車両用表示システム
【課題】異なるディスプレイ間を跨いで滑らかに移動していく可動画像により、ディスプレイ間を連携させて情報の移動を知らせるための表現が可能で、安価な車両用表示システムを提供する。
【解決手段】車両の情報を表示するメータディスプレイ4が設けられたメータ表示装置と、上記情報以外の車両の情報を運転者に表示するナビゲーションディスプレイ6を有するナビゲーション表示装置とを備え、複数の画素領域に分割可能で、上記画素領域間を跨いで移動していく可動画像を含む画像情報を生成するグラフィックディスプレイ制御部2と、該グラフィックディスプレイ制御部2を制御する制御ユニット部1と、上記画像情報を画素領域ごとに、メータディスプレイ4とナビゲーションディスプレイ6とに分配する分配器3とを備える。ヘッドアップディスプレイ5に分配してもよい。
【解決手段】車両の情報を表示するメータディスプレイ4が設けられたメータ表示装置と、上記情報以外の車両の情報を運転者に表示するナビゲーションディスプレイ6を有するナビゲーション表示装置とを備え、複数の画素領域に分割可能で、上記画素領域間を跨いで移動していく可動画像を含む画像情報を生成するグラフィックディスプレイ制御部2と、該グラフィックディスプレイ制御部2を制御する制御ユニット部1と、上記画像情報を画素領域ごとに、メータディスプレイ4とナビゲーションディスプレイ6とに分配する分配器3とを備える。ヘッドアップディスプレイ5に分配してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフィックディスプレイ制御部(GDCとも言う)を用いて複数のディスプレイでの画像表示を行う車両用表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置においてディスプレイを2台有し、異なる画像を表示するものがあり、2つのディスプレイに対してそれぞれGDCが必要であった。そこで、特許文献1に記載の二画面ディスプレイ出力システムが提案されている。この特許文献1では、単一のGDCから出力された画像情報を一時格納する格納部と、基準クロックを2分の1の周波数に分周する分周部と、分周周波数でディスプレイに係る部分の第1の画像情報を読み込む第1の読込部と、第1の画像情報を同期信号と共に出力する第1の出力部とを備える。
【0003】
更に、第1の読込部より遅れて分周周波数でディスプレイに係る部分の第2の画像情報を読み込む第2の読込部と、GDCから出力された同期信号を遅延させる遅延部と、第2の画像情報を分周周波数と遅延部で所定時間遅延した同期信号と共に出力する第2の出力部とを有する分配器を備えている。この分配器は、CPUがGDCに書かせた共通の画像情報をCPUの制御によらずハードウエア的(機械的)に複数のディスプレイに分配するものである。
【0004】
図11は、現状の自動車に使用されている車両用表示システム100のブロック構成図である。図11のように、計器板内で車速や警報を計器やアラームで表示するメータディスプレイ4、車速等を運転席前のウインドシールドに投影するヘッドアップディスプレイ5、車両中央において表示され地図等のナビゲーション情報等を表示するナビゲーションディスプレイ6が備えられている。
【0005】
そして、メータディスプレイ4、ヘッドアップディスプレイ5、ナビゲーションディスプレイ6の夫々には専用のGDC1A、1B、1Cと制御ユニットを成すCPU2A、2B、2Cとが設けられていた。また、CPUとGDCがワンチップ化されたものも存在した。また、各CPU相互間はCAN等のプロトコルを採用した多重通信線(車内LAN)50で接続されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−169753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の車両用表示システムにおいて、特許文献1を適用すれば、ナビゲーションディスプレイ6を破線Y11のように実質的に2台のディスプレイ部に分離し、一方のディスプレイ部に地図、他方のディスプレイ部に夜間の暗視画像等を表示させることができる。この場合、GDC1C内に内蔵された分配器から画像情報を破線のようにナビゲーションディスプレイ6を構成する各ディスプレイ部にそれぞれ画像情報を送信することになる。
【0008】
一方、発明者はメータディスプレイ4、ヘッドアップディスプレイ5、ナビゲーションディスプレイ6の相互間に跨いだ画像部分である可動画像を表示することを考えた。この可動画像とは、図12のように、異なる表示装置間、たとえばナビゲーションディスプレイ6とメータディスプレイ4間において、ディスプレイ間を跨いで移動していく画像のことである。
【0009】
この場合、例えば、メータディスプレイ4に表示された車両のグラフィックシンボル51をコピーして、ナビゲーションディスプレイ6中にグラフィックシンボル52としてペーストすることは容易であるが、メータディスプレイ4に表示されたグラフィックシンボル51を、ナビゲーションディスプレイ6の方向に走らせるように移動状態を逐次表示させること、つまり可動画像を表示させることは比較的困難である。
【0010】
この可動画像表示のためには、図11のCPU2B、2Cが一方と他方のGDC1B、1Cに対して、そのつど表示すべき可動画像を交互に書かせる命令を実行する必要があり、CPU2B、2Cの負担が大きく、各ディスプレイ4、6間の同期がとり難く、その分、性能が低下していた。更に、GDC1B、1C相互間を連絡するCAN等の多重通信線50内の情報交換量が多くなり、スムースな画像表示が困難であった。
【0011】
具体的には、図13のように、グラフィックシンボル51、52をディスプレイ6の端からディスプレイ4の中に跨いで表示する場合に、多重通信線50を介して、一方のディスプレイ6のGDC2Cでは車両の最後尾の位置がどこにあるかを他方のディスプレイ4のGDC1Bに知らせなければならない。それによって、他方のディスプレイ46のGDC1Bでは車両の先頭の位置を補間計算で割り出してグラフィックシンボル51、52を表示しなければならなかった。
【0012】
しかも、逐次、リアルタイムに、このような同期用データにかかわる通信を、多重通信線50を介して実行しなければならず、同期用データの授受が複雑で、情報量も膨大になり、通信時間もかかる。更に、同じ形のグラフィックシンボルの意匠GS1、GS2にかかわる画像作成用データを双方のGDC1B、GDC2Cで重複してRAM等に記憶している必要があった。
【0013】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、異なる表示装置のディスプレイ間を跨いで移動していく可動画像を表示する場合でも、ディスプレイ間の煩雑な同期用データの授受が不要となり、高速で滑らかに移動する可動画像を異なるディスプレイ間で表示できる車両用表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、互いに異なる車両情報を第1、第2情報画像として表示する第1ディスプレイと第2ディスプレイとを備える車両用表示システムであって、互いに隣接する第1、第2画素領域にそれぞれ前記第1、第2情報画像が割り当てられると共にそれら画素領域間を跨いで移動する可動画像が合成されてなる合成画像を生成するグラフィックディスプレイ制御部と、前記合成画像のうち前記第1、第2画素領域の画像をそれぞれ前記第1ディスプレイと前記第2ディスプレイとに分配する分配部とを含むことを特徴としている。
【0015】
この発明によれば、第1ディスプレイと第2ディスプレイとの間を跨いで移動していく可動画像を表示するために、グラフィックディスプレイ制御部は、第1ディスプレイと第2ディスプレイとに対応する複数の画素領域に分割可能な画像情報を生成すればよく、グラフィックディスプレイ制御部をそれぞれディスプレイに対応して複数設ける必要がない。更に、画像情報を画素領域ごとに、分配部で分配するだけであるから、第1ディスプレイと第2ディスプレイ間で煩雑な同期用データの授受も不要となり、高速で滑らかな跨いだ画像部分を異なるディスプレイ間で表示できる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、前記第1情報画像を生成する第1生成手段と、前記第2情報画像を生成する第2生成手段と、前記可動画像を生成する可動画像生成手段とで前記合成画像を生成する合成手段を構成することを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、第1生成手段と、第2生成手段とを、互いに異なるソフトウエアで構成して、共通の可動画像生成手段を構成すればよいから、例えばメータとナビゲーションのように異なる技術分野ごとで別々に作成したソフトウエアを持ち寄ってグラフィックディスプレイ制御部を構成することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明では、更に、前記グラフィックディスプレイ制御部を制御する制御ユニット部を備え、この制御ユニット部には、前記車両の乗員の操作に基づいて、前記可動画像の移動先を指定する指定手段を含むことを特徴としている。
