説明

車両用燃料電池システム

【課題】無駄な電力を消費することなく酸化剤を排気させることが可能な燃料電池用圧力調整装置を提供する。
【解決手段】ステッピングモータ258が滅勢されると、蓄勢された全開スプリング294の弾発力により、受け部材290および被動板300を介してバルブシャフト276が弁体278を開弁する方向に回動する。このとき、被動板300とともに駆動板268が回動する。弁体278が全開位置まで到達すると、駆動板268に形成された位置決め部272がストッパピン274に当接することによって、駆動板268の回動が阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のカソードから排出される酸化剤の排出量を制御することにより、前記カソードに供給される酸化剤の流量ないし圧力を調整する燃料電池用圧力調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子膜型燃料電池は、固体高分子電解質膜をアノードとカソードとで両側から挟み込んで形成されたセルが複数個積層されたスタックを備えている。このようなスタックにおいては、前記セルの各アノードに燃料として水素が供給される一方、各カソードに酸化剤としてエアーが供給される。そして、アノードで触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を通過してカソードまで移動して、カソードで電気化学反応を起こして発電するようになっている。
【0003】
このスタックを含む燃料電池システムは、例えば、カソード側にエアーを供給するためのエアーコンプレッサ等を備え、さらに、このエアーの圧力を信号圧として、該エアーの圧力に応じた圧力でアノード側に水素を供給する圧力制御弁を備え、燃料電池のカソード側に対するアノード側の反応ガスの圧力を所定圧に調圧して所定の発電効率を確保するとともに、燃料電池に供給される反応ガスの流量を制御することで所定の出力が得られるように設定されている。
【0004】
このような固体高分子膜型燃料電池においては、固体高分子電解質膜に加わる圧力や、アノードとカソードとの差圧を調整するために、エアーの供給流量ないし圧力が調整される。具体的には、未反応の酸化剤ガスと、発電に伴って生成したH2Oとをカソードから排気するための排気ラインに圧力調整弁を設け、カソード内の圧力を調整するようにしている(特許文献1および特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−176526号公報(段落[0005])
【特許文献2】特開2002−313382号公報(段落[0004])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した圧力調整弁としては、一般的に、バタフライ弁が採用される。この場合、弁体を開閉する制御モータが通電されていないときには、弁体がスプリングによって弁閉方向に付勢される。また、制御モータが通電されたときには、該制御モータは、前記スプリングの弾発力に抗して弁体が開放する方向に回動する。すなわち、圧力調整弁としては、いわゆるノーマルクローズド型バルブが使用される。
【0006】
しかしながら、例えば、燃料電池システムを自動車等に搭載する場合、該自動車の安定走行中は、この圧力調整弁が弁開状態で使用される。したがって、ノーマルクローズド型バルブを圧力調整弁とした場合、自動車の走行中に該弁を弁開状態とするために、制御モータに常に通電しなければならない。
【0007】
本発明は上記した問題を解決するためになされたものであり、非通電時に弁開状態となるので、燃料電池システムを運転する際に無駄な電力を消費することがない燃料電池用圧力調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、燃料電池のカソードに供給された酸化剤を排気する排気ラインに配設され、排出される前記酸化剤の排出量を制御することで前記カソード内における前記酸化剤の圧力を調整する燃料電池用圧力調整装置であって、
前記酸化剤が通過する開口部と、
前記開口部を開放または閉止する弁体と、
前記弁体が連結された回転軸を、前記開口部が開放する方向に回動付勢する弾性部材と、
前記弾性部材による前記弁体の回動位置を規制し、前記開口部を全開状態に設定する規制部材と、
通電された際、前記弾性部材の弾発力に抗して前記開口部が閉止する方向に前記弁体を回動するモータと、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、例えば、燃料電池を発電させる最中に弁体を全開にする必要があるときには、モータを滅勢すればよい。これに伴い、弾性部材の弾発力によって弁体が全開位置にまで回動し、燃料電池用圧力調整装置が全開状態に設定される。すなわち、燃料電池用圧力調整装置を全開状態に設定する際には、モータに通電する必要がない。このため、燃料電池システムを運転するために必要な電力を低減することができる。
【0010】
本発明においては、モータがステッピングモータであることが好ましい。ステッピングモータは非接触式であるため、例えば、ステッピングモータの近傍に水素雰囲気があったとしても、好適に使用することが可能となる。
【0011】
