説明

車両用電子キーシステム

【課題】煩雑な操作を必要とせずにバレットモードの設定が可能であって、車両の操作が可能なメカニカルキーを所有者の手元に残しつつ、かつ、電子キーの部品点数が増加することを防止しつつ、バレットモードへの切り替えのための状態検出を可能とする。
【解決手段】車両用電子キーシステム10は、メカニカルキー32がキー本体31から離脱した状態であることがキー検出部47により検出されている間は、車両11と携帯機12との通信に応じて車両11により実行され得る所定の機能のうち一部を制限するバレットモードに移行する。携帯機12は、バレットモードで制限された機能の制限を解除した実行を指示する制限機能指令信号を車両11に送信するために操作される制限機能用操作スイッチ46を備え、メカニカルキー32の離脱状態が検出されている間は、制限機能用操作スイッチ46が操作されたことに伴う制限機能指令信号の送信を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両の所有者以外の者が車両を運転するなどの際に、車両の所有者が、電子キーにより許可され得る車両の特定の機能を制限するモード(所謂バレットモード)を設定して電子キー(所謂スマートキー)を他者に渡す方法が知られている。
この方法においては、例えばトランクの解錠を禁止する場合には、グローブボックス内などに設置されたトランクロックスイッチをオフにし、電子キーの本体から分離した機械式キー(メカニカルキー)によってグローブボックスを施錠した後に、メカニカルキーが抜き取られた電子キーの本体のみを他者に渡すという煩雑な操作が必要になるという問題が生じる。
このような問題に対して、例えば電子キーを携帯ユニット(キー本体)と機械式キー(メカニカルキー)とタングとにより構成し、電子キーはキー本体に対するタングの着脱状態を示す状態信号を車両に送信し、車載制御ユニットは電子キーから受信した状態信号がタングの分離状態を示す場合にバレットモードを設定するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−225976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係るシステムにおいては、電子キーからタングのみが取り外された状態のキー本体とメカニカルキーとを他者に預けることから、他者はキー本体が電池切れになった場合であってもメカニカルキーによってドアの解錠やエンジン始動などを実行することができる。この一方で、車両の所有者はタングのみが手元に残るだけであるから、車両に対する一切の操作を行なうことができずに不都合が生じることになる。
しかも、メカニカルキーを他者に渡すことからバレットモードへの切り替えを検出するためにタングという特別な新たな構成を電子キーに設ける必要が生じ、電子キーの部品点数が増加してしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、煩雑な操作を必要とせずにバレットモードの設定が可能であって、車両の操作が可能なメカニカルキーを所有者の手元に残しつつ、かつ、電子キーの部品点数が増加することを防止しつつ、バレットモードへの切り替えのための状態検出が可能な車両用電子キーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る車両用電子キーシステムは、キーシリンダ(例えば、実施の形態でのキーシリンダ11a)を備える車両(例えば、実施の形態での車両11)と、該車両と通信可能なキー本体(例えば、実施の形態でのキー本体31)および該キー本体に着脱可能であって前記キーシリンダを機械的に回転させるメカニカルキー(例えば、実施の形態でのメカニカルキー32)から成る携帯機(例えば、実施の形態での携帯機12)とを備え、前記車両と前記携帯機との前記通信に応じて前記車両により所定の機能が実行され得る車両用電子キーシステムであって、前記キー本体は、前記メカニカルキーの前記キー本体に対する装着状態および離脱状態を検出するキー検出手段(例えば、実施の形態でのキー検出部47)を備え、前記キー本体は、前記キー検出手段により前記メカニカルキーが前記キー本体から離脱した状態であることが検出されている間は、前記車両と前記携帯機との前記通信に応じて前記車両により実行され得る前記所定の機能のうち一部を制限するバレットモードに移行する。
【0007】
さらに、本発明の第2態様に係る車両用電子キーシステムでは、前記携帯機は、前記バレットモードにおいて制限される機能の実行を指示する制限機能指令信号を前記車両に送信するために操作される制限機能用操作部材(例えば、実施の形態での制限機能用操作スイッチ46)を備え、前記キー検出手段により前記離脱状態が検出されている間は、前記制限機能用操作部材が操作されたことに伴う前記制限機能指令信号の送信を禁止する。
