説明

車両用衝突防止装置

【課題】車両の進行方向の変更時に、車両がその側面にてその後方から接近してくる接近物と衝突することを確実に抑制する。
【解決手段】車両用衝突防止装置10に、進路方向変更予測器11、ステレオカメラ12、制御器13、及び路面投光器14を設ける。進路方向変更予測器11は、車両1の進行方向の変更を予測する。ステレオカメラ12は、車両1に対しその後方から接近してくる二輪車2を検出する。制御器13は、車両1が左折すると予測されかつその車両1に対しその左後方から接近してくる二輪車2が検出されたときに、巻込み衝突するおそれがあると予測する。路面投光器14は、巻込み衝突のおそれが予測されたときに、二輪車2の進行側の路面に着色光を照射し、二輪車2が車両1の左側方に進入してくることを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用衝突防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、対向車等に車両の前方進路を譲っていることを、車両に対しその後側方から接近してくる接近物(例えば二輪車)に知らせる車両用伝達装置が知られている(例えば特許文献1及び2参照)。この車両用伝達装置は、譲ランプを点灯して車両の前方に光を照射することで、対向車等に車両の前方通路を通ることを指示し、警告ランプを譲ランプと連動して点灯して車両の後方に光を照射することで、その後側方から近付いてくる二輪車に対し、対向車等に車両の前方進路を譲っていることを知らせるようになっている。これにより、二輪車の運転者は、車両に対しその後方から大型車が接近してきていて、車両の前方を視認することができない場合でも、警告ランプの点灯によって対向車に車両の前方進路を譲っていることを知ることができ、交通の安全性を高いレベルで維持することができる。
【特許文献1】特開平7−76244号公報
【特許文献2】特開平7−76245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両の進行方向の変更時に、車両に対しその後方から接近してくる接近物(例えば二輪車)があると、車両がその側面にて二輪車と衝突するおそれがある。例えば、車両の左折時に、その左後方から近付いてくる二輪車があると、車両が二輪車と巻込み衝突する場合がある。
【0004】
しかしながら、上記車両用伝達装置では、二輪車に対し、対向車等に車両の前方進路を譲っていることを知らせるだけなので、そのような衝突を確実に抑制することができない。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の進行方向の変更時に、車両がその側面にてその後方から接近してくる接近物と衝突することを確実に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、車両が衝突することを防止するための車両用衝突防止装置であって、上記車両の進行方向の変更を予測又は検出する進路方向変更予測手段と、上記車両に対しその後方から接近してくる接近物を検出する接近物検出手段と、上記車両の進路方向の変更が予測又は検出されかつ上記接近物が検出されたときに、該車両がその側面にて上記接近物と衝突するおそれがあるかを予測する衝突予測手段と、上記衝突のおそれがあると予測されたときに、上記接近物が上記車両の側方に進入してくることを抑制する進入抑制手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
これにより、車両の進行方向の変更が予測又は検出されかつ車両に対しその後方から接近してくる接近物が検出されたときに、車両がその側面にて接近物と衝突するおそれがあるかを予測し、そのような衝突のおそれがあると予測されたときに、接近物が車両の側方に進入してくることを抑制するので、車両の進行方向の変更時に、車両がその側面にてその後方から接近してくる接近物と衝突することを確実に抑制することができる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記進入抑制手段は、上記衝突のおそれがあると予測されたときに上記接近物の進行側の路面に光を照射することで上記接近物が上記車両の側方に進入してくることを抑制する照射手段を有することを特徴とするものである。
【0009】
