説明

車両用空調装置

【課題】内燃機関の運転状態に関わらずに空調空気に安定した熱量を供給することができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置1は、作動流体をエンジン50の廃熱と熱交換させて蒸気化させる蒸気発生器11と、空気流路21上に設置され、通過する空調空気と蒸気発生器11にて蒸気化された作動流体とを熱交換させる第1ヒータコア26と、空気流路21上に設置され、通過する空調空気とエンジン50の冷却水とを熱交換させる第2ヒータコア27と、水温センサ31およびクランク角センサ32の検出結果に基づいて、第1ヒータコア26を通過させる空調空気量と第2ヒータコア27を通過させる空調空気量との比率を設定する設定手段と、設定手段の設定結果に基づいて空調空気量の比率を調節する切替ダンパ28と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の稼動に伴って排出される排ガスの熱を回収し車両の空調の熱源として利用する車両用空調装置が知られている。このような車両用空調装置としては、例えば、排気管に組付けられた蒸気発生器にて蒸気化された作動流体と内燃機関の冷却水とを熱交換させることで内燃機関の廃熱の回収効率を向上させる装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
また、その他本発明と関連性があると考えられる技術が特許文献2〜5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−156315号公報
【特許文献2】特開2008−111365号公報
【特許文献3】特開平11−170848号公報
【特許文献4】特開2004−142596号公報
【特許文献5】特開2010−155599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の空調の熱源として排ガスの熱を用いる場合、内燃機関の運転状態(負荷)に応じて排ガスから回収される熱量が大きく変化するため、車両の空調空気に安定した熱量を供給することが困難である。
【0006】
一方、水冷式内燃機関の冷却水の熱を回収し車両の空調の熱源として利用する車両用空調装置が広く知られている。このような車両用空調装置では、内燃機関の冷却水が比較的高温(例えば高負荷運転中)のときには空調空気に充分な熱量を供給することができるが、冷却水が比較的低温(例えば暖機運転中)のときには空調空気に充分な熱量を供給することができない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、内燃機関の運転状態に関わらずに空調空気に安定した熱量を供給することができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、水冷式内燃機関を搭載する車両に適用される車両用空調装置であって、作動流体を前記水冷式内燃機関の廃熱と熱交換させて蒸気化させる蒸気発生器と、前記車両の空調空気の流路上に設置され、空調空気と前記蒸気発生器にて蒸気化された作動流体とを熱交換させる第1熱交換器と、前記車両の空調空気の流路上に設置され、空調空気と前記水冷式内燃機関の冷却水とを熱交換させる第2熱交換器と、前記水冷式内燃機関の排ガス熱量を検出する排ガス熱量検出手段と、前記水冷式内燃機関の冷却水の温度を検出する水温検出手段と、前記排ガス熱量検出手段および前記水温検出手段の検出結果に基づいて、前記第1熱交換器を通過させる空調空気量と前記第2熱交換器を通過させる空調空気量との比率を設定する設定手段と、前記設定手段の設定結果に基づいて空調空気量の前記比率を調節する調節手段と、を備えることを特徴とする。
上記の構成により、水冷式内燃機関の排ガス熱量および冷却水温に基づいて、空調空気の熱源として利用する排ガスの熱と冷却水の熱との比率を調節することができる。よって、内燃機関の運転状態に関わらずに車両の空調空気に安定した熱量を供給することができる。
【0009】
特に、本発明の車両用空調装置は、前記設定手段が、前記排ガス熱量検出手段が検出した前記水冷式内燃機関の排ガス熱量が増大状態にある場合、または前記水温検出手段が検出した前記冷却水の温度がしきい値未満である場合に、前記車両の空調空気を前記第1熱交換器を通過させるように空調空気量の前記比率を増大させる構成とすることができる。
例えば、加速運転中で水冷式内燃機関の排ガスの熱エネルギが比較的高いとき、または、例えば暖機運転中で冷却水が比較的低温のときには、排ガスから回収される熱量の方が大きい。このような場合に、排ガスの熱を空調空気の熱源として利用するように設定することができることから、内燃機関の運転状態に関わらずに車両の空調空気に安定した熱量を供給することができる。
【0010】
また、本発明の車両用空調装置は、前記設定手段が、前記排ガス熱量検出手段が検出した前記水冷式内燃機関の排ガス熱量が減少状態にある場合、かつ前記水温検出手段が検出した前記冷却水の温度がしきい値以上である場合に、前記車両の空調空気を前記第1熱交換器および前記第2熱交換器を通過させるように空調空気量の前記比率を設定する構成とすることができる。
例えば、水冷式内燃機関が減速状態にあるときには排ガスから回収される熱量が大きく変化するが、冷却水から回収される熱量は安定している。このような場合に、排ガスの熱と冷却水の熱とを空調空気の熱源として利用するように設定することができることから、内燃機関の運転状態に関わらずに車両の空調空気に安定した熱量を供給することができる。また、排ガスの熱と冷却水の熱とを空調空気の熱源として利用することで、冷却水の過剰な温度低下に基づく内燃機関の燃費の悪化を抑制することができる。
【0011】
そして、本発明の車両用空調装置は、前記調節手段が、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とを開閉自在に設けられたダンパであって、前記設定手段の設定結果に基づいて前記ダンパの開度を調節することで、空調空気量の前記比率を調節する構成とすることができる。
