説明

車両用蓄電部保護システム

【課題】車両用蓄電部保護システムにおいて、蓄電部の電圧を検出する電圧センサの異常が発生した場合でも、蓄電部の過電圧を有効に回避しつつ車両の継続走行を可能とすることである。
【解決手段】車両用蓄電部保護システムである回転電機駆動システム30は、バッテリ16の電圧を昇圧するDC/DCコンバータ42と、制御部36と、バッテリ16の端子間電圧を検出する第1電圧センサ50と、DC/DCコンバータ42の低圧側、高圧側の電圧をそれぞれ検出する第2電圧センサ52及び第3電圧センサ54とを備える。制御部36は、バッテリ16の現在SOCを取得する手段と、バッテリ16の充電量を制御する際の制御中心となる制御中心SOCを設定する手段と、第1電圧センサ50に異常が発生したと判定された場合に、現在の制御中心SOCを、通常時の制御中心SOCよりも低くする手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電部と、蓄電部の電圧を昇圧する昇圧コンバータと、昇圧コンバータの高圧側の電圧を供給され、走行用モータを駆動する駆動部と、複数の電圧センサとを備える車両用蓄電部保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジン及び走行用モータを搭載し、エンジン及び走行用モータの少なくとも一方を駆動源として車輪を駆動させる電動車両であるハイブリッド車両が考えられ、実施されている。例えば、特許文献1には、蓄電部であるバッテリと、バッテリの電圧を昇圧する昇圧コンバータと、昇圧コンバータの出力側の電圧を供給され、走行用モータであるモータジェネレータを駆動するインバータと、制御部とを備える車両駆動装置が記載されている。
【0003】
また、この車両駆動装置には、バッテリから出力される電圧値を検出するバッテリ電圧センサと、昇圧コンバータの出力側の電圧を検出する第1電圧センサと、昇圧コンバータの入力側の電圧を検出する第2電圧センサとが設けられている。また、制御部は、第1電圧センサに異常が発生した場合に、昇圧コンバータの動作を停止させ、かつ、インバータに回転電機の力行運転を行わせる指令を与えて、昇圧コンバータの出力側に接続されたコンデンサを放電させている。
【0004】
また、特許文献1には、昇圧コンバータの出力側の電圧を検知する電圧センサに故障が発生したときに、昇圧コンバータの昇圧制御を停止させ、バッテリ電圧を昇圧せずにそのままインバータに供給して車両の走行を継続させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−325322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載された構成の場合、昇圧コンバータの出力側の電圧を検出する第1電圧センサの故障時でも車両の走行を行えるようにするものである。ただし、特許文献1の構成では、バッテリの電圧を検出するバッテリ電圧センサの故障時でも車両の継続走行を行えるようにすることは考慮されていない。
【0007】
一方、昇圧コンバータの入力側の電圧を検出する入力側電圧センサにより、バッテリ電圧センサの故障時でもバッテリの電圧を検出し、その検出電圧が異常に高電圧となる場合に所定の高電圧処理を行うことも考えられる。ただし、本来、通常時に入力側電圧センサの検出精度を、バッテリ電圧センサの検出精度と同程度に高くすることは要求されないので、バッテリ電圧センサの故障時には、バッテリの電圧を精度よく検出することが困難になる。このため、バッテリ電圧センサの故障時でも、バッテリの過電圧を有効に回避する、すなわちバッテリの過電圧保護を有効に行いつつ、車両の継続走行を可能とする面から改良の余地がある。特に、近年、ハイブリッド車両のバッテリとしてリチウム電池を採用することが始まっており、このようなリチウム電池では、過電圧を回避することがバッテリ劣化の抑制の観点から重要である。
【0008】
本発明の目的は、車両用蓄電部保護システムにおいて、蓄電部の電圧を検出する電圧センサの異常が発生した場合でも、蓄電部の過電圧を有効に回避しつつ車両の継続走行を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車両用蓄電部保護システムは、蓄電部と、蓄電部の電圧を昇圧する昇圧コンバータと、昇圧コンバータの高圧側の電圧を供給され、走行用モータを駆動する駆動部と、蓄電部の端子間電圧を検出する第1電圧センサと、昇圧コンバータの低圧側の電圧を検出し、その検出電圧が昇圧コンバータの制御に使用される第2電圧センサと、昇圧コンバータの高圧側の電圧を検出し、その検出電圧が昇圧コンバータの制御に使用される第3電圧センサと、蓄電部の現在の充電量である現在SOCを取得するSOC取得手段と、蓄電部の充電量を制御する際の制御中心となる充電量である制御中心SOCを設定する設定手段と、蓄電部の現在SOCを制御中心SOCに近づけるように蓄電部の充放電要求を行う充放電要求手段と、第1電圧センサに異常が発生したと判定された場合に、第2電圧センサから蓄電部の電圧の検出値を取得するとともに、現在の制御中心SOCを、通常時の制御中心SOCよりも低くする第1センサ異常時処理手段とを備えることを特徴とする車両用蓄電部保護システムである。
【0010】
本発明に係る車両用蓄電部保護システムによれば、蓄電部の電圧を検出する第1電圧センサの異常検出時に、第1センサ異常時処理手段が、第2電圧センサから蓄電部の電圧の検出値を取得するので、この第2電圧センサの検出値により蓄電部の電圧を監視できる。このため、その検出電圧が異常に高電圧である場合に、電池高電圧処理等の予め設定した特定処理を行うことができる。また、蓄電部の電圧を昇圧した電圧を用いて走行用モータを駆動でき、走行用モータを用いて車両の継続走行が可能となる。また、第1センサ異常時処理手段は、現在の制御中心SOCを、通常時の制御中心SOCよりも低くする。このため、通常時に高い電圧検出精度が要求されない第2電圧センサを、蓄電部の電圧検出用として使用するのにもかかわらず、蓄電部のSOCが許容上限を超えることを有効に抑制できる。この蓄電部のSOCは蓄電部の電圧に大きく影響する。したがって、蓄電部の電圧を検出する電圧センサに異常が発生した場合でも、蓄電部の過電圧を回避しつつ車両の継続走行が可能となる。
【0011】
