説明

車両用駆動装置

【課題】減速用遊星歯車装置のサンギヤの振れに起因する騒音や振動の発生を抑制することができる車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】減速用遊星歯車装置24の第2サンギヤS2は、第2ロータシャフト70のサンギヤ嵌合部70bに嵌合され、減速用遊星歯車装置24の第2キャリヤCA2は、軸中心線C方向の第2モータジェネレータMG2側の一端部すなわち第1キャリヤ部材78がトランスアクスルケース16の壁部16aにより支持され、他端部すなわち第2キャリヤ部材80が第2ロータシャフト70により第7ラジアル玉軸受74を介して支持されている。よって、第2サンギヤS2の振れに起因してその第2サンギヤS2と複数の第2ピニオンP2との歯当たりが悪化して騒音や振動が発生することを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用駆動装置に係り、特に、その車両用駆動装置において発生する騒音や振動を抑制するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1乃至3には、各種の遊星歯車装置が記載されている。また特許文献4には、第2モータ・ジェネレータの減速機として機能する減速用の遊星歯車装置を備えたハイブリッド車両用の駆動装置が記載されている。特許文献4の減速用遊星歯車装置は、前記第2モータ・ジェネレータに連結されたサンギヤとトランスアクスルケースに固定されたキャリヤと環状部材(出力部材)に設けられたリングギヤとを有して構成されている。このような減速用遊星歯車装置は、ハイブリッド車両用の駆動装置に限らず、例えば電気自動車用の駆動装置にも電動機の減速機として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−19271号公報
【特許文献2】特開2006−77885号公報
【特許文献3】特開平7−280042号公報
【特許文献4】特開2004−116737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の車両用駆動装置において、電動機は、その電動機の軸中心線方向に離隔した一対の軸受を介してケースの壁部により回転可能に両端部が支持されたロータシャフトを有して構成されている。そして、上記ロータシャフトは、そのロータシャフトの両端部のうちの減速用遊星歯車装置側の端部がケースの壁部を通して延び出す片持状のサンギヤ嵌合部を有しており、減速用遊星歯車装置のサンギヤはその片持状のサンギヤ嵌合部に嵌合されている。
【0005】
ここで、電動機のロータが偏心しその偏心の影響でロータシャフトのうちの前記一対の軸受間に位置する中間部が径方向に撓みながら回転する場合には、前記片持状のサンギヤ嵌合部およびそれに嵌合されたサンギヤもその撓みに起因して例えば円錐面状に振れながら回転することとなる。そのような場合に、サンギヤとそのサンギヤに噛み合わされてキャリヤにより支持された複数のピニオンとの歯当たりが悪化することで騒音や振動が発生する可能性があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、減速用遊星歯車装置のサンギヤの振れに起因して発生する騒音や振動を抑制することができる車両用駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)電動機に連結されたサンギヤとケースに固定されたキャリヤと出力部材に設けられたリングギヤとを有し、前記電動機の減速機として機能する減速用遊星歯車装置を備えた車両用駆動装置であって、(b)前記電動機は、その電動機の軸中心線方向に離隔した第1軸受および第2軸受によって回転可能に両端部が支持されたロータシャフトを有し、(c)前記ロータシャフトは、そのロータシャフトの両端部のうちの前記ケース側の端部からそのケースを通して延び出す片持状のサンギヤ嵌合部を有し、(d)前記サンギヤは、前記ロータシャフトのサンギヤ嵌合部に嵌合され、(e)前記キャリヤは、そのキャリヤの軸中心線方向の前記電動機側の一端部が前記ケースにより支持され、他端部が前記ロータシャフトにより第3軸受を介して間接的に支持されていることにある。
