説明

車両用内装部品の取付構造

【課題】内装部品の位置合わせの際に、クリップのマグネットが車体パネルに吸着するのを回避する。
【解決手段】ルーフトリム10をルーフパネル1の内面側に宛がうと、クリップ20の突出部23が補強パネル2面に先き当りしてマグネット22が補強パネル2面に吸着するのが阻止される。取り付け押圧力により前記突出部23は補強パネル2に対して上方へ変位してマグネット22の補強パネル2への吸着が許容され、マグネット22が補強パネル2面に磁性吸着することによってルーフトリム10が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はルーフトリム,ドアトリム等の各種内装材や、該トリムと共に車体パネルに固定される各種室内機能部品等の車両用内装部品の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ルーフトリム等の車両用内装材は、周知のように樹脂クリップとビス等の締結部材を併用して車体パネルに取り付けられるが、中でも、例えば特許文献1に示されているようにルーフトリムを部分的に磁石組立体を用いて車体パネルに磁性的に吸着固定するようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−136597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ルーフトリムをルーフ内面に沿って配設する際には、ルーフトリム周縁とルーフ内周縁との整合性を高めるために、該ルーフトリムを車体パネルに摺り合せるようにして正確に位置合わせをしながら取り付ける必要がある。
【0005】
ところが、前記特許文献1のようにルーフトリムの背面に磁石組立体が設けられていると、この位置合わせを行っている時に磁石が車体パネルに吸着して、ルーフトリムの位置合わせ作業を円滑に行えなくなる不具合を生じる。
【0006】
そこで、本発明はマグネット吸着タイプのクリップを用いて内装部品を車体パネルに取り付ける場合に、該内装部品の位置合わせの最中にマグネットが不用意に車体パネルに吸着するのを回避して、この位置合わせ作業を円滑に行え、前記内装部品を正確に位置合わせを行った上で、該クリップにより車体パネルに確実に吸着固定することができる車両用内装部品の取付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用内装部品の取付構造は、車体パネルに内装部品をクリップを介して取り付ける構造であって、前記クリップは、前記内装部品に固定されるベース部と、前記ベース部に取り付けられ、前記車体パネル面に吸着して前記内装部品を固定するマグネットと、前記ベース部に前記マグネットよりも車体パネル側に突出して設けられ、前記内装部品の取り付けの際に該車体パネルに先き当りし、かつ、取り付け押圧力により該車体パネルに対して変位して前記マグネットの車体パネル面への吸着を許容可能な突出部と、を備えたことを主要な特徴としている。
【0008】
前記内装部品の取り付けに際して、該内装部品を対応する車体パネルに宛がうと、前記クリップの突出部が車体パネル面に先き当りしてマグネットが車体パネルに吸着するのを阻止する。従って、内装部品の車体パネルに対する位置合わせ作業を自由に、かつ、円滑におこなわせることができる。前記内装部品の位置合わせを行った後、内装部品のクリップ配設相当部分を表面側から押圧もしくは叩打すると、その押圧力(叩打力)により前記突出部が車体パネルに対して変位し、マグネットが車体パネル面に吸着して内装部品が固定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内装部品の取り付けに際して、クリップの突出部が車体パネル面に先き当りするのでマグネットが車体パネル面に直ちに吸着して該内装部品の位置合わせ作業に支障を来すことがなく、この位置合わせ作業を自由、かつ、円滑に行うことができる。
【0010】
前記突出部は、内装部品の所要の取り付け押圧力(叩打力)に対しては、車体パネルに対して変位するため、この突出部の変位により前記マグネットが車体パネル面に吸着して、マグネット吸着タイプのクリップ本来の固定機能を発揮させることができて、前記内装部品の確実な固定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態における内装部品の取り付け途上と、取り付け後の状態を(A),(B)にて示す断面図。
【図2】本発明の第2実施形態における内装部品の取り付け途上と、取り付け後の状態を(A),(B)にて示す断面図。
【図3】本発明の第3実施形態における内装部品の取り付け途上と、取り付け後の状態を(A),(B)にて示す断面図。
