
【0022】
次いで、ステップS60へ進み、車両の停止判断の処理を実行する。この処理について、図4に示すサブルーチンのフローチャートを参照して説明する。まず、図4のステップS210においては、車速が0であるか、または、パーキングブレーキが作動(オン)しているかを判断する。ここで、車速が0である、または、パーキングブレーキが作動(オン)しているときには、車両が停止状態であると判断し、「YES」へ進み、ステップS240へ進み、車両の停止フラグをオンする。
【0023】
一方、ステップS210において、車速が0でなく、且つ、パーキングブレーキが作動(オン)していないときには、車両が停止状態でないと判断し、「NO」へ進み、ステップS220へ進む。このステップS220では、エンジンの回転数が設定値以下であるか否かを判断する。ここで、エンジンの回転数が設定値以下であるときには、エンジンがアイドリング状態であると判断し、「YES」へ進み、ステップS240へ進み、車両の停止フラグをオンする。一方、ステップS220において、エンジンの回転数が設定値以下でないときには、エンジンがアイドリング状態でない(且つ車両が停止状態でない)と判断し、「NO」へ進み、ステップS230へ進み、車両の停止フラグをオフする。これにて、図4のサブルーチンをリターンし、図2のステップS70へ進む。
【0024】
このステップS70においては、車両が停止状態であるか、または、エンジンがアイドリング状態であるか否かを、上記車両の停止フラグによって判断する。ここで、車両が停止状態でない、且つ、エンジンがアイドリング状態でないとき(即ち、車両が走行中であるとき)には、「NO」へ進み、ステップS80へ進む。このステップS80においては、車速に基づいて車両の走行距離を積算(計測)する。続いて、ステップS90へ進み、計測した車両の走行距離が予め決められた設定距離に達したか否かを判断する。ここで、走行距離が設定距離に達していないときには、「NO」へ進み、ステップS40へ戻り、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を停止させたまま、前述した処理を繰り返す。
【0025】
一方、上記ステップS90において、走行距離が設定距離に達したときには、「YES」へ進み、ステップS10へ戻り、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を開始して、前述した処理を繰り返す。
【0026】
また、上記ステップS70において、車両が停止状態である、または、エンジンがアイドリング状態であるときには、「YES」へ進み、ステップS10へ戻り、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を開始して、前述した処理を繰り返す。
【0027】
上記した構成の本実施形態によれば、車両の走行中は、基本的に、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を停止しておき、必要なとき、即ち、車両の走行距離が設定距離に達したときに、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を再開するように構成したので、車両用位置検出装置1の消費電力を低減することができる。
【0028】
また、上記実施形態では、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を停止した後、車両の停止状態またはエンジンのアイドリング状態を検出したときに、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を開始するように構成したので、車両の停止状態またはエンジンのアイドリング状態のときに、自律センサ9の補正を確実に実行することができる。この場合、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を停止した後、車両の停止状態またはエンジンのアイドリング状態を検出したときには、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給(自律センサ9の補正)は、1回だけ実行し、その後、車両の停止状態またはエンジンのアイドリング状態が継続しているときには、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を停止させておくように構成することが好ましい。
【0029】
また、上記実施形態では、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を停止した後、車両の停止状態またはエンジンのアイドリング状態を検出したときに、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を開始するように構成したが、これに代えて、車両の停止状態またはエンジンのアイドリング状態を検出したときに、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を開始する処理を省略する(具体的には、図2のステップS70を省く)ように構成しても良い。
【0030】
また、上記実施形態では、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を停止した後、車両の停止状態またはエンジンのアイドリング状態が検出されたときに、直ちにGPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を開始する(図2のステップS10参照)ように構成したが、これに代えて、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を停止した後、車両の停止状態またはエンジンのアイドリング状態が検出されたときには、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給の停止を継続し、その後、車両が再び走行開始した時点で(即ち、車両の走行再開を検出した直後に)、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を開始するように構成しても良い。
【0031】
また、上記実施形態では、車両の走行中は、基本的に、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を停止しておき、車両の走行距離が設定距離に達したときだけ、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を再開して、自律センサ9を補正し、補正後は、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を停止しておくように構成したが、この制御に加えて、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を停止した後、設定時間が経過したら、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を再開して、自律センサ9を補正し、補正後は、GPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給を停止しておく制御(即ち、設定時間間隔毎にGPS信号受信部3およびGPS信号デコード部4への電源供給(自律センサ9の補正)を行う制御)を平行的に実行するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0032】
図面中、1は車両用位置検出装置、3はGPS信号受信部、4はGPS信号デコード部、6は車載機、7は車両LAN、8は電源制御部、9は自律センサ、10は自律センサ補正部、11は自車位置計測部、12は車両信号計測部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS受信装置により受信したGPS信号と自律センサから出力されるセンサ信号とに基づいて車両の位置を検出するように構成された車両用位置検出装置において、
前記GPS受信装置により受信したGPS信号に基づいて検出した車両位置を用いて前記自律センサの補正を行うセンサ補正手段と、
前記自律センサの補正を完了したときに、前記GPS受信装置への電源供給を停止し、この電源供給停止後、車両の走行距離が設定距離に達したときに、前記GPS受信装置への電源供給を開始する電源制御手段とを備えたことを特徴とする車両用位置検出装置。
【請求項2】
前記電源制御手段は、前記GPS受信装置への電源供給を停止した後、車両の停止状態またはエンジンのアイドリング状態を検出したときに、前記GPS受信装置への電源供給を開始することを特徴とする請求項1記載の車両用位置検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−63261(P2012−63261A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207916(P2010−207916)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】