いずれの場合においても、回転軸はベアリングによって軸止され、かつ該ベアリングと前記開口部との間にシール部材が配設されていることが好ましい。これにより、燃料電池スタックの発電に伴って生成した水がモータ等に浸入することを回避することができる。
【0012】
また、弁体、回転軸、および/またはベアリングがステンレス鋼からなることが好ましい。この場合、燃料電池スタックの発電に伴って生成した水を含む湿潤ガスがこれらの各部材に接触しても、該各部材に錆が発生することが著しく抑制されるからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料電池スタックのカソードから酸化剤ガスを排気する場合には、弁体を駆動するモータを滅勢状態(非通電状態)とし、弾性部材の弾発力のみによって通路の全開状態を維持することができる。したがって、全開状態を維持するために無駄な電力を消費することがない。
【0014】
すなわち、本発明によれば、燃料電池システムを運転するために必要な電力を低減することができるという効果が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る燃料電池用圧力調整装置につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1に、本実施の形態に係る燃料電池用圧力調整装置が組み込まれた燃料電池システム200を示す。なお、この燃料電池システム200は、例えば、自動車等の車両に搭載される。
【0017】
燃料電池システム200は、例えば、高分子を素材としたイオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜をアノードとカソードとで両側から挟み込むことによって形成されたセルが複数個積層されることによって設けられた燃料電池スタック202を含む。
【0018】
前記セルの各カソードには、酸化剤として酸素を含むエアーが供給され、一方、各アノードには、燃料として水素が供給される。すなわち、カソード側には、酸化剤供給部204からのエアーが供給されるエアー供給口206と、該カソード内のエアーを外部に排出するためのエアー排出部208が接続されたエアー排出口210が設けられる。その一方で、アノード側には、燃料供給部212からの水素が供給される水素供給口214と、水素排出部216が接続された水素排出口218とが設けられる。
【0019】
エアー供給口206に接続されたエアー供給用通路219においては、前記酸化剤供給部204と、放熱部220と、カソード加湿部222とが上流側からこの順序で介装されている。
【0020】
酸化剤供給部204は、例えば、図示しないスーパーチャージャ(圧縮機)およびこれを駆動するモータ等から構成され、燃料電池スタック202で酸化剤ガスとして使用される酸素を含有するエアーを断熱圧縮して圧送する。この断熱圧縮の際にエアーが加熱される。このように加熱された圧縮エアーが、燃料電池スタック202の暖機に貢献する。
【0021】
放熱部220は、例えば、図示しないインタークーラ等から構成される。酸化剤供給部204から供給されたエアーは、該放熱部220に設けられた流路に沿って流通する冷却水と熱交換することによって冷却される。すなわち、エアーは、所定温度に冷却された後、カソード加湿部222に導入される。
【0022】
カソード加湿部222は、例えば、水透過膜を備えて構成され、該水透過膜の一端面から他端面に水分を透過させることにより、放熱部220によって所定の温度に冷却されたエアーを所定の湿度に加湿して燃料電池スタック202のエアー供給口206へと供給する。加湿されたエアーは燃料電池スタック202に供給され、これに伴って該燃料電池スタック202の固体高分子電解質膜に水分が付与されることによって、該膜のイオン伝導度が一定値以上に確保される。
【0023】
そして、上記したように、燃料電池スタック202のエアー排出口210にはエアー排出部208が接続される。このエアー排出部208には、図2に示す本実施の形態に係る燃料電池用圧力調整装置221が配設されている。大気中に排気されるエアーの排出量がこの燃料電池用圧力調整装置221によって調整されることに伴い、燃料電池スタック202(図1参照)のカソードに供給されるエアーの圧力が制御される。
【0024】
一方、前記水素供給口214に接続された水素供給通路223には、前記燃料供給部212と、圧力制御部224と、エゼクタ226と、アノード加湿部228とが上流側からこの順序で介装されている。また、水素排出口218には、循環用通路230を介して水素排出部216が接続される。
【0025】
燃料供給部212は、例えば、燃料電池に対する燃料として水素を供給する図示しない水素ガスボンベからなり、燃料電池スタック202のアノード側に供給される水素が貯蔵される。
【0026】
圧力制御部224は、例えば、空気式の比例圧力制御弁からなる。
【0027】
ここで、この圧力制御部224には、圧力制御用バイパス通路232を介してエアーが供給される。すなわち、前記酸化剤供給部204から供給されるエアーは、例えば、燃料電池スタック202の負荷や図示しないアクセルペダルの操作量等に応じて所定の圧力に設定されて燃料電池スタック202に導入される。これに伴い、水素の圧力を調整する必要が生じる。このため、圧力制御用バイパス通路232からのエアーの圧力をパイロット圧(信号圧)として、圧力制御部224の出口側圧力である二次側圧力を前記パイロット圧に対応した所定範囲の圧力に設定している。
