説明

車両用暖機システム

【課題】暖機対象機関の暖機の要否に応じて暖機動作を的確に行い、不要な暖機動作に伴うエネルギーの無駄を削減する。
【解決手段】過冷却状態で蓄熱が可能な蓄熱材20と、該蓄熱材20の過冷却状態を解除する発核装置25とを有してなる蓄熱装置10と、蓄熱装置10により作動油を介して暖機される自動変速機40と、暖機動作を制御する電子制御ユニット(ECU)50と、を備えた車両用暖機システム1において、ECU50は、暖機指示を受けた際、水温センサ38で検出された冷却水温に基づいて自動変速機40の暖機要否を判断し、暖機不要である場合、例えば、作動油流路41に配設した作動油ポンプ(電動ポンプ)42の動作を禁止し、もしくは電流を小さくして回転数を暖機必要時に比べて下げることで、暖機動作を禁止あるいは抑制することができる。これにより、電気エネルギーの無駄を削減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関や自動変速機などの早期暖機あるいは車内の即効暖房を行うことができる蓄熱装置を備えた車両用暖機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1、2に示すように、蓄熱により内燃機関(以下、「エンジン」という)や自動変速機の暖機を行う蓄熱装置を備えた車両用暖機システムがある。特許文献1に記載の蓄熱装置(蓄熱タンク)は、エンジンの冷却水を蓄熱媒体として用い、該蓄熱媒体を断熱性の高い容器に収容したものである。また、特許文献2に記載の蓄熱装置は、自動変速機の作動油が流通する流路を、セラミックや酸化マグネシウムなどの高熱容量材からなる蓄熱材層で被覆した構造である。このような蓄熱装置を備えた暖機システムによれば、車両の運転時に冷却水や作動油の熱を蓄熱媒体に蓄熱しておき、次回の車両始動時にこの蓄熱を利用して、エンジンや自動変速機の早期暖機、あるいは車内の即効暖房などを効果的に行うことが可能となる。
【特許文献1】特開平10−71837号公報
【特許文献2】特開2002−39335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような蓄熱装置を備えた暖機システムでは、エンジンの始動直前あるいは始動直後に、ウォームアップ信号の入力を受けて、蓄熱装置によるエンジンや自動変速機の暖機を開始するようになっているものがある。この場合、冷却水流路や作動油流路に配設した電動ポンプを動作させることで、エンジンあるいは自動変速機と蓄熱装置との間で冷却水や作動油を循環させてこれらの暖機を行うようになっている。ところが、エンジンを停止した直後に再始動する場合などは、エンジンや自動変速機は既に十分暖まっており、蓄熱装置による暖機を行う必要がない。しかしながら、従来の暖機システムでは、そのような場合でも、ウォームアップ信号の入力があれば、通常通りの暖機動作を行うようになっていた。そのため、たとえ暖機が不要であっても、冷却水流路や作動油流路の電動ポンプを動作させることになり、それに要する電気エネルギーなどが無駄になっていた。
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、暖機対象機関の暖機の要否に応じて暖機動作を的確に行うことができ、不要な暖機動作に伴うエネルギーの無駄を削減できる車両用暖機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明にかかる車両用暖機システムは、過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材からなる蓄熱要素(20)と、該蓄熱要素(20)の過冷却状態を解除する解除手段(25)とを有してなる蓄熱装置(10)と、蓄熱装置(10)により熱伝達媒体を介して暖機される暖機対象機関(30,40)と、暖機対象機関(30,40)に対する暖機動作を制御する制御手段(50)と、を備え、暖機対象機関(30,40)は、蓄熱装置(10)により冷却水を介して暖機される内燃機関(30)、あるいは蓄熱装置(10)により作動油を介して暖機される変速機(40)を含み、制御手段(50)は、暖機対象機関(30,40)の暖機指示を受けた際、該暖機対象機関(30,40)の暖機の要否を判断し、暖機が不要である場合は、該暖機対象機関(30,40)に対する暖機動作を禁止あるいは抑制することを特徴とする。なお、ここでの括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【0006】
過冷却状態で蓄熱が可能な蓄熱要素を有してなる蓄熱装置では、蓄熱要素の過冷却状態を解除することで、蓄熱を利用した暖機対象機関の暖機が可能な状態となるが、本発明にかかる車両用暖機システムによれば、暖機対象機関の暖機の要否を事前に判断するようにしたことで、暖機対象機関が既に暖まっている場合は、蓄熱材の過冷却状態の解除動作、及びそれ以外の暖機動作を禁止あるいは抑制することができる。これにより、蓄熱材からの不要な蓄熱の放出を防止でき、また、各種暖機動作に要する電気エネルギーなどの無駄を削減することが可能となる。
【0007】
また、上記暖機動作の禁止あるいは抑制の一実施態様として、制御手段(50)は、内燃機関(30)あるいは変速機(40)の暖機が不要である場合、作動油流路(31)に配設した電動ポンプ(42)あるいは冷却水流路(31)に配設した電動ポンプ(32)の動作を禁止することができる。すなわち、蓄熱要素で内燃機関や変速機を暖機する際に、冷却水流路や作動油流路の電動ポンプを動作させるシステムでは、暖機不要の場合にもそのまま電動ポンプを動作させると、その分、電気エネルギーが無駄になる。そこで、暖機不要の場合には電動ポンプの動作を禁止することにより、電気エネルギーを節約することができる。
