説明

車両用駆動装置

【課題】エンジン再始動に伴う前進クラッチの締結ショックを抑制しつつ、エンジン停止時においてもニュートラル制御を可能とする。
【解決手段】エンジン11と駆動輪19f,19rとの間の動力伝達径路18には、前進時に締結される前進クラッチ48が設けられる。この前進クラッチ48の締結油室63にはスプリング65が組み込まれ、制御油圧が低下するアイドリングストップ時にも前進クラッチ48はバネ力によって滑り状態または締結状態に保持される。これにより、エンジン再始動に伴う前進クラッチ48の締結ショックを抑制することが可能となる。さらに、動力伝達径路18にはセレクトレバー44aに連結される噛合クラッチ15が設けられる。これにより、滑り状態または締結状態に保持される前進クラッチ48を備えていても、手動操作によって噛合クラッチ15を解放することでニュートラル制御が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン停止時に付勢手段によって滑り状態または締結状態に保持される摩擦係合機構を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンの燃料消費量を削減するため、停車時にエンジンを自動的に停止させるようにしたアイドリングストップ車両が開発されている。このアイドリングストップ車両は、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動的に停止させる一方、所定の始動条件が成立したときにエンジンを自動的に再始動させている。また、エンジンおよび電動モータを搭載するハイブリッド車両においても、停車時にエンジンを自動的に停止させることが一般的である。
【0003】
ところで、車両の動力伝達系には、複数の油圧クラッチや油圧ブレーキ(以下、油圧ブレーキを含めて油圧クラッチという)を備えた自動変速機が搭載されている。また、自動変速機にクラッチ用の制御油圧を供給するため、自動変速機にはエンジンに駆動されるオイルポンプが接続されている。しかしながら、アイドリングストップ車両においては、停車時にエンジンおよびオイルポンプが停止することから、締結中の油圧クラッチは締結を維持できずに解放されていた。そして、エンジン再始動に伴ってオイルポンプが再び駆動されると、解放中の油圧クラッチが急速に締結されることから、摩擦係合機構である油圧クラッチに締結ショックが発生することになっていた。
【0004】
そこで、アイドリングストップ時における油圧クラッチの解放を回避するため、電動オイルポンプやアキュムレータを搭載することにより、エンジン停止時の油圧低下を回避することも考えられるが、電動オイルポンプ等を搭載することはアイドリングストップ車両の高コスト化を招く要因となる。このため、油圧クラッチの制御油圧が低下した場合であっても、油圧クラッチが完全に解放されることのないように、油圧クラッチのピストンにバネを組み付けるようにした動力伝達装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。このように、油圧クラッチのピストンをバネによって付勢することにより、オイルポンプを停止させても油圧クラッチが完全に解放されることはなく、エンジン再始動時における油圧クラッチの締結ショックを抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−9973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の動力伝達装置においては、油圧クラッチのピストンをバネによって締結側に付勢する構造であるため、油圧クラッチには解放時に作動油を供給するためのキャンセル油室が設けられている。すなわち、油圧クラッチを完全に解放するためには、キャンセル油室に作動油を供給することが必要となっていた。このため、オイルポンプが停止するエンジン停止時においては、油圧クラッチのキャンセル油室に作動油を供給することができず、油圧クラッチが滑り状態または締結状態に保持されることから、車両をニュートラル状態に制御することが不可能となっていた。
【0007】
本発明の目的は、エンジン始動時における摩擦係合機構の締結ショックを抑制するとともに、エンジン停止時においても車両用駆動装置をニュートラル状態に制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用駆動装置は、所定の停止条件下で自動的に停止されて所定の始動条件下で自動的に再始動されるエンジンを備えた車両用駆動装置であって、駆動輪に動力を伝達する際には走行レンジに操作され、前記駆動輪に対する動力の伝達を遮断する際には非走行レンジに操作される手動操作部と、前記エンジンと前記駆動輪との間の動力伝達径路に設けられ、ピストンが係合方向に移動して摩擦板を係合する締結状態と、前記ピストンが解放方向に移動して前記摩擦板の係合を解除する解放状態とに切り換えられる摩擦係合機構と、前記エンジンに駆動され、前記ピストンを係合方向と解放方向とに移動させる作動油を前記摩擦係合機構に供給するオイルポンプと、前記摩擦係合機構に組み付けられて前記ピストンを係合方向に付勢し、前記オイルポンプが停止するエンジン停止時に前記摩擦係合機構を滑り状態または締結状態に保持する付勢手段と、前記動力伝達径路に設けられるとともに前記手動操作部に連結され、運転手によって非走行レンジが選択されたときには前記動力伝達径路を切断する解放状態に切り換えられる一方、運転手によって走行レンジが選択されたときには前記動力伝達径路を接続する締結状態に切り換えられる噛合クラッチとを有し、前記摩擦係合機構が滑り状態または締結状態となるエンジン停止時に、運転手によって非走行レンジが選択されたときには前記噛合クラッチを用いて前記エンジンと前記駆動輪とを切り離すことを特徴とする。