また、本発明に係る車両用蓄電部保護システムにおいて好ましくは、第1センサ異常時処理手段は、第1電圧センサに異常が発生したと判定された場合に、現在の制御中心SOCを、通常時の制御中心SOCよりも低くするとともに、第1電圧センサの異常検出時または異常検出後に車両が走行するときに、蓄電部に対する充放電可能電力の最大値を通常時の充放電可能電力の最大値よりも低下させる。
【0012】
上記の構成によれば、第1電圧センサの異常時でも、通常時に高い電圧検出精度が要求されない第2電圧センサの使用により蓄電部の過電圧を回避でき、かつ、蓄電部の使用が制限されない時間を長くでき、車両の走行性能の急激な変化を抑制できる。
【0013】
また、本発明に係る車両用蓄電部保護システムにおいて好ましくは、第1電圧センサに異常が発生したと判定された場合に、現在の制御中心SOCを、通常時の制御中心SOCよりも低くするとともに、第1電圧センサの異常検出時または異常検出後に車両が走行するときに、蓄電部に対する充放電可能電力の最大値を通常時の充放電可能電力の最大値よりも低下させ、第1電圧センサの異常検出時または異常検出後に車両の停止状態で蓄電部に充電するときには、蓄電部に対する充放電可能電力の最大値を現在のまま維持する。
【0014】
上記の構成によれば、第1電圧センサの異常時でも、通常時に高い電圧検出精度が要求されない第2電圧センサの使用により蓄電部の過電圧を回避でき、かつ、蓄電部の使用が制限されない時間を長くでき、車両の走行性能の急激な変化を抑制できる。さらに、車両停止状態での充電時には、充放電電力が制限されないので充電効率を高くできる。
【0015】
また、本発明に係る車両用蓄電部保護システムにおいて好ましくは、第1電圧センサ及び第2電圧センサに異常が発生したと判定された場合に、昇圧コンバータの作動を停止させるとともに、第3電圧センサから蓄電部の電圧の検出値を取得し、その検出電圧が予め設定した閾値を超える場合に、予め設定した蓄電部高圧処理を実行する第2センサ異常時処理手段を備える。
【0016】
上記構成によれば、第2電圧センサの異常が発生した場合でも、蓄電部の電圧を第3電圧センサの検出値により監視できるので、蓄電部の過電圧を回避できる。また、蓄電部の電圧を用いて走行用モータを駆動でき、走行用モータを用いて車両の継続走行が可能となる。
【0017】
また、本発明に係る車両用蓄電部保護システムにおいて好ましくは、第1電圧センサ、第2電圧センサ及び第3電圧センサのすべてで異常が発生したと判定された場合に、蓄電部に対する充電及び放電を停止させる第3センサ異常時処理手段を備える。
【0018】
また、本発明に係る車両用蓄電部保護システムにおいて好ましくは、蓄電部は、直列接続された複数の電池セルを有する電池ブロックを複数個接続されることにより構成され、第1電圧センサは、各電池ブロックの電圧を検出する複数のブロック電圧センサを有し、各ブロック電圧センサにより検出された各電池ブロックの電圧の合計を蓄電部の端子間電圧として検出し、第2電圧センサ及び第3電圧センサは、それぞれ第1電圧センサの検出精度よりも低い検出精度を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る車両用蓄電部保護システムによれば、蓄電部の電圧を検出する電圧センサの異常が発生した場合でも、蓄電部の過電圧を回避しつつ車両の継続走行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態の1例の車両用蓄電部保護システムである回転電機駆動システムを備えるハイブリッド車両の構成を示す概略図である。
【図2】図1の車両に搭載する回転電機駆動システムの構成を示す図である。
【図3】図2の制御部の構成を示す図である。
【図4】図2のシステムにおいて、通常時(A)と、第1電圧センサ故障時(B)とでの、制御中心SOCと許容上限及び許容下限との関係の1例を示すバッテリのSOC状態図である。
【図5】図2のシステムにおいて、通常時と第1電圧センサ故障時とでの、バッテリのSOCと充電可能電力Win及び放電可能電力Woutとの関係の1例を示す図である。
【図6】図2のシステムにおいて、第1電圧センサ及び第2電圧センサの検出値に基づいて電池高電圧処理を実行する方法の1例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図6は、本発明の実施の形態の1例を示している。なお、以下の説明では、車両用蓄電部保護システムをハイブリッド車両に搭載する場合を説明するが、本発明はこのような用途に使用する構成に限定するものではなく、走行用モータとバッテリとを備える電気自動車等、他の電動車両に搭載して使用することもできる。
【0022】
本実施の形態に係る車両用蓄電部保護システムである回転電機駆動システムは、ハイブリッド車両に搭載して使用する。図1に示すように、ハイブリッド車両10は、エンジン12と、エンジン12により駆動され、主として発電機として使用される第1モータジェネレータ(MG1)14と、主としてバッテリ16から電力が供給される走行用モータである第2モータジェネレータ(MG2)18と、動力分割機構20と、駆動軸22に連結された車輪24とを備える。
【0023】
なお、図1では、ハイブリッド車両10が、前置エンジン付前輪駆動車であるFF車である場合を示している。ただし、ハイブリッド車両は、前置エンジン付後輪駆動車であるFR車や、四輪駆動車である4WD車等とすることもできる。
【0024】
動力分割機構20は、エンジン12からの動力を、駆動軸22への経路と、第1モータジェネレータ14への経路とに分割可能としている。動力分割機構20は、例えば、遊星歯車機構により構成する。例えば、第1モータジェネレータ14の回転軸を中空として、この回転軸の端部に遊星歯車機構のサンギヤを接続する。また、第1モータジェネレータ14の回転軸の内側を挿通したエンジン12の駆動軸に、遊星歯車機構のプラネタリギヤに接続したキャリアを接続する。また、遊星歯車機構のリングギヤに、出力軸26を接続し、出力軸26に直接または図示しない別の遊星歯車機構等の減速機を介して第2モータジェネレータ18の回転軸を接続する。出力軸26の動力は、減速機28を介して車輪24に連結された駆動軸22に伝達可能とする。
【0025】
