説明

車両用駆動装置

【課題】車両用駆動装置、特にFF式ハイブリッド車用の駆動装置として、コンパクトで、かつ各構成メンバーが強固に結合された装置を提供する。
【解決手段】軸心6が車幅方向に延びるように配置されたエンジン4と、相互の軸心6,10が一致するようにエンジン4に直結された変速機8と、該変速機8の出力部に一体的に設けられた差動装置20と、該差動装置20から車幅方向のエンジン4側に延び、先端に駆動輪が取り付けられた第1の駆動軸30と、差動装置20から車幅方向のエンジン4とは反対側に延び、先端に駆動輪が取り付けられた第2の駆動軸40と、第1の駆動軸30上に配置されたモータ60と、を備えた車両用駆動装置2において、第1の駆動軸30上の差動装置20とモータ60との間に、モータ60よりも外径が小さな小径部分を有する減速機70を、該小径部分がエンジン4における変速機8との結合部104の近傍に位置するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンとモータを備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用駆動源としてエンジンとモータとが搭載された所謂ハイブリッド車が実用化されている。このハイブリッド車の駆動装置は、主たる構成メンバーとしてエンジンと変速機とに加えてモータが備えられるため大型化しやすく、これを如何にコンパクトに構成するかが課題となり、特にモータの配置が課題となる。
【0003】
特許文献1には、エンジンの軸線を車幅方向に沿って配置したFF式(フロントエンジン・フロントドライブ式)のハイブリッド車において、一方の駆動軸上にモータを配置した構成が開示されている。
【0004】
この特許文献1に記載された駆動装置は、軸心が車幅方向に沿って配置されたエンジン(EG)と、相互の軸心が一致するようにエンジンに直結された変速機(ベルト式無段変速機構5)と、該変速機の出力部に一体的に設けられた差動装置(ディファレンシャル機構25)と、を備え、該差動装置から車幅方向のエンジン側に延びる駆動軸(右アクスルシャフトRA)上にモータ(EM)が配置されている。
【0005】
一般的に、FF車用の差動装置は、変速機から後方へ張り出すように配置されるため、差動装置の側方で且つエンジンの後方の部分にデッドスペースが生じる。この点に関して、特許文献1の発明では、エンジン後方の前記スペースにモータが配置されるため、スペースの有効利用を図ることができ、駆動装置のコンパクト化に貢献することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−206085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、FF式のハイブリッド車に関して、エンジン、変速機、差動装置およびモータを備えた駆動装置は、コンパクト化を実現することに加えて、これらの構成メンバーが強固に組み合わされて一体化されることが求められる。特に、モータの回転を減速する減速機が設けられる場合、駆動装置の各構成メンバーをどのように配置して結合するかが課題となる。
【0008】
そこで、本発明は、車両用駆動装置、特にFF式ハイブリッド車用の駆動装置として、コンパクトで、かつ各構成メンバーが強固に結合された装置を提供することを、基本的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願の第1の発明(請求項1に記載の発明)は、
軸心が車幅方向に延びるように配置されたエンジンと、
相互の軸心が一致するように前記エンジンに直結された変速機と、
該変速機の出力部に一体的に設けられた差動装置と、
該差動装置から車幅方向の前記エンジン側に延び、先端に駆動輪が取り付けられた第1の駆動軸と、
前記差動装置から車幅方向の前記エンジンとは反対側に延び、先端に駆動輪が取り付けられた第2の駆動軸と、
前記第1の駆動軸上に配置されたモータと、を備えた車両用駆動装置であって、
前記第1の駆動軸上の前記差動装置と前記モータとの間に、前記モータよりも外径が小さな小径部分を有する減速機が、該小径部分が前記エンジンにおける前記変速機との結合部の近傍に位置するように配置されていることを特徴とする。
【0010】
本願の第2の発明(請求項2に記載の発明)に係る車両用駆動装置は、第1の発明において、