【0008】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、(a)前記出力部材は、外周側に出力歯車が設けられた円筒状部材であり、(b)前記減速用遊星歯車装置の前記電動機とは反対側において前記ロータシャフトと同心に設けられてエンジンの出力軸に連結されたダンパ装置と、前記出力部材の内周側において前記減速用遊星歯車装置の前記ダンパ装置側に隣接して設けられ、そのダンパ装置から動力伝達軸を介して伝達された前記エンジンの動力を前記動力伝達軸の外周側に配置された第2の電動機と前記出力部材とに分配する動力分配用遊星歯車装置とを備えていることにある。
【発明の効果】
【0009】
請求項1にかかる発明の車両用駆動装置においては、減速用遊星歯車装置のサンギヤは、前記ロータシャフトのサンギヤ嵌合部に嵌合され、減速用遊星歯車装置のキャリヤは、そのキャリヤの軸中心線方向の前記電動機側の一端部が前記ケースにより支持され、他端部が前記ロータシャフトにより第3軸受を介して間接的に支持される。このようにすれば、例えば電動機のロータの偏心の影響などを受けてロータシャフトの長手方向の中間部が径方向に撓みながら回転することにより片持状のサンギヤ嵌合部およびそれに嵌合されたサンギヤが例えば円錐面状に振れながら回転する場合には、上記片持状のサンギヤ嵌合部またはサンギヤに支持されたキャリヤもそれらサンギヤ嵌合部およびサンギヤに追随して径方向に移動することとなる。そのため、サンギヤとそのサンギヤに噛み合わされてキャリヤにより支持された複数のピニオンとの噛合状態が悪化することなく維持されるので、サンギヤの振れによりそのサンギヤと複数のピニオンとの歯当たりが悪化することに起因して発生する騒音や振動を抑制することができる。
【0010】
また、請求項2にかかる発明の車両用駆動装置は、ダンパ装置、第2の電動機、動力分配用遊星歯車装置、減速用遊星歯車装置、および電動機が同軸上に配置される形式の車両用駆動装置であって、減速用遊星歯車装置のキャリヤがケースとサンギヤ嵌合部(ロータシャフト)とにより支持される。このようにすれば、減速用遊星歯車装置のキャリヤがダンパ装置に連結されず、上記ダンパ装置の偏心の影響を受けて減速用遊星歯車装置のキャリヤが振れることが回避される。なお、減速用遊星歯車装置のキャリヤが動力伝達軸に支持されるように構成される従来の車両用駆動装置においては、ダンパ装置の偏心の影響を受けて動力伝達軸が比較的大きく振れる場合にその動力伝達軸に支持された減速用遊星歯車装置のキャリヤも比較的大きく振れる可能性があった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例の車両用駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の車両用駆動装置のうちの動力分配用遊星歯車装置、減速用遊星歯車装置、および円筒状出力部材を含む部分を拡大して示す断面図である。
【図3】図1の車両用駆動装置において、第2ロータの偏心の影響を受けてロータシャフトの長手方向の中間部が径方向に撓みながら回転する場合において、片持状のサンギヤ嵌合部およびそれに嵌合された第2サンギヤが上記撓みに起因して例えば円錐面状に振れながら回転する様子を模式的に示す図である。
【図4】図1の車両用駆動装置において、第7ラジアル玉軸受を介してサンギヤ嵌合部により支持される減速用遊星歯車装置の第2キャリヤとダンパ装置に連結された動力伝達軸の大径部とが互いに分離されていることを模式的に示す図である。
【図5】本発明の他の実施例の車両用駆動装置の要部を示す断面図であって、実施例1の図2に対応する図である。
【図6】従来の車両用駆動装置の一部を示す断面図であって、実施例1における図2に相当する図である。