【0008】
もしくは、制御手段(50)は、内燃機関(30)あるいは変速機(40)の暖機が不要である場合、作動油流路(41)に配設した電動ポンプ(42)あるいは冷却水流路(31)に配設した電動ポンプ(32)の回転数を暖機必要時に比べて下げることができる。また、該電動ポンプ(32,42)の電流を暖機必要時に比べて小さくすることができる。すなわち、蓄熱要素で内燃機関や変速機を暖機する際に、暖機しない場合と比べて冷却水流路や作動油流路の電動ポンプを高回転で動作させるシステムでは、暖機不要の場合にもそのまま電動ポンプを高回転で動作させると、その分、電気エネルギーが無駄になる。そこで、暖機不要の場合には電動ポンプの回転を下げることで、電気エネルギーを節約することができる。
【0009】
また、上記の暖機システムにおいては、内燃機関(30)の冷却水の温度を検出する冷却水温検出手段(38)を備え、暖機の要否の判断は、検出した冷却水の温度に基づいて行うようにしてよい。また、外気温を検出する外気温検出手段(54)を備え、暖機の要否の判断は、検出した外気温に基づいて行うようにしてもよい。また、車内温度を検出する車内温度検出手段(57)を備え、暖機の要否の判断は、検出した車内温度に基づいて行うようにしてもよい。また、変速機(40)の作動油の温度を検出する作動油温検出手段(43)を備え、暖機の要否の判断は、検出した作動油の温度に基づいて行うようにしてもよい。これらによれば、上記の各種温度検出手段は、従来から車両に設置されているものを使用できるので、新たな部品を設置する必要がなく、コスト上昇を伴わず、暖機の要否を適切に判断できるようになる。
【0010】
また、上記の暖機システムにおいては、変速機(40)の温度を検出する変速機温度出手段(59)を備え、暖機の要否の判断は、検出した変速機(40)の温度に基づいて行うようにしてもよい。また、内燃機関(30)の温度を検出する内燃機関温度出手段(58)を備え、暖機の要否の判断は、検出した内燃機関(30)の温度に基づいて行うようにしてもよい。これらによれば、従来から車両に設置されている温度検出手段を使用できる上に、変速機あるいは内燃機関の状態を直接的に検出することができるようになるので、暖機の要否をより的確に判断できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる車両用暖機システムによれば、暖機対象機関の暖機の要否に応じて暖機動作を的確に行うことができ、不要な暖機動作を防止してエネルギーの無駄を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる蓄熱装置を備えた車両用暖機システムの構成例を示す概略図である。この車両用暖機システム1は、蓄熱材20を有してなる蓄熱装置10と、エンジン30の冷却水(LLC)を蓄熱装置10および車内暖房装置44のヒータコア45へ循環させる冷却水循環路31と、自動変速機(AT)40の作動油(ATF)を蓄熱装置10へ循環させる作動油循環路41とを備えている。冷却水循環路31は、エンジン30に形成された図示しない水ジャケットから導出されて、蓄熱装置10に連通し、蓄熱装置10の下流側でヒータコア45を通り、エンジン30の水ジャケットに再度導入されている。エンジン30に導入される直前位置には、冷却水ポンプ(電動ポンプ)32が介装されている。また、作動油循環路41には、作動油を流通させる作動油ポンプ(電動ポンプ)42と、作動油の温度を検出する油温センサ43が設置されている。油温センサ43で検出された作動油温は、電子制御ユニット(以下、「ECU」という。)50に出力されるようになっている。また、冷却水ポンプ32及び作動油ポンプ42の動作は、ECU50により制御されるようになっている。蓄熱装置10は、詳細な構成は後述するが、冷却水循環路31に連通する第一室15と、蓄熱材20を配設した第二室16と、作動油循環路41に連通する第三室17とを備えている。
【0013】
ヒータコア45は、詳細な図示は省略するが、車内に臨む空気導入ダクト内に設置されている。空気導入ダクト内には、ヒータコア45に風を送るための送風ファン46が組み込まれている。送風ファン46は、ECU50により制御されるようになっている。ヒータコア45の送風下流側には、車内に連通する送風ダクトが設けられている。
【0014】
また、車内のコントロールパネル(図示せず)には、車内暖房用の暖房スイッチ51、及びデフロスタ吹出口から温風を吹き出すためのデフロスタスイッチ55が設けられている。暖房スイッチ51およびデフロスタスイッチ55のオン/オフ信号は、ECU50に出力されるようになっている。したがって、送風ファン46は、暖房スイッチ51やデフロスタスイッチ55のオン信号に応じて作動し、空気導入ダクトを介して吸い込んだ車内の空気を、ヒータコア45を通して送風ダクトから再び車内に吹き込むようになっている。また、暖機システム1は、外気温を検出する外気温センサ54と、車内の温度を検出する室内温度センサ57とを備えている。外気温センサ54および室内温度センサ57の検出信号は、ECU50に出力されるようになっている。また、エンジンの温度を検出するエンジン温度センサ58と自動変速機40の温度を検出する変速機温度センサ59が設けられている。エンジン温度センサ58および変速機温度センサ59は、それぞれエンジン30や自動変速機40のケース温度もしくは本体温度を検出するようになっている。これらエンジン温度センサ58および変速機温度センサ59の検出信号は、ECU50に出力されるようになっている。また、イグニッションスイッチ(以下、IGスイッチという。)56の操作信号は、ECU50に送られるようになっている。
