説明

車両用路面勾配検出装置及びエンジンの制御装置

【課題】特別な構成を設けることなく路面勾配の検出を行う車両用路面勾配検出装置を提供する。
【解決手段】予め定められた関係から、車両停止中のブレーキ踏力FBに基づいて、そのブレーキ踏力FBが大きいほどその車両が走行する路面の勾配が大きいことを検出することを特徴とするものであることから、ブレーキ踏力FBに対応するブレーキ油圧を検出するブレーキ用油圧センサ54等の既存の構成を利用することで、特別な構成を設けることなく路面勾配の検出を行う車両用路面勾配検出装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用路面勾配検出装置及びエンジンの制御装置に関し、特に、特別な構成を設けることなく路面勾配の検出を行うための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
シフトレバー等の手動操作により複数の変速段を選択的に成立させる手動変速機(マニュアルトランスミッション)を備えた車両においては、その手動変速機とエンジンとの間にクラッチが設けられ、そのクラッチの係合状態に応じてエンジンから手動変速機への駆動力の伝達が制御される。斯かる車両では、車両の走行する路面が上り坂である場合における発進すなわち登坂発進時にエンジンストールが発生し易いという問題があり、斯かる問題を解決するための技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載された車両の走行制御装置がそれである。この技術によれば、登坂発進時におけるエンジン回転速度が、通常時のアイドル回転速度よりも大きくなるようにエンジンの出力を制御することにより、登坂発進時におけるエンジンストールの発生を好適に抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−146945号公報
【特許文献2】特開平6−8808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述したような従来の技術では、車両の前後方向の傾斜角を検出するためのセンサとして、例えば前後Gセンサ等の装置を備える必要があり、製造コストがかさむという弊害があった。このため、特別な構成を設けることなく路面勾配の検出を行う車両用路面勾配検出装置及びエンジンの制御装置の開発が求められていた。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、特別な構成を設けることなく路面勾配の検出を行う車両用路面勾配検出装置及びエンジンの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる目的を達成するために、本第1発明の要旨とするところは、車両が走行する路面の勾配を検出する車両用路面勾配検出装置であって、予め定められた関係から、車両停止中のブレーキ踏力に基づいて、そのブレーキ踏力が大きいほどその車両が走行する路面の勾配が大きいことを検出することを特徴とするものである。
【0007】
また、前記目的を達成するために、本第2発明の要旨とするところは、手動操作により複数の変速段を選択的に成立させる手動変速機に連結された車両用エンジンの制御装置であって、上記第1発明の車両用路面勾配検出装置により車両が走行する路面が上り坂であることが検出されている状態で車両発進が行われる場合には、それ以外の場合よりも前記エンジンの出力を増大させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
このように、前記第1発明によれば、車両が走行する路面の勾配を検出する車両用路面勾配検出装置であって、予め定められた関係から、車両停止中のブレーキ踏力に基づいて、そのブレーキ踏力が大きいほどその車両が走行する路面の勾配が大きいことを検出することを特徴とするものであることから、ブレーキ踏力を検出するセンサ等の既存の構成を利用することで、特別な構成を設けることなく路面勾配の検出を行う車両用路面勾配検出装置を提供することができる。
【0009】
ここで、前記第1発明において、好適には、車両が停止する前におけるブレーキ踏力と車両減速度とに基づいて、そのブレーキ踏力に対する車両減速度が予め定められた閾値より大きい場合には車両が停止する路面が上り坂であることを検出する一方、その閾値より小さい場合には車両が停止する路面が下り坂であることを検出するものである。このようにすれば、特別な構成を設けることなく車両が走行する路面が上り勾配か下り勾配かの検出を行うことができる。
