説明

車両用空調装置

【課題】第1液体と車室内への送風空気とを熱交換させる第1ヒータコアと、第1液体よりも高温かつ小流量の第2液体と第1ヒータコアで加熱された送風空気とを熱交換させる第2ヒータコアとを備える加熱用熱交換器の小型化および生産性向上を図る。
【解決手段】加熱用熱交換器2の第1、第2ヒータコア10、20は、ともに、積層された複数の扁平状のチューブ11、21と、複数のチューブ11、21の長手方向一端側に連通し、冷却水入口側となる入口側タンク部12、22とを備えている。このとき、1つの入口側タンク50の内部を仕切壁51によって2つに仕切る構造として、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22を一体化させる。さらに、第1、第2ヒータコア10、20において、チューブ11、21同士を一体化させるとともに、フィン14、24同士を一体化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器を備える車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような車両用空調装置として、特許文献1、2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載のものでは、エンジン内部の冷却水流路として、シリンダヘッドを冷却するシリンダヘッド側流路とシリンダブロックを冷却するシリンダブロック側流路とがあり、シリンダヘッド側流路を通過した冷却水が1つの加熱用熱交換器に流入する構成となっている。
【0004】
また、特許文献2に記載のものでは、空気を加熱するための加熱用熱交換器を2つ備え、エンジンに設けられた1つの冷却水出口から流出の冷却水を分流させて、それぞれの加熱用熱交換器に流入させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5337704号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1008471号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、車両に搭載されるエンジンに対して、要求される出力を確保しつつ、従来よりも小型化させたいという要望がある。これを実現するために、圧縮比を上げたり、過給機付きエンジンでは過給圧を上げたりすると、ノッキングが生じる恐れがあるので、耐ノッキング性能を向上させる必要がある。そこで、耐ノッキング性能を向上させるために、シリンダヘッドを積極的に冷却することが考えられる。
【0007】
ただし、シリンダブロックについてはエンジン内部のフリクション増加を抑制するために、所定温度以上に維持する必要がある。このため、エンジン内部の冷却水流路として、シリンダヘッド側流路と、シリンダブロック側流路とを設け、シリンダヘッド側流路の冷却水流量をシリンダブロック側流路の冷却水流量よりも多くすることが考えられる。
【0008】
しかし、この場合、シリンダヘッドを冷却した後の冷却水温度が暖房に必要な最小温度よりも低くなり、特許文献1に記載の技術のように、シリンダヘッドを冷却した冷却水のみを熱源として車室内への送風空気を加熱すると、空気温度を十分に高くできないという問題が生じる。ちなみに、従来では、シリンダヘッドを冷却した後の冷却水温度は、80〜90℃程度であり、暖房に必要な最小温度を超えていたので、このような問題は生じなかった。
【0009】
そこで、加熱用熱交換器として、シリンダヘッドを冷却した冷却水と送風空気とを熱交換させる第1熱交換部と、シリンダブロックを冷却した冷却水と第1熱交換部で加熱された送風空気とを熱交換させる第2熱交換部とを備える構成とすることが考えられる。
【0010】
これによれば、第1熱交換部において、シリンダブロックを冷却した冷却水を熱源として、送風空気を加熱した後、第2熱交換部において、シリンダヘッド冷却後の冷却水よりも高温であるシリンダブロック冷却後の冷却水を熱源として、第1熱交換部で加熱された送風空気をさらに加熱するので、加熱用熱交換器通過後の空気温度を十分に高くすることができる。
【0011】
ところで、このような加熱用熱交換器の構成として、第1、第2熱交換部を既存のヒータコア(量産品)の部品を使用して構成し、別体に構成された第1、第2熱交換部を2列に配置する構成を採用することが考えられる。しかし、このように別体のヒータコアを2列に配置した構成とすると、加熱用熱交換器が大型化するとともに、ヒータコア2体分の部品が必要なため、生産性が悪いという問題が生じる。
【0012】
なお、このような問題は、第1熱交換部がシリンダヘッド冷却後の冷却水を熱源とし、第2熱交換部がシリンダブロック冷却後の冷却水を熱源とする場合に限らず、第1熱交換部が第1液体を熱源とし、第2熱交換部が第1液体よりも高温かつ小流量の第2液体を熱源とする場合に生じる問題である。
【0013】
本発明は上記点に鑑みて、第1熱交換部が第1液体を熱源とし、第2熱交換部が第1液体よりも高温かつ小流量の第2液体を熱源とする加熱用熱交換器において、加熱用熱交換器の小型化を図ることを目的とする。また、このような加熱用熱交換器の生産性向上を図ることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第1液体と第1液体よりも高温かつ小流量の第2液体とを熱源として、車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(2)を備え、
加熱用熱交換器(2)は、第1液体と送風空気とを熱交換させる第1熱交換部(10)と、第2液体と第1熱交換部(10)で加熱された送風空気とを熱交換させる第2熱交換部(20)とを備え、
第1、第2熱交換部(10、20)は、ともに、積層された複数のチューブ(11、21)と、複数のチューブ(11、21)の長手方向一端側に連通し、液体入口側となる入口側タンク部(12、22)と、複数のチューブ(11、21)の長手方向他端側に連通し、液体出口側となる出口側タンク部(13、23)とを備え、