上記の構成により、第1熱交換器と第2熱交換器との間に設けられたダンパの開度を調節することで、第1熱交換器を通過させる空調空気量と第2熱交換器を通過させる空調空気量との比率を容易に調節することができる。よって、内燃機関の運転状態に関わらずに車両の空調空気に安定した熱量を供給することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用空調装置によれば、内燃機関の運転状態に関わらずに空調空気に安定した熱量を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例の車両用空調装置の一構成例を示した図である。
【図2】図2(a)は空調空気の目標吹出温度と切替ダンパの開度との相関例を示しており、図2(b)は切替ダンパの開放タイミング例を示している。
【図3】ECUの処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】ECUの処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】実施例の車両用空調装置におけるヒータコア周辺の構成を示した図である。
【図6】ECUの処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の車両用空調装置1の一構成例を示した図である。
【0016】
図1に示す車両用空調装置1は、空調空気が流通する空気流路21上にエアフィルタ22、ブロワ23、エバポレータ24、エアミックスダンパ25を備えている。また、車両用空調装置1は、エンジン50の排気通路に組み付けられた蒸気発生器11を備えており、作動流体循環流路12を介して蒸気発生器11と連通する第1ヒータコア26を空気流路21上に備えている。そして、車両用空調装置1は、冷却水循環流路13を介してエンジン50のウォータジャケットと連通する第2ヒータコア27を空気流路21上に備えている。更に、車両用空調装置1は、第1ヒータコア26と第2ヒータコア27との間に切替ダンパ28を備えている。また、車両用空調装置1は、装置の運転動作を総括的に制御するECU(Electronic Control Unit)10を備えている。
【0017】
エンジン50は、車両に搭載される多気筒の水冷式内燃機関であって、その燃焼室の周辺に設けられたウォータジャケットの内部を冷却水が循環している。本実施例の冷却水として、例えば、エチレングリコール水溶液からなる一般的なLLC(Long Life Coolant)を用いることができるが、その他の冷媒を使用してもよい。ウォータジャケットには冷却水循環流路13が接続している。冷却水循環流路13の他方は第2ヒータコア27と接続しており、それによってエンジン50と第2ヒータコア27とを冷却水が循環するサイクルが形成されている。冷却水は、ウォータジャケットを循環する間にエンジン50と熱交換されることでエンジン50を冷却する。そして、エンジン50との熱交換で加熱された冷却水は、第2ヒータコア27を循環する間に空調空気と熱交換されることで空調空気を加熱する。空調空気との熱交換で冷却された冷却水は、再びウォータジャケットを循環してエンジン50を冷却する。
【0018】
エンジン50のウォータジャケットには、冷却水の温度を測定するための水温センサ31が設けられており、ウォータジャケット内部の冷却水温の検出結果をECU10へ送信する。それにより、ECU10は、エンジン50の冷却水の温度を認識する。この場合、水温センサ31は、エンジン50内部を循環する冷却水の温度を検出可能な任意の位置に設けることができる。また、ECU10は、水温センサ31の検出結果に代えて、排ガス温度等の他の検出温度から冷却水温を認識してもよいし、エンジン50の運転履歴から冷却水温を推定する構成であってもよい。
なお、水温センサ31は、本発明の水温検出手段の一構成例である。
【0019】
エンジン50のクランクシャフト軸の近傍には、クランク角センサ32が設けられている。クランク角センサ32は、クランクシャフト軸の回転角度を検出するように構成されており、検出結果をECU10に送信する。それにより、ECU10は、運転時のクランクシャフト軸の回転数や回転角速度など、クランク角に関する情報を取得する。そして、ECU10は、取得したクランクシャフト軸の回転数や回転角速度に基づきエンジン回転数やエンジントルクを算出してエンジン50の運転状態、すなわち排ガス熱量を算出する。
なお、クランク角センサ32は、本発明の排ガス熱量検出手段の一構成例である。
【0020】
蒸気発生器11は、エンジン50の排気浄化触媒の下流側の排気通路に設置された過熱機である。蒸気発生器11は、その内部を作動流体が循環している。本実施例の作動流体としては、冷却水と同様のLLCを用いることができるが、その他の流体を使用してもよい。蒸気発生器11には、作動流体循環流路12が接続されている。作動流体循環流路12の他方は第1ヒータコア26と接続しており、それによって蒸気発生器11と第1ヒータコア26とを作動流体が循環するサイクルが形成されている。作動流体は、蒸気発生器11を循環する間にエンジン50の排気通路を流通する排ガスと熱交換されることで蒸気化する。そして、蒸気化した作動流体は、第1ヒータコア26を循環する間に空調空気と熱交換されることで空調空気を加熱する。空調空気との熱交換で冷却された作動流体は液体に戻り、再び蒸気発生器11を循環して蒸気化される。
【0021】
空気流路21は、エンジン50を搭載する車両の内部に形成された空調空気の流路である。空気流路21は、車室外へ開口された空気導入口211と、運転席側の車室内へ開口された空気吹出口212とを有している。空気流路21には、空気導入口211側から順にエアフィルタ22、ブロワ23、エバポレータ24、エアミックスダンパ25、第1ヒータコア26および第2ヒータコア27、切替ダンパ28が設けられている。
【0022】
ブロワ23は、アクチュエータおよびファンから成る送風機である。ブロワ23は、ECU10の指令に応じてファンを回転させ、その回転力によって車室外から空調空気を吸引し、吸引した空調空気を空気吹出口212側へ送風する。