【0009】
本発明の車両用駆動装置は、前記噛合クラッチは、駆動噛合部材とこれに対向する従動噛合部材とを備えるとともに、前記手動操作部に連動して前記従動噛合部材を前記駆動噛合部材側に押し込むロッド部材を備え、前記ロッド部材は、先端部材とこれに弾性部材を介して同軸上に配置される基端部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の車両用駆動装置は、走行レンジである前進走行レンジが選択されたときに、前記ロッド部材は前記従動噛合部材に接触する位置まで押し込まれることを特徴とする。
【0011】
本発明の車両用駆動装置は、前記噛合クラッチは駆動噛合部材とこれに対向する従動噛合部材とを備え、前記従動噛合部材を前記駆動噛合部材に向けて付勢する締結油室が前記従動噛合部材の背面側に区画されることを特徴とする。
【0012】
本発明の車両用駆動装置は、走行レンジである後退走行レンジが選択されたときに、前記締結油室に作動油が供給されることを特徴とする。
【0013】
本発明の車両用駆動装置は、走行レンジである前進走行レンジが選択されたときに、前記締結油室に作動油が供給されることを特徴とする。
【0014】
本発明の車両用駆動装置は、前記噛合クラッチは、前記従動噛合部材の外周部にスプライン結合部を介して連結されるドラム部材を備え、前記従動噛合部材と前記ドラム部材との間には、前記スプライン結合部の一端側と他端側とに位置して一対のオイルシールが組み付けられ、前記締結油室は、前記オイルシールを境に前記従動噛合部材と前記ドラム部材との間に区画されることを特徴とする。
【0015】
本発明の車両用駆動装置は、前記噛合クラッチは、前記摩擦係合機構よりも前記エンジン側に配置されることを特徴とする。
【0016】
本発明の車両用駆動装置は、前記噛合クラッチは、前記動力伝達径路に設けられる変速機構よりも前記エンジン側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、動力伝達径路に設けられる摩擦係合機構に対し、ピストンを係合方向に付勢する付勢手段を組み付けている。これにより、エンジン停止時にオイルポンプが停止しても、摩擦係合機構を滑り状態または締結状態に保持することができ、エンジン再始動時における摩擦係合機構の締結ショックを抑制することが可能となる。さらに、動力伝達径路には、手動操作部に連結される噛合クラッチが設けられている。これにより、エンジン停止時においても噛合クラッチを用いて動力伝達径路を切断することができ、車両用駆動装置をニュートラル状態に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態である車両用駆動装置を示す概略図である。
【図2】車両用駆動装置の一部を制御系とともに示す概略図である。
【図3】噛合クラッチの構造および制御系を示す概略図である。
【図4】(a)〜(c)は噛合クラッチの作動状況を示す説明図である。
【図5】(a)および(b)は噛合クラッチの作動状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である車両用駆動装置10を示す概略図である。図1に示すように、車両用駆動装置10は、エンジン11、トルクコンバータ12、無段変速機(変速機構)13、および前後進切換機構14を有している。エンジン11にはトルクコンバータ12および噛合クラッチ15を介して無段変速機13が連結されており、この無段変速機13には前後進切換機構14およびフロントデファレンシャル機構16を介して前輪(駆動輪)19fが連結されている。また、前後進切換機構14にはトランスファクラッチ17を介して後輪(駆動輪)19rが連結されている。すなわち、噛合クラッチ15および前後進切換機構14は、エンジン11と駆動輪19f,19rとの間の動力伝達径路18に設けられており、噛合クラッチ15および前後進切換機構14を介して、エンジン11から駆動輪19f,19rに動力が伝達されている。
【0020】
図示する車両用駆動装置10はアイドリングストップ機能を有しており、所定の停止条件が成立したときにはエンジン11を自動的に停止させる一方、所定の始動条件が成立したときにはエンジン11を自動的に再始動させている。エンジン11の停止条件としては、停車状態(車速=0km/h)であり、且つブレーキペダルが踏み込まれること等が挙げられる。また、エンジン11の始動条件としては、ブレーキペダルの踏み込みが解除されることや、アクセルペダルが踏み込まれること等が挙げられる。なお、エンジン11を始動回転させるスタータモータとしては、始動時にピニオンが突出してエンジン11の図示しないリングギヤに噛み合う方式のスタータモータであっても良く、一方向クラッチを介してリングギヤに常時噛み合う方式のスタータモータであっても良い。さらに、オルタネータをスタータモータとして機能させても良い。