これにより、照射手段という簡単なもので、接近物が車両の側方に進入してくることを抑制することができる。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記照射手段は、少なくとも上記車両の周囲の明るさに基づき、上記光の照射状態を変更するように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
これにより、光の照射状態を車両の周囲の明るさに応じたものにすることができる。
【0012】
第4の発明は、上記第1の発明において、上記進入抑制手段は、上記衝突のおそれがあると予測されたときに画像を表示することで上記接近物が上記車両の側方に進入してくることを抑制する画像表示手段を有することを特徴とするものである。
【0013】
これにより、接近物が車両の側方に進入してくることを確実に抑制することができる。
【0014】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記画像表示手段は、少なくとも上記車両の周囲の明るさに基づき、上記画像の表示状態を変更するように構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
これにより、画像の表示状態を車両の周囲の明るさに応じたものにすることができる。
【0016】
第6の発明は、上記第4又は5の発明において、上記画像表示手段は、上記接近物の進行側の路面に画像を表示するように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
ここで、接近物の進行側の路面に表示された画像は注目されやすい。このため、本発明によれば、接近物が車両の側方に進入してくることをより一層確実に抑制することができる。
【0018】
第7の発明は、上記第4又は5の発明において、上記画像表示手段は、上記接近物の進行側の路面の上方空間に画像を表示するように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
ここで、接近物の進行側の路面の上方空間に表示された画像は注目されやすい。このため、本発明によれば、接近物が車両の側方に進入してくることをより一層確実に抑制することができる。
【0020】
第8の発明は、上記第1の発明において、上記進入抑制手段は、上記衝突のおそれがあると予測されたときに上記車両の側方で展開することで上記接近物が上記車両の側方に進入してくることを抑制するエアクッションを有することを特徴とするものである。
【0021】
これにより、エアクッションが車両の側方で展開するので、たとえ接近物が車両の側方に進入してこようとしたとしても、接近物が車両の側方に進入してくることをより一層確実に抑制することができる。
【0022】
第9の発明は、上記第8の発明において、上記エアクッションは、上記車両の側方空間の大きさに基づき、展開時の大きさが変更されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0023】
これにより、エアクッションの展開時の大きさを車両の側方空間の大きさに応じたものにすることができる。
【0024】
第10の発明は、上記第1〜9のいずれか1つの発明において、上記進路方向変更予測手段は、カーナビゲーション装置からの情報又は方向指示器からの操作信号に基づき、上記車両の進行方向の変更を予測又は検出するように構成されていることを特徴とするものである。
【0025】
これにより、車両の進行方向の変更を確実に予測又は検出することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、車両の進行方向の変更が予測又は検出されかつ車両に対しその後方から接近してくる接近物が検出されたときに、車両がその側面にて接近物と衝突するおそれがあるかを予測し、そのような衝突のおそれがあると予測されたときに、接近物が車両の側方に進入してくることを抑制するので、車両の進行方向の変更時に、車両がその側面にてその後方から接近してくる接近物と衝突することを確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る車両用衝突防止装置10を搭載した右ハンドル車1(以下、車両1という)の概略構成図である。この車両用衝突防止装置10は、車両1が衝突することを防止するためのものであって、図1に示すように、進路方向変更予測器11(進路方向変更予測手段に相当)、ステレオカメラ12(接近物検出手段に相当)、制御器13(衝突予測手段に相当)、及び路面投光器14(進入抑制手段、照射手段に相当)を備えている。