【0023】
エバポレータ24は、空気導入口211から導入された空調空気を冷却する冷却機である。エバポレータ24はその内部を冷媒が循環しており、ブロワ23によって吸引された空調空気と冷媒とを熱交換させることで空調空気を冷却する。空調空気との熱交換によって蒸気化した冷媒は、コンプレッサによって圧縮された後にコンデンサにて冷却されて液化する。液化した冷媒は、再びエバポレータ24を循環して空調空気を冷却する。
【0024】
エアミックスダンパ25は、エバポレータ24を通過した空調空気をヒータコア側とヒータコアを迂回する側とに分流するダンパである。エアミックスダンパ25は、ECU10の指令に基づきダンパ開度を調節することで、第1ヒータコア26および第2ヒータコア27を通過する空調空気の量と、第1ヒータコア26および第2ヒータコア27を迂回する空調空気の量と、を制御する。エアミックスダンパ25にて分流された空調空気は、空気流路21内で混合して所望の温度となった後に空気吹出口212から車室内に放出される。すなわち、ECU10は、空調空気の設定温度に基づきエアミックスダンパ25の開度を調節することで、車室内に放出される空調空気の温度を車両のユーザが所望する温度に調節する。
【0025】
第1ヒータコア26および第2ヒータコア27は、エアミックスダンパ25の下流側(空気吹出口212側)に設けられている。第1ヒータコア26は、作動流体循環流路12を介して蒸気発生器11と連通しており、その内部を蒸気発生器11にて蒸気化された作動流体が循環する。第2ヒータコア27は、冷却水循環流路13を介してエンジン50のウォータジャケットと連通しており、その内部をエンジン50の冷却水が循環する。エアミックスダンパ25にてヒータコア側に分流された空調空気は、第1ヒータコア26および第2ヒータコア27を通過する際に、作動流体および冷却水と熱交換することで加熱される。
なお、第1ヒータコア26および第2ヒータコア27は、本発明の第1熱交換器および第2熱交換器の一構成例である。
【0026】
第1ヒータコア26および第2ヒータコア27は、エバポレータ24側から空気吹出口212側の方向に対して、すなわち、空調空気の流れ方向に対して略直角方向に並列に設置されている。そして、第1ヒータコア26と第2ヒータコア27との間には切替ダンパ28が設けられている。切替ダンパ28は、第1ヒータコア26と第2ヒータコア27との間を軸とする開閉自在なダンパであって、第1ヒータコア26または第2ヒータコア27を下流側(空気吹出口212側)から開閉する。切替ダンパ28は、ECU10の指令に基づきダンパ開度を調節することで、ヒータコア側に分流された空調空気のうち第1ヒータコア26を通過する空調空気の量と第2ヒータコア27を通過する空調空気の量とを制御する。この場合、切替ダンパ28は、第1ヒータコア26または第2ヒータコア27を上流側(エバポレータ24側)から開閉する構成であってもよい。
切替ダンパ28にはダンパ開度センサ33が設けられている。ダンパ開度センサ33は、第2ヒータコア27に対する切替ダンパ28の開放角度を検出するように構成されており、検出結果をECU10に送信する。それにより、ECU10は、現在の切替ダンパ28の開度(%)を認識する。
【0027】
切替ダンパ28の開閉制御に基づく空調空気の流れ変化について説明する。切替ダンパ28が第2ヒータコア27の下流側を全閉する場合、ヒータコア側に分流された空調空気は第1ヒータコア26を通過し、蒸気発生器11にて蒸気化された作動流体と熱交換する。この場合、第1ヒータコア26と第2ヒータコア27とが並列に設置されているため、第1ヒータコア26を通過後の空調空気は第2ヒータコア27を循環する冷却水とは熱交換しない。一方、切替ダンパ28が開放されると、ヒータコア側に分流された空調空気の一部が第2ヒータコア27を通過し、エンジン50の冷却水と熱交換する。この場合、第1ヒータコア26を通過した空調空気と第2ヒータコア27を通過した空調空気とがヒータコアの下流側で混合して所定の温度になる。そして、切替ダンパ28の開度が大きくなるほど、第2ヒータコア27を通過する空調空気の量が増大してゆく。切替ダンパ28が全開になると、第1ヒータコア26を通過する空調空気の量と第2ヒータコア27を通過する空調空気の量とがおよそ1対1となる。一方、切替ダンパ28が第1ヒータコア26の下流側を閉鎖する場合、ヒータコア側に分流された空調空気は第2ヒータコア27を通過し、エンジン50の冷却水と熱交換する。この場合、第1ヒータコア26と第2ヒータコア27とが並列に設置されているため、第2ヒータコア27を通過後の空調空気は第1ヒータコア26を循環する作動流体とは熱交換しない。
なお、切替ダンパ28は、本発明の調節手段の一構成例である。
【0028】
ECU10は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)と、データ等を記憶するRAM(Random Access Memory)やNVRAM(Non Volatile RAM)と、を備えるコンピュータである。本実施例のECU10は、エンジン50の運転動作を統合的に制御するエンジンECUと兼ねているが、別途設けてもよい。
【0029】
ECU10は、エンジン50の排ガス熱量および冷却水の温度に基づいて、第1ヒータコア26を通過させる空調空気量と第2ヒータコア27を通過させる空調空気量との比率を設定する。そして、ECU10は、設定結果に基づいて各ヒータコアを通過する空調空気量の比率を調節する制御を実行する。以下に、ECU10が実行する車両用空調装置1の制御について説明する。
【0030】
まず、ECU10は、エンジン50の運転中(イグニッションスイッチON中)に、水温センサ31が検出する冷却水温が所定のしきい値未満であるか否かを判断する。ここで、冷却水温のしきい値とは、エンジン50の暖機運転が完了したと判断できる任意の冷却水温を適用し、例えば70℃とすることができる。エンジン50の冷却水温がしきい値未満でない(しきい値以上である)場合、ECU10は、更に、水温センサ31が検出する冷却水温がラジエータサーモの開放温度(例えば80℃)以上であるか否かを判断する。