【0021】
エンジン11に連結されるトルクコンバータ12は、クランク軸20に連結されるポンプインペラ21と、このポンプインペラ21に対向するとともにタービン軸22に連結されるタービンランナ23とを備えている。なお、トルクコンバータ12には、フロントカバー24とタービンランナ23とを直結するロックアップクラッチ25が設けられている。また、無段変速機13は、プライマリ軸30とこれに平行となるセカンダリ軸31とを有している。プライマリ軸30にはプライマリプーリ32が設けられており、プライマリプーリ32の背面側にはプライマリ油室33が区画されている。また、セカンダリ軸31にはセカンダリプーリ34が設けられており、セカンダリプーリ34の背面側にはセカンダリ油室35が区画されている。さらに、プライマリプーリ32およびセカンダリプーリ34には駆動チェーン36が巻き掛けられている。プライマリ油室33およびセカンダリ油室35の油圧を調整することにより、プーリ溝幅を変化させて駆動チェーン36の巻き付け径を変化させることができ、プライマリ軸30からセカンダリ軸31に対する無段変速が可能となる。
【0022】
トルクコンバータ12から無段変速機13にエンジン動力を伝達するため、トルクコンバータ12と無段変速機13との間には噛合クラッチ15および歯車列40が設けられている。ドグクラッチとも言われる噛合クラッチ15は、タービン軸22に連結される駆動噛合部材41と、これに対向する従動噛合部材42とを備えている。駆動噛合部材41には噛合歯41aが形成されており、従動噛合部材42には噛合歯41aに対向する噛合歯42aが形成されている。さらに、従動噛合部材42にはリンク機構43を介して操作ユニット(手動操作部)44が機械的に連結されており、操作ユニット44のセレクトレバー44aを操作(セレクト操作)することで従動噛合部材42を軸方向にスライドさせることが可能となる。また、歯車列40は、従動噛合部材42に連結される駆動ギヤ40aと、プライマリ軸30に連結される従動ギヤ40bとを備えている。
【0023】
運転手に操作されるセレクトレバー44aは、走行レンジであるDレンジ(前進走行レンジ)やRレンジ(後退走行レンジ)、非走行レンジであるPレンジ(駐車レンジ)やNレンジ(ニュートラルレンジ)に操作可能となっている。そして、セレクトレバー44aをDレンジやRレンジに操作することにより、従動噛合部材42を駆動噛合部材41に向けて移動させることが可能となる。これにより、噛合歯41aと噛合歯42aとを噛み合わせることができ、動力伝達径路18を接続する締結状態に噛合クラッチ15を切り換えることが可能となる。一方、セレクトレバー44aをPレンジやNレンジに操作することにより、従動噛合部材42を駆動噛合部材41から離すことが可能となる。これにより、噛合歯41aと噛合歯42aとの噛み合いを解除することができ、動力伝達径路18を切断する解放状態に噛合クラッチ15を切り換えることが可能となる。すなわち、駆動輪19f,19rに動力を伝達する際には、DレンジやRレンジにセレクト操作が為されて噛合クラッチ15が締結される一方、駆動輪19f,19rに対する動力の伝達を遮断する際には、PレンジやNレンジにセレクト操作が為されて噛合クラッチ15が解放されることになる。
【0024】
また、無段変速機13から駆動輪19f,19rに向けてエンジン動力を出力するため、セカンダリ軸31には歯車列45を介して前後進切換機構14が接続されている。歯車列45は、セカンダリ軸31に固定される駆動ギヤ45aと、前後進切換機構14の前後進入力軸46に固定される従動ギヤ45bとを備えている。さらに、前後進切換機構14は、ダブルピニオン式の遊星歯車列47、前進クラッチ48および後退ブレーキ49によって構成されている。前後進切換機構14の遊星歯車列47は、前後進入力軸46に固定されるサンギヤ50と、これの径方向外方に回転自在に設けられるリングギヤ51とを備えている。サンギヤ50とリングギヤ51との間には相互に噛み合う一対のプラネタリピニオンギヤ52,53が複数設けられている。サンギヤ50とリングギヤ51とを連結するプラネタリピニオンギヤ52,53はキャリア54によって回転自在に支持されており、このキャリア54は前後進出力軸55に固定されている。
【0025】
また、前後進切換機構14の前進クラッチ(摩擦係合機構)48は、前後進入力軸46に固定されるクラッチドラム60と、キャリア54に固定されるクラッチハブ61とを備えている。クラッチドラム60とクラッチハブ61との間には複数枚の摩擦板60a,61aが設けられており、摩擦板60aはクラッチドラム60の内周面に支持され、摩擦板61aはクラッチハブ61の外周面に支持されている。また、クラッチドラム60内には摩擦板60a,61aを押圧する油圧ピストン(ピストン)62が摺動自在に設けられている。また、クラッチドラム60に収容される油圧ピストン62の一方面側には締結油室63が区画される一方、油圧ピストン62の他方面側には解放油室64が区画されている。さらに、締結油室63にはスプリング(付勢手段)65が組み込まれており、スプリング65によって油圧ピストン62は係合方向に付勢されている。なお、係合方向とは油圧ピストン62が摩擦板60a,61aに近づく方向であり、後述する解放方向とは油圧ピストン62が摩擦板60a,61aから離れる方向である。