第1モータジェネレータ14は、3相交流モータであり、エンジン12の始動用モータとしても使用可能であるが、第1モータジェネレータ14をエンジン12により駆動される発電機として使用する場合には、エンジン12から、遊星歯車機構のキャリアを介して伝達されるトルクの少なくとも一部を、サンギヤを介して、第1モータジェネレータ14の回転軸に伝達する。
【0026】
第2モータジェネレータ18は、車両の駆動力を発生するための3相交流モータであり、かつ、発電機、すなわち電力回生用としても使用可能である。
【0027】
エンジン12の回転は、動力分割機構20を介して出力軸26側と第1モータジェネレータ14側とに取り出す。第1モータジェネレータ14の駆動により発生した電力は、蓄電部であるバッテリ16に充電される。なお、ハイブリッド車両10の構成は、このような構成に限定するものではなく、エンジン及びモータジェネレータの少なくとも一方を車輪の駆動源として走行するハイブリッド車両の構成を有するものであれば、種々の構成を採用できる。
【0028】
次に、ハイブリッド車両10が備える回転電機駆動システムを説明する。図2に示すように、回転電機駆動システム30は、上記のバッテリ16及び各モータジェネレータ14,18と、電池監視ユニット32と、電池ECU(Electric Control Unit)34と、制御部36と、第1モータジェネレータ14用の駆動部である第1インバータ38と、第2モータジェネレータ18用の駆動部である第2インバータ40と、第1インバータ38及び第2インバータ40とバッテリ16との間に接続された昇圧コンバータであるDC/DCコンバータ42と、第1コンデンサ44及び第2コンデンサ46と、システムリレー(SMR)48と、第1電圧センサ50、第2電圧センサ52及び第3電圧センサ54と電流センサ56とを含む。
【0029】
バッテリ16は、ニッケル水素電池またはリチウムイオン電池等の二次電池である。また、バッテリ16は、直列接続された複数の電池セルを有する電池ブロックが複数個接続されることにより構成される電池パックと呼ばれるものである。
【0030】
また、回転電機駆動システム30に、バッテリ16の端子間電圧を検出する第1電圧センサ50が設けられており、第1電圧センサ50の検出電圧は、電池監視ユニット32を介して電池ECU34に入力される。第1電圧センサ50は、対応する電池ブロックの電圧を検出可能な複数のブロック電圧センサ(図示せず)と、各電池ブロックを構成する各電池セルの電圧をそれぞれ検出可能な複数のセル電圧センサ(図示せず)とを有する。また、第1電圧センサ50は、各ブロック電圧センサにより検出された各電池ブロックの電圧の合計をバッテリ16の端子間電圧VBとして検出可能とする。なお、第1電圧センサ50は、このように複数の電圧センサにより構成されるものに限定するものではなく、単一の電圧センサVBによりバッテリ16の全体の電圧を検出するように構成することもできる。
【0031】
また、本発明は、バッテリ16の過充電回避を目的とするもので、特にバッテリ16をリチウムイオン電池とする場合に有効である。バッテリ16は、外部充電構成によって、外部の交流電源から充電可能とする構成でもよい。例えば、車両外部の商用電源に接続された充電ケーブルを、車両側に設けた充電インレットに接続し、充電インレットを充電器等を介してバッテリ16に接続するように構成することもできる。この場合、外部電源によるバッテリ16の外部充電が可能となる。このようなハイブリッド車両は、プラグインハイブリッド車両(PHV)と呼ばれる。
【0032】
電池監視ユニット32は、第1電圧センサ50により検出されたバッテリ16の各ブロックごとの電圧及びバッテリ16全体の電圧VBを入力され、その入力されたバッテリ16の各ブロックごとの電圧及びバッテリ16全体の電圧VBを電池ECU34へ出力する。また、電池監視ユニット32は、電流センサ56により検出されたバッテリ16の電流を入力され、その入力された電流を電池ECU34へ出力する。なお、第1電圧センサ50からバッテリ16の各ブロックごとの電圧を電池監視ユニット32に入力し、電池監視ユニット32で各ブロックごとの電圧の合計をVBとして算出することもできる。
【0033】
電池ECU34は、電池監視ユニット32から入力されたバッテリ16全体の電圧VBや、入力された電流からバッテリ16の充電量であるSOC(State Of Charge)を算出、すなわち取得し、その算出したSOCを制御部36へ出力する。なお、電池監視ユニット32と電池ECU34とを単一のユニットにより統合して構成することもできる。
【0034】
また、制御部36は、SOC取得手段58(図3)を有し、SOC取得手段58は、電池ECU34からSOCを取得する。すなわちSOC取得手段58は、バッテリ16の現在の充電量である現在SOCを取得する。なお、SOC取得手段58は、電池監視ユニット32または電池ECU34からバッテリ16全体の電圧VBや、入力された電流等のデータを入力され、そのデータからSOCを算出、すなわち取得することもできる。なお、SOCの算出方法として、バッテリ16のOCVである開回路電圧とSOCとの相関関係を用いたり、バッテリ16の充放電電流を積算する等の公知の方法を採用できる。
【0035】
DC/DCコンバータ42は、バッテリ16と第1インバータ38及び第2インバータ40との間に設けている。DC/DCコンバータ42は、2個直列に接続されたIGBT、トランジスタ等のスイッチング素子S1,S2と、各スイッチング素子S1,S2に逆並列に接続された2個のダイオードD1,D2と、各スイッチング素子S1,S2の間に一端が接続されたリアクトルLとを含み、リアクトルLの他端を1のシステムリレー48を介してバッテリ16の正極側に接続している。DC/DCコンバータ42は、バッテリ16から供給された直流電圧を昇圧して、第1インバータ38及び第2インバータ40に供給可能としている。また、DC/DCコンバータ42は、2個のインバータ38,40の一方または両方から供給された直流電圧を降圧して、バッテリ16に直流電力を供給する、すなわちバッテリ16を充電する機能を有する。
【0036】
