説明

車両用灯具

【課題】 ランプのレンズ付着した雪を確実に融雪する一方で融雪用の発熱体への給電の消費電力の低減化を図る。
【解決手段】 ランプボディの前面に配設されて光源から出射した光を透過させるレンズに設けられ通電により発熱される発熱体61と、発熱体に給電する電力を制御するためのヒータ制御回路82を有するコントローラ8とを備える。ヒータ制御回路82は給電開始条件を満たしたときに外気温に基づいて発熱体への給電を行う時間を設定する給電時間設定手段ATMと停止時間設定手段STMを備える。外気温が低く融雪し難いときには給電時間を長くして確実に融雪し、また停止時間を短くして再着雪を防止し、一方で外気温が高く融雪が容易なときにおける無駄な電力の消費を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両用灯具に関し、特に灯具のレンズ面に付着した雪や霜を溶融するための融雪装置を備えた車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寒冷地や寒冷時期においては自動車用の灯具、例えば前照灯やフォグランプ等の照明灯、ターンシグナルランプ等の標識灯等のレンズに雪や霜が付着し易く、これら雪や霜によりレンズの透光性が低下し、目的とする灯具による照明や標識が阻害されるおそれがある。そのため、従来から融雪装置を備えた灯具が提案されている。特に、近年のように光源にLED(発光ダイオード)等の白熱電球に比較して発熱量が小さい光源を用いた灯具では、光源で発生した熱を利用して融雪を行うことが期待できないため、光源とは別に融雪装置を灯具に配設する必要がある。特許文献1の灯具では、レンズの内面又は外面の少なくとも一方に抵抗発熱体を配設し、この抵抗発熱体に車載電源から供給される電流を通流させ、抵抗発熱体で発生する熱によりレンズの外面に付着した雪を融雪する構成が提案されている。また、特許文献1では、抵抗発熱体の発熱量を適正に制御するために、外気温センサで外気温を検出し、この検出した外気温に基づいて外気温が氷点下ならば発熱量が大きく、氷点以上ならば発熱量を小さく、さらに一定温度以上ならば給電を停止する制御を行っている。また、特許文献2には、レンズの曇り除去を目的とした装置であるが、温度センサ、外気温センサ、日射センサ等の検出出力に基づいてランプ灯室内の温度が所定温度に達したときには、その灯室内の温度を低下させるように発熱体への給電を制御して、レンズの過熱や消費電力の増大を防止する技術が開示されている。また、特許文献2には同様の目的で給電時間を検出する手段を設け、給電時間が所定時間に達したときに給電を停止する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−109587号公報
【特許文献2】特開2004−314902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の技術では、外気温に基づいて発熱体への給電量を制御しているが、外気温が氷点下あるいは氷点下近傍のときには完全に融雪された後も発熱体への給電が継続されてしまい、消費電力の面で好ましくない。特許文献2の技術では給電時間が所定時間に達したときに給電を停止することで無駄な消費電力を低減する上では有効であるが、この技術をそのまま融雪装置に適用した場合には、完全に融雪されない状況でも時間が経過した時点で発熱体での発熱が停止されてしまうおそれがあり、レンズに残着している雪によって好適な照明が確保されず、安全走行の問題が生じる。また、給電時間が所定時間に達して融雪が完了された状態でも、外気温が依然として氷点下あるいは氷点下近傍のときには、給電の停止と同時に再び給電が開始される場合があり、このようなときには電力が無駄に消費されてしまうことになる。
【0004】
本発明の目的は、レンズにおける確実な融雪を可能とする一方で発熱体への給電の消費電力の低減化を図った車両用灯具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ランプボディの前面に配設されて光源から出射した光を透過させるレンズと、レンズに設けられ通電により発熱される発熱体と、発熱体に給電する電力を制御するための制御手段とを備える車両用灯具において、制御手段は給電開始条件を満たしたときに発熱体への給電を行う時間を設定する給電時間設定手段と、給電が完了したときに発熱体への給電を強制的に停止する時間を設定する停止時間設定手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