第1熱交換部(10)の入口側タンク部(12)と第2熱交換部(20)の入口側タンク部(22)とは、1つのタンク部(50)の内部を仕切壁(51)で2つに仕切る構造として、一体化されていることを特徴としている。
【0015】
これによると、第1熱交換部(10)の入口側タンク部(12)と第2熱交換部(20)の入口側タンク部(22)とを一体化しているので、2つの入口側タンク部を別体として構成して離間させている場合と比較して、加熱用熱交換器を小型化できる。
【0016】
また、これによれば、1つのタンク部(50)の内部を仕切壁(51)で2つに仕切る構造としているので、2つの入口側タンク部を別体としている場合と比較して、第1、第2熱交換部の入口側タンク部の部品点数を低減できるので、生産性が向上する。
【0017】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、第1、第2熱交換部(10、20)は、ともに、複数のチューブ(11、21)の外面に設けられた伝熱促進のためのフィン(14、24)を備え、
第1熱交換部(10)のフィン(14)と第2熱交換部(20)のフィン(24)とは、一体化されていることを特徴としている。
【0018】
これによれば、第1、第2熱交換部のフィンが別体である場合と比較して、部品点数を低減でき、生産性が向上する。
【0019】
また、請求項3に記載の発明では、第1液体と第1液体よりも高温かつ小流量の第2液体とを熱源として、車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(2)を備え、
加熱用熱交換器(2)は、第1液体と送風空気とを熱交換させる第1熱交換部(10)と、第2液体と第1熱交換部(10)で加熱された送風空気とを熱交換させる第2熱交換部(20)とを備え、
第1、第2熱交換部(10、20)は、ともに、積層された複数のチューブ(11、21)と、複数のチューブ(11、21)の長手方向一端側に連通し、液体入口側となる入口側タンク部(12、22)と、複数のチューブ(11、21)の長手方向他端側に連通し、液体出口側となる出口側タンク部(13、23)と、複数のチューブ(11、21)の外面に設けられた伝熱促進のためのフィン(14、24)とを備え、
第1熱交換部(10)のフィン(14)と第2熱交換部(20)のフィン(24)とは、一体化されていることを特徴としている。
【0020】
これによれば、第1、第2熱交換部のフィンが別体である場合と比較して、部品点数を低減できるので、生産性向上を図るという目的を達成できる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1〜3に記載の発明において、第1熱交換部(10)のチューブ(11)と第2熱交換部(20)のチューブ(21)とは、一体化されていることを特徴としている。
【0022】
これによれば、第1、第2熱交換部のチューブを一体化しているので、第1、第2熱交換部のチューブを別体としている場合と比較して、第1、第2熱交換部の間隔を狭くでき、加熱用熱交換器の小型化が可能となるとともに、部品点数を低減できるので、生産性が向上する。
【0023】
請求項5に記載の発明では、第1液体と第1液体よりも高温かつ小流量の第2液体とを熱源として、車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(2)を備え、
加熱用熱交換器(2)は、第1液体と送風空気とを熱交換させる第1熱交換部(10)と、第2液体と第1熱交換部(10)で加熱された送風空気とを熱交換させる第2熱交換部(20)とを備え、
第1、第2熱交換部(10、20)は、ともに、積層された複数のチューブ(11、21)と、複数のチューブ(11、21)の長手方向一端側に連通し、液体入口側となる入口側タンク部(12、22)と、複数のチューブ(11、21)の長手方向他端側に連通し、液体出口側となる出口側タンク部(13、23)とを備え、
第1熱交換部(10)のチューブ(11)と第2熱交換部(20)のチューブ(21)とは、一体化されていることを特徴としている。
【0024】
これによれば、第1、第2熱交換部のチューブを一体化しているので、第1、第2熱交換部のチューブを別体として離間させている場合と比較して、第1、第2熱交換部の間隔を狭くでき、加熱用熱交換器の小型化が可能となる。
【0025】
さらに、これによれば、第1、第2熱交換部のチューブが別体である場合と比較して、部品点数を低減できるので、生産性向上を図るという目的を達成できる。
【0026】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態における車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】図1中の加熱用熱交換器2の正面図である。
【図3】図1中の加熱用熱交換器2の側面図である。
【図4】図3中のIV−IV線断面図である。
【図5】図2中のV−V線断面図である。
【図6】第2実施形態における加熱用熱交換器2の側面図である。
【図7】図6中のVII−VII線断面図である。
【図8】第3実施形態における加熱用熱交換器2の側面図である。
【図9】図8中のIX−IX線断面図である。
【図10】第3実施形態における第1、第2ヒータコアの共通チューブ80の横断面図である。
【図11】第3実施形態における第1、第2ヒータコアの共通チューブ80の横断面図である。
【図12】第3実施形態における第1、第2ヒータコアの入口側タンク部12、22の横断面図である。
【図13】図12中における仕切壁51のA1矢視図である。
【図14】第4実施形態における加熱用熱交換器2の側面図である。
【図15】第5実施形態における加熱用熱交換器2の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0029】
(第1実施形態)