【図7】図6の従来の車両用駆動装置において、減速用遊星歯車装置の第2キャリヤとダンパ装置に連結された動力伝達軸の大径部とが軸受を介して互いに連結されていることを模式的に示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の一実施例の車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。図1において、車両用駆動装置10は、例えばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)形式のハイブリッド車両に設けられる。この車両用駆動装置10は、駆動輪12を回転駆動するためのものであり、エンジン14と、そのエンジン14の出力軸(クランク軸)に連結され、そのエンジン14からのトルク変動等による脈動を吸収するダンパ装置18と、そのダンパ装置18を介してエンジン14に連結された動力伝達軸20と、動力伝達軸20の外周側においてダンパ装置18および動力伝達軸20とそれぞれ同心に設けられると共にトランスアクスルケース16内に収容され、ダンパ装置18側から順に設けられた第1モータジェネレータMG1、動力分配用遊星歯車装置22、減速用遊星歯車装置24、および第2モータジェネレータMG2とを備えている。上記ダンパ装置18、動力伝達軸20、第1モータジェネレータMG1、動力分配用遊星歯車装置22、減速用遊星歯車装置24、および第2モータジェネレータMG2は、共通の軸中心線C上に配置されている。トランスアクスルケース16は、本発明におけるケースに相当するものである。第1モータジェネレータMG1は、本発明における第2の電動機に相当するものである。第2モータジェネレータMG2は、本発明における電動機に相当するものである。
【0014】
動力分配用遊星歯車装置22は、第1モータジェネレータMG1に連結された第1サンギヤS1と、動力分配用遊星歯車装置22および減速用遊星歯車装置24の外周側に配置された円筒状出力部材26の動力分配用遊星歯車装置22側の端部に一体に設けられた第1リングギヤR1と、第1サンギヤS1の外周側および第1リングギヤR1の内周側においてそれら第1サンギヤS1および第1リングギヤR1にそれぞれ噛み合わされた複数の第1ピニオンP1と、動力伝達軸20に連結され、複数の第1ピニオンP1をそれぞれ回転可能且つ軸中心線Cまわりの公転可能に支持する第1キャリヤCA1とを有するシングルピニオン型の遊星歯車装置である。この動力分配用遊星歯車装置22は、エンジン14からの動力を第1モータジェネレータMG1と円筒状出力部材26とに機械的に分配する動力分配機構として機能するものであり、円筒状出力部材26の内周側において減速用遊星歯車装置24のダンパ装置18側に隣接して設けられている。動力分配用遊星歯車装置22により第1モータジェネレータMG1に分配されたエンジン14の動力は、その第1モータジェネレータMG1を発電機として駆動するために用いられる。また、動力分配用遊星歯車装置22により円筒状出力部材26に分配されたエンジン14の動力は、駆動輪12を回転駆動するために用いられる。上記円筒状出力部材26の軸中心線C方向の中間部には、その軸中心線C方向において動力分配用遊星歯車装置22の第1リングギヤR1と減速用遊星歯車装置24の第2リングギヤR2との間に位置する外周歯から成る第1ドライブギヤ28が一体に設けられている。
【0015】
第1モータジェネレータMG1は、エンジン14により動力分配用遊星歯車装置22を介して駆動されることで発電機として機能させられ、発電により発生した電気エネルギーを例えばバッテリ等の蓄電装置に充電する。また、第1モータジェネレータMG1は、例えばエンジン始動時には動力分配用遊星歯車装置22を介してエンジン14を駆動することで電動機(エンジンスターター)として機能させられる。
【0016】
上記動力分配用遊星歯車装置22の差動状態は、第1モータジェネレータMG1の運転状態が制御されることにより連続的に変化させられる。そのため、動力分配用遊星歯車装置22および第1モータジェネレータMG1は、その第1モータジェネレータMG1の運転状態を制御して動力分配用遊星歯車装置22の差動状態を連続的に変化させることにより円筒状出力部材26の回転速度を無段階に変化させる電気式変速部を構成している。円筒状出力部材26に形成された第1ドライブギヤ28は、その電気式変速部の出力歯車として機能させられるものであり、本発明における出力歯車に相当する。
