説明

車両用空調装置

【課題】暖房性能を確保しつつ、燃費効率の悪化を抑制するようにした車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置100では、空調用送風機から送風された空気を加熱する装置してヒータコア42を備え、暖房する装置としてシートヒータ65を備える。エアコンECU10は、特定席および他の座席に対して空調風を吹き出している通常状態(協調無し)では、シートヒータ65の作動状態に基づいて、シートヒータ65の発熱量の増加量に応じて閾値(間欠許可水温)を下げるように調整する(表1参照)。またエアコンECU10は、特定席を空調する特定席空調指令が与えられた場合には特定席状態の制御として、各ドアを遮断状態に制御する。またエアコンECU10は、特定席状態において、閾値を通常状態において調整された閾値よりもさらに下げるように調整する(表1参照)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの廃熱を利用して空気を加熱する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリット自動車の空調装置において、内気温センサおよび外気温センサからのセンサ信号などに基づいて、車室内を暖房する必要があるか否かを判定している。そして、車室内を暖房する必要があると判定した場合であって、走行用エンジンの冷却水温が低い場合には、ハイブリッド自動車の運転状態が発進時または低速走行時で走行用エンジンが停止している場合であっても、走行用エンジンを作動させる。これによって走行用エンジンのウォータジャケット内で充分に暖められた冷却水をヒータコア内に供給して、熱源を確保し、車室内を暖房している(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の空調装置では、車室内を暖房する必要があると判定した場合には、走行用エンジンを作動させることにより、暖房能力を確保できるものの、燃費の悪化を招くという問題がある。
【0004】
このような問題を解決する技術として、エンジン冷却水を用いたヒータコアだけなく、座席を暖めるシートヒータを備える車両用空調装置が開示されている(たとえば特許文献2参照)。特許文献2に記載の車両用空調装置では、シートヒータの暖房レベルが高い場合には、車室内が暖房されているとみなして、冷却水が低くてもエンジン始動を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−278569号公報
【特許文献2】特開2008−174042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献2に記載の技術では、シートヒータなどの補助暖房装置が動作している場合、乗員の乗車人数などに関係無く一律にエンジン始動の頻度を小さくし水温を下げている。逆にいうと補助暖房装置が停止している場合は、一律にエンジン始動の頻度を大きくし水温を設定水温まで上げている。しかし、乗員が運転者だけである場合には、全席に乗車している場合に比べて暖房能力を低減できる。このような場合にも、一律にエンジン始動の頻度を大きくして水温を設定水温まで上げているので、エネルギー効率が悪いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、暖房性能を確保しつつ、燃費効率の悪化を抑制するようにした車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0009】
請求項1に記載の発明では、一方側に空気取入口(6,7)が形成され、他方側に車室内に向かう空気が通過する複数の吹出口が形成される空調ケース(2)であって、複数の吹出口(20〜23,30〜33,91〜93)は少なくとも運転席を含む特定席とその他の座席とを含む複数の座席に対応して開口し、空気取入口と吹出口との間に送風空気が通過する通風路を有する空調ケース(2)と、
空調ケースの通風路に対して空気を送風する空調用送風機(13)と、
空調用送風機から送風された空気を、エンジン(60)の冷却水を熱源とする主加熱装置(42)によって加熱して、空調用送風機から送風された空気を空調風とし、複数の吹出口に送る空調部(41,42)と、
暖房のため、エンジンの廃熱以外の熱源を用いる補助加熱装置(43,65)と、
複数の吹出口のうち、特定席を除く他の座席を空調範囲とする吹出口から吹出す空調風の通過を許可する許可状態と、通過を遮断し、特定席を空調範囲とする吹出口から吹出す空調風の通過を許可する遮断状態とにわたって切替える開閉手段(34〜36)と、
冷却水の水温を検出する水温検出手段(75)と、
水温検出手段によって検出された水温を用いて、主加熱装置および補助加熱装置を制御して車室内の空調を行い、水温が閾値よりも低いと判定したとき、エンジンの始動を要求する要求信号を出力する制御手段(10)と、を含み、
制御手段は、
特定席および他の座席に対して空調風を吹出している通常状態では、補助加熱装置の作動状態に基づいて、補助加熱装置の発熱量の増加量に応じて閾値を下げるように調整し、
特定席を空調する特定席空調指令が与えられた場合には特定席状態の制御として、開閉手段を遮断状態に制御し、かつ閾値を通常状態において調整された閾値よりもさらに下げるように調整することを特徴とする車両用空調装置である。
【0010】
請求項1に記載の発明に従えば、空調部は、空調用送風機から送風された空気を加熱する主加熱装置を備える。また車室内を暖房するために、補助加熱装置も備える。主加熱装置はエンジンの冷却水を熱源とし、補助加熱装置はエンジンの廃熱以外の熱源とする。したがって主加熱装置と補助加熱装置とでは熱源が異なるので、主加熱装置での熱源が不足している場合には、補助加熱装置で不足分を補うことができる。このような主加熱装置および補助加熱装置は、制御手段によって制御される。制御手段は、エンジンの冷却水の温度が閾値よりも低いと判定したとき、エンジンの始動を要求する要求信号を出力する。エンジンを始動するとエンジンの廃熱によって冷却水が加熱される。したがって制御手段は、要求信号を出力することによって、エンジンの冷却水の温度を閾値以上にして暖房のための熱源を確保することができる。
【0011】
また制御手段は、特定席および他の座席に対して空調風を吹出している通常状態では、補助加熱装置の作動状態に基づいて、補助加熱装置の発熱量の増加量に応じて閾値を下げるように調整する。したがって、補助加熱装置の発熱量が増加する程、エンジンの冷却水の温度が閾値よりも低いと判定し難くなるので、エンジンの始動を要求する要求信号を出力し難くなる。これによって通常状態において、補助加熱装置の発熱量が考慮されるので、エンジンの始動が行われ難くなる。したがって暖房性能を確保しつつ、燃費の悪化を抑制できる。
【0012】
また制御手段は、特定席を空調する特定席空調指令が与えられた場合には特定席状態の制御として、開閉手段を遮断状態に制御する。特定席は、少なくとも運転席を含むので、たとえば運転席のみ、運転席および助手席の両方などである。開閉手段を遮断状態にすることによって、特定席に着座する乗員(以下、「特定乗員」ということがある)に対してだけ空調風を送風することができる。したがって通常状態よりも空調範囲が狭くなるので、空調能力を低減することができる。また制御手段は、特定席状態において、閾値を通常状態において調整された閾値よりもさらに下げるように調整する。したがって、特定席状態において、補助加熱装置の発熱量が増加する程、エンジンの冷却水の温度が閾値よりも低いと通常状態よりもさらに判定し難くなるので、エンジンの始動を要求する要求信号を出力し難くなる。これによって特定席状態において、空調範囲が狭くなっていること、および補助加熱装置の発熱量が考慮されるので、エンジンの始動がさらに行われ難くなる。したがって暖房性能を確保しつつ、燃費の悪化を抑制できる。
【0013】
また請求項2に記載の発明では、特定席空調指令を入力するための入力手段(90)をさらに含むことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明に従えば、特定席空調指令を入力するための入力手段をさらに含むので、乗員が入力手段を操作することによって通常状態の制御から特定席状態の制御に移行することができる。したがって乗員を検出するセンサなどを用いることなく、乗員の任意のタイミングで特定席状態における制御を実施することができる。これによって乗員を検出するセンサを用いない簡単な構成で特定席状態の制御に移行できる車両用空調装置を実現することができる。
【0015】
さらに請求項3に記載の発明では、複数の座席のうち、少なくとも1つの座席の乗員の存否を検出する乗員検出手段(77,78)をさらに含み、