【0019】
この発明によれば、前記車両の乗員の操作に基づいて、可動画像を任意のディスプレイに移動させて表示することができ、ディスプレイ相互間が連携している斬新な画像を提供することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明では、前記第1ディスプレイは、前記車両の前席の周囲に配置された前席ディスプレイであり、前記第2ディスプレイは、前記車両の後席の周囲に配置された後席ディスプレイであることを特徴としている。
【0021】
この発明によれば、車両の前席に配置された前席ディスプレイと車両の後席に配置された後席ディスプレイとの間で、これらのディスプレイ間を跨いで移動していく可動画像を含む画像を表示することができるから、今までにない斬新な画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用表示システムのブロック構成図である。
【図2】上記実施形態におけるメータディスプレイの詳細を示す正面図である。
【図3】上記実施形態における分配器の内部構成を示すブロック構成図である。
【図4】上記実施形態においてドア開放もしくは半ドア情報画像をナビゲーションディスプレイに飛ばして拡大表示した状態を示すナビゲーションディスプレイの画面構成図である。
【図5】上記実施形態における跨ぐ画像部分を模式的に説明するための説明図である。
【図6】上記実施形態において、GDCが出力する画像情報を模式的に説明する仮想の単一ディスプレイを示す摸式図である。
【図7】上記実施形態におけるGDCを制御するCPU内での処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態における車両用表示システムのブロック構成図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示すメータディスプレイを示す正面図である。
【図10】上記第3実施形態において、矢印の先端がナビゲーションディスプレイ内に移動し、この矢印が変形して、ドア開放もしくは半ドア情報画像がナビゲーションディスプレイ内に表示された状態を示すナビゲーションディスプレイの画面構成図である。
【図11】従来の自動車に使用されている車両用表示システムのブロック構成図である。
【図12】図11の構成において、異なるディスプレイ間を跨いで移動していく画像部分を説明する説明図である。
【図13】図11の構成において、グラフィックシンボルをディスプレイの端から他のディスプレイの中に跨いで表示する場合に、多重通信線を介して、同期用データを接受しなければならないことを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0024】
各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図7を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態を示す車両用表示システムのブロック構成図である。図1に示した車両用表示システム100は、主に、制御ユニット部を構成するコンピュータ制御ユニット(CPUとも言う)1、グラフィックディスプレイ制御部を成すグラフィックディスプレイコントローラ(GDCとも言う)2、分配部を成す分配器3、メータ表示装置のディスプレイであるメータディスプレイ4、その他装置用ディスプレイを構成するヘッドアップディスプレイ5、ナビゲーションディスプレイ6から構成されている。
【0026】
メータディスプレイ4(第1ディスプレイとも言う)は、車両の計器板10内に設けられ、車両の速度を含む情報を表示するメータ表示部を持つディスプレイである。ヘッドアップディスプレイ5は、車両のウインドシールド11の一角に車両速度を含む情報を投影して表示するヘッドアップ表示装置のディスプレイである。
【0027】
図2は、メータディスプレイ4の詳細を示す正面図である。このメータディスプレイ4は、全体がTFT型液晶を使用した1枚の液晶パネルで形成され、液晶パネルに運転者の指が触れることで操作が可能なように周知のタッチセンサが設けられている。図2において、メータディスプレイ4は、スピードメータ12、タコメータ13、走行距離積算計(走行距離表示部)14を備えている。スピードメータ12は、目盛板12aおよび指針12bにより当該乗用車の車速を指示する。同様に、タコメータ13は、目盛板13a及び指針13bにより当該乗用車の車速を指示する。
【0028】
走行距離積算計14は、当該車両の走行距離の積算値である積算距離をデジタル表示し、0km〜999,999kmまでの値が表示可能である。また、メータディスプレイ4は、自動車内の各種警告情報を絵文字で表示する警告表示部16を有している。警告表示部16内で表示される各種警告情報は、例えば、ドア開放もしくは半ドア情報、変速機のオーバードライブ段のオンオフ情報、バッテリ充電状態、残存燃料不足状態、ヘッドランプ遠方照明状態、エンジンオイル量低下情報等であり、警告すべき状態にある項目をカラー表示したり、もしくは点灯表示したりできる。
【0029】
図1のナビゲーションディスプレイ(第2ディスプレイとも言う)6は、車両の走行位置を示す地図情報を表示するナビゲーション表示装置のディスプレイであり、図示しない車両のセンターコンソールに設けられている。図1のGDC2は、メータディスプレイ4とヘッドアップディスプレイ5と、ナビゲーションディスプレイ6に表示するための画像情報を統合された画像情報として生成する。
【0030】
また、分配部をなす分配器3は、GDC2が生成した画像情報をメータディスプレイ4とヘッドアップディスプレイ5と、ナビゲーションディスプレイ6に、画素領域ごとに分配するものである。CPU1は、車両用表示システム100の動作を統括制御する制御ユニット部である。GDC2は、プログラムおよび各ディスプレイ4、5、6に表示する画像作成用データを記憶し格納するROM21、およびRAM22に接続されている。また、GDC2は、図1に示すように3台の各ディスプレイ4、5、6に表示する色データ(以下、画素データともいう)RGBを含む画像情報を分配器3へ出力する。
【0031】
図3は、分配器3の内部構成を示すブロック構成図である。GDC2は、図3に示すように、3台のディスプレイ4、5、6の表示を同期させるための水平同期信号Hsyncと垂直同期信号Vsyncおよび画素データを転送する基準となる基準クロック信号clockを生成して出力する。
【0032】
分配器3は、GDC2とメータディスプレイ4とヘッドアップディスプレイ5と、ナビゲーションディスプレイ6との間にあって、図2のRAM21から入力された画像作成用データを組み合わせた画像情報である画素データRGBを、それぞれのディスプレイ4、5、6で表示されるように分配する部分である。
【0033】
図2において、メータディスプレイ4内の警告表示部16に表示される、例えばドア開放もしくは半ドア情報画像16aは、画像が小さく、どのドアが開放しているのか分かり難い。そこで、ドア開放もしくは半ドア情報画像16aを矢印Y2のように左下に指でドラッグ操作し、ナビゲーションディスプレイ6に図4のように飛ばして拡大表示できれば、分かり易い表示が可能となる。図4の矢印Y4は、表示されるものではないが。飛んできた(移動してきた)と感じられる方向を示している。
【0034】
この場合、メータディスプレイ4からナビゲーションディスプレイ6に画像部分(可動画像)が飛んだイメージを表示できるように、単なるコピーアンドペーストでなく上述した跨ぎ画像部分として表示することが好ましい。このような表示形態は、メータディスプレイ4とヘッドアップディスプレイ5の間でも行うことが望まれる。
【0035】
このように、画像部分が飛んだことを表示するために、この第1実施形態では、メータディスプレイ4からナビゲーションディスプレイ6に向けて可動画像が移動し、この移動後の、ナビゲーションディスプレイ6に、ドア開放もしくは半ドア情報画像を拡大して表示させている。このためには、メータディスプレイ4からナビゲーションディスプレイ6に可動画像を跨いで表示する必要が生じる。
【0036】
