説明

車両用表示装置

【課題】 充分なアンテナ利得を簡易な構成にて実現できる無線通信機能を備えた車両用表示装置を提供する。
【解決手段】 車両情報を表示制御するための制御回路24を実装するメータ用プリント基板2と、メータ用プリント基板2と離間して設けられ、無線通信用のアンテナ配線31a,31bを形成してなる通信用プリント基板3と、通信用プリント基板3をメータ用プリント基板2に固定かつ導通させる固定手段4と、を設けてなる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、車両情報を表示するための制御回路とともに無線通信用回路を含む車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本技術分野に掛かる発明として、少なくともスピードメータ、トリップ表示機及びこれらの駆動制御のためのメータ制御部(制御回路)が実装されるメータ用基板と、前記メータ用基板を収納するハウジングとを有した車両搭載メータ装置において、車両外部から送信機によって送信される電波信号をアンテナを介して受信し、当該車両のエンジンの始動制御若しくはドアの錠の開閉制御を行う電子制御装置の該アンテナを少なくとも前記メータ用基板又は前記ハウジングに設けたものが開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
本発明によれば、キーレスユニット等の電子制御装置のアンテナをメータ用基板又はハウジングに内蔵することによって、アンテナの配線位置を良好たらしめると共に、電子部品、回路基板、各種コネクタ部材等の使用量の低減を図ることができると共に、良好な受信感度を提供するものが知られている。
【0004】
また、電波受信機がメータ用ハウジング内の位置にくるので、金属製車体による電磁遮蔽の影響を比較的受けにくいという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−216735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記文献に掛かる技術においては、アンテナ部を少なくとも前記メータ用基板又は前記ハウジングに設けた構成であるため、アンテナ形状を立体構造とすることが困難であり、受信可能な到来波の偏波面が限られてしまうという問題点があった。
【0007】
また、アンテナ用の配線や回路構成によって、メータ用基板上の実装面積が狭くなってしまうために、基板面積が大型化してしまう問題があった。一方、アンテナ用の配線や回路構成をメータ用基板と別体にすることで、メータ用基板等による電磁遮蔽の影響を低減でき、アンテナ利得の向上を図ることができるが、部品が増加するだけでなく、それぞれの電気的な接続や、それらを固定する構造や組み付け作業が必要となるなど、改善の余地があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、充分なアンテナ利得を簡易な構成にて実現できる無線通信機能を備えた車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用表示装置は、車両情報を表示制御するための制御回路を実装する第1の回路基板と、前記第1の回路基板と離間して設けられ、無線通信用のアンテナ配線を形成してなる第2の回路基板と、前記第2の回路基板を前記第1の回路基板に固定かつ導通させる導電手段と、を設けてなることを特徴とする。
【0010】
また、前記導電手段は、前記アンテナ配線と電気的に接続し、無線通信用アンテナの一部として機能してなるアンテナ部を設けてなることを特徴とする。
【0011】
また、前記第2の回路基板には、導電性被膜が施された複数の螺子穴が設けられ、前記導電手段を介して、前記第1の回路基板に電気的に接続され、前記第1の回路基板には、各導電手段を電気的に接続する配線を設けてなることを特徴とする。
【0012】
また、前記第2の回路基板は、略矩形形状の硬質基板からなり、前記螺子穴を対角する角部近傍に設けてなることを特徴とする。
【0013】
また、前記第2の回路基板には、前記アンテナ配線に接続された無線通信用回路を設けてなり、前記導電手段は、前記無線通信用回路と前記制御回路との間における信号経路として機能するものを設けてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、車両情報を表示する車両用表示装置に関し、充分なアンテナ利得を簡易な構成にて実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態における車両用表示装置の断面図。
【図2】同上実施の形態における通信用プリント基板を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図に従って説明する。なお、以下の説明は、本発明を車載メータに適用した一実施例を示すものである。
【0017】
図1は、本発明の車両用表示装置の断面図を示す。車両用表示装置は、表示器1と、メータ用プリント基板(第1の回路基板)2と、通信用プリント基板(第2の回路基板)3と、固定手段(導電手段)4と、ハウジング5と、ケーブル6と、を備えている。また、図2は、メータ用プリント基板2に保持された通信用プリント基板3を示す斜視図である。
【0018】