【0015】
冷却水循環路31における蓄熱装置10とヒータコア45の間には、冷却水循環路31の開閉を切り替える切替バルブ(開閉弁)33が設置されている。切替バルブ33は、ECU50からの信号で開閉が制御されるようになっている。以下では、切替バルブ33がオフであるというときは、切替バルブ33が開かれて、蓄熱装置10及びヒータコア45の冷却水が流通する状態を示し、切替バルブ33がオンであるというときは、切替バルブ33が閉じられて、蓄熱装置10及びヒータコア45の冷却水が流通しない状態を示す。
【0016】
また、エンジン30から出た冷却水をラジエター47へ循環させるラジエター用循環路35が設けられている。ラジエター用循環路35は、エンジン30の水ジャケットから出て、冷却水循環路31における冷却水ポンプ32の上流側に合流している。ラジエター用循環路35には、ラジエター47に連通する主流路35aと、ラジエター47をバイパスするバイパス流路35bとが設けられている。ラジエター47の下流側におけるバイパス流路35bの合流部には、電子制御サーモスタット弁(三方弁)37が介装されている。電子制御サーモスタット弁37は、ECU50からの信号で開閉方向が制御されるようになっている。また、ラジエター用循環路35には、冷却水温を検出する水温センサ38が組み込まれている。水温センサ38の検出信号は、ECU50に出力されるようになっている。
【0017】
図2は、電子制御サーモスタット弁37の構成例を示す図である。以下では、電子制御サーモスタット弁37がオフであるというときは、同図(a)に示す状態、すなわち、主流路35aを開いてバイパス流路35bを閉じた状態を指し、電子制御サーモスタット弁37がオンであるというときは、同図(b)に示す状態、すなわち、主流路35aを閉じてバイパス流路35bを開いた状態を指すものとする。
【0018】
ECU50は、水温センサ38で検出した冷却水温が所定温度(例えば100℃)未満の場合、電子制御サーモスタット弁37をオンにすることで、バイパス流路35bを開き主流路35aを閉じて、冷却水がラジエター47へ流れないように制御する。一方、冷却水温が所定温度(例えば110℃)以上になった場合、電子制御サーモスタット弁37をオフにすることで、バイパス流路35bを閉じて主流路35aを開き、冷却水をラジエター47へ導くように制御する。
【0019】
ECU50には、無線により外部機器からの信号を受信可能な受信装置52が接続されている。これにより、ECU50は、エンジンスタートキー53に設けたウォームアップスイッチ53aのオン/オフ信号を受信できるようになっている。したがって、乗員が車外でエンジンスタートキー53のウォームアップスイッチ53aを操作した場合、ECU50でその信号が遠隔受信され、それに応じてECU50は暖機システム1にウォームアップ指令を発することができる。
【0020】
図3は、蓄熱装置10の詳細構成を示す図で、(a)は、分解斜視図、(b)は、(a)のA−A矢視断面図である。蓄熱装置10は、長手状の筒状体からなる筐体11と、筐体11の内部に設置された該筐体11よりも若干小径の筒状体からなる中間部材12と、中間部材12の内部に設置された仕切部材13とを備えた三重構造になっている。仕切部材13は複数のフィン13aを有している。フィン13aは、筐体11の長手方向に沿って延びる板状で、多数が横方向に所定間隔で配列されている。フィン13aの内部には、同図(b)に示すように、仕切部材13の外側に通じる隙間13bが設けられている。筐体11と中間部材12の間は、エンジン30の冷却水が導入される第一室15になっており、フィン13aの隙間13bを含む中間部材12と仕切部材13の間は、自動変速機40の作動油が導入される第三室17になっており、仕切部材13の内側は、蓄熱材20が密封状態で充填される第二室16になっている。
【0021】
筐体11の上下端の開口には、蓋部材14a,14bが取り付けられている。下側の蓋部材14aには、第三室17に作動油を導入する作動油入口17aが設けられており、上側の蓋部材14bには、作動油を導出する作動油出口17bが設けられている。また、筐体11の上端近傍と下端近傍の側面には、それぞれ第一室15に冷却水を導入する冷却水入口15aと、冷却水を導出する冷却水出口15bとが設けられている。
【0022】
この蓄熱装置10では、第二室16と第三室17とが隣接して配置され、かつ、第三室17と第一室15とが隣接して配置されている。したがって、第二室16の蓄熱材20と第三室17の作動油との間で直接的に熱交換を行え、かつ、第三室17の作動油と第一室15の冷却水との間で直接的に熱交換を行える。なお、第一室15の作動油と第二室16の蓄熱材20との間でも、第三室17の作動油を介して間接的に熱交換が行える。
【0023】
筐体11は、冷却水に対する防錆性などの耐久性があり、且つ断熱性の良好な材料、例えば、銅、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料で構成されている。この筐体11は、図示は省略するが、断熱性を高めるため、内部に真空の断熱層を形成してもよい。また、中間部材12および仕切部材13は、冷却水、作動油、蓄熱材20に対する耐久性があり、且つ比較的熱伝導性の高い材料、例えば、ステンレスなどの金属材料で構成するとよい。
【0024】