【0031】
冷却水温がラジエータサーモの開放温度以上である場合、ECU10は、エンジン50の冷却水温が充分に高いと判断し、空調空気が第2ヒータコア27を通過するように空調空気量の比率を設定する。つづいて、ECU10は、設定した比率に基づいて、切替ダンパ28に第2ヒータコア27を開放しつつ第1ヒータコア26を閉鎖するよう指令する。
エンジン冷却水の温度が充分に高い場合には、冷却水の熱を空調空気の熱源として用いることで、運転状態に関わらずに空調空気に安定した熱量を供給することができる。また、高温の冷却水を空調空気と熱交換させることで、冷却水を効率よく冷却することができる。
【0032】
冷却水温がラジエータサーモの開放温度未満である場合は、ECU10は、エンジン50の排ガス熱量を判断する。本実施例においては、クランク角センサ32が検出するエンジン50の運転負荷(運転状態)から排ガス熱量を認識する。すなわち、ECU10は、クランク角センサ32の検出結果に基づいて、エンジン50を搭載する車両の運転状態が減速状態に、または停止状態(エンジン50がアイドル運転状態)にあるか否かを判断する。車両の運転状態が減速状態または停止状態にある場合、ECU10は、大量の空調空気が第1ヒータコア26を通過し、少量の空調空気が第2ヒータコア27を通過するように空調空気量の比率を設定する。つづいて、ECU10は、設定した比率に基づいて、切替ダンパ28に第2ヒータコア27を所定のタイミングで角度ηぶんだけ開放するよう指令する。なお、切替ダンパ28の開放タイミングおよびダンパ開度ηの算出例については後述する(図2参照)。車両の運転状態が減速状態または停止状態にない(すなわち定常運転状態または加速状態にある)場合は、ECU10は、排ガスから回収される熱量が充分に大きいと判断し、空調空気が第1ヒータコア26を通過するように空調空気量の比率を設定する。つづいて、ECU10は、設定した比率に基づいて、切替ダンパ28に第1ヒータコア26を開放しつつ第2ヒータコア27を閉鎖するよう指令する。
冷却水の温度が暖機運転完了の温度以上であって、かつ車両の運転状態が減速状態または停止状態にある場合には、空調空気の熱源として排ガスの熱と冷却水の熱とを併用することで、運転状態に関わらずに空調空気に安定した熱量を供給することができる。また、空調空気の熱源として排ガスの熱と冷却水の熱とを併用することで、空調空気との熱交換による冷却水の過剰な温度低下を抑制することができることから、内燃機関の燃費の悪化を抑制することができる。
【0033】
一方、エンジン50の冷却水温が所定のしきい値(暖機運転の完了温度)未満である場合、ECU10は、車両のユーザが要求する暖房の設定温度が高いか否かを判断する。ここで、暖房の設定温度の高低は、車両空調の標準温度(例えば25℃)からの乖離の大きさに基づいて判断することができる。ユーザが要求する暖房の設定温度が高くない(低い)場合、ECU10は、空調空気が第1ヒータコア26を通過するように空調空気量の比率を設定する。つづいて、ECU10は、設定した比率に基づいて、切替ダンパ28に第1ヒータコア26を開放しつつ第2ヒータコア27を閉鎖するよう指令する。
冷却水が比較的低温のときには、排ガスから回収される熱量の方が大きいため、排ガスの熱を空調空気の熱源として用いることで、内燃機関の運転状態に関わらずに車両の空調空気に安定した熱量を供給することができる。また、空調空気との熱交換による冷却水の過剰な温度低下を抑制することができることから、内燃機関の燃費の悪化を抑制することができる。
【0034】
ユーザが要求する暖房の設定温度が高い場合、ECU10は、クランク角センサ32の検出結果に基づいてエンジン50を搭載する車両の運転状態が停止状態(エンジン50がアイドル運転状態)にあるか否かを判断する。車両の運転状態が停止状態にある場合、ECU10は、つづいて冷却水の熱を空調空気の熱源として用いない場合の燃費の悪化(F1)が、冷却水の熱を空調空気の熱源として用いた場合の燃費の悪化(F2)よりも大きいか否かを判断する。ここで、それぞれの燃費の悪化ぶんについては、エンジン50の冷却水温と燃費との相関関係を予め台上試験等で求めてマップを作成し、ECU10のROM等に記憶しておくことが望ましい。上記の判断結果に基づき、ECU10は、よりエンジン50の燃費の悪化が抑制されるように空調空気量の比率を設定する。即ち、ECU10は、冷却水の熱を空調空気の熱源として用いない場合の燃費の悪化(F1)がより大きい場合は、空調空気が第2ヒータコア27を通過するように比率を設定し、切替ダンパ28に第2ヒータコア27を開放しつつ第1ヒータコア26を閉鎖するよう指令する。また、冷却水の熱を空調空気の熱源として用いた場合の燃費の悪化(F2)がより大きい場合は、空調空気が第1ヒータコア26を通過するように比率を設定し、切替ダンパ28に第1ヒータコア26を開放しつつ第2ヒータコア27を閉鎖するよう指令する。
このように空調空気量の比率を調節することによって、内燃機関の燃費の悪化を抑制しつつ空調空気に安定した熱量を供給することができる。
【0035】
車両の運転状態が停止状態にない(エンジン50がアイドル運転状態にない)場合、ECU10は、クランク角センサ32の検出結果に基づいて車両の運転状態が加速状態にあるか否かを判断する。この場合、例えばエンジン50の単位時間あたりにおける回転角速度の変化量が所定値以上であるときに車両が加速状態にあると判断することができる。車両の運転状態が加速状態にある場合、ECU10は、排ガスから回収される熱量が充分に大きいと判断し、空調空気が第1ヒータコア26を通過するように空調空気量の比率を設定し、切替ダンパ28に第1ヒータコア26を開放しつつ第2ヒータコア27を閉鎖するよう指令する。車両の運転状態が加速状態にない場合、ECU10は、更に、クランク角センサ32の検出結果に基づいて車両の運転状態が高速状態にあるか否かを判断する。この場合、例えばエンジン50を搭載する車両が所定の速度(例えば70km/h)以上にあるときに高速状態にあると判断することができる。
【0036】