図1に本実施形態における車両用空調装置の概略構成を示す。本実施形態の車両用空調装置は、エンジン(内燃機関)および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車等に搭載されるものである。
【0030】
本実施形態の車両用空調装置1は、エンジン30の冷却水と車室内への送風空気とを熱交換させることにより、車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器2を備えている。なお、冷却水は水もしくは添加成分を含む水である。
【0031】
加熱用熱交換器2は、第1ヒータコア10と第2ヒータコア20とを有し、両者が一体化したものである。第1ヒータコア10、第2ヒータコア20が、それぞれ、本発明における加熱用熱交換器の第1熱交換部、第2熱交換部に相当する。
【0032】
第1ヒータコア10はエンジン30のシリンダヘッド31を冷却した冷却水が流入し、第2ヒータコア20はエンジン30のシリンダブロック32を冷却した冷却水が流入するようになっている。また、第1ヒータコア10は、空気流れ上流側に位置し、第2ヒータコア20は、空気流れ下流側に位置している。
【0033】
ここで、エンジン30において、シリンダブロック32は、ピストンが往復運動するシリンダボア(円柱状の穴)を構成するブロック体である。シリンダヘッド31は、シリンダボアの上死点側の開口部を閉塞して燃焼室を構成するブロック体である。
【0034】
エンジン30のシリンダヘッド31側に第1冷却水入口31aと第1出口部としての第1冷却水出口31bとが設けられ、シリンダヘッド31の内部には、シリンダヘッド31を冷却する冷却水が流れるシリンダヘッド側の冷却水流路が形成されている。第1冷却水入口31aから流入した冷却水は、シリンダヘッド31の内部を流れた後、第1冷却水出口31bから流出する。
【0035】
同様に、エンジン30のシリンダブロック32側に第2冷却水入口32aと第2出口部としての第2冷却水出口32bとが設けられ、シリンダブロック32の内部には、シリンダブロック32を冷却する冷却水が流れるシリンダブロック側の冷却水流路が形成されている。第2冷却水入口32aから流入した冷却水は、シリンダブロック32の内部を流れた後、第2冷却水出口32bから流出する。このように、本実施形態では、シリンダブロック32を冷却した冷却水は、シリンダヘッド31を冷却した冷却水と合流することなく、第2冷却水出口32bから流出する。
【0036】
このように、本実施形態のエンジン30は2つの冷却系統を有している。そして、エンジン30の定常運転時に、シリンダヘッド側の冷却水流路の冷却水流量を、シリンダブロック側の冷却水流路の冷却水流量よりも多くして、シリンダブロック32よりもシリンダヘッド31を積極的に冷却するようになっている。これは、シリンダヘッド31を低温度にすることで、耐ノッキング性能を向上させるとともに、シリンダブロック32を高温度に維持することで、エンジンオイルの低粘度を維持して、エンジン内部のフリクション増加を抑制するためである。
【0037】
そして、加熱用熱交換器2において、第1ヒータコア10の冷却水入口10aは、エンジン30のシリンダヘッド31側の第1冷却水出口31bに配管を介して連結されており、第1冷却水出口31bから流出の冷却水が第1ヒータコア10に流入する。一方、第2ヒータコア20の冷却水入口20aは、エンジン30のシリンダブロック32側の第2冷却水出口32bに配管を介して連結されており、この第2冷却水出口32bから流出の冷却水が第2ヒータコア20に流入する。
【0038】
したがって、本実施形態では、第1ヒータコア10に低温かつ大流量の冷却水が流入し、第2ヒータコア20に高温かつ小流量の冷却水が流入する。具体的には、第1ヒータコア10に流入する冷却水の温度および流量は、30〜60℃、5〜15L/minの範囲であり、第2ヒータコア20に流入する冷却水の温度および流量は、40〜90℃、0.2〜3L/minの範囲である。
【0039】
第1ヒータコア10および第2ヒータコア20は、後述の通り、それぞれ、独立した熱交換コア部を有している。このため、第1ヒータコア10に流入した冷却水は、第2ヒータコア20に流入した冷却水と混ざることなく、第1ヒータコア10の熱交換コア部で空気と熱交換する。同様に、第2ヒータコア20に流入した冷却水は、第1ヒータコア10に流入した冷却水と混ざることなく、第2ヒータコア20の熱交換コア部で空気と熱交換する。そして、各熱交換コア部を通過した冷却水は、合流した後、加熱用熱交換器2に設けられた共通の冷却水出口2bから流出するようになっている。
【0040】
加熱用熱交換器2の冷却水出口2bから流出の冷却水は、分岐部41で分岐して、エンジン30の第1冷却水入口31aと第2冷却水出口32aのそれぞれに流入する。
【0041】
また、図1に示すように、ウォータポンプ42が、加熱用熱交換器2の冷却水出口2bと分岐部41との間の冷却水流路途中に配置されている。ウォータポンプ42は、冷却水流れを形成するとともに、冷却水流量を調整する調整手段である。ウォータポンプ42は、メカ式あるいは電動式ポンプであり、図示しない制御装置によって回転数が制御されることで、冷却水流量を制御する。
【0042】
なお、エンジン30は、図示しないラジエータと連通しており、シリンダヘッド31から流出の冷却水がラジエータで放熱し、放熱後の冷却水がシリンダヘッド32に流入でき、シリンダブロック32から流出の冷却水がラジエータで放熱し、放熱後の冷却水がシリンダブロック32に流入できるようになっている。
【0043】
次に、加熱用熱交換器2について詳細に説明する。図2に空気流れ方向から見た加熱用熱交換器2の正面図を示し、図3に加熱用熱交換器2の側面図を示す。なお、図中の上下方向の矢印は、車両に搭載された状態での重力方向に対して平行な上下方向を示しており、他の図においても同様である。また、このときの車両は、傾斜面ではなく水平な面上に位置している。
【0044】