また、DC/DCコンバータ42の低圧側、すなわちバッテリ16側に電流平滑化用の第1コンデンサ44が設けられている。また、DC/DCコンバータ42とバッテリ16との間の後述するシステムリレー48よりもDC/DCコンバータ42側に、第1コンデンサ44の端子間電圧、すなわち、DC/DCコンバータ42の低圧側の電圧を検出する第2電圧センサ52が設けられている。また、DC/DCコンバータ42の高圧側、すなわち各インバータ38,40側に電流平滑化用の第2コンデンサ46が設けられている。また、回転電機駆動システム30に、第2コンデンサ46の端子間電圧、すなわち、DC/DCコンバータ42の高圧側の電圧を検出する第3電圧センサ54が設けられている。第2電圧センサ52及び第3電圧センサ54の検出電圧VL,VHは、制御部36に入力される。
【0037】
DC/DCコンバータ42は、制御部36により制御される。すなわち、制御部36は、昇圧制御手段60(図3)を有し、昇圧制御手段60は、第2電圧センサ52及び第3電圧センサ54の検出電圧等に基づいて、DC/DCコンバータ42の作動、すなわちスイッチングを制御する。すなわち、第2電圧センサ52及び第3電圧センサ54の検出電圧VL,VHは、DC/DCコンバータ42の制御に使用される。また、第2電圧センサ52及び第3電圧センサ54は、それぞれ第1電圧センサ50の検出精度よりも低い検出精度を有する。
【0038】
また、バッテリ16とDC/DCコンバータ42との間にシステムリレー48が設けられており、システムリレー48は、制御部36によりオンオフ状態が制御される。すなわち、図示しない起動スイッチがユーザーによりオンされると、制御部36が起動され、制御部36がシステムリレー48をオンして、バッテリ16の直流電圧が昇圧された後、第1インバータ38及び第2インバータ40に供給される。また、起動スイッチがオフされると、システムリレー48がオフされ、バッテリ16と第1インバータ38及び第2インバータ40との接続が遮断される。
【0039】
また、インバータ38,40は、U、V,W各相のアームを備える。それぞれのアームは、直列接続されたIGBT、トランジスタ等の2個ずつのスイッチング素子を含み、各アームの中点を、対応するモータジェネレータ14(または18)を構成する図示しない3相のステータコイルの一端にそれぞれに接続している。2個のインバータ38,40はバッテリ16に対し並列に接続している。また、各モータジェネレータ14,18において、3相のステータコイルの他端は、中性点で互いに接続している。
【0040】
各インバータ38,40は、制御部36からトルク指令値に対応する制御信号が入力されることにより、それぞれのスイッチング素子のスイッチングが制御される。例えば、第1インバータ38は、制御部36から入力されるトルク指令値に対応する信号に基づいて、バッテリ16側から入力される直流電圧を交流電圧に変換して第1モータジェネレータ14を駆動する。また、第1インバータ38は、第1モータジェネレータ14がエンジン12(図1)の駆動に伴って発電した場合に、その発電により得られた交流電圧を、第1インバータ38で直流電圧に変換し、その変換した直流電圧をDC/DCコンバータ42に供給する。DC/DCコンバータ42は、その供給された直流電圧を降圧してからバッテリ16に供給し、バッテリ16を充電する。
【0041】
これに対して、第2インバータ40は、制御部36ら入力されるトルク指令値に対応する信号に基づいて、バッテリ16側から入力される直流電圧を交流電圧に変換して、第2モータジェネレータ18を駆動する。また、第2インバータ40は、ハイブリッド車両10(図1)の回生制動時に、第2モータジェネレータ18により発電した交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を、DC/DCコンバータ42に供給する。DC/DCコンバータ42は、その供給された直流電圧を降圧してからバッテリ16に供給し、バッテリ16を充電する。回生制動は、車両のアクセルペダルが踏まれていない状態であって、バッテリ16の充電量が少ない場合に実行される。このように各インバータ38,40は、DC/DCコンバータ42の高圧側の電圧を供給され、対応するモータジェネレータ14,18を駆動する。
【0042】
また、制御部36は、CPU、メモリ等を有するマイクロコンピュータを含み、例えば、モータECUと呼ばれるモータコントローラと、エンジンECUと呼ばれるエンジンコントローラとを含むものでもよい。なお、図示の例では、制御部36として1つの制御部36のみを図示しているが、制御部36は適宜複数の構成要素に分割して、互いに接続する構成とすることもできる。例えば、制御部36を、モータコントローラの機能を有する部分と、エンジンコントローラの機能を有する部分と、ハイブリッドECUと呼ばれる全体を統合制御する全体制御部とに分け、互いに接続した構成とすることもできる。
【0043】
また、制御部36には、アクセル操作量センサ、車速センサ及びブレーキペダルセンサ等の各種センサから検出信号が入力される。アクセル操作量センサは、アクセルペダル等の加速指示具の操作量を検出する。車速センサは、車両の速度を検出する。ブレーキペダルセンサは、ブレーキペダル等の制動指示具のオンオフ状態を検出する。制御部36は、これらの信号や、後述する充放電要求手段62(図3)の充放電要求等から、車両全体で必要とする出力を算出するとともに、その出力をエンジン出力とモータ出力とに配分する割合を算出し、モータ出力に対応するモータジェネレータ14,18のトルク指令値や発電量指令値を算出、すなわち取得する。また、制御部36には、第1モータジェネレータ14と第2モータジェネレータ18とに設けられた図示しない電流センサで検出された、各モータジェネレータ14,18の各相のステータコイルを流れるモータ電流値や、各モータジェネレータ14,18の回転角度を表す信号も入力される。
【0044】
制御部36は、算出された第2モータジェネレータ18に対するトルク指令値に応じて、第2インバータ40に制御信号を出力し、制御信号に応じて第2インバータ40を構成するスイッチング素子をオンオフ動作、すなわちスイッチング動作させる。そして、制御部36は、第2モータジェネレータ18において、トルク指令値に従ったトルクが出力されるように、第2モータジェネレータ18を駆動する。また、制御部36は、同様に、第1インバータ38に制御信号を出力し、制御信号に応じて第1インバータ38を構成するスイッチング素子をスイッチング動作させ、第1モータジェネレータ14において、算出した第1モータジェネレータ14に対するトルク指令値に従ったトルクが出力されるように、第1モータジェネレータ14を駆動する。このようなハイブリッド車両10は、エンジン12及び第2モータジェネレータ18の少なくとも一方を駆動源として駆動する。