車両の運転状態が高速状態にある場合、ECU10は、排ガスから回収される熱量が充分に大きいと判断し、空調空気が第1ヒータコア26を通過するように空調空気量の比率を設定し、切替ダンパ28に第1ヒータコア26を開放しつつ第2ヒータコア27を閉鎖するよう指令する。車両の運転状態が高速状態にない(低速状態にある)場合、ECU10は、第2ヒータコア27を閉鎖させつつ、エンジン50にアイドルストップ等の間欠運転の実行を禁止させて、排ガスからの回収熱量が減少することを抑制する。
ECU10は、イグニッションスイッチONの期間に上記の制御を繰り返す。
【0037】
また、ECU10は、エンジン50の排ガスの熱と冷却水の熱との両方を空調空気の熱源として利用する場合に、冷却水の熱を利用する割合を調節して冷却水の温度が過剰に低下することを抑制することができる。すなわち、ECU10は、エンジン50の運転状態および冷却水温に基づいて第2ヒータコア27を開放する切替ダンパ28の開度ηを調節することで、冷却水の過剰な温度低下に基づくエンジン50の燃費の悪化を抑制することができる。
【0038】
ここで、切替ダンパ28の開放タイミングおよびダンパ開度ηの算出について図2を用いて説明する。図2(a)は、空調空気の目標吹出温度と切替ダンパ28の開度との相関例を示している。図2(a)に示す相関関係は、予め台上試験等にて求めることができる。ECU10は、ユーザが設定する空調空気の温度に基づいて目標吹出温度を算出する。つづいて、ECU10は、算出した目標吹出温度から図2(a)に基づき第2ヒータコア27を開放する切替ダンパ28のダンパ開度ηを求める。
図2(b)は、切替ダンパ28の開放タイミング例を示している。車両用空調装置1において、冷却水の熱を空調空気の熱源として利用するタイミングを遅らせるほど、エンジン50の燃費の悪化を効果的に抑制することができる。一方、車両の運転状態が加速状態または定常状態から減速状態や停止状態に変化すると、排ガスから回収される熱量が大きく変化する。そこで、ECU10は、車両の運転状態と現在のダンパ開度から適切な開放タイミングを判断し、切替ダンパ28に第2ヒータコア27を開度ηぶん開放するよう指令する。例えば、現在のダンパ開度が小さい場合は車両が減速を開始してすぐに切替ダンパ28を開放させる(すなわち開放タイミングを早める)。一方、現在のダンパ開度が大きい場合には車両が減速を開始してから停止状態に近づいてから切替ダンパ28を開放させる(すなわち開放タイミングを遅らせる)。これによって、空調空気に安定した熱量を供給しつつエンジン50の燃費の悪化を抑制することができる。
【0039】
上記のECU10の制御をまとめて表1に示す。
【表1】

表1に示すように、切替ダンパ28の開度調節に加えてブロワ23の出力を制御するとより効果的である。
【0040】
このように、ECU10は、エンジン50の運転状態および冷却水温に基づいて空調空気量の比率を設定し切替ダンパ28の開閉を調節することで、空調空気の熱源をエンジン50の排ガスの熱と冷却水の熱との間で切り替える制御を実行する。これによって、エンジン50の運転状態に関わらずに車両の空調空気に安定した熱量を供給することができる。
また、ECU10は、エンジン50の運転状態が加速状態にある場合、または冷却水の温度が所定のしきい値未満である場合に、空調空気を第1ヒータコア26と熱交換させることで、より回収熱量の大きい排ガスの熱を空調空気の熱源として利用することができる。更に、ECU10は、エンジン50の運転状態が減速状態(またはアイドル運転状態)にある場合、かつ冷却水の温度が所定のしきい値以上である場合に、空調空気を第1ヒータコア26および第2ヒータコア27と熱交換させることで、空調空気に安定した熱量を供給しつつ、冷却水の過剰な温度低下に基づくエンジン50の燃費の悪化を抑制することができる。
なお、ECU10は、本発明の設定手段の一構成例である。
【0041】
つづいて、ECU10の制御の流れに沿って、車両用空調装置1の動作を説明する。図3および4は、ECU10の処理の一例を示すフローチャートである。本実施例の車両用空調装置1は、エンジン50の運転状態および冷却水温に基づいて空調空気量の比率を設定し切替ダンパ28の開閉を調節することで、空調空気の熱源をエンジン50の排ガスの熱と冷却水の熱との間で切り替える制御を実行する。
【0042】
ECU10の制御は、イグニッションスイッチがONされてエンジン50が始動されると開始し、エンジン50の運転中に以下の制御の処理を繰り返す。また、ECU10は、その制御の処理中、水温センサ31、クランク角センサ32、ダンパ開度センサ33の検出結果を常に受信する。
【0043】
まず、ECU10はステップS1で、水温センサ31の検出結果に基づきエンジン50の冷却水温が所定のしきい値未満であるか否かを判断する。なお、冷却水温のしきい値については前述したために、その詳細な説明は省略する。エンジン50の冷却水温がしきい値未満である場合(ステップS1/YES)、ECU10はステップS6へ進む。冷却水温がしきい値未満でない(しきい値以上である)場合(ステップS1/NO)、ECU10は次のステップS2へ進む。
【0044】
ステップS2で、ECU10は、水温センサ31の検出結果に基づきエンジン50の冷却水温がラジエータサーモの開放温度以上であるか否かを判断する。エンジン50の冷却水温がラジエータサーモの開放温度以上でない(開放温度未満である)場合(ステップS2/NO)、ECU10はステップS4へ進む。冷却水温がラジエータサーモの開放温度以上である場合(ステップS2/YES)は、ECU10は、エンジン50の冷却水温が充分に高いと判断し、次のステップS3へ進む。
【0045】
ステップS3で、ECU10は、空調空気が第2ヒータコア27を通過するように空調空気量の比率を設定し、切替ダンパ28に第2ヒータコア27を開放しつつ第1ヒータコア26を閉鎖するよう指令する。ECU10は、ステップS3の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0046】