【0008】
さらに、本発明の第3態様に係る車両用電子キーシステムでは、前記携帯機は、前記所定の機能のうちの何れかの実行を指示する指令信号を前記車両に送信するために操作される操作部材(例えば、実施の形態での操作スイッチ45)を備え、前記キー検出手段により前記装着状態が検出されている間に前記操作部材が前記指令信号を前記車両に送信するための操作とは異なる所定の操作パターンで操作された場合には、これ以後における前記バレットモードへの移行を禁止する。
【0009】
さらに、本発明の第4態様に係る車両用電子キーシステムは、前記メカニカルキーは前記車両から電力供給を受けて固有の信号を送信するトランスポンダ(例えば、実施の形態でのトランスポンダ51)を備え、前記車両は、前記メカニカルキーの前記トランスポンダに電力を供給することで通信を行なう車両側トランスポンダ通信手段(例えば、実施の形態でのトランスポンダ通信部22)と、該車両側トランスポンダ通信手段による前記トランスポンダとの通信により前記車両のエンジンを始動可能なエンジン始動手段(例えば、実施の形態での車両制御部24)とを備え、前記キー本体は、前記メカニカルキーが前記キー本体に装着された状態で前記トランスポンダとの通信を行なって通信結果を出力するキー側トランスポンダ通信手段(例えば、実施の形態でのトランスポンダ通信部42)を備え、前記キー検出手段は、前記キー側トランスポンダ通信手段から出力された前記通信結果に基づいて前記メカニカルキーの前記キー本体に対する前記装着状態および前記離脱状態を検出する。
【0010】
さらに、本発明の第5態様に係る車両用電子キーシステムでは、前記キー本体は、前記メカニカルキーの前記キー本体への着脱に応じて前記メカニカルキーと接触することで変位する変位部材(例えば、実施の形態での変位部材61)を備え、前記キー側トランスポンダ通信手段は、前記変位部材の変位に応じて前記トランスポンダとの通信を行なう。
【0011】
さらに、本発明の第6態様に係る車両用電子キーシステムでは、前記キー本体は、前記メカニカルキーの前記キー本体への着脱に応じた電磁気的な変化を検出する検出手段(例えば、実施の形態でのセンサ62)を備え、前記キー側トランスポンダ通信手段は、前記検出手段により前記電磁気的な変化が検出されたときに前記トランスポンダとの通信を行なう。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1態様に係る車両用電子キーシステムによれば、車両用電子キーシステムをバレットモードに移行させるときに通常必要となる操作の一部のみ、つまりメカニカルキーをキー本体から離脱させる操作のみで、バレットモードに移行させることができるとともに、所有者はメカニカルキーを携帯することができるため、操作性を損なうこと無しに、かつ、部品点数を増加させること無しに、利便性を向上させることができる。
【0013】
本発明の第2態様に係る車両用電子キーシステムによれば、制限機能指令信号が不必要に車両に送信されることを防止し、携帯機の消費電力が浪費されることを防止することができる。
【0014】
本発明の第3態様に係る車両用電子キーシステムによれば、メカニカルキーがキー本体に装着されている装着状態においてのみ、バレットモードへの移行禁止と移行許可とを切り換えることができる。これにより、所望の安全性を確保しつつ、メカニカルキーがキー本体から離脱した離脱状態におけるバレットモードへの移行の禁止を任意に設定することができ、利便性をより一層向上させることができる。
【0015】
本発明の第4態様に係る車両用電子キーシステムによれば、携帯機の電源切れなどの非常時用としてメカニカルキーに通常備えられているトランスポンダと、キー本体との通信によりメカニカルキーのキー本体に対する装着状態および離脱状態を検出することで、正規のメカニカルキー以外の物体の装着によってバレットモードが解除されてしまうことを防止することができる。これにより、構成部品を共用化しつつ、所望の安全性を確保することができる。
【0016】
本発明の第5態様に係る車両用電子キーシステムによれば、メカニカルキーのキー本体への着脱が検出されたタイミングでのみ、トランスポンダ通信のために要する電力をキー本体からキー側トランスポンダ通信手段に供給することから、携帯機の消費電力が浪費されることを防止することができる。
【0017】