図5は、この第1実施形態における可動画像を模式的に説明するための説明図である。図5において、例えば自動車を斜め前から見た画像部分がメータディスプレイ4からナビゲーションディスプレイ6に矢印Y5方向に移動しつつある状態を模式的に示している。以下では、可動画像が図5のような自動車であると仮定して説明する。
【0037】
この第1実施形態では、同一の画像表示装置内の2画面間で跨ぐ画像部分(可動画像)が発生するのでなく、メータディスプレイ4、ヘッドアップディスプレイ5、ナビゲーションディスプレイ6のように、本来表示する内容が異なり、可動画像が通常では発生しない異なる画像表示装置のディスプレイ間において、可動画像を積極的に表示させ、運転者から見た場合にコックピット内全体が連動しているイメージを生じさせるものである。
【0038】
このために、図1のように、異なる3つの表示装置(ヘッドアップディスプレイ装置、メータ表示装置、ナビゲーション装置)の集合からなる車両表示システムにおいて、CPU1で制御される単一のGDC2を用いて、この単一のGDC2が生成した画像情報を、後述する画素領域ごとに分配部をなす分配器3で分配している。
【0039】
図3において、はじめに、図1のGDC2から、基準クロックclockとともに、仮想の単一ディスプレイで表示するための画素データRGBが分配器3に入力される。換言すれば、GDC2は単一の仮想ディスプレイに画像を表示しているつもりで画像情報となる画素データRGBを出力している。
【0040】
図6は、第1実施形態にいて、GDC2が出力する画像情報を模式的に説明する仮想の単一ディスプレイを示す摸式図である。GDC2は、図6において、破線の枠で示された単一の仮想のディスプレイ30に画像を表示可能である。換言すれば、GDC2が出力する画像情報を、実際の単一のディスプレイに表示させた場合に、図6のような画像が表示可能である。
【0041】
この仮想のディスプレイ30において、車両の斜視図で示された可動画像からなるグラフィックシンボル31を右から左に移動させている。単一の仮想のディスプレイ30には、このディスプレイ30上の画素の位置に応じて、4つの画素領域(仮想表示エリア)が設定されている。
【0042】
この4つの画素領域は、何も表示しない無表示画素領域32と、ヘッドアップ表示装置に関わる画像を表示するHUD画素領域33と、メータ表示装置に関わる画像を表示するメータ画素領域34と、ナビゲーション表示装置に関わる画像を表示するナビゲーション画素領域35とに分かれている。
【0043】
図7は、GDC2に命令を発してGDC2を制御するCPU1(図1)内での処理を示すフローチャートである。このCPU1内での処理は、ROM21内に記憶されたプログラムで実行される。図7において、画像移動処理が開始されると、ステップS1において、図6のグラフィックシンボル31の画像作成用データをRAM22内から読み込む。
【0044】
次に、ステップS2において、GDC2にグラフィックシンボル31(図6)の画像部分の画像表示位置を指定し、その位置にステップS3において画像部分を表示させる。これにより図6の当初の画像表示位置であるメータ画素領域34内に、車両の斜視図からなるグラフィックシンボル31の可動画像が表示される。この可動画像の表示は、合成画像としてメータ表示画像からなる背景画像の上に重ねて表示される。すなわち、メータ表示画像からなる背景画像を、第1情報画像を生成する第1生成手段(ソフトウエア)で生成しておき、可動画像を生成する可動画像生成手段と上記第1生成手段とで合成画像を構成している。
【0045】
次に、可動画像の移動先を指定する指定手段を構成する図7のステップS4において、車両内の乗員の操作(ドッラグ操作等)に基づいて、可動画像の移動先の位置を指定する。次に、ステップS5において、当初の画像表示位置から指定された移動位置までの可動画像の移動しつつある画像を生成させる。このためには、画素ごとにグラフィックシンボルの可動画像が移動する複数の画像を生成する。この生成された複数の画像は、RAM22内に記憶される。このときに、画像の形状が次第に変化するときは、コンピュータグラフィックスの手法の一つであるモーフィングを使用して移動しつつある画像を生成してもよい。
【0046】
次に、ステップS6において。RAM22内に記憶された移動しつつ画像の情報を順次取り出して、画像情報として出力することにより、図6(a)から図6(b)に示すように、グラフィックシンボル31の可動画像が、指定されたナビゲーション画素領域35内の位置まで移動するように表示可能となる。
【0047】
ナビゲーション画素領域35内の可動画像の表示も、合成画像としてナビゲーション表示画像からなる背景画像の上に重ねて表示される。すなわち、ナビゲーション表示画像からなる背景画像を、第2情報画像を生成する第2生成手段(ソフトウエア)で生成しておき、可動画像を生成する可動画像生成手段と上記第2生成手段とで合成画像を構成している。このような画像情報の生成は、GDC2にとっては容易に行うことができる。
【0048】
なお、図6のHUD画素領域33に表示された車速表示は、グラフィックシンボル31の画像部分が指定された移動位置まで移動する間においても、リアルタイムに車速に応じて表示を変更可能であるが、図6は、この間に車速の変更が無かった場合を図示いている。
【0049】
以上述べたように、単一の仮想ディスプレイ30に表示可能な画像内で、グラフィックシンボル31を右から左に移動させることは容易にできる。同様に、図2と図3で説明した「ドア開放もしくは半ドア情報画像」のような特定の画像部分からなる可動画像を、単一の仮想ディスプレイ30に表示可能とし、この単一の仮想ディスプレイ30の中で、上記特定の画像部分を、右から左に移動可能とすることは容易にできる。
【0050】
つまり、単一の仮想ディスプレイ30の中で、ドア開放もしくは半ドア情報画像16aのような特定の画像部分やグラフィックシンボルを、右から左に移動させ、図6のメータ画素領域34内からナビゲーション画素領域35内に順次移動させることは容易である。
【0051】
現実には、単一の仮想ディスプレイ30は、存在せず、図1のように、GDC2の画像情報は、分配部を成す分配器3に入力される。図3のブロック図に示した分配器3は、GDC2が単一の仮想ディスプレイ30に表示可能な図6に示したような画像情報を、単一の仮想ディスプレイ上に区画された画素領域(仮想表示エリア)33、34、35ごとに、異なる表示装置のディスプレイ4、5、6に分配して表示させるものである。
【0052】
勿論、GDC2が作成した画像情報を、現実の単一のディスプレイ(例えば後席ディスプレイ)に表示させて、この現実の単一のディスプレイに表示した画像を、単一のディスプレイ上に区画された画素領域33、34,35ごとに、異なる表示装置のディスプレイ4、5、6に表示させてもよい。
【0053】
図3の分配器40は、主に、GDC2が生成した画像情報中の画素データRGBが入力される画像メモリ40、基準クロック信号clockと水平同期信号Hsyncと垂直同期信号Vsyncとからなる同期信号が入力されるメモリコントロール41、上記同期信号が入力され、異なる表示装置の各ディスプレイ4、5、6に上記同期信号を供給する同期コントロール42からなる。
【0054】
メモリコントロール41は、画像メモリ40内の画像情報を、図6の無表示画素領域32、HUD画素領域33、メータ画素領域34、およびナビゲーション画素領域35ごとに各ディスプレイに表示させていく。具体的には、メモリコントロール41からのリード指令で書き込まれた図6の仮想ディスプレイ30に表示可能な画像情報は、メモリコントロール41からのライト指令に基づいて、仮想ディスプレイ30に表示可能な画像情報を水平方向に走査しながら各ディスプレイ4、5、6に共通の色信号として出力されていく。
【0055】
同期コントロールからの同期信号は、仮想ディスプレイ30に表示可能な画像情報を水平方向に走査していったときに、まず画素領域33に相当する位置を走査しているときに、ヘッドアップディスプレイ5に与えた同期信号により、ヘッドアップディスプレイのみで表示可能にする。このようにして、水平方向に走査しつつ垂直方向に走査線が移動していくと、画素領域33の走査が終了し、次に画素領域35、34が走査されるようになる。走査線が画素領域35上を走査しているときには、同期信号はナビゲーションディスプレイ6のみに画素情報を表示を可能とする。また走査線が画素領域34上を走査しているときには、同期信号はメータディスプレイ4のみの画素情報の表示を可能とする。このようにして、それぞれの画素領域33、34、35の画像情報は、ヘッドアップディスプレイ5、メータディスプレイ4、ナビゲーションディスプレイ6で表示される。
【0056】