制御手段は、乗員検出手段の検出結果に基づいて特定席のみに乗員がいると判断すると、特定席状態における制御を実施することを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明に従えば、乗員検出手段の検出結果に基づいて特定席のみに乗員がいると判定された場合、いわば自動的に特定席を集中して空調することができる。これによって乗員の操作が不要になるので、操作における利便性を向上することができる。
【0017】
さらに請求項4に記載の発明では、乗員検出手段は、
少なくとも1つの座席のシートベルトの装着を検出するベルト検出手段(78)と、
ベルト検出手段が設けられる座席の座面に加わる負荷を検出する負荷検出手段(77)と、を含み、
制御手段は、ベルト検出手段によって装着が検出された場合、および負荷検出手段によって予め設定される設定値以上の負荷が検出された場合の少なくともいずれか一方の場合には、座席に乗員がいると判断することを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明に従えば、乗員検出手段は、ベルト検出手段と負荷検出手段とを含む。したがって2つの検出手段によって運転席における乗員の有無を検出している。制御手段は、ベルト検出手段によってシートベルトの装着が検出された場合、および負荷検出手段によって予め設定される設定値以上の負荷が検出された場合の少なくともいずれか一方の場合には、運転席に乗員がいると判断する。したがってシートベルトの装着が検出されなかった場合でも、設定値以上の負荷が検出された場合には、座席に乗員がいると判断する。これによって、たとえば車両の停車中にシートベルトを装着していない場合であっても、負荷検出手段によって乗員の有無を検出することができ、検出精度を向上することができる。
【0019】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置100の全体構成を示す模式図である。
【図2】車両用空調装置100が設けられる車両の車室内を示す斜視図である。
【図3】車両用空調装置100の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】コントロールパネル90を示す正面図である。
【図5】通常モードにおける処理の一例を示したフローチャートである。
【図6】温度制御プログラムの一例を示したフローチャートである。
【図7】シートヒータ状態取得処理の一例を示したフローチャートである。
【図8】乗員乗車状態取得処理の一例を示したフローチャートである。
【図9】集中制御モードにおける車室内を簡略化して示す模式図である。
【図10】前席モードにおける車室内を簡略化して示す模式図である。
【図11】PTCヒータ設定処理の一例を示したフローチャートである。
【図12】間欠許可水温設定処理の一例を示したフローチャートである。
【図13】水温制御処理の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図13を用いて説明する。図1は、第1実施形態の車両用空調装置100の全体構成を示す模式図である。図2は、車両用空調装置100が設けられる車両の車室内を示す斜視図である。図3は、車両用空調装置100の電気的構成を示すブロック図である。本実施形態の車両用空調装置100は、ハイブリッド自動車に適用される。ハイブリッド自動車は、走行用エンジン60、エンジン始動装置(図示せず)、走行用電動モータ61、ハイブリットECU(図示せず)およびエンジンECU63を含んで構成される。
【0022】
走行用エンジン60は、ハイブリッド自動車の車軸に係脱自在に駆動連結されている。走行用電動モータ61は、ハイブリッド自動車の車軸に係脱自在に駆動連結されている。走行用電動モータ61は、走行用エンジン60と車軸とが連結していない時に、車軸と連結されるようになっている。したがって車軸には、走行用エンジン60および走行用電動モータ61のいずれか一方が連結され、他方が連結解除される。走行用電動モータ61は、ハイブリッドECUにより自動制御(たとえばインバータ制御)されるように構成されている。エンジン始動装置は、走行用エンジン60を始動させる。エンジンECU63は、ハイブリッド自動車の走行およびバッテリの充電が必要な時に、エンジン始動装置を通電制御して走行用エンジン60を稼働する。ハイブリットECUは、エンジンECU63と通信して、ガソリン(燃料)の燃焼効率が最適になるように、走行時に必要に応じて走行用エンジン60を停止して走行用電動モータ61を稼働させる。
【0023】
次に、車両用空調装置100に関して説明する。車両用空調装置100は、走行用に水冷エンジンを搭載する自動車などの車両において、車室内を空調する空調ユニット1をエアコンECU10によって制御するように構成された、いわゆるオートエアコンシステムである。
【0024】
空調ユニット1は、車室内の運転席側空調空間と助手席側空調空間との温度調節、および吹出口モードの変更などを、互いに独立して行うことが可能なエアコンユニットである。運転席側空調空間は、運転席と運転席後方の後部座席を含む空間である。また助手席側空調空間は、助手席と助手席後方の後部座席を含む空間である。
【0025】
空調ユニット1は、車両の車室内前方に配置され、内部を送風空気が通過する空調ケース2を備えている。空調ケース2は、一方側に空気取入口が形成され、他方側に車室内に向かう空気が通過する複数の吹出口が形成される。空調ケース2は、空気取入口と吹出口との間に送風空気が通過する通風路を有する。空調ケース2の上流側(一方側)には、送風機ユニット13が設けられる。送風機ユニット(空調用送風機)13は、内外気切替ドア3およびブロワ4を含む。内外気切替ドア3は、サーボモータ5などのアクチュエータによって駆動され、空気取入口である内気吸込口6と外気吸込口7との開度を変更する吸込口切替手段である。
【0026】
空調ユニット1は、具体的には図示しないが、完全センター置きといわれるタイプのものであり、車室内前方の計器盤下方部であって、車両左右方向の中央位置に搭載されている。送風機ユニット13は、空調ユニット1の車両前方側に配設される。送風機ユニット13の内気吸込口6は、運転席側の下方に開口しており、運転席側から車室内空気を吸い込む。
【0027】
ブロワ4は、ブロワ駆動回路8によって制御されるブロワモータ9により回転駆動されて、空調ケース2内において車室内に向かう空気流を発生させる遠心式送風機である。ブロワ4は、後述する運転席側および助手席側の各吹出口20〜23,30〜33から車室内の運転席側空調空間および助手席側空調空間に向けてそれぞれ吹き出される空調風の吹出風量を変更する機能も有する。
【0028】
空調ケース2には、送風機ユニット13から送風された空気を加熱または冷却して空調風とし、複数の吹出口に送る空調部としてエバポレータ41、ヒータコア42およびPTCヒータ43が設けられる。エバポレータ41は、空調ケース2を通過する空気を冷却する冷却器として機能する。
【0029】
また、エバポレータ41の空気下流側には、第1空気通路11および第2空気通路12を通過する空気を、走行用エンジン60の冷却水と熱交換して加熱する、加熱器としてのヒータコア42が設けられている。走行用エンジン60の冷却水が循環する冷却水回路62は、ウォータポンプ(図示せず)によって、走行用エンジン60のウォータジャケットで暖められた冷却水を循環させる回路で、ラジエータ(図示せず)、サーモスタット(図示せず)およびヒータコア42を有している。ヒータコア42は、本発明の主加熱装置に相当するもので、内部に走行用エンジン60を冷却した冷却水が流れ、この冷却水を暖房用熱源として冷風を再加熱する。ヒータコア42は、第1空気通路11および第2空気通路12を部分的に塞ぐように空調ケース内においてエバポレータよりも下流側に配設されている。
【0030】
ヒータコア42の空気下流側には、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ43が設けられる。PTCヒータ43は、暖房のため走行用エンジン60の廃熱以外の熱源を用いて空気を加熱する補助加熱装置に相当するもので、電力を熱源とする。PTCヒータ43は、暖房用熱源としてヒータコア42を通過した空気を加熱する。PTCヒータ43は、通電発熱素子部を(図示せず)備え、通電発熱素子部に通電されることによって発熱し、周囲の空気を暖めることができる。この通電発熱素子部は、耐熱性を有する樹脂材料(たとえば66ナイロンやポリブタジエンテレフタレートなど)で成形された樹脂枠の中に複数個のPTC素子を嵌め込むことにより構成したものである。PTCヒータ43は、エアコンECU10によって制御される。PTCヒータ43は、段階的にW数を調整可能に構成される。PTCヒータ43は、必要な熱量に応じて、本実施形態では300W、450Wおよび600Wと出力がエアコンECU10によって制御される。