本発明の第6態様に係る車両用電子キーシステムによれば、メカニカルキーのキー本体への着脱が検出されたタイミングでのみ、トランスポンダ通信のために要する電力をキー本体からキー側トランスポンダ通信手段に供給することから、携帯機の消費電力が浪費されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用電子キーシステムのキー本体およびメカニカルキーを示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用電子キーシステムの構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用電子キーシステムの変位部材の例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両用電子キーシステムのセンサの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の車両用電子キーシステムの一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
この実施の形態による車両用電子キーシステム10は、例えば図1,2に示すように、キーシリンダ11aを備える車両11と、車両11と通信可能な携帯機12とを備えて構成され、車両11と携帯機12との通信に応じて車両11により所定の機能が実行され得るようになっている。
【0020】
車両11は、例えば、無線通信部21と、トランスポンダ通信部22と、各種の車載機器に対する電源であるバッテリ23と、車両制御部24と、車両の駆動源である内燃機関25と、ドアロックユニット26と、トランクロックユニット27とを備えて構成されている。
【0021】
車両11の無線通信部21は、例えば、携帯機12から送信されるRF(Radio Frequency)信号をRFアンテナ(図示略)によって受信すると共に、車両制御部24の制御に応じてLF(Low Frequency)アンテナ(図示略)によってLF信号を携帯機12に送信する。
【0022】
車両11から送信されるLF信号は、例えば、携帯機12に向けて間欠的に送信するリクエスト信号と、携帯機12から送信された指令信号を無線通信部21が受信した場合の受信結果(例えば、受信した指令信号の信号強度など)の信号と、携帯機12から送信された指令信号によって指示される車載機器の動作(例えば、ドアロックユニット26およびトランクロックユニット27の駆動など)の実行有無の信号となどである。
【0023】
トランスポンダ通信部22は、携帯機12のメカニカルキー32のトランスポンダ51に電磁誘導により電力を供給することで通信を行ない、この通信によってメカニカルキー32から受信した固有の信号に含まれる識別コードと、予め記憶している識別コードとが一致すると、内燃機関25の始動を許可する信号を車両制御部24に出力する。
【0024】
車両制御部24は、車両11および車両11に搭載された各種の車載機器を制御するためのCPU(Central Processing Unit)などを備えて構成されている。
【0025】
車両制御部24は、間欠的にLF信号によるリクエスト信号を携帯機12に送信することを無線通信部21に指示する。そして、このリクエスト信号に応答する携帯機12からの応答信号を無線通信部21が受信した場合に、この応答信号に含まれる識別コードと、予め記憶している識別コードとを比較する。そして、受信した識別コードと記憶している識別コードとが一致すると、携帯機12から送信される指令信号あるいは制限機能指令信号によって実行が指示される各種の車載機器の動作の実行を許可する。
【0026】
そして、車両制御部24は、車両11と携帯機12との通信によって無線通信部21が携帯機12から受信したRF信号による指令信号あるいは制限機能指令信号に応じて、指令信号あるいは制限機能指令信号によって実行が指示される各種の車載機器の動作の実行を制御する。
【0027】
なお、携帯機12から送信されるRF信号による指令信号によって指示される車載機器の動作は、例えば、内燃機関25の始動または停止と、ドアロックユニット26の駆動による車両ドア(図示略)の解錠または施錠となどである。
また、携帯機12から送信されるRF信号による制限機能指令信号によって指示される車載機器の動作は、例えば、トランクロックユニット27の駆動によるトランク(図示略)の解錠などである。
【0028】
そして、車両制御部24は、車両11と携帯機12との通信によって無線通信部21が携帯機12から受信したRF信号による信号が、制御モードがバレットモードであることを示す信号である場合には、車両11の所定の機能のうち一部(つまり、制限機能指令信号によって指示される車載機器の動作)を制限して、車両11の所定の機能の実行を制御する。
【0029】
また、車両制御部24は、車両11と携帯機12との通信によって無線通信部21が携帯機12から受信したRF信号による信号が、バレットモードへの移行を禁止することを示す信号である場合には、バレットモードへの移行を禁止し、車両11の所定の機能のうち一部(つまり、制限機能指令信号によって指示される車載機器の動作)の実行を許可する。