【0029】
上記進路方向変更予測器11は、GPSアンテナ15を有するカーナビゲーション装置からの誘導経路情報及び自車両位置情報、又は方向指示器(図示せず)からの操作信号に基づき、車両1が進行方向を変更するかを予測し、車両1の方向転換を予測すると、その情報を制御器13に発信する。
【0030】
上記ステレオカメラ12は、車両1の後端部に設けられていて、車両1の後方画像を撮影することで、車両1に対しその後方から接近してくる二輪車2(接近物に相当。図2参照)を検出し、その画像情報を制御器13に発信する。ステレオカメラ12の撮影範囲は、例えば、図1に示す2本の一点鎖線で囲まれた領域である。
【0031】
上記制御器13は、進路方向変更予測器11及びステレオカメラ12からの各情報を受信すると、これらの情報に基づき、車両1が二輪車2と巻込み衝突するおそれがあるかを予測し、そのおそれがあると予測すると、作動信号を路面投光器14に発信する。具体的には、制御器13は、車両1が次の交差点で左折すると予測されかつその車両1に対しその左後方から接近してくる二輪車2が検出されたと判定したときに、巻込み衝突するおそれがあると推定するようになっている。巻込み衝突するおそれがあるとは、例えば、図2に示す二点鎖線の状態となることをいう。
【0032】
また、制御器13は、ステレオカメラ12からの画像情報に基づき、二輪車2と車両1との距離、二輪車2の車両1に対する相対速度、及び車両1の周囲の明るさを算出する。
【0033】
さらに、制御器13は、カーナビゲーション装置からの誘導経路情報及び自車両位置情報に基づき、車両1の進行方向の変更までの距離及び時間を算出する。
【0034】
上記路面投光器14は、車両1の左側後端部、及び左側ドアミラー1aにそれぞれ配設されていて、制御器13からの作動信号を受信すると作動する。具体的には、路面投光器14は、巻込み衝突のおそれが推測されたときに、二輪車2の進行側の路面に着色光Bを照射し(図3参照)、その路面からの反射光で二輪車2の運転者に対し車両1が左折することが予想される旨を警告して減速や車両1の左方に進入しないことを促すようになっている。これにより、二輪車2が車両1の左側方に進入してくることを抑制する。なお、車両1の左側後端部の路面投光器を符号14aで、左側ドアミラー1aの路面投光器を符号14bで示している。
【0035】
また、路面投光器14は、車両1の周囲の明るさや路面状態などに基づき、着色光の色や強度(光の照射状態に相当)などを変更する。これにより、その視認性を向上させることができる。なお、路面状態は、車両に搭載された路面状態検出手段(図示せず)で検出される。
【0036】
さらに、路面投光器14は、車両1と二輪車2との距離、又は二輪車2の車両1に対する相対速度に基づき、着色光の照射位置を変更する。
【0037】
−車両用衝突防止装置の制御器の制御−
以下、図4のフローチャートを参照しながら、車両用衝突防止装置10の制御器13の制御について説明する。なお、以下の説明では、所定距離D1〜D5、及び所定速度V1〜V3が示されているが、所定距離D1〜D5は、0<D1<D2<D3<D4<D5の関係を満たし(図5参照)、所定速度V1〜V3は、V1>V2>V3>0の関係を満たす。
【0038】
まず、ステップS1では、自車両1の左側への進路変更が予測されたかを判定する。ステップS1の判定結果がYESの場合はステップS2に進み、NOの場合はステップS1にリターンする。ステップS2では、自車両1の左後方に二輪車2が検出されたかを判定する。ステップS2の判定結果がYESの場合(つまり、車両1が二輪車2と巻込み衝突するおそれがあると予測された場合)はステップS3に進み、NOの場合はステップS1にリターンする。ステップS3では、インストルメントパネル1bの警報装置16の表示器に、自車両1の左後方に二輪車2が存在する旨を表示することで、自車両1のドライバにそのような二輪車2が存在するとの情報を提供する。
【0039】
次に、ステップS4では、自車両1の進路変更までの距離Lが所定距離L1未満である、又は自車両1の進路変更までの時間Tが所定時間T1未満であるかを判定する。ステップS4の判定結果がYESの場合(つまり、所定距離L1未満である、又は所定時間T1未満である場合)はステップS5に進み、NOの場合はステップS1にリターンする。ステップS5では、自車両1と二輪車2との距離D、及び二輪車2の自車両1に対する相対速度Vを読み出す。