【図4】本発明の第4実施形態における内装部品の取り付け途上と、取り付け後の状態を(A),(B)にて示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を内装部品としてルーフパネルの内面側に配設されるルーフトリムを例に採って図面と共に詳述する。
【0013】
図1は本発明の第1実施形態を示すもので、ルーフパネル1の内面側に配設されるルーフトリム10は、適宜の合成樹脂材をもって型成形されており、その背面の所要部位にはクリップ取付座11が設けられている。
【0014】
前記クリップ取付座11は、後述するクリップ20を差し込み係着する略コ字形断面のソケットタイプとして構成され、前記ルーフトリム10の背面との間にソケット口12を構成する座壁13には、該ソケット口12の開口側の端縁から中央部に亘ってクリップ係着溝14が形成されている。
【0015】
前記ルーフパネル1の内面側には、ルーフボウやルーフレール等のルーフ骨格部材、あるいは、サンルーフ仕様の車両にあっては、サンルーフユニット固定用のブラケット等の補強パネル2が設けられており、前記ルーフトリム10はこの補強パネル2にクリップ固定される。
【0016】
クリップ20は、前記ルーフトリム10の背面に固定される適宜の合成樹脂材からなるベース部21と、前記補強パネル2面に吸着してルーフトリム10を固定するマグネット22と、該マグネット22よりも補強パネル2側に突出して該補強パネル2に先き当りする突出部23と、を備えている。
【0017】
前記ベース部21はその周側面に環状溝24を備え、この環状溝24を前記クリップ取付座11の座壁13に形成されたクリップ係着溝14に差し込んで、該クリップ取付座11に係着固定されている。
【0018】
このベース部21の前記補強パネル2に対向した上面の中央部には軸部25が一体に突設されている。
【0019】
前記マグネット22は環状に形成されて、円盤トレイ状のスチールカバー22A上に固着されていて、該スチールカバー22Aの中央に設けられた貫通孔22aを前記軸部25に挿通,係着して前記ベース部21に取り付けられている。
【0020】
前記突出部23は、前述のようにマグネット22よりも補強パネル2側に突出して、ルーフトリム10の取り付けの際に該補強パネル2面に先き当りするが、ルーフトリム10のクリップ配設相当部を表面側から押圧もしくは叩打して所用の取り付け押圧力(叩打力)が作用すると、前記補強パネル2に対して変位して前記マグネット22の補強パネル2面への吸着を許容可能とする構造とされている。
【0021】
本実施形態では前記突出部23として、前記軸部25の先端側に一体成形されて、前記補強パネル2の所定部位に形成された位置決め用の穴3に嵌入可能な突起23Aと、この軸部25の突設基部側に前記マグネット22のスチールカバー22Aの下側から周側を囲繞して一体成形されたフランジ状部23Bと、を併用して構成されている。
【0022】
前記突起23Aは先端が前記穴3に進入し易いように半球状に形成されていると共に、先細のテーパ状に形成されている。この突起23Aは、先端が前記補強パネル2面に先き当りすることで前記マグネット22の該補強パネル2面への吸着を阻止し、ルーフトリム10の位置合わせにより該突起23Aが前記穴3に落ち込んで進入し、該補強パネル2に対して上方へ変位することで前記マグネット22の補強パネル2面への吸着を許容すると共に、該突起23Aのテーパ大径側が前記穴3に嵌合することでルーフトリム10の位置決めを行うロケートピンとして機能する。
【0023】
一方、前記フランジ状部23Bは上向きに凹となる弯曲したカップ形状に形成されていて、本実施形態では前記突起23Aよりも突出量が小さく設定され、前記突起23Aの前記穴3への進入に続いて先端がマグネット22よりも先きに補強パネル2面に当接し、前記ルーフトリム10の取り付け押圧力で撓んで拡径し、補強パネル2に対して上方へ変位することによりマグネット22の補強パネル2面への吸着を許容する。
【0024】
このフランジ状部23Bは前記マグネット22のスチールカバー22Aの下側周縁に当接し、該スチールカバー22Aはこのフランジ状部23Bと、前記軸部25の突起23Aとの連設部に設けられてスチールカバー22Aの貫通孔22aに係合する顎部25aとにより固定されている。
【0025】
以上の構成により、ルーフトリム10のルーフパネル1の内面側への装着に際しては、該ルーフパネル1に対してルーフトリム10を下側から宛がって、該ルーフトリム10を摺り合せるようにしてその位置合わせが行われる。
【0026】
このとき、前記突起23Aが補強パネル2に先き当りすることにより、前記マグネット22の補強パネル2面への吸着が阻止される。
【0027】
前記ルーフトリム10の位置合わせが適正に行われると、図1(A)に示すように前記クリップ20の突起23Aが補強パネル2の穴3に落ち込んで係合する。
【0028】