【0010】
また、前記第2発明によれば、手動操作により複数の変速段を選択的に成立させる手動変速機に連結された車両用エンジンの制御装置であって、上記第1発明の車両用路面勾配検出装置により車両が走行する路面が上り坂であることが検出されている状態で車両発進が行われる場合には、それ以外の場合よりも前記エンジンの出力を増大させることを特徴とするものであることから、ブレーキ踏力を検出するセンサ等の既存の構成を利用することで、特別な構成を設けることなく路面勾配の検出を行う車両用路面勾配検出装置を用いて、登坂発進時のエンジンストールを好適に抑制する車両用エンジンの制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が好適に適用される車両の駆動装置及びその制御系の一部を模式的に示す図である。
【図2】図1の制御装置に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図3】図2の制御装置による車両の走行路面が上り坂であるか或いは下り坂であるかの判定に用いられる関係の一例を示す図である。
【図4】車両が登坂路を上りきった場所で停止すると共に上り坂の判定が行われることにより不必要な制御が行われる可能性がある状態を示す図である。
【図5】図2の制御装置による登坂発進制御の要部を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明が好適に適用される車両の駆動装置10及びその制御系の一部を模式的に示す図である。この図1に示す駆動装置10は、前置エンジン前輪駆動(フロントエンジンフロントドライブ)型の車両に搭載されたものであり、駆動力源であるエンジン12と駆動輪である左右一対の前輪14l、14r(以下、特に区別しない場合には単に前輪14という)との間に、動力断続装置であるクラッチ16、手動変速機18、及び差動装置20等を備えて構成されている。すなわち、上記エンジン12の出力は、そのエンジン12のクランク軸22及び上記クラッチ16を介して上記手動変速機18の入力軸24に入力され、その手動変速機18により変速された駆動力が上記差動装置20を介して上記左右の前輪14に対応する左右一対の前輪車軸26l、26r(以下、特に区別しない場合には単に前輪車軸26という)へ分配されるように構成されている。
【0014】
上記エンジン12は、例えば、気筒内噴射される燃料の燃焼によって駆動力を発生させるガソリンエンジン或いはディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、上記クラッチ16は、通常は係合状態とされる一方、クラッチペダル36の踏込操作によりスリップ状態或いは開放状態とされて、上記エンジン12から出力される動力の上記手動変速機18への伝達を断続する動力断続装置である。また、上記手動変速機18は、運転者によるシフトレバー38の手動操作により複数の変速段を選択的に成立させることにより、上記エンジン12から入力される回転を所定の変速比γで減速或いは増速して出力する機械式の有段変速機構(マニュアルトランスミッション)であり、例えば第1速「1st」から第5速「5th」までの5段階の前進変速段、後進変速段、及びニュートラルのうち何れかが選択的に成立させられ、それぞれの変速比γに応じた速度変換が成される。また、上記差動装置20は、上記左右一対の前輪車軸26の相対回転を許容しつつ上記手動変速機18から入力される駆動力をそれら左右の前輪車軸26へ伝達する差動歯車装置(デファレンシャル装置)である。
【0015】
また、前記駆動装置10には、上記左右の前輪14及び左右一対の後輪28l、28r(以下、特に区別しない場合には単に後輪28という)それぞれに対応して、フットブレーキペダル34の踏込に応じて制動力を発生させるブレーキ30fl、30fr、30rl、30rr(以下、特に区別しない場合には単にブレーキ30という)が設けられている。このブレーキ30は、例えば油圧に応じた制動力を発生させる油圧式のディスクブレーキ又はドラムブレーキ等のホイールブレーキである。また、本実施例の駆動装置10において、好適には、ABS(Anti-lock Brake System)等による制御に応じて油圧回路42から各ブレーキ30に供給される油圧がそれぞれ個別に制御されるように構成されており、それら各ブレーキ30すなわちそれぞれの車輪に対応する制動力が個別に制御可能とされている。