蓄熱材20は、過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材であり、凝固点以下になっても液状のままで固化しない性質を有している。このような蓄熱材20として、例えば、酢酸ナトリウム水和物からなる蓄熱材が挙げられる。酢酸ナトリウム水和物は、後述する解除手段による過冷却状態の解除によって、平衡状態に戻って固化する際に発熱し、温度の低い他の媒体を加熱することができる。
【0025】
そして、第二室16の蓄熱材20中には、蓄熱材20の過冷却状態を解除する解除手段(以下、「発核装置」という。)25が設置されている。図4は、発核装置25を示す概略側面図である。発核装置25は、蓄熱材20中に設置された円形平板状の金属バネ部材26と、金属バネ部材26に打撃を与えるソレノイド27とを備えている。ソレノイド27は、ECU50の指令に応じて動作する。金属バネ部材26は、同図(a)に示す状態において、ソレノイド27による打撃で中央部26aが押圧されると、同図(b)に示すように、該中央部26aが反転するようになっている。これにより、蓄熱材20中に核が生成(発核)され、蓄熱材20の過冷却状態が解除されて固化が始まる。なお、解除手段としては、蓄熱材20中に核を生成可能な手段であれば、何れの手段でもよく、上記以外にも、例えば、蓄熱材20中で金属摩擦あるいは電圧印加などを施す手段であってもよい。
【0026】
ここでは、過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材の代表例として酢酸ナトリウム水和物を挙げたが、他にも、水和塩化合物(化学式としてMx・nH2O(n:整数)で表わされるもの)を挙げることができ、Na2SO4・10H2O,CaCl2・6H2Oを例示することができる。
【0027】
また、蓄熱材は、化学反応を利用して熱の吸収・放出を行うことができる化学蓄熱材からなるものであってもよい。このような化学蓄熱材として、例えば、ゼオライトからなる蓄熱材がある。図5は、ゼオライトからなる蓄熱材21を備えた蓄熱装置10の構成例を示す図である。この場合、蓄熱装置10は、ゼオライトからなる蓄熱材21に反応媒体である水22を供給して化学反応を生じさせる反応媒体供給部23を備えて構成される。この蓄熱装置10では、エンジン30の運転時に、冷却水や作動油との熱交換でゼオライト21を加熱して脱水させ、これにより、蓄熱材21に蓄熱する。一方、エンジン30の始動時には、反応媒体供給部23から蓄熱材21に水22を供給して吸着させることで、蓄熱材21に吸着熱を発生させて冷却水や作動油を加熱する。化学蓄熱材としては、ゼオライトの他にも、例えば、シリカゲル・活性炭・生石灰などがあり、化学反応を生じさせる反応媒体としては、水の他にも、エタノール・メタノール・エチレングリコール系不凍液・塩化カルシウム系不凍液などがある。また、化学蓄熱材の例としては、他にも水素吸蔵合金を用いた蓄熱材などが挙げられる。
【0028】
図6は、暖機システム1における運転モードのタイムチャートを示すグラフである。なお、ここでは、蓄熱装置10による暖機対象機関として自動変速機40を例に挙げて説明する。暖機システム1の運転モードは、モード0からモード3までの4段階に切り替わる。モード0は、エンジン30が始動する前のモードであり、この間にウォームアップ信号の入力があれば、後述するように、自動変速機40の暖機の要否が判断され、それ基づいて発核装置25及び作動油ポンプ42が適宜に作動し、蓄熱装置10による自動変速機40の暖機が行われる。モード1は、IGスイッチ56がオンされてエンジン30が始動してから、冷却水温度が所定温度に達するまでのモードである。この間、モード0で蓄熱装置10による自動変速機40の暖機が行われていた場合は、引き続き暖機が行われる。一方、エンジン30は自己暖機する。モード2は、冷却水温度が前記の所定温度に達した後、作動油の油温が所定温度に達したことで自動変速機40の暖機が完了したと判断されるまでのモードである。この間、自動変速機40はエンジン30の冷却水によって暖機される。エンジン30の冷却水は、電子制御サーモスタット弁37の制御によって、所定の温度範囲を維持するように制御(DUTY制御)される。モード3は、自動変速機40の暖機が完了したと判断された後のモードであり、この間、自動変速機40はエンジン30の冷却水によって冷却される。エンジン30の冷却水は、モード2と同様、電子制御サーモスタット弁37の制御によって、所定の温度範囲を維持するように制御される。
【0029】
図7は、暖機システム1の制御手順を示すメインフローである。この制御手順では、まず、後述するモード切替のサブルーチンを実行する(ステップST1)。その結果に基づき、モード0であるか否かを判定する(ステップST2)。モード0であれば(Y)、モード0のサブルーチンを実行し(ステップST3)、モード0でなければ(N)、モード1か否かを判定する(ステップST4)。その結果、モード1であれば(Y)、モード1のサブルーチンを実行し(ステップST5)、モード1でなければ(N)、モード2か否かを判定する(ステップST6)。その結果、モード2であれば(Y)、モード2のサブルーチンを実行し(ステップST7)、モード2でなければ(N)、モード3のサブルーチンを実行する(ステップST8)。
【0030】