表示器1は、メータ用プリント基板2に実装されたムーブメント(モータ)21を駆動源にして回動する指針11aと、この指針の指示対象となる数値や目盛りからなる指標部が印刷された表示板11bとからなる指針表示部11と、バックライト22によって照明可能に設けられる液晶表示パネル23とを設けている。表示器1は、後述する制御回路24による駆動制御によって、所望の計測値や警報などの車両情報を指示、または表示できるように設けられる。この場合、指針表示部11によって車速を表示出力し、液晶表示パネル23によって積算走行距離などの車両情報を表示する。なお、表示器1は、画面切換え可能に構成され、車両情報の他にも、時刻や温度情報、無線通信による入力情報の表示や無線通信状態なども表示出力できる。
【0019】
メータ用プリント基板2は、銅箔パターンが印刷形成された硬質配線板であり、前述したムーブメント21、バックライト22と、液晶表示パネル23と、制御回路24などの電子部品を実装している。制御回路24は、ケーブル6やメータ用プリント基板2の配線を介して入力される車両情報や、通信用プリント基板3からの信号などに基づいて、表示器1を駆動制御して表示出力させるもので、所定のプログラムを格納したマイクロコンピュータを適用できる。
【0020】
通信用プリント基板3は、略矩形の硬質配線板を適用でき、銅箔からなり通信用プリント基板3の端辺付近に線状に設けられるアンテナ配線31a,31bと、複数の螺子穴32と、電子部品を実装するとともに電気的に接続するための図示しない電極などが形成され、無線通信用回路(通信モジュール)33や整合回路34、記憶手段35、電源回路36などが実装されている。
【0021】
螺子穴32は、後述する固定手段4に接する導電被膜が形成され、この場合、整合回路34からの配線34aに接続している。無線通信用回路33は、別途配線によってメータ用プリント基板2の制御回路24に接続され、制御回路24からの信号に基づいて電波信号を受信または送信する回路である。 整合回路34は、アンテナ配線31a,31b等のインピーダンスを整合させるための回路で、コンデンサやコイルを適用できる。記憶手段35は、無線通信によって送信される情報や、受信信号の復号・照合に必要な情報を格納するEEPROM等の不揮発性メモリを適用でき、別途配線を介して制御回路24と接続されている。電源回路36は、通信用プリント基板3に実装された無線通信用回路33などの電子部品に電源を供給する回路で、定電圧回路を適用できる。
【0022】
固定手段4は、メータ用プリント基板2と通信用プリント基板3とによって挟まれて各プリント基板2,3の実装面が平行で所定間隔離間するように保つ円柱状の金属スペーサ41と、螺子穴32及び金属スペーサ41を挿通し、ナット42との螺合によってメータ用プリント基板2と通信用プリント基板3とを固定保持する金属製のビス43とを設けている。また、金属スペーサ41やビス43は、導電性であり螺子穴32及び螺子穴32付近の金属被膜と接して、メータ用プリント基板2と通信用プリント基板3との各所定配線に接続し導電可能に設けられる。
【0023】
なお、ナット42に螺合されるビス43と金属スペーサ41を設けて導電しつつ各プリント基板2,3を接続保持するものを示したが、ビスと金属スペーサとが一体に設けられるものであってもよいし、ナットへの螺合でなくハウジングなどの筐体や車両用表示装置内の別部材に螺合させて、各プリント基板2,3の固定を兼ねることもできる。
【0024】
この場合、螺子穴32と固定手段4とは、通信用プリント基板3の角部付近に4つ設けられ、そのうち対角関係にある2つの固定手段4は、アンテナ配線31a,31bと接続されるとともに、メータ用プリント基板2の接地用の配線パターンに同調容量25を介して接続するアンテナ部4aとしてアンテナとして作用する。同調容量25は、アンテナインピーダンスを所望の数値(例えば、50オーム)に整合させ易くする役割を担う。
【0025】
また、図2に示すように、電波を送受信するためのアンテナ機能を、アンテナ配線31a,31b、アンテナ部4a、メータ用プリント基板2の接地用の配線パターン(図示しない)によって、ループ状に接続して設けられ、配線34aや整合回路34等を介して、無線通信用回路33に接続される。従って、基板面に垂直なアンテナ部4a部分によって、立体的でアンテナ利得の高い構成を容易に得ることができる。
【0026】
また、アンテナ部4aとして用いない、固定手段4にあっては、通信用プリント基板3の図示しないグラウンドプレーンに接続することによって、通信用プリント基板3の各角部に存在する螺子穴32のうち対角関係にあるものをグラウンドの低インピーダンス用途として使用することが可能となる。従って、通信用プリント基板3に実装された各種電子部品のグラウンドと、メータ用プリント基板2のグラウンド間のインピーダンスを小さくできるため、コモンモードノイズの発生を抑制することができる。 そして、車両用表示装置から発生する不要輻射の抑制に寄与することができる。
【0027】
ハウジング5は、表示器1や、メータ用プリント基板2、通信用プリント基板3、固定手段4などを保持して収納するもので、表示器1の表示を臨むことができる透光性の合成樹脂からなるケース51と、プリント基板2,3などを覆い隠す遮光性の合成樹脂からなるケース52とを設けている。
【0028】
ケーブル6は、ケース52の穴を介して制御回路24と車体側の電子ユニットとを接続するハーネスであり、メータ用プリント基板2とコネクタ61を介して接続されている。
【0029】
斯かる車両用表示装置は、車両情報を表示制御するための制御回路24を実装するメータ用プリント基板2と、メータ用プリント基板2と離間して設けられ、無線通信用のアンテナ配線31a,31bを形成してなる通信用プリント基板3と、通信用プリント基板3をメータ用プリント基板2に固定かつ導通させる固定手段4と、を設けてなる。