【0040】
そして、ステップS6では、自車両1と二輪車2との距離Dが所定距離D5以上である、又はその距離Dが0未満であるかを判定する。ステップS6の判定結果がYESの場合(つまり、所定距離D5以上である、又は0未満である場合)はステップS7に進み、NOの場合はステップS8に進む。
【0041】
ステップS7では、路面投光器14aの作動(図4では「本作動」と記載)を中止し、路面投光器14aの作動中の場合は、その作動を停止(図4では「解除」と記載)する。その後、スタートにリターンする。
【0042】
ステップS8では、自車両1と二輪車2との距離Dが所定距離D4以上所定距離D5未満であるかを判定する。ステップS8の判定結果がYESの場合はステップS9に進み、NOの場合はステップS11に進む。
【0043】
ステップS9では、路面投光器14aの作動を中止し、路面投光器14aの作動中の場合は、その作動を停止する。そして、ステップS10に進み、警報装置16のスピーカーから、自車両1に対しその左後方から近寄ってくる二輪車2が存在する旨を音声警報することで、自車両1のドライバにそのような二輪車2が存在するとの情報を提供する。その後、スタートにリターンする。
【0044】
ステップS11では、自車両1と二輪車2との距離Dが0以上所定距離D1未満であるかを判定する。ステップS11の判定結果がYESの場合(つまり、二輪車2が自車両1に近付き過ぎている場合)はステップS12に進み、NOの場合はステップS14に進む。
【0045】
ステップS12では、路面投光器14aの作動を中止し、路面投光器14aの作動中の場合は、その作動を停止する。そして、ステップS13に進み、路面投光器14bを作動させ、二輪車2の前方の路面で左側ドアミラー1aの左側方の位置に着色光を照射する。その後、スタートにリターンする。
【0046】
ステップS14では、自車両1と二輪車2との距離Dが所定距離D1以上所定距離D2未満である、又は二輪車2の自車両1に対する相対速度Vが所定速度V1以上であるかを判定する。ステップS14の判定結果がYESの場合(つまり、所定距離D1以上所定距離D2未満である、又は所定速度V1以上である場合)はステップS15に進み、NOの場合はステップS16に進む。
【0047】
ステップS15では、路面投光器14aを緊急危険警報作動させ、二輪車2の前方の路面で自車両1の後方近傍の位置に着色光を照射する。その後、スタートにリターンする。
【0048】
ステップS16では、自車両1と二輪車2との距離Dが所定距離D2以上所定距離D3未満である、又は二輪車2の自車両1に対する相対速度Vが所定速度V2以上であるかを判定する。ステップS16の判定結果がYESの場合(つまり、所定距離D2以上所定距離D3未満である、又は所定速度V2以上所定速度V1未満である場合)はステップS17に進み、NOの場合(つまり、所定距離D3以上所定距離D4未満である、又は所定速度V2未満である場合)はステップS18に進む。
【0049】
ステップS17では、路面投光器14aを危険警報作動させ、二輪車2の前方の路面で自車両1からその後方に少しだけ遠くに離れた位置に着色光を照射する。その後、スタートにリターンする。
【0050】
ステップS18では、路面投光器14aを注意喚起警報作動させ、二輪車2の前方の路面で自車両1からその後方にやや遠くに離れた位置に着色光を照射する。なお、このように路面投光器14aを注意喚起警報作動させるには、自車両1と二輪車2との距離Dが所定距離D3以上所定距離D4未満である、又は二輪車2の自車両1に対する相対速度Vが所定速度V3以上所定速度V2未満である必要がある。その後、スタートにリターンする。
【0051】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、車両1の進行方向の変更が予測されかつ車両1に対しその後方から接近してくる二輪車2が検出されたときに、車両1がその左側面にて二輪車2と衝突するおそれがあるかを予測し、そのような衝突のおそれがあると予測されたときに、二輪車2の進行側の路面に着色光を照射することで二輪車2が車両1の左側方に進入してくることを抑制するので、車両1の進行方向の変更時に、車両1がその左側面にてその後方から接近してくる二輪車2と衝突することを確実に抑制することができる。
【0052】
また、路面投光器14という簡単なもので、二輪車2が車両1の左側方に進入してくることを抑制することができる。