図8は、モード切替手順を説明するためのフローチャートである。モード切替では、まず、IGスイッチ56がオンであるか否かを判定する(ステップST10)。その結果、IGスイッチ56がオンでなければ(N)、モード0をセットする(ステップST11)。IGスイッチ56がオンであれば(Y)、モード2以上か否かを判定し(ステップST12)、モード2以上でなければ(N)、冷却水温TWが♯TW1Lより低いか否かを判定し(ステップST13)、冷却水温TWが♯TW1Lより低ければ(Y)、モード1をセットする(ステップST14)。♯TW1Lの具体例は、100℃である。また、先のステップST12でモード2以上である場合(Y)は、続けてモード2か否かを判定し(ステップST15)、モード2である場合(Y)、あるいは先のステップST13で冷却水温TWが♯TW1L以上である場合(N)は、作動油温TATFが♯TATF1Lより低いか否かを判定する(ステップST16)。♯TATF1Lの具体例は、100℃である。その結果、作動油温TATFが♯TATF1Lより低ければ(Y)、モード2をセットし(ステップST17)、作動油温TATFが♯TATF1L以上であれば(N)、モード3をセットする(ステップST18)。また、先のステップST15でモード2でない場合(N)は、モード3をセットする(ステップST18)。
【0031】
図9は、モード0の手順を説明するためのフローチャートである。モード0では、まず、ウォームアップ信号の入力有無を判定する(ステップST0−1)。この結果、ウォームアップ信号の入力が無い場合(N)は、発核装置25をオフする(ステップST0−2)。また、作動油ポンプ42をオフする(ステップST0−3)。ウォームアップ信号の入力が有る場合(Y)は、冷却水温TWが♯TW3より低いか否かを判定する(ステップST0−4)。♯TW3の具体例は、60℃である。その結果、冷却水温TWが♯TW3より高ければ(N)、発核装置25をオフし(ステップST0−2)、さらに、作動油ポンプ42をオフする(ステップST0−3)。もしくは、この場合、後述する回転制御により作動油ポンプ42を低回転で動作させることも可能である。つまり、エンジン30の始動前における自動変速機40の暖機の要否を冷却水温にて判断し、該冷却水温が所定温度よりも高い場合は、暖機は不要であるとして、蓄熱材20の発核動作を禁止する。また、作動油ポンプ42の動作を禁止あるいは抑制する。これにより、電気エネルギーの無駄を削減できる。一方、ステップST0−4で冷却水温TWが♯TW3より低ければ(Y)、発核装置25がオンであるか否かを判定する(ステップST0−5)。その結果、発核装置25がオンでなければ(N)、発核装置25をオンする(ステップST0−6)。発核装置25がオンであれば(Y)、発核装置25がオンしてから所定時間以内か否かを判定する(ステップST0−7)。その結果、所定時間以内でなければ(N)、すなわち発核装置25がオンしてから所定時間以上が経過していれば、発核装置25をオフし(ステップST0−2)、作動油ポンプ42をオフする(ステップST0−3)。一方、所定時間以内であれば(Y)、作動油ポンプ42をオンする(ステップST0−8)。また、このモード0では、切替バルブ33はオフにし(ステップST0−9)、電子制御サーモスタット弁37はオフにする(ステップST0−10)。その後、モード0の手順を終了してメインフローに戻る。
【0032】
図10は、モード1の手順を説明するためのフローチャートである。モード1は、IGスイッチ56のオンによりスタートし、まず、冷却水温TWが♯TW3より低いか否かを判定する(ステップST1−1)。その結果、冷却水温TWが♯TW3以上であれば(N)、発核装置25をオフする(ステップST1−2)。つまり、始動時に冷却水温が所定以上である場合は、蓄熱装置10による自動変速機40の暖機は不要であると判断し、蓄熱材20を発核させない。一方、冷却水温TWが♯TW3より低ければ(Y)、発核装置25がオンである否かを判定する(ステップST1−3)。その結果、発核装置25がオンでなければ(N)、発核装置25をオンする(ステップST1−4)。発核装置25がオンであれば(Y)、発核装置25がオンしてから所定時間以内か否かを判定する(ステップST1−5)。その結果、所定時間以内でなければ(N)、すなわち発核装置25がオンしてから所定時間以上が経過していれば、発核装置25をオフする(ステップST1−2)。発核装置25がオンしてから所定時間以内である場合(Y)は、作動油ポンプ42をオンし(ステップST1−6)、作動油循環路41の作動油を循環させる。その後、外気温が所定温度以上であり、かつデフロスタスイッチ55がオフであるか否かを判定する(ステップST1−7)。その結果、外気温が所定温度以下、又はデフロスタスイッチ55がオンである場合(N)は、切替バルブ33をオフすることで(ステップST1−8)、蓄熱装置10からの冷却水をヒータコア45に流通させる。つまりこの場合は、蓄熱装置10による自動変速機40の暖機を行いながら、蓄熱装置10による車内暖房も行う。一方、外気温が所定温度以上であり、かつデフロスタスイッチ55がオフである場合(Y)は、切替バルブ33をオンすることで(ステップST1−9)、蓄熱装置10からの冷却水をヒータコア45には流通させない。つまりこの場合は、蓄熱装置10による自動変速機40の暖機を優先的に行い、車内暖房は行わない。また、このモード1では、電子制御サーモスタット弁37をオンしておき(ステップST1−10)、ラジエター47には冷却水を流通させず、冷却水が早期に温まるようにする。その後、モード1の手順を終了してメインフローに戻る。
【0033】