ここで、給電時間設定手段と停止時間設定手段での各時間設定は予め固定的な時間に設定していてもよく、種々の情報に基づいて設定してもよい。好ましくは、レンズにおける着雪状況に対応して設定時間を可変するようにすればよく、例えば、外気温情報に基づいてそれぞれの設定時間を可変することが可能である。この場合には、給電時間設定手段は外気温が低いときには給電時間を長く設定し、停止時間設定手段は外気温が低いときには停止時間を短く設定する。給電時間と停止時間を外気温に対応して、すなわち着雪の状況に対応して適切に設定することができる。
【0007】
本発明において、レンズあるいはレンズ近傍の温度を検出する温度検出素子を備え、外気温情報として当該温度検出素子の出力を用いるようにしてもよい。レンズに雪が付着することがないレンズ等の温度時に発熱体に電力を供給することを停止し、消費電力を低減する。また、レンズ等の温度が低いときには停止時間を短く設定することで、給電の再開時間を早めてレンズに再び着雪することを防止する。一方でレンズに着雪するおそれが少ないときの消費電力を低減する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用灯具によれば、レンズに付着した雪を融雪する際にヒータに対する給電時間と給電停止時間を適切に設定することができるので、レンズの着雪状況に応じて迅速な融雪を行う一方で消費電力を削減することができる。例えば、外気温に基づいて給電時間と給電停止時間を設定した場合には、外気温が低くてレンズに着雪した雪や霜が融雪し難いときには給電時間を長くして確実に融雪することができ、その一方で外気温が高く融雪が容易なときには給電時間を短くして融雪後にも無駄な電力が消費されることを防止する。また、外気温が低いときには給電を停止する時間を短くしてレンズに対する着雪を防止する一方で、温度が高く融雪が容易な状況のときには給電を停止する時間を長くし、車載電源の消費電力の低減を可能にする。
【実施例1】
【0009】
次に、本発明の実施例1を図面を参照して説明する。図1は本発明を自動車のヘッドランプ(前照灯)に適用した実施例の正面図、図2は図1のA−A線断面図である。自動車のヘッドランプHLは、前面を開口した容器状のランプボディ1と、このランプボディ1内に配設された光源ユニット2と、前記ランプボディ1の前面開口に取着されたレンズ3とで構成されている。前記光源ユニット2は、ここではLEDユニットを用いており、前面に多数の凹部をリフレクタ22として形成したユニット基板20を有し、前記リフクレタ22の内底位置にそれぞれLED21を搭載したものである。前記ユニット基板20は固定具23によりランプボディ1内に固定され、またユニット基板20の後面には電極部24が設けられており、この電極部24には前記ランプボディ1の後面に設けられた後面開口を通して電源用コネクタ4が着脱可能とされている。
【0010】
この電源用コネクタ4は図2に示すコントローラ8を介して図には表れない車載電源に接続されている。なお、このコントローラ8は詳細は後述するが、図3に示すようにイグニッションスイッチ、ディマースイッチ等の各種スイッチのオン・オフ情報に基づいて車載電源の電力をヘッドランプHLに対して供給する点灯制御回路81を備えている。このコントローラ8の点灯制御回路81での制御により、LEDユニット2では選択されたLED、あるいは全てのLEDが発光され、所要の配光特性を得ることになる。LEDユニット2では、各LED21で発光した光はリフレクタ22によりランプボディ1の前方に向けて反射され、レンズ3を透過してヘッドランプHLの前方領域を照明する。なお、この種のヘッドランプHLは既に種々の構成のものが提案されているので、ここではヘッドランプ自体の詳細な説明は省略する。
【0011】
また、実施例1では後述するように前記コントローラ8での制御により前記ヘッドランプHLに装備された融雪装置6に対する給電をオン・オフ制御することが可能に構成されている。この融雪装置6は、前記レンズ3に一体的に設けられた波型ループパターン状をした抵抗発熱体61を備えている。前記抵抗発熱体61はFPCヒータ(フレキシブル配線板ヒータ)で構成されており、透明樹脂で形成されたレンズ3の内面に埋設状態に設けられている。FPCヒータ61は詳細な図示は省略するがポリカーボネイト等の透明樹脂製ベースフィルムの表面に所要のパターンの導電箔が印刷され、同じく透明樹脂製オーバレイフィルにより覆われるようにしてサンドイッチされたものである。この実施例1ではFPCヒータ61はレンズ3を樹脂成形する際にインサート成形により接合一体化されている。また、前記FPCヒータ61の導電箔の両端部にはそれぞれ銅板片で構成された給電端子62が接続されており、これら一対の給電端子62は前記レンズ3の面領域のうち照明には影響を与えない位置に配設されている。各給電端子62は基端部が前記レンズ3の内部に埋設されて前記抵抗発熱体61の両端部に接続され、各先端部は前記レンズ3の内面からランプ後方に向けて平行な状態で突出されている。