【0026】
そして、前進クラッチ48の締結油室63に作動油を供給して解放油室64から作動油を排出することにより、油圧ピストン62を係合方向に移動させることが可能となる。これにより、油圧ピストン62を押し当てて摩擦板60a,61aを係合状態とすることができ、前進クラッチ48はクラッチドラム60とクラッチハブ61とを一体に回転させる締結状態となる。一方、締結油室63から作動油を排出して解放油室64に作動油を供給することにより、油圧ピストン62を解放方向に移動させることが可能となる。これにより、油圧ピストン62を離して摩擦板60a,61aの係合状態を解除することができ、前進クラッチ48はクラッチドラム60とクラッチハブ61とを切り離す解放状態となる。また、締結油室63と解放油室64との双方から作動油が排出された場合であっても、油圧ピストン62はスプリング65によって係合方向に付勢されることから、前進クラッチ48は滑り状態または締結状態に制御される。なお、前進クラッチ48の滑り状態とは、摩擦板60a,61a間に設定される遊びが無くなる状態であり、摩擦板60a,61a同士が完全に締結される前の状態である。すなわち、前進クラッチ48の滑り状態とは、摩擦板60a,61a同士が軽く接触している状態であり、前進クラッチ48が解放状態から締結状態に移行する過程の状態である。
【0027】
さらに、前後進切換機構14の後退ブレーキ49は、図示しないケースに固定されるブレーキドラム70と、リングギヤ51に固定されるブレーキハブ71とを有している。ブレーキドラム70とブレーキハブ71との間には複数枚の摩擦板70a,71aが装着されており、摩擦板70aはブレーキドラム70の内周面に支持され、摩擦板71aはブレーキハブ71の外周面に支持されている。また、ブレーキドラム70内には摩擦板70a,71aを押圧する油圧ピストン72が摺動自在に収容されている。さらに、油圧ピストン72の一方面側には締結油室73が区画されており、この締結油室73に作動油を供給することにより、油圧ピストン72を係合方向に移動させることができ、後退ブレーキ49を締結状態に切り換えることが可能となる。なお、後退ブレーキ49の油圧ピストン72には、図示しないリターンスプリングが組み付けられており、締結油室73から作動油を排出することにより、後退ブレーキ49はバネ力によって解放状態に切り換えられる。
【0028】
なお、前進走行時には、後退ブレーキ49を解放した状態のもとで前進クラッチ48が締結される。これにより、前後進入力軸46と前後進出力軸55とが直結されるため、前後進入力軸46に入力されるエンジン動力は、そのままの回転方向で前後進出力軸55に伝達される。一方、後退走行時には、前進クラッチ48を解放した状態のもとで後退ブレーキ49が締結される。これにより、リングギヤ51が固定されるため、前後進入力軸46に入力されるエンジン動力は、逆向きの回転方向で前後進出力軸55に伝達される。このように、動力伝達径路18に設けられる前進クラッチ48および後退ブレーキ49を制御することにより、前後進出力軸55の回転方向を切り換えることが可能となっている。
【0029】
ここで、図2は車両用駆動装置10の一部を制御系とともに示す概略図である。図2に示すように、車両用駆動装置10には、前後進切換機構14等に対して作動油を供給するため、トロコイドポンプ等のオイルポンプ74が設けられている。また、前進クラッチ48の締結油室63および解放油室64、後退ブレーキ49の締結油室73に作動油を供給制御するため、車両用駆動装置10内には複数のソレノイドバルブを備えたバルブユニット75が設けられている。オイルポンプ74とバルブユニット75とは油路76を介して接続されており、オイルポンプ74から吐出される作動油は、バルブユニット75を経て前進クラッチ48や後退ブレーキ49等に供給される。オイルポンプ74には従動スプロケット77bが連結されており、トルクコンバータ12のポンプインペラ21には駆動スプロケット77aが連結されている。また、駆動スプロケット77aと従動スプロケット77bとはチェーン77cを介して連結されている。このように、エンジン11とオイルポンプ74とは直結されており、エンジン11の駆動状態に連動してオイルポンプ74が作動している。なお、オイルポンプ74から吐出される作動油は、バルブユニット75を経てトルクコンバータ12や無段変速機13に供給されることはいうまでもない。
【0030】
また、エンジン11やバルブユニット75等を制御するため、車両用駆動装置10には制御ユニット80が設けられている。この制御ユニット80には、セレクトレバー44aの操作位置を検出するインヒビタスイッチ81、アクセルペダルの操作状況を検出するアクセルペダルセンサ82、ブレーキペダルの操作状況を検出するブレーキペダルセンサ83、車速を検出する車速センサ84、運転手に操作されるイグニッションスイッチ85等が接続されている。そして、制御ユニット80は、各種センサ等からの情報に基づき車両状態を判定し、エンジン11やバルブユニット75等に対して制御信号を出力する。なお、制御ユニット80は、制御信号等を演算するCPUを備えるとともに、制御プログラム、演算式、マップデータ等を格納するROMや、一時的にデータを格納するRAMを備えている。
