説明

車両用内装品

【課題】装飾シート表面にハイライトが出来ず、意匠性が高いのみならず、触感も良好な車両用内装品を提供する。
【解決手段】装飾シート30を貼り付ける際、第1基部11の表面とクッション部材20の表面及び装飾シート30には、境界部13を中心に接着剤の塗布されていない非接着部Rが形成されているため、第1基部11の表面とクッション部材20の表面との段差にほぼ接触しない状態で装飾シート30を貼ることが出来る。それ故、装飾シート30表面のハイライト発生を防止でき、意匠性が高い車両用内装品を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のインストルメントパネルやコンソールボックス等の車両用内装品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インストルメントパネル等の車両用内装品において、樹脂製のパネル基板と、表皮と、それらの間に形成された発泡樹脂等によりなる中間層とにより形成されたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、質感や高級感等を向上させるために、内装パネルの表皮の表面の一部に、表皮とは色や質感の異なった皮革等よりなる装飾シートを貼り付け、パネル基板と表皮の端部との間、及び上下位置に配置された表皮間に重ね合わせ部が形成され、これらの重ね合わせ部内に装飾シートの端縁が挟入されて接着固定させた車両の内装パネルが開示されている。
【0004】
質感や高級感等が特に重要視される高級車種においては、内装品全体に皮革等の装飾シートを貼り付け、見栄えがよく意匠性の高い内装品が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−225391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、クッション部材304の寸法にばらつきの発生しやすい車両用内装品301の場合、図6に示すように、装飾シート305を車両用内装品301全体に貼り付けると、クッション部材304の寸法ばらつきにより、基部本体部302と、クッション部材304の境界において、基部本体部302の表面とクッション部材304の表面との高さが面一とならず、段差が形成されてしまい、装飾シート305上には、硬質樹脂からなる基部本体部302と、発泡樹脂よりなるクッション部材304との間の段差にあたる部分に、他の部分よりもコントラストが明るく、まるで線が走っているように見えるハイライトHと呼ばれる現象が起きる。
【0007】
そこで、本願では、クッション部材に寸法ばらつきが発生しやすい車両用内装品において、装飾シートを車両用内装品全体に張設した際、基部本体部と、発泡樹脂よりなるクッション部材との間に段差が発生しても、装飾シート上にハイライトが出来ず、装飾シート表面の見栄えがよく、意匠性が高い車両用内装品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、第1基部と、第2基部とからなる基部本体部と、前記第2基部の表面に設けられるクッション部材と、前記第1基部の表面と、前記クッション部材の表面とに跨って接着された装飾シートとからなる車両用内装品であって、前記クッション部材と、前記第1基部との間には境界部を有し、前記装飾シートは、少なくとも前記境界部を中心に前記第1基部表面及び前記クッション部材表面と、前記装飾シートとの間に非接着部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の車両用内装品は、第1基部の表面とクッション部材の表面とに跨って接着される装飾シートと、境界部との間に非接着部を有している。クッション部材の寸法にばらつきが生じると、この境界部にクッション部材表面と、第1基部表面との高さが異なることにより、段差が形成されてしまう。しかし、ハイライトの発生する境界部において、装飾シートを接着させない状態で貼り付けることにより、クッション部材表面と、第1基部表面との段差に空間を形成するように非接着部が段差をカバーするため、ハイライトの発生を防止することができ、見栄えがよく、意匠性が高い車両用内装品を提供することが出来る。
【0010】
さらに、請求項2に記載の発明においては、非接着部が、前記境界部を中心に前記第1基部表面と、前記クッション部材表面とに渡って4〜8mmに渡って設けられていることを特徴とする。非接着部が境界部を中心に全長4〜8mmの幅で設けられていることにより、境界部において発生した段差を吸収しつつ、接着剤層と、非接着部とがなだらかな斜面形状となり、ハイライトの発生を防止しつつ、滑らかな意匠面とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例であるインストルメントパネルの要部拡大図である。
【図2】装飾シート貼り付け前の図1のA−A断面図である。
【図3】装飾シート貼り付け後の図1のA−A断面図である。