【0031】
各空気通路11,12は、仕切板14により区画されている。ヒータコア42の空気上流側には、車室内の運転席側空調空間と助手席側空調空間との温度調節を、互いに独立して行うための運転席側エアミックスドア15および助手席側エアミックスドア16が設けられている。
【0032】
各エアミックスドア15,16は、サーボモータ17,18などのアクチュエータにより駆動されており、運転席側および助手席側の各吹出口20〜23,30〜33から車室内の各空調空間に向けて、それぞれ吹き出される空調風の吹出温度を変更する。換言すると、エアミックスドア15,16は、エバポレータ41を通過する空気とヒータコア42を通過する空気との風量比率を調整するエアミックス手段として機能する。
【0033】
エバポレータ41は、冷凍サイクル44の一構成部品を成すものである。冷凍サイクル44は、車両のエンジンルーム内に搭載された走行用エンジン60の出力軸によるベルト駆動されて、冷媒を圧縮して吐出するコンプレッサ45と、このコンプレッサ45より吐出された冷媒を凝縮液化させるコンデンサ46と、このコンデンサ46より流入した液冷媒を気液分離するレシーバ47と、このレシーバ47より流入した液冷媒を断熱膨張させる膨張弁48と、この膨張弁48より流入した気液二相状態の冷媒を蒸発気化させるエバポレータ41とを含む。
【0034】
冷凍サイクル44のうちコンプレッサ45は、走行用エンジン60からコンプレッサ45への回転動力の伝達を断続するクラッチ手段としての電磁クラッチ45aが連結されている。この電磁クラッチ45aは、クラッチ駆動回路45bにより制御される。
【0035】
電磁クラッチ45aが通電(ON)された時に、走行用エンジン60の回転動力がコンプレッサ45に伝達されて、エバポレータ41による空気冷却作用が行われ、電磁クラッチ45aの通電が停止(OFF)した時に、走行用エンジン60とコンプレッサ45とが遮断され、エバポレータ41による空気冷却作用が停止される。電磁クラッチ45aのオンオフは、エバ後温度センサ74が検出するエバ後温度(TE)と、目標エバ後温度(TEO)との比較結果に応じて制御される。
【0036】
またコンデンサ46は、ハイブリッド自動車が走行する際に生じる走行風を受け易い場所に配設され、内部を流れる冷媒と冷却ファン49により送風される外気および走行風とを熱交換する室外熱交換器である。
【0037】
空調ケース2の他方側、すなわち第1空気通路11の空気下流側には、図1に示すように、運転席側デフロスタ吹出口20、運転席側センタフェイス吹出口21、運転席側サイドフェイス吹出口22、および運転席側フット吹出口23が、各吹出ダクトを介して連通している。また、第2空気通路12の空気下流側には、図1に示すように、助手席側デフロスタ吹出口30、助手席側センタフェイス吹出口31、助手席側サイドフェイス吹出口32、および助手席側フット吹出口33が、各吹出ダクトを介して連通している。
【0038】
運転席側および助手席側デフロスタ吹出口20,30は、車両前方窓ガラスへ空調風を吹き出すための吹出口を構成する。運転席側および助手席側フェイス吹出口21,22,31,32は、運転者および助手席乗員の頭胸部へ空調風を吹き出すための吹出口を構成する。運転席側および助手席側フット吹出口23,33は、運転者および助手席乗員の足元へ空調風を吹き出すための吹出口を構成する。
【0039】
また図1では、図示は省略するが、図2に示すように、後部座席への吹出口として、後部座席側センタフェイス吹出口91、後部座席サイドフェイス吹出口92、後部座席側フット吹出口93が第1空気通路11および第2空気通路12の下流側にそれぞれ形成されている。
【0040】
第1および第2空気通路11,12内には、車室内の運転席側と助手席側との吹出モードの設定を、互いに独立して行う運転席側および助手席側吹出口切替ドアとして、運転席側デフロスタドア24および助手席側デフロスタドア34、運転席側フェイスドア25および助手席側フェイスドア35、運転席側フットドア26および助手席側フットドア36が設けられている。
【0041】
運転席側および助手席側吹出口切替ドア24〜26,34〜36は、サーボモータ28,29,38,39などのアクチュエータにより駆動され、運転席側および助手席側の吹出モードをそれぞれ切り替える。助手席側吹出口切替ドア34〜36は、複数の吹出口20〜23,30〜33のうち、車両の運転手の座席(運転席)を除く残余の座席を空調範囲とする吹出口30〜33から吹出す空調風の通過を許可する許可状態と通過を遮断する遮断状態とにわたって切替える開閉手段である。空調範囲とは、各吹出口20〜23,30〜33から吹き出される空調風が主に流通する範囲をいい、各吹出口20〜23,30〜33の吹出方向および吹出方向にある座席などの障害物によって決定される。運転席側および助手席側の吹出口モードとしては、たとえばフェイスモード、バイレベル(B/L)モード、フットモード、フット/デフロスタモードおよびデフロスタモードがある。
【0042】
また車両の全ての座席、たとえば運転席、助手席、運転後席、助手後席には、シートヒータが設けられる。シートヒータ65は、暖房のため走行用エンジン60の廃熱以外の熱源を用いて空気を加熱する補助加熱装置に相当するもので、電力を熱源とする。シートヒータ65は、各座席に設けられ、各座席を個別に加熱する。シートヒータ65は、各シートに内蔵されるPTCヒータによって実現され、PTCヒータによってシート(座席の座部および背部)を温めるようになっている。シートヒータ65は、エアコンECU10によって制御される。
【0043】
次に、車両用空調装置100の電気的構成に関して説明する。エアコンECU10は、制御手段であって、走行用エンジン60の始動および停止を司るイグニッションスイッチが入れられた時に、車両に搭載された車載電源であるバッテリー(図示せず)から直流電源が供給され、演算処理や制御処理を開始するように構成されている。エアコンECU10には、エンジンECU63から出力される通信信号、車室内前面に設けられたコントロールパネル上の各スイッチからのスイッチ信号、および各センサからのセンサ信号が入力される。エンジンECU63は、EFI(Electronic Fuel Injection)ECUともいう。
【0044】
ここで、コントロールパネル90に関して説明する。図4は、コントロールパネル90を示す正面図である。コントロールパネル90は、インストルメントパネル50に一体的に設置される。コントロールパネル90には、たとえば液晶ディスプレイ81、内外気切替スイッチ82、フロントデフロスタスイッチ83、リヤデフロスタスイッチ84、デュアルスイッチ85、吹出モード切替スイッチ86、ブロワ風量切替スイッチ87、エアコンスイッチ88、オートスイッチ89、オフスイッチ51、運転席側温度設定スイッチ52、助手席側温度設定スイッチ53、シートヒータスイッチ54、および集中制御スイッチ55(運転席空調スイッチ、1席優先スイッチ、1席集中スイッチともいう)などが設置されている。
【0045】
液晶ディスプレイ81には、運転席側および助手席側空調空間の設定温度を視覚表示する設定温度表示部81a、吹出モードを視覚表示する吹出モード表示部81b、およびブロワ風量を視覚表示する風量表示部81cなどが設けられている。液晶ディスプレイ81には、たとえば外気温表示部、吸込モード表示部および時刻表示部などが設けられていても良い。また、コントロールパネル90上の各種の操作スイッチは、液晶ディスプレイ81に設けられていてもよい。
【0046】
コントロールパネル90を各種のスイッチに関して説明する。フロントデフロスタスイッチ83は、前面窓ガラスの防曇能力を上げるか否かを指令する空調スイッチに相当するもので、吹出モードをデフロスタモードに設定するように要求するデフロスタモード要求手段である。デュアルスイッチ85は、運転席側空調空間内の温度調節と助手席側空調空間内の温度調節とを、互いに独立して行う左右独立温度コントロールを指令する左右独立制御指令手段である。モード切替スイッチは、乗員のマニュアル操作に応じて、吹出モードを、フェイスモード、バイレベル(B/L)モード、フットモード、フット/デフロスタモードのいずれかに設定するように要求するモード要求手段である。エアコンスイッチ88は、冷凍サイクル44のコンプレッサ45の稼働、または停止を指令する空調操作スイッチである。エアコンスイッチ88は、コンプレッサ45を非稼働にして、走行用エンジン60の回転負荷を減らすことで燃費効率を高めるために設けられている。各温度設定スイッチ52,53は、運転席側空調空間内と助手席側空調空間内のそれぞれ温度を、所望の温度に設定(Tset)するための運転席側および助手席側温度設定手段である。シートヒータスイッチ54は、シートヒータ65の操作スイッチであり、運転席シートと助手席シートを個別に操作できるように構成されている。集中制御スイッチ55は、乗員のマニュアル操作に応じて、空調モードを後述する集中制御モードに設定するように要求する入力手段である。