以上のように、第1実施形態の車両表示システム100によれば、GDC2で生成された3つの画素領域33、34、35の画像情報が、分配器40で、各ディスプレイ3、4、5に、対応する画素領域33、34,35毎に、適切に分配されるので、1つのGDC2で3画面の表示制御を行うことができる。尚、分配器3の機能回路をGDC2とワンチップで構成することもできる。
【0057】
また、第1実施形態の車両表示システム100によれば、グラフィックディスプレイ制御部をなすGDC2は、制御ユニット部をなすCPU1に制御されて、単一の仮想ディスプレイに表示可能な画像情報を生成すればよく、CPU1の負荷の軽減が図れる。また、GDC2をディスプレイ3、4、5の個数分そろえる必要がないから構成が容易である。
【0058】
更に、跨ぐ画像部分からなる可動画像を、多重通信線(車内LAN)を介して連携をとりながらGDC2で生成する必要がなく、分配器2で分配するだけであるから、高速で滑らかな跨ぐ画像部分を異なる表示装置間で表示できる。
【0059】
このように、メータ表示装置とヘッドアップ表示装置、ナビゲーション表示装置との間で、可動画像を高速で滑らかに表示できる。従って、運転者から見た場合に、コックピット全体が連携している表示イメージになり、非常に斬新な表示画像を提供できる車両用表示システムが得られる。
【0060】
次に、第1ディスプレイは、車両の計器板内において少なくとも車両速度を含む情報を表示するメータディスプレイからなり、第2ディスプレイは車両の走行位置を示す地図情報を表示するナビゲーションディスプレイからなる場合において、画素領域間を跨いで移動していく画像部分は、第1ディスプレイに表示された警告表示部内の情報画像にかかわる画像部分からなり、この画像部分がナビゲーションディスプレイ内で拡大表示される。
【0061】
これによれば、メータディスプレイに表示された警告表示部内の情報画像に関わる画像部分ががナビゲーションディスプレイ内に跨いで移動して拡大表示されるから、表示内容が移動したのがわかりやすく、拡大表示されることで、表示内容を見やすくすることができる。
【0062】
更に、画素領域間を跨いで移動していく可動画像の第1ディスプレイと第2ディスプレイとの間の移動は、第1ディスプレイ上のタッチスイッチをドラッグ操作することをトリガとして開始される。これによれば、第1ディスプレイ上をドラッグ操作することにより、簡単に可動画像の移動指示ができる。
【0063】
また、GDCが生成した合成画像からなる画像情報は、各ディスプレイ4、5、6に共通の画素情報として走査しながら出力され、画素領域33(第1画素領域)に相当する位置を走査しているときに、ヘッドアップディスプレイ5(第1ディスプレイ)に与えた同期信号により、ヘッドアップディスプレイ(第1ディスプレイ)のみで画素情報を表示可能にし、画素領域33(第1画素領域)の走査が終了し、次に、画素領域35(第2画素領域)上を走査しているときには、同期信号はナビゲーションディスプレイ6(第2ディスプレイ)のみに画素情報を表示可能とする。
【0064】
このようにして、それぞれの画素領域33、34、35の画像情報は、走査されるに従って各ディスプレイ(ヘッドアップディスプレイ5、メータディスプレイ4、ナビゲーションディスプレイ6)で表示される。これによれば、画素領域ならびにディスプレイが多数存在していても容易に画素情報を分配可能である。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。図8は、本発明の第2実施形態を示す車両用表示システムのブロック構成図である。図8において、後部座席周辺にもリヤディスプレイ7が設けられており、このリヤディスプレイで、テレビ画面等を見ることができる。
【0066】
例えば、後部座席の乗員に地図を見せたいときに、運転者が前席周辺のナビゲーションディスプレイ6の表面を上から下に擦る操作をすることにより、タッチセンサで乗員のドラッグ操作を検出し、ナビゲーション画像が小さく複写され、その小さく複写された地図画像から成るサムネイル画像が、ナビゲーションディスプレイ6上を上方から下方に移動して後部座席のリヤディスプレイ7上に移動する。
【0067】
更にリヤディスプレイ7上で上から降ってきたサムネイル画像から成る可動画像が中央に位置し、拡大されて地図画像がリヤディスプレイ7上で展開される。このような、リヤディスプレイ7用の画像表示は、援用される図6の無表示画素領域32に、単一のGDC2が表示可能な画像情報として容易に生成することができる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。図9は、本発明の第3実施形態を示すメータディスプレイの詳細を示す正面図である。この第3実施形態では、画像部分を他のディスプレイに飛ばす状態をイメージとして運転者に示すために、矢印からなる可動画像をディスプレイ相互間に飛ばすものである。
【0069】
図9において、ドア開放もしくは半ドア情報画像16aを左下にドラッグすると、矢印Y9が表示され、この矢印Y9が次第に長く、かつ大きくなり、下方に先端部が移動していく。ついには、図10の(a)に示すように、矢印Y10の先端がナビゲーションディスプレイ6内に移動し、この矢印Y10が変形して、図10の(b)のように、移動したドア開放もしくは半ドア情報画像16abがナビゲーションディスプレイ6内に表示され、どのドアが開いているかが拡大表示される。
【0070】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の第1実施形態では、車両の形や矢印の形をしたグラフィックシンボルが跨いで移動したが、この可動画像の表示は、波状の波動を表すグラフィックシンボルの移動や、泡状のグラフィックシンボルの移動等、任意のグラフィックシンボルが可能である。また、メータディスプレイ4からヘッドアップディスプレイ5への移動等任意のディスプレイ間の移動が可能である。
【0071】
次に、メータディスプレイ4に発生した波紋がヘッドアップディスプレイ5のほうに波及して、ヘッドアップディスプレイを運転者が見るように促すようにしてもよい。この場合は、メータディスプレイ4内の警告表示部16の一部表示等の実質的な車両情報をヘッドアップディスプレイに移動させることは必要ではなく、例えば、矢印、波紋、泡といったグラフィックシンボルのみからなる可動画像を跨いで移動させるだけでも良い。
【0072】
複数のディスプレイ間を跨ぐ可動画像は、図4のような画像部分の移動のみならず、画像部分の移動先での縮小拡大、一色の状態から徐々に画像部分が見えている状態に移り変わるフェードイン(fade-in)、画像部分が見えている状態から徐々に一色に移り変わるフェードアウト(fade-out)等、その他動画再生等の技術と組み合わせて実施されるとより効果的である。
【符号の説明】
【0073】
1 CPU(制御ユニット部)
2 グラフィックディスプレイコントローラ(グラフィックディスプレイ制御部)
3 分配器(分配部)
4 メータディスプレイ(第1ディスプレイ)
5 ヘッドアップディスプレイ(第2ディスプレイ)
6 ナビゲーションディスプレイ(第2ディスプレイ)
7 リヤディスプレイ(後席ディスプレイ)
16 警告表示部
16a ドア開放もしくは半ドア情報画像(可動画像)
30 単一の仮想ディスプレイ
31 跨ぐ画像部分となるグラフィックシンボル(可動画像)
32 無表示画素領域
33 HUD画素領域
34 メータ画素領域
35 ナビゲーション画素領域
40 画像メモリ
41 メモリコントロール
42 同期コントロール
100 車両用表示システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフィックディスプレイ制御部(GDCとも言う)を用いて複数のディスプレイでの画像表示を行う車両用表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置においてディスプレイを2台有し、異なる画像を表示するものがあり、2つのディスプレイに対してそれぞれGDCが必要であった。そこで、特許文献1に記載の二画面ディスプレイ出力システムが提案されている。この特許文献1では、単一のGDCから出力された画像情報を一時格納する格納部と、基準クロックを2分の1の周波数に分周する分周部と、分周周波数でディスプレイに係る部分の第1の画像情報を読み込む第1の読込部と、第1の画像情報を同期信号と共に出力する第1の出力部とを備える。
【0003】
更に、第1の読込部より遅れて分周周波数でディスプレイに係る部分の第2の画像情報を読み込む第2の読込部と、GDCから出力された同期信号を遅延させる遅延部と、第2の画像情報を分周周波数と遅延部で所定時間遅延した同期信号と共に出力する第2の出力部とを有する分配器を備えている。この分配器は、CPUがGDCに書かせた共通の画像情報をCPUの制御によらずハードウエア的(機械的)に複数のディスプレイに分配するものである。