【0045】
また、制御部36は、算出された第2モータジェネレータ18または第1モータジェネレータ14に対する発電量指令値に応じて、走行中にブレーキペダルがオフされる、すなわち操作量が0となる等の予め設定した特定条件が成立することを条件として、対応するインバータ40(または38)に制御信号を出力し、制御信号に応じて対応するインバータ40(または38)をスイッチング動作させる。
【0046】
図3を用いて制御部36の構成を説明する。なお、以下の説明では、図1に示した要素と同一の要素には同一の符号を付して説明する。制御部36は、バッテリ16のSOCを制御する際の制御中心となるSOCである制御中心SOCを設定する設定手段64と、バッテリ16の現在SOCを制御中心SOCに近づけるようにバッテリ16の充放電制御を行う充放電要求手段62とを有する。例えば、図4は、図2のシステムにおいて、通常時(A)と、第1電圧センサ故障時(B)とでの、制御中心SOCと許容上限及び許容下限との関係の1例を示すバッテリのSOC状態図である。図4に示すようにバッテリ16には、それぞれSOCに関して充電限界となる許容上限と、放電限界となる許容下限とが設定されており、例えば許容下限は全充電容量の20から30%の間のいずれかの値で、許容上限は全充電容量の80%近辺のある値である。「許容上限」とはこれ以上充電を続けるとバッテリ16が過充電となって特性劣化等の性能上の問題が生じる上限のSOCである。特に、バッテリ16がリチウムイオン電池である場合、過充電は過度に温度が上昇する原因となるので、「許容上限」以上にSOCが増大することを防止する重要性は高い。一方、「許容下限」は、これ以上放電を続けるとバッテリ16が過放電となって特性劣化等の性能上の問題が生じる下限のSOCである。この許容下限以下のSOCは、DCIH領域と呼ばれる放電禁止領域であるので、この領域の上限である許容下限以下にSOCが減少するのを防止する必要がある。
【0047】
そして許容上限と許容下限との間に制御中心SOCが設定されている。設定手段は、制御中心SOCを、許容下限と許容上限との間の値、例えば60%近辺となるように設定する。充放電要求手段62は、制御中心SOCが設定された場合に、バッテリ16の現在SOCと制御中心SOCとの差に応じた充放電要求パワーを算出し、バッテリ16に対しその充放電要求パワーを出力または入力すべく現在SOCを制御中心SOCに近づけるように充放電要求を行う。
【0048】
また、制御部36は、走行中のバッテリ16からの放電可能電力WoutをSOCに応じて設定している。図5は、図2のシステムにおいて、通常時と第1電圧センサ故障時とでの、バッテリのSOCと充電可能電力Win及び放電可能電力Woutとの関係の1例を示す図である。図5に示すように、通常時のWoutとして、SOCが許容上限A(例えば80%)を上限とする、予め設定された所定SOC範囲でバッテリ16からの放電可能電力Woutが一定値のW1となり、SOCがある値B以下で放電可能電力Woutが徐々に(例えば直線L1に沿って直線的に)減少し、SOCの許容下限CでWoutが0となるようにしている。なお、「走行中」とは、エンジン12を停止させたままバッテリ16の電力で第2モータジェネレータ18を駆動してその動力で車輪24を駆動する「EV走行中」と、エンジン12の動力と第2モータジェネレータ18の動力とを使用して車輪24を駆動する「HV走行中」とのいずれの場合も含んでいる(以下同じである。)。
【0049】
制御部36は、走行中の第2モータジェネレータ18からの回生電力に基づいて、バッテリ16へ充電される充電可能電力WinをSOCに応じて設定している。すなわち、図5に示すように、通常時のWinとして、SOCが許容下限C(例えば20%)を下限とする、予め設定された所定SOC範囲でバッテリ16からの充電可能電力Winが一定値のW2となり、SOCがある値D以上で充電可能電力Winの絶対値が徐々に(例えば直線L2に沿って直線的に)減少し、SOCの許容上限AでWinが0となるようにしている。
【0050】
制御部36は、バッテリ16の充放電電力が放電可能電力Woutと充電可能電力Winとにより定められる制御範囲内におさまるように、各モータジェネレータ14,18を制御する。具体的には、制御部36は、バッテリ16からの走行時の放電電力が放電可能電力Woutを超えると、各モータジェネレータ14,18の一方または両方の電力消費量を抑制し、または各モータジェネレータ14,18の一方または両方の発電量を増大させる。これに対して、制御部36は、バッテリ16への充電電力の絶対値が充電可能電力Winの絶対値を超えると、各モータジェネレータ14,18の一方または両方の発電量を抑制し、または各モータジェネレータ14,18の一方または両方の電力消費量を増大させる。
【0051】
また、制御部36は、第1電圧センサ50によりバッテリ16の電圧を監視し、バッテリ16の端子電圧が予め設定した所定電圧を超える場合には、バッテリ16が過充電等であり、異常に高電圧である高電圧状態にあると判定し、予め設定した所定の電池高電圧処理を実行する。また、この高電圧を判定するために、第1電圧センサ50に加えてDC/DCコンバータ42の低圧側の電圧を検出する第2電圧センサ52も使用し、2の電圧センサ50,52で二重検出を行っている。すなわち、第2電圧センサ52は、DC/DCコンバータ42の昇圧制御を行うために低圧側の電圧を検出するだけでなく、バッテリ16の電圧を検出するためにも使用し、バッテリ16の検出電圧が異常に高い場合に電池高電圧処理を実行させるために使用する。
【0052】
図6は、図2のシステムにおいて、第1電圧センサ及び第2電圧センサの検出値に基づいて電池高電圧処理を実行する方法の1例を示すフローチャートである。図6の例では、第1電圧センサ50側と第2電圧センサ52側とで別のルーチンを有し、それぞれのルーチンを互いに並行にほぼ同時に実行する。図6において、ステップS10(以下の説明ではステップSは単にSとする。)からS16は、第1電圧センサ50側のルーチンを示している。まず、S10で第1電圧センサ50の検出電圧VBが予め設定した閾値電圧Vaを越えるか否かを判定し、超える(VB>Va)と判定した場合、S12でVB>Vaの状態が所定時間継続したか否かを判定する。