図2、3に示すように、加熱用熱交換器2の第1、第2ヒータコア10、20は、ともに、積層された複数本の扁平状のチューブ11、21と、複数本のチューブ11、21の長手方向一端側に連通し、冷却水入口側となる入口側タンク部12、22と、複数本のチューブ11、21の長手方向他端側に連通し、冷却水出口側となる出口側タンク部13、23とを備えている。
【0045】
加熱用熱交換器2は、車室内に向かう送風空気を形成する図示しない送風機とともに図示しない空調ケースに収容されて、車両に搭載されている。具体的には、加熱用熱交換器2は、第2ヒータコア20が第1ヒータコア10よりも空気流れ下流側に位置するとともに、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22が下側に位置し、第1、第2ヒータコア10、20の出口側タンク部13、23が上側に位置し、さらに、チューブ11、21の長手方向が鉛直方向に平行な向きとなるように、車両に搭載されている。
【0046】
第1ヒータコア10と第2ヒータコア20とは、空気流れ方向で見たときの左右上下方向の大きさが同等である。これにより、第1ヒータコア10通過後の空気の全てが第2ヒータコア20を通過するようになっている。
【0047】
第1、第2ヒータコア10、20の両方において、複数のチューブ11、21は、一方向(上下方向)に延びており、その一方向に垂直な方向である車両左右方向に一列に並ぶように積層されている。入口側タンク部12、22と出口側タンク部13、23は、チューブ11、21の積層方向に細長く延びる形状になっている。したがって、車両左右方向は、チューブ11、21の積層方向、入口側タンク部12、22の長手方向に相当する。
【0048】
また、第1、第2ヒータコア10、20は、チューブ11、21の外面に接合された伝熱促進のためのコルゲート状のフィン14、24を備えている。第1、第2ヒータコア10、20では、それぞれ、チューブ11、21とフィン14、24との積層構造により全パスタイプ、すなわち、一方向流れタイプの第1、第2熱交換コア部15、25が構成されている。
【0049】
したがって、第1、第2熱交換コア部15、25では、それぞれ、入口側タンク部12、22に流入した冷却水が複数のチューブ11、21に分配されて、複数のチューブ11、21内を下から上に向かって冷却水が流れる。
【0050】
ここで、図4に図3中のIV−IV線断面図を示す。図4に示すように、本実施形態では、第1ヒータコア10のチューブ11と、第2ヒータコア20のチューブ21とは別体であり、空間を挟むように、両者が離間して配置されている。同様に、第1ヒータコア10のフィン14と、第2ヒータコア20のフィン24とは別体であり、空間を挟むように、両者が離間して配置されている。そして、第1ヒータコア10のチューブ11と、第2ヒータコア20のチューブ21とは、空気流れ方向での幅が同じであり、両者の流路断面積は同じである。
【0051】
また、図3に示すように、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22は、一体化されており、1つの入口側タンク50の内部を仕切壁51によって2つに仕切ることで構成されている。
【0052】
ここで、図5に、図2中のV−V線断面図を示す。図5は、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22の横断面図である。図5に示すように、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22は、具体的には、共通のタンク本体部材52と共通のコアプレート53とによって形成されるタンク内部空間を、第1ヒータコア10側の空間と第2ヒータコア20側との空間とに仕切壁51で仕切ることで、構成されている。主にタンク内部空間を構成する共通のタンク本体部材52と、複数のチューブが挿入される共通のコアプレート53と、仕切壁51とは、アルミニウム等の金属で構成されており、ろう付けされている。
【0053】
また、図2、3に示すように、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22のそれぞれに、冷却水入口10a、20aが設けられている。これらの冷却水入口10a、20aは、入口側タンク部12、22のうち、車両左右方向(図2の左右方向)での一端側に配置されている。
【0054】
第1、第2ヒータコア10、20の出口側タンク部13、23は、1つの出口側タンク63で共通化されている。この出口側タンク63には1つの冷却水出口2bが設けられている。このため、出口側タンク63の内部で、第1ヒータコア10に流入した冷却水と、第2ヒータコア20に流入した冷却水とが合流し、合流した冷却水が1つの冷却水出口2bから流出する。なお、冷却水出口2bは、冷却水入口10a、20aと同じ車両左右方向での一端側に配置されている。
【0055】
このように、本実施形態では、第1、第2ヒータコア10、20の出口側タンク部を共通化して、加熱用熱交換器2の冷却水出口2bを1つにしているが、第1、第2ヒータコア10、20のそれぞれに出口側タンク部および冷却水出口を設けても良い。ただし、加熱用熱交換2とエンジン30との間に接続する配管を少なくしたり、後述するウォータポンプの数を少なくしたりするという観点では、本実施形態の方が好ましい。
【0056】
なお、空調ケースには、加熱用熱交換器2を迂回して送風空気が流れるバイパス空気通路と、バイパス空気通路の通過後の空気と、加熱用熱交換器2の通過後の空気との混合割合を調整するエアミックスドアとが設けられている。そして、加熱用熱交換器2通過後の空気が流れる空気流路は、その下側がフット吹出口に連なっており、その上側がデフロスタ吹出口、フェイス吹出口に連なっている。
【0057】
次に、本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。
【0058】
車両用空調装置1の図示しない制御装置は、暖房時に、目標吹出空気温度TAOに応じた送風量となるように送風機を制御し、所望の位置となるようにエアミックスドアを制御する。目標吹出空気温度TAOは、設定温度、環境条件によって定まる空調熱負荷に応じて算出されるもので、吹出口から車室内へ吹き出す空気の目標温度である。