ステップS2の判断がNOである場合、ECU10はステップS4へ進む。ステップS4で、ECU10は、クランク角センサ32の検出結果に基づきエンジン50を搭載する車両の運転状態が減速状態または停止状態にあるか否かを判断する。なお、車両が減速状態または停止状態にあるか否かの判断手法については前述したために、その詳細な説明は省略する。車両の運転状態が減速状態または停止状態にない(すなわち定常運転状態または加速状態にある)場合(ステップS4/NO)、ECU10は、排ガスから回収される熱量が充分に大きいと判断し、ステップS7へ進む。車両の運転状態が減速状態または停止状態にある場合(ステップS4/YES)は、ECU10は次のステップS5へ進む。
【0047】
ステップS5で、ECU10は、大量の空調空気が第1ヒータコア26を通過し、少量の空調空気が第2ヒータコア27を通過するように空調空気量の比率を設定する。そして、ECU10は、設定した比率に基づいて、切替ダンパ28に第2ヒータコア27を所定のタイミングで角度ηぶんだけ開放するよう指令する。なお、切替ダンパ28の開放タイミングおよびダンパ開度ηについては前述したために、その詳細な説明は省略する(図2参照)。ECU10は、ステップS5の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0048】
ステップS1の判断がYESである場合、ECU10はステップS6へ進む。ステップS6で、ECU10は、車両のユーザが設定する空調空気の温度が高いか否かを判断する。ここで、空調空気の設定温度の高低判断については前述したために、その詳細な説明は省略する。空調空気の設定温度が高い場合(ステップS6/YES)、ECU10は図4のAへ進む。空調空気の設定温度が高くない(低い)場合(ステップS6/NO)は、ECU10は次のステップS7へ進む。
【0049】
ステップS4の判断、またはステップS6の判断がNOである場合、ECU10はステップS7へ進む。ステップS7で、ECU10は、空調空気が第1ヒータコア26を通過するように空調空気量の比率を設定し、切替ダンパ28に第1ヒータコア26を開放しつつ第2ヒータコア27を閉鎖するよう指令する。ECU10は、ステップS7の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0050】
続いて、図4のA以降の処理について説明する。ステップS6の判断がNOである場合、ECU10はステップS8へ進む。ステップS8で、ECU10は、クランク角センサ32の検出結果に基づいて、エンジン50を搭載する車両の運転状態が停止状態(エンジン50がアイドル運転状態)にあるか否かを判断する。車両の運転状態が停止状態にない場合(ステップS8/NO)、ECU10はステップS11へ進む。車両の運転状態が停止状態にある場合(ステップS8/YES)は、ECU10は次のステップS9へ進む。
【0051】
ステップS9で、ECU10は、冷却水の熱を空調空気の熱源として用いない場合の燃費の悪化(F1)が、冷却水の熱を空調空気の熱源として用いた場合の燃費の悪化(F2)よりも大きいか否かを判断する。ここで、それぞれの燃費の悪化ぶんの認識方法については前述したために、その詳細な説明は省略する。F1がF2よりも大きくない(小さい)場合(ステップS9/NO)、ECU10は、冷却水を熱源として利用しない方が低燃費であると判断し、ステップS14へ進む。F1がF2よりも大きい場合(ステップS9/YES)は、ECU10は、冷却水を熱源として利用する方が低燃費であると判断し、次のステップS10へ進む。
【0052】
ステップS10で、ECU10は、空調空気が第2ヒータコア27を通過するように空調空気量の比率を設定し、切替ダンパ28に第2ヒータコア27を開放しつつ第1ヒータコア26を閉鎖するよう指令する。ECU10は、ステップS10の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0053】
ステップS8の判断がNOである場合、ECU10はステップS11へ進む。ステップS11で、ECU10は、クランク角センサ32の検出結果に基づいて、エンジン50を搭載する車両の運転状態が加速状態にあるか否かを判断する。なお、車両が加速状態にあるか否かの判断方法は前述したために、その詳細な説明は省略する。車両の運転状態が加速状態にある場合(ステップS11/YES)は、ECU10は、排ガスから回収される熱量が充分に大きいと判断し、ステップS14へ進む。車両の運転状態が加速状態にない場合(ステップS11/NO)、ECU10は次のステップS12へ進む。
【0054】
ステップS12で、ECU10は、クランク角センサ32の検出結果に基づいて、エンジン50を搭載する車両の運転状態が高速状態にあるか否かを判断する。なお、車両が高速状態にあるか否かの判断方法は前述したために、その詳細な説明は省略する。車両の運転状態が高速状態にある場合(ステップS12/YES)は、ECU10は、排ガスから回収される熱量が充分に大きいと判断し、ステップS14へ進む。車両の運転状態が高速状態にない(低速状態にある)場合(ステップS12/NO)、ECU10は次のステップS13へ進む。
【0055】
ステップS13で、ECU10は、空調空気が第1ヒータコア26を通過するように空調空気量の比率を設定し、切替ダンパ28に第1ヒータコア26を開放しつつ第2ヒータコア27を閉鎖するよう指令する。加えて、ECU10は、エンジン50にアイドルストップ等の間欠運転の実行を禁止させて、排ガスからの回収熱量が減少することを抑制する。ECU10は、ステップS13の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0056】
ステップS9の判断がNOである場合、またはステップS11の判断およびステップS12の判断がYESである場合、ECU10はステップS14へ進む。ステップS14で、ECU10は、空調空気が第1ヒータコア26を通過するように空調空気量の比率を設定し、切替ダンパ28に第1ヒータコア26を開放しつつ第2ヒータコア27を閉鎖するよう指令する。ECU10は、ステップS14の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0057】