図11は、モード2の手順を説明するためのフローチャートである。モード2は、冷却水温が♯TW1Lになった時点でスタートする。モード2では、発核装置25をオフする(ステップST2−1)。また、作動油ポンプ42を作動させて(ステップST2−2)、作動油循環路41の作動油を循環させる。また、切替バルブ33をオフすることで(ステップST2−3)、蓄熱装置10からの冷却水をヒータコア45に流通させる。そして、電子制御サーモスタット弁37がオンであるか否かを判定し(ステップST2−4)、オンであれば(Y)、冷却水温TWが♯TW1Hより低いか否かを判定する(ステップST2−5)。♯TW1Hの具体例は、105℃である。その結果、冷却水温TWが♯TW1H以上である場合(N)は、電子制御サーモスタット弁37をオフすることで(ステップST2−7)、ラジエター47に冷却水を流通させる。冷却水温TWが♯TW1Hより低い場合(Y)は、電子制御サーモスタット弁37をオンすることで(ステップST2−8)、ラジエター47に冷却水を流通させない。一方、先のステップST2−4で電子制御サーモスタット弁37がオフである場合(N)は、冷却水温TWが♯TW1Lより高いか否かを判定する(ステップST2−6)。その結果、冷却水温TWが♯TW1Lより高ければ(Y)、電子制御サーモスタット弁37をオフし(ステップST2−7)、冷却水温TWが♯TW1L以下であれば(N)、電子制御サーモスタット弁37をオンする(ステップST2−8)。その後、スタートに戻り上記の手順を反復する。つまり、モード2では、冷却水温TWが♯TW1H以上に上昇した場合は、ラジエター47による冷却を行い、冷却水温TWが♯TW1L以下に低下した場合は、ラジエター47による冷却を停止する。これにより、図6に示すように、冷却水温TWが常に♯TW1Lと♯TW1Hの間の範囲内に収まるように制御する。
【0034】
図12は、モード3の手順を説明するためのフローチャートである。モード3では、まず、発核装置25はオフである(ステップST3−1)。また、作動油ポンプ42はオンであり(ステップST3−2)、切替バルブ33はオフである(ステップST3−3)。そして、作動油温TATFが♯TATF1Hよりも低いか否かを判定する(ステップST3−4)。♯TATF1Hの具体例は、110℃である。その結果、作動油温TATFが♯TATF1Hよりも低ければ(Y)、電子制御サーモスタット弁37がオンであるか否かを判定し(ステップST3−5)、オンであれば(Y)、冷却水温TWが♯TW1Hより低いか否かを判定する(ステップST3−6)。冷却水温TWが♯TW1H以上である場合(N)は、電子制御サーモスタット弁37をオフし(ステップST3−8)、冷却水温TWが♯TW1Hより低ければ(Y)、電子制御サーモスタット弁37をオンのままとする(ステップST3−9)。一方、先のステップST3−5で電子制御サーモスタット弁37がオフである場合(N)は、冷却水温TWが♯TW1Lより高いか否かを判定する(ステップST3−7)。その結果、冷却水温TWが♯TW1Lより高ければ(Y)、電子制御サーモスタット弁37をオフのままとし(ステップST3−8)、冷却水温TWが♯TW1L以下であれば(N)、電子制御サーモスタット弁37をオンする(ステップST3−9)。つまり、自動変速機40の作動油温が狙い範囲(TATF<♯TATF1H:110℃)にある場合は、冷却水温をそれ以上低くする必要がないため、該冷却水温を燃費優先のいわゆる燃費狙い値(♯TW1L:100℃<TW<♯TW1H:110℃)になるように制御する。
【0035】
一方、先のステップST3−4において、作動油温TATFが♯TATF1Hよりも高い場合(N)は、電子制御サーモスタット弁37がオンであるか否かを判定し(ステップST3−10)、オンであれば(Y)、冷却水温TWが♯TW2Hより低いか否かを判定する(ステップST3−11)。♯TW2Hの具体例は、85℃である。冷却水温TWが♯TW2H以上である場合(N)は、電子制御サーモスタット弁37をオフし(ステップST3−13)、冷却水温TWが♯TW2Hより低い場合(Y)は、電子制御サーモスタット弁37をオンする(ステップST3−9)。一方、先のステップST3−10で電子制御サーモスタット弁37がオンでない場合(N)は、冷却水温TWが♯TW2Lより高いか否かを判定する(ステップST3−12)。♯TW2Lの具体例は、80℃である。その結果、冷却水温TWが♯TW2Lより高ければ(Y)、電子制御サーモスタット弁37をオフし(ステップST3−13)、冷却水温TWが♯TW2L以下である場合(N)は、電子制御サーモスタット弁37をオンする(ステップST3−9)。つまり、自動変速機40の作動油温が狙い範囲(TATF<♯TATF1H:110℃)と比べて高すぎる場合は、冷却水温を低く抑える必要があるため、該冷却水温を作動油の冷却を優先する温度(♯TW2L:80℃<TW<♯TW2H:85℃)となるように制御する。
【0036】
図13は、作動油ポンプ42の回転制御の手順を説明するためのフローチャートである。上記の各モードにおける作動油ポンプ42の動作時の回転数は、同図のフローに従って制御される。まず、作動油ポンプ42のオン指示の有無を判断し(ステップST20−1)、オン指示が無ければ(N)、作動油ポンプ42をオフする(ステップST20−2)。一方、オン指示があれば(Y)、作動油ポンプ42をオンする(ステップST20−3)。作動油ポンプ42をオンしたら、発核装置10のオンから所定時間以内か否かを判断する(ステップST20−4)。その結果、所定時間以内でなければ(N)、すなわち所定時間以上が経過して自動変速機40の暖機が完了していれば、作動油ポンプ42の電流値Iは、暖機を行わないとき(暖機不要時)の電流値I0に対して増分なしの電流値(I=I0)とする(ステップST20−5)。