【0059】
これにより、第1ヒータコア10では、シリンダヘッド31冷却後の冷却水との熱交換によって送風空気を加熱する。シリンダヘッド31冷却後の冷却水は、シリンダヘッド31を積極的に冷却しているため、暖房に必要な最小温度よりも低温ではあるが、シリンダブロック32冷却後の冷却水よりも大流量であり、熱量を多く有している。そこで、本実施形態では、シリンダヘッド31冷却後の冷却水の熱量をできるだけ多く取り出すために、第2ヒータコア20と比較して、第1ヒータコア10内部の冷却水流量を多くし、空気と冷却水との熱伝達係数を大きくしている。このため、第1ヒータコア10では、シリンダヘッド31冷却後の大流量の冷却水から多くの熱量を送風空気に供給できる。この結果、第1ヒータコア10通過後の空気の温度は、第1ヒータコア10に流入する前の冷却水温度(第1ヒータコアの入口水温)に近い温度となる。
【0060】
そして、第2ヒータコア20では、シリンダブロック32冷却後の冷却水との熱交換によって、第1ヒータコア10通過後の送風空気を加熱する。シリンダブロック32冷却後の冷却水は、シリンダヘッド31冷却後の冷却水よりも高温なので、第2ヒータコア20通過後の送風空気の温度を、第1ヒータコア10通過後の送風空気よりもさらに高い温度まで上昇させることができる。
【0061】
ところで、本実施形態とは異なり、特許文献1に記載の技術のように、シリンダヘッド31を冷却した冷却水のみを熱源として空気を加熱したのでは、空気温度を十分に高くできず、暖房が成立しない。また、エンジンから流出のシリンダヘッド31冷却後の冷却水とシリンダブロック32冷却後の冷却水とを全て混合してしまう場合、混合後の冷却水温度が暖房に必要な最小温度よりも低くなる。このため、冷却水から空気へのエネルギ伝達効率が低くなるので、混合後の冷却水を熱源として空気を加熱しても、空気温度を十分に高くできず、暖房が成立しない。
【0062】
これに対して、本実施形態では、エンジン30に第1冷却水出口31bと第2冷却水出口32bとを設け、第1冷却水出口31bからシリンダヘッド31冷却後の低温側冷却水を流出させ、第2冷却水出口32bからシリンダブロック32冷却後の高温側の冷却水を流出させている。そして、両方の冷却水を混合させることなく、第1冷却水出口31bから流出の低温側冷却水を第1ヒータコア10に流入させ、第2冷却水出口32bから流出の高温側冷却水を第2ヒータコア20に流入させている。
【0063】
このように、本実施形態では、第2ヒータコア20で、第2冷却水出口32bから流出の高温側の冷却水を熱源として車室内への送風空気を加熱するので、第1冷却水出口31bから流出の低温側の冷却水のみを熱源とする場合や、低温側冷却水と高温側冷却水とを混合した混合水を熱源とする場合と比較して、第2ヒータコア20で加熱後の空気温度を高くすることができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、第1ヒータコア10で低温側の冷却水を熱源として送風空気を加熱した後、この加熱後の空気を第2ヒータコア20で高温側の冷却水を熱源として加熱するので、低温側の冷却水と高温側の冷却水との両方の熱量を有効に利用できる。
【0065】
すなわち、本実施形態によれば、第1、第2冷却水出口部31b、32bの両方から流出の冷却水全体を混合したものを熱源として、1つのヒータコアで車室内への送風空気を加熱する場合と比較して、ヒータコアでの冷却水全体における冷却水から空気へのエネルギ伝達効率を高めることができる。この結果、送風機の送風量が多い場合であっても、空気を十分に高い温度まで上昇させることができ、暖房を成立させることができる。
【0066】
次に、本実施形態の車両用空調装置1の主な特徴を説明する。
【0067】
加熱用熱交換器2の構成として、第1、第2ヒータコア10、20の全てを既存のヒータコア(量産品)の部品を使用して構成し、別体に構成された第1、第2ヒータコア10、20を2列に配置する構成とした場合、従来部品を使用することができるので、新規部品が少なく済むという利点がある。
【0068】
しかし、従来部品の寸法とヒータコア同士の間隔とによって、加熱用熱交換器2全体の大きさが決まるため、従来部品の寸法が制約となり、加熱用熱交換器2を小型化できない。
【0069】
これに対して、本実施形態では、入口側タンク部12、22の構成部品を新規に設計し、1つの入口側タンク50の内部を仕切壁51によって2つに仕切る構造として、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22を一体化している。
【0070】
これにより、本実施形態によれば、2つの入口側タンク部12、22を別体として構成して離間させている場合と比較して、第1、第2ヒータコア10、20同士の間隔を狭められ、加熱用熱交換器2を小型化できる。
【0071】
この結果、本実施形態によれば、加熱用熱交換器2全体を小型化により、加熱用熱交換器2を搭載する空調ケースの小型化も可能となり、車両における空調ケースの搭載スペースを小型化できるので、車両搭載性が向上する。
【0072】
また、本実施形態によれば、1つの入口側タンク50の内部を仕切壁51によって2つに仕切る構造として、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22を一体化しているので、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22を別体として構成した場合と比較して、構成部材の必要量を低減できるので、加熱用熱交換器2を軽量化できる。
【0073】
ちなみに、本実施形態と異なり、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22を、出口側タンク部13、23のように1つの共通タンクとすることでも、加熱用熱交換器2の小型化が可能である。しかしながら、本実施形態では、上述の通り、第1、第2ヒータコア10、20のチューブ11、21に異なる温度の冷却水を流すために、1つの入口側タンク50の内部を仕切壁51によって2つに仕切る構造を採用しているのである。