【0053】
また、着色光の照射状態を車両1の周囲の明るさに応じたものにすることができる。
【0054】
また、進路方向変更予測器11は、カーナビゲーション装置からの情報、又は方向指示器からの操作信号に基づき、車両1の進行方向の変更を予測するので、車両1の進行方向の変更を確実に予測することができる。
【0055】
(実施形態2)
本実施形態は、進入抑制手段として画像表示器17(画像表示手段に相当)が設けられているものである(図1参照)。この画像表示器17は、車両1の左側後端部、及び左側ドアミラー1aにそれぞれ配設されていて、上述のような巻込み衝突のおそれが予測されたときに、二輪車2の進行側の路面に幾何学的模様の仮想画像を表示し、二輪車2の運転者に対し車両1が左折することが予想される旨を警告して減速や車両1の左方に進入しないことを促す。なお、車両1の左側後端部の画像表示器を符号17aで、左側ドアミラー1aの画像表示器を符号17bで示している。
【0056】
また、画像表示器17は、車両1の周囲の明るさや路面状態などに基づき、画像の色や強度(画像の表示状態に相当)などを変更する。これにより、その視認性を向上させることができる。
【0057】
さらに、画像表示器17は、車両1と二輪車2との距離、又は二輪車2の車両1に対する相対速度に基づき、画像の表示位置や画像の大きさを変更する。その他の点に関しては、実施形態1とほぼ同様である。
【0058】
−車両用衝突防止装置の制御器の制御−
以下、図4のフローチャートを参照しながら、車両用衝突防止装置10の制御器13の制御について説明する。なお、以下の説明では、実施形態1と同じ処理のところは、その記載を省略する。
【0059】
ステップS7では、画像表示器17aの作動を中止し、画像表示器17aの作動中の場合は、その作動を停止する。
【0060】
ステップS9では、画像表示器17aの作動を中止し、画像表示器17aの作動中の場合は、その作動を停止する。
【0061】
ステップS12では、画像表示器17aの作動を中止し、画像表示器17aの作動中の場合は、その作動を停止する。そして、ステップS13に進み、画像表示器17bを作動させ、二輪車2の前方の路面で左側ドアミラー1aの左側方の位置に画像を表示する。
【0062】
ステップS15では、画像表示器17aを緊急危険警報作動させ、二輪車2の前方の路面で自車両1の後方近傍の位置に大型画像を表示する。
【0063】
ステップS17では、画像表示器17aを危険警報作動させ、二輪車2の前方の路面で自車両1からその後方に少しだけ遠くに離れた位置に中型画像を表示する。
【0064】
ステップS18では、画像表示器17aを注意喚起警報作動させ、二輪車2の前方の路面で自車両1からその後方にやや遠くに離れた位置に鮮明な小型画像を表示する。
【0065】
−効果−
ここで、二輪車2の進行側の路面に表示された画像は注目されやすい。このため、本実施形態によれば、二輪車2が車両1の左側方に進入してくることをより一層確実に抑制することができる。
【0066】
また、画像の表示状態を車両1の周囲の明るさに応じたものにすることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、二輪車2の進行側の路面に幾何学的模様の画像を表示するが、二輪車2が車両1の左方に進入してくることを抑制することができる限り、画像の種類の如何は問わない。
【0068】
(実施形態3)
本実施形態は、進入抑制手段としてレーザースキャナー18(画像表示手段に相当)が設けられているものである(図1参照)。このレーザースキャナー18は、車両1の左側後端部(例えば、リアコンビランプ内やリアエンドパネル面)、及び左側ドアミラー1aにそれぞれ配設されていて、上述のような巻込み衝突のおそれが予測されたときに、二輪車2の進行側の路面の上方空間に仮想の空間立体映像V(画像に相当。レーザーホログラムともいう。図6参照)を表示し、二輪車2の運転者に対し車両1が左折することが予想される旨を警告して減速や車両1の左方に進入しないことを促す。なお、車両1の左側後端部のレーザースキャナーを符号18aで、左側ドアミラー1aのレーザースキャナーを符号18bで示している。
【0069】
また、レーザースキャナー18は、車両1の周囲の明るさなどに基づき、映像の色や強度(画像の表示状態に相当)などを変更する。これにより、その視認性を向上させることができる。
【0070】