【0028】
なお、図1から諒解されるように、圧力制御部224には、放熱部220によって冷却されたエアーが供給される。
【0029】
エゼクタ226は、図示しないノズル部とディフューザ部とから構成され、圧力制御部224から供給された水素は、ノズル部を通過する際に加速されてディフューザ部に向かって噴射される。ノズル部からディフューザ部に向かって水素が高速で流通する際、ノズル部とディフューザ部との間に設けられた副流室内で負圧が発生し、循環用通路230を介してアノード側の排出水素が吸引される。エゼクタ226で混合された水素および排出水素はアノード加湿部228へと供給され、燃料電池スタック202から排出された排出水素は、エゼクタ226を介して循環するように設けられている。
【0030】
このように、燃料電池スタック202の水素排出口218から排出された未反応の排出水素は、循環用通路230を介してエゼクタ226に導入され、圧力制御部224から供給された水素と、燃料電池スタック202から排出された排出水素とが混合されて燃料電池スタック202に再び供給されるように設けられている。
【0031】
アノード加湿部228は、例えば、水透過膜を備えて構成され、該水透過膜の一端面から他端面に水分を透過させることにより、エゼクタ226から導出された燃料を所定の湿度に加湿して燃料電池スタック202の水素供給口214へと供給している。すなわち、水素もエアー同様に加湿された状態で燃料電池スタック202に供給され、これにより、前記固体高分子電解質膜のイオン伝導度が一定値以上に確保される。
【0032】
水素排出口218には、例えば、図示しない排出制御弁を有する水素排出部216が循環用通路230を介して接続される。前記排出制御弁は、燃料電池スタック202の運転状態に応じて開閉動作が制御され、例えば、図示しない貯留タンクによって分離された排出ガス中の過剰な水分(主に液体水)等が車両外部に排出される。
【0033】
このように構成された燃料電池スタック202では、アノードで触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を通過してカソードまで移動し、カソードで酸素と電気化学反応を起こして発電するように設定されている。
【0034】
次に、図2および図3に基づき、エアー排出部208を構成する燃料電池用圧力調整装置221を詳細に説明する。
【0035】
燃料電池用圧力調整装置221は、カソードのエアー排出口210を外部に連通する通路225(開口部)が形成されたボデイ250と、シール部材252および連結板254を介してボルト255によりボデイ250に装着されるモータハウジング256とを備える。
【0036】
モータハウジング256には、駆動源であるステッピングモータ258が収容される。ステッピングモータ258は、ロータ260とステータ262とから構成されており、このうち、ロータ260の中心には、駆動軸264が配設される。該駆動軸264の一端部は、ベアリング266aを介してモータハウジング256に軸支され、かつ他端部はベアリング266bを介して連結板254に軸支される。
【0037】
駆動軸264の他端部は、連結板254を貫通してボデイ250内に臨入し、その先端には、駆動板268が装着される。この駆動板268は、図3に示すように、一部が通路225側に起立し、後述する連結スプリング306の端部を係止する係止溝269が形成された係止部270を有する。また、駆動板268には、通路225側に突出し、後述する弁体を全開位置に位置決めするための位置決め部272が設けられる。一方、ボデイ250の所定部位には、位置決め部272が当接することで、弁体を全開位置に位置決めするストッパピン274が配設される。
【0038】
図2および図3に示すように、ボデイ250の通路225には、回転軸としてのバルブシャフト276に連結部材としてのボルト277a、277bにて固定され、通路225の開度を制御する弁体278が配設される。バルブシャフト276の各端部は、ベアリング280a、280bおよびシール部材282a、282bを介してボデイ250に軸支される(図2参照)。この場合、バルブシャフト276、ボルト277a、277b、弁体278、および、ベアリング280a、280bは、全てステンレス鋼からなる。
【0039】
なお、ベアリング280a、280bは、カラー281a、281bによって保持される。また、シール部材282a、282bは、通路225から離間する方向に傾斜した状態でバルブシャフト276を周回する第1リップ部284aと、通路225側に傾斜した状態でバルブシャフト276を周回する第2リップ部284bとを有する。これらの第1リップ部284aおよび第2リップ部284bにより、通路225からボデイ250側へのガス漏れ、およびボデイ250側から通路225への不純物、例えば、ベアリング280a、280bの潤滑グリース等の侵入を確実に阻止することができる。
【0040】
ベアリング280a側のバルブシャフト276の端部に近接して、弁体278の通路225に対する開度を検出する開度センサ286が配設される。開度センサ286は、例えば、バルブシャフト276の端部に埋め込まれたマグネットからの磁界を検出することで、バルブシャフト276の回動位置を検出するホール素子によって構成することができる。