【0074】
また、本実施形態によれば、1つの入口側タンク50の内部を仕切壁51によって2つに仕切る構造として、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22を一体化しているので、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22を別体としている場合と比較して、第1、第2ヒータコア10、20の部品点数を低減でき、組み付け工数を低減できるので、生産性を向上でき、製造コストを低減できる。
【0075】
また、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22を別体として構成した場合、第2ヒータコア20の入口側タンク部22からその外部へ無駄に放熱されてしまう。これに対して、本実施形態によれば、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22を一体化しているので、第2ヒータコア20の入口側タンク部22からの無駄な放熱分の熱を、第1ヒータコア10の入口タンク部12内の冷却水に移動させて、有効利用できる。
【0076】
また、第1、第2ヒータコア10、20が別体で構成されている場合、空調ケースへの組み付け時において、ヒータコアを空調ケース内に2回搭載する必要がある。これに対して、本実施形態によれば、第1、第2ヒータコア10、20が一体化しているので、空調ケース内に1回搭載すれば良いので、空調ケースへの搭載性が向上する。
【0077】
(第2実施形態)
図6に本実施形態における加熱用熱交換器2の側面図を示し、図7に図6中のVII−VII線断面図を示す。本実施形態は、第1実施形態で説明した加熱用熱交換器2に対して、さらに、第1ヒータコア10のフィン14と第2ヒータコア20のフィン24とを空気流れ方向で一体化したものである。なお、他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0078】
図6、7に示すように、本実施形態の加熱用熱交換器2は、第1ヒータコア10と第2ヒータコア20に共通のフィン70を備えている。この共通のフィン70は、空気流れ方向におけるフィンの長さが、第1ヒータコア10のチューブ11と第2ヒータコア20のチューブ21との両方に跨る長さである。この共通のフィン70が第1ヒータコア10のチューブ11と第2ヒータコア20のチューブ21とに跨って設けられている。このように、本実施形態では、第1ヒータコア10のフィン14と第2ヒータコア20のフィン24とが連続しており、第1ヒータコア10のチューブ11と第2ヒータコア20のチューブ21との間にもフィンが存在している。
【0079】
本実施形態によれば、第1ヒータコア10のフィン14と第2ヒータコア20のフィン24とを一体化しているので、両者が別体である第1実施形態と比較して、部品点数を低減でき、生産性向上や製造コストの低減を図ることができる。
【0080】
(第3実施形態)
図8に本実施形態における加熱用熱交換器2の側面図を示し、図9に図8中のIX−IX線断面図を示す。本実施形態の加熱用熱交換器2は、第2実施形態と同様に、入口側タンク部12、22の一体化およびフィン14、24の一体化に加えて、第1ヒータコア10のチューブ11と第2ヒータコア20のチューブ21とを空気流れ方向で一体化したものである。なお、他の構成については、第1、第2実施形態と同様である。
【0081】
図8、9に示すように、本実施形態の加熱用熱交換器2は、第1ヒータコア10と第2ヒータコア20に共通のチューブ80を複数備えている。1本の共通のチューブ80は、その内部が2つの流路に仕切られており、この2つの流路が第1ヒータコア10のチューブ11と第2ヒータコア20のチューブ21を構成している。
【0082】
ここで、図10、11に第1の例、第2の例における共通のチューブ80の横断面図を示す。共通のチューブ80としては、図10に示すように、1枚のプレート81を折り曲げて、ろう付けすることによって、2つの独立した流路を形成した構成を採用したり、図11に示すように、2枚のプレート82、83を重ね合わせて、ろう付けすることによって、2つの独立した流路を形成した構成を採用したりすることができる。このように、共通のプレートを用いて、第1ヒータコア10のチューブ11と第2ヒータコア20のチューブ21とを形成することができる。
【0083】
また、図12に第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22の横断面図を示し、図13に図12中における仕切壁51のA1矢視図を示す。図12、13に示すように、本実施形態では、仕切壁51は、共通のチューブ80のうちコアプレート53からはみ出ている部分に沿った形状の凹部51aを有している。これにより、仕切壁51は共通のチューブ80とコアプレート53とに連なって、共通のタンク本体部材52と共通のコアプレート53とによって形成されるタンク内部空間を、第1ヒータコア10側の空間と第2ヒータコア20側との空間とに仕切ることができる。
【0084】
このように、本実施形態では、第1ヒータコア10のチューブ11と第2ヒータコア20のチューブ21とを一体化しているので、両者を別体として離間させている第1、第2実施形態と比較して、第1、第2ヒータコア10、20の間隔を狭くでき、加熱用熱交換器2の小型化が可能となる。これは、第1、第2実施形態のように、両者を別体として離間させている場合では、各ヒータコアにおけるチューブと入口側タンク部との位置関係や、チューブ同士のろう材による接合防止に必要な間隔によって、第1、第2ヒータコア10、20のチューブ同士の間隔が決まってしまうが、第1、第2ヒータコア10、20のチューブ11、21を一体化した構造とすれば、チューブ自体の設計によって、第1、第2ヒータコア10、20のチューブ同士の間隔を決定できるからである。