【0030】
また、車両制御部24は、車両11と携帯機12のメカニカルキー32のトランスポンダ51との通信に基づきトランスポンダ通信部22から出力される信号(つまり、内燃機関25の始動を許可する信号)に応じて、内燃機関25の始動を制御する。
【0031】
なお、ドアロックユニット26は、携帯機12のキー本体31を携帯する操作者による車両ドアのノブ(図示略)などに対する直接的な接触を検出するセンサ(図示略)を備え、このセンサから出力される検出結果の信号は車両制御部24に入力されている。
また、トランクロックユニット27は、携帯機12のキー本体31を携帯する操作者によるトランクのノブ(図示略)などに対する直接的な接触を検出するセンサ(図示略)を備え、このセンサから出力される検出結果の信号は車両制御部24に入力されている。
【0032】
車両制御部24は、ドアロックユニット26またはトランクロックユニット27から、携帯機12のキー本体31を携帯する操作者の直接的な接触を示す信号を受信した場合には、この信号を、携帯機12に向けて間欠的に送信するリクエスト信号と共に携帯機12に送信することを無線通信部21に指示する。
そして、このリクエスト信号に対する正規の応答信号を無線通信部21が携帯機12から受信した場合には、操作者の直接的な接触に応じた車両11の所定の機能、つまりドアロックユニット26の駆動による車両ドアの解錠および施錠あるいはトランクロックユニット27の駆動によるトランクの解錠および施錠を許可する。一方、このリクエスト信号に対する正規の応答信号を無線通信部21が携帯機12から受信しない場合(つまり、携帯機12が応答信号を送信していない場合)には、操作者の直接的な接触に応じた車両11の所定の機能、つまりバレットモードにおいて制限される車両11の機能、具体的にはトランクロックユニット27の駆動によるトランクの解錠、を制限(例えば、禁止)する。
【0033】
また、ドアロックユニット26およびトランクロックユニット27は、車両ドアおよびトランクの解錠および施錠を統括的に指示するためのスイッチ(図示略)を備え、このスイッチから出力される信号は車両制御部24に入力されている。
【0034】
車両制御部24は、ドアロックユニット26およびトランクロックユニット27から、車両ドアおよびトランクの解錠を統括的に指示する信号を受信した場合には、この信号を、携帯機12に向けて間欠的に送信するリクエスト信号と共に携帯機12に送信することを無線通信部21に指示する。
そして、このリクエスト信号に対する正規の応答信号と共に、制御モードが通常のモードからバレットモードに移行したことを示す信号を無線通信部21が携帯機12から受信した場合には、車両11の所定の機能のうち一部、つまりトランクロックユニット27の駆動によるトランクの解錠を制限(例えば、禁止)し、ドアロックユニット26による車両ドアの解錠は許可する。
【0035】
携帯機12は、キー本体31およびキー本体31に着脱可能であって車両11のキーシリンダ11aを機械的に回転させるメカニカルキー32を備えて構成されている。
【0036】
キー本体31は、例えば、無線通信部41と、トランスポンダ通信部42と、キー本体31に対する電源であるバッテリ43と、携帯機制御部44と、操作スイッチ45と、制限機能用操作スイッチ46と、キー検出部47とを備えて構成されている。
【0037】
携帯機12の無線通信部41は、例えば、車両11から送信されるLF信号をLFアンテナ(図示略)によって受信すると共に、携帯機12に対する所定の操作などに応じた携帯機制御部44の制御により、RFアンテナ(図示略)によってRF信号を車両11に送信する。
なお、携帯機12のLFアンテナは、例えば、直交する3軸に平行に配置されて指向性を有する3個のLFアンテナから構成されている。
【0038】
携帯機12から送信されるRF信号は、例えば、車両11から送信されるリクエスト信号に応答する応答信号と、車両11の各種の車載機器の動作の実行を指示する指令信号あるいは制限機能指令信号と、制御モードが通常のモードあるいはバレットモードの何れかであることを指定する信号と、制御モードが通常のモードからバレットモードへの移行が禁止されていることを示す信号となどである。
なお、携帯機12に対する所定の操作は、例えば、操作スイッチ45あるいは制限機能用操作スイッチ46に対する通常の操作や、操作スイッチ45あるいは制限機能用操作スイッチ46に対する通常の操作とは異なる所定の操作パターンでの操作などである。
【0039】
トランスポンダ通信部42は、キー本体31にメカニカルキー32が装着された状態でメカニカルキー32のトランスポンダ51に電磁誘導により電力を供給することで通信を行ない、この通信結果(例えば、メカニカルキー32から固有の信号を受信したときの受信結果など)の信号をキー検出部47に出力する。