【0017】
減速用遊星歯車装置24は、第2モータジェネレータMG2に連結された第2サンギヤS2と、円筒状出力部材26の減速用遊星歯車装置24側の端部に一体に設けられた第2リングギヤR2と、第2サンギヤS2の外周側および第2リングギヤR2の内周側においてそれら第2サンギヤS2および第2リングギヤR2にそれぞれ噛み合わされた複数の第2ピニオンP2と、トランスアクスルケース16に固定され、複数の第2ピニオンP2をそれぞれ回転可能且つ軸中心線Cまわりの公転可能に支持する第2キャリヤCA2とを有するシングルピニオン型の遊星歯車装置である。この減速用遊星歯車装置24は、第2モータジェネレータMG2の減速機として機能するものである。なお、第2サンギヤS2は本発明におけるサンギヤに相当し、また、第2リングギヤR2は本発明におけるリングギヤに相当し、また、第2キャリヤCA2は本発明におけるキャリヤに相当するものである。
【0018】
第2モータジェネレータMG2は、単独で或いはエンジン14と共に駆動輪12を回転駆動する電動機として機能させられる。また、第2モータジェネレータMG2は、例えば車両の減速時等には駆動輪12により駆動されることで発電機として機能させられ、発電により発生した電気エネルギーを例えばバッテリ等の蓄電装置に充電する。
【0019】
さらに、車両用駆動装置10は、円筒状出力部材26の回転速度を減速して出力する減速歯車装置30と、その減速歯車装置30から伝達された動力を、左右一対の車軸32にそれらの回転差を許容しつつ分配する良く知られた差動歯車装置34とを備えている。減速歯車装置30は、前記第1ドライブギヤ28と、動力伝達軸20に平行に設けられたカウンタ軸36に一体に設けられて第1ドライブギヤ28に噛み合わされた第1ドリブンギヤ38と、カウンタ軸36に一体に設けられた第2ドライブギヤ40と、差動歯車装置34のデフケース42の外周側に固定されて第2ドライブギヤ40に噛み合わされた第2ドリブンギヤ44とを有して構成されている。
【0020】
このように構成された車両用駆動装置10は、例えばエンジン始動時には第1モータジェネレータMG1を用いてエンジン14を始動する。また、車両の発進時には第2モータジェネレータMG2を用いて駆動輪12を駆動する。また、車両の定常走行時には、エンジン14の動力を動力分配用遊星歯車装置22により円筒状出力部材26と第1モータジェネレータMG1とに分配し、円筒状出力部材26に分配された動力の一部により駆動輪12を駆動する共に、第1モータジェネレータMG1に分配された動力の他部によりその第1モータジェネレータMG1を発電させ、その発電により得られた電力により第2モータジェネレータMG2を駆動することでエンジン14の動力を補助する。また、車両の減速時および制動時には、駆動輪12から伝わる動力により第2モータジェネレータMG2を回転させて発電を行うことで、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して蓄電装置に回収する。
【0021】
図2は、図1の車両用駆動装置10のうちの動力分配用遊星歯車装置22、減速用遊星歯車装置24、および円筒状出力部材26を含む部分を拡大して示す断面図である。以下、図1および図2を参照して第2キャリヤCA2の支持構造を詳細に説明する。
【0022】
円筒状出力部材26は、軸中心線C上において相互に隣接して設けられた動力分配用遊星歯車装置22および減速用遊星歯車装置24の外周側に配設された円筒状部材であり、その円筒状出力部材26の軸中心線C方向の両端部の外周側にそれぞれ配置された一対の第1ラジアル玉軸受46および第2ラジアル玉軸受48を介してトランスアクスルケース16により軸中心線Cまわりの回転可能に支持されている。その円筒状出力部材26の軸中心線C方向の両端部の内周側には、第1リングギヤR1および第2リングギヤR2がそれぞれ一体に設けられており、また、円筒状出力部材26の軸中心線C方向の中間部の外周側には、第1ドライブギヤ28およびパーキングロックギヤ50がそれぞれ一体に設けられている。円筒状出力部材26は、第1リングギヤR1、第2リングギヤR2、第1ドライブギヤ28、およびパーキングロックギヤ50が一体に設けられた複合ギヤ部材である。