【0016】
また、前記駆動装置10には、その駆動装置10に関する各種制御を行うための制御装置40が備えられている。この制御装置40は、例えばCPU、RAM、ROM、入力インターフェイス等を備えた所謂マイクロコンピュータであり、そのCPUによりRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記エンジン12の出力制御や油圧回路42を介しての上記ブレーキ30の制動制御をはじめとする各種制御を実行するように構成されている。なお、この制御装置40は、必要に応じて前記エンジン12の出力制御用や上記ブレーキ30の制動制御用といったように各制御毎に個別の制御装置として構成される。
【0017】
また、図1に示すように、車両に設けられた各種センサやスイッチ等からそれぞれの検出値を示す信号が上記制御装置40へ供給されるように構成されている。すなわち、アクセル操作量センサ44から所謂アクセル開度として知られるアクセルペダル32の操作量(アクセル開度)Accを表す信号、ブレーキスイッチ46から常用ブレーキであるフットブレーキペダル34の操作の有無FBを表す信号、車速センサ48から前記手動変速機18の出力回転速度NOUTに対応する車速Vを表す信号、シフトポジションセンサ50からシフト操作部材としてのシフトレバー38のレバーポジション(操作位置)SPを表す信号、クラッチポジションセンサ(クラッチオン・オフスイッチ)52からクラッチペダル36の踏込量に基づく前記クラッチ16の断続状態(クラッチのオン・オフ)CPを表す信号、及びブレーキ用油圧センサ54から各ブレーキ30に供給される油圧(ABS用油圧)PBを表す信号が、それぞれ上記制御装置40へ供給されるようになっている。なお、本実施例においては、前記各ブレーキ30に供給される油圧が前記制御装置40からの指令に応じて前記油圧回路42により調圧される構成を例示しているが、例えば前記フットブレーキペダル34の踏込に応じて機械的に発生する油圧が各車輪に対応するブレーキ30へ供給されるものであってもよい。この場合、上記ブレーキ用油圧センサ54は、好適には、前記フットブレーキペダル34の踏込量に応じて変化するブレーキマスタシリンダの油圧を検出する。
【0018】
また、前記制御装置40からは、車両に備えられた各種装置の作動を制御するための信号が出力されるように構成されている。すなわち、前記エンジン12の出力制御のためのエンジン出力制御指令信号として、例えばアクセル開度Accに応じて電子スロットル弁の開閉を制御するためのスロットルアクチュエータ56を駆動する信号、燃料噴射装置58から噴射される燃料の量を制御するための噴射信号、及び点火装置60による前記エンジン12の点火時期を制御するための点火時期信号等が出力されるようになっている。また、前記各ブレーキ30の制動力を制御するための信号として、例えば前記油圧回路42内に備えられた各種電磁弁装置を駆動するための信号等が出力されるようになっている。
【0019】
図2は、前記制御装置40に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図2に示す減速時踏力判定手段64は、車両減速時における前記フットブレーキペダル34の踏力すなわち前記ブレーキ30の制動力を定めるためのブレーキ操作量を判定する。例えば、車両減速時すなわち前記車速センサ48により検出される車速Vの時間変化dV/dtが負の値である場合において、予め定められた関係から前記ブレーキ用油圧センサ54により検出されるブレーキ油圧PBに基づいて前記フットブレーキペダル34の踏力(踏込量)を算出する。また、前記ブレーキ用油圧センサ54により検出されるブレーキ油圧PBの時間変化に基づいて、前記フットブレーキペダル34の踏力の変化速度dFB/dtを検出する。
【0020】
記憶部62は、前記制御装置40に備えられたRAMやフラッシュROM等の記憶媒体であり、車両が停止する前におけるブレーキ踏力FBと車両減速度dV/dtとを対応付けて記憶する。すなわち、車両減速時すなわち前記車速センサ48により検出される車速Vの時間変化dV/dtが負の値である場合において、所定時間毎に上記減速時踏力判定手段64により判定(算出)されるブレーキ踏力FBと、その判定時における車両減速度(加速度)dV/dtとを対応付けて記憶する。