前記減速機は、第1の駆動軸上に並設された複数の遊星歯車機構で構成され、これらの遊星歯車機構の外径は、モータ側に配置されたものから差動装置側に配置されたものにかけて順次小径とされていることを特徴とする。
【0011】
本願の第3の発明(請求項3に記載の発明)に係る車両用駆動装置は、第2の発明において、
減速機を構成する複数の遊星歯車機構は、リングギヤが固定要素、サンギヤが入力要素、プラネタリキャリアが出力要素とされ、最もモータ側に配置された遊星歯車機構のサンギヤがモータに結合され、最も差動装置側に配置された遊星歯車機構のプラネタリキャリアが差動装置の入力部に結合されていると共に、隣接する遊星歯車機構間で、モータ側に位置する遊星歯車機構のプラネタリキャリアが差動装置側に位置する遊星歯車機構のサンギヤに連結されていることを特徴とする。
【0012】
本願の第4の発明(請求項4に記載の発明)に係る車両用駆動装置は、第1〜第3の発明において、
前記エンジンは、前記変速機との結合部近傍において、軸心から前記減速機に向かう方向へ張り出す張り出し部を備え、該張り出し部の張り出し量は前記変速機との合わせ面に近づくに連れて段階的または連続的に大きくなっていることを特徴とする。
【0013】
本願の第5の発明(請求項5に記載の発明)に係る車両用駆動装置は、第1〜第4の発明において、
前記第1の駆動軸の少なくとも一部と前記減速機と前記モータとが一体化されてなるアッセンブリ体と、
前記変速機と前記差動装置とが一体化されてなる変速機ユニットと、を備え、
前記アッセンブリ体は、前記第1の駆動軸の先端を前記差動装置に連結することにより、前記変速機ユニットに組み付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願の第1の発明によれば、差動装置から車幅方向のエンジン側に延びる駆動軸上にモータが配置されることで、差動装置の側方で且つエンジン近傍のスペースを有効利用することができ、車両用駆動装置のコンパクト化を図ることができる。また、減速機の小径部分がエンジンにおける変速機との結合部の近傍に配置されるため、エンジンと減速機との干渉を回避しつつ、エンジンの変速機との結合部近傍において、軸心から減速機へ向かう方向へのエンジンの張り出し量を大きくすることが可能になる。そのため、エンジンと変速機との結合面積を増大させて、エンジンと変速機との結合剛性の向上を図ることができる。
【0015】
本願の第2の発明によれば、減速機を構成する複数の遊星歯車機構は、モータ側から差動装置に向かって、順次小径とされているので、エンジンの変速機近傍を軸心から減速機に向かう方向へ張り出させる場合に、その張り出し量を、変速機に近づくに連れて段階的または連続的に大きくすることが可能になる。そのため、エンジンと変速機との結合剛性を効率的に高めることができる。
【0016】
本願の第3の発明によれば、モータの回転は、複数の遊星歯車機構により順次減速されて差動装置に伝達されることになる。したがって、減速機全体として大きな減速比を実現でき、モータ側から所定の駆動力を供給する際に該モータの小型化が可能となる。
【0017】
本願の第4の発明によれば、軸心から減速機に向かう方向へのエンジンの張り出し量が、変速機に近づくに連れて段階的または連続的に大きくなっているため、エンジンと変速機との結合剛性を効率的に向上させることができる。
【0018】
本願の第5の発明によれば、予め製造されたアッセンブリ体を変速機ユニットに組み付けることで、モータと減速機の組み付けを同時に行うことができるため、優れた組み立て性を得ることができる。特に、アッセンブリ体は、組み付け方向先端部がモータよりも小径であるため、組み付け時にアッセンブリ体の先端部が他の部材に干渉し難く、組み付け性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用駆動装置を示す部分断面図である。
【図2】図1に示す駆動装置の要部を示す拡大断面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1のB−B線断面図である。
【図5】図1のC−C線断面図である。
【図6】減速機とモータとが一体化されてなるアッセンブリ体を変速機ユニットに組み付ける態様を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るFF式のハイブリッド車用駆動装置2を示す部分断面図である。