さらに、レーザースキャナー18は、車両1と二輪車2との距離、又は二輪車2の車両1に対する相対速度に基づき、映像の表示位置や映像の大きさを変更する。その他の点に関しては、実施形態1とほぼ同様である。
【0071】
−車両用衝突防止装置の制御器の制御−
以下、図4のフローチャートを参照しながら、車両用衝突防止装置10の制御器13の制御について説明する。なお、以下の説明では、実施形態1と同じ処理のところは、その記載を省略する。
【0072】
ステップS7では、レーザースキャナー18aの作動を中止し、レーザースキャナー18aの作動中の場合は、その作動を停止する。
【0073】
ステップS9では、レーザースキャナー18aの作動を中止し、レーザースキャナー18aの作動中の場合は、その作動を停止する。
【0074】
ステップS12では、レーザースキャナー18aの作動を中止し、レーザースキャナー18aの作動中の場合は、その作動を停止する。そして、ステップS13に進み、レーザースキャナー18bを作動させ、二輪車2の前方の路面の上方空間で左側ドアミラー1aの左側方の位置に映像を表示する。
【0075】
ステップS15では、レーザースキャナー18aを緊急危険警報作動させ、二輪車2の前方の路面の上方空間で自車両1の後方近傍の位置に大型映像を表示する。
【0076】
ステップS17では、レーザースキャナー18aを危険警報作動させ、二輪車2の前方の路面の上方空間で自車両1からその後方に少しだけ遠くに離れた位置に中型画像を表示する。この中型映像は、例えば、二輪車2のドライバの視点高さほどの高さと、自車両1の左側面と路肩との距離ほどの幅を有する。
【0077】
ステップS18では、レーザースキャナー18aを注意喚起警報作動させ、二輪車2の前方の路面の上方空間で自車両1からその後方にやや遠くに離れた位置に鮮明な小型画像を表示する。
【0078】
−効果−
ここで、二輪車2の進行側の路面の上方空間に表示された映像は注目されやすい。このため、本実施形態によれば、二輪車2が車両1の左側方に進入してくることをより一層確実に抑制することができる。
【0079】
また、映像の表示状態を車両1の周囲の明るさに応じたものにすることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、二輪車2の進行側の路面の上方空間にレーザースキャナー18で空間立体映像を表示しているが、二輪車2の進行側の路面の上方空間に画像を表示する限り、画像を如何なる手段で表示しても良く、例えば、空間プロジェクター(図示せず)で仮想の空間平面映像(空間プロジェクター映像)を表示しても良い。この空間平面映像の表示位置や大きさは、空間立体映像の表示位置や大きさとほぼ同様である。
【0081】
(実施形態4)
本実施形態は、進入抑制手段として可変エアクッション19が設けられているものである(図1参照)。この可変エアクッション19は、車両1の左側後端部、及び左側ドアミラー1aにそれぞれ配設されていて、上述のような巻込み衝突のおそれが予測されたときに、左側方で展開し(図7参照)、二輪車2の運転者に対し車両1が左折することが予想される旨を警告して減速や車両1の左方に進入しないことを促す。なお、車両1の左側後端部の可変エアクッションを符号19aで、左側ドアミラー1aの可変エアクッションを符号19bで示している。
【0082】
また、可変エアクッション19は、緊急危険警報作動時に、車両1の左側方空間の大きさに基づき、展開時の大きさが変更される。なお、車両1の左側方空間の大きさは、車両1に搭載された空間検出手段(図示せず)で検出される。
【0083】
さらに、可変エアクッション19は、車両1と二輪車2との距離、又は二輪車2の車両1に対する相対速度に基づき、展開時の大きさが変更される。
【0084】
加えて、可変エアクッション19は、展開後収縮可能であって、再使用が可能である。その他の点に関しては、実施形態1とほぼ同様である。
【0085】
−車両用衝突防止装置の制御器の制御−
以下、図4のフローチャートを参照しながら、車両用衝突防止装置10の制御器13の制御について説明する。なお、以下の説明では、実施形態1と同じ処理のところは、その記載を省略する。
【0086】
ステップS7では、可変エアクッション19aの作動を中止し、可変エアクッション19aの作動中の場合は、その作動を停止する。
【0087】
ステップS9では、可変エアクッション19aの作動を中止し、可変エアクッション19aの作動中の場合は、その作動を停止する。
【0088】