【0040】
携帯機制御部44は、キー本体31を制御するためのCPU(Central Processing Unit)などを備えて構成されている。
【0041】
携帯機制御部44は、車両11から送信されるLF信号によるリクエスト信号を無線通信部41が受信した場合に、このリクエスト信号が正規のリクエスト信号であることを判定すると、制御モードが通常のモードの状態であれば、このリクエスト信号に対して固有の識別コードを有するRF信号による応答信号を車両11に送信することを無線通信部41に指示する。
一方、制御モードがバレットモードの状態であれば、このリクエスト信号に、バレットモードで制限されている車両11の所定の機能のうち一部に関連する信号、例えば携帯機12のキー本体31を携帯する操作者によるトランクのノブに対する直接的な接触を示す信号などが含まれているか否かを判定する。そして、この判定結果が「YES」の場合には、応答信号を車両11に送信することを禁止することを無線通信部41に指示する。一方、この判定結果が「NO」の場合には、応答信号を車両11に送信することを無線通信部41に指示する。
【0042】
そして、携帯機制御部44は、操作スイッチ45あるいは制限機能用操作スイッチ46に対する操作者の操作と、キー検出部47から出力される信号となどに応じて、無線通信部41を制御して車両11の各種の車載機器の動作の実行を指示する指令信号あるいは制限機能指令信号を送信する。
【0043】
なお、操作スイッチ45は、例えば、ドアロックユニット26の駆動による車両ドアの解錠を指示するためのロックボタン45aおよび施錠を指示するためのアンロックボタン45bを備えて構成されている。
制限機能用操作スイッチ46は、例えば、トランクロックユニット27の駆動によるトランクの解錠を指示するためのトランクアンロックボタン46aである。
【0044】
携帯機制御部44は、例えば、操作スイッチ45あるいは制限機能用操作スイッチ46に対する操作者の操作に応じて、車両11の各種の車載機器の動作として車両11の所定の機能の実行を指示する指令信号あるいは制限機能指令信号を車両11に送信することを無線通信部41に指示する。
【0045】
なお、車両11の各種の車載機器の動作としての車両11の所定の機能は、例えば、内燃機関25の始動または停止と、ドアロックユニット26の駆動による車両ドア(図示略)の解錠または施錠と、トランクロックユニット27の駆動によるトランク(図示略)の解錠となどである。
【0046】
そして、携帯機制御部44は、後述するキー検出部47によってメカニカルキー32がキー本体31から離脱した状態であることが検出されている間は、制御モードを、指令信号あるいは制限機能指令信号に応じた車両11の所定の機能のうち一部(つまり、制限機能指令信号に応じた機能)を制限するバレットモードに移行させる。
そして、車両11から間欠的に送信されるLF信号によるリクエスト信号に応答する応答信号を携帯機12から車両11に送信するときに、制御モードが通常のモードからバレットモードに移行したことを示す信号を車両11に送信することを無線通信部41に指示する。
【0047】
このバレットモード時において、携帯機制御部44は、操作スイッチ45に対する操作者の通常の操作に応じた指令信号を車両11に送信することを許可し、制限機能用操作スイッチ46に対する操作者の通常の操作に応じた制限機能指令信号を車両11に送信することを禁止する。
つまり、バレットモードにおいて制限される車両11の所定の機能のうち一部は、トランクロックユニット27の駆動によるトランクの解錠などである。
【0048】
また、携帯機制御部44は、例えば、後述するキー検出部47によってメカニカルキー32がキー本体31に装着された状態であることが検出されている間に、操作スイッチ45あるいは制限機能用操作スイッチ46に対する通常の操作とは異なる所定の操作パターンでの操作が行なわれ場合には、これ以後におけるバレットモードへの移行を禁止する。
そして、車両11から間欠的に送信されるLF信号によるリクエスト信号に応答する応答信号を携帯機12から車両11に送信するときに、バレットモードへの移行が禁止されていることを示す信号を車両11に送信することを無線通信部41に指示する。
【0049】
なお、携帯機制御部44は、例えば、携帯機12から送信された指令信号あるいは制限機能指令信号に応じて車両11から送信された信号(例えば、指令信号あるいは制限機能指令信号によって指示される車載機器の動作の実行を示す信号など)を無線通信部41が受信した場合には、例えば発光体などから成る携帯機インジケータ(図示略)やスピーカ(図示略)などを駆動するアンサーバック動作によって報知をおこなう。
【0050】