【0012】
前記ヒータ用コネクタ7はリード線5を介して前記LEDユニット2のユニット基板20に設けられている前記電極部24の一部に電気接続され、この電極部24を介して前記電源用コネクタ4に接続され、さらに前記コントローラ8に接続されている。また、前記ヒータ用コネクタ7には一対の電極71が設けられており、これらの電極71は前記抵抗発熱体61の各給電端子62に嵌合して電気的に接続され、前記リード線5を介して入力されてくる給電電力をこれら給電端子62を介してFRPヒータ61に給電する。
【0013】
図3は前記コントローラ8の回路図であり、演算回路80と、前記点灯制御回路81と、ヒータ制御回路82を備えている。前記演算回路80には前述したようにイグニッションスイッチ、ディマースイッチ等の各種スイッチ情報が入力されるとともに、前記ヒータ制御回路82に向けて出力する起動信号を生成するための情報として、ライトスイッチ情報、ワイパースイッチ情報、ウォッシャスイッチ情報、ヒータスイッチ情報、外気温情報が入力されるようになっている。ライトスイッチ情報は自動車のランプ点灯スイッチのオン・オフ情報である。ワイパースイッチ情報は自動車のワイパースイッチのオン・オフ情報である。ウォッシャスイッチ情報は自動車のフロンドガラスを清浄する際に手動で操作する際のウォッシャスイッチのオン・オフ情報である。手動スイッチ(ヒータスイッチ)情報はヘッドランプHLの前記FPCヒータ61を手動で発熱させるためのヒータスイッチのオン・オフ情報である。外気温情報は自動車の車体の一部に設けられて自動車の環境温度、すなわち外気温を検出する外気温センサで検出した温度情報である。この外気温センサは例えば自動車のオートエアコン用に配設されている既存の温度センサを利用することが可能であり、このような既存の温度センサを用いることで本発明を実現する際のコストの増大が抑制できる。さらに、図3ではコントローラ8は自動車で受信可能な気象情報や道路情報に含まれる降雪情報や凍結情報等の無線情報を取り込むように構成しているが、以降の説明ではこの無線情報は取り込まないで制御を行う例を示している。そして、前記コントローラ8の演算回路80はこれらの情報に基づいてヘッドランプHLのレンズ3の表面に雪や霜が付着する蓋然性の高い状況を検出し、この状況を検出したときに前記ヒータ制御回路82の信号入力端STに起動信号を出力するように構成されている。また、同時に外気温情報を前記ヒータ制御回路82の制御端CTに出力するように構成されている。
【0014】
前記ヒータ制御回路82は、前記演算回路80からの信号が入力される電源端VT、接地端GT、信号入力端ST、制御端CT等の各入力端を備えるとともに、前記電源用コネクタ4を介して前記LEDユニット2に接続される点灯出力端LOTと、前記コネクタ7に接続される制御出力端COTを備えている。前記ヒータ制御回路82はタイマー回路部TMとスイッチ回路部SWとで構成されている。タイマー回路部TMは前記演算回路80から入力される起動信号により所要の時間を計時して前記スイッチ回路部SWに給電・停止信号を出力するものであり、所定の給電時間を計時して給電信号を出力する給電タイマーATMと、給電を停止するための所定の停止時間を計時して停止信号を出力する停止タイマーSTMとで構成される。これらの給電タイマーATMと停止タイマーSTMは前記信号入力端子STから起動信号が入力されたときにクロック信号を設定数だけカウントして給電又は停止のタイムアップ信号を出力するカウンタとして構成されている。また、前記給電タイマーATMと停止タイマーSTMは各出力が他方に対して交差的に入力される構成とされており、これにより一方のタイマーが動作している間は他方のタイマーは動作が停止され、一方のタイマーが停止されたときには他方のタイマーが動作が可能とされている。なお、この種のタイマーは既に広く知られているので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0015】