【0022】
図1に示すように、駆動装置2は、軸心6が車幅方向に延びるように配置されたエンジン4と、相互の軸心6,10が一致するようにエンジン4に直結された変速機8と、該変速機8の出力部に一体的に設けられたデファレンシャル装置(差動装置)20と、該デファレンシャル装置20から車幅方向のエンジン4側に延び、先端に駆動輪(前輪)が取り付けられた右側の駆動軸(第1の駆動軸)30と、デファレンシャル装置20から車幅方向のエンジン4とは反対側に延び、先端に駆動輪(前輪)が取り付けられた左側の駆動軸(第2の駆動軸)40と、右側の駆動軸30上に配置されたモータ60と、を備えている。
【0023】
エンジン4の結合部104(図4参照)と変速機8の結合部(図5参照)は、例えば枠状のエンドプレート16を介して結合されているが、本発明は、エンジン4と変速機8とを直接結合することを妨げるものでない。
【0024】
変速機8とデファレンシャル装置20とは相互に一体化されており、これにより、変速機8とデファレンシャル装置とを有する変速機ユニット12が構成されている。変速機8とデファレンシャル装置20は、共にトランスアクスルケース14に収容されている。
【0025】
なお、本発明において、変速機8の構成は特に限定されるものでなく、自動変速機、手動変速機または無段変速機のいずれを使用してもよい。
【0026】
デファレンシャル装置20は、変速機8の後方に配置されている。この配置によりデファレンシャル装置20の側方で且つエンジン4の後方の部分にスペースが生じるが、該スペースにはモータ60が配置されており、スペースの有効利用が図られている。
【0027】
右側の駆動軸30は、デファレンシャル装置20の出力部に連結されたジョイントシャフト32と、自在継手36を介してジョイントシャフト32に連結され、先端に車輪が取り付けられた車軸34とで構成されている。同様に、左側の駆動軸40は、デファレンシャル装置20の出力部に連結されたジョイントシャフト42と、自在継手46を介してジョイントシャフト42に連結され、先端に車輪が取り付けられた車軸44とで構成されている。
【0028】
図2に示すように、変速機8の出力ギヤ18は、デファレンシャル装置20のデフケース22に固定されたリングギヤ24に噛合されており、これにより、変速機8からデファレンシャル装置20に動力が伝達されるようになっている。デフケース22を貫通するピニオンシャフト25には、互いに対向する一対のピニオンギヤ26,27がそれぞれ枢着されており、これらのピニオンギヤ26,27に跨って左右のサイドギヤ28,29がそれぞれ噛合されている。また、デフケース22には、左右のシャフト挿通部52,54がサイドギヤ28,29に対応して設けられている。各シャフト挿通部52,54にはジョイントシャフト32,42が挿通され、該ジョイントシャフト32,42の先端は、サイドギヤ28,29にスプライン嵌合されている。これにより、変速機8からデファレンシャル装置20に伝達された動力は、走行状況に応じた回転差となるように左右のジョイントシャフト32,42に伝達される。
【0029】
右側のジョイントシャフト32上において、デファレンシャル装置20とモータ60との間には減速機70が配置されている。モータ60と減速機70と右側のジョイントシャフト32とは相互に一体化されており、これにより、モータ60と減速機70とジョイントシャフト32とを有するアッセンブリ体58が構成されている。
【0030】
アッセンブリ体58では、モータ60のハウジング61と減速機70のハウジング71とが相互に連結され、減速機70のハウジング71と、減速機70の出力側(デファレンシャル装置20側)の先端部を覆う筒状のカバー101とが相互に連結されている。これにより、これらのハウジング61,71及びカバー101が相互に一体化されたアッセンブリケース102が構成されている。
【0031】
アッセンブリ体58には、アッセンブリケース102内を循環する潤滑系と、該潤滑系を冷却するためにエンジン4の冷却系統から導かれた水路112とが設けられている。図3に示すように、水路112には、潤滑系の油路を有するオイルクーラ110が設けられており、該オイルクーラ110において潤滑系が冷却されるようになっている。