【0023】
動力伝達軸20は、両端部がダンパ装置18および第1サンギヤS1にそれぞれ連結され、第1ニードルベアリング52(図1参照)および第2ニードルベアリング54を介して第1モータジェネレータMG1の第1ロータシャフト56により支持された大径部20aと、一端部がその大径部20aの第1サンギヤS1側の端部の内周面にスプライン嵌合により一体的に固定されると共に、他端部が機械式のオイルポンプ58(図1参照)に連結されポンプ駆動軸として機能する小径部20bとから構成されている。
【0024】
上記第1ロータシャフト56は、軸中心線C方向に離隔した第3ラジアル玉軸受60(図1参照)および第4ラジアル玉軸受62を介してトランスアクスルケース16により支持されている。そして、第1モータジェネレータMG1の第1ロータ64は、図1に示すように第3ラジアル玉軸受60と第4ラジアル玉軸受62との間において第1ロータシャフト56に固設されている。
【0025】
第2モータジェネレータMG2は、動力伝達軸20の小径部20bの外周側において、軸中心線C方向に離隔した第5ラジアル玉軸受66および第6ラジアル玉軸受68(図1参照)によって回転可能に両端部が支持された第2ロータシャフト70を有している。そして、第2モータジェネレータMG2の第2ロータ72は、図1に示すように第5ラジアル玉軸受66と第6ラジアル玉軸受68との間において第2ロータシャフト70に固設されている。上記第5ラジアル玉軸受66および第6ラジアル玉軸受68は、本発明における第1軸受および第2軸受に相当するものである。なお、第5ラジアル玉軸受66は、第2モータジェネレータMG2の減速用遊星歯車装置24側に配置されたトランスアクスルケース16の壁部16aの円筒状内周面に嵌めつけられた軸受である。
【0026】
上記第2ロータシャフト70は、本発明におけるロータシャフトに相当するものであり、その第2ロータシャフト70の両端部のうちの壁部16a側の端部70aからその壁部16aを通して延び出す片持状のサンギヤ嵌合部70bを有している。
【0027】
減速用遊星歯車装置24の第2サンギヤS2は、第2ロータシャフト70のサンギヤ嵌合部70bにスプライン嵌合により一体的に固定されている。図2に示すように、第2ロータシャフト70のサンギヤ嵌合部70bには、第2ロータシャフト70の端部70a側からサンギヤ嵌合部70bの先端に向けて順に、第5ラジアル玉軸受66、第2サンギヤS2、および第2キャリヤCA2を支持するための第7ラジアル玉軸受74がそれぞれ嵌めつけられている。上記第7ラジアル玉軸受74は、本発明における第3軸受に相当するものである。第5ラジアル玉軸受66の内輪は、第2ロータシャフト70の段付部端面と当接させられており、また、第5ラジアル玉軸受66、第2サンギヤS2、および第7ラジアル玉軸受74は、軸中心線C方向において互いに隣接する部材同士が相互に当接させられている。そして、軸中心線C方向において、第7ラジアル玉軸受74の内輪と、動力伝達軸20の大径部20aの外周側に突き出されたフランジ部20cとの間には、スラスト軸受76が設けられている。
【0028】
減速用遊星歯車装置24の第2キャリヤCA2は、軸中心線C方向の第2モータジェネレータMG2側の一端部すなわち第1キャリヤ部材78がトランスアクスルケース16の壁部16aにより支持され、他端部すなわち第2キャリヤ部材80が第2ロータシャフト70により、すなわちそのサンギヤ嵌合部70bによりその第2円筒状突部80a内に嵌め入れられた第7ラジアル玉軸受74を介して支持されている。上記第1キャリヤ部材78は、第2ピニオンP2を回転可能に支持するキャリヤピン82の第2モータジェネレータMG2側の端部を支持する円板状部材であり、第2モータジェネレータMG2側へ突設されてトランスアクスルケース16の壁部16aの円筒状内周面84に嵌合された第1円筒状突部78aを有して構成されている。また、上記第2キャリヤ部材80は、第2ピニオンP2を回転可能に支持するキャリヤピン82の動力分配用遊星歯車装置22側の端部を支持する円板状部材であり、動力分配用遊星歯車装置22側へ突設されて第7ラジアル玉軸受74を介してサンギヤ嵌合部70bに支持された第2円筒状突部80aを有して構成されている。また、第2キャリヤCA2は、第1キャリヤ部材78の外周部に形成された図示しない複数の歯がトランスアクスルケース16に形成された複数の溝にそれぞれ係合させられることで、軸中心線Cまわりの回転不能に設けられている。