【0047】
エアコンECU10の内部には、図示は省略するが、演算処理や制御処理を行うCPU(中央演算装置)、ROMやRAMなどのメモリ、およびI/Oポート(入力/出力回路)などの機能を含んで構成される周知のマイクロコンピュータが設けられている。各種センサからのセンサ信号がI/OポートまたはA/D変換回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力される。エアコンECU10には、運転席の周囲の空気温度(内気温)Trを検出する内気温度検出手段としての内気温センサ71、車室外温度(外気温)を検出する外気温検出手段としての外気温センサ72、各座席の温度を検出するシート温センサ73および日射検出手段としての日射センサ(図示せず)が接続されている。またエアコンECU10には、エバポレータ41を通過した直後の空気温度(エバ後温度TE)を検出するエバ後温度検出手段としてのエバ後温度センサ74、車室内の相対湿度を検出する湿度検出手段としての湿度センサ(図示せず)が接続されている。
【0048】
またエアコンECU10は、他のECUとの連携し、前述のエンジンECU63と乗員の着座状態を検出する着座ECU17と多重通信によって相互に情報を送受信する。エンジンECU63は、車両のエンジン冷却水温を検出して送風空気の加熱温度とする水温検出手段としての冷却水温センサ75が接続されている。エアコンECU10は、エンジンECU63を介して冷却水温を取得する。
【0049】
またエアコンECU10は、コントロールパネル90の操作に応じて、シートヒータ65をON/OFFを制御する。エアコンECU10は、シートヒータ65がONの場合には、シート座面に設けられるシート温センサ73によって検出される温度に基づいて、シート温度を常時監視する。そして、エアコンECU10は、シートの温度が一定の温度になる様にシートヒータ65のON/OFFを切替制御する。
【0050】
また着座ECU17は、助手席着座センサ77および助手席バックルセンサ78が接続されている。助手席着座センサ77は、助手席に乗員が着座するとシート座面に加えられる荷重により電気接点が接触する電気接点式の検出手段、またはシート座面に加えられる加重による歪み量を検出する検出手段(歪みゲージ)である。したがって助手席着座センサ77は、助手席の座面に加わる負荷を検出する負荷検出手段(重量検知センサ)としての機能を有する。助手席着座センサ77は、加わった負荷が設定値以上の場合には、設定値以上であることを示す信号を着座ECU17に出力する。
【0051】
助手席バックルセンサ78は、助手席のシートベルトが装着されているか否かを検出するセンサである。したがって助手席バックルセンサ78は、助手席のシートベルトの装着を検出するベルト検出手段として機能する。助手席バックルセンサ78は、シートベルトが装着されると、装着状態であることを示す信号を着座ECU17に出力する。
【0052】
着座ECU17には、助手席着座センサ77と助手席バックルセンサ78からの信号が個別に入力される。換言すると、助手席着座センサ77と助手席バックルセンサ78は、着座ECU17に並列に接続されている。着座ECU17は、助手席着座センサ77および助手席バックルセンサ78の少なくともいずれか一方のセンサが着座していることを検出すると、助手席に乗員がいると判断する。したがって、たとえば停車中または駐車中にシートベルトを外している場合であっても、助手席着座センサ77によって着座していることが検出される。エアコンECU10は、着座ECU17を介して着座状態に関する情報を取得する。
【0053】
内気温センサ71、外気温センサ72、エバ後温度センサ、および冷却水温センサ75は、たとえばサーミスタなどの感温素子が使用されている。内気温センサ71は、運転席付近(たとえばステアリング付近のインストルメントパネル50内部)の運転席以外の吹出口を閉じても、ほとんど影響しない部位に設定される。また、日射センサは、運転席側空調空間内に照射される日射量(日射強度)を検出する運転席側日射強度検出手段と、助手席側空調空間内に照射される日射量(日射強度)を検出する助手席側日射強度検出手段とを有しており、たとえばフォトダイオードなどが使用されている。湿度センサは、たとえば内気温センサ71とともに、運転席近傍のインストルメントパネル50の前面に形成された凹所内に収容されており、前面窓ガラスの防曇のためにデフロスタ吹き出しの要否の判定に利用される。
【0054】
次に、エアコンECU10による制御方法を、図5を用いて説明する。図5は、エアコンECU10の通常モード(全席モード)における処理の一例を示したフローチャートである。まず、イグニッションスイッチがオンされてエアコンECU10に直流電源が供給されると、予めメモリに記憶されている図5に示す制御プログラムが実行される。
【0055】
ステップS11では、エアコンECU10内部のマイクロコンピュータに内蔵されたデータ処理用メモリの記憶内容などを初期化し、ステップS12に移る。ステップS12では、各種データをデータ処理用メモリに読み込み、ステップS13に移る。したがってステップS12では、コントロールパネル90上の各種操作スイッチからのスイッチ信号、および各種センサからのセンサ信号が入力される。センサ信号としては、たとえば内気温センサ71が検知する車室内温度Tr、外気温センサ72が検知する外気温Tam、日射センサが検知する日射量Ts、エバ後温度センサが検知するエバ後温度Te、および冷却水温センサ75が検知する冷却水温Twである。
【0056】
ステップS13では、記憶している演算式に入力データを代入して、運転席側の目標吹出温度TAO(Dr)、および助手席側の目標吹出温度TAO(Pa)を演算し、その運転席側および助手席側の目標吹出温度TAO(Dr),TAO(Pa)と外気温Tamから、目標エバポレータ後温度TEOを演算し、ステップS14に移る。
【0057】
ステップS13にて用いられる演算式の一例を数式1に示す。
【0058】
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C …(1)
ここで、Tsetは、各温度設定スイッチにて設定された設定温度、Trは内気温センサ71にて検出された内気温度、Tamは外気温センサ72にて検出された外気温度、Tsは日射センサにて検出された日射量である。また、Kset,Kr,KamおよびKsは各ゲインであり、Cは全体にかかる補正用の定数である。したがってエアコンECU10は、内気温センサ71によって検出された空気温度を用いて、目標吹出温度を決定する目標吹出温度決定手段としての機能を有する。
【0059】
ステップS14では、演算した運転席側および助手席側の目標吹出温度TAO(Dr),TAO(Pa)に基づいてブロワ風量、すなわちブロワモータ9に印加するブロワ制御電圧VAを演算し、ステップS15に移る。ブロワ制御電圧VAは、運転席側および助手席側の目標吹出温度TAO(Dr),TAO(Pa)にそれぞれ適合したブロワ制御電圧VA(Dr),VA(Pa)を、予め定めた特性パターンに基づいて求めるとともに、それらのブロワ制御電圧VA(Dr),VA(Pa)を平均化処理することにより得ている。
【0060】
ステップS15では、演算された運転席側および助手席側の目標吹出温度TAO(Dr),TAO(Pa)とステップS12における入力データとを、メモリに記憶されている演算式に代入して、運転席側エアミックスドア15のエアミックス開度SW(Dr)(%)、および助手席側エアミックスドア16のエアミックス開度SW(Pa)(%)を演算し、ステップS16に移る。したがってエアコンECU10は、目標吹出温度を用いて、エアミックス開度を決定する風量比率決定手段としての機能を有する。
【0061】
ステップS16では、ステップS13にて演算された運転席側および助手席側の目標吹出温度TAO(Dr),TAO(Pa)に基づき、車室内へ取り込む空気流の吸込モードと、車室内へ吹き出す空気流の吹出モードとを決定し、ステップS17に移る。
【0062】
ステップS17では、ステップS13で演算された運転席側および助手席側の目標吹出温度TAO(Dr),TAO(Pa)とエバ後温度センサ74が検知する実際のエバポレータ後温度Teとが一致するように、フィードバック制御(PI制御)にてコンプレッサ45のオンオフを制御し、ステップS18に移る。
【0063】
ステップS18では、ステップS14にて演算されたブロワ制御電流VAとなるように、ブロワ駆動回路8に制御信号を出力し、ステップS19に移る。ステップS19では、ステップS15で決定されたエアミックス開度SW(Dr),SW(Pa)となるように、サーボモータ17,18に制御信号を出力し、ステップS110に移る。
【0064】