【0032】
図2に戻って、モータ60は、ハウジング61に固定されたステータ62と、ステータ62の内側に回転自在に設けられたロータ64と、ロータ64と一体的に回転するようにロータ64の内側に固定された出力軸66とを有する。ステータ62は、磁性体からなるステータコアにコイルが巻回されて構成されている。ロータ64は、磁性体で構成されており、ステータ62に電力が供給されたときに生じる磁力により回転する。出力軸66は、右側ジョイントシャフト32に対して回転自在に外嵌されている。
【0033】
減速機70は、エンジン4における変速機8との結合部104の近傍に配置されており、その出力側(車幅方向デファレンシャル装置20側)の端部において最も結合部104に近接している。
【0034】
減速機70は、第1の遊星歯車機構80と第2の遊星歯車機構90とを有する。これらの遊星歯車機構80,90は、右側ジョイントシャフト32上においてモータ60側からデファレンシャル装置20側に向かって第1の遊星歯車機構80、第2の遊星歯車機構90の順で並設されている。
【0035】
下記の通り、第1及び第2の遊星歯車機構80,90では、リングギヤ82,92が固定要素、サンギヤ84,94が入力要素、プラネタリキャリア88,98が出力要素とされている。
【0036】
先ず、第1の遊星歯車機構80について説明する。リングギヤ82は、ハウジング71にスプライン嵌合されることにより回転不能となっており、第1の遊星歯車機構80の固定要素として機能するようになっている。サンギヤ84は、右側ジョイントシャフト32に対して回転自在に外嵌されている。また、サンギヤ84は、車幅方向のモータ60側に延びる筒状部85を有し、該筒状部85は、モータ60の出力軸66にスプライン嵌合されている。これにより、サンギヤ84は、モータ60の出力軸66と共に回転し、第1の遊星歯車機構80の入力要素として機能するようになっている。プラネタリキャリア88は、第2の遊星歯車機構90のサンギヤ94にスプライン嵌合されており、第1の遊星歯車機構80の出力要素として機能するようになっている。
【0037】
続いて、第2の遊星歯車機構90について説明する。第2の遊星歯車機構90のリングギヤ92は、第1の遊星歯車機構80のリングギヤ82と一体に設けられている。そのため、リングギヤ92は、回転不能であり、第2の遊星歯車機構90の固定要素として機能するようになっている。サンギヤ94は、右側ジョイントシャフト32に対して回転自在に外嵌されている。また、サンギヤ94は、第1の遊星歯車機構80のプラネタリキャリア88にスプライン嵌合されているため、該プラネタリキャリア88と共に回転し、第2の遊星歯車機構90の入力要素として機能するようになっている。プラネタリキャリア98は、車幅方向のデファレンシャル装置20側へ延びる延長部99を有し、該延長部99は、デフケース22の右側シャフト挿通部52にスプライン嵌合されており、第2の遊星歯車機構90の出力要素として機能するようになっている。また、延長部99は、エンジン4の結合部104に隣接して配置されている。
【0038】
かかる構成によれば、モータ60の動力は第1の遊星歯車機構80により減速され、この減速された動力は、さらに第2の遊星歯車機構90により減速されて、デファレンシャル装置20に伝達される。そのため、モータ60の動力伝達に関して、十分な減速比を確保することができる。よって、モータ60の小型化を図ることができ、駆動装置2のコンパクト化に貢献することができる。
【0039】
モータ60から減速機70を介してデファレンシャル装置20に伝達されるモータ側の動力は、デファレンシャル装置20において変速機8から伝達されるエンジン側の動力と合流し、この合流した動力により、左右のジョイントシャフト32,42が駆動される。
【0040】
以下、本実施形態の特徴である減速機70の外径及び配置、並びに、これに対応したエンジン4の結合部104近傍の構成について説明する。
【0041】
先ず、減速機70の外径及び配置について説明する。
【0042】