また、前記給電タイマーATMには前記給電時間に相当するカウント数を設定するための給電時間設定回路ATSと、前記停止タイマーSTMの停止時間に相当するカウント数を設定するための停止時間設定回路STSとが設けられており、これら給電時間設定回路ATSと停止時間設定回路STSは図6を参照して後述するように外気温に依存して設定時間が変化設定されるように構成されている。すなわち前記タイマー回路部TMには前記コントローラ8から前記制御端子CTに入力される外気温情報に基づいて各時間設定回路ATS,STSでの各設定時間を変化制御する。この実施例1では、前記各設定回路ATS,STSは入力される外気温情報に基づいてそれぞれカウントアップ値を設定する給電セレクタ及び停止セレクタとして構成される。給電タイマーATMはこの給電セレクタ(給電時間設定回路)ATSで設定されたカウントアップ値をカウントするまでの間、連続して給電信号を継続して出力する。停止タイマーSTMは停止セレクタ(停止時間設定回路)STSで設定されたカウントアップ値をカウントするまでの間、連続して停止信号を保持する。
【0016】
前記スイッチ回路部SWは、トランジスタTr、スイッチング素子(電界効果トランジスタ)Q、ダイオードD、ツェナーダイオードZD、抵抗R1〜R4を接続した構成とされている。スイッチング素子Qのソース・ドレインを前記制御出力端COTの一方と前記電源端子VTとの間に接続し、ゲートをトランジスタTrのコレクタに接続している。制御出力端COTの他方は接地端子GTに接続される。このスイッチ回路部SWでは、タイマー回路部TMからの信号がトランジスタTrのベースに入力されると当該トランジスタTrがオンし、そのときコレクタ・エミッタ電流によりスイッチング素子Qがオンしてソース・ドレインを導通状態にし、制御出力端COTを電源端子VTに導通させてFPCヒータ61に発熱のための電力を供給することが可能である。
【0017】
以上の構成の融雪装置6の動作について説明する。図4は動作を説明するためのフローチャートである。コントローラ8の演算回路80は入力された各種情報から自動車の状況が図5に示すパターンA〜Fのいずれかの状況であるか否かを判定し(S101)、いずれかのパターンであると判定したときには起動信号を出力する(S102)。図5に示したパターンA〜Fの各枠中において、同一行の条件は「OR」であり、異なる行に記載の条件は「AND」である。パターンAでは、イグニッションスイッチ(IG)又はライトスイッチ(Light)がオンで、ワイパースイッチ、フォッシャスイッチ、手動スイッチのいずれかがオン、あるいは外気温が0℃より低く、あるいは無線情報で融雪を行う信号が入力されたときである。なお、自動車の車種によってはこれらスイッチのいずれかが存在していない場合があるが、その場合には存在しているスイッチや温度、無線情報に基づいてパターンAを満たしていると判定することになる。パターンBは、イグニッションスイッチ又はライトスイッチがオンで、ワイパースイッチ又はウォッシャスイッチがオンで、さらに外気温が0℃より低いときにパターンBを満たしていると判定する。パターンCは、イグニッションスイッチ又はライトスイッチがオンで、手動スイッチ(ヒータスイッチ)がオンのときにパターンCを満たしていると判定する。パターンDは、イグニッションスイッチ又はライトスイッチがオンで、ワイパースイッチ又はウォッシャスイッチがオンで、さらに手動スイッチ(ヒータスイッチ)がオンのときにパターンDを満たしていると判定する。パターンEは、イグニッションスイッチ又はライトスイッチがオンで、外気温が0℃より低く、さらに手動スイッチ(ヒータスインッチ)がオンのときにパターンEを満たしていると判定する。パターンFは、イグニッションスイッチ又はライトスイッチがオンで、ワイパースイッチ又はウォッシャスイッチがオンで、外気温が0℃より低く、さらに手動スイッチ(ヒータスインッチ)がオンのときにパターンFを満たしていると判定する。これらのパターンA〜Fはいずれも自動車がヘッドランプを点灯する際にワイパー又はウォッシャーを動作させる必要がある雨或いは雪の天候状態であると判定される状況、あるいはヒータスイッチがオンされるのは雪或いは霜が付着するような寒冷状態であると判定される状況であり、この状況のときにコントローラ8はレンズ3に雪や霜が付着している可能性が高いと判定し、所定の起動信号を出力してヒータ制御回路82に入力する。なお、このフローではコントローラ8のステップS101の動作は継続して繰り返し行なわれることになる。
【0018】