上記の制御を実行することで、エンジン50の運転状態に関わらずに車両の空調空気に安定した熱量を供給することができる。更に、冷却水の過剰な温度低下に基づくエンジン50の燃費の悪化を抑制することができる。
【0058】
以上のように、本実施例の車両用空調装置は、作動流体をエンジンの廃熱と熱交換させて蒸気化させる蒸気発生器と、空気流路上に設置され、空調空気と蒸気発生器にて蒸気化された作動流体とを熱交換させる第1ヒータコアと、空気流路上に設置され、空調空気とエンジンの冷却水とを熱交換させる第2ヒータコアと、水温センサおよびクランク角センサの検出結果に基づいて、第1ヒータコアを通過させる空調空気量と第2ヒータコアを通過させる空調空気量との比率を設定する設定手段と、設定手段の設定結果に基づいて空調空気量の比率を調節する切替ダンパと、を備えることで、エンジンの運転状態に関わらずに車両の空調空気に安定した熱量を供給することができる。
【0059】
更に、本実施例の車両用空調装置は、エンジンの運転状態が加速状態にある場合、または冷却水の温度が所定のしきい値未満である場合に、空調空気を第1ヒータコアと熱交換させることで、より回収熱量の大きい排ガスの熱を空調空気の熱源として利用することができる。更に、本実施例の車両用空調装置は、エンジンの運転状態が減速状態(またはアイドル運転状態)にある場合、かつ冷却水の温度が所定のしきい値以上である場合に、空調空気を第1ヒータコアおよび第2ヒータコアと熱交換させることで、空調空気に安定した熱量を供給しつつ、冷却水の過剰な温度低下に基づくエンジンの燃費の悪化を抑制することができる。
【実施例2】
【0060】
つづいて、本発明の実施例2について説明する。本実施例の車両用空調装置2は、第2ヒータコア27の上流側に空気温センサ34と、第1ヒータコア26の下流側に第1吹出温センサ35と、を有しており、空気温センサ34および第1吹出温センサ35の検出結果に基づいて切替ダンパ28の開度ηを算出する点で車両用空調装置1と相違している。
【0061】
車両用空調装置2の第2ヒータコア27周辺の構造について詳細に説明する。図5は、実施例2の車両用空調装置2におけるヒータコア周辺の構成を示した図である。なお、実施例1と同様の構成要素については、図面中、同一の参照番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0062】
第2ヒータコア27の上流側(エバポレータ24側)には空気温センサ34が設けられている。空気温センサ34は、エバポレータ24を通過した後にエアミックスダンパ25によってヒータコア側に分流された空調空気の温度を検出し、検出結果をECU10へ送信する。ECU10は、受信した空気温センサ34の検出結果からエンジン50の冷却水と熱交換する前の空調空気の温度(T)を認識する。
また、第1ヒータコア26の下流側(空気吹出口212側)には第1吹出温センサ35が設けられている。第1吹出温センサ35は、エアミックスダンパ25によってヒータコア側に分流されて第1ヒータコア26を通過した後の空調空気の温度(蒸気側吹出温度:Ta1)を検出し、検出結果をECU10へ送信する。ECU10は、受信した第1吹出温センサ35の検出結果から蒸気化された作動流体と熱交換した後の空調空気の温度(Ta1)を認識する。
【0063】
ECU10は、空気温センサ34の検出結果に基づいて以下の(1)式より第2ヒータコア27を通過した後の空調空気の温度(水側吹出温度:Ta2)を算出する。
[水側吹出温度の算出式]
a2=T+C・ρ・V(Tw2−Tw1)/(C・ρ・V・η) ・・・(1)
(T:第2ヒータコア通過前の空調空気温度,C:冷却水比熱,ρ:冷却水密度,V:冷却水流量,Tw2:冷却水出口側温度,Tw1:冷却水入口側温度,C:空調空気比熱,ρ:空調空気密度,V:空調空気流量,η:現在ダンパ開度)
【0064】
ECU10は、上記(1)式から算出した水側吹出温度Ta2と、第1吹出温センサ35が検出した蒸気側吹出温度Ta1と、に基づいて、以下の(2)式より現在の空調空気の吹出温度Tを算出する。
[空調空気の吹出温度の算出式]
=Ta1(1−η)+Ta2・η ・・・(2)
【0065】
そして、ECU10は、上記(2)式から算出した現在の空調空気の吹出温度Tに基づいて、第2ヒータコア27と切替ダンパ28とのなす角度(すなわちダンパ開度η)を算出する制御を実行する。以下に、ECU10が実行する車両用空調装置2のダンパ開度制御について説明する。
【0066】
図6は、ECU10の処理の一例を示すフローチャートである。ECU10の制御は、イグニッションスイッチがONされてエンジン50が始動されると開始し、エンジン50の運転中に以下の制御の処理を繰り返す。また、ECU10は、その制御の処理中、ダンパ開度センサ33、空気温センサ34、第1吹出温センサ35の検出結果を常に受信する。
【0067】
まず、ECU10はステップS15で、上記(2)式から算出した現在の空調空気の吹出温度Tが、ユーザが設定する空調空気の温度に基づいて算出した目標吹出温度よりも大きいか否かを判断する。吹出温度Tが目標吹出温度よりも大きくない(小さい)場合(ステップS15/NO)、ECU10は、吹出温度Tをより上昇させる必要があると判断し、ステップS19へ進む。吹出温度Tが目標吹出温度よりも大きい場合(ステップS15/YES)は、ECU10は、吹出温度Tが充分に高温であると判断し、次のステップS16へ進む。
【0068】
ステップS16で、ECU10は、第1吹出温センサ35が検出した蒸気側吹出温度Ta1が上記(1)式から算出した水側吹出温度Ta2よりも大きいか否かを判断する。蒸気側吹出温度Ta1が水側吹出温度Ta2よりも大きくない(小さい)場合(ステップS16/NO)、ECU10はステップS18へ進む。蒸気側吹出温度Ta1が水側吹出温度Ta2よりも大きい場合(ステップS16/YES)は、ECU10は次のステップS17へ進む。
【0069】
ステップS17で、ECU10は、第2ヒータコア27と切替ダンパ28とのなす角度(ダンパ開度η)を現在の開度よりも小さく設定して、第2ヒータコア27を通過する空調空気量を減少させる。ECU10は、ステップS17の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0070】