【0004】
図11は、現状の自動車に使用されている車両用表示システム100のブロック構成図である。図11のように、計器板内で車速や警報を計器やアラームで表示するメータディスプレイ4、車速等を運転席前のウインドシールドに投影するヘッドアップディスプレイ5、車両中央において表示され地図等のナビゲーション情報等を表示するナビゲーションディスプレイ6が備えられている。
【0005】
そして、メータディスプレイ4、ヘッドアップディスプレイ5、ナビゲーションディスプレイ6の夫々には専用のGDC1A、1B、1Cと制御ユニットを成すCPU2A、2B、2Cとが設けられていた。また、CPUとGDCがワンチップ化されたものも存在した。また、各CPU相互間はCAN等のプロトコルを採用した多重通信線(車内LAN)50で接続されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−169753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の車両用表示システムにおいて、特許文献1を適用すれば、ナビゲーションディスプレイ6を破線Y11のように実質的に2台のディスプレイ部に分離し、一方のディスプレイ部に地図、他方のディスプレイ部に夜間の暗視画像等を表示させることができる。この場合、GDC1C内に内蔵された分配器から画像情報を破線のようにナビゲーションディスプレイ6を構成する各ディスプレイ部にそれぞれ画像情報を送信することになる。
【0008】
一方、発明者はメータディスプレイ4、ヘッドアップディスプレイ5、ナビゲーションディスプレイ6の相互間に跨いだ画像部分である可動画像を表示することを考えた。この可動画像とは、図12のように、異なる表示装置間、たとえばナビゲーションディスプレイ6とメータディスプレイ4間において、ディスプレイ間を跨いで移動していく画像のことである。
【0009】
この場合、例えば、メータディスプレイ4に表示された車両のグラフィックシンボル51をコピーして、ナビゲーションディスプレイ6中にグラフィックシンボル52としてペーストすることは容易であるが、メータディスプレイ4に表示されたグラフィックシンボル51を、ナビゲーションディスプレイ6の方向に走らせるように移動状態を逐次表示させること、つまり可動画像を表示させることは比較的困難である。
【0010】
この可動画像表示のためには、図11のCPU2B、2Cが一方と他方のGDC1B、1Cに対して、そのつど表示すべき可動画像を交互に書かせる命令を実行する必要があり、CPU2B、2Cの負担が大きく、各ディスプレイ4、6間の同期がとり難く、その分、性能が低下していた。更に、GDC1B、1C相互間を連絡するCAN等の多重通信線50内の情報交換量が多くなり、スムースな画像表示が困難であった。
【0011】
具体的には、図13のように、グラフィックシンボル51、52をディスプレイ6の端からディスプレイ4の中に跨いで表示する場合に、多重通信線50を介して、一方のディスプレイ6のGDC2Cでは車両の最後尾の位置がどこにあるかを他方のディスプレイ4のGDC1Bに知らせなければならない。それによって、他方のディスプレイ46のGDC1Bでは車両の先頭の位置を補間計算で割り出してグラフィックシンボル51、52を表示しなければならなかった。
【0012】
しかも、逐次、リアルタイムに、このような同期用データにかかわる通信を、多重通信線50を介して実行しなければならず、同期用データの授受が複雑で、情報量も膨大になり、通信時間もかかる。更に、同じ形のグラフィックシンボルの意匠GS1、GS2にかかわる画像作成用データを双方のGDC1B、GDC2Cで重複してRAM等に記憶している必要があった。
【0013】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、異なる表示装置のディスプレイ間を跨いで移動していく可動画像を表示する場合でも、ディスプレイ間の煩雑な同期用データの授受が不要となり、高速で滑らかに移動する可動画像を異なるディスプレイ間で表示できる車両用表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、互いに異なる車両情報を第1、第2情報画像として表示する第1ディスプレイと第2ディスプレイとを備える車両用表示システムであって、互いに隣接する第1、第2画素領域にそれぞれ前記第1、第2情報画像が割り当てられると共にそれら画素領域間を跨いで移動する可動画像が合成されてなる合成画像を生成するグラフィックディスプレイ制御部と、前記合成画像のうち前記第1、第2画素領域の画像をそれぞれ前記第1ディスプレイと前記第2ディスプレイとに分配する分配部とを含むことを特徴としている。
【0015】
この発明によれば、第1ディスプレイと第2ディスプレイとの間を跨いで移動していく可動画像を表示するために、グラフィックディスプレイ制御部は、第1ディスプレイと第2ディスプレイとに対応する複数の画素領域に分割可能な画像情報を生成すればよく、グラフィックディスプレイ制御部をそれぞれディスプレイに対応して複数設ける必要がない。更に、画像情報を画素領域ごとに、分配部で分配するだけであるから、第1ディスプレイと第2ディスプレイ間で煩雑な同期用データの授受も不要となり、高速で滑らかな跨いだ画像部分を異なるディスプレイ間で表示できる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、前記第1情報画像を生成する第1生成手段と、前記第2情報画像を生成する第2生成手段と、前記可動画像を生成する可動画像生成手段とで前記合成画像を生成する合成手段を構成することを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、第1生成手段と、第2生成手段とを、互いに異なるソフトウエアで構成して、共通の可動画像生成手段を構成すればよいから、例えばメータとナビゲーションのように異なる技術分野ごとで別々に作成したソフトウエアを持ち寄ってグラフィックディスプレイ制御部を構成することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明では、更に、前記グラフィックディスプレイ制御部を制御する制御ユニット部を備え、この制御ユニット部には、前記車両の乗員の操作に基づいて、前記可動画像の移動先を指定する指定手段を含むことを特徴としている。
【0019】
この発明によれば、前記車両の乗員の操作に基づいて、可動画像を任意のディスプレイに移動させて表示することができ、ディスプレイ相互間が連携している斬新な画像を提供することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明では、前記第1ディスプレイは、前記車両の前席の周囲に配置された前席ディスプレイであり、前記第2ディスプレイは、前記車両の後席の周囲に配置された後席ディスプレイであることを特徴としている。
【0021】
この発明によれば、車両の前席に配置された前席ディスプレイと車両の後席に配置された後席ディスプレイとの間で、これらのディスプレイ間を跨いで移動していく可動画像を含む画像を表示することができるから、今までにない斬新な画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用表示システムのブロック構成図である。
【図2】上記実施形態におけるメータディスプレイの詳細を示す正面図である。
【図3】上記実施形態における分配器の内部構成を示すブロック構成図である。
【図4】上記実施形態においてドア開放もしくは半ドア情報画像をナビゲーションディスプレイに飛ばして拡大表示した状態を示すナビゲーションディスプレイの画面構成図である。
【図5】上記実施形態における跨ぐ画像部分を模式的に説明するための説明図である。
【図6】上記実施形態において、GDCが出力する画像情報を模式的に説明する仮想の単一ディスプレイを示す摸式図である。
【図7】上記実施形態におけるGDCを制御するCPU内での処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態における車両用表示システムのブロック構成図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示すメータディスプレイを示す正面図である。
【図10】上記第3実施形態において、矢印の先端がナビゲーションディスプレイ内に移動し、この矢印が変形して、ドア開放もしくは半ドア情報画像がナビゲーションディスプレイ内に表示された状態を示すナビゲーションディスプレイの画面構成図である。
