説明

車両用接地装置

【課題】カバーの取り付け作業を容易になし得、小型化かつ簡便化に対応することが可能な車両用接地装置を提供する。
【解決手段】ブラシ保持器に着脱自在に取り付けられる板状のバネ支持体とこれによって支持され、薄板を巻回して構成され、巻回直径が前記カーボンブラシの短幅板厚内とされ、カーボンブラシに、集電環に接触する側の反対側端で直接接触する押圧バネによってバネユニットが構成され、複数のバネユニットが各独立体として並列にしてカバー内にカバーとは別体として分離して設けられ、並列した複数の押圧バネがカーボンブラシの長幅板厚内とされ、該並列した複数の押圧バネが1つのカーボンブラシを集電環に押圧することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用接地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電車等の電力駆動車両においては、架線よりパンタグラフで集電された電流はモータを駆動後、車両を経てレールに流される。
【0003】
車両用接地装置は、集電環に接触するカーボンブラシを押圧するのに2つのカーボンブラシ押圧材の一端をカーボンブラシに接触させ、他端部に定圧の押圧バネを2つ設け、該押圧バネをカバーで覆うと共にカバーによって保持し、かつカバーによってカーボン方向に押圧するものであった。
【0004】
特許文献1には、その1例が記載されており、ローラにそれぞれ密着巻きした2つの渦巻きバネによってブラシ押え部材を介してブラシを押圧するようにした車両用接地装置が記載されている。
【0005】
また、スリップリングに接触するブラシを押圧する薄板バネを設け、これらの押圧機構をカバーとは別体とする例が特許文献2、3に記載されている。また、特許文献4の図4には接地装置の構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭56−172461号公報
【特許文献2】特開2003−304665号公報
【特許文献3】特公平6−26461号公報
【特許文献4】特開2005−27381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のように、押圧バネをカバーで保持して、押圧バネで押圧されたブラシ押え部材をブラシに押圧する構造にあっては、カバーを取り付けるときに押圧バネおよびブラシ押え部材を押えながら取り付けるという作業になってカバーを取り付ける際に押圧バネの反力が加わるために、カバーの取り付け作業が困難であった。また、押圧バネによって押圧されるブラシ押え部材がブラシの所定の位置に装着されているのか確認するのが困難であった。
【0008】
また、車両用接地装置を小型化することが求められており、装置構造を簡便化(シンプル化)することが求められている。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてカバーの取り付け作業を容易になし得、小型化かつ簡便化に対応することが可能な車両用接地装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ブラシ保持器にカバーを取り付け、該ブラシ保持器内の空間部にカーボンブラシを該カーボンブラシが接触する車軸方向に摺動自在に保持し、前記カバー内に収納した押圧バネのバネ力を前記カーボンブラシに車軸方向に押圧するように作用させる車両用接地装置において、
前記ブラシ保持器に着脱自在に取り付けられる板状のバネ支持体とこれによって支持され、薄板を巻回して構成され、巻回直径が前記カーボンブラシの短幅板厚内とされ、前記カーボンブラシに、集電環に接触する側の反対側端で直接接触する押圧バネによってバネユニットが構成され、複数のバネユニットが各独立体として並列にして前記カバー内に該カバーとは別体として分離して設けられ、並列した複数の押圧バネがカーボンブラシの長幅板厚内とされ、
該並列した複数の押圧バネが1つの前記カーボンブラシを集電環に押圧すること
を特徴とする車両用接地装置を提供する。
【0011】
本発明は、また、前記ブラシ保持器にブラシ貫通孔が形成され、前記押圧バネの巻回直径が該ブラシ貫通孔の巻回直径方向幅、及びカーボンブラシの短幅板厚よりも小さく、且つカーボンブラシ短幅板厚の3/4以上とされたことを特徴とする車両用接地装置を提供する。
【0012】