【0021】
停車時踏力判定手段66は、予め定められた関係から車両停止中のブレーキ踏力FBに基づいて車両が走行する路面の勾配を検出する。この検出に用いられる関係は、ブレーキ踏力FBが大きいほどその車両が走行する路面の勾配が大きいことを検出するように(ブレーキ踏力FBが小さいほどその車両が走行する路面の勾配が小さいことを検出するように)予め定められたものであり、上記記憶部62等に記憶されている。上記停車時踏力判定手段66は、そのように予め記憶された関係から前記ブレーキ用油圧センサ54により検出されるブレーキ油圧PBに基づいて前記フットブレーキペダル34の踏力(踏込量)FBを算出する。
【0022】
また、上記停車時踏力判定手段66は、好適には、前記記憶部62に記憶されたブレーキ踏力FB及び車両減速度dV/dtに基づいて、そのブレーキ踏力FBに対する車両減速度dV/dtが予め定められた閾値より大きい場合には車両が走行する路面が上り坂(登坂路)であることを検出する一方、その閾値より小さい場合には車両が走行する路面が下り坂(降坂路)であることを検出する。図3は、斯かる判定に用いられる閾値を定める関係の一例を示す図である。この図3に示す例では、ブレーキ踏力FBに比例する値として車両減速度dV/dtの閾値が定められており、平坦路すなわち勾配のない路面におけるブレーキ踏力FB及び車両減速度dV/dtの関係がこの閾値に対応する。そして、上記停車時踏力判定手段66は、前記記憶部62に記憶されたブレーキ踏力FB及び車両減速度dV/dtに基づいて、そのブレーキ踏力FBに対する車両減速度dV/dtが図3に示す閾値以上である場合には車両が走行する路面が上り坂であることを検出する一方、図3に示す閾値より小さい場合には車両が走行する路面が下り坂であることを検出する。
【0023】
図2に示す発進準備判定手段68は、車両が発進準備状態にあるか否かを判定する。例えば、前記シフトポジションセンサ50により検出される前記シフトレバー38レバーポジションSPが第1速「1st」であり、且つ前記クラッチポジションセンサ52により前記クラッチ16が係合状態から遮断状態へ切り替えられたことが検出された場合に、車両が発進準備状態にあると判定する。
【0024】
登坂発進制御手段70は、前記停車時踏力判定手段66により車両が走行する路面が上り坂であることが検出されている状態での車両発進が行われる場合に、前記エンジン12の出力制御を行う。すなわち、上記発進準備判定手段68により車両が発進準備状態にあると判定された場合であり、且つ前記停車時踏力判定手段66により車両が走行する路面が上り坂であることが検出されている場合には、それ以外の場合例えば平坦路や下り坂における発進時よりも前記エンジン12の出力を増大させるように前記スロットルアクチュエータ56、燃料噴射装置58、及び点火装置60等の駆動を制御する。好適には、前記スロットルアクチュエータ56による電子スロットル弁の開度へ制御することで、前記エンジン12のアイドル回転速度NIDLEを上昇させる。
【0025】
ここで、上記登坂発進制御手段70は、好適には、前記減速時踏力判定手段64により検出されるブレーキ踏力FBの時間変化dFB/dtが予め定められた所定値(通常の制動操作ではありえない非常に大きな値)以上である場合には、緊急ブレーキ操作が行われたと判定して前記エンジン12の出力を増大させる制御を非実行とする。すなわち、登坂発進に際しての前記エンジン12の出力制御を行わない。また、好適には、前記停車時踏力判定手段66により車両が走行する路面が上り坂であることが検出されている状態において車両が停止した後に、前記停車時踏力判定手段66によりその車両停車時でのブレーキ踏力が平坦路に対応する値よりも大きいか否かの判定を行い、その判定が肯定される場合にのみ前記エンジン12の出力を増大させる制御を実行する。例えば、図4に示すように、車両72が登坂路74を上りきった直後に停止した場合、前記記憶部62に記憶されたブレーキ踏力FB及び車両減速度dV/dtに基づく判定は上り坂であっても、実際は図4に示すように平坦路であることが考えられる。そのような場合に、車両停止状態でのブレーキ踏力FBに基づいて重ねて路面勾配を判定することで、不必要に大きい発進トルクが発生することを好適に抑制できる。