また、携帯機制御部44は、後述する変位部材61の変位によって変位部材61から出力される信号に応じて、あるいは、後述する電磁気的な変化を検出するセンサ62から出力される検出結果の信号に応じて、あるいは、後述するリリースボタン63から出力される信号に応じて、トランスポンダ通信部42を駆動し、トランスポンダ通信部42からメカニカルキー32のトランスポンダ51に電磁誘導により電力を供給することで通信を行なわせる。
【0051】
キー検出部47は、メカニカルキー32のキー本体31に対する装着状態および離脱状態を検出する。
キー検出部47は、例えば、トランスポンダ通信部42から出力されたメカニカルキー32のトランスポンダ51に対する通信結果に基づいて、メカニカルキー32のキー本体31に対する装着状態および離脱状態を検出する。
【0052】
変位部材61は、メカニカルキー32のキー本体31への着脱に応じてメカニカルキー32と物理的に接触することで変位する部材であり、所定の変位に応じて信号を出力するスイッチなどの信号出力部61aを備えている。
【0053】
例えば図3(A)に模式的に示す変位部材61は、図1に示すU字状の吊環71を備えるものであって、この吊環71は、メカニカルキー32のキー本体31に対する装着状態ではメカニカルキー32によって押し込まれるようにしてキー本体31の内部に収容され、メカニカルキー32のキー本体31に対する離脱状態ではキー本体31から外部に突出するようにして、キー本体31の内部に設けられたばねなどの付勢部材(図示略)によって付勢されている。
この変位部材61は、メカニカルキー32がキー本体31に装着されたときに吊環71からなる可動部61bが、メカニカルキー32に接触および変位してキー本体31の内部に収容されると、スイッチがONになって信号を出力する。
【0054】
また、例えば図3(B)に模式的に示す変位部材61は、キー本体31の内部においてメカニカルキー32のキープレート32aが挿入される挿入部31aに設けられたスイッチなどである。
この変位部材61は、メカニカルキー32がキー本体31に装着されたときに、可動部61bがメカニカルキー32のキープレート32aに接触して変位すると、スイッチがONになって信号を出力する。
【0055】
また、例えば図3(C)に模式的に示す変位部材61は、メカニカルキー32のキー本体31に対する装着状態でキー本体31とメカニカルキー32とが接触する位置に設けられたスイッチなどである。
この変位部材61は、メカニカルキー32がキー本体31に装着されたときに、可動部61bがメカニカルキー32の所定位置(例えば、図3(C)に示すメカニカルキー32のキーヘッド32bに設けられた突起32cなど)に接触して変位すると、スイッチがONになって信号を出力する。
【0056】
例えば図4に模式的に示すセンサ62は、メカニカルキー32のキー本体31への着脱に応じた電磁気的な変化を検出するものであって、例えば、携帯機12の3個のLFアンテナのうち、メカニカルキー32のキー本体31に対する装着状態でキープレート32aの延在方向に指向性を有するLFアンテナ41aのインピーダンスを検出して、検出結果の信号を出力する。
このセンサ62は、LFアンテナ41aにキープレート32aが接近することによってインダクタンスが変化し、このインダクタンスの変化に伴ってインピーダンスが変化することを利用している。具体的には、LFアンテナ41aに電圧を印加しているときにLFアンテナ41aに流れる電流の電流値を検出し、この電流値の変化を電圧に変換して、この変換により得られる電圧と、LFアンテナ41aに印加している電圧との変化から、インピーダンスの変化を検出する。
【0057】
このセンサ62において、LFアンテナ41aに電圧を印加するタイミングは、常時、あるいは、所定周期毎、あるいは、携帯機12に対する所定の操作などに応じた携帯機制御部44の制御によりRF信号が車両11に送信される時点などに設定可能であって、LFアンテナ41aに電圧を印加することに伴う消費電力に応じて適宜に設定される。なお、この消費電力は、上述した各タイミングの順に小さくなる。
【0058】
リリースボタン63は、メカニカルキー32のキー本体31に対する装着状態においてキー本体31に係合しているメカニカルキー32の係合部32dの係合を解除するために操作されるボタンである。このリリースボタン63は、例えば操作者の押圧操作などで係合が解除されたときと、メカニカルキー32がキー本体31に装着されて係合状態になったときとの、それぞれのタイミングにおいて信号を出力する。
【0059】
この実施形態による車両用電子キーシステム10は上記構成を備えており、次に、この車両用電子キーシステム10の動作例について説明する。
【0060】