第1の遊星歯車機構80の外径すなわちリングギヤ82の外径は、モータ60の外径すなわちステータ62の外径よりも小径である。また、第2の遊星歯車機構90のリングギヤ92の外径は、第1の遊星歯車機構80のリングギヤ82の外径よりも小径である。さらに、第2の遊星歯車機構90では、車幅方向に関してリングギヤ92のデファレンシャル装置20側先端よりもデファレンシャル装置20側にプラネタリキャリア98が配置されており、プラネタリキャリア98の外径はリングギヤ92の外径よりも小径である。さらにまた、プラネタリキャリア98の外径は、車幅方向のモータ60側先端部において最大であり、延長部99においてはモータ60側先端部よりも著しく小さくなっている。
【0043】
かかる減速機70の各構成メンバーの外径に対応して、減速機70のハウジング71の外径は、モータ60のハウジング61との連結部において該ハウジング61の外径に等しく、且つ、車幅方向に関してモータ60側からデファレンシャル装置20側に向かうに連れて段階的に小さくなっている。
【0044】
また、減速機70の出力部である延長部99を覆うカバー101の外径は、減速機70のハウジング71の最小径部の外径よりも小さい。さらに、カバー101は、アッセンブリケース102において最もエンジン4の結合部104に近接する部分である。
【0045】
つまり、アッセンブリケース102の外径は、車幅方向のデファレンシャル装置20側に向かうに連れて段階的に小さくなっており、エンジン4の結合部104との隣接部において最小となっている。よって、アッセンブリケース102の外径は、図3に示すエンジン4の中央部の近傍に比べて、図4に示すエンジン4の結合部104近傍の方が著しく小さくなっている。
【0046】
かかる減速機70の構成に対応して、エンジン4の結合部104近傍は次のように構成されている。
【0047】
エンジン4の結合部104近傍では、上述のように減速機70の外径が小さくなっていることによりスペースが確保されている。該スペースを利用して、エンジン4は、その結合部104の近傍において、軸心6から減速機70に向かう方向へ張り出す張り出し部108を備えている。該張り出し部108の張り出し量は、減速機70の外形に対応して、変速機8との合わせ面106に近づくに連れて段階的に大きくなっている。これにより、エンジン4と減速機70との干渉を回避しつつ、合わせ面106の面積の拡大を図ることができるため、エンジン4と変速機8との結合剛性を高めることができる。
【0048】
図6は、アッセンブリ体58を変速機ユニット12に組み付ける態様を示す。
【0049】
アッセンブリ体58の組み付けの際は、右側ジョイントシャフト32の先端部をデファレンシャル装置20のシャフト挿通部52に差し込んでサイドギヤ28に連結するとともに、減速機70の延長部99をシャフト挿通部52に連結することで、アッセンブリ体58が変速機ユニット12に組み付けられる。このとき、アッセンブリケース102の外径は、車幅方向のデファレンシャル装置20側に向かうに連れて小さくなっているため、アッセンブリ体58の組み付け方向先端部がエンジン4に干渉し難く、組み付け性が良好となっている。
【0050】
なお、アッセンブリ体58が変速機ユニット12に組み付けられた後、アッセンブリケース102は、図示しないブラケットによりエンジン4に固定される。
【0051】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0052】
例えば、上述の実施形態では、減速機70の外径が、モータ60との連結部を除く全ての部分においてモータ60よりも小径である場合について説明したが、本発明において、減速機70外径は、エンジン4における変速機8との結合部104の近傍において、モータ60よりも小径であればよい。
【0053】
また、上述の実施形態では、減速機70を2つの遊星歯車機構80,90で構成する場合について説明したが、本発明は、減速機70を3つ以上の遊星歯車機構で構成することを妨げるものでない。
【0054】
なお、減速機70を3つ以上の遊星歯車機構で構成する場合、これらの遊星歯車機構の外径は、モータ60側に配置されたものからデファレンシャル装置20側に配置されたものにかけて順に小さくなるようにすればよい。
【0055】
また、この場合、3つ以上の遊星歯車機構のうち最もモータ60側に配置された遊星歯車機構のサンギヤがモータ60に結合され、最もデファレンシャル装置20側に配置された遊星歯車機構のプラネタリキャリアがデファレンシャル装置20の入力部に結合されると共に、隣接する遊星歯車機構間で、モータ60側に位置する遊星歯車機構のプラネタリキャリアがデファレンシャル装置20側に位置する遊星歯車機構のサンギヤに連結されるようにすればよい。