ステップS110では、ステップS16で決定された吸込モードと吹出モードとなるように、サーボモータ28,29,38,39に制御信号を出力し、ステップS111に移る。ステップS111では、ステップS17で決定されたオンオフ制御をクラッチ駆動回路45bに出力し、ステップS12に戻り、ステップS12〜ステップS111までの処理を繰り返す。このような一連の処理を繰り返すことによって、乗員が設定した車室内温度にすることができる。
【0065】
((本発明の特徴部分))
次に、エアコンECU10による冷却水の水温の制御の一例を、図6を用いて説明する。図6は、エアコンECU10の冷却水の温度制御プログラムの一例を示したフローチャートである。図6に示す処理は、前述の図5における処理と並行して実施される。
【0066】
フローが開始されると、ステップS21では、シートヒータ65の状態を取得し、ステップS22に移る。シートヒータ65の状態は、各座席のシートヒータ65の稼働状態、シートヒータ65の設置状態などである。ステップS21の詳細な処理については、後述する。
【0067】
ステップS22では、乗員乗車状態を取得し、ステップS23に移る。乗員乗車状態は、どの座席に乗員が着座(乗車)しているかを示す。ステップS23の詳細な処理については、後述する。
【0068】
ステップS23では、PTCヒータ43の状態を取得し、ステップS24に移る。PTCヒータ43の状態は、PTCヒータ43の稼働状態、PTCヒータ43の設定出力などである。PTCヒータ43の設定の詳細な処理については、後述する。
【0069】
ステップS24では、間欠許可水温の上限値および下限値を設定し、ステップS25に移る。間欠許可水温は、必要な暖房能力を得るために冷却水温を維持する範囲である。間欠許可水温は、ステップS21にて取得したシートヒータ状態、ステップS22にて取得した乗員乗車状態、ステップS23にて取得したPTCヒータ43の設定に基づいて、決定される。間欠許可水温の決定に関する詳細な処理については、後述する。
【0070】
ステップS25では、設定された間欠許可水温に基づいて、冷却水温を制御するための処理を実施し、本フローを終了する。これによって冷却水温が間欠許可水温の下限値よりも低い場合には、走行用エンジン60を始動することを要求するエンジンON信号をエンジンECU63に出力する。また冷却水温が間欠許可水温の上限値よりも高い場合には、走行用エンジン60の作動を停止することを要求するエンジンOFF信号をエンジンECU63に出力する。
【0071】
このような冷却水温の温度制御によって、乗員乗車状態に基づいて、間欠許可水温が設定されることになる。
【0072】
次に、ステップS21のシートヒータ状態取得処理に関して、図7を用いて説明する。図7は、温度制御プログラムにおけるシートヒータ状態取得処理の一例を示したフローチャートである。図7に示す処理は、前述の図6における温度制御プログラムが実行されると、開始される。
【0073】
フローが開始されると、ステップS31では、運転席(Fr運転席)にシートヒータ65が設置されているか否かを判断し、設置されている場合には、ステップS32に移る。設置されていない場合には、ステップS34に移る。ステップS34では、運転席にシートヒータ65が設置されていないので、運転席にはシートヒータ無しとの情報をメモリに記憶し、ステップS36に移る。
【0074】
ステップS32では、運転席にシートヒータ65が設置されているので、シートヒータ65がON(作動中)であるか否かを判断し、作動している場合には、ステップS33に移る。作動していない場合には、ステップS35に移る。ステップS35では、運転席のシートヒータ65がOFF(停止中)であるので、運転席にはシートヒータ65が有り、かつOFF状態との情報をメモリに記憶し、ステップS36に移る。ステップS33では、運転席のシートヒータ65がONであるので、運転席にはシートヒータ65が有り、かつON状態との情報をメモリに記憶し、ステップS36に移る。
【0075】
ステップS36では、助手席(Fr助手席)にシートヒータ65が設置されているか否かを判断し、設置されている場合には、ステップS37に移る。設置されていない場合には、ステップS39に移る。ステップS39では、助手席にシートヒータ65が設置されていないので、助手席にはシートヒータ無しとの情報をメモリに記憶し、ステップS311に移る。
【0076】
ステップS37では、助手席にシートヒータ65が設置されているので、助手席のシートヒータ65がON(作動中)であるか否かを判断し、作動している場合には、ステップS38に移る。作動していない場合には、ステップS310に移る。ステップS310では、助手席のシートヒータ65がOFF(停止中)であるので、助手席にはシートヒータ65が有り、かつOFF状態との情報をメモリに記憶し、ステップS311に移る。ステップS38では、助手席のシートヒータ65がONであるので、助手席にはシートヒータ65が有り、かつON状態との情報をメモリに記憶し、ステップS311に移る。
【0077】
ステップS311では、運転後席(Rr運転席)にシートヒータ65が設置されているか否かを判断し、設置されている場合には、ステップS312に移る。設置されていない場合には、ステップS314に移る。ステップS314では、運転後席にシートヒータ65が設置されていないので、運転後席にはシートヒータ無しとの情報をメモリに記憶し、ステップS316に移る。
【0078】
ステップS312では、運転後席にシートヒータ65が設置されているので、運転後席のシートヒータ65がON(作動中)であるか否かを判断し、作動している場合には、ステップS313に移る。作動していない場合には、ステップS315に移る。ステップS315では、運転後席のシートヒータ65がOFF(停止中)であるので、運転後席にはシートヒータ65が有り、かつOFF状態との情報をメモリに記憶し、ステップS316に移る。ステップS313では、運転後席のシートヒータ65がONであるので、運転後席にはシートヒータ65が有り、かつON状態との情報をメモリに記憶し、ステップS316に移る。
【0079】
ステップS316では、助手後席(Rr助手席)にシートヒータ65が設置されているか否かを判断し、設置されている場合には、ステップS317に移る。設置されていない場合には、ステップS319に移る。ステップS319では、助手後席にシートヒータ65が設置されていないので、助手後席にはシートヒータ無しとの情報をメモリに記憶し、本フローを終了する。
【0080】
ステップS317では、助手後席にシートヒータ65が設置されているので、助手後席のシートヒータ65がON(作動中)であるか否かを判断し、作動している場合には、ステップS318に移る。作動していない場合には、ステップS320に移る。ステップS320では、助手後席のシートヒータ65がOFF(停止中)であるので、助手後席にはシートヒータ65が有り、かつOFF状態との情報をメモリに記憶し、本フローを終了する。ステップS318では、助手後席のシートヒータ65がONであるので、助手後席にはシートヒータ65が有り、かつON状態との情報をメモリに記憶し、本フローを終了する。
【0081】
このように図7に示すシートヒータ状態取得処理では、シートヒータ65の状態を取得し、取得した状態がメモリに記憶される。また設置の有無を判定することによって、シートヒータ65が設置されている車両と、設置されていない車両とで、シートヒータ状態取得処理を共通化することができる。
【0082】
次に、ステップS22の乗員乗車状態取得処理に関して、図8〜図10を用いて説明する。図8は、温度制御プログラムにおける乗員乗車状態取得処理の一例を示したフローチャートである。図9は、集中制御モードにおける車室内を簡略化して示す模式図である。図10は、前席モードにおける車室内を簡略化して示す模式図である。図8に示す処理は、前述の図6におけるステップS22に移ると開始される。
【0083】
フローが開始されると、ステップS41では、現在が集中制御モード(集中制御中)であるか否かを判断し、集中制御モードである場合には、ステップS42に移り、集中制御モードでない場合には、ステップS45に移る。集中制御モードか否かの判断は、集中制御スイッチ55が操作されて、集中制御モードがONされているか否かによって判断する。集中制御モードは、各座席(全席)のうちの少なくとも1つ特定席を集中して空調する制御モードである。本実施形態では、特定席は運転席または前席(運転席および助手席)に設定されている。
【0084】
ステップS42では、集中制御モードを実施中であるので、助手席に乗員が着座しているか否かを判断し、着座している場合には、ステップS43に移り、着座していない場合には、ステップS44に移る。助手席に着座しているか否かは、着座ECU17から与えられる情報に基づいて判断する。
【0085】