【図11】従来の自動車に使用されている車両用表示システムのブロック構成図である。
【図12】図11の構成において、異なるディスプレイ間を跨いで移動していく画像部分を説明する説明図である。
【図13】図11の構成において、グラフィックシンボルをディスプレイの端から他のディスプレイの中に跨いで表示する場合に、多重通信線を介して、同期用データを接受しなければならないことを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0024】
各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図7を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態を示す車両用表示システムのブロック構成図である。図1に示した車両用表示システム100は、主に、制御ユニット部を構成するコンピュータ制御ユニット(CPUとも言う)1、グラフィックディスプレイ制御部を成すグラフィックディスプレイコントローラ(GDCとも言う)2、分配部を成す分配器3、メータ表示装置のディスプレイであるメータディスプレイ4、その他装置用ディスプレイを構成するヘッドアップディスプレイ5、ナビゲーションディスプレイ6から構成されている。
【0026】
メータディスプレイ4(第1ディスプレイとも言う)は、車両の計器板10内に設けられ、車両の速度を含む情報を表示するメータ表示部を持つディスプレイである。ヘッドアップディスプレイ5は、車両のウインドシールド11の一角に車両速度を含む情報を投影して表示するヘッドアップ表示装置のディスプレイである。
【0027】
図2は、メータディスプレイ4の詳細を示す正面図である。このメータディスプレイ4は、全体がTFT型液晶を使用した1枚の液晶パネルで形成され、液晶パネルに運転者の指が触れることで操作が可能なように周知のタッチセンサが設けられている。図2において、メータディスプレイ4は、スピードメータ12、タコメータ13、走行距離積算計(走行距離表示部)14を備えている。スピードメータ12は、目盛板12aおよび指針12bにより当該乗用車の車速を指示する。同様に、タコメータ13は、目盛板13a及び指針13bにより当該乗用車の車速を指示する。
【0028】
走行距離積算計14は、当該車両の走行距離の積算値である積算距離をデジタル表示し、0km〜999,999kmまでの値が表示可能である。また、メータディスプレイ4は、自動車内の各種警告情報を絵文字で表示する警告表示部16を有している。警告表示部16内で表示される各種警告情報は、例えば、ドア開放もしくは半ドア情報、変速機のオーバードライブ段のオンオフ情報、バッテリ充電状態、残存燃料不足状態、ヘッドランプ遠方照明状態、エンジンオイル量低下情報等であり、警告すべき状態にある項目をカラー表示したり、もしくは点灯表示したりできる。
【0029】
図1のナビゲーションディスプレイ(第2ディスプレイとも言う)6は、車両の走行位置を示す地図情報を表示するナビゲーション表示装置のディスプレイであり、図示しない車両のセンターコンソールに設けられている。図1のGDC2は、メータディスプレイ4とヘッドアップディスプレイ5と、ナビゲーションディスプレイ6に表示するための画像情報を統合された画像情報として生成する。
【0030】
また、分配部をなす分配器3は、GDC2が生成した画像情報をメータディスプレイ4とヘッドアップディスプレイ5と、ナビゲーションディスプレイ6に、画素領域ごとに分配するものである。CPU1は、車両用表示システム100の動作を統括制御する制御ユニット部である。GDC2は、プログラムおよび各ディスプレイ4、5、6に表示する画像作成用データを記憶し格納するROM21、およびRAM22に接続されている。また、GDC2は、図1に示すように3台の各ディスプレイ4、5、6に表示する色データ(以下、画素データともいう)RGBを含む画像情報を分配器3へ出力する。
【0031】
図3は、分配器3の内部構成を示すブロック構成図である。GDC2は、図3に示すように、3台のディスプレイ4、5、6の表示を同期させるための水平同期信号Hsyncと垂直同期信号Vsyncおよび画素データを転送する基準となる基準クロック信号clockを生成して出力する。
【0032】
分配器3は、GDC2とメータディスプレイ4とヘッドアップディスプレイ5と、ナビゲーションディスプレイ6との間にあって、図2のRAM21から入力された画像作成用データを組み合わせた画像情報である画素データRGBを、それぞれのディスプレイ4、5、6で表示されるように分配する部分である。
【0033】
図2において、メータディスプレイ4内の警告表示部16に表示される、例えばドア開放もしくは半ドア情報画像16aは、画像が小さく、どのドアが開放しているのか分かり難い。そこで、ドア開放もしくは半ドア情報画像16aを矢印Y2のように左下に指でドラッグ操作し、ナビゲーションディスプレイ6に図4のように飛ばして拡大表示できれば、分かり易い表示が可能となる。図4の矢印Y4は、表示されるものではないが。飛んできた(移動してきた)と感じられる方向を示している。
【0034】
この場合、メータディスプレイ4からナビゲーションディスプレイ6に画像部分(可動画像)が飛んだイメージを表示できるように、単なるコピーアンドペーストでなく上述した跨ぎ画像部分として表示することが好ましい。このような表示形態は、メータディスプレイ4とヘッドアップディスプレイ5の間でも行うことが望まれる。
【0035】
このように、画像部分が飛んだことを表示するために、この第1実施形態では、メータディスプレイ4からナビゲーションディスプレイ6に向けて可動画像が移動し、この移動後の、ナビゲーションディスプレイ6に、ドア開放もしくは半ドア情報画像を拡大して表示させている。このためには、メータディスプレイ4からナビゲーションディスプレイ6に可動画像を跨いで表示する必要が生じる。
【0036】
図5は、この第1実施形態における可動画像を模式的に説明するための説明図である。図5において、例えば自動車を斜め前から見た画像部分がメータディスプレイ4からナビゲーションディスプレイ6に矢印Y5方向に移動しつつある状態を模式的に示している。以下では、可動画像が図5のような自動車であると仮定して説明する。
【0037】
この第1実施形態では、同一の画像表示装置内の2画面間で跨ぐ画像部分(可動画像)が発生するのでなく、メータディスプレイ4、ヘッドアップディスプレイ5、ナビゲーションディスプレイ6のように、本来表示する内容が異なり、可動画像が通常では発生しない異なる画像表示装置のディスプレイ間において、可動画像を積極的に表示させ、運転者から見た場合にコックピット内全体が連動しているイメージを生じさせるものである。
【0038】
このために、図1のように、異なる3つの表示装置(ヘッドアップディスプレイ装置、メータ表示装置、ナビゲーション装置)の集合からなる車両表示システムにおいて、CPU1で制御される単一のGDC2を用いて、この単一のGDC2が生成した画像情報を、後述する画素領域ごとに分配部をなす分配器3で分配している。
【0039】
図3において、はじめに、図1のGDC2から、基準クロックclockとともに、仮想の単一ディスプレイで表示するための画素データRGBが分配器3に入力される。換言すれば、GDC2は単一の仮想ディスプレイに画像を表示しているつもりで画像情報となる画素データRGBを出力している。
【0040】
図6は、第1実施形態にいて、GDC2が出力する画像情報を模式的に説明する仮想の単一ディスプレイを示す摸式図である。GDC2は、図6において、破線の枠で示された単一の仮想のディスプレイ30に画像を表示可能である。換言すれば、GDC2が出力する画像情報を、実際の単一のディスプレイに表示させた場合に、図6のような画像が表示可能である。
【0041】
この仮想のディスプレイ30において、車両の斜視図で示された可動画像からなるグラフィックシンボル31を右から左に移動させている。単一の仮想のディスプレイ30には、このディスプレイ30上の画素の位置に応じて、4つの画素領域(仮想表示エリア)が設定されている。
【0042】
この4つの画素領域は、何も表示しない無表示画素領域32と、ヘッドアップ表示装置に関わる画像を表示するHUD画素領域33と、メータ表示装置に関わる画像を表示するメータ画素領域34と、ナビゲーション表示装置に関わる画像を表示するナビゲーション画素領域35とに分かれている。
【0043】
図7は、GDC2に命令を発してGDC2を制御するCPU1(図1)内での処理を示すフローチャートである。このCPU1内での処理は、ROM21内に記憶されたプログラムで実行される。図7において、画像移動処理が開始されると、ステップS1において、図6のグラフィックシンボル31の画像作成用データをRAM22内から読み込む。
