説明

車両用表示装置

【課題】 運転者などの乗員がおかれている状況に応じて表示部の発光形態を制御することにより、その表示部の視認性を安定的かつ充分に確保することができる車両用表示装置を提供すること。
【解決手段】 車両の周囲の明るさを検出する光センサ11の検出信号と、車両の走行速度を検出する車速センサ12の検出信号と、に基づいて、表示制御部10がロック表示部21Aとアンロック表示部21Bの発光時間および発光量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置の作動状態を発光表示する表示部を制御対象として、その表示部の発光形態を制御可能な車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用表示装置としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
また、車載装置の作動状態を発光表示する表示部としては、ドアラッチがドアを全閉状態に維持する拘束状態にロック(ロック)されていることを発光表示するロック表示部、およびドアラッチの拘束状態のロックが解錠されていることを発光表示するアンロック表示部がある。このような表示部の表示内容は、その表示部からの光を受ける車両の運転者などの乗員によって視認されることになる。
【0004】
従来の車両用表示装置は、表示部の発光を細かく制御する構成とはなっていなかった。
【0005】
【特許文献1】実開平5−81473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドアラッチなどの車載装置の作動状態を発光表示するための表示部は、その表示内容が運転者などの乗員に視認されやすいことが重要である。しかし、従来の車両用表示装置は、その表示部を視認するときの乗員がおかれている状況に応じて、表示部の発光を細かく制御することができず、車両の周囲の明るさの変化への対応が困難となり、視認性を安定的に確保することが難しかった。
【0007】
本発明の目的は、運転者などの乗員がおかれている状況に応じて表示部の発光形態を制御することにより、その表示部の視認性を安定的かつ充分に確保することができる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明の車両用表示装置は、車載装置の作動状態を発光表示する表示部の表示形態を制御可能な車両用表示装置であって、車両の走行速度に関する情報を入力する第1の入力部と、前記車両の周囲の明るさに関する情報を入力する第2の入力部と、前記第1および第2の入力部からの入力情報に基づいて、前記表示部の発光時間および発光量を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の本発明の車両用表示装置は、請求項1において、前記制御手段は、前記第1の入力部からの入力情報に基づいて前記表示部の発光時間を制御し、前記車両が停止しているときは前記表示部を連続発光させ、前記車両が走行中のときは前記表示部を点滅発光させることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の本発明の車両用表示装置は、請求項2において、前記制御手段は、前記車両の走行速度が所定速度以上となったときに前記表示部の点滅発光を停止させることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の本発明の車両用表示装置は、請求項1から3のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記第2の入力部からの入力情報に基づいて前記表示部の発光量を制御し、前記車両の周囲の明るさが所定の程度以上のときは前記表示部の発光量を増大させ、前記車両の周囲の明るさが所定の程度未満のときは前記表示部の発光量を減少させることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の本発明の車両用表示装置は、請求項1から4のいずれかにおいて、前記表示部は、前記車載装置としてのドアラッチがドアを全閉状態に維持する拘束状態にロックされていることを表示するロック表示部および/または前記拘束状態のロックが解錠されていることを表示するアンロック表示部を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の走行速度と車両の周囲の明るさに関する情報に基づいて、表示部の発光時間および発光量を制御することにより、運転者などの乗員がおかれている状況に応じて表示部の発光形態を最適に制御して、その表示部の視認性を安定的かつ充分に確保することができる。
【0014】
また、車両が停止しているときは表示部を連続発光させ、かつ車両が走行中のときは表示部を点滅発光させることにより、それぞれの状況下において表示部の視認性を充分に確保することができる。特に、後者のように表示部を点滅発光させることにより、車両の周囲の状況が様々に変化する走行中においても充分な視認性を確保することができる。
【0015】
また、車両の走行速度が所定速度以上となったときに表示部の点滅発光を停止させることにより、運転者の注意をより車両の高速運転に集中させることができる。
【0016】
また、車両の周囲の明るさが所定の程度以上のときは表示部の発光量を増大させ、車両の周囲の明るさが所定の程度未満のときは表示部の発光量を減少させることにより、車両の周囲の明るさが変化する状況下においても表示部の視認性を充分に確保することができる。
【0017】