ステップS43では、助手席に乗員がいて、かつ集中制御モードであるので、乗員が前席のみにいると判断し、前席のみを空調範囲とする前席モードに移行し、かつ前席に乗員がいることをメモリに記憶し、本フローを終了する。乗員が運転者と助手席乗員のみの場合であるので、前席空間を温度調節するモードとして、吸込吹出モードを「前席モード」に変更する。たとえば吸込モードは内気モードとして、内外気切替ドア3にて運転席側下方および助手席側下方にある内気吸込口6を開口させる。また乗員のいない後部座席空調空間に開口した吹出口を、対応する各ドアで全て閉じる。たとえば図2における後部座席側センタフェイス吹出口91(図2における矢印C)、後部座席サイドフェイス吹出口92(図2における矢印D)、後部座席側フット吹出口93(図2における矢印F)を閉じ、残余の吹出口は開く。また、たとえば図10に示すように、吸込吹出モードを「前席モード」として、破線の×印で示した吹出口を閉じ、残余の吹出口を開けて、空調範囲を前席に限定する。
【0086】
ステップS44では、助手席に乗員がいなく、かつ集中制御モードであるので、乗員が運転席のみにいると判断し、運転席のみを空調範囲とする集中制御モードに移行し、かつ運転席にのみ乗員がいることをメモリに記憶し、本フローを終了する。乗員が運転者のみの場合であるので、運転席空間を温度調節するモードとして、吸込吹出モードを「集中制御モード」に変更する。たとえば吸込モードは内気モードとして、内外気切替ドア3にて運転席側下方にある内気吸込口6を開口させる。また乗員のいない助手席側空調空間に開口した吹出口30〜33を、対応する各ドア34〜36で全て閉じる(たとえば図2における仮想線で囲う吹出口を閉じ、実線で囲った吹出口は開く)。また、たとえば図9に示すように、吸込吹出モードを「集中制御モード」として、破線の×印で示した吹出口を閉じ、残余の吹出口を開けて、空調範囲を運転席に限定する。
【0087】
ステップS45では、集中制御モードを実施していないので、乗員が後部座席にいると判断し、後部座席と少なくとも運転席とに乗員がいることをメモリに記憶し、本フローを終了する。
【0088】
このように図8に示す乗員乗車情報取得処理では、乗員乗車状態を取得して乗員が(1)運転席のみ、(2)前席のみ、または(3)その他(たとえば乗員が後席にもいる)、の3つの状態のうちいずれかの状態かが判断され、判断結果がメモリに記憶される。
【0089】
次に、ステップS23のPTCヒータ設定処理に関して、図11を用いて説明する。図11は、温度制御プログラムにおけるPTCヒータ設定処理の一例を示したフローチャートである。図11に示す処理は、前述の図6におけるステップS23に移ると開始される。
【0090】
フローが開始されると、ステップS51では、MAXHOT条件を満足しているか否かを判断し、満足している場合には、ステップS52に移り、満足していない場合には、ステップS517に移る。MAXHOT条件は、最大の暖房負荷が要求されているときに満足する。したがってMAXHOT条件を満足した場合には、暖房のために最大の暖房能力が必要の状態である。ステップS517では、MAXHOT条件を満足してなく、熱量が不足していないので、PTCヒータ43のW数を0W(すなわち停止)に設定し、本フローを終了する。
【0091】
ステップS52では、外気温が−9℃未満であるか否かを判断し、−9℃未満である場合には、ステップS53に移り、−9℃未満でない場合には、ステップS510に移る。ステップS53では、冷却水温が68℃未満であるか否かを判断し、68℃未満である場合には、ステップS54に移り、68℃未満でない場合には、ステップS55に移る。ステップS54では、外気温および冷却水温が低いので、PTCヒータ43のW数を最大レベルの600Wに設定し、本フローを終了する。
【0092】
ステップS55では、冷却水温が68℃以上73℃未満であるか否かを判断し、68℃以上73℃未満である場合には、ステップS56に移り、68℃以上73℃未満でない場合には、ステップS57に移る。ステップS56では、外気温が低く、冷却水温も比較的低いので、PTCヒータ43のW数を中レベルの450Wに設定し、本フローを終了する。
【0093】
ステップS57では、冷却水温が73℃以上78℃未満であるか否かを判断し、73℃以上78℃未満である場合には、ステップS58に移り、73℃以上78℃未満でない場合には、ステップS59に移る。ステップS58では、外気温が低いが、冷却水温が比較的暖かいので、PTCヒータ43のW数を最低レベルの350Wに設定し、本フローを終了する。ステップS59では、外気温が低いが、冷却水温が暖かいので、熱量が不足していないと判断し、PTCヒータ43のW数を0W(すなわち停止)に設定し、本フローを終了する。
【0094】
ステップS510では、外気温が−9℃以上−7℃未満であるか否かを判断し、−9℃以上−7℃未満である場合には、ステップS511に移り、−9℃以上−7℃未満でない場合には、ステップS514に移る。ステップS511では、冷却水温が63℃未満であるか否かを判断し、63℃未満である場合には、ステップS512に移り、68℃未満でない場合には、ステップS513に移る。ステップS512では、外気温が比較的低く、冷却水温も比較的低いので、PTCヒータ43のW数を中レベルの450Wに設定し、本フローを終了する。ステップS513では、外気温が比較的低いが、冷却水温が暖かいので、熱量が不足していないと判断し、PTCヒータ43のW数を0W(すなわち停止)に設定し、本フローを終了する。
【0095】
ステップS514では、外気温が−7℃以上10℃未満であるか否かを判断し、−7℃以上10℃未満である場合には、ステップS515に移り、−7℃以上10℃未満でない場合には、ステップS517に移る。ステップS515では、冷却水温が60℃未満であるか否かを判断し、60℃未満である場合には、ステップS516に移り、68℃未満でない場合には、ステップS517に移る。ステップS516では、外気温が比較的高いが、冷却水温が低いので、PTCヒータ43のW数を最低レベルの300Wに設定し、本フローを終了する。ステップS517では、熱量が不足していないと判断し、PTCヒータ43のW数を0W(すなわち停止)に設定し、本フローを終了する。
【0096】
このように図9に示すPTCヒータ設定処理では、PTCヒータ43の設定出力を、外気温と冷却水温とに基づいて、0W、300W、450Wおよび600Wのいずれかの値に設定する。設定した値は、メモリに記憶される。
【0097】
したがって冬季極低外気音(たとえば−9℃以下)および低水温時(たとえば68℃以下)でイグニッションをONしてエアコンECU10をAUTO設定にするとMAXHOT条件に入り最大暖房能力を期待してPTCヒータ43もW数の上限(たとえば600W)とする。しかし同じ外気温でも水温が上がれば、暖房の熱負荷は減る為、PTCヒータ43のW数も比例して減らし(450W⇒300W⇒0W)、暖房感と実用燃費のバランスを取る。また冷却水温だけでなく外気温も上がってくれば(たとえば−9℃以上7℃未満)では熱負荷が減るので上限が緩和(450W)される。
【0098】
次に、ステップS24の間欠許可水温設定処理に関して、図12を用いて説明する。図12は、温度制御プログラムにおける間欠許可水温設定処理の一例を示したフローチャートである。図12に示す処理は、前述の図6におけるステップS24に移ると開始される。
【0099】
フローが開始されると、ステップS61では、メモリからシートヒータ状態と乗員乗車状態とを読み出し、シートヒータ65と協調できるか否かを決定し、ステップS62に移る。シートヒータ65との協調ができる場合とは、シートヒータ65がONされている場合であって、ヒータコア42およびPTCヒータ43の熱量をシートヒータ65による暖房効果で補うことができる場合である。協調の有無は、具体的にはメモリに予め記憶されている制御マップに基づいて判断される。表1は、ステップS61に用いられる協調判定表である。表1では、判断の条件に関係しない部分には、「−」を記載している。
【0100】
【表1】

表1に示すように、全席のシートヒータ65がONの状態の場合には、シートヒータ65からの発熱量が多いので、暖房効果を補うことができると判断している(協調有り)。また集中制御がON(前席モード)であり、前席シートヒータ65だけがONの場合にも、シートヒータ65からの発熱量が多く、空調範囲が前席だけで狭いので、暖房効果を補うことができると判断している(協調有り)。さらに集中制御がON(集中制御モード)であり、運転席シートヒータ65だけONの場合にも、シートヒータ65からの発熱量があり、空調範囲が運転席だけなので暖房効果を補うことができると判断している(協調有り)。
【0101】
表1に示すように、このような協調有りの3つパターン(条件の組み合わせ)以外の7つのパターンでは、いずれもシートヒータ65の熱量では補うことができないと判断し、協調無しと判断する。