【0053】
S12で所定時間継続したと判定すると、S14でバッテリ16が高電圧状態にあると判定し、上記の電池高電圧処理を実行し、最初の処理に戻る。これに対して、S10で検出電圧VB>Vaが成立しないか、または成立した場合でもS12で所定時間継続しないと判定された場合にはS16で第1電圧センサ50が正常であると判定し、通常の正常処理を行う。この場合も最初の処理に戻る。
【0054】
これに対して、図6でS20からS24とS14とは、第2電圧センサ52側のルーチンを示している。まず、S20で第2電圧センサ52の検出電圧VLが予め設定した閾値電圧Vaを越えるか否かを判定し、超えると判定した場合、S22でVL>Vaの状態が所定時間継続したか否かを判定する。S22で所定時間継続したと判定すると、S24でバッテリ16が高電圧状態にあると判定し、上記の電池高電圧処理を実行し、最初の処理に戻る。これに対して、S20で検出電圧VB>Vaが成立しないか、または成立した場合でもS22で所定時間継続しないと判定された場合には、第2電圧センサ52が正常であると判定し、通常の正常処理を行う。この場合も最初の処理に戻る。このため、S14では、第1電圧センサ50の検出電圧VBが閾値Vaを上回り、それが所定時間継続する場合と、第2電圧センサ52の検出電圧VLが閾値Vaを上回り、それが所定時間継続する場合との少なくとも1の場合が成立すると、電池高電圧処理が実行される。
【0055】
このようにバッテリ16は、第1電圧センサ50と第2電圧センサ52との2のセンサ50,52により電圧の二重検出が行われているため、これら両電圧センサ50,52のうち、1のセンサ50(または52)に故障が発生した場合でも、バッテリ16を過電圧から十分に保護することができる。ただし、上記の「発明が解決しようとする課題」の欄で説明したように、本来、通常時に、入力側電圧センサである第2電圧センサ52の検出精度を、バッテリ16の電圧を検出する第1電圧センサ50の検出精度と同程度に高くすることは要求されない。このため、第1電圧センサ50の故障時には、バッテリ16の電圧を精度よく検出することが困難になり、バッテリ16の過電圧を有効に回避する、すなわちバッテリ16の過電圧保護を有効に行いつつ、車両の継続走行を可能とする面から改良の余地がある。
【0056】
本実施の形態では、このような不都合を解消するために、図3に示すように、制御部36は、第1センサ異常時処理手段66と、第2センサ異常時処理手段68と、第3センサ異常時処理手段70とを有する。第1センサ異常時処理手段66は、第1電圧センサ50に故障等により異常が発生したと判定された場合に、第2電圧センサ52からバッテリ16の電圧の検出値を取得するとともに、現在の制御中心SOC(図4(A))を、各電圧センサ50,52,54に異常がない場合である通常時の制御中心SOCよりも低い別の制御中心SOC(図4(B))に変更する。この場合、図5にAで示すSOCの許容上限に対して制御上の許容上限Eが低くなるように(E<A)、制御中心SOCを変更する。例えば、SOCでAは80%とし、Eは50%とする。第1電圧センサ50故障時の制御中心SOCは、制御上の許容上限Eよりも低くする。このため、第1電圧センサ50が急に故障した場合でも、バッテリ16がすぐに高電圧になることを防止できる。
【0057】
さらに、第1センサ異常時処理手段66(図3)は、第1電圧センサ50の異常検出時または異常検出後に車両が走行するときに、バッテリ16に対する充放電可能電力である充電可能電力Win及び放電可能電力Woutをそれぞれ通常時のWin,Woutよりも低くする。例えば、第1センサ異常時処理手段66は、図5に示すように、第1電圧センサ50の異常検出時または異常検出後での、走行時のWoutの最大値を、通常時のWoutの最大値W1よりも低いW3に設定する。また、この場合の走行時のWoutは、SOCがある値以下で徐々に(例えば直線L1に沿って直線的に)減少し、SOCの許容下限CでWoutが0となるようにする。
【0058】
また、この場合に、制御部36は、走行中の第2モータジェネレータからの回生電力に基づいて、バッテリ16へ充電される充電可能電力Winの絶対値の最大値も、通常時のWinの絶対値の最大値W2よりも低いW4とする。また、この場合のWinの絶対値は、SOCがある値以上で徐々に(例えば直線L2とは異なる直線L3に沿って直線的に)減少し、SOCの制御上の許容上限EでWinが0となるようにする。
【0059】
なお、第1電圧センサ50に故障が生じたか否かは、例えば、バッテリ16を構成する各電池セルの同じ電池セルを検出する2のセル電圧センサを有する二重監視系を用いて判定する。この場合、その2のセル電圧センサの検出電圧に差が生じた場合に、この差が予め設定した閾値以上である場合、または差が0ではない場合に第1電圧センサ50に故障が生じたと判定する。また、これに加えて、第1電圧センサ50に故障が生じたか否かは、第1電圧センサ50と第2電圧センサ52と第3電圧センサ54との3者の検出電圧を比較し、第1電圧センサ50の検出電圧が、残りの電圧センサである第2電圧センサ52及び第3電圧センサ54の検出電圧と異なる場合には、第1電圧センサ50に故障が生じたと判定する。なお、これら各センサ50,52,54の3者の検出電圧の比較のみにより、第1電圧センサ50に故障が生じたと判定することもできる。また、バッテリ16の各ブロックごとの電圧を2ずつのブロック電圧センサにより検出する二重系とし、互いの検出電圧が異なる場合に第1電圧センサ50に故障が生じたと判定することもできる。
【0060】
さらに、第1センサ異常時処理手段66は、第1電圧センサ50の異常検出時または異常検出後に、車両の停止状態でエンジン12の作動により駆動される第1モータジェネレータ14の発電により、バッテリ16に充電するときに、バッテリ16に対する充放電可能電力Win,Woutの最大値を現在のまま、すなわち通常時と同じまま維持する。なお、プラグインハイブリッド車両や、電気自動車等において、外部電源によるバッテリ16の外部充電を可能とする構成において、第1センサ異常時処理手段66は、第1電圧センサ50の異常検出時または異常検出後に車両及びエンジンの停止状態で、外部電源からバッテリ16に充電するときに、バッテリ16に対する充放電可能電力Win,Woutの最大値を現在のまま、すなわち通常時と同じまま維持することもできる。