図4のフローチャートにおいて、タイマー回路部TMでは先ず給電タイマーATMはコントローラ8の演算回路80からの起動信号が入力されると、これと同時に外気温情報を入力する(S103)。そして、この外気温情報に基づいて給電時間設定回路ATSと停止時間設定回路STSの各設定時間、すなわち給電時間と停止時間を設定する(S104)。しかる後、給電信号を出力し(S105)、これと同時に計時を開始し、給電時間設定回路ATSに設定された給電時間の間だけ給電信号を出力する(S106)。このとき、給電時間設定回路ATSの設定時間が「0」に設定されたときには実質的には給電信号を出力することはない。所定の給電時間の計時がなされると給電信号が停止され、これと同時に停止タイマーSTMが始動されて停止信号を出力する(S107)。この停止信号は停止時間設定回路STSに設定された停止時間の間だけ保持される(S108)。なお、停止時間設定回路STSでの設定時間は「0」に設定されることはない。停止時間設定回路STSに設定された設定時間を計時すると、停止タイマーからの停止信号は停止され(S109)、ステップS101に戻る。演算回路80が依然としてパターンA〜Fの状況であると判定しているときには、再び起動信号が出力され、ステップS102からのフローが繰り返される。このとき、外気温に変化があれば給電時間と停止時間の設定も変更される。
【0019】
以上のフローにおいて、タイマー回路部TMから給電信号が出力されたときには、この給電信号はスイッチ回路部SWのトランジスタTrのベースに入力され、当該トランジスタTrはオンとなり、コレクタ・エミッタ電流が流れてスイッチング素子Qのゲート電圧をしきい値電圧以下とし、スイッチング素子Qのソース・ドレイン間を導通させる。これにより、スイッチ回路部SWがオンとなり、電源端VTが制御出力端COTに導通した状態となり、車載電源の電力がFPCヒータ61に供給される。したがって、FPCヒータ61が発熱し、レンズ3を加熱して温度を上昇させる。また、タイマー回路部TMから停止信号が出力されるとき、すなわち給電信号が出力されないときにはトランジスタTrはオフであり、スイッチング素子Qもオフとなり電源端VTは制御出力端COTに導通しないためFPCヒータ61への電力の供給は停止され、FPCヒータ61が加熱されることはない。
【0020】
ここで、前記給電時間設定回路ATSでは、図6(a)に示すように、給電設定時間は外気温に対する依存性を有している。ここでは、外気温が低いほど給電設定時間が長くなるように設定する構成とされている。特に、外気温が0℃よりも高温のとき、すなわちレンズに雪や霜が付着するおそれがないときには給電設定時間は「0」に設定されている。また、前記停止時間設定回路STSでは、図6(b)に示すように、停止設定時間は外気温に対する依存性を有しており、ここでは、外気温が低いほど停止設定時間が短くなるように設定する構成とされている。
【0021】
したがって、コントローラ8がパターンA〜Fを判定し、ヘッドランプHLのレンズ3に雪や霜が付着するおそれがあると判定した場合には、起動信号をヒータ制御回路82に出力し、ヒータ制御回路82は外気温に基づいて設定された給電時間だけ給電信号を出力する。このとき、外気温が0℃より高く、雪や霜が付着する温度ではないときには、給電時間設定回路ATSでの設定時間は「0」であるため、起動信号が入力されていても給電タイマーATMからの給電信号が出力されることはなく、スイッチ回路部SWはオフでFPCヒータ61に電力が供給されることはない。外気温が0℃よりも低くなり、雪や霜が付着する状況になると、給電時間設定回路ATSでは温度に依存した給電時間が設定されるため、給電タイマーATMからは設定された給電時間だけ給電信号を出力し、その時間だけFPCヒータ61を加熱させる。さらに、この給電時間は外気温が低くなるほど長くなるように設定されているので、低温で雪や霜が溶けにくい状況のときには図7(a)のようにFPCヒータ61の加熱時間を長くし、雪や霜が確実に融解できるようにする。一方、外気温がそれほど低くないときには融雪は短時間で終了できるため、図7(b)のようにFPCヒータ61の加熱時間を短くし、融雪した後もFPCヒータ61に無駄な給電が行われることがなく車載電源の消費電力を低減することができる。
【0022】