【0031】
前述したように、前進クラッチ48に対して油圧ピストン62を係合方向に付勢するスプリング65を組み込むようにしたので、アイドリングストップに伴って制御油圧が低下した場合であっても前進クラッチ48を滑り状態または締結状態に保持することができ、エンジン再始動に伴う前進クラッチ48の締結ショックを抑制することが可能となる。さらに、セレクト操作に連動する噛合クラッチ15を動力伝達径路18に設けるようにしたので、エンジン停止時であってもセレクトレバー44aをNレンジに操作することにより、噛合クラッチ15を解放してエンジン11と駆動輪19f,19rとを切り離すことが可能となる。すなわち、前進クラッチ48はバネ力によって滑り状態または締結状態に保持されることから、制御油圧を得ることのできないエンジン停止時においては、前進クラッチ48を解放することが不可能であり、車両用駆動装置をニュートラル状態に切り換えることが不可能であった。そこで、本発明の車両用駆動装置10においては、エンジン11と駆動輪19f,19rとの間の動力伝達径路18に、セレクト操作によって解放される噛合クラッチ15を設けている。これにより、エンジン停止時であっても、噛合クラッチ15を解放して車両用駆動装置10をニュートラル状態に制御することができ、車両の牽引作業等を安全に行うことが可能となる。
【0032】
続いて、噛合クラッチ15の構造および制御系について説明する。ここで、図3は噛合クラッチ15の構造および制御系を示す概略図である。図3に示すように、噛合クラッチ15は、タービン軸22に連結される駆動噛合部材41と、駆動ギヤ40aに固定されるクラッチドラム(ドラム部材)90とを備えている。クラッチドラム90の内周面にはスプライン歯91aが形成されており、クラッチドラム90に収容される従動噛合部材42の外周面にはスプライン歯91aに噛み合うスプライン歯91bが形成されている。すなわち、互いに噛み合うスプライン歯91a,91bによってスプライン結合部91が構成されており、従動噛合部材42の外周部にはスプライン結合部91を介してクラッチドラム90が連結されている。このように、クラッチドラム90内には軸方向に移動自在に従動噛合部材42が収容されており、従動噛合部材42は駆動噛合部材41に噛み合う前進位置と駆動噛合部材41から離れる後退位置とに移動することになる。また、駆動噛合部材41と従動噛合部材42との間には、従動噛合部材42を後退位置に向けて付勢するリターンスプリング92が設けられている。
【0033】
噛合クラッチ15の従動噛合部材42を前進位置と後退位置とに作動させるため、クラッチドラム90の中心部に形成される貫通孔93にはクラッチロッド(ロッド部材)94が摺動自在に挿入されている。このクラッチロッド94は先端部材94aと基端部材94bとを備えており、先端部材94aと基端部材94bとの間には弾性部材であるスプリング94cが組み込まれている。このようなクラッチロッド94を軸方向に作動させるため、クラッチロッド94と操作ユニット44とはリンク機構43を介して連結されている。リンク機構43は、セレクトレバー44aに連結される第1リンクロッド43a、基端部材94bに連結されるリンクレバー43b、リンクレバー43bに連結される第2リンクロッド43c等によって構成されている。また、第1リンクロッド43aと第2リンクロッド43cとの間にはマニュアルプレート43dが設けられており、第1リンクロッド43aの動作はマニュアルプレート43dを介して第2リンクロッド43cに伝達される。すなわち、運転手によって手動操作されるセレクトレバー44aの動作は、第1リンクロッド43aからマニュアルプレート43dを介して第2リンクロッド43cに伝達された後に、第2リンクロッド43cからリンクレバー43bを介してクラッチロッド94に伝達されている。ここで、図3に示すように、セレクトレバー44aは、Pレンジに対応するPレンジ位置Pp、Rレンジに対応するRレンジ位置Pr、Nレンジに対応するNレンジ位置Pn、Dレンジに対応するDレンジ位置Pdに操作可能となっている。そして、図3に矢印Aで示すように、セレクトレバー44aをPレンジ側に操作することにより、クラッチドラム90からクラッチロッド94を引き抜く方向に作動させることが可能となる。一方、図3に矢印Bで示すように、セレクトレバー44aをDレンジ側に操作することにより、クラッチドラム90に対してクラッチロッド94を挿し込む方向に作動させることが可能となる。
【0034】
また、図3に示すように、クラッチドラム90の中心部には環状凸部95が形成されており、このクラッチドラム90に収容される従動噛合部材42には環状凸部95に対応する円形凹部96が形成されている。従動噛合部材42の外周面にはオイルシール97が組み付けられており、従動噛合部材42の円形凹部96の内周面にはオイルシール98が組み付けられている。このように、従動噛合部材42に対して一対のオイルシール97,98を組み付けることにより、クラッチドラム90と従動噛合部材42との間にはオイルシール97,98を境に締結油室99が区画される。また、クラッチドラム90には締結油室99に開口するクラッチ油路100が形成されており、クラッチ油路100にはバルブユニット75からの延びる分岐油路101が接続されている。クラッチ油路100に接続される分岐油路101は、バルブユニット75内のクラッチ圧制御弁102とマニュアル弁103とを接続する油路104から分岐する構造となっている。さらに、図3に示すように、オイルシール97はスプライン結合部91の一端側に位置して設けられる一方、オイルシール98はスプライン結合部91の他端側に位置して設けられている。これにより、従動噛合部材42の背面側に区画される締結油室99内には、スプライン結合部91が配置されるようになっている。