【0029】
本実施例の車両用駆動装置10においては、減速用遊星歯車装置24の第2サンギヤS2は、第2ロータシャフト70のサンギヤ嵌合部70bに嵌合され、減速用遊星歯車装置24の第2キャリヤCA2は、軸中心線C方向の第2モータジェネレータMG2側の一端部すなわち第1キャリヤ部材78がトランスアクスルケース16の壁部16aにより支持され、他端部すなわち第2キャリヤ部材80が第2ロータシャフト70により第7ラジアル玉軸受(第3軸受)74を介して支持されている。このようにすれば、図3に模式的に示すように、第2ロータ72の偏心の影響を受けてロータシャフト70のうちの第5ラジアル玉軸受66と第6ラジアル玉軸受68との間の中間部が径方向に撓みながら回転することで、片持状のサンギヤ嵌合部70bおよびそれに嵌合された第2サンギヤS2が上記撓みに起因して例えば円錐面状に振れながら回転する場合には、上記片持状のサンギヤ嵌合部70bに支持された前記第2キャリヤCA2もそれらサンギヤ嵌合部70bおよび第2サンギヤS2に追随して径方向に移動することとなる。そのため、第2サンギヤS2と前記複数の第2ピニオンP2との噛合状態が悪化することなく維持されるので、第2サンギヤS2の振れによりその第2サンギヤS2と複数の第2ピニオンP2との歯当たりが悪化することに起因して発生する騒音や振動を抑制することができる。また、第2サンギヤS2から複数の第2ピニオンP2にそれぞれ入力される荷重の偏りが抑制される。
【0030】
また、本実施例の車両用駆動装置10は、ダンパ装置18、第1モータジェネレータ(第2の電動機)MG1、動力分配用遊星歯車装置22、減速用遊星歯車装置24、および第2モータジェネレータ(電動機)MG2が同軸上すなわち軸中心線C上に配置される形式の車両用駆動装置であって、減速用遊星歯車装置24の第2キャリヤCA2がトランスアクスルケース16の壁部16aと第2ロータシャフト70のサンギヤ嵌合部70bとにより支持されている。このようにすれば、図4に模式的に示すように、第7ラジアル玉軸受74を介して前記サンギヤ嵌合部70bにより支持される減速用遊星歯車装置24の第2キャリヤCA2と前記ダンパ装置18に連結された動力伝達軸20の大径部20aとが互いに分離され、第2キャリヤCA2がダンパ装置18に連結されないので、ダンパ装置18の偏心の影響を受けて第2キャリヤCA2が振れることが回避される。因みに、図6は、第2キャリヤCA2が動力伝達軸20の大径部20aにより軸受102を介して支持される従来の車両用駆動装置100を示す断面図である。このような従来の車両用駆動装置100においては、図7に模式的に示すように、減速用遊星歯車装置24の第2キャリヤCA2と前記ダンパ装置18に連結された動力伝達軸20の大径部20aとが軸受102を介して互いに連結される。したがって、ダンパ装置18の偏心の影響による大径部20aの振れが第2キャリヤCA2に伝達されるので、第2キャリヤCA2が比較的大きく振れるという問題があった。
【0031】