【0061】
また、第2センサ異常時処理手段68(図3)は、第1電圧センサ50及び第2電圧センサ52に異常が発生したと判定された場合に、DC/DCコンバータ42の作動を停止させるとともに、第3電圧センサ54からバッテリ16の端子間電圧を取得する。この場合、DC/DCコンバータ42は、2のスイッチング素子S1,S2のうち、正極側のスイッチング素子S1のスイッチングをオンし、負極側のスイッチング素子S2をオフした状態のままでスイッチングの作動を停止させる。これにより、DC/DCコンバータ42のバッテリ16側電圧VLとインバータ38,40側電圧VHとが等しくなり(VL=VH)、第3電圧センサ54によりバッテリ16の電圧VBを検出することが可能となる。この状態で、インバータ38,40側からバッテリ16への電力供給が可能となり、第2モータジェネレータ18の回生時の発電電力がバッテリ16へ供給可能となる。
【0062】
また、第2センサ異常時処理手段68(図3)は、第3電圧センサ54の検出電圧が予め設定した閾値を超える場合に、予め設定した電池高電圧処理を実行する。このため、バッテリ16電圧監視のバックアップ性能として、第2電圧センサ52の正常時と同等レベルの性能を確保できる。
【0063】
さらに、第3センサ異常時処理手段70(図3)は、第1電圧センサ50、第2電圧センサ52及び第3電圧センサ54のすべてで異常が発生したと判定された場合に、システムリレー48のすべてをオフとし、バッテリ16に対する充電及び放電を停止させる。
【0064】
なお、第1電圧センサ50に加えて、第2電圧センサ52に異常が発生したか否かは、第2電圧センサ52と第3電圧センサ54との検出電圧の2者比較により判定している。そして、第2電圧センサ52と第3電圧センサ54とのうち、異常が発生したセンサを特定可能としている。そしてその特定を表す信号に基づいて、制御部36で第2センサ異常時処理手段68または第3センサ異常時処理手段70を実行するか否かを判定するようにしている。
【0065】
このような車両用蓄電部保護システムである回転電機駆動システム30によれば、バッテリ16の電圧を検出する第1電圧センサ50の異常検出時に、第1センサ異常時処理手段66が、第2電圧センサ52からバッテリ16の電圧の検出値を取得するので、この第2電圧センサ52の検出値によりバッテリ16の電圧を監視できる。このため、その検出電圧が異常に高電圧である場合に、予め設定した特定処理である電池高電圧処理を行うことができる。また、バッテリ16の電圧を昇圧した電圧を用いて走行用モータである第2モータジェネレータ18を駆動でき、第2モータジェネレータ18を用いて車両の継続走行が可能となる。また、第1センサ異常時処理手段66は、現在の制御中心SOCを、通常時の制御中心SOCよりも低くする。このため、通常時に高い電圧検出精度が要求されない第2電圧センサ52を、バッテリ16の電圧検出用として使用するのにもかかわらず、バッテリ16のSOCが許容上限を超えることを有効に抑制できる。例えば、制御中心SOCを図5のEよりも低く(図5の左側に)設定すれば、第2電圧センサ52の検出誤差が大きく、かつ、回生時にバッテリ16に電力が供給される場合でも、SOCが許容上限A(図5)を超えることを有効に防止でき、バッテリ16の過電圧を有効に防止できる。
【0066】
また、バッテリ16のSOCはバッテリ16の電圧に大きく影響する。このため、バッテリ16の電圧を検出する第1電圧センサ50に異常が発生した場合でも、バッテリ16の過電圧を回避しつつ車両の継続走行が可能となる。このように本実施の形態によれば、バッテリ16の電圧を検出する第1電圧センサ50の故障時等、異常が発生した場合でも、バッテリ16の過電圧を回避しつつ車両の継続走行が可能となり、修理工場等まで車両を運転する退避走行を容易に行え、かつ、その場合の走行距離を長くできる。
【0067】
また、第1センサ異常時処理手段66は、第1電圧センサ50に異常が発生したと判定された場合に、現在の制御中心SOCを、通常時の制御中心SOCよりも低くするとともに、第1電圧センサ50の異常検出時または異常検出後に車両が走行するときに、バッテリ16に対する充放電可能電力Win,Woutの最大値をそれぞれ通常時の充放電可能電力Win,Woutの最大値よりも低下させる。このため、第1電圧センサ50の異常時でも、通常時に高い電圧検出精度が要求されない第2電圧センサ52の使用により、バッテリ16の過電圧を回避でき、かつ、バッテリ16の使用が制限されない時間を長くでき、車両の走行性能の急激な変化を抑制できる。
【0068】
また、同じ場合に、第1電圧センサ50の異常検出時または異常検出後に車両の停止状態でバッテリ16に充電するときには、バッテリ16に対する充放電可能電力Win,Woutの最大値を現在のまま維持する。このため、車両停止状態での充電時に、充放電電力が制限されないので充電効率を高くできる。このように充放電可能電力Win,Woutの最大値を大きくした場合でも、車両が停止中であるので、第2電圧センサ52の検出誤差が大きくなったとしても、車両の走行性能に問題を生じることがない。
【0069】
また、回転電機駆動システム30は、第1電圧センサ50及び第2電圧センサ52に異常が発生したと判定された場合に、DC/DCコンバータ42の作動を停止させるとともに、第3電圧センサ54からバッテリ16の端子間電圧を取得し、その検出電圧が予め設定した閾値を超える場合に、予め設定した電池高電圧処理を実行する第2センサ異常時処理手段68を備える。このため、第2電圧センサ52の異常が発生した場合でも、バッテリ16の電圧を第3電圧センサ54の検出値により監視できるので、バッテリ16の過電圧を回避できる。また、バッテリ16の電圧を用いて第2モータジェネレータ18を駆動でき、第2モータジェネレータ18を用いて車両の継続走行が可能となる。このように本実施の形態によれば、DC/DCコンバータ42の低圧側の電圧を検出する第2電圧センサ52の故障時等、異常が発生した場合でも、バッテリ16の過電圧を回避しつつ車両の継続走行が可能となる。そして、第3電圧センサ54によりバッテリ16電圧監視のためのバックアップ性能を確保できる。しかも、第2電圧センサ52の故障時には、DC/DCコンバータ42のスイッチングが停止されるため、DC/DCコンバータ42の発熱を大幅に減少できる。
【0070】