給電タイマーATMにより給電時間が計時されて給電信号が停止されると、停止タイマーSTMから停止信号が出力されてスイッチ回路部SWがオフ状態となり、停止タイマーSTMで計時した停止時間だけFPCヒータ61への給電が停止される。停止タイマーSTMでの停止時間を設けていることは、雪や霜の融雪が完了されてレンズ3の温度がFPCヒータ61での加熱によって温度上昇したときには、再びレンズ3の温度が低下して雪や霜が付着するまでにはある程度の時間がかかるためであり、この間はコントローラ8から起動信号が出力されている場合や、外気温が0℃よりも低い場合でもFPCヒータ61への通電を強制的に停止して電力の無駄な消費を防ぐためである。したがって、図7(a),(b)に示したように、外気温が低いときには再び雪や霜がレンズ3に付着するまでの時間が短いことから停止時間設定回路STSでの設定時間を短くし、外気温が高い場合には付着までの時間が長くなることから停止時間設定回路STSでの設定時間を長くしている。そして、設定された停止時間が経過すると、停止タイマーSTMは停止信号を停止して強制的な停止状態を解除する。しかる後は、演算回路80からの起動信号に基づき、起動信号が出力されている場合には前述の動作を再び開始することになる。この動作は演算回路80からの起動信号が出力されなくなる状況になるまで、あるいは起動信号が出力される場合でも給電時間設定回路ATSの設定時間が「0」となる外気温になるまで繰り返し継続して行われることになる。
【0023】
このように、実施例1の融雪装置6では、温度に応じてFPCヒータ61に給電する時間を変化制御し、外気温が低いほど給電時間を長くしているのでレンズ3に付着した雪や霜を確実に融解させる。その一方で、外気温が高いときの給電時間を短くしているので融解した後も給電が無駄に行われるようなことはなくFPCヒータ61への給電の消費電力の低減化を図ることができる。また、融雪が完了された後は所定の時間だけ強制的にFPCヒータ61への給電を停止するので、この間における消費電力の低減も可能になる。特に、外気温が低い場合には再びFPCヒータ61に給電を開始するまでの時間を短くしてレンズ3への雪や霜の再付着を防止し、また付着した雪や霜の融解を迅速に行う。その一方で、外気温が高い場合には再びFPCヒータ61への給電を開始するまでの時間を長くでき、消費電力の低減効果を高くすることができる。
【0024】
なお、説明は省略したが、実施例1のコントローラ8の演算回路80においてパターンB〜Fを判定する場合にも、前述した無線情報を加えて判定を行うことで、演算回路80においてより高い精度でレンズ3に対する雪や霜の付着状況を判定することができる。あるいは前記した以外の他の情報を併用することで、例えば、雨滴センサ情報、湿度センサ情報、エアコン動作情報等を条件にして判定を行うことで、さらに好適に状況を判定することが可能である。
【0025】
ここで、実施例1ではヒータ制御回路82はコントローラ8に内蔵され、あるいはコントローラ8の内部回路の一部として構成されているが、図8(a)に示すように、ヒータ制御回路82コントローラ8とは別体に構成し、ヒータ制御回路82のみをヘッドランプHL内に内蔵してもよい。例えば、前記ヒータ用コネクタ7に内蔵させてもよい。あるいは、図8(b)に示すように、ヒータ制御回路82のタイマー回路部TMとスイッチ回路部SWとを分割し、タイマー回路部TMはコントローラ8に内蔵させ、スイッチ回路部SWのみをヒータ用コネクタ7またはヘッドランプHL内に内蔵させるようにしてもよい。この場合には、コントローラ8内のヒータ制御回路82から時間制御された給電信号と停止信号が出力され、これらの信号がスイッチ回路部SWに入力されることになる。さらに、実施例1ではタイマー回路部TMのタイマーにカウンタとして構成されるソフトタイマを用いているが、設定時間だけ出力を継続する信号発生回路や遅延回路を用いることも可能である。
【0026】
実施例1では外気温情報に基づいて給電時間と給電停止時間の設定を行っているが、レンズの着雪状況を判定することが可能な情報であれば、それらの情報を利用して給電時間と給電停止時間を設定するように構成することも可能である。あるいは、運転者の判断によって給電時間と給電停止時間を設定することも可能であり、この場合には例えば予め設定した複数の設定時間を切り替えるように構成してもよい。また、実施例1では外気温情報を自動車の車体の一部に設けられた外気温センサで検出した温度情報を用いているが、ヘッドランプHLのレンズ3の近傍又はレンズ3に接触した状態で独立した新たな温度センサを設け、この温度センサで検出した温度情報を外気温情報としてもよい。このように独立した温度センサを設ける場合には、実施例1のヘッドランプHL内のヒータ用コネクタ7に温度センサを内蔵させ、この内蔵されたた温度センサで検出した温度、すなわちレンズ近傍温度又はレンズ温度を外気温として給電時間と停止時間を設定するようにしてもよい。このようにすれば、着雪されるレンズ3の温度に基づいて給電時間と停止時間が設定できるので、コストは若干増加するが自動車の外部環境温度を外気温として利用する実施例1の場合よりもより高精度なヒータ制御が可能になる。