【0102】
したがってエアコンECU10は、シートヒータ65有無と、シート有のヒータON・OFF状態と、乗員乗車状態を入力条件として、シートヒータ65、乗員乗車有無との協調有無を関係付ける判定を行う。協調有りの考え方は、表の備考に記載している。協調無しの条件は、
(1)Fr−Drにシートヒータ設定無い場合は協調を実施しない。
(2)Fr−Drシートヒータ設定有りでもOFFの場合、協調は実施しない。
(3)Fr−Paシートヒータ設定有りでも同様に協調は実施しない。
(4)集中制御OFF(=後席乗員有)の場合にRr−DrもしくはRr−Pa側がシートヒータ設定無時は協調しない。
(5)集中制御OFF(=後席乗員有)の場合にRr−DrもしくはRr−Pa側がシートヒータOFF時は協調しない。このように(1)から(5)の条件において協調しない理由は、乗員が快適感を維持できないためである。
【0103】
それに対して協調有りの条件は、
(6)全席シートヒータONしているので協調有り。
(7)集中制御ON(=後席乗員無)でFr−PaシートヒータONの場合、協調する。
(8)集中制御ON(=後席乗員無)およびFr−Pa乗員無しかつ、Fr−PaシートヒータOFFの場合でも協調する。このように(6)から(8)の条件において協調する理由は、快適感を維持できるためである。
【0104】
ステップS62では、決定された協調有無と、メモリから読み出したPTCヒータ43の設定W数とに基づいて、間欠許可水温の上限値および下限値を設定し、本フローを終了する。具体的なPTCヒータ43の設定は、メモリに予め記憶されている制御マップに基づいて判断される。表2は、ステップS62に用いられるPTCヒータ設定表である。
【0105】
【表2】

表2に示すように、設定されたPTCヒータ43のW数が多くなるにつれて、冷却水の熱源をPTCヒータ43によってより多く補うことができる。したがってPTCヒータ43のW数が多くなると、間欠許可水温が低くなる。またシートヒータ65との協調が有る場合には、同じPTCヒータ43のW数でも、さらに間欠許可水温を低くすることができる。したがってPTCヒータ43の設定W数と協調有無によって間欠許可水温の上限値および下限値を設定することができる。したがってPTCヒータ43の設定W数が最大レベルの600Wで協調有りの場合には、間欠許可水温の上限値が67℃、下限値が62℃に設定される。したがってPTCヒータ43が停止している場合(0W)に比べて、18℃も冷却水温を下げることができる。
【0106】
次に、ステップS25の水温制御処理に関して、図13を用いて説明する。図13は、温度制御プログラムにおける水温制御処理の一例を示したフローチャートである。図13に示す処理は、前述の図6におけるステップS25に移ると開始される。
【0107】
フローが開始されると、ステップS71では、冷却水温をEFIECU(エンジンECU63)からの多重通信によって取得し、ステップS72に移る。ステップS72では、設定された間欠許可水温の下限値と、取得した冷却水温とを比較し、下限値よりも冷却水温が低い場合には、ステップS73に移り、低くない場合には、ステップS74に移る。
【0108】
ステップS73では、冷却水温が低いので冷却水を加熱する必要があるので、走行用エンジン60を始動することを要求するエンジンON信号をエンジンECU63に出力し、ステップS71に戻る。
【0109】
ステップS74では、設定された間欠許可水温の上限値と、取得した冷却水温とを比較し、上限値よりも冷却水温が高い場合には、ステップS75に移り、高くない場合には、ステップS71に戻る。高くない場合は、冷却水温が上限値および下限値の間にある場合である。
【0110】
ステップS75では、冷却水温が高いので冷却水を加熱する必要がないので、走行用エンジン60を停止することを要求するエンジンOFF信号をエンジンECU63に出力し、ステップS71に戻る。
【0111】
このように図13に示す水温制御処理では、エンジンON信号またはエンジンOFF信号を出力することによって、冷却水温が間欠許可水温の下限値および下限値の間となるように制御することができる。
【0112】
((効果))
以上説明したように本実施形態の車両用空調装置100では、空調用送風機から送風された空気を加熱する装置してヒータコア42(主加熱装置)を備え、車室内を暖房する装置としてシートヒータ65(補助加熱装置)を備える。ヒータコア42は、走行用エンジン60の冷却水を熱源とし、シートヒータ65は走行用エンジン60の廃熱を用いず電力によって発熱する。したがってヒータコア42とシートヒータ65とでは熱源が異なるので、ヒータコア42での熱源が不足している場合には、シートヒータ65で不足分を補うことができる。このようなヒータコア42およびシートヒータ65は、エアコンECU10によって制御される。エアコンECU10は、走行用エンジン60の冷却水の温度が閾値(間欠許可水温の下限値)よりも低いと判定したとき、走行用エンジン60の始動を要求するエンジンON信号を要求信号として出力する。走行用エンジン60を始動すると走行用エンジン60の廃熱によって冷却水が加熱される。したがってエアコンECU10は、要求信号を出力することによって、走行用エンジン60の冷却水の温度を閾値以上にして暖房のための熱源を確保することができる。
【0113】
またエアコンECU10は、特定席および他の座席に対して空調風を吹き出している通常状態(協調無し)では、シートヒータ65の作動状態に基づいて、シートヒータ65の発熱量の増加量に応じて閾値(間欠許可水温)を下げるように調整する(表1参照)。本実施形態では、間欠許可水温を発熱量の増加量に応じて段階的に下げている。したがって、シートヒータ65の発熱量が増加する程、走行用エンジン60の冷却水の温度が閾値よりも低いと判定し難くなるので、走行用エンジン60の始動を要求する要求信号を出力し難くなる。これによって通常状態において、シートヒータ65の発熱量が考慮されるので、走行用エンジン60の始動が行われ難くなる。したがって暖房性能を確保しつつ、燃費の悪化を抑制できる。
【0114】
またエアコンECU10は、特定席を空調する特定席空調指令が与えられた場合には特定席状態の制御として、各ドアを遮断状態に制御する。遮断状態にすることによって、特定席に着座する特定乗員に対してだけ空調風を送風することができる。したがって通常状態よりも空調範囲が狭くなるので、空調能力を低減することができる。またエアコンECU10は、特定席状態において、閾値を通常状態において調整された閾値よりもさらに下げるように調整する(表1参照)。したがって、特定席状態において、シートヒータ65の発熱量が増加する程、走行用エンジン60の冷却水の温度が閾値よりも低いと通常状態よりもさらに判定し難くなるので、走行用エンジン60の始動を要求する要求信号を出力し難くなる。これによって特定席状態において、空調範囲が狭くなっていること、およびシートヒータ65の発熱量が考慮されるので、走行用エンジン60の始動がさらに行われ難くなる。したがって暖房性能を確保しつつ、燃費の悪化を抑制できる。
【0115】
また本実施形態では、特定席空調指令を入力するための入力手段として、コントロールパネル90をさらに含むので、乗員がコントロールパネル90の集中制御スイッチ55を操作することによって通常状態の制御から特定席状態の制御に移行することができる。したがって乗員を検出するセンサなどを用いることなく、乗員の任意のタイミングで特定席状態における制御を実施することができる。これによって乗員を検出するセンサを用いない簡単な構成で特定席状態の制御に移行できる車両用空調装置100を実現することができる。
【0116】
さらに本実施形態では、乗員検出手段である助手席着座センサ77および助手席バックルセンサ78の検出結果に基づいて特定席のみに乗員がいると判定された場合、いわば自動的に特定席を集中して空調することができる。これによって乗員の操作が不要になるので、操作における利便性を向上することができる。
【0117】
また本実施形態では、乗員検出手段は、助手席着座センサ77および助手席バックルセンサ78である。したがって2つの検出手段によって助手席における乗員の有無を検出している。エアコンECU10は、助手席バックルセンサ78によってシートベルトの装着が検出された場合、および助手席着座センサ77によって着座が検出された場合の少なくともいずれか一方の場合には、助手席に乗員がいると判断する。したがって助手席のシートベルトの装着が検出されなかった場合でも、助手席着座センサ77によって着座が検出された場合には、座席に乗員がいると判断する。これによって、たとえば車両の停車中にシートベルトを装着していない場合であっても、助手席着座センサ77によって乗員の有無を検出することができ、検出精度を向上することができる。
【0118】