【0035】
バルブユニット75には、ライン圧制御弁105、クラッチ圧制御弁102、マニュアル弁103等が組み込まれている。オイルポンプ74から吐出された作動油は、ライン圧制御弁105を介して基本油圧に調圧された後に、クラッチ圧制御弁102を介して前進クラッチ48や後退ブレーキ49の作動状態に応じて調圧される。このように、クラッチ圧制御弁102によって調圧された作動油は、セレクトレバー44aに連動して切り換えられるマニュアル弁103を介して、前進クラッチ48の締結油室63または後退ブレーキ49の締結油室73に供給されることになる。また、クラッチ圧制御弁102は制御ユニット80によって制御されており、Dレンジにセレクト操作が為された場合には、前進クラッチ48を締結する作動油がクラッチ圧制御弁102によって調圧され、Rレンジにセレクト操作が為された場合には、後退ブレーキ49を締結する作動油がクラッチ圧制御弁102によって調圧される。すなわち、前進クラッチ48や後退ブレーキ49を締結するDレンジやRレンジが選択された場合には、クラッチ圧制御弁102とマニュアル弁103とを接続する油路104に作動油が供給される一方、前進クラッチ48および後退ブレーキ49を解放するPレンジやNレンジが選択された場合には、クラッチ圧制御弁102とマニュアル弁103とを接続する油路104から作動油が排出されることになる。したがって、DレンジやRレンジが選択された場合には、分岐油路101およびクラッチ油路100を経て締結油室99に作動油が供給される一方、PレンジやNレンジが選択された場合には、クラッチ油路100および分岐油路101を経て締結油室99の作動油がクラッチ圧制御弁102から排出される。
【0036】
以下、セレクト操作によって締結状態と解放状態とに切り換えられる噛合クラッチ15の作動状況について説明する。図4および図5は噛合クラッチ15の作動状況を示す説明図である。なお、図4および図5に記載される白抜きの矢印は動力伝達径路を示している。図4(a)に示すように、セレクト操作によってPレンジが選択された場合には、クラッチロッド94の先端部材94aは従動噛合部材42から離れた状態となる。また、前進クラッチ48および後退ブレーキ49を解放するPレンジが選択されるため、噛合クラッチ15の締結油室99から作動油は排出された状態となる。このように、セレクト操作によってPレンジが選択された場合には、リターンスプリング92によって従動噛合部材42は後退位置に移動し、噛合クラッチ15は解放状態に切り換えられることになる。
【0037】
また、図4(b)に示すように、セレクト操作によってRレンジが選択された場合には、クラッチロッド94の先端部材94aは従動噛合部材42から離れた状態となる。しかしながら、後退ブレーキ49を締結するRレンジが選択されるため、噛合クラッチ15の締結油室99にはクラッチ圧制御弁102からの作動油が供給された状態となる。このように、セレクト操作によってRレンジが選択された場合には、作動油によって従動噛合部材42は前進位置に押し込まれ、噛合クラッチ15は締結状態に切り換えられることになる。
【0038】
さらに、図4(c)に示すように、セレクト操作によってNレンジが選択された場合には、クラッチロッド94の先端部材94aは従動噛合部材42から離れた状態となる。また、前進クラッチ48および後退ブレーキ49を解放するNレンジが選択されるため、噛合クラッチ15の締結油室99から作動油は排出された状態となる。このように、セレクト操作によってNレンジが選択された場合には、リターンスプリング92によって従動噛合部材42は後退位置に移動し、噛合クラッチ15は解放状態に切り換えられることになる。
【0039】
続いて、図5(a)に示すように、セレクト操作によってDレンジが選択された場合には、クラッチドラム90に対してクラッチロッド94が押し込まれ、先端部材94aはスプリング94cを圧縮しながら従動噛合部材42に接触した状態となる。そして、図5(b)に示すように、駆動噛合部材41と従動噛合部材42とが相対回転し、対向する噛合歯41a,42aが互いに噛み合う位置になると、スプリング94cのバネ力によって従動噛合部材42は前進位置に押し込まれ、噛合クラッチ15は締結状態に切り換えられることになる。このように、クラッチロッド94に対してスプリング94cを組み込むことにより、噛合クラッチ15の締結を待たずにセレクトレバー44aをDレンジ位置まで操作することが可能となる。すなわち、スプリング94cを組み込むことで先端部材94aを従動噛合部材42に押し付けながら追従させることが可能となり、噛合クラッチ15の噛み待ち状態を作り出すことが可能となる。これにより、セレクトレバー44aを操作する運転手に違和感を与えることなく、噛合クラッチ15を締結状態に切り換えることが可能となる。
【0040】