先ず、メカニカルキー32がキー本体31から離脱すると、キー検出部47によりメカニカルキー32のキー本体31に対する離脱状態が検出される。そして、携帯機制御部44によって制御モードがバレットモードに移行する。
この状態で、例えば操作者によって制限機能用操作スイッチ46のトランクアンロックボタン46aの操作が実行された場合には、キー本体31の無線通信部41から車両11に制限機能指令信号が送信されることは禁止される。
【0061】
また、制御モードがバレットモードに移行した状態で、例えばキー本体31を携帯する操作者が、車両11のトランクを開放するためのノブに触れると、トランクのノブに対する操作者の直接的な接触があることを示す信号を含むリクエスト信号が車両11から携帯機12に向けて送信される。
そして、このリクエスト信号に対して携帯機12から車両11に向けて応答信号が送信されることは禁止される。そして、リクエスト信号に対する応答信号を受信することができない車両11では、操作者の直接的な接触に応じた車両11の所定の機能、つまりバレットモードにおいて制限される車両11の所定の機能のうち一部であって、トランクロックユニット27の駆動によるトランクの解錠、が禁止される。
【0062】
また、制御モードがバレットモードに移行した状態で、操作者が車両11の車両ドアおよびトランクの解錠を統括的に指示するスイッチを操作すると、車両ドアおよびトランクの解錠を統括的に指示する信号を含むリクエスト信号が車両11から携帯機12に向けて送信される。
そして、このリクエスト信号に対して携帯機12から車両11に向けて応答信号と共に制御モードが通常のモードからバレットモードに移行したことを示す信号が送信される。そして、これらの信号を受信した車両11では、車両11の所定の機能のうち一部、つまりトランクロックユニット27の駆動によるトランクの解錠のみが禁止され、ドアロックユニット26による車両ドアの解錠は許可される。
【0063】
上述したように、本発明の実施形態による車両用電子キーシステム10によれば、車両用電子キーシステム10をバレットモードに移行させるときに通常必要となる操作の一部のみ、つまりメカニカルキー32をキー本体31から離脱させる操作のみで、バレットモードに移行させることができるとともに、所有者はメカニカルキー32を携帯することができるため、操作性を損なうこと無しに、かつ、部品点数を増加させること無しに、利便性を向上させることができる。
【0064】
さらに、メカニカルキー32がキー本体31から離脱している間は、バレットモードで制限された機能の制限を解除した実行を指示するための制限機能用操作スイッチ46が操作されたことに伴う制限機能指令信号の送信を禁止することで、制限機能指令信号が不必要に車両11に送信されることを防止し、携帯機12の消費電力が浪費されることを防止することができる。
【0065】
さらに、メカニカルキー32がキー本体31に装着されている装着状態においてのみ、バレットモードへの移行禁止と移行許可とを切り換えることができることにより、所望の安全性を確保しつつ、メカニカルキー32がキー本体31から離脱した離脱状態におけるバレットモードへの移行の禁止を任意に設定することができ、利便性をより一層向上させることができる。
【0066】
さらに、携帯機12の電源切れなどの非常時用としてメカニカルキー32に通常備えられているトランスポンダ51と、キー本体31との通信によりメカニカルキー32のキー本体31に対する装着状態および離脱状態を検出することで、正規のメカニカルキー32以外の物体の装着によってバレットモードが解除されてしまうことを防止することができる。これにより、構成部品を共用化しつつ、所望の安全性を確保することができる。
【0067】
さらに、メカニカルキー32のキー本体31への着脱が検出されたタイミングに応じて、トランスポンダ通信のために要する電力をキー本体31からメカニカルキー32のトランスポンダ51に供給することから、携帯機12の消費電力が浪費されることを防止することができる。
【0068】
なお、上述した実施の形態において、キー本体31の制限機能用操作スイッチ46は省略されてもよい。この場合には、バレットモードにおいて、上述したように車両11側に設けられた制限機能用操作スイッチ46に対応する部材(例えば、車両11のトランクを開放するためのノブなど)に対する操作者の操作に応じた車両11の所定の機能のうち一部(例えば、トランクロックユニット27の駆動によるトランクの解錠など)が制限されればよい。
【0069】