【0044】
次に、ステップS2において、GDC2にグラフィックシンボル31(図6)の画像部分の画像表示位置を指定し、その位置にステップS3において画像部分を表示させる。これにより図6の当初の画像表示位置であるメータ画素領域34内に、車両の斜視図からなるグラフィックシンボル31の可動画像が表示される。この可動画像の表示は、合成画像としてメータ表示画像からなる背景画像の上に重ねて表示される。すなわち、メータ表示画像からなる背景画像を、第1情報画像を生成する第1生成手段(ソフトウエア)で生成しておき、可動画像を生成する可動画像生成手段と上記第1生成手段とで合成画像を構成している。
【0045】
次に、可動画像の移動先を指定する指定手段を構成する図7のステップS4において、車両内の乗員の操作(ドッラグ操作等)に基づいて、可動画像の移動先の位置を指定する。次に、ステップS5において、当初の画像表示位置から指定された移動位置までの可動画像の移動しつつある画像を生成させる。このためには、画素ごとにグラフィックシンボルの可動画像が移動する複数の画像を生成する。この生成された複数の画像は、RAM22内に記憶される。このときに、画像の形状が次第に変化するときは、コンピュータグラフィックスの手法の一つであるモーフィングを使用して移動しつつある画像を生成してもよい。
【0046】
次に、ステップS6において。RAM22内に記憶された移動しつつ画像の情報を順次取り出して、画像情報として出力することにより、図6(a)から図6(b)に示すように、グラフィックシンボル31の可動画像が、指定されたナビゲーション画素領域35内の位置まで移動するように表示可能となる。
【0047】
ナビゲーション画素領域35内の可動画像の表示も、合成画像としてナビゲーション表示画像からなる背景画像の上に重ねて表示される。すなわち、ナビゲーション表示画像からなる背景画像を、第2情報画像を生成する第2生成手段(ソフトウエア)で生成しておき、可動画像を生成する可動画像生成手段と上記第2生成手段とで合成画像を構成している。このような画像情報の生成は、GDC2にとっては容易に行うことができる。
【0048】
なお、図6のHUD画素領域33に表示された車速表示は、グラフィックシンボル31の画像部分が指定された移動位置まで移動する間においても、リアルタイムに車速に応じて表示を変更可能であるが、図6は、この間に車速の変更が無かった場合を図示いている。
【0049】
以上述べたように、単一の仮想ディスプレイ30に表示可能な画像内で、グラフィックシンボル31を右から左に移動させることは容易にできる。同様に、図2と図3で説明した「ドア開放もしくは半ドア情報画像」のような特定の画像部分からなる可動画像を、単一の仮想ディスプレイ30に表示可能とし、この単一の仮想ディスプレイ30の中で、上記特定の画像部分を、右から左に移動可能とすることは容易にできる。
【0050】
つまり、単一の仮想ディスプレイ30の中で、ドア開放もしくは半ドア情報画像16aのような特定の画像部分やグラフィックシンボルを、右から左に移動させ、図6のメータ画素領域34内からナビゲーション画素領域35内に順次移動させることは容易である。
【0051】
現実には、単一の仮想ディスプレイ30は、存在せず、図1のように、GDC2の画像情報は、分配部を成す分配器3に入力される。図3のブロック図に示した分配器3は、GDC2が単一の仮想ディスプレイ30に表示可能な図6に示したような画像情報を、単一の仮想ディスプレイ上に区画された画素領域(仮想表示エリア)33、34、35ごとに、異なる表示装置のディスプレイ4、5、6に分配して表示させるものである。
【0052】
勿論、GDC2が作成した画像情報を、現実の単一のディスプレイ(例えば後席ディスプレイ)に表示させて、この現実の単一のディスプレイに表示した画像を、単一のディスプレイ上に区画された画素領域33、34,35ごとに、異なる表示装置のディスプレイ4、5、6に表示させてもよい。
【0053】
図3の分配器40は、主に、GDC2が生成した画像情報中の画素データRGBが入力される画像メモリ40、基準クロック信号clockと水平同期信号Hsyncと垂直同期信号Vsyncとからなる同期信号が入力されるメモリコントロール41、上記同期信号が入力され、異なる表示装置の各ディスプレイ4、5、6に上記同期信号を供給する同期コントロール42からなる。
【0054】
メモリコントロール41は、画像メモリ40内の画像情報を、図6の無表示画素領域32、HUD画素領域33、メータ画素領域34、およびナビゲーション画素領域35ごとに各ディスプレイに表示させていく。具体的には、メモリコントロール41からのリード指令で書き込まれた図6の仮想ディスプレイ30に表示可能な画像情報は、メモリコントロール41からのライト指令に基づいて、仮想ディスプレイ30に表示可能な画像情報を水平方向に走査しながら各ディスプレイ4、5、6に共通の色信号として出力されていく。
【0055】
同期コントロールからの同期信号は、仮想ディスプレイ30に表示可能な画像情報を水平方向に走査していったときに、まず画素領域33に相当する位置を走査しているときに、ヘッドアップディスプレイ5に与えた同期信号により、ヘッドアップディスプレイのみで表示可能にする。このようにして、水平方向に走査しつつ垂直方向に走査線が移動していくと、画素領域33の走査が終了し、次に画素領域35、34が走査されるようになる。走査線が画素領域35上を走査しているときには、同期信号はナビゲーションディスプレイ6のみに画素情報を表示を可能とする。また走査線が画素領域34上を走査しているときには、同期信号はメータディスプレイ4のみの画素情報の表示を可能とする。このようにして、それぞれの画素領域33、34、35の画像情報は、ヘッドアップディスプレイ5、メータディスプレイ4、ナビゲーションディスプレイ6で表示される。
【0056】
以上のように、第1実施形態の車両表示システム100によれば、GDC2で生成された3つの画素領域33、34、35の画像情報が、分配器40で、各ディスプレイ3、4、5に、対応する画素領域33、34,35毎に、適切に分配されるので、1つのGDC2で3画面の表示制御を行うことができる。尚、分配器3の機能回路をGDC2とワンチップで構成することもできる。
【0057】
また、第1実施形態の車両表示システム100によれば、グラフィックディスプレイ制御部をなすGDC2は、制御ユニット部をなすCPU1に制御されて、単一の仮想ディスプレイに表示可能な画像情報を生成すればよく、CPU1の負荷の軽減が図れる。また、GDC2をディスプレイ3、4、5の個数分そろえる必要がないから構成が容易である。
【0058】
更に、跨ぐ画像部分からなる可動画像を、多重通信線(車内LAN)を介して連携をとりながらGDC2で生成する必要がなく、分配器2で分配するだけであるから、高速で滑らかな跨ぐ画像部分を異なる表示装置間で表示できる。
【0059】
このように、メータ表示装置とヘッドアップ表示装置、ナビゲーション表示装置との間で、可動画像を高速で滑らかに表示できる。従って、運転者から見た場合に、コックピット全体が連携している表示イメージになり、非常に斬新な表示画像を提供できる車両用表示システムが得られる。
【0060】
次に、第1ディスプレイは、車両の計器板内において少なくとも車両速度を含む情報を表示するメータディスプレイからなり、第2ディスプレイは車両の走行位置を示す地図情報を表示するナビゲーションディスプレイからなる場合において、画素領域間を跨いで移動していく画像部分は、第1ディスプレイに表示された警告表示部内の情報画像にかかわる画像部分からなり、この画像部分がナビゲーションディスプレイ内で拡大表示される。
【0061】
これによれば、メータディスプレイに表示された警告表示部内の情報画像に関わる画像部分ががナビゲーションディスプレイ内に跨いで移動して拡大表示されるから、表示内容が移動したのがわかりやすく、拡大表示されることで、表示内容を見やすくすることができる。
【0062】
更に、画素領域間を跨いで移動していく可動画像の第1ディスプレイと第2ディスプレイとの間の移動は、第1ディスプレイ上のタッチスイッチをドラッグ操作することをトリガとして開始される。これによれば、第1ディスプレイ上をドラッグ操作することにより、簡単に可動画像の移動指示ができる。
【0063】
また、GDCが生成した合成画像からなる画像情報は、各ディスプレイ4、5、6に共通の画素情報として走査しながら出力され、画素領域33(第1画素領域)に相当する位置を走査しているときに、ヘッドアップディスプレイ5(第1ディスプレイ)に与えた同期信号により、ヘッドアップディスプレイ(第1ディスプレイ)のみで画素情報を表示可能にし、画素領域33(第1画素領域)の走査が終了し、次に、画素領域35(第2画素領域)上を走査しているときには、同期信号はナビゲーションディスプレイ6(第2ディスプレイ)のみに画素情報を表示可能とする。