【図4】本発明の第2実施例であるコンソールボックスリッドの斜視図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】従来の車両用内装品であるインストルメントパネルの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の第1実施例に係る車両用内装品1の斜視図である。車両用内装品1は、インストルメントパネルであり、全体が装飾シート30により覆われている。図2は、装飾シート貼り付け前の図1のA−A断面図である。図3は、装飾シート貼り付け後の図1のA−A断面図である。図3に示すように、車両用内装品1は、硬質の樹脂よりなる基部本体部10と、発泡樹脂よりなるクッション部材20と、皮革よりなる装飾シート30により構成されている。
【0014】
基部本体部10は第1基部11と第2基部15とからなり、クッション部材20は、第2基部15上に設けられる。第2基部15の高さは、第1基部11の高さよりも低くなっている。そのため、クッション部材20を貼り付けた時に、クッション部材20の表面と、第1基部11の表面との高さが著しく異ならないようにすることが出来る。本発明中の表面とは、乗員側である意匠面を指し、裏面は非意匠面側を指す。この境界部13は、車両用内装品1の長手方向に連続して設けられている。
【0015】
クッション部材20は、発泡ウレタン製であり、クッション部材20の表面に装飾シート30を貼り付けた状態で乗員が手を触れた場合に良好な触感を得ることが出来る。このクッション部材20は、第2基部15へ貼り付けられる。図2に示すように、クッション部材20の寸法ばらつきにより、第1基部11の表面より0.05mm〜0.3mmほど高くなってしまうことがある。すると、クッション部材20表面と、第1基部11表面との間の境界部13において段差が発生する。しかし、段差ができてしまう境界部13において、装飾シート30を接着させない状態で張設して貼り付けることにより、非接着部Rにおいて、装飾シート30は、段差に追従しない状態で存在する。そのため、装飾シート30がクッション部材20表面と、第1基部11表面との間の境界部13に発生する段差に空間を形成するように非接着部が段差をカバーするため、ハイライトの発生を防止することが出来る。
【0016】
基部本体部10及びクッション部材20と、装飾シート30との間には、少なくとも境界部13に沿って非接着部Rが存在する。非接着部Rは、境界部13を中心に第1基部11の表面と、クッション部材20の表面とに渡って設けられていることが好ましい。さらに好ましくは、非接着部Rが、全長4mm〜8mmの幅で設けられているのがよい。8mmを超えて設けると、第1基部11とクッション部材20との接着が弱まるだけでなく、経年劣化により、装飾シート30がたるんだ場合、非接着部R部分にしわがよることがある。第1実施例では、境界部13を中心に第1基部11の表面に2mm、クッション部材20の表面に2mmずつ、計4mmに渡り非接着部である領域Rが設けられている。境界部13以外の領域には、接着剤層4が設けられており、装飾シート30と、第1基部11の表面及びクッション部材20の表面とを接着している。装飾シート30を、クッション部材20の表面及び第1基部11表面へ張設すると、境界部13において発生した段差を吸収しつつ、接着剤層4と、非接着部Rとがなだらかな斜面形状となり、ハイライトの発生を防止しつつ、滑らかな意匠面とすることが出来る。また、基部本体部10の形状によっては、装飾シート30を貼り付ける際、テンションをかけて貼り付け、クッション部材20の段差を第2基部15側へ押しつぶしてもよい。クッション部材20の段差を第2基部15側へ押しつぶすことにより、段差が小さくなって、より一層滑らかな意匠面とすることが出来る。
【0017】
クッション部材20は第1基部11の表面より0.05mm〜0.3 mm高くなってしまうことが多いが、装飾シート30の非接着部である領域Rがばらつきを良好に吸収することが出来、装飾シート30の表面上にハイライトが発生せず、車両用内装品1の意匠性を向上させることが出来る。
【0018】
次に、基部本体部10へ装飾シート30を貼り付ける工程について説明する。まず、基部本体部10の第2基部15へクッション部材20を貼り付ける。クッション部材20は、第2基部15と対向する面である裏面に粘着テープが貼られており、クッション部材20の端部と、第1基部11の端部とが接するように位置決めを行い、クッション部材20を第2基部15側に押圧することで基部本体部10とクッション部材20とを貼り付けることができる。
【0019】
基部本体部10の第2基部15へのクッション部材20の貼り付けは、接着剤によっておこなってもよい。その場合、クッション部材20の、第2基部15と対向する面である裏面と、第2基部15の表面とに接着剤を塗布し、クッション部材20を第2基部15側に押圧することで基部本体部10とクッション部材20とを貼り付けることができる。
【0020】