【0026】
図5は、前記制御装置40による登坂発進制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0027】
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、車両減速が判定される場合に、予め定められた関係から前記ブレーキ用油圧センサ54により検出されるブレーキ油圧PBに基づいて前記フットブレーキペダル34の踏力FBが判定(算出)される。また、このS1において判定されたブレーキ踏力FBとその時点における車両減速度dV/dtが対応付けられて前記記憶部62に記憶される。次に、S2において、前記記憶部62に記憶されたブレーキ踏力FB及び車両減速度dV/dtに基づいて、そのブレーキ踏力FBに対する車両減速度dV/dtが予め定められた閾値より大きいか否かが判断される。このS2の判断が否定される場合には、車両の走行する路面が平坦路又は下り坂であると判定されてS10以下の処理が実行されるが、S2の判断が肯定される場合には、車両の走行する路面が上り坂であると判定された後、S3において、車両が停止したか否かすなわち前記車速センサ48により検出される車速Vが0になったか否かが判断される。このS3の判断が否定される場合には、S1以下の処理が再び実行されるが、S3の判断が肯定される場合には、前記停車時踏力判定手段66の動作に対応するS4において、予め定められた関係から前記ブレーキ用油圧センサ52により検出されるブレーキ油圧PBに基づいて前記フットブレーキペダル34の踏力FBが判定(算出)される。
【0028】
次に、S5において、S4にて判定されたブレーキ踏力FBの変化速度dFB/dtが予め定められた非常に大きな所定値以上であったか否かが判断される。このS5の判断が肯定される場合には、緊急ブレーキ操作が行われたと判断され、S10以下の処理が実行されるが、S5の判断が否定される場合には、S6において、S4にて判定されたブレーキ踏力FBが予め定められた所定値(平坦路に対応する値)より大きいか否かが判断される。このS6の判断が否定される場合には、図4に示すように登坂路74を上りきった地点で停車したと判断され、S10以下の処理が実行されるが、S6の判断が肯定される場合には、前記発進準備判定手段68の動作に対応するS7において、前記シフトポジションセンサ50により検出される前記シフトレバー38レバーポジションSPが第1速「1st」であり、且つ前記クラッチポジションセンサ52により前記クラッチ16が係合状態から遮断状態へ切り替えられたことが検出されたか否かが判断される。このS7の判断が否定されるうちは、判断が繰り返されることにより待機させられるが、S7の判断が肯定される場合には、S8において、車両の発進モードが登坂発進モードに設定される。
【0029】
次に、S9において、前記スロットルアクチュエータ56により電子スロットル弁の開度が制御されること等により前記エンジン12のアイドル回転速度NIDLEが上昇させられた後、本ルーチンが終了させられる。一方、S10においては、車両の発進モードが通常発進モードすなわち非登坂発進モードに設定される。そして、S11において、電子スロットル弁の制御等による前記エンジン12のアイドル回転速度NIDLEの変更制御が非実行とされた後、本ルーチンが終了させられる。以上の制御において、S1及びS2が前記減速時踏力判定手段64の動作に、S8及びS9が前記登坂発進制御手段70の動作にそれぞれ対応する。
【0030】
このように、本実施例によれば、予め定められた関係から、車両停止中のブレーキ踏力FBに基づいて、そのブレーキ踏力FBが大きいほどその車両が走行する路面の勾配が大きいことを検出することを特徴とするものであることから、ブレーキ踏力FBに対応するブレーキ油圧を検出するセンサ等の既存の構成を利用することで、特別な構成を設けることなく路面勾配の検出を行う車両用路面勾配検出装置としての制御装置40を提供することができる。また、車両の前後方向の傾斜角を検出するセンサでは、車両後部に荷物が積載されて車両が傾いている場合に登坂状態であると誤認するおそれがあったが、本実施例によれば、斯かる弊害の発生も併せて抑制することができる。
【0031】