本発明は、また、前記ブラシ保持器に小幅の間隙の長方形状幅の細長穴を持つバネユニット装置用溝が形成され、前記バネ支持体の一端側がわずかに屈曲されてバネ機能を有し、表裏の幅が前記細長穴の長方形状幅よりも大きなものとされたバネ部に形成され、該バネ部が前記細長穴に差し込まれることで前記バネ支持体が前記ブラシ保持器に着脱自在に保持されることを特徴とする車両用接地装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上述のように、カーボン押圧機構をカバーとは独立体としているために、カーボン押圧機構およびカバーとはそれぞれ独立してブラシ保持器に取り付けることができ、しかもカーボン押圧機構を分割された複数の独立機構としてカーボンに押圧接触するようにしているために1つのカーボンを押圧するそれぞれのカーボン押圧機構を薄型として小型化し、装置構造を簡便化する車両用接地装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例の構成を示す側方からの斜視図。
【図2】本発明の実施例の構成を示す斜め上方からの斜視図。
【図3】本発明の実施例の平面断面図。
【図4】本発明の実施例の側面断面図。
【図5】本発明の実施例の下面図。
【図6】バネ支持体の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の1実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0016】
図1〜図5は本発明の実施例の車両用接地装置の構成を示す図である。図1は、車両用接地装置1の側方からの斜視図であり、図2は斜め上方からの斜視図である。図3は、本実施例の平面断面図であり、図4は側面断面図、図5は下面図である。
【0017】
これらの図において、車両用接地装置1は、カーボンブラシ2を保持するブラシ保持器3、ブラシ保持器3に取り付けられるカバー4、カバー内に一部が収納され、他部がブラシ保持器3に保持されるバネ支持体5、バネ支持体5に支持される押圧バネ6およびカーボンブラシ2に接続されブラシ保持器3によって保持されるリード線7とから構成される。板状のバネ支持体5と押圧バネ6によってバネユニットが構成される。複数のバネユニットが各独立体としてカバー4内にカバー4とは別体として接触することなく分離して設けられる。
【0018】
押圧バネ6は薄板を巻回して作られて定圧バネとして作用し一端が下方向きでバネ支持体に取り付けられる。このように押圧バネ6は覆部11を持ったバネ支持体5によって支持され、巻回部がカーボンブラシ2を押圧し、カーボンブラシ2の集電環22に対する接触を保持するように作用する。このように、押圧バネ6とこれを支持するバネ支持体5によってカーボン押圧機構、すなわちバネユニット10が構成される。
【0019】
リード線7は、ねじ12によるねじ締めによってブラシ保持器3に固定され、ブラシ保持器3は支持板部3Aおよびブラシ保持部3Bの一部にボルト・ナット機構13によって車両(図示せず)に取り付けた部材に取り付けられ、またカバーはボルト・ナット機構の1つ(13A)によってブラシ保持器3に固定される。
【0020】
図6に示すように、バネ支持体5は板状部材によって形成され覆部11が形成された端部の反対側の端部は、わずかに屈曲されてバネ機能が付与されたバネ部14とされる。
ブラシ保持部3Bのブラシ2に沿った部分の肉厚部2Aにはバネユニット装着用溝を構成する小幅間隙の長方形状幅の細長穴15が形成される。
ブラシ保持器3のバネ部14は、その表裏の幅が細長穴15の長方形状幅よりもわずかに大きなものとされる。
このようにして形成されたバネ部14が細長穴15に差し込まれることでバネ支持体5はブラシ保持器3に着脱自在に保持される。これによって、バネユニットをカバー4によって保持することを要しない。
【0021】
押圧バネ6は、薄板が巻回して形成された薄板バネであって、カーボンブラシ2の摩耗に伴なって巻回数を増加しても定押圧を付与する定圧バネとして構成される。
【0022】
ブラシ保持器3は、ブラシ板部3Aとブラシ保持部3Bとから構成され、ブラシ保持部3Bはカーボンブラシ2が挿入されるブラシ貫通孔16を有する。
【0023】
ブラシ保持器3は、このようにブラシ保持部3Bにブラシ貫通孔16を有しており、このブラシ貫通孔16内にカーボンブラシ2が配設される。ブラシ貫通孔16の断面長方形をなし、長い幅に沿って複数の押圧バネ6は並列され、押圧バネ6の巻回方向が短い幅方向に配設される。車両用接地装置1を小型化するために短い幅を約20mm以下に設定する。このために、押圧バネの巻回方向の巻回バネ直径は、例えば20mm〜15mmとする。すなわちカーボンブラシの短幅板厚よりも小さく、且つカーボンブラシの短幅板厚の3/4以上とする。押圧バネ6の巻回直径はカーボンブラシ2の短幅板厚内とされ、並列して複数が設けられた時に並列した複数の押圧バネ6はカーボンブラシ2の長幅板厚間とされる。