さらに、図5(a)および(b)に示すように、前進クラッチ48を締結するDレンジが選択されることから、噛合クラッチ15の締結油室99にはクラッチ圧制御弁102からの作動油が供給された状態となる。すなわち、従動噛合部材42の押し込みを油圧によってアシストすることができるため、セレクトレバー44aを操作する際の操作力を軽減することが可能となる。また、噛合クラッチ15が締結状態に切り換えられた後も、油圧によって従動噛合部材42が前進位置に押し込まれることから、噛合クラッチ15の噛み合いが外れてしまうことがなく、噛合クラッチ15の信頼性を向上させることが可能となる。しかも、噛合クラッチ15の締結油室99内にはスプライン結合部91が位置していることから、締結油室99内の作動油を用いてスプライン結合部91を潤滑することも可能となる。
【0041】
なお、前述の説明では、セレクト操作によってRレンジが選択された場合に、締結油室99に供給される作動油だけで噛合クラッチ15を締結しているが、これに限られることはなく、クラッチロッド94を従動噛合部材42に接触するまで押し込むことで噛合クラッチ15を締結しても良い。また、セレクト操作によってDレンジが選択された場合に、クラッチロッド94を従動噛合部材42に接触するまで押し込むことで噛合クラッチ15を締結しているが、これに限られることはなく、締結油室99に供給される作動油だけで噛合クラッチ15を締結しても良い。さらに、セレクト操作によってDレンジが選択された場合に、油圧によって従動噛合部材42の押し込みをアシストしているが、これに限られることはなく、セレクトレバー44aの操作力だけで従動噛合部材42を押し込むようにしても良い。
【0042】
また、前述の説明では、無段変速機13よりも駆動輪19f,19r側に前後進切換機構14を配置しているが、これに限られることはなく、動力伝達径路18上の他の位置に前後進切換機構14を配置しても良い。また、前述の説明では、前進クラッチ48よりもエンジン11側に噛合クラッチ15を配置しているが、これに限られることはなく、前進クラッチ48よりも駆動輪19f,19r側に噛合クラッチ15を配置しても良い。さらに、無段変速機13よりもエンジン11側に噛合クラッチ15を配置しているが、これに限られることはなく、無段変速機13よりも駆動輪19f,19r側に噛合クラッチ15を配置しても良い。前進クラッチ48や噛合クラッチ15は、エンジン11と駆動輪19f,19rとの間の動力伝達径路18上に配置すれば良く、他の機構に対する前後の位置関係が問われるものではない。なお、イグニッション操作によるエンジン始動を考慮した場合には、エンジン11から回転体を切り離して始動性を向上させるため、噛合クラッチ15をエンジン11に近づけて配置することが望ましい。特に、変速機構が無段変速機13である場合には、イグニッション操作によるエンジン始動時に、制御油圧が大きく低下している無段変速機13を回転させることがないように、無段変速機13よりもエンジン11側に噛合クラッチ15を配置することが好ましい。
【0043】
また、前述の説明では、前後進切換機構14の前進クラッチ48に対してスプリング65を組み付けているが、これに限られることはなく、前後進切換機構14の後退ブレーキ(摩擦係合機構)49に対して油圧ピストン72を係合方向に付勢するスプリングを組み付けても良い。これにより、後退走行時にアイドリングストップ制御が実行される車両においても、エンジン再始動時における後退ブレーキ49の締結ショックを抑制することが可能となる。なお、前進クラッチ48と後退ブレーキ49との双方に対し、油圧ピストン62,72を係合方向に付勢するスプリング65を組み付けても良い。
【0044】
また、前述の説明では、車両用駆動装置10には変速機構としてチェーンドライブ式の無段変速機13が搭載されているが、これに限られることはなく、変速機構としてベルトドライブ式やトラクションドライブ式の無段変速機を搭載しても良く、変速機構として遊星歯車式や平行軸式の自動変速機を搭載しても良い。なお、変速機構として自動変速機を採用する場合には、前進発進時や後退発進時に締結される摩擦クラッチ(摩擦係合機構)や摩擦ブレーキ(摩擦係合機構)に対して、油圧ピストンを係合方向に付勢するスプリングが組み付けられる。
【0045】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前述の説明では、手動操作部として操作ユニット44のセレクトレバー44aを用いているが、これに限られることなく、パドルによってセレクト操作を行うパドル式の手動操作部、ダイヤルによってセレクト操作を行うダイヤル式の手動操作部、もしくは押ボタンによってセレクト操作を行う押ボタン式の手動操作部であっても良い。また、オイルポンプ74としてトロコイドポンプを用いているが、これに限られることはなく、他の形式の内接型ギヤポンプであっても良く、外接型ギヤポンプであっても良い。また、図示する車両用駆動装置10は、四輪駆動用の車両用駆動装置であるが、これに限られることなく、前進駆動用や後輪駆動用の車両用駆動装置であっても良い。なお、本発明の車両用駆動装置10を、動力源としてエンジンと電動モータとを備えたハイブリッド車両に適用しても良いことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0046】