また、表示部として、車載装置としてのドアラッチがドアを全閉状態に維持する拘束状態にロックされていることを表示するロック表示部および/または拘束状態のロックが解錠されていることを表示するアンロック表示部を含むことにより、ドアラッチの拘束状態がロックおよび/またはロック解除されていることを視認性よく発光表示させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本例の車両用表示装置は、図2のように、ドアラッチ(車載装置)1の制御用のECU(Electronic Control Unit)2に組み込まれた表示制御部(制御手段)10によって、インサイドスイッチ装置20におけるロック表示部21Aとアンロック表示部21Bの発光形態を制御する構成となっている。
【0019】
ECU2によって制御されるドアラッチ1は、図1のようにサイドドア3の後方部分に備えられている。このドアラッチ1は、車体側に設けたストライカ(図示略)と噛合可能なラッチ(図示略)と、そのラッチをストライカとの噛合位置に拘束可能なポール(図示略)と、を備えており、サイドドア3を全閉状態に維持することができる。すなわち、ポールがラッチの拘束位置に移動して、ラッチがストライカとの噛合位置に拘束されることによって、ドアラッチ1がサイドドア3を全閉状態に維持する拘束状態となる。一方、ポールが拘束解除位置に移動してラッチの拘束を解除することによって、ドアラッチ1がサイドドア3の全閉状態の維持を解除する解除状態となる。ドアラッチ1には、ポールを拘束解除位置に移動させるためのアクチュエータ、つまりドアラッチ1を解除動作させるためのアクチュエータ1A(図2参照)が備えられている。さらにドアラッチ1には、ハーフラッチ状態を検出するためのハーフスイッチ1B、フルラッチ位置を検出するためのフルスイッチ1C、およびポールの位置を検出するためのポールスイッチ1Dが備えられている。
【0020】
インサイドスイッチ装置20は、サイドドア3のインナーパネル3Aの定位置に取付けられており、運転者Dと対向するように車両の斜め後方に向かって傾斜する面20Aが形成されている。この面20Aには、ロック表示部21Aおよびアンロック表示部21Bと共に、インサイドスイッチ(ラッチリリーススイッチ)22が備えられている。
【0021】
ECU2(図2参照)は、インサイドスイッチ22がON操作されたとき、または車室外に備わる室外ラッチリリーススイッチ23がON操作されたときに、アクチュエータ1Aを駆動させてドアラッチ1を解除動作させる。室外ラッチリリーススイッチ23は、例えば、ドアのアウトサイドハンドルと一体または別体に構成されており、車室外からスイッチ操作できるものである。またECU2は、ロック/アンロック操作スイッチ24がロック位置(施錠位置)に操作されたときに、ドアラッチ1を拘束状態にロックすべく、ドアハンドルやインサイドスイッチ22による操作を無効とする。一方、ロック/アンロック操作スイッチ24がアンロック位置(解錠位置)に操作されたときには、ドアラッチ1の拘束状態のロックを解除、つまりドアハンドルやインサイドスイッチ22による解除操作を有効とする。ECU2は、これらのスイッチ22,23,24のスイッチ操作に応じてドアラッチ1を制御する一般的な構成を含んでいる。
【0022】
表示部21Aおよび21Bには、ランプや発光ダイオード等の種々の発光素子が用いられている。ロック表示部21Aは、例えば緑色に発光する発光ダイオードを用いて構成されており、ドアラッチ1が拘束状態にロック(施錠)されたときに発光する。またアンロック表示部21Bは、例えば赤色に発光する発光ダイオードを用いて構成されており、ドアラッチ1の拘束状態のロックが解錠されたときに発光する。これらの表示部21A,21Bの発光形態は、ECU2に組み込まれた表示制御部(制御手段)10によって制御される。
【0023】
表示制御部10は、車両の周囲の明るさを検出する光センサ11からの検出信号、車速を検出する車速センサ12からの検出信号、変速機の変速レンジがPレンジ(パーキングレンジ)にあることを検出するPレンジスイッチ13の検出信号、およびブレーキのストップランプの点灯を検出するストップランプスイッチ14の検出信号に基づいて、後述するように、表示部21A,21Bの発光形態を制御する。
【0024】
図2において、25は車載バッテリー、26はイグニッションスイッチ、L1はパワー電源ライン、L2は信号系電源ラインである。
【0025】
図3は、表示制御部10による表示形態の制御処理を説明するためのフローチャートである。表示制御部10は、表示部21A,21Bが発光されるときに、それらの発光形態を制御する。前述したように、ロック表示部21Aはドアラッチ1が拘束状態にロック(施錠)されたときに発光され、またアンロック表示部21Bは、ドアラッチ1の拘束状態のロックが解錠されたときに発光される。
【0026】
まず、イグニッションスイッチ26がOFFのときは、車両が停止中であると判断し、光センサ11の検出信号に基づいて、車両の周囲の明るさが所定程度以上であるか否かを判定する(ステップS1,S2)。その明るさが所定程度以上のときは、表示部21A,21Bを周囲の明るさよりも充分に明るく連続点灯させて(ステップS3)、それらの視認性を向上させる。一方、その明るさが所定程度未満のときは、運転者Dを幻惑させないように表示部21A,21Bを暗く連続点灯させて(ステップS4)、それらの視認性を向上させる。そして、一定時間の経過を待って表示部21A,21Bを消灯させる(ステップS5,S6)。
【0027】
また、イグニッションスイッチ26がONのときは、車速センサ12の検出信号に基づいて、車両の走行速度が所定速度以上(例えば、25km/h以上)であるか否かを判定する(ステップS7)。走行速度が所定速度以上であるときは車両が高速走行中であると判断し、表示部21A,21Bを点灯させない(ステップS8)。これにより、運転者Dの注意をより高速運転に集中させることができる。また、車両が所定の速度V以上に達した時に、ドアを自動的にロック(施錠)させるための集中ドアロック装置を備える場合には、その速度V以上のときに、ステップS7からステップS8に移行するようにしてもよい。