ステップS12では、可変エアクッション19aの作動を中止し、可変エアクッション19aの作動中の場合は、その作動を停止する。そして、ステップS13に進み、可変エアクッション19bを作動させ、左側ドアミラー1aから左側方に向かって展開させる。
【0089】
ステップS15では、可変エアクッション19aを緊急危険警報作動させ、車両1の左側後端部から左側方に向かって展開させる。この場合、可変エアクッション19は、車幅方向長さが車両1の左側方空間の車幅方向長さと一致する大きさ(つまり、車両1の左側方空間を埋める大きさ)になる。
【0090】
ステップS17では、可変エアクッション19aを危険警報作動させ、車両1の左側後端部から左側方に向かって展開させる。この場合、可変エアクッション19は、車幅方向長さが車両1の左側方空間の車幅方向長さよりもやや小さい大きさになり、振動するなど目立つ動きをする。
【0091】
ステップS18では、可変エアクッション19aを注意喚起警報作動させ、車両1の左側後端部から左側方に向かって展開させる。この場合、可変エアクッション19は、車幅方向長さが車両1の左側方空間の車幅方向長さよりもかなり小さい大きさになる。
【0092】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、可変エアクッション19が車両1の左側方で展開するので、たとえ二輪車2が車両1の左側方に進入してこようとしたとしても、二輪車2が車両1の左側方に進入してくることをより一層確実に抑制することができる。
【0093】
また、可変エアクッション19の展開時の大きさを車両1の左側方空間の大きさに応じたものにすることができる。
【0094】
なお、本実施形態では、車両1の左側後端部、及び左側ドアミラー1aに可変エアクッション19をそれぞれ配設しているが、小型エアクッション20をそれぞれ配設しても良い(図8参照)。なお、この小型エアクッション20の展開時の大きさは、いずれの作動時でも同じ大きさである。
【0095】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、車両1の進行方向の変更を予測しているが、その変更を検出しても良い。
【0096】
また、上記各実施形態では、カーナビゲーション装置からの情報、又は方向指示器からの操作信号に基づき、車両1の進行方向の変更を予測しているが、これら以外のものに基づき、車両1の進行方向の変更を予測しても良い。
【0097】
また、上記各実施形態では、接近物検出手段をステレオカメラ12で構成しているが、これに限らず、例えば、レーザーレーダーで構成しても良い。
【0098】
また、上記各実施形態では、接近物として二輪車2を検出しているが、これに限らず、例えば、歩行者を検出しても良い。
【0099】
また、上記各実施形態では、上述のような巻込み衝突するおそれがあるかを予測しているが、これに限らず、例えば、車両1がその右側面にて二輪車2と衝突するおそれがあるかを予測しても良い。この場合、二輪車2が車両1の右側方に進入してくることを抑制しなければならない。よって、進入抑制手段を、例えば、車両1の右側後端部、及び右側ドアミラーにそれぞれ配設する必要がある。
【0100】
また、上記各実施形態では、進入抑制手段を路面投光器14などで構成しているが、二輪車2が車両1の左側方に進入してくることを抑制することができる限り、如何なるもので構成しても良い。
【0101】
また、上記各実施形態では、進入抑制手段を、車両1の左側後端部、及び左側ドアミラー1aにそれぞれ配設しているが、少なくとも車両1の左側後端部に設ければ良い。
【0102】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0103】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上説明したように、本発明にかかる車両用衝突防止装置は、車両の進行方向の変更時に、車両がその側面にてその後方から接近してくる接近物と衝突することを確実に抑制するための用途等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用衝突防止装置のブロック図である。
【図2】車両が左折しようとするときの様子を示す概略図である。
【図3】着色光が照射された様子を示す概略図である。
【図4】車両用衝突防止装置の制御器の制御を示すフローチャートである。
【図5】車両からの距離を示す図である。