また、車両が停止する前におけるブレーキ踏力FBと車両減速度dV/dtとを記憶する記憶部62を備え、その記憶部62に記憶されたブレーキ踏力FB及び車両減速度dV/dtに基づいて、そのブレーキ踏力FBに対する車両減速度dV/dtが予め定められた閾値より大きい場合には車両が停止する路面が上り坂であることを検出する一方、その閾値より小さい場合には車両が停止する路面が下り坂であることを検出するものであるため、特別な構成を設けることなく車両が走行する路面が上り勾配か下り勾配かの検出を行うことができる。
【0032】
また、本実施例によれば、手動操作により複数の変速段を選択的に成立させる手動変速機18に連結された車両用エンジン12の制御装置40であって、前記停車時踏力判定手段66により車両が走行する路面が上り坂であることが検出されている状態で車両発進が行われる場合には、それ以外の場合よりも前記エンジン12の出力を増大させることを特徴とするものであることから、ブレーキ踏力FBに対応するブレーキ油圧を検出するセンサ等の既存の構成を利用することで、特別な構成を設けることなく路面勾配の検出を行う車両用路面勾配検出装置を用いて、登坂発進時のエンジンストールを好適に抑制する車両用エンジン12の制御装置40を提供することができる。
【0033】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0034】
例えば、前述の実施例では、前記ブレーキ用油圧センサ54により検出されるブレーキ油圧に基づいて走行路面勾配の判定等を行うものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ブレーキストロークセンサにより検出される前記フットブレーキペダル34の踏込量に基づいてその踏力の判定乃至前記各種制御を行うものであってもよい。
【0035】
また、前述の実施例では、車両が停止する前におけるブレーキ踏力FBと車両減速度dV/dtとを前記記憶部62に記憶しておき、車両停止後にその記憶部62に記憶されたブレーキ踏力FB及び車両減速度dV/dtを読み出して、車両の走行路面が上り坂であるか或いは下り坂であるかを判定するものであったが、車両が減速走行を行っている際に検出されるブレーキ踏力FB及び車両減速度dV/dtに基づいて、その時点において走行している路面が上り坂であるか或いは下り坂であるかの判定を車両走行中に行うものであってもよい。
【0036】
また、前記停車時踏力判定手段66は、図3に示すような関係に基づいて車両の走行路面が上り坂であるか下り坂であるかの判定を行うものであったが、この図3はあくまで好適な関係の一例を示すものに過ぎず、設計に応じて最適な関係が適宜採用されて前記判定に用いられる。
【0037】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0038】
12:エンジン
18:手動変速機
30:ブレーキ
40:制御装置
62:記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する路面の勾配を検出する車両用路面勾配検出装置であって、
予め定められた関係から、車両停止中のブレーキ踏力に基づいて、該ブレーキ踏力が大きいほど該車両が走行する路面の勾配が大きいことを検出するものであることを特徴とする車両用路面勾配検出装置。
【請求項2】
車両が停止する前におけるブレーキ踏力と車両減速度とに基づいて、該ブレーキ踏力に対する車両減速度が予め定められた閾値より大きい場合には車両が停止する路面が上り坂であることを検出する一方、該閾値より小さい場合には車両が停止する路面が下り坂であることを検出するものである請求項1に記載の車両用路面勾配検出装置。
【請求項3】
手動操作により複数の変速段を選択的に成立させる手動変速機に連結された車両用エンジンの制御装置であって、
請求項1又は2に記載の車両用路面勾配検出装置により車両が走行する路面が上り坂であることが検出されている状態で車両発進が行われる場合には、それ以外の場合よりも前記エンジンの出力を増大させるものであることを特徴とする車両用エンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−143765(P2011−143765A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4461(P2010−4461)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】