【0041】
一方、バルブシャフト276のベアリング280b側の端部には、カラー288を介して受け部材290が固定される。バルブシャフト276を支持するボス部292の外周部には、弁体278を全開状態に付勢するための全開スプリング294(弾性部材)が配設される。この場合、図2に示すように、全開スプリング294の一端部がボデイ250の段部296に係合し、かつ他端部が受け部材290に形成した孔部298に係合することによって、ボデイ250と受け部材290とが連結されている。換言すれば、ボデイ250と受け部材290とは、全開スプリング294を介して連結されている。
【0042】
また、受け部材290には、被動板300が固定される。この被動板300には、中央部に周回する溝部302が形成されており、該溝部302には、受け部材290の端面に設けられた突起部303が挿入されている。
【0043】
さらに、被動板300の溝部302には、受け部材304が固定される。この受け部材304の側周壁には、バルブシャフト276とステッピングモータ258の駆動軸264とを連結する連結スプリング306が巻回される。この場合、連結スプリング306は、一端部が被動板300の突起部303に係合し、他端部が駆動板268の係止部270に形成した係止溝269に係合する。
【0044】
これにより、被動板300に設けられた係合部300aが位置決め部272の裏面に当接係合するようになっている。
【0045】
本実施の形態に係る燃料電池用圧力調整装置221は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作について説明する。
【0046】
燃料電池スタック202が発電していない休止状態にあるとき、燃料電池用圧力調整装置221の弁体278は、通路225を介してエアー排出口210を外部に連通する全開状態に設定されている(図2参照)。
【0047】
燃料電池スタック202による発電を開始する際、カソードに対して圧力の高いエアーを供給して発電反応を促進させるため、弁体278を一旦全閉状態とし、通路225を遮断する。
【0048】
この際にはステッピングモータ258が付勢され、これに伴って、駆動軸264が弁閉方向に回動される。このとき、駆動軸264に固定されている駆動板268が回動するとともに被動板300が回動する。被動板300は、バルブシャフト276に固定されているため、バルブシャフト276が図2の状態から90゜回動することで弁体278が通路225を閉塞する。
【0049】
この場合、ボデイ250におけるボス部292の外周部に配設されている全開スプリング294には、該全開スプリング294の一端部がボデイ250に係合し、かつ他端部がバルブシャフト276とともに回動する受け部材290に係合しているために捻られ、これにより弁体278を全開方向に付勢する弾発力が蓄勢されることになる。
【0050】
以上のようにして、燃料電池用圧力調整装置221により通路225が遮断された状態において、エアーは、酸化剤供給部204によって圧縮された後、放熱部220によって所定温度に冷却され、カソード加湿部222で加湿されてエアー供給口206からカソードに供給される。一方、燃料供給部212から供給された水素は、圧力制御部224において、圧力制御用バイパス通路232から供給されるエアーによるパイロット圧により所定圧に調整された後、エゼクタ226を介してアノード加湿部228で加湿され、水素供給口214からアノードに供給される。この結果、燃料電池スタック202による発電が開始される。なお、カソードに供給されるエアーの圧力は、燃料電池用圧力調整装置221を弁閉止状態とすることで上昇しているため、発電当初の発電反応が促進される。
【0051】
次に、発電状態が安定した後、所望の目標発電電流に従って燃料電池用圧力調整装置221が開弁制御され、燃料電池スタック202に供給するエアーの圧力が制御される。すなわち、ステッピングモータ258は、前述した場合と同様にして付勢され、弁体278が目標発電電流に応じた所定角度に開弁する。
【0052】
このように、本実施の形態においては、バルブシャフト276を回動付勢する駆動源としてステッピングモータ258を採用しているので、弁体278の開度を容易に調整することができる。この開度調整に伴って燃料電池スタック202のカソードに供給されるエアーの流量・圧力が調整され、結局、該燃料電池スタック202の発電量を容易に制御することができる。
【0053】
また、ステッピングモータ258は非接触型であるため、例えば、該ステッピングモータ258の近傍に水素雰囲気が存在する場合であっても、好適に使用することが可能となる。
【0054】
ここで、弁体278を全開位置とするには、ステッピングモータ258への通電を停止する。
【0055】
すなわち、ステッピングモータ258が滅勢されると、蓄勢された全開スプリング294の弾発力により、受け部材290および被動板300を介してバルブシャフト276が弁体278を開弁する方向に回動する。このとき、被動板300とともに駆動板268が回動する。
【0056】
バルブシャフト276の回動によって弁体278が全開位置まで到達すると、駆動板268に形成された位置決め部272がストッパピン274に当接するため、駆動板268の回動が阻止される。
【0057】