【0027】
本発明においてレンズ3を加熱するための発熱体は必ずしもレンズ3に埋設したFPCヒータに限られるものではなく、例えば発熱用ヒータをレンズ3の内面に対向配置した構成や、白熱バルブを点灯させてレンズ3を加熱する構成としてもよい。
【0028】
本発明における灯具は、実施例1に記載したような構成のLEDユニットに限定されるものではなく、また光源としてLEDを使用するランプに限られるものではなく、EL(エレクトロルミネッセンス)やLD(レーザダイオード)等の他の発光素子、さらには白熱バルブを光源とするランプであってもよい。また、本発明は実施例1に記載のヘッドランプに限られるものではなく、フォグランプやその他の標識用ランプであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1のヘッドランプの正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】コントローラの回路図である。
【図4】融雪動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】コントローラでの状況判定を説明する図である。
【図6】時間設定回路の温度依存性を示す図である。
【図7】給電・停止のタイミング図である。
【図8】コントローラ及びヒータ制御回路の他の実施例構成を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ランプボディ
2 光源ユニット(LEDユニット)
3 レンズ
4 電源用コネクタ
5 リード線
6 融雪装置
7 ヒータ用コネクタ
8 コントローラ
61 FPCヒータ(抵抗発熱体)
80 演算回路
81 点灯制御回路
82 ヒータ制御回路
TM タイマー回路部
SW スイッチ回路部
ATM 給電タイマー
STM 停止タイマー
ATS 給電時間設定回路
STS 停止時間設定回路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプボディの前面に配設されて光源から出射した光を透過させるレンズと、前記レンズに設けられ通電により発熱される発熱体と、前記発熱体に給電する電力を制御するための制御手段とを備える車両用灯具において、前記制御手段は給電開始条件を満たしたときに前記発熱体への給電を行う時間を設定する給電時間設定手段と、前記給電が完了したときに前記発熱体への給電を強制的に停止する時間を設定する停止時間設定手段とを備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記給電時間設定手段と前記停止時間設定手段は外気温情報に基づいてそれぞれの設定時間を可変することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記給電時間設定手段は外気温が低いときには給電時間を長く設定し、前記停止時間設定手段は外気温が低いときには停止時間を短く設定することを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記レンズあるいはレンズ近傍の温度を検出する温度検出素子を備え、前記外気温情報として前記温度検出素子の出力を用いることを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記制御手段は前記ランプボディの外部に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記制御手段は前記ランプボディ内に内装されて前記発熱体に接続されるコネクタに内蔵されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用灯具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−123830(P2008−123830A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306199(P2006−306199)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】