なお、上述した実施の形態においては、バレットモードにおいて制限される所定の機能のうち一部を、トランクロックユニット27の駆動によるトランクの解錠としたが、これに限定されず、さらに、他の機能が追加されてもよい。例えば車両11のグローブボックスの解錠および施錠を切り替えるグローブボックスロックユニットの駆動によるグローブボックスの解錠などが含まれてもよい。この場合には、キー本体31の制限機能用操作スイッチ46としてグローブボックスロックユニットの駆動によるグローブボックスの解錠を指示するためのグローブボックスアンロックボタンが備えられてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 車両用電子キーシステム
11 車両
11a キーシリンダ
12 携帯機
21 無線通信部
22 トランスポンダ通信部(車両側トランスポンダ通信手段)
24 車両制御部(エンジン始動手段)
31 キー本体
32 メカニカルキー
41 無線通信部
42 トランスポンダ通信部(キー側トランスポンダ通信手段)
44 携帯機制御部
45 操作スイッチ(操作部材)
46 制限機能用操作スイッチ(制限機能用操作部材)
47 キー検出部(キー検出手段)
51 トランスポンダ
61 変位部材
62 センサ(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーシリンダを備える車両と、該車両と通信可能なキー本体および該キー本体に着脱可能であって前記キーシリンダを機械的に回転させるメカニカルキーから成る携帯機とを備え、前記車両と前記携帯機との前記通信に応じて前記車両により所定の機能が実行され得る車両用電子キーシステムであって、
前記キー本体は、前記メカニカルキーの前記キー本体に対する装着状態および離脱状態を検出するキー検出手段を備え、
前記キー本体は、前記キー検出手段により前記メカニカルキーが前記キー本体から離脱した状態であることが検出されている間は、前記車両と前記携帯機との前記通信に応じて前記車両により実行され得る前記所定の機能のうち一部を制限するバレットモードに移行することを特徴とする車両用電子キーシステム。
【請求項2】
前記携帯機は、
前記バレットモードにおいて制限される機能の実行を指示する制限機能指令信号を前記車両に送信するために操作される制限機能用操作部材を備え、
前記キー検出手段により前記離脱状態が検出されている間は、前記制限機能用操作部材が操作されたことに伴う前記制限機能指令信号の送信を禁止することを特徴とする請求項1に記載の車両用電子キーシステム。
【請求項3】
前記携帯機は、
前記所定の機能のうちの何れかの実行を指示する指令信号を前記車両に送信するために操作される操作部材を備え、
前記キー検出手段により前記装着状態が検出されている間に前記操作部材が前記指令信号を前記車両に送信するための操作とは異なる所定の操作パターンで操作された場合には、これ以後における前記バレットモードへの移行を禁止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用電子キーシステム。
【請求項4】
前記メカニカルキーは前記車両から電力供給を受けて固有の信号を送信するトランスポンダを備え、
前記車両は、前記メカニカルキーの前記トランスポンダに電力を供給することで通信を行なう車両側トランスポンダ通信手段と、該車両側トランスポンダ通信手段による前記トランスポンダとの通信により前記車両のエンジンを始動可能なエンジン始動手段とを備え、
前記キー本体は、前記メカニカルキーが前記キー本体に装着された状態で前記トランスポンダとの通信を行なって通信結果を出力するキー側トランスポンダ通信手段を備え、
前記キー検出手段は、前記キー側トランスポンダ通信手段から出力された前記通信結果に基づいて前記メカニカルキーの前記キー本体に対する前記装着状態および前記離脱状態を検出することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の車両用電子キーシステム。
【請求項5】
前記キー本体は、前記メカニカルキーの前記キー本体への着脱に応じて前記メカニカルキーと接触することで変位する変位部材を備え、
前記キー側トランスポンダ通信手段は、前記変位部材の変位に応じて前記トランスポンダとの通信を行なうことを特徴とする請求項4に記載の車両用電子キーシステム。
【請求項6】
前記キー本体は、前記メカニカルキーの前記キー本体への着脱に応じた電磁気的な変化を検出する検出手段を備え、
前記キー側トランスポンダ通信手段は、前記検出手段により前記電磁気的な変化が検出されたときに前記トランスポンダとの通信を行なうことを特徴とする請求項4に記載の車両用電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−87528(P2012−87528A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234872(P2010−234872)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】