【0024】
カーボンブラシ2は設置当初はブラシ貫通孔16の上側に配置される。摩耗に伴なって長さを減じ、ブラシ貫通孔16内に入り込むことになるが、巻回バネ直径を上述のようにすることによってスムーズにブラシ貫通孔16に入り込ませることができる。
【0025】
以上のように、各部品の構成によって、ブラシ保持器3に着脱自在に取り付けられる板状のバネ支持体5と、これによって支持され、薄板を巻回して構成され、巻回直径がカーボンブラシの板厚内とされてブラシ貫通孔16内に配設され、カーボンブラシ2の、集電環22に接触する側と反対側の端21(接触端面)で直接接触する押圧バネ6によってバネユニットが構成される。構成された複数のバネユニットが各独立体として並列してカバー4内にカバー4とは別体として接触することなく分離して配置される。
【0026】
このようにして並列した複数の押圧バネ6がカーボンブラシ2にカーボンブラシ2の断面積内で直接接触して集電環22を押圧し、カーボンブラシ2が集電環22に常圧で接触し、集電し、自己自体は摩耗によって少しずつすり減っていく。この場合、設置当初はブラシ貫通孔16外に配置された押圧バネ6はカーボンブラシ2のすり減りに従ってブラシ貫通孔16に入り込んで定圧押圧を継続する。図1にカーボンブラシ2が摩耗し、ブラシ貫通孔16に入っている状態を示す。
【0027】
このように本実施例の車両接地装置は、
(1)独立体としての複数のバネユニットが構成され、1つのカーボンブラシをその断面
積内で複数の押圧バネで直接押圧すること
(2)カーボンブラシ2が摩耗した時、押圧バネがブラシ貫通孔(ブラシ挿入部)16に
入り込み得るようにバネの断面外径をブラシ貫通孔16の断面寸法よりも小さく形
成すること
の特徴を有する。
【符号の説明】
【0028】
1…車両用接地装置、2…カーボンブラシ、3…ブラシ保持器、3A…ブラシ板部、3B…ブラシ保持部、4…カバー、5…バネ支持体、6…押圧バネ、7…リード線、10…カーボンユニット、11…覆部、14…バネ部、15…細長穴(バネユニット装着用溝)、16…ブラシ貫通孔、21…端(接触端面)、22…集電環、23…車軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ保持器にカバーを取り付け、該ブラシ保持器内の空間部にカーボンブラシを該カーボンブラシが接触する車軸方向に摺動自在に保持し、前記カバー内に収納した押圧バネのバネ力を前記カーボンブラシに車軸方向に押圧するように作用させる車両用接地装置において、
前記ブラシ保持器に着脱自在に取り付けられる板状のバネ支持体とこれによって支持され、薄板を巻回して構成され、巻回直径が前記カーボンブラシの短幅板厚内とされ、前記カーボンブラシに、集電環に接触する側の反対側端で直接接触する押圧バネによってバネユニットが構成され、複数のバネユニットが各独立体として並列にして前記カバー内に該カバーとは別体として分離して設けられ、並列した複数の押圧バネがカーボンブラシの長幅板厚内とされ、
該並列した複数の押圧バネが1つの前記カーボンブラシを集電環に押圧すること
を特徴とする車両用接地装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ブラシ保持器にブラシ貫通孔が形成され、前記押圧バネの巻回直径が該ブラシ貫通孔の巻回直径方向幅、及びカーボンブラシの短幅板厚よりも小さく、且つカーボンブラシ短幅板厚の3/4以上とされたことを特徴とする車両用接地装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記ブラシ保持器に小幅の間隙の長方形状幅の細長穴を持つバネユニット装置用溝が形成され、前記バネ支持体の一端側がわずかに屈曲されてバネ機能を有し、表裏の幅が前記細長穴の長方形状幅よりも大きなものとされたバネ部に形成され、該バネ部が前記細長穴に差し込まれることで前記バネ支持体が前記ブラシ保持器に着脱自在に保持されることを特徴とする車両用接地装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−246286(P2010−246286A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93179(P2009−93179)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】