【0085】
また、本実施形態では、1本の共通のチューブ80を共通のプレート81、82、83によって形成することで、第1ヒータコア10のチューブ11と第2ヒータコア20のチューブ21の2本分を形成できるので、第1ヒータコア10のチューブ11と第2ヒータコア20のチューブ21とを別体として形成する場合と比較して、生産性を向上できる。
【0086】
ちなみに、第1ヒータコア10のチューブ11と第2ヒータコア20のチューブ21とを一体化しても、第2ヒータコア20を流れる高温の冷却水から第1ヒータコア10を流れる低温の冷却水への熱移動量は少ないので、第2ヒータコア20を流れる冷却水の温度が第1ヒータコア10を流れる冷却水よりも高温であるという関係は変わらない。
【0087】
なお、本実施形態では、第1ヒータコア10のフィン14と第2ヒータコア20のフィン24とを一体化しているが、第1実施形態のように、両者を別体として離間させても良い。
【0088】
(第4実施形態)
図14に本実施形態における加熱用熱交換器の側面図を示す。本実施形態は、第3実施形態で説明した加熱用熱交換器2において、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22を別体としたものである。なお、他の構成については、第3実施形態と同様である。
【0089】
このように、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22を別体としても、第1、第2ヒータコア10、20のチューブ11、21を一体化しているので、両チューブ11、21を別体としている場合と比較して、加熱用熱交換器2を小型化でき、 生産性を向上できる。
【0090】
なお、本実施形態においては、第1、第2ヒータコア10、20のフィン14、24を別体として離間させても良い。
【0091】
また、本実施形態においては、第1、第2ヒータコア10、20のチューブ11、21を別体としても良い。この場合であっても、第1、第2ヒータコア10、20のフィン14、24を一体化しているので、両フィン14、24を別体としている場合と比較して、加熱用熱交換器2の生産性を向上できる。
【0092】
また、本実施形態においては、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22を別体として構成し、両タンク部同士の外壁を連結した構造として、第1、第2ヒータコア10、20の入口側タンク部12、22を一体化しても良い。
【0093】
(第5実施形態)
図15に本実施形態における加熱用熱交換器の側面図を示す。本実施形態は、第1実施形態で説明した図3に示す加熱用熱交換器2に対して、第1、第2ヒータコア10、20のチューブ11、21の幅を異ならせたものである。なお、他の構成は第1実施形態と同様である。
【0094】
第1実施形態で説明した通り、第1ヒータコア10に低温かつ大流量の冷却水が流入し、第2ヒータコア20に高温かつ小流量の冷却水が流入する。そこで、本実施形態では、冷却水の流量に応じて、図15に示すように、第1ヒータコア10のチューブ11の空気流れ方向での幅を長くして、流路断面積を大きくし、第2ヒータコア20のチューブ21の空気流れ方向での幅を短くして、流路断面積を小さくしている。
【0095】
このように、冷却水の流量に応じて、第1、第2ヒータコア10、20のチューブ11、21の幅を設定することが好ましい。
【0096】
なお、本実施形態は、第1実施形態の加熱用熱交換器2に限らず、第2〜第4実施形態で説明した加熱用熱交換器2にも適用可能である。
【0097】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、加熱用熱交換器2の車両搭載姿勢を、チューブ11、21の長手方向が鉛直方向に平行な向きとしたが、加熱用熱交換器2を側方から見たときに、チューブ11、21の長手方向と鉛直方向とのなす角度が鋭角となるように、加熱用熱交換器2が傾斜した状態としても良い。
【0098】
(2)上述の各実施形態では、エンジン30の第1冷却水出口31bから流出の冷却水は、シリンダヘッド31を冷却した冷却水のみであったが、シリンダヘッド31を冷却した冷却水に対してシリンダブロック32を冷却した冷却水の一部が混入した冷却水でも良い。要するに、エンジン30の第1冷却水出口31bから主にシリンダヘッド31を冷却した冷却水が流出するようになっていれば良い。
【0099】
同様に、エンジン30の第2冷却水出口32bから流出の冷却水は、シリンダブロック32を冷却した冷却水のみであったが、シリンダブロック32を冷却した冷却水に対してシリンダヘッド31を冷却した冷却水の一部が混入した冷却水でも良い。要するに、エンジン30の第2冷却水出口32bから主にシリンダブロック32を冷却した冷却水が流出し、第1冷却水出口31bから流出の冷却水よりも第2冷却水出口32bから流出の冷却水の方が高温になっていれば良い。
【0100】
ただし、エンジン30の第2冷却水出口32bから流出の冷却水については、シリンダヘッド31を冷却した後の冷却水とシリンダブロック32を冷却した後の冷却水とを全部混合した場合よりも高温とする。これにより、両方の冷却水を全部混合した場合と比較して、高温の冷却水をエンジン30から流出させることができるからである。
【0101】
(3)上述の各実施形態では、第2ヒータコア20に流入する冷却水は、エンジン30の第2冷却水出口32bから流出の冷却水のみであったが、第1冷却水出口31bから流出の冷却水の一部が混入しても良い。
【0102】
要するに、主に第2冷却水出口32bから流出の冷却水であって、第1ヒータコア10に流入する冷却水よりも高温の冷却水が第2ヒータコア20に流入するようになっていれば良い。ただし、第2ヒータコア20に流入する冷却水は、第2冷却水出口32bから流出の冷却水と第1冷却水出口31bから流出の冷却水とを全部混合したときの平均温度よりも高温とする。これにより、両方の冷却水を全部混合した場合と比較して、第2ヒータコア20で加熱後の空気温度を高くできるからである。