一方、発核装置10のオンから所定時間以内であれば(Y)、すなわち蓄熱装置10による自動変速機40の暖機中であれば、作動油ポンプ42の電流値Iは、暖機を行わないときの電流値I0に対して、所定の増分♯Iupを加算した値(I=I0+♯Iup)とする(ステップST20−6)。その後、上記の電流値Iを指示し(ステップST20−7)、作動油ポンプ42の回転数を調節する。これにより、蓄熱装置10による自動変速機40の暖機を行っている間は、作動油ポンプ42の電流を増加させて回転数を上げることで、作動油の流量を増加させ、蓄熱装置10による自動変速機40の暖機を行っていない間は、作動油ポンプ42の電流を減少させて回転数を下げて、作動油の流量を減少させることができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の車両用暖機システム1では、自動変速機40の暖機の要否を判断し、暖機が不要である場合は、自動変速機40の作動油循環路41に配設した作動油ポンプ42の動作を禁止することができる。すなわち、蓄熱装置10で自動変速機40を暖機するときに、作動油を送るための作動油ポンプ42を動作させる本暖機システム1において、暖機不要の場合にも作動油ポンプ42を動作させると、その分、電気エネルギーが無駄になる。そこで、暖機不要の場合には作動油ポンプ42の動作を禁止することにより、電気エネルギーを節約することができる。
【0038】
また、この車両用暖機システム1では、蓄熱装置10で自動変速機40を暖機する場合、暖機しない場合と比べて作動油ポンプ42を高回転で動作させるようになっている。そのため、暖機不要の場合にも作動油ポンプ42をそのまま高回転で作動させると、その分、電気エネルギーが無駄になる。そこで、自動変速機40の暖機の要否を事前に判断し、暖機不要の場合は、作動油ポンプ42の回転数を暖機必要時に比べて下げるように制御している。あるいは、該作動油ポンプ42の電流を暖機必要時に比べて小さくするように制御している。これにより、暖機不要の場合には作動油ポンプ42の電流を小さくすることができ、電気エネルギーを節約することができる。
【0039】
また、この車両用暖機システム1では、自動変速機40の暖機要否の判断は、水温センサ38で検出した冷却水温に基づいて行うようになっている。この場合、水温センサ38は、従来から車両に設置されているものをそのまま使用できるので、新たな部品を設置する必要がなく、暖機システム1のコスト上昇を伴わず、暖機の要否を適切に判断できるようになる。なお、暖機の要否の判断は、冷却水温に基づく以外にも、例えば、外気温センサ54で検出した外気温に基づいて行うようにしてもよい。また、室内温度センサ57で検出した車内の温度に基づいて行うようにしてもよい。また、油温センサ43で検出した作動油の温度に基づいて行うようにしてもよい。
【0040】
また、暖機の要否の判断は、変速機温度センサ59で検出した自動変速機40の本体温度(ケース温度)に基づいて行うようにしてもよい。また、エンジン温度センサ58で検出したエンジン30の本体温度(ケース温度)に基づいて行うようにしてもよい。これらによれば、自動変速機40あるいはエンジン30の状態を直接的に検出することができるので、暖機の要否をより的確に判断できるようになる。
【0041】
さらに、蓄熱装置10が備える蓄熱材20は、過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材なので、外気温が低下しても蓄熱を保持でき、かつ、長期間放置しても蓄熱を安定的に保持できる。したがって、蓄熱材20の容器(筐体11、中間部材12、仕切部材13)の断熱構造を簡素化でき、蓄熱装置10の構成の簡素化、小型化、軽量化を図ることができる。また、発核装置25による過冷却状態の解除(発核)により、所望のタイミングで蓄熱材20を発熱させることができるので、エンジン30や自動変速機40の早期暖機、あるいは車内の即効暖房を効果的に行えるようになる。
【0042】
なお、上記では、蓄熱装置10による暖機対象として自動変速機40を例に挙げ、該自動変速機40の暖機の要否に応じて作動油ポンプ42の動作を禁止あるいは抑制する場合を説明したが、本発明の暖機システムの暖機対象としては、自動変速機40以外にも、エンジン30など他の機関を含めることができる。すなわち、上記の暖機システム1において、ECU50は、ウォームアップ信号を受けた際あるいはエンジン30始動の際に、エンジン30や車内暖房装置44の暖機要否を判断し、暖機不要であれば、冷却水循環路31に配設した冷却水ポンプ32の動作を禁止するか、あるいは該冷却水ポンプ32の回転数を暖機時と比べて低くすることが可能である。この場合、冷却水ポンプ32の回転制御として、上記の作動油ポンプ42と同様の回転制御を行うようにする。なお、エンジン30や車内暖房装置44の暖機要否の判断は、自動変速機40の暖機要否の判断と同様、水温センサで検出した冷却水温、外気温センサ54で検出した外気温、室内温度センサ57で検出した車内温度、油温センサ43で検出した作動油温、変速機温度センサ59で検出した自動変速機40の温度、エンジン温度センサ58で検出したエンジン30の温度のいずれかに基づいて行うことができる。
【0043】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両用暖機システムの構成例を示す概略図である。
【図2】電子制御サーモスタット弁の構成例を示す図である。
【図3】蓄熱装置の構成例を示す図で、(a)は、分解斜視図、(b)は、(a)のA−A矢視断面図である。
【図4】発核装置の構成例を示す概略側面図である。
【図5】化学蓄熱材を備えた蓄熱装置の構成例を示す図である。
【図6】暖機システムの運転モードのタイムチャートを示すグラフである。