ステップS16の判断がNOである場合、ECU10はステップS18へ進む。ステップS18で、ECU10は、第2ヒータコア27と切替ダンパ28とのなす角度(ダンパ開度η)を現在の開度よりも大きく設定して、第2ヒータコア27を通過する空調空気量を増大させる。ECU10は、ステップS18の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0071】
ステップS15の判断がNOである場合、ECU10はステップS19へ進む。ステップS19で、ECU10は、第1吹出温センサ35が検出した蒸気側吹出温度Ta1が上記(1)式から算出した水側吹出温度Ta2よりも大きいか否かを判断する。蒸気側吹出温度Ta1が水側吹出温度Ta2よりも大きくない(小さい)場合(ステップS19/NO)、ECU10はステップS21へ進む。蒸気側吹出温度Ta1が水側吹出温度Ta2よりも大きい場合(ステップS19/YES)は、ECU10は次のステップS20へ進む。
【0072】
ステップS20で、ECU10は、第2ヒータコア27と切替ダンパ28とのなす角度(ダンパ開度η)を現在の開度よりも大きく設定して、第2ヒータコア27を通過する空調空気量を増大させる。ECU10は、ステップS20の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0073】
ステップS19の判断がNOである場合、ECU10はステップS21へ進む。ステップS21で、ECU10は、第2ヒータコア27と切替ダンパ28とのなす角度(ダンパ開度η)を現在の開度よりも小さく設定して、第2ヒータコア27を通過する空調空気量を減少させる。ECU10は、ステップS21の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0074】
この制御を実行することで、状況に応じて適切な切替ダンパ28の開度を設定することができることから、エンジンの運転状態に関わらずに車両の空調空気に安定した熱量を供給することができる。
【0075】
なお、本実施例においては第1ヒータコア26の下流側にのみ吹出温センサ(第1吹出温センサ35)を設ける構成としたが、第2ヒータコア27の下流側にも吹出温センサ(第2吹出温センサ36)を設けてもよい。この場合、上記(1)式から算出した水側吹出温度Ta2に代えて、第2吹出温センサ36が検出する水側吹出温度Ta2を用いてダンパ開度ηを算出してもよい。
【0076】
上記実施例は本発明を実施するための一例にすぎない。よって本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0077】
例えば、クランク角センサ32が検出するエンジン50の運転状態に代えて、排気温センサおよび排ガス流量からエンジン50の排ガス熱量を認識する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1,2 車両用空調装置
10 ECU(設定手段)
11 蒸気発生器
21 空気流路
25 エアミックスダンパ
26 第1ヒータコア
27 第2ヒータコア
28 切替ダンパ(調節手段)
31 水温センサ(水温検出手段)
32 クランク角センサ(排ガス熱量検出手段)
50 エンジン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水冷式内燃機関を搭載する車両に適用される車両用空調装置であって、
作動流体を前記水冷式内燃機関の廃熱と熱交換させて蒸気化させる蒸気発生器と、
前記車両の空調空気の流路上に設置され、空調空気と前記蒸気発生器にて蒸気化された作動流体とを熱交換させる第1熱交換器と、
前記車両の空調空気の流路上に設置され、空調空気と前記水冷式内燃機関の冷却水とを熱交換させる第2熱交換器と、
前記水冷式内燃機関の排ガス熱量を検出する排ガス熱量検出手段と、
前記水冷式内燃機関の冷却水の温度を検出する水温検出手段と、
前記排ガス熱量検出手段および前記水温検出手段の検出結果に基づいて、前記第1熱交換器を通過させる空調空気量と前記第2熱交換器を通過させる空調空気量との比率を設定する設定手段と、
前記設定手段の設定結果に基づいて空調空気量の前記比率を調節する調節手段と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記排ガス熱量検出手段が検出した前記水冷式内燃機関の排ガス熱量が増大状態にある場合、または前記水温検出手段が検出した前記冷却水の温度がしきい値未満である場合に、前記車両の空調空気を前記第1熱交換器を通過させるように空調空気量の前記比率を増大させることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記排ガス熱量検出手段が検出した前記水冷式内燃機関の排ガス熱量が減少状態にある場合、かつ前記水温検出手段が検出した前記冷却水の温度がしきい値以上である場合に、前記車両の空調空気を前記第1熱交換器および前記第2熱交換器を通過させるように空調空気量の前記比率を設定することを特徴とする請求項1または2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記調節手段は、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とを開閉自在に設けられたダンパであって、前記設定手段の設定結果に基づいて前記ダンパの開度を調節することで、空調空気量の前記比率を調節することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−183963(P2012−183963A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49667(P2011−49667)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】