【0030】
従って、アンテナ用の配線や回路構成によって、アンテナ用の配線や回路構成をメータ用基板と別体にすることで、メータ用基板等による放射抵抗低下の影響を低減でき、アンテナ利得の向上を図るとともに、固定手段と導電手段を兼ねることによって、部品が増加を抑制でき、また、それぞれの電気的な接続や、それらを固定する構造や組み付け作業が容易になるため、充分なアンテナ利得を簡易な構成にて実現できる無線通信機能を備えた車両用表示装置となる。
【0031】
また、固定手段4は、アンテナ配線31a,31bと電気的に接続し、無線通信用アンテナの一部として機能してなるアンテナ部4aを設けてなることによって、アンテナ形状をメータ用プリント基板2に対して立体構造とさせつつも、既存のメータ構成部品でアンテナ部材を構成し、低コスト化を図ることができる。
【0032】
また、車両用表示装置に無線通信の機能が必要ないときには、通信用プリント基板3を組み付けずに他の構成要素を汎用できるため、車両の装備品の違いに対応した汎用性の高い車両用表示装置となる。
【0033】
また、プリント配線板上の導線パターンと、プリント配線板を固定支持するための導電手段をループアンテナとして用いており、既存の電子部品を活用しつつ、コストを抑えてアンテナを構成することができる。また、導電性手段間の電気的な接続方法を定めることにより、アンテナ用途としての使用をしつつ、不要輻射の抑制をも考慮した車両用表示装置を構成することができ、好適である。
【0034】
なお、本発明の車両用表示装置を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに表示の変更が可能なことは勿論である。例えば、固定部材としてビス5を例にあげて説明したが、金属フックなどの係止構造によるものであってもよいし、係止部分とビス止め部分を併用するものであっても、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0035】
また、ここでは、通信用プリント基板3として、長方形や曲線形状などであっても、導線としてのパターン長を確保できるものであれば、同様の効果を奏する。また、固定手段4は、通信用プリント基板の大きさや形状に応じて4本以上あってもよいし、アンテナ部4aやグラウンド接続用の導電機能を例にあげて説明したが、アンテナ部4aの他に、無線通信用回路33と制御回路24との間における信号経路や接地経路として機能するものを設けることもでき、耐振動や組み付け性で有利である。
【0036】
また、通信用プリント基板3のアンテナ配線において、螺子穴等を迂回する場合、スルーホールを用いて、他の基板面を介したアンテナ配線構造を適宜設定することもでき、上述と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、車両に搭載して各種車両情報を表示する車両用表示装置に関して、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載される表示装置として適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 表示器
2 メータ用プリント基板(第1の回路基板)
24 制御回路
25 同調容量
3 通信用プリント基板(第2の回路基板)
31 アンテナ配線
32 螺子穴
33 無線通信用回路
34 整合回路
35 記憶手段
36 電源回路
4 固定手段(導電手段)
41 金属スペーサ
43 ビス
4a アンテナ部
5 ハウジング
6 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両情報を表示制御するための制御回路を実装する第1の回路基板と、
前記第1の回路基板と離間して設けられ、無線通信用のアンテナ配線を形成してなる第2の回路基板と、
前記第2の回路基板を前記第1の回路基板に固定かつ導通させる導電手段と、を設けてなることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記導電手段は、前記アンテナ配線と電気的に接続し、無線通信用アンテナの一部として機能してなるアンテナ部を設けてなることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記第2の回路基板には、導電性被膜が施された複数の螺子穴が設けられ、前記導電手段を介して、前記第1の回路基板に電気的に接続され、
前記第1の回路基板には、各導電手段を電気的に接続する配線を設けてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記第2の回路基板は、略矩形形状の硬質基板からなり、
前記螺子穴を対角する角部近傍に設けてなることを特徴とする請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記第2の回路基板には、前記アンテナ配線に接続された無線通信用回路を設けてなり、
前記導電手段は、前記無線通信用回路と前記制御回路との間における信号経路として機能するものを設けてなることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−60037(P2013−60037A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198149(P2011−198149)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】