【0028】
また、ステップS7の判定において走行速度が所定速度未満であると判定された場合に、Pレンジスイッチ13あるいはストップランプスイッチ14がONのときには、車両が停止中であると判断して前述したステップS2に移行する(ステップS9,S10)。一方、それらのスイッチ13,14がOFFのときは、車両が低速走行中であると判断し、光センサ11の検出信号に基づいて、車両の周囲の明るさが所定程度以上であるか否かを判定する(ステップS11)。またステップS11では、車両がブレーキ等によって拘束されない、変速機の変速レンジがNレンジ(ニュートラル・レンジ)にある車両停止状態も含むものとする。その明るさが所定程度以上のときは、表示部21A,21Bを周囲の明るさよりも充分に明るく点滅させて(ステップS12)、それらの視認性を向上させる。一方、その明るさが所定程度未満のときは、運転者Dを幻惑させないように表示部21A,21Bを暗く点滅させて(ステップS13)、それらの視認性を向上させる。
【0029】
このように、表示部21A,21Bの発光形態(発光時間および発光量)を制御することにより、運転者Dなどの乗員がおかれている状況に応じて、表示部21A,21Bの視認性を安定的かつ充分に確保することができる。また、表示部21A,21Bを連続的に発光させた場合には、それを点滅(断続的に発光)させた場合に比して、単位時間当たりの発光時間は長くなる。また、ステップS3,S4における表示部21A,21Bの点灯の時間はステップS5によって一定の時間に制限され、一方、ステップS12、S13における表示部21A,21Bの点滅の時間は特に制限されない。
【0030】
(他の実施形態)
光センサ11の検出信号に代えて、車両の前照灯が点灯したか否かの検出信号を入力してもよい。この場合には、前照灯が消灯しているときは車両の周囲の明るさが所定程度以上であると判断し、それが点灯しているときは車両の周囲の明るさが所定程度未満であると判断することができる。要は、車両の周囲の明るさに関する情報を入力するための入力部(第2の入力部)があればよい。
【0031】
また、車速センサ12の検出信号を直接入力する必要はなく、要は、車両の走行速度に関する情報を入力するための入力部(第1の入力部)があればよい。
【0032】
また、本発明における制御対象の表示部は、前述したようなドアラッチ1の作動状態を発光表示する表示部21A,21Bのみに特定されず、ドアラッチ1以外の種々の車載装置の作動状態を発光表示するものであってもよい。その車載装置としては、例えば、サイドガラスの昇降装置、シートスライド装置、ライトの切替え装置等を挙げることができる。また表示部は、運転者Dのみならず、他の乗員によって視認されるものであってもよい。また、本発明の車両用表示装置は、ECU2に組み込まれる構成のみに特定されず、単体として構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る車両用表示装置を備えたサイドドアを室内側から見た概略側面図である。
【図2】図1における車両用表示装置の概略ブロック構成図である。
【図3】図1における車両用表示装置の制御処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
1 ドアラッチ(車載装置)
2 ECU
10 表示制御部(制御手段)
11 光センサ
12 車速センサ
20 インサイドスイッチ装置
21A ロック表示部(表示部)
21B アンロック表示部(表示部)
22 インサイドスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載装置の作動状態を発光表示する表示部の表示形態を制御可能な車両用表示装置であって、
車両の走行速度に関する情報を入力する第1の入力部と、
前記車両の周囲の明るさに関する情報を入力する第2の入力部と、
前記第1および第2の入力部からの入力情報に基づいて、前記表示部の発光時間および発光量を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1の入力部からの入力情報に基づいて前記表示部の発光時間を制御し、前記車両が停止しているときは前記表示部を連続発光させ、前記車両が走行中のときは前記表示部を点滅発光させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記車両の走行速度が所定速度以上となったときに前記表示部の点滅発光を停止させることを特徴とする請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第2の入力部からの入力情報に基づいて前記表示部の発光量を制御し、前記車両の周囲の明るさが所定の程度以上のときは前記表示部の発光量を増大させ、前記車両の周囲の明るさが所定の程度未満のときは前記表示部の発光量を減少させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記車載装置としてのドアラッチがドアを全閉状態に維持する拘束状態にロックされていることを表示するロック表示部および/または前記拘束状態のロックが解錠されていることを表示するアンロック表示部を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−103640(P2006−103640A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296725(P2004−296725)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】