このようにしてルーフトリム10の位置合わせが終了した段階で、該ルーフトリム10の前記クリップ20を配設した部分を表面側から押圧し、もしくは叩打すると、その所要の取り付け押圧力(叩打力)により前記突起23Aが補強パネル3の穴3に進入して該補強パネル2に対して上方へ変位する。
【0029】
この突起23Aの穴3への進入に続いて、前記フランジ状部23Bの先端がマグネット23よりも先きに補強パネル2面へ当接し、前記突起23Aの穴3への進入初期段階では該フランジ状部23Bの補強パネル2面への先き当りにより、マグネット23の補強パネル2面への吸着阻止が継続される。
【0030】
突起23Aの穴3への進入が進行すると、前記フランジ状部23Bの先端側が撓んで拡径し、該フランジ状部23Bが補強パネル2に対して上方へ変位する。
【0031】
これら突起23Aおよびフランジ状部23Bの補強パネル2に対する上方への変位によって、前記マグネット22の補強パネル2面への吸着が許容される。
【0032】
前記突起23Aのテーパ大径側が補強パネル2の穴3に嵌入(嵌合)する進入量となると、前記フランジ状部23Bの撓み変形量も増大してその先端部分の補強パネル2面への密接度合いが高められる。
【0033】
このようにして、前記突起23Aおよびフランジ状部23Bの補強パネル2に対する上方変位が所定量行われると、図1(B)に示すように前記マグネット22が補強パネル2面に吸着して、該マグネット22の磁性吸着力によってルーフトリム10が固定される。
【0034】
以上のように第1実施形態の構造によれば、ルーフトリム10の取り付け時の位置合わせの際には、クリップ20の突起23Aおよびフランジ状部23Bが補強パネル2面に先き当りしてマグネット22が補強パネル2面に吸着するのを阻止するため、前記ルーフトリム10の位置合わせ作業を自由に、かつ、円滑に行わせることができて作業性を向上することができる。
【0035】
これらの突起23Aおよびフランジ状部23Bは、何れもルーフトリム10の取り付け押圧力(叩打力)により、補強パネル2に対して上方へ変位してマグネット22の補強パネル2面への吸着を許容するため、該マグネット22の補強パネル2面への磁性吸着により、マグネット吸着タイプのクリップ本来の固定機能を発揮させることができて、前記ルーフトリム10をルーフパネル1に確実に取り付けることができる。
【0036】
ここで、特に本実施形態では前述のようにクリップ20の突出部23の1つとして、補強パネル2の穴3に進入して嵌入(嵌合)可能な突起23Aを用いているので、これら穴3と突起23Aとの嵌合によりルーフトリム10の位置決めを行えて、ルーフトリム10を正しい位置に確実に取り付けることができる。
【0037】
また、この突起23Aと共に、前記補強パネル2の穴3の下面側周囲に撓み変形するフランジ状部23Bを併用しているので、該フランジ状部23Bが補強パネル2面に密着することにより穴3周りの水密性を高めることができる。
【0038】
これは、サンルーフ仕様の車両に用いて特に有効で、サンルーフリッドとルーフ開口部とのパーティング部分のシール不良により、補強パネル2上に水侵入があった場合でも、前記フランジ状部23Bにより穴3から車室内への水侵入を確実に防止することが可能である。
【0039】
前記実施形態では、フランジ状部23Bの突出量を突起23Aの突出量よりも小さく設定しているが、これらの突出量をほぼ同等にすることも可能である。
【0040】
また、フランジ状部23Bは、前記穴3の水密性を考慮してカップ形状としているが、このカップ形状に複数のスリットを配した複数本の脚片で構成することも可能である。
【0041】
図2は本発明の第2実施形態を示すもので、本実施形態にあっては前記第1実施形態におけるフランジ状部23Bを省略し、突起23Aのみをもって突出部23として構成されている。
【0042】
この実施形態では前述のようにフランジ状部23Bが無いため、マグネット22のスチールカバー22Aの固定は、前記顎部25aと、軸部25に設けられた環状の係止突起26とで行われている。
【0043】
従って、この第2実施形態にあっても前記第1実施形態と同様の効果、即ち、ルーフトリム10の位置合わせ作業を円滑に行えると共に、マグネット吸着タイプのクリップ本来の固定機能を十分に発揮させることができる。
【0044】
図3は本発明の第3実施形態を示すもので、本実施形態にあっては前記第2実施形態とは逆に、前記第1実施形態における突起23Aを省略し、フランジ状部23Bのみをもって突出部23として構成されている。
【0045】
従って、この実施形態にあっても前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
図4は本発明の第4実施形態を示すもので、本実施形態にあっては突出部23がベース部21と別体に構成され、該ベース部21に可動的に設けられている。