また、本実施例の車両用駆動装置10においては、第2キャリヤCA2の第1キャリヤ部材78および第2キャリヤ部材80をそれぞれ支持する一対の支持部材、すなわちトランスアクスルケース16の壁部16aと第2ロータシャフト70との間に介在させられる部材は第5ラジアル玉軸受66のみである。これに対し、従来の車両用駆動装置100においては、第2キャリヤCA2の第1キャリヤ部材78および第2キャリヤ部材80をそれぞれ支持する一対の支持部材、すなわちトランスアクスルケース16の壁部16aと動力伝達軸20の大径部20aとの間には、第2ニードルベアリング54(または第1ニードルベアリング52)と第1ロータシャフト56と第4ラジアル玉軸受62(または第3ラジアル玉軸受60)とが順に介在させられる。しかも、上記第4ラジアル玉軸受62および第3ラジアル玉軸受60が嵌めつけられる壁部16bと第5ラジアル玉軸受66が嵌めつけられる壁部16aとは、それぞれトランスアクスルケース16を構成する別々の部材の一部から成る。そのため、本実施例の車両用駆動装置10によれば、従来の車両用駆動装置100のように第2キャリヤCA2の軸中心線C方向の両端部をそれぞれ支持する一対の支持部材間に複数の部材が順に介在させられるものと比較して、上記第2キャリヤCA2の両端部の径方向の相対的位置のばらつきが小さくなるので、第2キャリヤCA2の振れを抑制することができる。
【実施例2】
【0032】
次に、本発明の他の実施例について説明する。なお、以下の実施例の説明において、実施例相互に重複する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0033】
図5は、本発明の他の実施例の車両用駆動装置90の要部を示す断面図であって、実施例1の図2に対応する図である。本実施例では、図5に示すように、減速用遊星歯車装置24の第2サンギヤS2は、第2ロータシャフト70のサンギヤ嵌合部70bにスプライン嵌合により一体的に固定されている。そして、本発明の第3軸受に相当する第8ラジアル玉軸受92は、第2サンギヤS2のうちの動力分配用遊星歯車装置22側に突き出された端部94の外周側に嵌めつけられている。そして、減速用遊星歯車装置24の第2キャリヤCA2は、軸中心線C方向の第2モータジェネレータMG2側の一端部すなわち第1キャリヤ部材78がトランスアクスルケース16の壁部16aにより支持され、他端部すなわち第2キャリヤ部材96が第2ロータシャフト70により第2サンギヤS2の端部94およびその第2キャリア部材96の第2円筒状突部96a内に嵌め入れられた第8ラジアル玉軸受92を介して支持されている。
【0034】
本実施例の車両用駆動装置90においては、減速用遊星歯車装置24の第2サンギヤS2は、第2ロータシャフト70のサンギヤ嵌合部70bに嵌合され、減速用遊星歯車装置24の第2キャリヤCA2は、軸中心線C方向の第2モータジェネレータMG2側の端部すなわち第1キャリヤ部材78がトランスアクスルケース16の壁部16aにより支持され、他端部すなわち第2キャリヤ部材96がサンギヤ嵌合部70bに嵌合された第2サンギヤS2の端部94より第8ラジアル玉軸受(第3軸受)92を介して支持されている。このようにすれば、第2ロータ72の偏心の影響を受けてロータシャフト70の中間部が径方向に撓みながら回転することで片持状のサンギヤ嵌合部70bおよびそれに嵌合された第2サンギヤS2が例えば円錐面状に振れながら回転する場合には、上記第2サンギヤS2に支持された第2キャリヤCA2もそれらサンギヤ嵌合部70bおよび第2サンギヤS2に追随して径方向に移動することとなる。そのため、第2サンギヤS2と複数の第2ピニオンP2との噛合状態が悪化することなく維持されるので、実施例1と同様に、第2サンギヤS2の振れによりその第2サンギヤS2と複数の第2ピニオンP2との歯当たりが悪化することに起因して発生する騒音や振動を抑制することができる。また、第2サンギヤS2から複数の第2ピニオンP2にそれぞれ入力される荷重の偏りが抑制される。
【0035】
また、本実施例の車両用駆動装置90は、ダンパ装置18、第1モータジェネレータ(第2の電動機)MG1、動力分配用遊星歯車装置22、減速用遊星歯車装置24、および第2モータジェネレータ(電動機)MG2が同軸上すなわち軸中心線C上に配置される形式の車両用駆動装置であって、減速用遊星歯車装置24の第2キャリヤCA2がトランスアクスルケース16の壁部16aと第2ロータシャフト70のサンギヤ嵌合部70bに嵌合された第2サンギヤS2の端部94とにより支持されている。このようにすれば、第8ラジアル玉軸受92を介して第2サンギヤS2により支持される減速用遊星歯車装置24の第2キャリヤCA2とダンパ装置18に連結された動力伝達軸20の大径部20aとが互いに分離され、第2キャリヤCA2がダンパ装置18に連結されないので、実施例1と同様に、ダンパ装置18の偏心の影響を受けて第2キャリヤCA2が振れることが回避される。