【図7】暖機システムの制御手順を示すメインフローである。
【図8】運転モード切替手順を説明するためのフローチャートである。
【図9】モード0の手順を説明するためのフローチャートである。
【図10】モード1の手順を説明するためのフローチャートである。
【図11】モード2の手順を説明するためのフローチャートである。
【図12】モード3の手順を説明するためのフローチャートである。
【図13】作動油ポンプの回転制御の手順を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1 暖機システム
10 蓄熱装置
15 第一室
16 第二室
17 第三室
20 蓄熱材(蓄熱要素)
21 ゼオライト(化学蓄熱材)
25 発核装置(解除手段)
30 エンジン(内燃機関)
31 冷却水循環路(冷却水流路)
32 冷却水ポンプ(電動ポンプ)
33 切替バルブ
35 ラジエター用循環路
37 電子制御サーモスタット弁
38 水温センサ(冷却水温検出手段)
40 自動変速機
41 作動油循環路(作動油流路)
42 作動油ポンプ(電動ポンプ)
43 油温センサ(作動油温検出手段)
44 車内暖房装置
45 ヒータコア
46 送風ファン
47 ラジエター
50 電子制御ユニット(ECU)
51 暖房スイッチ
52 受信装置
53 エンジンスタートキー
53a ウォームアップスイッチ
54 外気温センサ(外気温検出手段)
55 デフロスタスイッチ
56 イグニッションスイッチ(IGスイッチ)
57 室内温度センサ(車内温度検出手段)
58 エンジン温度センサ(内燃機関温度出手段)
59 変速機温度センサ(変速機温度出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材からなる蓄熱要素と、該蓄熱要素の過冷却状態を解除する解除手段とを有してなる蓄熱装置と、
前記蓄熱装置により熱伝達媒体を介して暖機される暖機対象機関と、
前記暖機対象機関に対する暖機動作を制御する制御手段と、を備え、
前記暖機対象機関は、前記蓄熱装置により冷却水を介して暖機される内燃機関、あるいは前記蓄熱装置により作動油を介して暖機される変速機を含み、
前記制御手段は、前記暖機対象機関の暖機指示を受けた際、該暖機対象機関の暖機の要否を判断し、暖機が不要である場合は、該暖機対象機関に対する暖機動作を禁止あるいは抑制することを特徴とする車両用暖機システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記内燃機関あるいは前記変速機の暖機が不要である場合、作動油流路に配設した電動ポンプあるいは冷却水流路に配設した電動ポンプの動作を禁止することを特徴とする請求項1に記載の車両用暖機システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記内燃機関あるいは前記変速機の暖機が不要である場合、作動油流路に配設した電動ポンプあるいは冷却水流路に配設した電動ポンプの回転数を暖機必要時に比べて下げることを特徴とする請求項1に記載の車両用暖機システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記内燃機関あるいは前記変速機の暖機が不要である場合、作動油流路に配設した電動ポンプあるいは冷却水流路に配設した電動ポンプの電流を暖機必要時に比べて小さくすることを特徴とする請求項1に記載の車両用暖機システム。
【請求項5】
前記内燃機関の冷却水の温度を検出する冷却水温検出手段を備え、
前記暖機の要否の判断は、検出した冷却水の温度に基づいて行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用暖機システム。
【請求項6】
外気温を検出する外気温検出手段を備え、
前記暖機の要否の判断は、検出した外気温に基づいて行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用暖機システム。
【請求項7】
車内温度を検出する車内温度検出手段を備え、
前記暖機の要否の判断は、検出した車内温度に基づいて行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用暖機システム。
【請求項8】
前記変速機の作動油の温度を検出する作動油温検出手段を備え、
前記暖機の要否の判断は、検出した作動油の温度に基づいて行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用暖機システム。
【請求項9】
前記変速機の温度を検出する変速機温度出手段を備え、
前記暖機の要否の判断は、検出した変速機の温度に基づいて行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用暖機システム。
【請求項10】
前記内燃機関の温度を検出する内燃機関温度出手段を備え、
前記暖機の要否の判断は、検出した内燃機関の温度に基づいて行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用暖機システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−228432(P2009−228432A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71041(P2008−71041)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】