10 車両用駆動装置
11 エンジン
13 無段変速機(変速機構)
15 噛合クラッチ
18 動力伝達径路
19f 前輪(駆動輪)
19r 後輪(駆動輪)
41 駆動噛合部材
42 従動噛合部材
44 操作ユニット(手動操作部)
44a セレクトレバー(手動操作部)
48 前進クラッチ(摩擦係合機構)
60a,61a 摩擦板
62 油圧ピストン(ピストン)
65 スプリング(付勢手段)
74 オイルポンプ
90 クラッチドラム(ドラム部材)
91 スプライン結合部
94 クラッチロッド(ロッド部材)
94a 先端部材
94b 基端部材
94c スプリング(弾性部材)
97,98 オイルシール
99 締結油室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の停止条件下で自動的に停止されて所定の始動条件下で自動的に再始動されるエンジンを備えた車両用駆動装置であって、
駆動輪に動力を伝達する際には走行レンジに操作され、前記駆動輪に対する動力の伝達を遮断する際には非走行レンジに操作される手動操作部と、
前記エンジンと前記駆動輪との間の動力伝達径路に設けられ、ピストンが係合方向に移動して摩擦板を係合する締結状態と、前記ピストンが解放方向に移動して前記摩擦板の係合を解除する解放状態とに切り換えられる摩擦係合機構と、
前記エンジンに駆動され、前記ピストンを係合方向と解放方向とに移動させる作動油を前記摩擦係合機構に供給するオイルポンプと、
前記摩擦係合機構に組み付けられて前記ピストンを係合方向に付勢し、前記オイルポンプが停止するエンジン停止時に前記摩擦係合機構を滑り状態または締結状態に保持する付勢手段と、
前記動力伝達径路に設けられるとともに前記手動操作部に連結され、運転手によって非走行レンジが選択されたときには前記動力伝達径路を切断する解放状態に切り換えられる一方、運転手によって走行レンジが選択されたときには前記動力伝達径路を接続する締結状態に切り換えられる噛合クラッチとを有し、
前記摩擦係合機構が滑り状態または締結状態となるエンジン停止時に、運転手によって非走行レンジが選択されたときには前記噛合クラッチを用いて前記エンジンと前記駆動輪とを切り離すことを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用駆動装置において、
前記噛合クラッチは、駆動噛合部材とこれに対向する従動噛合部材とを備えるとともに、前記手動操作部に連動して前記従動噛合部材を前記駆動噛合部材側に押し込むロッド部材を備え、
前記ロッド部材は、先端部材とこれに弾性部材を介して同軸上に配置される基端部材とを備えることを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用駆動装置において、
走行レンジである前進走行レンジが選択されたときに、前記ロッド部材は前記従動噛合部材に接触する位置まで押し込まれることを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用駆動装置において、
前記噛合クラッチは駆動噛合部材とこれに対向する従動噛合部材とを備え、前記従動噛合部材を前記駆動噛合部材に向けて付勢する締結油室が前記従動噛合部材の背面側に区画されることを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項5】
請求項4記載の車両用駆動装置において、
走行レンジである後退走行レンジが選択されたときに、前記締結油室に作動油が供給されることを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項6】
請求項4または5記載の車両用駆動装置において、
走行レンジである前進走行レンジが選択されたときに、前記締結油室に作動油が供給されることを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の車両用駆動装置において、
前記噛合クラッチは、前記従動噛合部材の外周部にスプライン結合部を介して連結されるドラム部材を備え、
前記従動噛合部材と前記ドラム部材との間には、前記スプライン結合部の一端側と他端側とに位置して一対のオイルシールが組み付けられ、
前記締結油室は、前記オイルシールを境に前記従動噛合部材と前記ドラム部材との間に区画されることを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両用駆動装置において、
前記噛合クラッチは、前記摩擦係合機構よりも前記エンジン側に配置されることを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両用駆動装置において、
前記噛合クラッチは、前記動力伝達径路に設けられる変速機構よりも前記エンジン側に配置されることを特徴とする車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−202448(P2012−202448A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65752(P2011−65752)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】