【0064】
このようにして、それぞれの画素領域33、34、35の画像情報は、走査されるに従って各ディスプレイ(ヘッドアップディスプレイ5、メータディスプレイ4、ナビゲーションディスプレイ6)で表示される。これによれば、画素領域ならびにディスプレイが多数存在していても容易に画素情報を分配可能である。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。図8は、本発明の第2実施形態を示す車両用表示システムのブロック構成図である。図8において、後部座席周辺にもリヤディスプレイ7が設けられており、このリヤディスプレイで、テレビ画面等を見ることができる。
【0066】
例えば、後部座席の乗員に地図を見せたいときに、運転者が前席周辺のナビゲーションディスプレイ6の表面を上から下に擦る操作をすることにより、タッチセンサで乗員のドラッグ操作を検出し、ナビゲーション画像が小さく複写され、その小さく複写された地図画像から成るサムネイル画像が、ナビゲーションディスプレイ6上を上方から下方に移動して後部座席のリヤディスプレイ7上に移動する。
【0067】
更にリヤディスプレイ7上で上から降ってきたサムネイル画像から成る可動画像が中央に位置し、拡大されて地図画像がリヤディスプレイ7上で展開される。このような、リヤディスプレイ7用の画像表示は、援用される図6の無表示画素領域32に、単一のGDC2が表示可能な画像情報として容易に生成することができる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。図9は、本発明の第3実施形態を示すメータディスプレイの詳細を示す正面図である。この第3実施形態では、画像部分を他のディスプレイに飛ばす状態をイメージとして運転者に示すために、矢印からなる可動画像をディスプレイ相互間に飛ばすものである。
【0069】
図9において、ドア開放もしくは半ドア情報画像16aを左下にドラッグすると、矢印Y9が表示され、この矢印Y9が次第に長く、かつ大きくなり、下方に先端部が移動していく。ついには、図10の(a)に示すように、矢印Y10の先端がナビゲーションディスプレイ6内に移動し、この矢印Y10が変形して、図10の(b)のように、移動したドア開放もしくは半ドア情報画像16abがナビゲーションディスプレイ6内に表示され、どのドアが開いているかが拡大表示される。
【0070】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の第1実施形態では、車両の形や矢印の形をしたグラフィックシンボルが跨いで移動したが、この可動画像の表示は、波状の波動を表すグラフィックシンボルの移動や、泡状のグラフィックシンボルの移動等、任意のグラフィックシンボルが可能である。また、メータディスプレイ4からヘッドアップディスプレイ5への移動等任意のディスプレイ間の移動が可能である。
【0071】
次に、メータディスプレイ4に発生した波紋がヘッドアップディスプレイ5のほうに波及して、ヘッドアップディスプレイを運転者が見るように促すようにしてもよい。この場合は、メータディスプレイ4内の警告表示部16の一部表示等の実質的な車両情報をヘッドアップディスプレイに移動させることは必要ではなく、例えば、矢印、波紋、泡といったグラフィックシンボルのみからなる可動画像を跨いで移動させるだけでも良い。
【0072】
複数のディスプレイ間を跨ぐ可動画像は、図4のような画像部分の移動のみならず、画像部分の移動先での縮小拡大、一色の状態から徐々に画像部分が見えている状態に移り変わるフェードイン(fade-in)、画像部分が見えている状態から徐々に一色に移り変わるフェードアウト(fade-out)等、その他動画再生等の技術と組み合わせて実施されるとより効果的である。
【符号の説明】
【0073】
1 CPU(制御ユニット部)
2 グラフィックディスプレイコントローラ(グラフィックディスプレイ制御部)
3 分配器(分配部)
4 メータディスプレイ(第1ディスプレイ)
5 ヘッドアップディスプレイ(第2ディスプレイ)
6 ナビゲーションディスプレイ(第2ディスプレイ)
7 リヤディスプレイ(後席ディスプレイ)
16 警告表示部
16a ドア開放もしくは半ドア情報画像(可動画像)
30 単一の仮想ディスプレイ
31 跨ぐ画像部分となるグラフィックシンボル(可動画像)
32 無表示画素領域
33 HUD画素領域
34 メータ画素領域
35 ナビゲーション画素領域
40 画像メモリ
41 メモリコントロール
42 同期コントロール
100 車両用表示システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる車両情報を第1、第2情報画像として表示する第1ディスプレイと第2ディスプレイとを備える車両用表示システムであって、
互いに隣接する第1、第2画素領域にそれぞれ前記第1、第2情報画像が割り当てられると共にそれら画素領域間を跨いで移動する可動画像が合成されてなる合成画像を生成するグラフィックディスプレイ制御部と、
前記合成画像のうち前記第1、第2画素領域の画像をそれぞれ前記第1ディスプレイと前記第2ディスプレイとに分配する分配部とを含むことを特徴とする車両用表示システム。
【請求項2】
前記第1情報画像を生成する第1生成手段と、前記第2情報画像を生成する第2生成手段と、前記可動画像を生成する可動画像生成手段とで前記合成画像を生成する合成手段を構成することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項3】
更に、前記グラフィックディスプレイ制御部を制御する制御ユニット部を備え、この制御ユニット部には、前記車両の乗員の操作に基づいて、前記可動画像の移動先を指定する指定手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用表示システム。
【請求項4】
前記第1ディスプレイは、前記車両の前席の周囲に配置された前席ディスプレイであり、前記第2ディスプレイは、前記車両の後席の周囲に配置された後席ディスプレイであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車両用表示システム。
【請求項1】
互いに異なる車両情報を第1、第2情報画像として表示する第1ディスプレイと第2ディスプレイとを備える車両用表示システムであって、
互いに隣接する第1、第2画素領域にそれぞれ前記第1、第2情報画像が割り当てられると共にそれら画素領域間を跨いで移動する可動画像が合成されてなる合成画像を生成するグラフィックディスプレイ制御部と、
前記合成画像のうち前記第1、第2画素領域の画像をそれぞれ前記第1ディスプレイと前記第2ディスプレイとに分配する分配部とを含むことを特徴とする車両用表示システム。
【請求項2】
前記第1情報画像を生成する第1生成手段と、前記第2情報画像を生成する第2生成手段と、前記可動画像を生成する可動画像生成手段とで前記合成画像を生成する合成手段を構成することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項3】
更に、前記グラフィックディスプレイ制御部を制御する制御ユニット部を備え、この制御ユニット部には、前記車両の乗員の操作に基づいて、前記可動画像の移動先を指定する指定手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用表示システム。
【請求項4】
前記第1ディスプレイは、前記車両の前席の周囲に配置された前席ディスプレイであり、前記第2ディスプレイは、前記車両の後席の周囲に配置された後席ディスプレイであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車両用表示システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−24948(P2013−24948A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157326(P2011−157326)
【出願日】平成23年7月18日(2011.7.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月18日(2011.7.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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