【0103】
(4)上述の各実施形態では、第1ヒータコア10がシリンダヘッド冷却後の冷却水を熱源とし、第2ヒータコア20がシリンダブロック冷却後の冷却水を熱源としていたが、第1ヒータコア10および第2ヒータコア20は、他の液体を熱源としても良い。第1ヒータコア10が第1液体を熱源とし、第2ヒータコア20が第1液体よりも高温かつ小流量の第2液体を熱源としている場合に、本発明の適用が可能である。
【0104】
例えば、ハイブリッド車両に搭載される車両用空調装置においては、第1液体としてインバータ等の電気機器の冷却液を用い、第2液体としてエンジンの冷却液を用いることができる。また、例えば、電気自動車に搭載される車両用空調装置においては、第1液体としてインバータ等の電気機器の冷却液を用い、第2液体として電気ヒータ等の加熱手段によって加熱した高温液体を用いることができる。このように、本発明の車両用空調装置は、ハイブリッド車両以外の車両にも搭載可能である。
【0105】
(5)上述の各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0106】
1 車両用空調装置
2 加熱用熱交換器
10 第1ヒータコア(第1熱交換部)
11 チューブ
12 入口側タンク部
13 出口側タンク部
20 第2ヒータコア(第2熱交換部)
21 チューブ
22 入口側タンク部
23 出口側タンク部
50 1つの入口側タンク
51 仕切壁
70 共通のフィン
80 共通のチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体と前記第1液体よりも高温かつ小流量の第2液体とを熱源として、車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(2)を備え、
前記加熱用熱交換器(2)は、前記第1液体と前記送風空気とを熱交換させる第1熱交換部(10)と、前記第2液体と前記第1熱交換部(10)で加熱された前記送風空気とを熱交換させる第2熱交換部(20)とを備え、
前記第1、第2熱交換部(10、20)は、ともに、積層された複数のチューブ(11、21)と、前記複数のチューブ(11、21)の長手方向一端側に連通し、液体入口側となる入口側タンク部(12、22)と、前記複数のチューブ(11、21)の長手方向他端側に連通し、液体出口側となる出口側タンク部(13、23)とを備え、
前記第1熱交換部(10)の前記入口側タンク部(12)と前記第2熱交換部(20)の前記入口側タンク部(22)とは、1つのタンク部(50)の内部を仕切壁(51)で2つに仕切る構造として、一体化されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記第1、第2熱交換部(10、20)は、ともに、前記複数のチューブ(11、21)の外面に設けられた伝熱促進のためのフィン(14、24)を備え、
前記第1熱交換部(10)のフィン(14)と前記第2熱交換部(20)のフィン(24)とは、一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
第1液体と前記第1液体よりも高温かつ小流量の第2液体とを熱源として、車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(2)を備え、
前記加熱用熱交換器(2)は、前記第1液体と前記送風空気とを熱交換させる第1熱交換部(10)と、前記第2液体と前記第1熱交換部(10)で加熱された前記送風空気とを熱交換させる第2熱交換部(20)とを備え、
前記第1、第2熱交換部(10、20)は、ともに、積層された複数のチューブ(11、21)と、前記複数のチューブ(11、21)の長手方向一端側に連通し、液体入口側となる入口側タンク部(12、22)と、前記複数のチューブ(11、21)の長手方向他端側に連通し、液体出口側となる出口側タンク部(13、23)と、前記複数のチューブ(11、21)の外面に設けられた伝熱促進のためのフィン(14、24)とを備え、
前記第1熱交換部(10)のフィン(14)と前記第2熱交換部(20)のフィン(24)とは、一体化されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
前記第1熱交換部(10)の前記チューブ(11)と前記第2熱交換部(20)の前記チューブ(21)とは、一体化されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
第1液体と前記第1液体よりも高温かつ小流量の第2液体とを熱源として、車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(2)を備え、
前記加熱用熱交換器(2)は、前記第1液体と前記送風空気とを熱交換させる第1熱交換部(10)と、前記第2液体と前記第1熱交換部(10)で加熱された前記送風空気とを熱交換させる第2熱交換部(20)とを備え、
前記第1、第2熱交換部(10、20)は、ともに、積層された複数のチューブ(11、21)と、前記複数のチューブ(11、21)の長手方向一端側に連通し、液体入口側となる入口側タンク部(12、22)と、前記複数のチューブ(11、21)の長手方向他端側に連通し、液体出口側となる出口側タンク部(13、23)とを備え、
前記第1熱交換部(10)の前記チューブ(11)と前記第2熱交換部(20)の前記チューブ(21)とは、一体化されていることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−145311(P2012−145311A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6182(P2011−6182)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】