また、回転電機駆動システム30は、第1電圧センサ50、第2電圧センサ52及び第3電圧センサ54のすべてで異常が発生したと判定された場合に、システムリレー48をオフとし、バッテリ16に対する充電及び放電を停止させる第3センサ異常時処理手段70を有するので、バッテリ16に対する電力供給を停止できる。このため、バッテリ16の電圧の上昇を防止できる。すなわち、バッテリ16が高電圧である場合には、バッテリ16のSOCが高い状態にある可能性があるが、SOCの上昇を防止できるので、バッテリ16の電圧の上昇も防止できる。
【0071】
なお、上記の説明において、「充電」とは、急速充電、100Vでの充電、200Vでの充電等、種々の充電モードのすべてで適用可能であることを意味する。
【0072】
また、上記の説明では、車両用蓄電部保護システムである回転電機駆動システム30が第1センサ異常時処理手段66、第2センサ異常時処理手段68及び第3センサ異常時処理手段70のすべてを備える場合を説明したが、車両用蓄電部保護システムは、これらの処理手段66,68,70のうち、少なくとも第1センサ異常時処理手段66を備えている構成とすることができる。
【符号の説明】
【0073】
10 ハイブリッド車両、12 エンジン、14 第1モータジェネレータ(MG1)、16 バッテリ、18 第2モータジェネレータ(MG2)、20 動力分割機構、22 駆動軸、24 車輪、26 出力軸、28 減速機、30 回転電機駆動システム、32 電池監視ユニット、34 電池ECU、36 制御部、38 第1インバータ、40 第2インバータ、42 DC/DCコンバータ、44 第1コンデンサ、46 第2コンデンサ、48 システムリレー(SMR)、50 第1電圧センサ、52 第2電圧センサ、54 第3電圧センサ、56 電流センサ、58 SOC取得手段、60 昇圧制御手段、62 充放電要求手段、64 設定手段、66 第1センサ異常時処理手段、68 第2センサ異常時処理手段、70 第3センサ異常時処理手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電部と、
蓄電部の電圧を昇圧する昇圧コンバータと、
昇圧コンバータの高圧側の電圧を供給され、走行用モータを駆動する駆動部と、
蓄電部の端子間電圧を検出する第1電圧センサと、
昇圧コンバータの低圧側の電圧を検出し、その検出電圧が昇圧コンバータの制御に使用される第2電圧センサと、
昇圧コンバータの高圧側の電圧を検出し、その検出電圧が昇圧コンバータの制御に使用される第3電圧センサと、
蓄電部の現在の充電量である現在SOCを取得するSOC取得手段と、
蓄電部の充電量を制御する際の制御中心となる充電量である制御中心SOCを設定する設定手段と、
蓄電部の現在SOCを制御中心SOCに近づけるように蓄電部の充放電要求を行う充放電要求手段と、
第1電圧センサに異常が発生したと判定された場合に、第2電圧センサから蓄電部の電圧の検出値を取得するとともに、現在の制御中心SOCを、通常時の制御中心SOCよりも低くする第1センサ異常時処理手段とを備えることを特徴とする車両用蓄電部保護システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用蓄電部保護システムにおいて、
第1センサ異常時処理手段は、第1電圧センサに異常が発生したと判定された場合に、現在の制御中心SOCを、通常時の制御中心SOCよりも低くするとともに、第1電圧センサの異常検出時または異常検出後に車両が走行するときに、蓄電部に対する充放電可能電力の最大値を通常時の充放電可能電力の最大値よりも低下させることを特徴とする車両用蓄電部保護システム。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用蓄電部保護システムにおいて、
第1センサ異常時処理手段は、第1電圧センサに異常が発生したと判定された場合に、現在の制御中心SOCを、通常時の制御中心SOCよりも低くするとともに、第1電圧センサの異常検出時または異常検出後に車両が走行するときに、蓄電部に対する充放電可能電力の最大値を通常時の充放電可能電力の最大値よりも低下させ、第1電圧センサの異常検出時または異常検出後に車両の停止状態で蓄電部に充電するときには、蓄電部に対する充放電可能電力の最大値を現在のまま維持することを特徴とする車両用蓄電部保護システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の車両用蓄電部保護システムにおいて、
第1電圧センサ及び第2電圧センサに異常が発生したと判定された場合に、昇圧コンバータの作動を停止させるとともに、第3電圧センサから蓄電部の電圧の検出値を取得し、その検出電圧が予め設定した閾値を超える場合に、予め設定した蓄電部高圧処理を実行する第2センサ異常時処理手段を備えることを特徴とする車両用蓄電部保護システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の車両用蓄電部保護システムにおいて、
第1電圧センサ、第2電圧センサ及び第3電圧センサのすべてで異常が発生したと判定された場合に、蓄電部に対する充電及び放電を停止させる第3センサ異常時処理手段を備えることを特徴とする車両用蓄電部保護システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1に記載の車両用蓄電部保護システムにおいて、
蓄電部は、直列接続された複数の電池セルを有する電池ブロックが複数個接続されることにより構成され、
第1電圧センサは、各電池ブロックの電圧を検出する複数のブロック電圧センサを有し、各ブロック電圧センサにより検出された各電池ブロックの電圧の合計を蓄電部の端子間電圧として検出し、
第2電圧センサ及び第3電圧センサは、それぞれ第1電圧センサの検出精度よりも低い検出精度を有することを特徴とする車両用蓄電部保護システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−106581(P2012−106581A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256415(P2010−256415)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】