また本実施形態では、助手席のみに乗員検出手段を設けている。図6に示す処理は、イグニッションONしないと制御しないので、イグニッションONされた場合には、運転席に乗員がいると判断することができる。したがって運転席に乗員検出手段は不要である。また集中制御スイッチ55で起動する制御は、後部座席に乗員が着座しないことが前提なので、後部座席の乗員検出は集中制御スイッチ55のオンオフ状態で代用することができる。したがって後部座席に乗員検出手段は不要である。したがって、乗員検出手段が助手席のみであっても、運転席および後部座席の乗員乗車状態を検出することができる。
【0119】
本実施形態の作用および効果を換言すると、運転席(Fr−Dr席)、助手席(Fr−Pa席)および後部座席(Rr席)の乗車状態手段を並列接続した助手席着座センサ77および助手席バックルセンサ78と集中制御スイッチ55で乗員検知を実施する。そして、運転席、助手席および後部座席の乗員乗車状態とシートヒータ65のON/OFF状態の組合せ条件で、従来一律に下げていた間欠許可水温を段階的に下げることで、従来より空調による快適感と省燃費を両立することができる。したがって本実施形態は、快適感と省燃費はシートヒータ65がONしてればヒータコア42の水温を下げても快適感と省燃費は可能という考えに基づいている。
【0120】
また助手席バックルセンサ78と助手席着座センサ77とを直列接続している構成の場合には、休憩中(停車中)に助手席バックルを外した着座状態で着座検知が出来なかった。しかしながら、本実施形態では、助手席バックルセンサ78と助手席着座センサ77を並列化することで、たとえば休憩中のバックルしない着座状態でも本制御を実行することができる。したがって休憩中のバックルをしていない着座状態でも、本制御が働き省燃費制御の頻度を増やすことができる。
【0121】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0122】
前述の第1実施形態では、間欠許可水温を発熱量の増加量に応じて段階的に下げているが、段階的に限るものではなく、発熱量が増加するほど閾値を徐々に下げるように設定してもよい。
【0123】
前述の第1実施形態では、集中制御スイッチ55が押された場合には、後部座席に乗員がいないと判断しているが、後部座席に乗員検出手段を設け、後部座席の着座状態を検出してもよい。換言すると、第1実施形態では、乗員検出手段は助手席のみに設けられ、他の座席には設けられていないが、このような構成に限るものではなく、全ての座席に乗員検出手段を設けてもよい。また前述の第1実施形態では、乗員検出手段は、シートに配された着座センサおよびバックルセンサを用いているが、インストルメントパネルなどに配置したIR(非接触赤外線温度)センサにより、各席の乗員の存否を検知するようにしてもよい。また、各席のドアの開閉信号を用いて、各席の乗員の存否を推定するようにしても良いし、これらの手段を組み合わせて各席の乗員の存否を判断するものであってもよい。
【0124】
また前述の第1実施形態では、補助暖房装置は、PTCヒータ43およびシートヒータ65であったが、PTCヒータ43およびシートヒータ65に限るものではなく、ステアリングヒータであってもよい。またPTCヒータ43に限るものではなく、水過熱ヒータおよび燃焼式ヒータであってもよい。
【0125】
前述の第1実施形態では、アクチュエータはサーボモータによって実現されているが、サーボモータに限ることはなく、残余のアクチュエータ、たとえばバイメタルおよび形状記憶合金を用いてもよい。
【0126】
前述の第1実施形態では、車室内の運転席側の空間と助手席側の空間とを独立に空調できる車両用空調装置100であるが、このような構成に限るものではなく、独立に空調しない車両用空調装置であってもよい。
【符号の説明】
【0127】
1…空調ユニット
2…空調ケース
6…内気吸込口(空気取入口)
7…外気吸込口(空気取入口)
10…エアコンECU(制御手段)
13…送風機ユニット(空調用送風機)
15…運転席側エアミックスドア(エアミックス手段)
20…運転席側デフロスタ吹出口(吹出口)
21…運転席側センタフェイス吹出口(吹出口)
22…運転席側サイドフェイス吹出口(吹出口)
23…運転席側フット吹出口(吹出口)
24…運転席側デフロスタドア
25…運転席側フェイスドア
26…運転席側フットドア
30…助手席側デフロスタ吹出口(吹出口)
31…助手席側センタフェイス吹出口(吹出口)
32…助手席側サイドフェイス吹出口(吹出口)
33…助手席側フット吹出口(吹出口)
34…助手席側デフロスタドア(開閉手段)
35…助手席側フェイスドア(開閉手段)
36…助手席側フットドア(開閉手段)
41…エバポレータ(空調部)
42…ヒータコア(空調部、主加熱装置)
43…PTCヒータ(空調部、補助加熱装置)
60…走行用エンジン(エンジン)
65…シートヒータ(補助加熱装置)
75…冷却水温センサ(水温検出手段)
77…助手席着座センサ(乗員検出手段、負荷検出手段)
78…助手席バックルセンサ(乗員検出手段、ベルト検出手段)
90…コントロールパネル(入力手段)
91…後部座席側センタフェイス吹出口(吹出口)
92…後部座席サイドフェイス吹出口(吹出口)
93…後部座席側フット吹出口(吹出口)
100…車両用空調装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側に空気取入口(6,7)が形成され、他方側に車室内に向かう空気が通過する複数の吹出口が形成される空調ケース(2)であって、前記複数の吹出口(20〜23,30〜33,91〜93)は少なくとも運転席を含む特定席とその他の座席とを含む複数の座席に対応して開口し、前記空気取入口と前記吹出口との間に送風空気が通過する通風路を有する空調ケース(2)と、
前記空調ケースの前記通風路に対して空気を送風する空調用送風機(13)と、
前記空調用送風機から送風された空気を、エンジン(60)の冷却水を熱源とする主加熱装置(42)によって加熱して、前記空調用送風機から送風された空気を空調風とし、前記複数の吹出口に送る空調部(41,42)と、
暖房のため、前記エンジンの廃熱以外の熱源を用いる補助加熱装置(43,65)と、
前記複数の吹出口のうち、前記特定席を除く他の座席を空調範囲とする吹出口から吹出す空調風の通過を許可する許可状態と、前記通過を遮断し、前記特定席を空調範囲とする吹出口から吹出す空調風の通過を許可する遮断状態とにわたって切替える開閉手段(34〜36)と、
前記冷却水の水温を検出する水温検出手段(75)と、
前記水温検出手段によって検出された水温を用いて、前記主加熱装置および前記補助加熱装置を制御して前記車室内の空調を行い、前記水温が閾値よりも低いと判定したとき、前記エンジンの始動を要求する要求信号を出力する制御手段(10)と、を含み、
前記制御手段は、
前記特定席および前記他の座席に対して前記空調風を吹出している通常状態では、前記補助加熱装置の作動状態に基づいて、前記補助加熱装置の発熱量の増加量に応じて前記閾値を下げるように調整し、
前記特定席を空調する特定席空調指令が与えられた場合には特定席状態の制御として、前記開閉手段を前記遮断状態に制御し、かつ前記閾値を前記通常状態において調整された前記閾値よりもさらに下げるように調整することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記特定席空調指令を入力するための入力手段(90)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記複数の座席のうち、少なくとも1つの座席の乗員の存否を検出する乗員検出手段(77,78)をさらに含み、
前記制御手段は、前記乗員検出手段の検出結果に基づいて前記特定席のみに乗員がいると判断すると、前記特定席状態における前記制御を実施することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記乗員検出手段は、
前記少なくとも1つの座席のシートベルトの装着を検出するベルト検出手段(78)と、
前記ベルト検出手段が設けられる座席の座面に加わる負荷を検出する負荷検出手段(77)と、を含み、
前記制御手段は、前記ベルト検出手段によって前記装着が検出された場合、および前記負荷検出手段によって予め設定される設定値以上の負荷が検出された場合の少なくともいずれか一方の場合には、前記座席に乗員がいると判断することを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−224198(P2012−224198A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93281(P2011−93281)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】