また、燃料電池スタック202による発電が停止された場合においても、燃料電池用圧力調整装置221は、弁体278を全開状態とし、エアー排出口210から水を含むエアーを外部に排出できる状態に設定される。
【0058】
このように、本実施の形態によれば、燃料電池スタック202の運転中または運転停止時に弁体278を全開にする場合、ステッピングモータ258への通電を停止すればよい。換言すれば、弁体278を全開にする際、ステッピングモータ258に通電する必要は特にない。このため、燃料電池システム200を運転させるために必要な計装電力を低減することができ、結局、燃料電池システム200を低電力で運転することができる。
【0059】
なお、上記したように、燃料電池スタック202のカソードにおいては、水素イオン、酸素および電子が電気化学的反応を起こすことによってH2Oが生成する。すなわち、通路225には、水ないし水蒸気を含んだ湿潤ガスが通過する。
【0060】
しかしながら、上記したように、バルブシャフト276、ボルト277a、277b、弁体278、およびベアリング280a、280bがステンレス鋼からなるので、これらの部材に錆が生じることが著しく抑制される。このため、バルブシャフト276や弁体278が確実に動作するので、確実に閉止・開放する燃料電池用圧力調整装置221を構成することができる。
【0061】
また、湿潤ガス中の水分が、例えば、弁体278に付着した後に凝縮して水が生成した場合であっても、この水は、弁体278とベアリング280a、280bとの間に介在されたシール部材282a、282bによって堰止される。すなわち、水がボデイ250側や開度センサ286側に流入することはない。このため、ステッピングモータ258や開度センサ286の各電気回路に水が混入することによって錆が発生したり、短絡が惹起されたりする等の不具合を回避することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施の形態に係る燃料電池用圧力調整装置が組み込まれた燃料電池システムの構成ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る燃料電池用圧力調整装置の要部概略断面構成図である。
【図3】図2に示す燃料電池用圧力調整装置の要部構成図である。
【符号の説明】
【0063】
200…燃料電池システム 202…燃料電池スタック
204…酸化剤供給部 206…エアー供給口
212…燃料供給部 214…水素供給口
219…エアー供給用通路 220…放熱部
221…燃料電池用圧力調整装置 222…カソード加湿部
223…水素供給通路 224…圧力制御部
225…通路 226…エゼクタ
228…アノード加湿部 230…循環用通路
232…圧力制御用バイパス通路 250…ボデイ
258…ステッピングモータ 264…駆動軸
266a、266b、280a、280b…ベアリング
268…駆動板 269…係止溝
272…位置決め部 274…ストッパピン
276…バルブシャフト 278…弁体
282a、282b…シール部材 284a、284b…リップ部
290、304…受け部材 294…全開スプリング
296…段部 298…孔部
300…被動板 306…連結スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池のカソードに供給された酸化剤を排気する排気ラインに配設され、排出される前記酸化剤の排出量を制御することで前記カソード内における前記酸化剤の圧力を調整する燃料電池用圧力調整装置であって、
前記酸化剤が通過する開口部と、
前記開口部を開放または閉止する弁体と、
前記弁体が連結された回転軸を、前記開口部が開放する方向に回動付勢する弾性部材と、
前記弾性部材による前記弁体の回動位置を規制し、前記開口部を全開状態に設定する規制部材と、
通電された際、前記弾性部材の弾発力に抗して前記開口部が閉止する方向に前記弁体を回動するモータと、
を備えることを特徴とする燃料電池用圧力調整装置。
【請求項2】
請求項1記載の調整装置において、前記モータがステッピングモータであることを特徴とする燃料電池用圧力調整装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の調整装置において、前記回転軸はベアリングによって軸止され、かつ前記ベアリングと前記開口部との間には、シール部材が配設されていることを特徴とする燃料電池用圧力調整装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の調整装置において、前記弁体、前記回転軸、および/または前記ベアリングは、ステンレス鋼からなることを特徴とする燃料電池用圧力調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−294470(P2007−294470A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158993(P2007−158993)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【分割の表示】特願2002−349168(P2002−349168)の分割
【原出願日】平成14年11月29日(2002.11.29)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】