【0036】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0037】
例えば、前述の実施例では、第2キャリヤCA2の他端部すなわち第2キャリヤ部材80或いは96が、第2ロータシャフト70により直接或いは間接的に支持されていたが、第2サンギヤS2以外の部材を介して支持されていてもよい。
【0038】
また、本発明は、ハイブリッド車両用の駆動装置10および90に限らず、たとえば電気自動車用の駆動装置にも適用され得る。要するに、電動機に連結されたサンギヤとケースに固定されたキャリヤと出力部材に設けられたリングギヤとを有する減速用遊星歯車装置を備えた車両用駆動装置であれば、本発明が適用され得る。
【0039】
また、前述の実施例において、車両用駆動装置10および90に設けられた各種軸受はラジアル玉軸受(46,48,60,62,66,68,74,92)やニードルベアリング(52,54)であったが、これに限らず、その他の公知の形式の軸受が採用され得る。
【0040】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
10:車両用駆動装置
14:エンジン
16:トランスアクスルケース(ケース)
18:ダンパ装置
20:動力伝達軸
22:動力分配用遊星歯車装置
24:減速用遊星歯車装置
26:円筒状出力部材(出力部材)
28:第1ドライブギヤ(出力歯車)
66:第5ラジアル玉軸受(第1軸受)
68:第6ラジアル玉軸受(第2軸受)
70:第2ロータシャフト(ロータシャフト)
70b:サンギヤ嵌合部
74:第7ラジアル玉軸受(第3軸受)
92:第8ラジアル玉軸受(第3軸受)
C:軸中心線
CA2:第2キャリヤ(キャリヤ)
MG1:第1モータジェネレータ(第2の電動機)
MG2:第2モータジェネレータ(電動機)
R2:第2リングギヤ(リングギヤ)
S2:第2サンギヤ(サンギヤ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機に連結されたサンギヤとケースに固定されたキャリヤと出力部材に設けられたリングギヤとを有し、前記電動機の減速機として機能する減速用遊星歯車装置を備えた車両用駆動装置であって、
前記電動機は、該電動機の軸中心線方向に離隔した第1軸受および第2軸受によって回転可能に両端部が支持されたロータシャフトを有し、
前記ロータシャフトは、該ロータシャフトの両端部のうちの前記ケース側の端部から該ケースを通して延び出す片持状のサンギヤ嵌合部を有し、
前記サンギヤは、前記ロータシャフトのサンギヤ嵌合部に嵌合され、
前記キャリヤは、該キャリヤの軸中心線方向の前記電動機側の一端部が前記ケースにより支持され、他端部が前記ロータシャフトにより第3軸受を介して間接的に支持されていることを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
前記出力部材は、外周側に出力歯車が設けられた円筒状部材であり、
前記減速用遊星歯車装置の前記電動機とは反対側において前記ロータシャフトと同心に設けられてエンジンの出力軸に連結されたダンパ装置と、前記出力部材の内周側において前記減速用遊星歯車装置の前記ダンパ装置側に隣接して設けられ、該ダンパ装置から動力伝達軸を介して伝達された前記エンジンの動力を該動力伝達軸の外周側に配置された第2の電動機と前記出力部材とに分配する動力分配用遊星歯車装置とを備えている
ことを特徴とする請求項1の車両用駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−233511(P2012−233511A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101355(P2011−101355)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】