基部本体部10とクッション部材20とが貼り付けた後、境界部13に沿ってマスキングを行う。マスキングテープは、境界部13に貼り付けられる。マスキングテープは、境界部13を中心として、第1基部11とクッション部材20の双方をマスキングする。その後、第1基部11とクッション部材20の表面に接着剤を塗布し、マスキングテープをはがす。すると、境界部13を中心に、第1基部11とクッション部材20に非接着部である領域Rが形成される。この領域Rは、マスキングテープの幅と同等の幅を有する。好ましくは、4mm〜8mmの幅を有するマスキングテープを用いるのがよい。マスキングテープにより形成された非接着部Rは、車両用内装品1の長手方向に伸びて設けられている。その後、クッション部材20の表面及び第1基部11の表面と対向する面に接着剤が塗布された装飾シート30を張設した状態で貼り付ける。第1基部11と、クッション部材20と、装飾シート30とを接着する接着剤は、接着させたい面の双方に塗布されていないと接着させることが出来ない。その為、装飾シート30の全面に接着剤が塗布されていても、第1基部11とクッション部材20には、境界部13を中心に接着剤の塗布されていない非接着部である領域Rが形成されているため、装飾シート30は、境界部13付近の領域Rが接着されない状態で張設される。境界部13には、クッション部材20の表面と、第1基部11表面との高さが異なるために段差が発生している。しかし、境界部13付近の領域Rと、装飾シート30との間には、非接着部である領域Rができ、装飾シート30が引っ張られた状態で張設されていることにより、クッション部材20表面と、第1基部11表面の段差に空間を形成するように非接着部が段差をカバーするため、ハイライトの発生を防止し、意匠性の高い車両用内装品1を提供できる。
【実施例2】
【0021】
図4は、本発明の第2実施例に係る車両用内装品1の斜視図である。第2実施例の車両用内装品1はコンソールボックスのリッドである。以下、第1実施例と異なる部分につき説明する。図5は、図4のB−B断面を示す。図5に示すように、基部本体部10と、クッション部材20とが接触する面の一部が、斜面Sを形成している。この斜面Sを有している車両用内装品1の場合、斜面Sに合わせてクッション部材20を手加工でカットしなければならない。すると、クッション部材20は、カット時に寸法のばらつきが大きくなり、高さ方向にも、ばらつきが発生するため、ハイライトが発生しやすい。しかし、クッション部材20及び第1基部11の表面と装飾シート30との非接着部である領域Rが、境界部13において発生した段差を吸収しつつ、接着剤層と、非接着部とをなだらかな斜面形状とし、ハイライトの発生を防止するだけでなく、滑らかな意匠面とすることが出来る。そのため、特にクッション部材20の高さにばらつきの生じやすい車両用内装品1において、ハイライトが発生せず、見栄えのよい、車両用内装品1を提供できる。
【0022】
本発明は、インストルメントパネルやコンソールボックスのみに限られず、装飾シートを有する各種車両用内装品に適用することが出来る。
【0023】
本発明は、特にクッション部に寸法ばらつきの発生しやすい車両用内装品においてハイライト防止の効果を発揮する。クッション部の寸法ばらつきは、第1基部の表面よりも高くなる方向に発生した場合でも、低くなる方向へ発生した場合でも、効果的にハイライトの発生を防止するが、特に第1基部の表面よりも高くなる方向にばらつきが発生した場合に、そのばらつきを良好に吸収し、意匠性を向上させることができる。
【0024】
本発明は、立体形状であって、部分的に段差を有する車両用内装品においても適用することが出来る。
【符号の説明】
【0025】
1 車両用内装品
10 基部本体部
11 第1基部
13 境界部
15 第2基部
20 クッション部材
30 装飾シート
4 接着剤層
R 非接着部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基部と、第2基部とからなる基部本体部と、前記第2基部の表面に設けられるクッション部材と、前記第1基部の表面と、前記クッション部材の表面とに跨って接着された装飾シートとからなる車両用内装品であって、前記クッション部材と、前記第1基部との間には境界部を有し、前記装飾シートは、少なくとも前記境界部を中心に前記第1基部表面及び前記クッション部材表面と、前記装飾シートとの間に非接着部を有していることを特徴とする車両用内装品。
【請求項2】
前記非接着部は、前記境界部を中心に前記第1基部表面及び前記クッション部材表面に全長4〜8mmの幅で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−71740(P2012−71740A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218959(P2010−218959)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】