【0047】
マグネット22は底面側が円板状に形成されていて、底面中央に設けられた貫通孔22bをベース部21の軸部25に挿通し、該軸部25に設けられた顎部25aと環状の係止突起26とで保持されている。
【0048】
前記突出部23は、前記マグネット22の下面側と周側とを覆う有底円筒状のカバー22Bとして構成されている。
【0049】
このカバー22Bはその底部中央に設けられた貫通孔22cを前記ベース部21の軸部25に挿通し、前記環状の係止突起26と、その下側に設けられたもう1つの環状の係止突起27との間に保持されている。
【0050】
前記軸部25の下側の係止突起27とベース部21の上面(補強パネル2との対向面)との間には、前記カバー22Bの移動スペースが設定されている。
【0051】
前記カバー22Bは、係止突起26,27間に保持された常態姿勢では前記マグネット22よりも補強パネル2側に突出されている。
【0052】
このカバー22Bは、その先端に前記取り付け押圧力(叩打力)が作用すると、前記貫通孔22cが下側の係止突起27を越えてベース部21側にくぐり抜け、マグネット22よりも車室内側に移動可能とされている。
【0053】
従って、この第4実施形態にあっても、ルーフトリム10の取り付け時における位置合わせの際には、前記カバー22Bが図4(A)に示すように補強パネル2面に先き当りしてマグネット22が補強パネル2面に吸着するのが阻止される。
【0054】
ルーフトリム10の位置合わせが適正に行われた後、前記クリップ配設相当部を押圧、もしくは叩打すると、その取り付け押圧力により前記カバー22Bの貫通孔22cが軸部25の係止突起27を乗り越え、該カバー22Bがマグネット22よりも車室内側へ移動して該マグネット22の補強パネル2面への吸着が許容される。
【0055】
これにより、図4(B)に示すように前記マグネット22が補強パネル2面に吸着してルーフトリム10の確実な固定が行われる。
【0056】
この結果、本実施形態にあっても前記第1実施形態と同様に、ルーフトリム10の位置合わせ作業性の向上と、マグネット吸着タイプのクリップ本来の機能発揮の実現とを図ることができる。
【0057】
なお、前記各実施形態では内装部品としてルーフトリム10を例に挙げているが、この他、ドアトリム,リヤサイドトリム,ラッゲージルームトリム等の車両用内装材の取り付けに適用することができる。
【0058】
また、場合によってはこれら車両用内装材の取り付け構造に限らず、ルームランプ,ルーフコンソール等の室内機能部品の取り付けに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…ルーフパネル(車体パネル)
2…補強パネル(車体パネル)
10…ルーフトリム(内装部品)
20…クリップ
21…ベース部
22…マグネット
23…突出部
23A…突起
23B…フランジ状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルに内装部品をクリップを介して取り付ける構造であって、
前記クリップは、前記内装部品に固定されるベース部と、
前記ベース部に取り付けられ、前記車体パネル面に吸着して前記内装部品を固定するマグネットと、
前記ベース部に前記マグネットよりも車体パネル側に突出して設けられ、前記内装部品の取り付けの際に該車体パネルに先き当りし、かつ、取り付け押圧力により該車体パネルに対して変位して前記マグネットの車体パネル面への吸着を許容可能な突出部と、を備えたことを特徴とする車両用内装部品の取付構造。
【請求項2】
前記突出部が、前記ベース部の中央部に突設されて、前記車体パネルに設けられた穴に嵌入可能な突起であることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の取付構造。
【請求項3】
前記突出部が、前記ベース部の車体パネル対向面に前記マグネットを囲繞して設けられ、前記内装部品の取り付け押圧力により撓み変形可能なフランジ状部であることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の取付構造。
【請求項4】
前記突出部が、前記ベース部と別体成形されて該ベース部に可動的に設けられ、前記内装部品の取り付けの際に該車体パネル面に先き当りし、かつ、取り付け押圧力により前記マグネットよりも車室内側に移動可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−73653(P2011−73653A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230120(P2009−230120)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】