【図6】空間立体映像が表示された様子を示す図である。
【図7】可変エアクッションが展開した様子を示す概略図である。
【図8】小型エアクッションが展開した様子を示す概略図である。
【符号の説明】
【0106】
1 車両
2 二輪車(接近物)
10 車両用衝突防止装置
11 進路方向変更予測器(進路方向変更予測手段)
12 ステレオカメラ(接近物検出手段)
13 制御器(衝突予測手段)
14 路面投光器(進入抑制手段、照射手段)
17 画像表示器(進入抑制手段、画像表示手段)
18 レーザースキャナー(進入抑制手段、画像表示手段)
19 可変エアクッション(進入抑制手段)
20 可変エアクッション(進入抑制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が衝突することを防止するための車両用衝突防止装置であって、
上記車両の進行方向の変更を予測又は検出する進路方向変更予測手段と、
上記車両に対しその後方から接近してくる接近物を検出する接近物検出手段と、
上記車両の進路方向の変更が予測又は検出されかつ上記接近物が検出されたときに、該車両がその側面にて上記接近物と衝突するおそれがあるかを予測する衝突予測手段と、
上記衝突のおそれがあると予測されたときに、上記接近物が上記車両の側方に進入してくることを抑制する進入抑制手段とを備えたことを特徴とする車両用衝突防止装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用衝突防止装置において、
上記進入抑制手段は、上記衝突のおそれがあると予測されたときに上記接近物の進行側の路面に光を照射することで上記接近物が上記車両の側方に進入してくることを抑制する照射手段を有することを特徴とする車両用衝突防止装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用衝突防止装置において、
上記照射手段は、少なくとも上記車両の周囲の明るさに基づき、上記光の照射状態を変更するように構成されていることを特徴とする車両用衝突防止装置。
【請求項4】
請求項1記載の車両用衝突防止装置において、
上記進入抑制手段は、上記衝突のおそれがあると予測されたときに画像を表示することで上記接近物が上記車両の側方に進入してくることを抑制する画像表示手段を有することを特徴とする車両用衝突防止装置。
【請求項5】
請求項4記載の車両用衝突防止装置において、
上記画像表示手段は、少なくとも上記車両の周囲の明るさに基づき、上記画像の表示状態を変更するように構成されていることを特徴とする車両用衝突防止装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の車両用衝突防止装置において、
上記画像表示手段は、上記接近物の進行側の路面に画像を表示するように構成されていることを特徴とする車両用衝突防止装置。
【請求項7】
請求項4又は5記載の車両用衝突防止装置において、
上記画像表示手段は、上記接近物の進行側の路面の上方空間に画像を表示するように構成されていることを特徴とする車両用衝突防止装置。
【請求項8】
請求項1記載の車両用衝突防止装置において、
上記進入抑制手段は、上記衝突のおそれがあると予測されたときに上記車両の側方で展開することで上記接近物が上記車両の側方に進入してくることを抑制するエアクッションを有することを特徴とする車両用衝突防止装置。
【請求項9】
請求項8記載の車両用衝突防止装置において、
上記エアクッションは、上記車両の側方空間の大きさに基づき、展開時の大きさが変更されるように構成されていることを特徴とする車両用衝突防止装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の車両用衝突防止装置において、
上記進路方向変更予測手段は、カーナビゲーション装置からの情報又は方向指示器からの操作信号に基づき、上記車両の進行方向の変更を予測又は検出するように構成されていることを特徴とする車両用衝突防止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−129764(P2008−129764A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312732(P2006−312732)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】