【0056】
さらに、上述の実施形態では、エンジン4の張り出し部108の張り出し量が変速機8との合わせ面106に近づくに連れて「段階的」に大きくなる構成について説明したが、張り出し部108の張り出し量は、合わせ面106に近づくに連れて「連続的」に大きくなるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0057】
2:駆動装置、4:エンジン、6:エンジンの軸心、8:変速機、10:変速機の軸心、12:変速機ユニット、14:トランスアクスルケース、16:エンドプレート、20:デファレンシャル装置(差動装置)、22:デフケース、30:右側(エンジン側)の駆動軸、40:左側(エンジンとは反対側)の駆動軸、58:アッセンブリ体、60:モータ、61:モータのハウジング、70:減速機、71:減速機のハウジング、80:第1の遊星歯車機構、82:リングギヤ、84:サンギヤ、86:プラネタリギヤ、88:プラネタリキャリア、90:第2の遊星歯車機構、92:リングギヤ、94:サンギヤ、96:プラネタリギヤ、98:プラネタリキャリア、101:カバー、102:アッセンブリケース、104:エンジンにおける変速機との結合部、106:合わせ面、108:張り出し部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心が車幅方向に延びるように配置されたエンジンと、
相互の軸心が一致するように前記エンジンに直結された変速機と、
該変速機の出力部に一体的に設けられた差動装置と、
該差動装置から車幅方向の前記エンジン側に延び、先端に駆動輪が取り付けられた第1の駆動軸と、
前記差動装置から車幅方向の前記エンジンとは反対側に延び、先端に駆動輪が取り付けられた第2の駆動軸と、
前記第1の駆動軸上に配置されたモータと、を備えた車両用駆動装置であって、
前記第1の駆動軸上の前記差動装置と前記モータとの間に、前記モータよりも外径が小さな小径部分を有する減速機が、該小径部分が前記エンジンにおける前記変速機との結合部の近傍に位置するように配置されていることを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
前記減速機は、第1の駆動軸上に並設された複数の遊星歯車機構で構成され、これらの遊星歯車機構の外径は、モータ側に配置されたものから差動装置側に配置されたものにかけて順次小径とされていることを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
減速機を構成する複数の遊星歯車機構は、リングギヤが固定要素、サンギヤが入力要素、プラネタリキャリアが出力要素とされ、最もモータ側に配置された遊星歯車機構のサンギヤがモータに結合され、最も差動装置側に配置された遊星歯車機構のプラネタリキャリアが差動装置の入力部に結合されていると共に、隣接する遊星歯車機構間で、モータ側に位置する遊星歯車機構のプラネタリキャリアが差動装置側に位置する遊星歯車機構のサンギヤに連結されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記エンジンは、前記変速機との結合部近傍において、軸心から前記減速機に向かう方向へ張り出す張り出し部を備え、該張り出し部の張り出し量は前記変速機との合わせ面に近づくに連れて段階的または連続的に大きくなっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第1の駆動軸の少なくとも一部と前記減速機と前記モータとが一体化されてなるアッセンブリ体と、
前記変速機と前記差動装置とが一体化されてなる変速機ユニットと、を備え、
前記アッセンブリ体は、前記第1の駆動軸の先端を前記差動装置に連結することにより、前記変速機ユニットに組み付けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−31761(P2011−31761A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180649(P2009−180649)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】